結論
ネクスターは米国最大級の地方テレビ局グループである。筆者の結論は割高だ。放送局の規模は飛躍的に大きくなったが、視聴者が配信へ移る速さと買収後の借金を考えると、10年先に株主が受け取る利益には限界がある。
2026年3月、同社はTEGNAの買収を完了した。放送局は265局、進出市場は132へ広がった。しかし4月には連邦地裁が両社の事業統合を差し止めた。2027年7月の本案審理まで、買収で期待した費用削減や交渉力の強化を自由には実行できない。2026年6月末の純有利子負債は約115億ドルに達し、同社の株式時価総額の2倍を超える。
事業がすぐ消えるわけではない。地元ニュース、スポーツ、選挙広告、テレビ局の再送信権には今後も需要がある。既存局は長年にわたり再送信料の値上げを通してきた。ただし有料テレビの解約が進み、2025年には再送信料の総額がほぼ横ばいとなった。値上げの力はまだあるが、数量の減少に追いつかなくなりつつある。
2035年の中立では売上約67.6億ドル、営業利益約13.7億ドル、純利益約7億ドルを見込む。買収前の2025年より売上は大きいものの、買収先を含む2025年の合算売上約76.6億ドルより小さい。配信への移行で既存事業が縮むためだ。悲観側の確率を44%とし、10年後の時価総額と途中の正味還元を割り引くと、本質価値は約35.3億ドルとなる。2026年10月23日の時価総額約51.4億ドルを約31%下回る。配当利回りだけでは、この差を埋められない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、最初に問うべきは10年後もこの会社の顧客が存在するかである。地方ニュースとスポーツを伝える仕事は残る。だが、それを地上波局と有料テレビ経由で売る形が今の規模で続く保証はない。番組が必要とされることと、現在の流通経路で十分な利益を得られることは別である。
オーナー利益を見ると、2025年のGAAP純利益約0.9億ドルに対して自由現金収入は約7.4億ドルあった。この差には買収で生じた無形資産の償却など、現金支出を伴わない費用が含まれる。ただし償却をそのまま永久に足し戻してはいけない。系列局契約や番組の価値を維持するには更新交渉と新たな支出が必要であり、買収を続けるなら取得費用も実質的な再投資となる。
TEGNAを買収した資本の増分利回りが9.5%を超えるには、再送信料の交渉力向上、広告販売の効率化、費用削減が実際の現金利益として現れなければならない。買収後の借金はその成果を待ってくれない。短期的な現金収入が豊富でも、借入金を返した残りを自由に使えるかが長期保有の条件だ。
筆者は、この事業を完全には理解できない会社とは考えない。顧客、契約、費用の構造は比較的明瞭だ。しかし10年先の有料テレビ加入者数と、裁判所が認める統合の範囲は予測しにくい。強い堀の企業に払う値段を、この会社にそのまま払うべきではない。十分な安全域がなければ、規模の大きさと配当だけで長く持つ理由にはならない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、テレビ局の放送内容をケーブル、衛星、インターネット経由の有料テレビ事業者に届ける際の再送信料である。視聴者が料金を払う相手はコムキャストやディレクTV、ユーチューブTVなどの配信事業者だが、ネクスターが直接交渉するのはそれらの事業者である。CBS、NBC、ABC、FOXなどの番組と地域ニュースを放送する権利が、その交渉の土台になる。
もう一つの柱は広告である。地元の自動車販売店、医療機関、小売店、大手消費財企業などが広告枠を買う。放送局は視聴時間と広告枠の単価で稼ぐため、景気だけでなく視聴者の年齢構成が効く。選挙の年には候補者や政治団体の出稿が急増する。2024年の旧ネクスターの政治広告収入は約4.9億ドルだったが、非選挙年には大きく減る。
全国向けにはニュース専門局ニュースネーション、政治情報サイトのザ・ヒル、地上波ネットワークのCWを持つ。CWはNASCAR、大学スポーツ、WWEなどを増やし、RokuやESPNのアプリでも番組を届け始めた。これらは放送局の外側で視聴者と広告主を増やす取り組みだが、制作費と番組権利料が先に必要になる。
TEGNAの買収で地方局64局に加え、インターネット接続テレビ向け広告を扱うプレミオンも手に入れた。プレミオンは自社局の広告枠を売るだけではなく、他社の配信媒体の広告枠を買い付けて広告主へ提供する。したがって、媒体そのものを持つ事業より広告運用の自動化に弱い。
2025年の単独売上は約49.5億ドルで、再送信料が29.2億ドル、広告が19.6億ドル、その他が0.7億ドルだった。TEGNAの2025年売上27.1億ドルを足した単純合算では76.6億ドルとなる。ただし買収は2026年3月に成立したので、添付の2025年実績にTEGNAを過去へさかのぼって足してはいない。
優良さと弱いところ
堀、つまり競争相手が簡単には奪えない強みは、地方局の免許、系列局契約、地域ニュースの取材網にある。同じ地域でCBSやFOXの主要番組を受信したい視聴者にとって、放送局は完全には代替できない。大手ネットワークや有料テレビ事業者との交渉を多数の局でまとめられることも強みだ。2025年には再送信料に年次値上げがあったが、契約世帯の減少によって全体の収入はほぼ横ばいだった。
この堀は、放送という流通経路の内部では強い。しかし流通経路そのものを選ばなくなる消費者には効かない。ユーチューブ、ネットフリックス、アマゾン、無料のインターネットテレビが視聴時間を奪えば、局を多く持っていても料金の値上げには限界が来る。地方ニュースの信用や取材網は残るが、その視聴者を自社アプリへ連れて来られるとは限らない。
買収を通じた成長力は実証されている。メディア・ジェネラルやトリビューンを取り込み、2020~2022年には高い営業利益率と潤沢な現金収入を生んだ。一方、純有利子負債は2025年末でも63.4億ドルあった。2026年のTEGNA買収でさらに増えた借金を考えると、過去の高いROEを将来の増分投資収益率とみなすことはできない。
2025年のROEは4.5%まで落ちた。買収に伴う資産償却、CWの負担、政治広告の反動などが重なった結果であり、この1年だけで稼ぐ力が消えたとは判断しない。ただし買収後の増分利益が資本コスト9.5%を十分に超えるかは未証明である。堀は普通と評価する。地方局の規模は広がったが、放送事業の寿命に対する防御力は強くなっていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の映像広告市場は、総額が伸びても地方放送局が取り分を維持できる市場ではなくなった。ニールセンによれば2026年8月のテレビ視聴時間の49.6%は配信が占め、放送は17.5%、ケーブルは18.9%だった。ユーチューブだけで視聴時間の15.8%を持つ。ニュースとスポーツは放送を支えるが、それ以外の番組の視聴者は戻りにくい。
