結論
ベライゾンは、米国で約 1.4 億の無線接続を持つ大手 3 社の 1 つで、光ファイバーと固定無線のブロードバンド、法人通信を加えた総合通信会社である。2025 年は売上 1,382 億ドル・営業利益 316 億ドル(営業利益率 22.9%)・純利益 172 億ドル・FCF 201 億ドルで、2026 年の FCF は 215 億ドル以上(前年比 +9〜10%)を見込む。2025 年 10 月に就いたダン・シュルマン CEO のもとで、約 1.5 万人の人員削減、年 50 億ドルの費用削減、「中身のない値上げ」の停止、2026 年 1 月のフロンティア買収(約 200 億ドル、光ファイバー 3,000 万世帯超)を進め、解約の増えた会社を立て直している。
事業は必需品で景気に強いが、成長は物価を下回る。無線の 1 件あたり収入は、ティーモバイルとケーブル会社の値下げに押されて実質で下がり続け、純負債は時価総額の 85% に達する。中立の筋書きでは、2035 年の売上は約 1,950 億ドル・純利益約 250 億ドルで、倍率は利益ベースの正当化 PER で約 12.2 倍(k 8.5%=基本 8.0%+quality +0.5%、のれん込みの帳簿の ROE 17% が先で k へ半分薄れる、g 3%、寡占の安定と料金競争・借金を合わせて式の 85%)。資本コスト 8.5% で割り引くと、確率を加重した本質価値は今の時価総額(1,895 億ドル)の約 1.25 倍で、やや割安の側に出る。成長の物語ではなく、配当 6% 台と自社株買いで株主に返す寡占の事業が、今の値段より安く買える、という結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在するか」と問う。無線の接続は人の生活の必需品になり、通信が消えることはない。ただし「今より強いか」には、強いとは言えない。堀は、全国の周波数免許と網、家族契約の切り替えの費用にあり、新規参入は難しい。一方で価格を決める力は弱く、ケーブル会社の MVNO と衛星に狭められる側にある。堀は広がるより、守る事業である。
オーナー利益は、純利益 172 億ドルより、FCF 201 億ドルのほうがむしろ大きいが、設備投資が毎年 160 億ドル超かかり、成長のための再投資というより網の維持の費用である。株主のものになる利益は、FCF から設備投資の成長分を引いた 130〜150 億ドルほどが現実的で、時価総額の約 7〜8%。借金が重く(純有利子負債は時価総額の 85%)、金利が上がると株主の取り分が減る。
資本配分は、周波数とフロンティアの買収で借金を積んだ過去がある。新体制は借金返済と自社株買いを優先し、費用削減を進めており、方向は正しい。安全域は、配当 6% 台と今の PER 11 倍にある。楽観でも悲観でも、払う値段に対して配当と自社株買いの利回りが高く、悲観でも 3 割ほどしか下がらない。成長を当てにせず、配当で回収する事業なので、予測のしやすい部類。確信度は中程度に高い。
何で稼ぐ会社か
売上の約 8 割が消費者部門(個人の無線・光ファイバー・固定無線)、約 2 割が法人部門(企業・官公庁の無線・ネットワーク・IoT)で、2025 年の法人の売上は 291 億ドル。収入の中心は無線の月額料金(ポストペイドの電話・タブレット・IoT)で、2026 年 4〜6 月のモビリティとブロードバンドのサービス収入は 234 億ドル(前年比 +2.8%)、年末に +4% へ上がる見通しである。端末の売上も大きく、2026 年 4〜6 月の総売上が前年比 -0.7% だったのは端末売上の減による。
ブロードバンドは、光ファイバー(従来の Fios に、2026 年 1 月 20 日に完了したフロンティア買収を加えて 3,000 万世帯超)と固定無線(FWA)が柱で、2026 年 4〜6 月の純増は 34.8 万件(FWA 19.3 万・光 15.5 万)、両者の接続は約 1,710 万件になった。無線とのセット契約が解約を抑え、1 件あたりの収入を上げる狙い。
稼ぎ方は、全国の周波数免許と基地局網という巨大な固定資産に対し、契約者を載せて薄く収入を積むもので、設備投資は 2026 年に 160〜165 億ドル(2025 年のフロンティア合算より約 40 億ドル減)。営業利益率が約 23% と高いのは、網の限界費用が小さいため。法人はネットワーク・セキュリティ・IoT の複数年契約で、利益率は低め。固定のコスト(人員・店舗・網)が大きく、契約者の増減と値上げの通りやすさが利益に大きく効く。
優良さと弱いところ
優良さは、大きさと必需性にある。全国の無線網と周波数免許は新規参入が事実上できない参入障壁で、ケーブル会社は MVNO(他社網の借り受け)でしか入れない。契約者は電話番号・端末・家族の契約をまとめて持つので切り替えの費用もあり、利益率(営業利益率 22〜24%)と FCF(年 200 億ドル超)は景気に左右されにくい。
