結論
リバティ・メディアは、四輪のF1と二輪のMotoGPという世界最高峰の選手権の商業権を握る会社である。競技そのものは10年後も必要とされると考えるが、今の株式価値は将来の利益をかなり先取りしており、割高と判断する。チケット販売会社ではなく、開催地、放映局、スポンサーから契約料を受け取る権利事業だ。
F1の商業権は2110年末まで続き、開催枠はほぼ満杯である。2025年のF1売上は約39億ドルで、観客は675万人に達した。MotoGPは同年7月に84%を買収したため、連結の売上は半年分しかない。2025年の全社売上約45億ドルをそのまま10年の成長起点にすると、二輪の通年寄与を見誤る。
2026年4~6月のF1売上は前年同期比38%減った。しかし主因は開催レースが前年より4戦少なかったことで、人気が突然落ちたわけではない。MotoGPは上期売上が同一基準で6%増えた。一方、純負債は2025年末に約41億ドルあり、チームへの分配と買収に伴う償却が株主利益を抑える。
中立では、2035年に全社売上が約77億ドル、営業利益が約15億ドル、GAAP純利益が約9.5億ドルまで育つ。それでも10年後の時価総額と途中の正味還元を割り引いた今の本質価値は約90億ドルで、基準時価総額約230億ドルより約61%低い。二つの競技の魅力と、今買う株主の安全域は別問題である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、F1の商業権には生涯保有に値する性質がある。競技の名称も歴史もファンの記憶もまねできず、開催地は限られた枠を求めて競う。物価上昇を契約へ転嫁しやすく、メディアの配信先がケーブルテレビからアップルのような企業へ変わっても、競技そのものの供給権は変わらない。MotoGPも同じ仕組みを持ち、二輪の国際展開には余地がある。
しかし、価値がある資産を持つことと、株主に十分な利益を返すことは同じではない。放映権収入の増加はチームへの賞金分配にも流れ、人気が上がるほど競技を維持する費用もかかる。MotoGP買収ではのれんと償却負担を抱え、借り換え金利が高ければ経営の腕が良くても配当原資は細る。自由に使える現金を借金の裏付けなしに一ドルずつ足すことはできない。
2025年の利益には金融評価益が含まれるので、私はその年の数字を成長率の起点にしない。より大切なのは、継続契約から生まれる営業利益と、それを税、利息、設備費、少数株主分を払った後にどれだけ手元へ残せるかである。2026年の放映権契約は魅力的でも、10年先の契約更新は保証されない。
中立では株主のものになる純利益が2035年に約9.5億ドルになり、途中で約47億ドルの正味還元を受ける。それでも現在の値付けを十分に裏付けない。権利の強さを認めたうえで、安全域がなければ高値を払わないという結論である。
何で稼ぐ会社か
収益の出発点はF1の商業権である。国際自動車連盟から2110年までの独占権を得ており、2025年は24戦を21か国で開いた。開催都市と主催者はグランプリの開催権料を払い、放映局は地域ごとの中継契約を結ぶ。世界の協賛企業はコース脇広告、冠スポンサー、公式パートナーの地位に対価を払う。2025年のF1売上のうち、開催権は26.7%、放映権は31.3%、協賛は21.7%だった。
残りはパドッククラブの高級観戦席、ラスベガスの直営興行、F2・F3、機材輸送、商標利用などである。普通のサーキットの一般入場券は現地プロモーターが売るので、675万人の観客にF1が直接チケットを販売しているわけではない。開催者は固定的な権利料を払い、F1は一部をチームへの賞金分配や映像制作費に充てる。この仕組みにより需要の拡大を値上げに変えやすいが、チームの取り分も一緒に増える。
MotoGPは国際モーターサイクリズム連盟の商業権を2060年まで持つ。開催権、放映権、協賛が主な収益で、世界スーパーバイク選手権やVIP体験も含む。2025年は22戦開催され、買収日を年初とした売上は約5.73億ドルだった。しかし親会社の連結に含まれるのは7月以降の約3.25億ドルである。売上の構成は放映41.2%、開催33.7%、協賛12.7%とF1より放映依存が強い。
同社は2025年12月にLiberty Liveを分離し、旧Quintの連結も外れた。2026年以降の中核はF1とMotoGPの二本である。各種の料率は権利別の公開比率を使い、単価非開示の区分は開催戦数や放映契約を代理の数量としている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社が簡単にまねできない強みは、競技そのものの独占権にある。F1は2110年まで、MotoGPは2060年までの商業権を持ち、レースを同じ名前で代替開催することはできない。開催者と放映局の契約は数年続き、F1の開催料には年率最大5%ほどの値上げ条項がある。公式スポンサーの売上構成比が2023年の18.0%から2025年に21.7%へ高まったことも、値決め力の実績である。
放映局や開催都市には別のスポーツを買う選択肢がある。しかし世界に散らばるファンを同時に集め、年間を通じて露出を作るF1の代替は少ない。2025年のF1の世界ファン層は約8.27億人で、MotoGPも約6.32億人を公表した。ただし調査の重複があるため、この二つの数字を足して市場の人数とはみなさない。競技の強さは確かでも、ファン数と現金収入は同じではない。
弱点は資本の使い方である。MotoGP買収に伴って純負債が増え、2026年6月の連結純負債倍率は調整後利益の約3.4倍になった。MotoGP単体は4.5倍と重い。F1の営業利益率は2025年で16%強だが、買収償却やチーム分配、借り換え費用を通すと株主の純利益率はもっと薄い。2025年のGAAP純利益には金融商品の評価損益も混ざる。
経営には競技の希少性を商業契約へ変える手腕がある一方、議決権の約49%をB種株の大株主が支配し、C種のFWONKには議決権がない。少数株主は買収や再編に異議を通しにくい。この統治上の問題は、独占権の寿命とは別に見なければならない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
スポーツ配信の市場は一つの巨大な契約市場ではない。放送局、配信サービス、開催都市、ブランド企業がそれぞれ視聴者を奪い合い、数年ごとに権利を買い直す。F1とMotoGPの世界選手権名義での商業権シェアは各100%だが、自動車・二輪の観戦時間全体に対する占有率は公開されていない。権利の独占と、視聴者の財布の独占を混同しないことが大切だ。