米国の有料テレビ加入世帯も構造的に減っている。米議会調査局が示した従来型の多チャンネルテレビ加入世帯は、2015年の約1億から2025年には約4,500万へ減った。地方局の再送信契約は有料テレビ加入世帯を土台とするため、単価を上げても総売上が減る可能性がある。業界の中立見通しである加入世帯の年6%減少は、ネクスターにも厳しい前提となる。
広告の市場は二つの速度で動く。BIAの2026年9月時点の予測では、米国地方広告市場は約1,861億ドル、政治広告を除く部分は約1,764億ドルへ伸びる。しかし伸びを引っ張るのは携帯端末、検索、配信動画だ。2025年の地上波テレビ広告市場は約143億ドルという推計で、旧ネクスターの通常広告はその1割強に相当する。TEGNAを加えれば地上波広告で2割前後の規模になる可能性があるが、広告主が買うのは局数ではなく実際に届く視聴者である。
比較対象はグレイ・メディア、シンクレア、ハースト、フォックスの系列局事業だ。グレイの2025年の通常広告収入は約14.5億ドルと、旧ネクスターの地上波広告推定17.4億ドルに近い。局数ではネクスターが優位でも、広告単価や利益率まで独占できるわけではない。政治広告では、2024年の旧ネクスターとTEGNAを合計した約8.7億ドルが、全米地上波政治広告約45億ドルの2割弱に相当する。
今後10年の主な争いは、地方ニュースの視聴者を自社の配信先へ移す能力と、再送信料の減少をどこまでデジタル広告で補えるかになる。AIによる広告制作費の低下は広告主には朗報だが、制作や運用を手数料で請け負う会社には逆風となる。放送網の集約を容認する規制判断も、当局の方針と裁判所の判断が一致するとは限らない。
資本政策と M&A
資本配分の評価は分かれる。2017年のメディア・ジェネラル買収と2019年のトリビューン買収は全国規模を作り、その後の高い自由現金収入につながった。2020~2024年には配当と自社株買いで大きく還元し、2022年だけで配当約1.5億ドルと自社株買い約8.8億ドルを行った。しかし同じ期間に負債も大きく残り、配当と買い戻しが将来の買収余力を狭めた。
2025年には還元を抑え、配当約2.3億ドル、自社株買い約1.2億ドルとなった。2026年上期は自社株買いを行わず、配当を維持しながら借金の返済を優先している。TEGNA買収の企業価値は約62億ドルで、経営陣は年約3億ドルの費用削減などを狙った。だが2026年4月の統合差止めにより、期待した相乗効果の実現は法廷の判断に左右される。
2026年6月末の有利子負債は約117.4億ドル、現金は約2.2億ドルである。借入契約上の純レバレッジは4.22倍で、財務制限条項までの余裕は無限ではない。2034年満期の7.25%債も発行しており、借金の全額が安い金利で借り換えられるとは考えない。長期の数値目標は約束されておらず、買い戻し再開の金額も確定していない。
少数株主については、普通株が単一クラスであり、創業者に特殊な複数議決権はない。一方、CWの少数持分には売却請求権があり、2026年8月にはその一部が行使された。放送局には変動持分事業体を通じた運営もある。したがって、連結上の資産すべてを普通株主が自由に処分できるわけではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
地上波放送は、配信時代にも価値を失わない。地域ニュース、NFLなどのスポーツ、災害情報、選挙報道には一度に多くの視聴者を集める力がある。ネクスターは265局を持ち、全国の多くの有力市場を押さえた。局の運営費を共通化し、広告の営業網をまとめるだけでも利益率を上げられる。放送局の許認可には参入障壁があり、競合が同じ規模を一から築くことは難しい。
再送信料は、有料テレビ世帯が減る中でも長く値上げできた。コムキャストやディレクTVにとって、主要ネットワークの地方局を外すと顧客から苦情が出る。2025年の横ばいは、値上げ力が消えた証拠ではなく、加入者流出と料金改定の時期が重なった結果とも読める。地上波局は、無料のアンテナ視聴だけでなくインターネット経由のライブテレビにも必要とされる。
買収をめぐる訴訟も、最終的に事業統合が認められれば一時的な障害で終わる。年3億ドルの相乗効果が実現し、重複部門を整理すれば自由現金収入は厚くなる。返済によって利払いが減れば、純利益には営業利益の伸び以上の効果が出る。さらにCW、ニュースネーション、ザ・ヒル、プレミオンを通じて放送局以外の広告を伸ばせる。大規模な買い戻しを急がず、借金を減らしてから還元を増やす判断ができれば、過去の大型買収に匹敵する成功となる。
2026年上期の売上と調整後EBITDAは買収によって増加した。放送局の規模の経済が今後の業績にも反映されれば、長期の株主利益は現在よりかなり大きくなる。
慎重な見方
局数の増加は、視聴者の増加ではない。2026年8月のテレビ視聴時間で配信は約半分を占め、地上波放送は2割を割った。視聴者が有料テレビの契約をやめれば、再送信料の単価を上げても売上は減る。地元ニュースを見たい人も、スマートフォンや無料配信で十分になる可能性がある。地方局が持つ許認可は、視聴者の注意を独占する免許ではない。
買収も危うい。TEGNAは取得した時点から独立運営を命じられ、費用削減や広告営業の統合を進められない。訴訟で事業統合が長く禁止されれば、支払った買収価格と借金だけが先に残る。場合によっては局の売却や再編を迫られる。2026年6月末の純負債約115億ドルは、2025年の単独純負債63億ドルから大きく増えた。利払いが膨らむ局面では、好況年の調整後EBITDAより、現金で返せる借金の額を重視すべきだ。
競争相手も局の売買だけを見ていない。グレイやシンクレアに加え、ユーチューブ、メタ、アマゾンは広告主から見れば直接の競合である。地方テレビの広告枠をまとめても、広告主が求める若い視聴者や購買データを持つわけではない。CWの番組権利料は固定的で、配信向けの投資を増やせば利益を先に食う。
プレミオンの広告買い付けと運用はAIエージェント代替の対象となる。広告主が自動化された仕組みで配信枠を直接買うようになれば、手数料も取扱量も減る。放送の縮小、投資負担、借り換えが同時に起きれば、株主に残る利益は急速に細る。
どちらに重みを置いたか