弱い所は 3 つ。1 つ目は価格を決める力で、ティーモバイルは網の質と純増で先に走り、ケーブル会社の格安 MVNO が料金を引き下げている。CTIA によると無制限プランの実質価格は前年に 10% 超下がった。2 つ目は顧客の満足で、2025 年のポストペイド電話の解約率は 0.98%(前年 0.88%)に上がり、値上げ(「中身のない値上げ」)が顧客を怒らせた。3 つ目は借金で、純無担保負債 1,287 億ドル(EBITDA の 2.5 倍)に、リース等を含む純有利子負債 1,623 億ドルを抱え、自己資本比率は 26%。ROE 16% は借金で高く見えている面がある。
ROE は 12〜18%。資本効率は高いが、設備投資が毎年売上の 12% 超かかり、FCF は純利益より小さい年が多い。経営はシュルマン CEO のもとで費用と顧客体験の立て直し中で、結果はまだ半分しか見えていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の無線は、大手 3 社(ベライゾン・エーティー・アンド・ティー(AT&T)・ティーモバイル(T-Mobile))の寡占で、契約者数はほぼ 3 等分(ベライゾンが僅かに先頭、推定)。市場は飽和し、無線の接続数は 2025 年末で約 6 億(うち 46% は IoT・タブレット)、1 接続あたり月収入は 2007 年の 49 ドルから 33 ドルへ 3 分の 1 減った。電話の純増は人口の伸び(年 1% 弱)しかなく、増える分はケーブル会社の格安 MVNO(チャーター・コムキャスト)が取り、3 社の取り合いが続く。
成長の場は固定のブロードバンドへ移った。ケーブル会社のブロードバンドは固定無線と光ファイバーに契約者を奪われ(チャーターは 2026 年 1〜3 月に 12 万件減)、通信 3 社は「無線+光ファイバー」の抱き合わせで攻める。エーティー・アンド・ティーは自社の光ファイバー契約者の約 4 割が無線も契約し、ベライゾンもフロンティア買収で同じ型に入った。
構造の変化は、衛星直接通信(スターリンク)が地方の弱い所を取る可能性と、5G から 6G への設備投資、AI による網の運用効率化。規制は FCC の周波数割り当てと買収審査、農村補助金。業界ノートの中立の置き方は、10 年で無線収入 年 +3〜3.5%・設備投資が重く FCF の伸びは収入より遅い、というもの。ベライゾンはこの見方に沿って置いた。
資本政策と M&A
還元は、配当(2025 年 115 億ドル、約 20 年連続の増配だが増配幅は小さい)と、2026 年に再開した自社株買いが柱。3 年で 250 億ドルの枠があり、2026 年は最大 45 億ドル(上半期は 35 億ドル)。2026 年上半期の還元は 94 億ドル。FCF 215 億ドル以上に対し、配当 115 億ドル+自社株買い 45 億ドルで約 160 億ドルが還元、残り約 55 億ドルが借金返済に回る計算で、配当の余力は十分。
M&A は、2021 年の周波数(C バンド)の約 450 億ドルと、2026 年 1 月のフロンティア買収(約 200 億ドル)が大きい。周波数の投資で 5G の網の質を確保したが借金が膨らみ、フロンティアで光ファイバーを手に入れた(営業費用シナジー 年 10 億ドル超を 2028 年までに)。バリュー投資の目では、買収が収入の伸びを買ったのか、借金を積んだだけか、まだ答えが出ていない。今後は借金の返済を優先し、大きな買収は当面ない見込み。他社に買われる可能性は事実上ない(時価総額 1,895 億ドル)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ベライゾンは、全国の無線網と周波数という参入障壁の大きい資産で、年 200 億ドルを超える FCF を生む。新しい経営陣は 2025 年に 15,000 人を減らして 2026 年に費用 50 億ドルを削り、「中身のない値上げ」をやめて解約率を下げる戦略に切り替えた。その成果は数字に出始めている:2025 年 10〜12 月のポストペイド電話の純増 61.6 万は 2019 年以来で、2026 年 4〜6 月も 5 年ぶりの良さ(18.4 万)。サービス収入の伸びは 4〜6 月に +2.8%、年末に +4% の見通しで、会社は 2 四半期続けて見通しを引き上げた。
フロンティア買収で光ファイバーが 3,000 万世帯超に広がり、無線との抱き合わせ率が上がれば解約が減る。エーティー・アンド・ティーでは光ファイバー契約者の約 4 割が無線も契約し、同じ型をベライゾンも使える。設備投資は 2026 年に 160〜165 億ドルへ 40 億ドル減り、FCF が増える。PER 11 倍は、FCF 利回り 11%・配当利回り 6% 台に対して安く、10 年で収入が物価並みに伸びなくても、倍率が 14 倍に戻るだけで十分な収益になる。借金は EBITDA の 2.5 倍と、通信大手として許容範囲で、過去に返済した実績がある。