競争相手はNASCAR、インディカー、耐久レース、フォーミュラE、さらにサッカーや格闘技などのライブ中継である。2025年にはF1が世界ファン約8.27億人、MotoGPが6.32億人を公表し、フォーミュラEは4.22億人と発表した。調査手法と複数競技を好む人の重なりがあるため、これを分母にした正確なシェアは出せない。数量見通しでは、F1の開催数は24戦付近で頭打ち、放映契約相当数と高単価観戦が伸びると考える。
2025年のF1入場者は約675万人、MotoGPは約366万人だった。競技を生で見る需要は動画の要約では置き換えられず、若年層の関心も高い。ただしスポーツの視聴時間には上限があり、スポンサーは費用対効果を比較する。米国ではF1の2025年平均テレビ視聴が約132万人で、他の巨大スポーツに比べ拡大の余地がある反面、2026年のアップル独占配信は裾野を狭める可能性もある。
2026年のF1は中東開催の変更で年間23戦の想定になった。チームとのコンコルド協定は2030年まで更新済みだが、開催数を24戦より増やすにはチームの広い同意が要る。気候政策による輸送コスト、地政学、FIA・FIMとの関係は長い独占権を持つ企業でも免れない。中立では物価3.5%と需要の実質的な小幅成長を中心に考える。
資本政策と M&A
資本配分の最大の節目は、2017年のF1取得と2025年7月のMotoGP買収である。後者は約84%持分の取得に約36.6億ドルを払い、既存の借入に新たな借金を重ねた。2025年12月にはLiberty Liveを分離し、ライブ・ネーション株などを外へ出した。連結の売上や株数の過去比較が歪むため、買収と分離を除いた継続事業の稼ぎを基準にする。
2025年のフリーキャッシュフローは添付の財務台帳で約7.5億ドルだった。2026年6月末の現預金は約14.7億ドル、総借入は約49.2億ドルで、MotoGPは同年上期に借り換えと元本返済を進めた。8月には2032年満期の転換社債を最終的に6.9億ドル発行し、既存の2027年満期社債への対応に充てる方針を示した。株式決済を選ぶ場合の希薄化も正味還元から引く。
同社は無配で、2026年5~7月にも自社株買いを行っていない。8月初め時点の買い戻し承認枠は約11億ドル残るが、実行を保証したものではない。売上、利益、総還元に関する10年目の数字の約束もない。中立ではまず財務を落ち着かせ、その後の自社株買いと配当を10年で正味47億ドルと考える。買収の再現性より、残った株主が実際に現金を受け取れるかを重視する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社が売っているのはレースの映像そのものではなく、世界最高峰という地位だ。FIAとの権利は2110年末まで残り、コンコルド協定でチームとの協調も2030年まで整っている。年間24戦前後の開催枠は少なく、ラスベガスのような新興の観光都市は世界への露出を買う。開催権料は契約で物価に連動して上がり、スポンサーの売上構成比は2年で約4ポイント増えた。これほど長い寿命と値決めの根拠を備える資産は珍しい。
米国の放映権がESPNからアップルへ移ったことも競争入札の力を示す。2025年に米国の平均視聴者は約132万人まで増えたが、主要スポーツの観客規模にはまだ遠い。パドッククラブやファン向け商品、映像の二次利用に伸びしろがある。F1のチーム分配金は増えるとしても、長期契約と商標権を持つ会社の営業利益は売上以上に伸びうる。
MotoGPは買収後の通年売上がまだ報告上にそろっていない。2025年のプロフォーマ売上5.73億ドルは、F1の商業化の経験を持ち込めば成長の土台になる。2026年にメーカーと各チームが2031年まで契約したので、興行の一体性も改善した。二つの世界選手権から生じる現金で借金を減らし、自社株買いに移れば、利益と還元の両方が株主を押し上げる。
慎重な見方
競技の独占権は100%の市場シェアを意味しない。実際にスポンサーや配信局が比べているのは、サッカー、NASCAR、フォーミュラE、動画配信そのものへの支出である。入場者が増えても、権利料の取り分はチームや開催地の交渉で削られうる。2026年のF1は中東の開催変更で1戦減る想定になり、売上を生むイベントそのものが政治情勢に左右されることを示した。
MotoGPに約36.6億ドルを払った結果、純負債は2025年末で約41億ドルへ膨らんだ。2026年6月にはMotoGPの純負債倍率が4.5倍だった。MotoGPのGAAP営業利益は2025年通年換算でも約0.54億ドルと小さく、のれんの額を考えると投下資本の回収に長い時間がかかる。F1の収益が底堅くても、それが買収の値付けを正当化するとは限らない。
さらに、議決権のないC種株を買う株主は、大株主の議決権約49%に対して弱い立場だ。新たな転換社債は借り換えの助けになる一方、株式決済されれば持分が薄まる。足元のGAAP純利益にはデリバティブなどの評価損益があり、恒常的なオーナー利益を過大に見やすい。最高の権利でも高すぎる値段で買えば、10年保有した結果は悪くなりうる。
どちらに重みを置いたか
競技権利の独占と契約の値上げ実績は確かであり、事業の寿命については強い見方に分がある。しかし、買収に伴う負債と少数株主の取り分、配信権更新の不確実性を考えると、株式の値付けには慎重であるべきだ。やや悲観23%と悲観12%の合計35%は、ライブ・ネーションの40%より低く、TKOの35%と同程度にした。中立34%を中心にしながら、楽観10%とやや楽観21%も残す。現在の時価総額に引かれず利益と還元を積み上げると、本質価値は約90億ドルとなり、結論は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 50.53 ドル130 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 17.28 ドル45 億ドル)。 今の値に割り戻すと 35.16 ドル91 億ドル、今との差 −62.0%、 期待の年率 −3.5%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 136.24 ドル352 億ドル | 42.64 ドル110 億ドル | +93.4% | +8.0% | 17.89 ドル46 億ドル |