放送局の許認可と地域ニュースには価値が残るため、事業が短期に消えるという見方は採らない。ただしTEGNAの統合差止めは現実に起きており、配信への視聴時間の移行も数字で確認できる。強気側が成立するには、訴訟の解決、費用削減、デジタル広告の拡大、借金返済がそろって必要だ。慎重な見方の根拠のほうが強いと判断した。楽観側は23%、中立33%、やや悲観と悲観を合わせて44%とする。広告運用のAI代替は数量と長期成長率に反映し、同じ理由で資本コストを重ねて引き上げてはいない。計算結果は本質価値約35.3億ドルで、総合判断は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 234.05 ドル72 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 49.47 ドル15 億ドル)。 今の値に割り戻すと 125.86 ドル39 億ドル、今との差 −26.6%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 9.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 763.30 ドル234 億ドル | 113.98 ドル35 億ドル | +411.7% | +19.8% | 52.64 ドル16 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 485.15 ドル149 億ドル | 87.93 ドル27 億ドル | +234.3% | +14.4% | 97.42 ドル30 億ドル |
| 中立 | 33% | 275.09 ドル84 億ドル | 61.88 ドル19 億ドル | +96.5% | +7.9% | 111.20 ドル34 億ドル |
| やや悲観 | 27% | 40.75 ドル13 億ドル | 22.80 ドル7 億ドル | −62.9% | −11.0% | 17.16 ドル5 億ドル |
| 悲観 | 17% | 23.48 ドル7 億ドル | 6.51 ドル2 億ドル | −82.5% | −17.2% | 5.10 ドル2 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 234.05 ドル72 億ドル | 49.47 ドル15 億ドル | +65.4% | +5.7% | 283.51 ドル87 億ドル |
今の株価時価総額 171.44 ドル53 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 6% 楽観:統合が全面的に認められ、地方放送と配信広告が共存 利益 18 億ドル · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 763.30 ドル234 億ドル
TEGNAの買収をめぐる訴訟はネクスター側に有利に決着し、両社の広告営業、技術設備、番組調達を統合できる。重複費用を整理し、契約交渉の規模の経済を生かして年3億ドル規模の相乗効果をほぼ実現する。必要な局の売却も限定的に終わる。
有料テレビ加入世帯は減るが、配信事業者との契約と料金改定で再送信料を増やす。広告主は地上波と配信を組み合わせて買い、ニュースネーション、CW、ザ・ヒルのデジタル広告が大きく育つ。地方局の広告市場でグレイやシンクレアより高い販売効率を実現する。プレミオンはAIによる運用自動化を受けても、他社媒体の広告取扱量を取得時の規模で維持する。
2035年売上は約102億ドル、営業利益約28.4億ドル、GAAP純利益約18.4億ドルとなる。配当と限定的な自社株買いを合わせた正味還元は10年間で35億ドル。GAAP純利益の累計は、2028年と2032年の選挙広告の山も含め約90億ドルとする。借金返済によって利払いが下がり、堀は放送局の取材網と広告営業網の両方でやや広がる。
- 再送信料・番組配信料:数量 0.6(年間の有料テレビ契約世帯換算(億世帯相当))× 価格 92(契約世帯換算1件当たり年間配信収入(ドル))→ 売上 52 億ドル・営業利益 22 億ドル。TEGNAを含む取得時の契約基盤から数量は減るが、系列局交渉力と年次値上げで単価が伸びる。
- 通常の地上波テレビ広告:数量 1,360(年間広告表示数(億回))× 価格 0.02(広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 28 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場縮小に対し、地域でのシェア維持と広告販売効率向上が勝る。
- 自社保有のデジタル媒体・全国ネットワーク広告:数量 650(年間の自社媒体広告表示数(億回))× 価格 0.02(広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 5 億ドル。CW、ニュースネーション、地方局アプリの視聴者を増やし、デジタル広告シェアを拡大。
- 政治・選挙広告:数量 90.0(年間の政治広告表示数換算(億回))× 価格 0.03(政治広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。2035年は非大統領選挙年だが、局数増加と高単価の地方選挙で底上げ。
- プレミオンの第三者CTV広告買い付け・運用:数量 120(年間広告配信・運用取扱量換算(億回))× 価格 0.02(広告1回当たりの実質取扱収入・手数料換算(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替を受けても取得時推定の数量を維持。AIだけを理由に数量を増やさない。
- 番組制作・鉄塔賃貸・その他:数量 130(年間100万ドルの売上を1単位とする契約換算単位)× 価格 0.01(1換算単位当たり年間収入(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。買収後に増えた設備と鉄塔の賃貸契約を維持。
倍率:2035年GAAP純利益18.4億ドルと自己資本75.6億ドルからROEは24.3%。k9.5%、moat=normalなので超過収益の残存割合は1/2、RONICは16.9%。長期gは1.5%で、再送信世帯の減少を単価と自社媒体の伸びが補う。正当化PERは来期利益基準で約11.39倍、2035年利益に掛ける上限は約11.56倍。統合の成功が実績になる筋書きなので上限の約99%に相当する11.4倍とする。純利益は株式報酬・取得無形資産の償却・利払いを控除したGAAPであり、現金や償却を倍率に二重計上しない。
確率:裁判で統合の自由を取り戻し、年3億ドル規模の相乗効果を実現したうえ、再送信料と自社デジタル広告も伸ばす必要がある。現在の視聴者流出と高い負債を考え、実現確率は6%に抑える。