慎重な見方
無線は飽和し、1 件あたり月収入は 2007 年から 3 分の 1 減った。電話の純増は人口の伸びしかなく、ケーブル会社(チャーター・コムキャスト)の格安 MVNO が毎年契約者の数パーセントを取り、ティーモバイルは網の質と純増で先に走る。無制限プランの実質価格は前年に 10% 超下がった。「値上げをやめる」ということは、収入が物価を下回る伸びで固定化するということで、費用削減 50 億ドルも、解約を防ぐ値引き・特典・店舗の人員に戻る。アナリストの間でも、削減分が解約防止の費用に消える疑いが残る。
借金は純無担保負債 1,287 億ドルで、リース等を含めると純有利子負債は 1,623 億ドル(時価総額の 85%)。借り換えの金利が 5.75% なので、利払いは 3 年で 17 億ドル、10 年で 28 億ドル増え、それが純利益を直接食う。設備投資は光ファイバーと 5G の増強で年 160 億ドル超が続き、FCF は純利益より小さい。スターリンクの衛星直接通信が地方を取り、ケーブル会社が都市部を取れば、10 年後に優良な寡占は崩れる。PER 11 倍は今の借金と構造的な縮小に対して妥当で、安いのではなく安さに理由がある。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分のほうが少し強い。費用削減と純増の戻りは実績が出始めており、配当利回り 6% 台は、成長が鈍くても資本コスト 8.5%(基本 8.0%+quality +0.5%)に対して十分に安い。ただし弱気の指摘(価格競争・重い借金・設備投資)は構造的で、解消しない。そこで確率は、中立 33%・やや楽観 23%・楽観 12%(計 68%)に対し、やや悲観 20%・悲観 12%(計 32%)と、悲観を普通の通信より厚くした。結論は、成長の物語ではなく、安定した寡占の事業をやや割安に買う話として、やや割安。ただし差の多くは、利益に対して今の時価総額が小さいことと、配当と自社株買いの積み上げから来る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 69.57 ドル2,943 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 38.13 ドル1,613 億ドル)。 今の値に割り戻すと 56.13 ドル2,375 億ドル、今との差 +24.2%、 期待の年率 +9.1%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 100.55 ドル4,254 億ドル | 48.45 ドル2,050 億ドル | +229.6% | +12.7% | 17.88 ドル756 億ドル |
| やや楽観 | 23% | 88.24 ドル3,734 億ドル | 43.72 ドル1,850 億ドル | +192.0% | +11.3% | 30.35 ドル1,284 億ドル |
| 中立 | 33% | 73.36 ドル3,104 億ドル | 39.94 ドル1,690 億ドル | +150.7% | +9.6% | 37.39 ドル1,582 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 51.64 ドル2,185 億ドル | 35.45 ドル1,500 億ドル | +92.7% | +6.8% | 17.42 ドル737 億ドル |
| 悲観 | 12% | 22.24 ドル941 億ドル | 16.54 ドル700 億ドル | −14.2% | −1.5% | 4.65 ドル197 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 69.57 ドル2,943 億ドル | 38.13 ドル1,613 億ドル | +138.3% | +9.1% | 107.70 ドル4,557 億ドル |
今の株価時価総額 45.20 ドル1,912 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 12% 解約率と料金が両立し、光と無線の抱き合わせで堀が広がる 利益 317 億ドル · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 100.55 ドル4,254 億ドル
10 年間、解約率が業界で最も低い水準に下がり、1 件あたり収入は年 3%(10 年 1.34 倍)で上がる。無線と光ファイバー・固定無線の抱き合わせ比率が 5 割を超え、消費者の接続数は約 1.38 億件。ケーブル会社の MVNO は一定のシェアを取るが、全体の価格を壊さない。営業利益率は消費者 27%・法人 23%。設備投資は光ファイバーの敷設が一巡して売上比 11% 台に下がり、FCF と自社株買いが増える(10 年で純負債は 20% 減)。10 年後の営業利益は約 550 億ドル、純利益は約 320 億ドル。