| やや楽観 | 21% | 82.76 ドル214 億ドル | 29.07 ドル75 億ドル | +20.9% | +2.2% | 23.48 ドル61 億ドル |
| 中立 | 34% | 48.97 ドル126 億ドル | 18.22 ドル47 億ドル | −27.3% | −3.6% | 22.84 ドル59 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 10.36 ドル27 億ドル | 3.10 ドル8 億ドル | −85.4% | −18.8% | 3.10 ドル8 億ドル |
| 悲観 | 12% | 4.07 ドル11 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −95.6% | −26.8% | 0.49 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 50.53 ドル130 億ドル | 17.28 ドル45 億ドル | −26.7% | −3.5% | 67.80 ドル175 億ドル |
今の株価時価総額 92.47 ドル239 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% F1が世界的な基幹スポーツとして定着しMotoGPも再評価される 利益 19 億ドル · PER 19.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 136.24 ドル352 億ドル
2035年もF1は25戦を開催し、開催枠を求める都市の競争が強い。開催権の実効単価は今の1.8倍に上がり、アップルやスカイなど配信各社との交渉では、独占ライブ権利の希少性が効く。放映権の契約相当数は64となり、スポンサーは世界的なブランド予算を取り込む。ラスベガスの直営興行とパドッククラブも高単価の旅行体験として定着する。
MotoGPは25戦へ広がり、米州とアジアの開拓が進む。2025年に買った権利の価値を高め、競合フォーミュラEやNASCARと視聴時間を奪い合っても、二つの世界最高峰選手権の独自性が勝る。F1とMotoGPの営業利益は本社費を引いて27億ドル余りに達する。
フリーキャッシュフローから負債を減らし、配当や自社株買いを合計約117億ドル行う。株式報酬と転換社債の株式決済等の持分増加相当約7億ドルを差し引くため、正味還元は110億ドルである。
- F1開催権料:数量 25.0(年間グランプリ開催数(戦))× 価格 0.78(1戦あたり権利収入(億ドル))→ 売上 19 億ドル・営業利益 4 億ドル。主催枠への入札が強く25戦の承認を得る
- F1放映権・配信権:数量 64.0(放映契約数相当(契約))× 価格 0.48(契約当たり年間売上(億ドル))→ 売上 31 億ドル・営業利益 10 億ドル。アップルなどの更改で契約単価が約2倍
- F1公式協賛・サーキット広告:数量 25.0(商業露出がある開催戦数(戦))× 価格 0.88(1戦当たりスポンサー収入換算(億ドル))→ 売上 22 億ドル・営業利益 7 億ドル。世界協賛の増額と冠スポンサー契約が続く
- F1ホスピタリティ・物流・ライセンス:数量 10.0(年間サーキット延べ観客(百万人))× 価格 2.04(観客百万人当たり関連収入(億ドル))→ 売上 20 億ドル・営業利益 4 億ドル。プレミアム観戦と商標利用が拡大
- MotoGP開催権料:数量 25.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.18(連結対象1戦当たり収入(億ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。新規市場でMotoGP開催枠が増える
- MotoGP放映権・VideoPass:数量 25.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.23(連結対象1戦当たり放映収入(億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 2 億ドル。海外の放映契約で権利収入が増える
- MotoGP公式スポンサー:数量 25.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.08(連結対象1戦当たり協賛収入(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。グローバル協賛がF1に追随して増える
- MotoGP周辺レース・VIP体験:数量 25.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.07(連結対象1戦当たり周辺収入(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。VIP体験と世界スーパーバイク選手権が伸びる
- 旧Quint連結分と残存賃貸:数量 1.0(連結対象事業ポートフォリオ(件))× 価格 0.50(対象事業の収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。Quint分離後も賃貸等の収入が残る
倍率:k8.0%、g4.0%。長期のレース数は頭打ちでも世界の視聴・協賛需要の実質約0.5%増と料金の名目約3.5%増を見込む。2035年の自己資本83.6億ドルに対するGAAP株主利益18.5億ドルからROE22.1%。独占権が続く強い堀の残存率2/3でRONIC17.4%、式の正当化PERは翌年利益基準19.26倍、10年目利益基準20.03倍。質が極めて高い場合に限り上限の約95%で19.0倍。MotoGPの16%非支配持分と借り換え金利、株式報酬は利益で控除済み。
確率:10%とする。F1の放映契約が上方改定され、MotoGPの海外展開まで成功するには、視聴者の成長と競技の魅力、チームとの協調が同時に必要であり、独占権があっても自動的には実現しない。
やや楽観 21% 契約更新で着実に値上げし二輪の投資が回収に入る 利益 14 億ドル · PER 15.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 82.76 ドル214 億ドル