やや楽観 17% やや楽観:統合費用を抑え、再送信料の減少をデジタル広告で補う 利益 12 億ドル · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 485.15 ドル149 億ドル
TEGNAとの統合は裁判上の条件を伴うが、2020年代末には共通設備や管理業務の効率化を進められるようになる。局の一部を売却し、残る局への投資を集中させる。買収の効果は当初の期待より小さいものの、営業費用の削減と借金返済により利益を押し上げる。
再送信契約の数量は減るが、単価の引き上げで配信料収入の大半を守る。地上波広告はグレイやシンクレアと競争しながらも、地方ニュースとスポーツの広告枠に一定の値段を付けられる。自社デジタル媒体はCWと地方局アプリの視聴者を獲得し、2025年の旧ネクスター単独から大きく育つ。ただしユーチューブやTubiに対して圧倒的な視聴シェアは得られない。
2035年売上は約84.3億ドル、営業利益約20.6億ドル、純利益約11.9億ドルとなる。2028年と2032年の政治広告の好況を含む累計純利益は70億ドルとし、正味還元は27億ドルに抑えて借金を返す。堀は維持されるが、広がるのは一部の地域市場にとどまる。
- 再送信料・番組配信料:数量 0.5(年間の有料テレビ契約世帯換算(億世帯相当))× 価格 90(契約世帯換算1件当たり年間配信収入(ドル))→ 売上 45 億ドル・営業利益 18 億ドル。買収時の合算契約量から減少するが、再送信料の値上げを比較的維持。
- 通常の地上波テレビ広告:数量 1,120(年間広告表示数(億回))× 価格 0.02(広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 21 億ドル・営業利益 5 億ドル。視聴者流出を広告単価と市場シェアの維持で部分的に補う。
- 自社保有のデジタル媒体・全国ネットワーク広告:数量 560(年間の自社媒体広告表示数(億回))× 価格 0.02(広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 4 億ドル。ニュースネーションとCWの配信広告が成長。
- 政治・選挙広告:数量 70.0(年間の政治広告表示数換算(億回))× 価格 0.03(政治広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。非大統領選挙年でも合算した局の広さが一定の出稿を確保。
- プレミオンの第三者CTV広告買い付け・運用:数量 110(年間広告配信・運用取扱量換算(億回))× 価格 0.02(広告1回当たりの実質取扱収入・手数料換算(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替で手数料に圧力がかかる。数量は取得時推定を下回る。
- 番組制作・鉄塔賃貸・その他:数量 120(年間100万ドルの売上を1単位とする契約換算単位)× 価格 0.01(1換算単位当たり年間収入(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。統合後の設備利用効率が向上。
倍率:ROEは11.9÷63.6=18.7%。k9.5%、moat=normalの残存割合1/2によりRONICは14.1%。長期g1.5%は、再送信の実質数量減少を単価上昇と自社配信媒体の成長が部分的に補う前提。正当化PERは2035年利益基準で約11.34倍であり、法的制約と媒体間競争が残るため上限の約98%である11.1倍とする。純利益には取得関連償却、利払い、株式報酬を含めており、借金を時価総額から再度差し引かない。
確率:法的な制約が数年後に緩み、費用削減の相当部分を実現する可能性はある。ただし放送から配信への視聴時間移行は続くため、全面的な成功ほど高い確率にはしない。
中立 33% 中立:放送の縮小を自社デジタル広告が部分的に埋める 利益 7 億ドル · PER 10.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 275.09 ドル84 億ドル
TEGNAはグループに残るが、訴訟と規制上の条件によって、一部の局の売却や経営上の制約を受ける。買収で期待した年3億ドルの相乗効果は全額実現しない。重複設備を一部整理できても、各地のニュース制作費とネットワーク系列契約の費用は残る。
再送信料は契約世帯が減るため、単価を物価並みに上げても合算時点から減収となる。地上波広告では視聴量が減り、広告単価の上昇率も物価に届かない。グレイ、シンクレア、フォックス系の局と広告を奪い合う一方、広告主はユーチューブやメタにも予算を移す。CWや地方局の配信アプリは伸びるが、地上波の失った利益を全額補うほどではない。プレミオンの広告運用取扱量はAIエージェント代替によって取得時推定の約3分の2となる。
2035年売上は約67.6億ドル、営業利益約13.7億ドル、GAAP純利益約7億ドルを見込む。税、残存する借金の利息、少数株主持分を控除した純利益は営業利益の約51%で、過去の中央値とほぼ一致する。2028年と2032年の選挙広告の山を含む10年累計純利益は48億ドルとし、正味還元19億ドルを差し引いて自己資本は49.6億ドルとなる。堀は残るが狭まり、規模拡大の成果は株主の期待ほど大きくない。
- 再送信料・番組配信料:数量 0.4(年間の有料テレビ契約世帯換算(億世帯相当))× 価格 83(契約世帯換算1件当たり年間配信収入(ドル))→ 売上 35 億ドル・営業利益 14 億ドル。取得後の合算契約基盤から数量は約4割減少。料金単価は旧Nexstarの2025年から物価並みの約1.42倍。
- 通常の地上波テレビ広告:数量 1,000(年間広告表示数(億回))× 価格 0.02(広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 19 億ドル・営業利益 4 億ドル。地上波広告市場の実質縮小とデジタル移行を反映。CPMは物価上昇を下回る。
- 自社保有のデジタル媒体・全国ネットワーク広告:数量 420(年間の自社媒体広告表示数(億回))× 価格 0.02(広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 3 億ドル。自社局のサイト、CW、ニュースネーションの視聴量が伸びるが、配信大手の広告単価には届かない。
- 政治・選挙広告:数量 55.0(年間の政治広告表示数換算(億回))× 価格 0.03(政治広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 1 億ドル。2035年は非大統領選挙年。局数増加と物価による単価上昇を反映。