- 消費者(無線・光ファイバー・固定無線):数量 138(接続数(百万件))× 価格 1,217(1 件あたり年間収入(ドル))→ 売上 1,679 億ドル・営業利益 453 億ドル。消費者の接続数と 1 件あたり年間収入
- 法人(無線・ネットワーク・クラウド通信):数量 37.0(接続数(百万件))× 価格 1,164(1 件あたり年間収入(ドル))→ 売上 431 億ドル・営業利益 99 億ドル。法人の接続数と 1 件あたり年間収入
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.5%(基本 8.0%+quality +0.5%)、g 3.5%(数量横ばい・料金は物価並み)。事業の ROE 21.0%(その時点の純利益 ÷ 帳簿の自己資本。のれん込み)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=14.7%、式の PER=15.3 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 15.8 倍。 置いたのは 13.42 倍(上限の 85%)。3 社の寡占と周波数の許認可で利益は安定するが、料金競争と設備投資の重さ、借金の重さで式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:全国の無線網・法人・光ファイバーの 3 つを持つのは大手 3 社のなかでも少なく、うまくいけば切り替えの費用という堀が広がる。ただし通信は価格を決めにくい事業で、成功の確率は 1 割台。
やや楽観 23% 値上げが物価をやや下回って通り、利益率が上がる 利益 285 億ドル · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 88.24 ドル3,734 億ドル
1 件あたり収入は年 2.7%(10 年 1.31 倍)、接続数は約 1.355 億件。光ファイバー(フロンティアを含む)と固定無線の接続が合計 3,500 万件近くになり、無線とのセット契約が解約を抑える。営業利益率は消費者 26%・法人 22%、営業利益は約 510 億ドル。設備投資は売上比 12% に落ち着く。純利益は約 290 億ドル。借金は元本をほぼ返さず借り換えで回し、FCF は配当と自社株買いに回す。競合ではティーモバイルがなお先を走るが、ベライゾンは網の質で並び、解約率で差を縮めて、無線の契約者の流出が止まった状態が 10 年続く。
- 消費者(無線・光ファイバー・固定無線):数量 136(接続数(百万件))× 価格 1,190(1 件あたり年間収入(ドル))→ 売上 1,612 億ドル・営業利益 419 億ドル。消費者の接続数と 1 件あたり年間収入
- 法人(無線・ネットワーク・クラウド通信):数量 36.5(接続数(百万件))× 価格 1,139(1 件あたり年間収入(ドル))→ 売上 416 億ドル・営業利益 92 億ドル。法人の接続数と 1 件あたり年間収入
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.5%(基本 8.0%+quality +0.5%)、g 3.5%(数量横ばい・料金は物価並み)。事業の ROE 18.9%(その時点の純利益 ÷ 帳簿の自己資本。のれん込み)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=13.7%、式の PER=14.9 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 15.4 倍。 置いたのは 13.10 倍(上限の 85%)。3 社の寡占と周波数の許認可で利益は安定するが、料金競争と設備投資の重さ、借金の重さで式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:費用構造(人員削減・店舗・調達)が早い時期に整い、光ファイバーと固定無線で無線の解約を防ぐ。大手 3 社の寡占が続けば、この筋書きが現実的。
中立 33% 収入は年 3% 台で伸び、利益率は小幅に上がる 利益 254 億ドル · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 73.36 ドル3,104 億ドル
2035 年の売上は約 1,950 億ドル(2025 年の 1.41 倍)。消費者の接続数は約 1.33 億件(年 +1%)、1 件あたり収入は 1.28 倍(年 2.5%、物価の 3.5% を実質で 1% 下回る)。法人は接続数 3,600 万件、1 件あたり 1.30 倍。営業利益率は消費者 25%・法人 21%(2025 年は約 24% と約 20%)で、営業利益は約 470 億ドル。利払いは借り換えで 2025 年より約 35 億ドル増える。純利益は約 250 億ドル。設備投資は光ファイバーと 5G の増強で売上比 12〜13% が続く。配当は年 115 億ドルから緩やかに増え、自社株買いは年 40〜60 億ドル。10 年の還元の合計は約 1,700 億ドル。