F1の年間開催数は24戦に収まり、限られた開催枠の競争が各都市の支払能力を押し上げる。放映契約相当数は60に増え、1件当たり売上は今の1.84倍となる。スポンサーは公式パートナーの増額が続き、パドッククラブとブランドの使用許諾も伸びる。開催地やチームとの取り分を守りながら、売上の伸びを営業利益率の改善につなげる。
MotoGPは24戦へ広がり、2026年に結んだメーカー・チームとの協定が開発投資を促す。世界の放送網に二輪レースを売り込み、連結初年度の半期計上だった売上が通年寄与する。NASCARやフォーミュラEとの競争は続くが、競技の看板を失うほどではない。
10年累計の純利益は93億ドル、正味還元は75億ドルとする。自社株買いなど約82億ドルから、株式報酬と転換・新株相当約7億ドルを差し引く。負債は減り、F1とMotoGPの権利は一体のまま残る。
- F1開催権料:数量 24.0(年間グランプリ開催数(戦))× 価格 0.71(1戦あたり権利収入(億ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。開催数は24戦で単価更新が中心
- F1放映権・配信権:数量 60.0(放映契約数相当(契約))× 価格 0.43(契約当たり年間売上(億ドル))→ 売上 26 億ドル・営業利益 8 億ドル。放映契約60件相当へ、単価は物価を超える
- F1公式協賛・サーキット広告:数量 24.0(商業露出がある開催戦数(戦))× 価格 0.77(1戦当たりスポンサー収入換算(億ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 6 億ドル。公式パートナーが継続的に増額
- F1ホスピタリティ・物流・ライセンス:数量 9.0(年間サーキット延べ観客(百万人))× 価格 1.87(観客百万人当たり関連収入(億ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。観客増と高単価VIP席が伸びる
- MotoGP開催権料:数量 24.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.15(連結対象1戦当たり収入(億ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。MotoGPは24戦へ拡大
- MotoGP放映権・VideoPass:数量 24.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.20(連結対象1戦当たり放映収入(億ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。有料配信と無料放映の組合せを改善
- MotoGP公式スポンサー:数量 24.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.07(連結対象1戦当たり協賛収入(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。世界スポンサーの開拓が順調
- MotoGP周辺レース・VIP体験:数量 24.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.06(連結対象1戦当たり周辺収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。VIP体験とライセンスが増える
- 旧Quint連結分と残存賃貸:数量 1.0(連結対象事業ポートフォリオ(件))× 価格 0.40(対象事業の収入(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。旧Quint収入は戻らず賃貸主体
倍率:k8.0%、g4.0%。視聴者とスポンサーの実質拡大約0.5%、契約料金約3.5%を想定する。純利益13.6億ドル、自己資本95.6億ドルなので事業ROE14.2%。moat=strongの残存率2/3でRONIC12.15%、正当化PERは10年目利益基準17.44倍。市場倍率を使わず、契約更改の不確実性とMotoGPの償却負担を考え上限の約90%で15.7倍。GAAP純利益に少数株主持分と株式報酬を反映。
確率:21%とする。F1の複数年契約には値上げ条項があり、アップルへの放映権移管と公式スポンサー増加は強みの実証である。一方、MotoGPの米国開拓の成否までは確かでない。
中立 34% 開催数はほぼ横ばいでも放映権と協賛が複利で伸びる 利益 10 億ドル · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 48.97 ドル126 億ドル
F1は24戦を維持し、人気の高い開催枠を入札・更新で入れ替える。開催権単価は今の1.48倍、放映契約は58件相当へ増え、契約当たり料金は1.7倍になる。スポンサーは今の約1.8倍の実効単価となるが、チーム賞金の配分も増える。ラスベガスやパドッククラブの収益は伸びるものの、F1自体の運営は派手に軽くならない。
MotoGPは23戦で安定し、2025年に半期しか連結されなかった分が最初の数年に通年化する。その後は放送局と開催都市の入れ替えで緩やかに成長する。二輪のチームへの分配、購入時の無形資産償却と支払利息が残るため、F1ほど純利益率は高くならない。
2026年の四半期減収はレースの期ずれが中心で、競技の需要崩壊とは扱わない。10年累計の純利益73億ドルに対し、自社株買いなど約54億ドルから株式報酬と持分増加相当7億ドルを引き、正味還元47億ドルを株主に届ける。
- F1開催権料:数量 24.0(年間グランプリ開催数(戦))× 価格 0.64(1戦あたり権利収入(億ドル))→ 売上 15 億ドル・営業利益 3 億ドル。24戦を維持し契約更新で約1.5倍
- F1放映権・配信権:数量 58.0(放映契約数相当(契約))× 価格 0.40(契約当たり年間売上(億ドル))→ 売上 23 億ドル・営業利益 6 億ドル。放映契約58件相当・料金は1.7倍
- F1公式協賛・サーキット広告:数量 24.0(商業露出がある開催戦数(戦))× 価格 0.63(1戦当たりスポンサー収入換算(億ドル))→ 売上 15 億ドル・営業利益 4 億ドル。スポンサー単価1.8倍だが分配費も増える