- プレミオンの第三者CTV広告買い付け・運用:数量 80.0(年間広告配信・運用取扱量換算(億回))× 価格 0.02(広告1回当たりの実質取扱収入・手数料換算(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替により数量は取得時推定120の0.67倍、価格は0.90倍。長期gは0%。
- 番組制作・鉄塔賃貸・その他:数量 100(年間100万ドルの売上を1単位とする契約換算単位)× 価格 0.01(1換算単位当たり年間収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。合算した設備の維持と物価上昇により安定した収入。
倍率:GAAP純利益7億ドルを自己資本49.6億ドルで割ると2035年ROEは14.1%。k9.5%、moat=normal、超過収益の残存割合1/2でRONICは11.81%。長期g1.5%は、再送信の契約数が年4%前後減り、単価が年3.5%程度上がる一方、自社デジタル広告が伸びるという数量と価格から導いた。正当化PERは翌期利益基準で約10.91倍、2035年利益への換算上限は約11.08倍。地上波広告と再送信料の構造的縮小、買収後の負債を考え、上限の約96%である10.65倍とする。ROEを売上成長率の根拠にせず、GAAP利益からSBCと取得無形資産償却を戻さない。
確率:TEGNA買収は成立しており、その収入はすでに連結されている。一方、統合差止めと有料テレビの縮小も現実の事実である。規制上の制約が一部続き、費用削減とデジタル広告の成果が限定的に現れる筋書きを中心に据える。
やや悲観 27% やや悲観:訴訟が長期化し、放送の縮小が返済能力を削る 利益 1 億ドル · PER 8.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 40.75 ドル13 億ドル
TEGNAの統合に対する司法上の制約が長引き、事業の分離や一部局の売却を求められる。買収した局を持ち続けても、広告営業や再送信契約を一体化する効果は小さい。経営は借金の返済を優先し、CWへの番組投資や自社デジタル媒体の成長投資を抑える。
有料テレビの契約世帯数は大きく減り、配信事業者も再送信料の値上げに抵抗する。広告主は地上波からユーチューブ、メタ、アマゾンへ予算を移す。競争力のある地域ニュースやスポーツだけが残り、それ以外の時間帯の広告枠は値上げできない。プレミオンはAIエージェント代替により買い付け手数料が縮み、収益性も低下する。
2035年売上は約47.7億ドル、営業利益約7.5億ドルに落ちる。返済が進まないため利払い負担が残り、GAAP純利益は約1.2億ドルとなる。初期の選挙好況で稼いだ利益が後半の減益を補い、10年間の累計純利益は20億ドルにとどまる。株主への正味還元は7億ドルへ縮小する。放送局の免許は残るが、価格決定力と再投資収益率は資本コストを下回る。
- 再送信料・番組配信料:数量 0.3(年間の有料テレビ契約世帯換算(億世帯相当))× 価格 75(契約世帯換算1件当たり年間配信収入(ドル))→ 売上 26 億ドル・営業利益 9 億ドル。有料テレビの解約が進み、系列局契約の値上げも一部しか通らない。
- 通常の地上波テレビ広告:数量 720(年間広告表示数(億回))× 価格 0.02(広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場と自社シェアがともに縮み、広告単価も物価上昇に届かない。
- 自社保有のデジタル媒体・全国ネットワーク広告:数量 330(年間の自社媒体広告表示数(億回))× 価格 0.02(広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。配信広告は増えるが、番組費と競争で利益率が低い。
- 政治・選挙広告:数量 38.0(年間の政治広告表示数換算(億回))× 価格 0.02(政治広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。局の一部売却と競争によって政治広告の取り分も低下。
- プレミオンの第三者CTV広告買い付け・運用:数量 65.0(年間広告配信・運用取扱量換算(億回))× 価格 0.02(広告1回当たりの実質取扱収入・手数料換算(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェントが媒体買い付けと配信管理を代替し、実質数量と手数料率が低下。
- 番組制作・鉄塔賃貸・その他:数量 90.0(年間100万ドルの売上を1単位とする契約換算単位)× 価格 0.01(1換算単位当たり年間収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却と設備整理により契約基盤が縮小。
倍率:2035年ROEは1.2÷33.6=3.57%でk9.5%を下回る。moat=normalの残存割合1/2を用いるとRONICは6.54%。長期g1.5%を用いた正当化PERの2035年利益基準上限は約9.78倍となる。ただし再投資の利回りが資本コストに届かず、放送局の売却と契約数減少が続くため、上限の約87%である8.5倍とする。これは中立より低く、過去の市場倍率を根拠にしていない。
確率:統合差止めと有料テレビの解約は、予想ではなく既に確認された事実である。費用削減が限定され、配信への広告移転が速まる可能性は高いと見て27%を配分する。
悲観 17% 悲観:放送網の価値が傷み、資産売却と再編に追い込まれる 利益 −8 億ドル · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 23.48 ドル7 億ドル
TEGNAとの統合をめぐる訴訟は長期化し、保有局の売却や事業の分離を余儀なくされる。売却代金の大半は借金の返済に使われ、買収時に認識したのれんや放送関連資産の価値も減損される。2030年代には有料テレビの契約世帯が急減し、再送信料は旧来の事業規模を支えられなくなる。
地上波の広告主は配信へ移り、視聴者が残るニュースとスポーツでも競合に対して値上げできない。CWの番組費や地域ニュースの制作費は、売上の減少ほど速く削れない。プレミオンの媒体買い付け業務はAIエージェントに代替され、赤字となる。地方放送局の免許はなお残るが、価格を決める力は弱まり、事業の堀は大幅に狭まる。