- 消費者(無線・光ファイバー・固定無線):数量 133(接続数(百万件))× 価格 1,162(1 件あたり年間収入(ドル))→ 売上 1,546 億ドル・営業利益 386 億ドル。消費者の接続数と 1 件あたり年間収入
- 法人(無線・ネットワーク・クラウド通信):数量 36.0(接続数(百万件))× 価格 1,113(1 件あたり年間収入(ドル))→ 売上 401 億ドル・営業利益 84 億ドル。法人の接続数と 1 件あたり年間収入
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.5%(基本 8.0%+quality +0.5%)、g 3.0%(数量横ばい・料金競争で値上げは物価に届かない)。事業の ROE 17.3%(その時点の純利益 ÷ 帳簿の自己資本。のれん込み)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=12.9%、式の PER=14.0 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 14.4 倍。 置いたのは 12.22 倍(上限の 85%)。3 社の寡占と周波数の許認可で利益は安定するが、料金競争と設備投資の重さ、借金の重さで式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立(10 年:数量 年 +0.5〜1%・1 件あたり収入 年 +2.5%)に、フロンティアの合算分(約 3% の売上)と費用削減の定着を加えた。配当と自社株買いで株主に返す安定した事業、という見方の延長。
やや悲観 20% 価格競争で 1 件あたり収入が物価に届かない 利益 191 億ドル · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 51.64 ドル2,185 億ドル
1 件あたり収入は年 1.8%(10 年 1.20 倍)で、物価を実質 1.7% 下回る。契約者はケーブル会社やティーモバイルに少しずつ奪われ、消費者の接続数は約 1.28 億件。営業利益率は消費者 22.5%・法人 19% に下がる。設備投資は光ファイバーと 5G の増強で売上比 13% 超が続き、FCF が縮んで自社株買いは年 20 億ドル。借金を減らせず、利払いは 105 億ドルになる。純利益は約 190 億ドル。配当は守れるが増配は止まり、借金の返済も進まない。ティーモバイルが網の質と純増で先を走り、ベライゾンは契約者の流出を値引きで止める守りの事業になり、バリュー投資の目では「よく稼ぐが伸びない」会社になる。
- 消費者(無線・光ファイバー・固定無線):数量 128(接続数(百万件))× 価格 1,090(1 件あたり年間収入(ドル))→ 売上 1,395 億ドル・営業利益 314 億ドル。消費者の接続数と 1 件あたり年間収入
- 法人(無線・ネットワーク・クラウド通信):数量 35.0(接続数(百万件))× 価格 1,044(1 件あたり年間収入(ドル))→ 売上 366 億ドル・営業利益 70 億ドル。法人の接続数と 1 件あたり年間収入
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.5%(基本 8.0%+quality +0.5%)、g 2.5%(MVNO と衛星で料金が物価を 1% 下回る)。事業の ROE 15.1%(その時点の純利益 ÷ 帳簿の自己資本。のれん込み)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=11.8%、式の PER=13.1 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 13.5 倍。 置いたのは 11.44 倍(上限の 85%)。3 社の寡占と周波数の許認可で利益は安定するが、料金競争と設備投資の重さ、借金の重さで式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:ケーブル会社の格安 MVNO と固定無線の拡大で、無線の 1 件あたり収入が実質で年 1.5% ずつ下がり続けるのは十分ありうる(実際、無制限プランの実質価格は前年に 10% 超下がった)。2 割。
悲観 12% 衛星・ケーブルに代替され、優良な通信会社ではなくなる 利益 80 億ドル · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 22.24 ドル941 億ドル