- F1ホスピタリティ・物流・ライセンス:数量 8.1(年間サーキット延べ観客(百万人))× 価格 1.70(観客百万人当たり関連収入(億ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。観客810万人相当でVIPと物流も伸びる
- MotoGP開催権料:数量 23.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.14(連結対象1戦当たり収入(億ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。MotoGPは23戦、半期連結が通年化
- MotoGP放映権・VideoPass:数量 23.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.17(連結対象1戦当たり放映収入(億ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。放映契約の地域拡大と緩やかな値上げ
- MotoGP公式スポンサー:数量 23.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.06(連結対象1戦当たり協賛収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。二輪の公式協賛増はF1より緩やか
- MotoGP周辺レース・VIP体験:数量 23.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.05(連結対象1戦当たり周辺収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。VIP外注の純額表示を引き継ぐ
- 旧Quint連結分と残存賃貸:数量 1.0(連結対象事業ポートフォリオ(件))× 価格 0.30(対象事業の収入(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。Quintを除いたGP Plaza関連収入
倍率:k8.0%、g3.8%。F1・MotoGPの長期開催数はほぼ横ばい、視聴需要の実質約0.3%、メディア契約やスポンサーの単価約3.5%で、シェアはおおむね維持する。純利益9.5億ドル÷自己資本103.6億ドルでROE9.17%。moat=strongの残存率2/3からRONIC8.78%、正当化PERは来年利益基準13.50倍、10年目利益基準14.02倍。利益の質から上限の約95%で13.3倍。利益はGAAPで、買収償却、利息、税、MotoGP非支配持分を戻さない。
確率:34%とする。FIAとの独占権、2030年までのコンコルド協定、既存の開催者・放映局との継続契約が売上の基礎を支える。他方、2025年の大型買収と2026年の開催順変更による振れを考えると利益率の急伸は既定にできない。
やや悲観 23% 開催地と配信権の交渉力が弱まり利益を取り逃す 利益 2 億ドル · PER 9.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10.36 ドル27 億ドル
地政学上の混乱と開催地の財政難が重なり、F1は21戦となる。アップルやスカイなど一部の放映相手は料金に厳しくなり、契約相当数は49へ減る。開催権とスポンサーの値上げは物価に届かず、競合のNASCAR、フォーミュラE、ほかのライブスポーツに広告費と視聴時間を奪われる。2026年のコンコルド協定で約束したチーム分配は簡単には減らせない。
MotoGPは20戦に減り、放映契約の新規獲得が鈍る。買収時ののれんを約10億ドル減損する年があり、数年間は利益が落ちる。ただしFIAとFIMの商業権自体は続き、主要な大会を開催できる。
10年のGAAP純利益累計は減損込み28億ドルで、純資産は約98億ドルにとどまる。自社株買い等12億ドルから株式報酬と持分増加相当4億ドルを引き、正味還元は8億ドルとする。
- F1開催権料:数量 21.0(年間グランプリ開催数(戦))× 価格 0.54(1戦あたり権利収入(億ドル))→ 売上 11 億ドル・営業利益 1 億ドル。中東などの欠場で21戦、権利単価低調
- F1放映権・配信権:数量 49.0(放映契約数相当(契約))× 価格 0.29(契約当たり年間売上(億ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 3 億ドル。配信会社の競争が弱まり49契約相当
- F1公式協賛・サーキット広告:数量 21.0(商業露出がある開催戦数(戦))× 価格 0.46(1戦当たりスポンサー収入換算(億ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 2 億ドル。広告主の予算競争で値上げは不十分
- F1ホスピタリティ・物流・ライセンス:数量 6.7(年間サーキット延べ観客(百万人))× 価格 1.46(観客百万人当たり関連収入(億ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 0 億ドル。観客数は横ばいでVIP需要が鈍化
- MotoGP開催権料:数量 20.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.11(連結対象1戦当たり収入(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。二輪の開催数が20戦へ減少
- MotoGP放映権・VideoPass:数量 20.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.14(連結対象1戦当たり放映収入(億ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。二輪の権利料金は物価未満
- MotoGP公式スポンサー:数量 20.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.04(連結対象1戦当たり協賛収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。スポンサー更新が鈍り顧客が離れる