2035年売上は約26.9億ドル、営業損失は約1.5億ドル、GAAP純損失は約7.5億ドルとなる。2026~2030年ごろの純利益累計約17億ドルに対し、その後の損失と減損が約27億ドルに達し、10年間では純損失累計10億ドルとなる。還元は早期に停止され、期間の正味還元は2億ドルにとどまる。株式の値段は継続事業の利益では測れず、免許や局の売却後に債権者へ返済して残る資産価値だけが株主を支える。
- 再送信料・番組配信料:数量 0.2(年間の有料テレビ契約世帯換算(億世帯相当))× 価格 66(契約世帯換算1件当たり年間配信収入(ドル))→ 売上 15 億ドル・営業利益 3 億ドル。解約と再送信契約交渉の敗北で数量・単価の両方が低迷。
- 通常の地上波テレビ広告:数量 400(年間広告表示数(億回))× 価格 0.02(広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。地上波広告の市場縮小に加え、自社シェアも失う。
- 自社保有のデジタル媒体・全国ネットワーク広告:数量 220(年間の自社媒体広告表示数(億回))× 価格 0.02(広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。配信媒体への投資不足で競合に敗れ、規模の経済が働かない。
- 政治・選挙広告:数量 25.0(年間の政治広告表示数換算(億回))× 価格 0.02(政治広告1回表示当たり収入(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。主要局の売却と広告主のデジタル移行で選挙広告も低迷。
- プレミオンの第三者CTV広告買い付け・運用:数量 45.0(年間広告配信・運用取扱量換算(億回))× 価格 0.01(広告1回当たりの実質取扱収入・手数料換算(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替による広告運用手数料の崩壊。固定費を回収できず赤字。
- 番組制作・鉄塔賃貸・その他:数量 70.0(年間100万ドルの売上を1単位とする契約換算単位)× 価格 0.01(1換算単位当たり年間収入(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。局の売却で賃貸設備と契約群も減る。
倍率:2035年はGAAP赤字であり、継続利益にPERを掛けることはできない。取得関連資産の減損、事業売却、借り換えの難航が生じる破綻近傍の筋書きとして、2025年末の株主資本20.6億ドルを基準にPBR0.35倍を用いる。2035年の自己資本8.6億ドルに倍率を掛けて価値を作るのではない。時価総額7.21億ドルは、放送免許などを売った後の株主残余の推定床7.0億ドルをわずかに上回る。過去の株価や谷のPBRから決めた倍率ではない。
確率:負債が大きい会社では、営業利益の減少が株主価値を非線形に傷つける。裁判による局の売却・分離、再送信料の失速、広告流出が重なれば財務再編に近づくため、通常のメディア企業より深い悲観を17%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
再送信料・番組配信料
ケーブル、衛星、インターネット経由の有料テレビ事業者から受け取る再送信料と、ネットワーク番組の配信料。加入世帯と契約単価が収入を左右する。
| 数量年間の有料テレビ契約世帯換算(億世帯相当) | 価格契約世帯換算1件当たり年間配信収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.5 | 58 | 29 | 11 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 83 | 35 | 14 |
取り方:2025年のNexstar 10-Kで再送信・配信料29.24億ドルを確認。会社はネットワーク配信料を含めた契約数と実効単価を公表しないため、料金を月約4.87ドルと仮定して5,000万世帯相当へ換算した。これは実際の固有契約世帯数ではなく、収入を数量と単価に分けるための換算値。米国の従来型有料テレビは2025年に約4,500万世帯という米議会調査局の推計があるが、ネクスターの収入にはネットワーク配信と仮想有料テレビも含まれ、単純比較できない。2025年にTEGNAが別途得た配信料は14.66億ドルで、合算すると43.90億ドル。10年の数量はこの取得分を含む契約基盤からの減少を反映する。競合はグレイ、シンクレアなど。営業利益は直接費用配賦後の推定貢献額である。出典:https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1142417/000119312526078361/nxst-20251231.htm および https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/39899/000119312526084392/tgna-20251231.htm
通常の地上波テレビ広告
地方テレビ局が販売する政治広告以外の地上波広告枠。広告表示数と千回表示当たりの広告単価が収入を決める。
| 数量年間広告表示数(億回) | 価格広告1回表示当たり収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,200 | 0.01 | 17 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.02 | 19 | 4 |
取り方:Nexstarの2025年広告収入19.59億ドルから、非選挙年の政治広告約0.46億ドルと自社デジタル広告の推定1.70億ドルを除いた17.43億ドル。広告表示数とCPMは非開示なので、CPM約14.5ドルに相当する年間1,200億表示へ換算した推計であり、測定された実視聴回数ではない。BIAによる2025年の米国地上波テレビ広告市場約143億ドルに対して、旧ネクスターのこの部分は約12%。TEGNAの広告・マーケティング収入11.69億ドルのうち約9.3億ドルが通常地上波広告と推定され、合併後のシェアは2割弱となる。競合のグレイは2025年の通常広告売上約14.5億ドル。10年の中立単価は配信への広告移転を考慮して2025年比1.29倍に抑え、物価1.41倍を下回る。出典:https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1142417/000119312526078361/nxst-20251231.htm および https://bia.com/press-releases/bia-forecast-political-spending-lifts-2026-local-ad-market-to-186-1-billion/