1 件あたり収入は年 0.5%(10 年 1.05 倍)しか上がらず、接続数は約 1.18 億件に減る。営業利益率は消費者 17%・法人 14%。設備投資が減らず、FCF が縮んで配当を減らし、自社株買いは止まる。借換金利に上乗せがつき、利払いは 115 億ドル。純利益は約 80 億ドル。もう優良とは言えないが、周波数免許と全国網の資産は残り、自己資本の 0.9 倍が床になる。ケーブル会社は MVNO で都市部の契約者の 2 割近くを取り、衛星が農村の接続を奪って、全国網という堀が薄れる。法人もクラウド事業者の通信サービスに押され、10 年前の寡占の利益率はもう残らない。
- 消費者(無線・光ファイバー・固定無線):数量 118(接続数(百万件))× 価格 953(1 件あたり年間収入(ドル))→ 売上 1,125 億ドル・営業利益 191 億ドル。消費者の接続数と 1 件あたり年間収入
- 法人(無線・ネットワーク・クラウド通信):数量 32.0(接続数(百万件))× 価格 925(1 件あたり年間収入(ドル))→ 売上 296 億ドル・営業利益 41 億ドル。法人の接続数と 1 件あたり年間収入
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 8.5%(基本 8.0%+quality +0.5%)、g 0.0%(構造的に負けて成長は価値を足さないので見込まない)。事業の ROE 5.5%(その時点の純利益 ÷ 帳簿の自己資本。のれん込み)。 事業の ROE 5.5% が k 以下なので PER の上限は 1÷k=11.8 倍。 置いたのは 11.76 倍(上限の 100%)。構造的に負けて利益が小さい筋書きなので、全国網と周波数免許の資産価値(自己資本)でなく、その筋書きの稼ぐ力(純利益 ÷ k)で測った。ROE が k 以下なので PER の上限は 1÷k。自己資本は期首 1,045+純利益の合計 1,116−還元 700=約 1,461 億ドル。
確率:10 年の悲観は構造的な負け筋。スターリンクの衛星直接通信が地方を、ケーブル会社の MVNO が都市部を取り、光ファイバー競争で設備投資が減らない。大手 3 社の寡占が崩れる確率は 1 割台。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
消費者(無線・光ファイバー・固定無線)
個人向けの無線(ポストペイド・プリペイド)、光ファイバー(Fios とフロンティア)、固定無線(FWA)の契約収入と端末売上。
| 数量接続数(百万件) | 価格1 件あたり年間収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 120 | 908 | 1,090 | 258 |
| 10 年後 中立 | 133 | 1,162 | 1,546 | 386 |
取り方:消費者部門の売上は連結 1,382 億ドルから法人 291 億ドルを引いた約 1,090 億ドル(推定)。接続数は、ポストペイド・プリペイドの無線とブロードバンド(約 1,100 万件)を合わせた約 1.2 億件(推定)と置き、1 件あたり年間収入は 1,090 億ドル ÷ 1.2 億件。営業利益は消費者部門 258 億ドル(推定)、法人 58 億ドルで全社 316 億ドルに合わせた。部門別の営業利益は開示が取りにくく、推定。
法人(無線・ネットワーク・クラウド通信)
企業・官公庁向けの無線、ネットワーク、セキュリティ、IoT、固定無線。
| 数量接続数(百万件) | 価格1 件あたり年間収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 34.0 | 856 | 291 | 58 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 1,113 | 401 | 84 |
取り方:法人部門の 2025 年の売上は 291 億ドル(連結の約 21%、年次報告書)。無線のポストペイド接続 約 3,100 万、ブロードバンド約 300 万を合計した約 3,400 万件(推定)で割った 1 件あたり年間収入。営業利益 58 億ドルは推定。
リスクと懸念
無線の料金競争(ケーブル会社の MVNO・ティーモバイル)
ケーブル会社の格安 MVNO が毎年契約者の数パーセントを取り、ティーモバイルは網の質と純増で先に走る。無制限プランの実質価格は前年に 10% 超下がった。1 件あたり収入が実質で年 1.5% 下がり続けると、収入は物価を大きく下回る。
解約率の悪化と、顧客体験の立て直しの失敗
2025 年のポストペイド電話の解約率は 0.98%(前年 0.88%)。「中身のない値上げ」への反発と、人員 1.5 万人削減によるサービス品質の低下で、立て直しが逆に解約を増やすリスクがある。解約率 0.1% で年間約 100 万回線が動く。
借金の重さと金利