- MotoGP周辺レース・VIP体験:数量 20.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.04(連結対象1戦当たり周辺収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。VIP収入の総額認識を回復できない
- 旧Quint連結分と残存賃貸:数量 1.0(連結対象事業ポートフォリオ(件))× 価格 0.20(対象事業の収入(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。残存賃貸収入は限定的
倍率:構造的な負け筋なので中立より低いPER9.8倍。契約を失い長期のgは市場数量減約1%と単価約3.5%で2.5%、k8.0%。純利益2.2億ドル÷自己資本97.6億ドルのROE2.25%はk未満であり、PER上限は1÷k=12.5倍。9.8倍はその約78%。稼ぐ力の上限2.2÷8%=27.5億ドルと、売却可能資産の税後推計18億ドルを超えない。信用悪化を別に二重計上しない。
確率:23%とする。2026年の中東大会の取り消し・変更は開催の不安定さを示す。放映会社の選択とチームへの分配、MotoGPの高い負債倍率が重なると、売上が残っても株主利益が薄くなりうる。
悲観 12% 競技の独占権は残っても興行網が縮みのれんが大幅減損する 利益 −2 億ドル · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4.07 ドル11 億ドル
国際情勢の緊張で複数の開催都市が撤退し、F1は18戦となる。配信企業は他のスポーツ権利へ予算を振り向け、放映契約相当数は44へ減る。スポンサーは露出を減らし、ラスベガスや高級ホスピタリティは採算割れとなる。チームへの保証的な分配とFIAへの支払約束が残り、独占権が利益につながらない。
MotoGPも18戦に縮み、世界スーパーバイク選手権の周辺収益まで細る。買収ののれんや無形資産などで約65億ドルの大型減損を計上する。前半の小さな利益を減損が上回り、10年累計のGAAP損失は約48億ドル、2035年も純損失が残る。
配当や自社株買いは停止し、借り換えと大会の維持を優先する。ただし2110年までのF1商業権と2060年までのMotoGP商業権は完全には無価値にならず、第三者への権利売却を考慮した小さな残存価値は認める。
- F1開催権料:数量 18.0(年間グランプリ開催数(戦))× 価格 0.47(1戦あたり権利収入(億ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 0 億ドル。開催継続が18戦へ落ち契約価格は頭打ち
- F1放映権・配信権:数量 44.0(放映契約数相当(契約))× 価格 0.25(契約当たり年間売上(億ドル))→ 売上 11 億ドル・営業利益 1 億ドル。放映契約は44相当、実効料金が伸びない
- F1公式協賛・サーキット広告:数量 18.0(商業露出がある開催戦数(戦))× 価格 0.39(1戦当たりスポンサー収入換算(億ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。世界スポンサーからの離脱が相次ぐ
- F1ホスピタリティ・物流・ライセンス:数量 5.0(年間サーキット延べ観客(百万人))× 価格 1.28(観客百万人当たり関連収入(億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。VIP販売が採算割れする
- MotoGP開催権料:数量 18.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.09(連結対象1戦当たり収入(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。二輪は18戦、現地主催者も離れる
- MotoGP放映権・VideoPass:数量 18.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.11(連結対象1戦当たり放映収入(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。放映網が収縮して配信権は横ばい
- MotoGP公式スポンサー:数量 18.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.03(連結対象1戦当たり協賛収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。二輪広告は更新率が大幅低下
- MotoGP周辺レース・VIP体験:数量 18.0(親会社に連結された開催戦換算(戦))× 価格 0.03(連結対象1戦当たり周辺収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。世界スーパーバイク選手権とVIP部門が赤字
- 旧Quint連結分と残存賃貸:数量 1.0(連結対象事業ポートフォリオ(件))× 価格 0.15(対象事業の収入(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。Quint分離後の賃貸でも赤字
倍率:2035年は純損失2.0億ドルとなりPERによる永続価値は採用できない。買収無形資産の大型減損後の自己資本30億ドルに対してPBR0.35倍で10.5億ドル。倍率は過去の株式市場の谷ではなく、F1商業権とMotoGP持分の売却可能額から導いた税後床に対応する。今の自己資本77.6億ドルより小さくなった減損後の自己資本を分母とし、売れる資産を超える価値を主張しない。
確率:12%とする。権利契約が残る以上、事業が完全消滅する確率は小さい。ただし世界大会の中止、広告主の撤退、配信会社の値下げ、チーム対立が重なる事態は過去のパンデミックが示す通り排除できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
F1開催権料
各地の開催者と自治体からグランプリの開催権料を受け取る。ラスベガスは例外的に自ら興行を担う。
| 数量年間グランプリ開催数(戦) | 価格1戦あたり権利収入(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 24.0 | 0.43 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 0.64 | 15 | 3 |