自社保有のデジタル媒体・全国ネットワーク広告
ニュースネーション、ザ・ヒル、CW、自社局のウェブサイトや配信アプリで販売する広告。第三者の媒体運用手数料とは区別する。
| 数量年間の自社媒体広告表示数(億回) | 価格広告1回表示当たり収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.02 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 420 | 0.02 | 9 | 3 |
取り方:会社は地方局・全国ネットワーク・デジタルの広告収入を完全には独立開示しないため、2025年の広告収入のうち約1.70億ドルをこの領域へ配分した推定。CPM17ドルと年間100億表示は整合を取るための事業量換算であり、会社開示の実際の広告表示数ではない。TEGNAが加わることで自社局のサイトやアプリが増え、2026年以降の実際の起点はこれより大きい。競合はユーチューブ、ロク、アマゾン、フォックスのTubiなど。媒体を自社保有するためAIエージェントの広告運用代替とは区別するが、視聴者獲得競争にはさらされる。2025年の各事業貢献利益から、本社費、CWの損失、償却など約7.27億ドルを控除すると全社営業利益8.60億ドルに近づく。出典:https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1142417/000119312526078361/nxst-20251231.htm
政治・選挙広告
候補者、政党、政治団体が購入する地域放送局の広告枠。選挙年の競争状況と放送地域によって売上が大きく変動する。
| 数量年間の政治広告表示数換算(億回) | 価格政治広告1回表示当たり収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 23.0 | 0.02 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 0.03 | 1 | 1 |
取り方:2025年の政治広告は全社広告収入の約1%というNexstarの開示に基づき0.46億ドルと推定。CPM20ドル、23億表示は換算値であり実測ではない。旧Nexstarの2024年政治広告は約4.92億ドル、TEGNAは約3.73億ドル、単純合算で8.65億ドル。AdImpactの2024年米国地上波政治広告市場約45億ドルに対し約19%相当である。ただし買収による局の重複や売却条件があるため、このシェアを確定値とは扱わない。2035年は非大統領選挙年のため、2024年の山を持ち込まない。出典:https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/39899/000119312526084392/tgna-20251231.htm および https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1142417/000119312526078361/nxst-20251231.htm
プレミオンの第三者CTV広告買い付け・運用
TEGNA買収に伴って2026年から加わった、他社の接続テレビ・配信媒体の広告枠を扱う事業。媒体の買い付け、広告配信、運用手数料の部分を対象とする。
| 数量年間広告配信・運用取扱量換算(億回) | 価格広告1回当たりの実質取扱収入・手数料換算(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.02 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 0.02 | 1 | 0 |
取り方:2025年のNexstar単独には含まれず、2026年3月のTEGNA買収で初めて連結された。TEGNAの2025年広告・マーケティング収入11.69億ドルにはPremionが含まれるが、Premion単独の監査済み売上と取扱表示数は開示されていない。そのため買収後の2025年相当の起点を年間120億表示、単価0.02ドル、売上約2.4億ドルと仮定する。これはTEGNAのAMSの内数についての推定で、確定実績ではない。グレイ・メディアが独占販売提携を解消したことで2025年のPremion関連売上は減少した。AIエージェント代替の分類は『広告の制作・運用・媒体の買い付け』。中立の2035年数量は取得時推定の0.67倍、単価は0.90倍、長期gは0%。媒体を自社で所有する広告とは別の事業として扱う。出典:https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/39899/000119312526084392/tgna-20251231.htm
番組制作・鉄塔賃貸・その他
放送設備や鉄塔の賃貸、番組制作、その他のサービス収入。規模は小さいが既存設備の利用価値を現金化する。
| 数量年間100万ドルの売上を1単位とする契約換算単位 | 価格1換算単位当たり年間収入(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 66.0 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.01 | 1 | 0 |
取り方:Nexstarの2025年のOther収入0.66億ドルを直接使用。実契約件数・平均単価は非開示なので、100万ドル分を1単位とした換算値であり、契約が66件あるという意味ではない。TEGNAの2025年その他収入0.38億ドルが2026年から追加される。10年の中立は合算後の契約基盤を維持し、主として物価上昇で単価が上がる筋書きとする。出典:https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1142417/000119312526078361/nxst-20251231.htm および https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/39899/000119312526084392/tgna-20251231.htm
リスクと懸念
TEGNA買収の反トラスト訴訟と統合差止め
買収は2026年3月に完了したが、連邦地裁は4月に両社の事業統合を差し止めた。2027年7月に本案審理が予定され、監督人による順守状況の監視も続く。放送局は会計上連結されても、広告営業や再送信契約の共同運営を自由に実行できない。訴訟が長引けば買収相乗効果が遅れ、局の売却や再編を迫られるおそれがある。