純無担保負債 1,287 億ドル(EBITDA の 2.5 倍)、リース等を含む純有利子負債 1,623 億ドル、自己資本比率 26%。借換金利 5.75% で、利払いは 3 年で 17 億ドル、10 年で 28 億ドル増える。金利が下がらない世界では、株主の取り分が借金の利払いに吸われる。
設備投資が減らず、FCF が縮む
光ファイバー(フロンティア統合)・5G の増強・衛星直接通信への対応で、設備投資が年 160 億ドル超(売上比 12% 超)から下がらないと、FCF は純利益より小さい年が続く。配当 115 億ドルの余力が縮み、自社株買いが止まる。
衛星直接通信(スターリンク)と固定無線の代替
スターリンクが地方の無線・固定を取り、ケーブル会社が固定無線で光ファイバーの契約を抑えると、フロンティア買収の光ファイバー投資の回収が遅れる。10 年の構造的な負け筋で、確率は低いが起きれば全国網という堀が崩れる。
フロンティア統合の実行と規制
約 200 億ドルの買収で、営業費用シナジー(年 10 億ドル超)が 2028 年までに実現しないと、買収額に見合わない。FCC の周波数・買収審査、農村補助金、通信の賃貸・料金規制の変更、顧客データの訴訟も、利益に効く。
今後の分かれ目
- ポストペイド電話の解約率が 0.9% 以下に下がり、純増が年 75 万を超える
- 強気の筋書き(やや楽観・楽観)の確率を数ポイント上げる。サービス収入が +4% を保てば、10 年の 1 件あたり収入の置き方(年 2.5%)も上げてよい。
- ケーブル会社の MVNO の純増が加速し、ベライゾンの 1 件あたり収入が前年比で下がる
- やや悲観の確率を上げ、10 年の 1 件あたり収入を 1.20 倍の筋書きを中立へ近づける。
- FCF が 215 億ドルを上回り、純無担保負債が EBITDA の 2.2 倍を下回る
- 自社株買いの余力が増え、10 年の還元の置き方(約 1,700 億ドル)を上げてよい。
- 金利(10 年国債)が 6% を超えて長く続く
- 借換コストが 10 年で 28 億ドル以上増え、純利益と倍率の両方が下がる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- フロンティアの光ファイバーの契約が想定を下回り、設備投資が 170 億ドル超に戻る
- FCF の伸びが止まり、配当の余力が縮む。自社株買いの停止と、倍率の低下(PER 10 倍)に備える。
- スターリンクの衛星直接通信が地方の通信を本格的に代替し始める
- 地方の契約者と法人の IoT 収入が削られ、10 年の悲観(構造的な負け)の確率を 1 割台後半に上げる。
見ておくもの
- ポストペイド電話の純増と解約率(四半期)
- モビリティ+ブロードバンドのサービス収入の伸び(目標:2026 年末 +4%)
- FCF(年 215 億ドル以上)と設備投資(160〜165 億ドル)
- 純無担保負債の EBITDA 比(2.5 倍からの低下)
- ケーブル会社の MVNO・ティーモバイルの純増と 1 件あたり収入
- 光ファイバー・固定無線の純増と、無線とのセット契約率
- フロンティアの営業費用シナジー(2028 年までに年 10 億ドル超)
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額を見る前に、セグメントごとに接続数 × 1 件あたり年間収入で 2035 年の売上と営業利益を積み上げ、純利益を出してから倍率を決めた。倍率は利益ベースの正当化 PER:k 8.5%(基本 8.0%+quality +0.5%)、のれん込みの帳簿の ROE(15〜21%。フロンティアののれんを除いた ROE は使わない:光の伸びは買収で得たもの)が先で k へ半分薄れる RONIC、g 2.5〜3.5% の式 ×(1+g) の 85% で、10 年後は中立 約 12.2 倍・楽観 約 13.4 倍・やや悲観 約 11.5 倍。重さは g(物価を下回る)と式の 85% に入れた。10 年の悲観は構造負けで ROE が k 以下なので、その筋書きの稼ぐ力(純利益 ÷ k)で測った。今の時価総額に近い水準の筋書き(やや悲観・悲観)も合わせて 3 割持たせ、割安に寄せすぎないようにした。確率の加重で今の時価総額より高く出たのは、価格を中立にした収入と費用削減の利益を数えた結果である。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k は基本 8.0% + quality +0.5% = 8.5%。通信は景気で振れにくく(循環 0)、寡占でも値上げは物価に届かず(値決め 0)、寿命は普通(0)で、上乗せは純負債が時価総額の約 86% と重い点(debt +0.5%)だけ。料金競争・フロンティア統合の失敗は k に足さず、筋書きと確率(悲観を厚く)で表した。事業は傾いていないので上乗せは 0。