取り方:10-KのF1総売上38.73億ドル×開催権26.7%=10.34億ドル。2025年は24戦なので開催者負担の平均は0.431億ドル。ラスベガスの直営売上も含む。営業利益は会社が権利別に出さないので、チーム分配費を配賦しF1全体の営業利益6.32億ドルに合わせた推定。
F1放映権・配信権
スカイ、アップル、DAZNなどへの放映ライセンスと直販のF1 TVを含む。
| 数量放映契約数相当(契約) | 価格契約当たり年間売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 52.0 | 0.23 | 12 | 3 |
| 10 年後 中立 | 58.0 | 0.40 | 23 | 6 |
取り方:10-KによるF1売上×メディア権31.3%=12.12億ドル。契約は世界50件超と開示されるため52件を推計し、単価は総額を件数で割った契約当たり平均。地域による規模差が大きく、F1 TVの加入料も含めた指標である。部門利益は費用配賦による推計。
F1公式協賛・サーキット広告
グローバル公式パートナー、冠スポンサー、コース脇広告などの権利を販売する。
| 数量商業露出がある開催戦数(戦) | 価格1戦当たりスポンサー収入換算(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 24.0 | 0.35 | 8 | 2 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 0.63 | 15 | 4 |
取り方:10-KによるF1売上×スポンサー21.7%=8.40億ドル。国際スポンサーの通年契約を24戦に按分した指標で、契約数とは異なる。チームが直接受け取るスポンサー料は含めず、営業利益はF1全体から配賦した推計。
F1ホスピタリティ・物流・ライセンス
パドッククラブ、特別席、F2・F3、機材輸送、商標利用などの収入を得る。
| 数量年間サーキット延べ観客(百万人) | 価格観客百万人当たり関連収入(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6.8 | 1.17 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.1 | 1.70 | 14 | 2 |
取り方:F1総売上から一次収入(開催権・放映・協賛)を引いた7.87億ドル。2025年の延べ観客675万人を需要指標として割り付けた。一般席の売上は通常は現地主催者のものであり、この単価は入場料ではなく物流や商品許諾も含む代理指標。利益は推計。
MotoGP開催権料
開催地のプロモーターに二輪世界選手権の興行権を販売する。
| 数量親会社に連結された開催戦換算(戦) | 価格連結対象1戦当たり収入(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.5 | 0.09 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 23.0 | 0.14 | 3 | 0 |
取り方:2025年7月3日買収のため会社に連結された売上は3.25億ドル。MotoGP全2025年売上の開催権構成比33.7%を当てると1.10億ドル。2025年の通年は22戦・プロフォーマ売上5.73億ドルなので、12.5戦相当を連結期間の収益認識単位として使用する。実際の7月以降の厳密なレース数ではない。利益はMotoGP連結営業利益0.38億ドルから配賦。
MotoGP放映権・VideoPass
世界の有料・無料放送局へのライセンスと動画配信VideoPassを扱う。
| 数量親会社に連結された開催戦換算(戦) | 価格連結対象1戦当たり放映収入(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.5 | 0.11 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 23.0 | 0.17 | 4 | 1 |
取り方:2025年連結MotoGP売上3.25億ドル×メディア権構成比41.2%=1.34億ドル。世界で無料19契約・有料45契約という参考数は地域重複があるため、数量は連結期間の開催戦換算12.5に統一した。通年22戦で約2.36億ドルと年次プロフォーマに整合する。利益は推計。
MotoGP公式スポンサー
二輪レースのタイトル広告や公式パートナーの商業権を売る。
| 数量親会社に連結された開催戦換算(戦) | 価格連結対象1戦当たり協賛収入(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.5 | 0.03 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 23.0 | 0.06 | 1 | 0 |
取り方:MotoGP2025年連結売上3.25億ドル×スポンサー構成比12.7%=0.41億ドル。実際の契約数・契約単価は非開示なので、延べ開催戦相当で数量と価格を規格化した。広告代理店の制作受託額ではなく、自社のレース権利である。利益は配賦推定。
MotoGP周辺レース・VIP体験
世界スーパーバイク選手権、Moto2、Moto3、VIP Villageとライセンスの売上である。
| 数量親会社に連結された開催戦換算(戦) | 価格連結対象1戦当たり周辺収入(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.5 | 0.03 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 23.0 | 0.05 | 1 | 0 |
取り方:MotoGP売上の残り12.4%を約0.40億ドルと推計。2025年通年プロフォーマ5.73億ドルの同一構成比を当てると約0.71億ドル。2026年にはQuintへのVIP業務委託で総額ではなく純額認識となるため、数量より実効単価に影響する。利益は配賦推定。
旧Quint連結分と残存賃貸
2025年末に分離したQuintの連結売上を示す調整的な区分で、将来はラスベガスの賃貸などが残る。