巨額負債と借り換え金利
2026年6月末の純有利子負債は約115億ドルで、株式時価総額の2倍以上である。借入契約上の純レバレッジは4.22倍に達し、2034年満期の7.25%債もある。有料テレビ契約や広告収入が減ると、元利払いは利益より先に残る。買収時の利益計画が遅れれば、減配、資産売却、金融機関との条件変更が必要になる。
有料テレビの解約と再送信料の限界
再送信料は収入の中心だが、契約世帯が構造的に減っている。料金の年次引き上げがあっても2025年の旧ネクスターの配信料収入はほぼ横ばいだった。今後は有料テレビ事業者との交渉が厳しくなり、単価上昇より加入世帯の減少が速まる可能性がある。地方局の免許だけでは配信サービスへの顧客流出を止められない。
広告主のデジタル移行と地元メディアのシェア低下
広告主は若い視聴者と購買データを求め、ユーチューブ、メタ、アマゾンなどへ予算を移している。ネクスターの局数が増えても、視聴者が増えなければ広告の表示回数は減る。全国の地方広告市場が伸びても地上波局の市場は縮む可能性があり、地方ニュースのブランドだけではデジタル広告の高い利益率を保証できない。
AIエージェント代替によるプレミオンの利益縮小
TEGNAから取得したプレミオンには、第三者の配信媒体の広告枠を買い付け、広告配信を運用する事業がある。広告主がAIエージェントで媒体選定、入札、配信最適化を直接行うようになれば、広告運用の手数料と取扱量が下がる。中立の数量は取得時推定の0.67倍、価格は0.90倍とし、長期成長率は0%とした。自社が持つ媒体の広告とは区別して評価している。
CWとスポーツ番組の権利料
CWはNASCAR、大学スポーツ、WWEなどを増やし、視聴者の獲得を目指している。しかし放映権や番組制作には先払いの約束があり、広告の売上が減っても費用はすぐに落とせない。ニュースネーションも成長途中で、規模の利益が十分に出ているとは言い切れない。固定費の高い番組が増えると、放送局の再送信料による利益を相殺しかねない。
規制、支配の仕組み、少数株主の取り分
FCCの所有規制や買収承認に付く条件によって、保有局を売却しなければならない可能性がある。放送局の一部は変動持分事業体を通じて運営され、連結していても自由な資金移転や処分が制約される。CWの少数株主には持分売却請求権もあり、会社の現金が普通株主への還元以外に使われる。単一クラス株であることだけでは、こうした負担をなくせない。
今後の分かれ目
- 2027年7月のTEGNA訴訟で事業統合が広く認められ、実際の費用削減が年2億ドルを超えたら
- やや楽観側の確率を上げる。相乗効果を言葉だけでなくGAAP利益と借金返済の現金で確かめ、再送信料の利益率を引き上げる。
- TEGNAの独立運営命令が続き、局の売却や事業分離を求められたら
- 中立の費用削減効果を減らし、やや悲観と悲観の確率を引き上げる。売却代金を時価総額に丸ごと足さず、負債返済後の株主残余を調べ直す。
- 再送信料の売上がTEGNAを含む連結ベースで2年連続5%以上減少したら
- 単価上昇が加入者減少に追いつかないと判断し、中立の契約数量と営業利益率を引き下げる。通常広告の減少も重なれば財務リスクを高める。
- 純有利子負債が2028年末までに90億ドルを十分下回り、借入契約上の純レバレッジが3倍未満となったら
- 借り換えに伴う株主利益の圧迫が和らぐ。資本政策の評価を上げるが、返済自体を新たな利益として二重に数えない。
- CW、ニュースネーション、地方局アプリの自社媒体広告が年率10%以上伸び、黒字を維持したら
- 自社媒体の実質広告表示数と市場シェアの伸びを上方修正する。第三者媒体を運用するプレミオンとは別に、媒体保有事業の堀を再評価する。
- プレミオンの取扱量が買収時推定の半分以下となり、広告運用事業の赤字が続いたら
- AIエージェント代替が想定より速いと判断し、プレミオンの数量・手数料率・将来利益を下方修正する。ただし同じ原因を資本コストに重ねて上乗せしない。
- 政治広告の好況年を過ぎても自社株買いを大きく再開し、純負債の返済が止まったら
- 資本配分の規律が崩れたと判断する。正味の還元額だけでなく残存借金と翌年以降の利息を再計算し、悲観の確率を引き上げる。
見ておくもの
- TEGNA統合差止めの控訴審と、2027年7月の本案審理の結果
- 買収相乗効果の実現額と、TEGNAの独立運営に伴う追加費用
- 有料テレビの契約世帯減少率と再送信料の実効単価
- 2026年以降の連結再送信料収入の増減
- 通常地上波広告と自社デジタル広告の売上の分離開示
- CWとニュースネーションの営業損益、スポーツ放映権料
- 2028年と2032年の政治広告収入と、その後の平常年の落ち込み
- 純有利子負債、借入契約上の純レバレッジ、借り換え金利
- プレミオンの広告取扱量、運用手数料率、AIエージェント導入の影響
- 配当と自社株買いから株式報酬を差し引いた正味還元
- FCCの放送局所有規制、譲渡条件、局売却の進展
- ニールセンの放送・配信視聴シェアと、ユーチューブの拡大
倍率と資本コストの決め方
2026年10月23日の株式時価総額約51.4億ドルを、2035年の事業売上や倍率の出発点には使っていない。先に2025年の再送信料、通常広告、政治広告、自社デジタル広告を数量と単価へ分け、成立済みのTEGNA買収を2026年以降の数量に反映した。各シナリオの売上と営業利益から、借金の利息、税、少数株主持分を控除してGAAP純利益を求めた。その後にk9.5%、数量と価格に基づくg1.5%、ROEとRONIC、堀の残存割合から正当化PERを計算した。過去の市場PERや同業の株価倍率を根拠にしていない。2025年末の自己資本20.6億ドルから、10年間の純利益累計を足し、株式報酬と増資を考慮した正味還元を引いて各シナリオの自己資本を検算した。確率加重した10年後時価総額と正味還元の現在価値は約35.3億ドルで、現在の時価総額に対する差は約マイナス31.3%。判定は割高となる。米国会計ではリース負債が既に計上されており、悲観ではこの固定の支払約束も営業費用の中に残している。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に事業の質の調整+1.5%を加え、資本コストを9.5%とする。株価の変動から得るβや同業の取引倍率は使用しない。2026年6月時点で営業現金収入と借入枠があり、直ちに継続企業の前提が崩れるとは確認できないため、存続危機の追加上乗せは0%。訴訟と大型買収の実行リスクはシナリオの利益と確率で表す。