| 数量連結対象事業ポートフォリオ(件) | 価格対象事業の収入(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 2.84 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.30 | 0 | 0 |
取り方:2025年のCorporate and other売上4.14億ドルから連結消去1.30億ドルを差し引いた2.84億ドル。Quintは2025年12月15日にLiberty Liveへ分離し、2026年1~6月の残存賃貸等の連結純売上はほぼゼロであるため、先行きは売上を大幅に減らす。営業利益は本社費に集約。
リスクと懸念
放映権と開催権の再交渉
F1の放映権は通常3~5年、開催権も複数年で更新される。2030年代にアップルやスカイなど大口顧客が再入札を見送り、権利料の上げ幅が物価を下回れば、唯一の大会名義を持っていても現金収入は伸びない。特に開催数は原則24戦前後に限られ、数量で価格下落を補いにくい。契約更新の年額と地域別の視聴者数を必ず組み合わせて監視する。
MotoGP買収の負債・のれんと支払利息
2025年に84%を約36.6億ドルで買ったMotoGPは、残る16%が非支配持分である。2026年6月のMotoGP純負債倍率は約4.5倍で、買収無形資産の償却を差し引くとGAAPの利益はまだ薄い。連結純負債も大きく、借り換え金利が5.75%程度に落ち着かない場合や二輪の人気が下がる場合には、純利益と正味還元を同時に減らす。
FIA・FIMとの関係とチーム賞金の増加
F1の商業権は2110年まで続くが、競技規則や安全基準、開催日程の承認権はFIAが持つ。2030年までのコンコルド協定でチームとの協調は見える一方、賞金分配の負担は強く残る。2026年の新規参戦チームも含め分配条件が変われば、放映契約の増収がそのまま株主に帰属しない。MotoGPでもメーカー・チームとの2031年までの合意を再更新する必要がある。
気候・地政学とレース開催の中止
2026年は中東の開催変更でF1が23戦の想定となり、四半期の売上が開催数の期ずれで大きく変動した。紛争、航空燃料や物流費の上昇、異常気象、開催地の財政難が続けば、開催都市が契約を見直し、スポンサーの露出も減る。2020年のようにイベントそのものがなくなれば固定費と借金だけが残るため、恒常的な営業利益率まで引き下げる必要がある。
複数種類株と転換社債による少数株主の不利
FWONKのC種株には議決権がない一方、B種株の大株主は議決権の約49%を保有する。Liberty Liveの分離など過去の再編は税制面の利点があっても、少数株主には持分の比較を難しくする。2026年8月には約6.9億ドルの転換社債を発行した。株式で決済した場合の希薄化を自社株買いの総額から差し引き、正味還元でみるべきだ。
AIエージェント代替と観戦・協賛の価値
F1とMotoGPは人月請負や席課金の業務ソフトではなく、競技の独占権と現地体験を売るため、AIエージェント代替の直接的な対象ではない。公式スポンサーの収益も広告制作・運用の受託ではなく、競技を見てもらう場所を貸す権利収入だ。ただし生成AIによる短い動画の再利用や配信経路の変化で視聴接点が分散すれば、スポンサー単価が物価に追いつかなくなる可能性はある。
今後の分かれ目
- F1が開催数24戦前後を維持し、次の放映権更改で年額料金が年5%超伸びる
- 中立のF1放映権単価の10年倍率1.7を引き上げる。視聴者数も維持されるなら、やや楽観の可能性を高める。
- 2027年以降、MotoGPの年間営業利益が買収償却込みで1億ドルを安定して超える
- 二輪の新市場開拓と買収資本の回収が進んだと判断する。中立のMotoGP利益率と正味還元を改善する。
- 中東などの大会中止が連年発生し、F1の開催が21戦以下に落ちる
- 開催権料とホスピタリティの数量を下げ、やや悲観の確率を上げる。2026年の単なる期ずれと恒久減少は区別する。
- チームとの新たな分配協定で賞金プールの取り分が継続的に拡大する
- 放映権・スポンサー増収から営業利益に残る割合を下げる。独占権が続いても長期のROEと正当化PERが低下する。
- 連結純負債倍率が2倍未満に下がり、株式報酬控除後の継続還元が年5億ドルを超える
- 正味還元の10年累計を増やし、株主に届く現金への確信を強める。ただし高値での自社株買いを手放しで評価しない。
- MotoGPの観客と世界放映局が減り、大幅なのれん減損が発生する
- 二輪の売上だけでなく累計純利益と純資産を下げる。権利の税後売却価値を見直して悲観の床を再検証する。
見ておくもの
- F1の実開催戦数と年間開催権収入、各大会の契約年限
- F1放映契約の更新単価、Apple TVの実視聴時間とSky等の更改
- F1公式スポンサー売上比率と新規・更新契約の年額
- チーム賞金分配額とF1のGAAP営業利益率
- MotoGPの通年売上、GAAP営業利益、観客動員と放映局数
- 連結純負債倍率、MotoGP単体の借入条件と転換社債の決済方法
- 正味の配当・自社株買い(株式報酬・増資分控除後)とのれん減損
- FIA/FIM・コンコルド協定の更新と国際情勢による欠場
倍率と資本コストの決め方
先に公式10-KにあるF1収入の開催権26.7%、メディア31.3%、協賛21.7%を切り分けた。MotoGPは2025年7月取得で連結半年分のため、同年のプロフォーマ通年売上5.73億ドルと22戦で戦数当たり収入を確認した。2035年の数量、契約単価、チーム分配後の営業利益、GAAP純利益を積み、現在の株価や過去・同業PERは倍率の根拠にしていない。kは8%、F1とMotoGPの権利による強い堀はRONICの残存率2/3に反映し、中立PER13.3倍は式上限14.02倍の約95%。売却資産の悲観床は過去のPBRではなく商業権の税後換金額から出した。台帳の株数2.58億は会社2026年4月開示の約2.507億より2.9%多く、外部時価総額との差は主に株数と観測日の違いである。米国のASC842ではリース負債が既に貸借対照表に載るため、家賃を無視した純現金評価はしない。結果が割高でも価格に合わせて成長や確率を逆算していない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に4つのqualityの合計0.0%を加えて8.0%。存続企業の前提には重大な疑義がなく、上乗せは0。政治・買収・議決権構造は確率と事業別の損益に入れ、kへ重複して足さない。