結論
ライブ・ネーションは、コンサートの主催とアーティストのマネジメント(年の動員 1.59 億人)、チケットマスターによるチケット販売、スポンサー収入、アンフィシアターやクラブの会場運営を一体で持つ、世界最大のライブ興行会社である。2025 年は売上 252 億ドル(+9%)、調整後営業利益(AOI)24 億ドル(+10%)、調整後の FCF は約 13 億ドル。2026 年 4〜6 月も動員は +10% と過去最高で、前受け金は 64 億ドル(+25%)まで積み上がり、通期の AOI は 2 桁成長の見通しを維持している。
売上の 8 割以上は薄利のコンサート(AOI 率約 3%)だが、利益の中心はチケットマスター(AOI 約 11 億ドル・利益率 35%)とスポンサー(AOI 約 8.5 億ドル・利益率 65%)にある。この高い利益を支えるのが、大型会場でのチケット販売の寡占で、2026 年 4 月に連邦陪審が独占を違法と認めた。司法省とは手数料 15% 上限・会場の開放・一部アンフィシアター売却で和解(承認待ち)したが、33 州と DC は訴訟を続け、チケットマスターの分離を求めている。
中立の筋書きは、10 年後(2035 年)の純利益約 19 億ドル・PER 約 14.7 倍(利益ベースの正当化 PER:ROIC からの ROE 60% が先で k 9.0% へ半分薄れ、g 4.0% で式 17.7 倍に ×(1+g)、評決と景気の振れで上限の 80%)。利益は 10 年で 3 倍近くになるが、今の PER(ならして 50 倍前後)が成熟後の 15 倍弱に縮み、時価総額(395 億ドル)に比べると本質価値は低く出る。利益率の薄い興行に、独占プレミアムの倍率が付いているというのが、ここでの見方である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後もライブの需要はあり、動員は今より増えているとみる。人は体験にお金を使い、配信が広がるほど「生で見る」価値が上がる面がある。堀は、会場・チケット・協賛を束ねた規模にあるが、独占を認める評決が出た以上、堀は広がらず、狭まるか、規制で形が変わる可能性が高い。
オーナー利益は、純利益ではなく FCF から見るほうが近い。2025 年の調整後 FCF は約 13 億ドルで、時価総額(395 億ドル)に対する利回りは約 3.3%。ただし FCF は前受け金(客から先に受け取ったお金)で膨らんでおり、株式報酬(2025 年に約 2.5 億ドル)と少数株主への分配を引くと、株主のものになる利益は 8〜10 億ドルとなる。利回りで言えば約 2.5%、国債の 5% を大きく下回る。
資本配分は、成長投資を優先して配当も自社株買いも出さず、規制の訴訟でも 4.5 億ドルの引当を計上した。安全域は、ほとんど無い。自己資本比率が 1.2% で、不況時の谷が深く、独占の訴訟が利益の源泉を直接削る。事業は強いが、払う値段(ならした PER 50 倍前後)に対し、成長と独占プレミアムがすでに織り込まれており、予測の確信度は中程度。
何で稼ぐ会社か
ライブ・ネーションの事業は 4 つ。(1)コンサート:アーティストと契約して公演を主催し、会場・演出・宣伝の費用を持つ。2025 年の売上は約 210 億ドルで、年 159 百万人を動員し、1 人あたり収入は約 130 ドル。利益率は約 3% と薄い。アーティストのマネジメントと、フェスティバル(海外を含む)、スタジアム公演も含む。(2)チケット販売(チケットマスター):売上約 31 億ドル、AOI 約 11 億ドル。手数料つきの販売は 2026 年 4〜6 月で 9,000 万枚(+8%)、売上 8.5 億ドル(+15%)、AOI 3.3 億ドル(+14%)。大型会場との長期契約で、一次販売に強い。(3)スポンサー・広告:売上約 13 億ドル、AOI 8.5 億ドル。企業が会場・ツアーに払う協賛で、動員に比例して増え、利益率 65% と最も高い。(4)会場運営:北米のアンフィシアター・クラブ・劇場を持ち、飲食・駐車・物販の収入は動員に連動する。
構造としては、アーティストを押さえる(供給)、会場を押さえる(場)、チケットを握る(販売)、協賛を売る(広告)の 4 つを同じ会社が持ち、それぞれの利益を重ねる形。コンサートでは薄利でも、同じ観客にチケット手数料と協賛と飲食を売ることで、1 人あたりの利益が厚くなる。2026 年 4〜6 月はコンサートの AOI が -14%(スタジアム公演の時期ずれと、新会場・海外フェスへの先行投資)だったが、チケットマスターは +14%、協賛は +13% と伸び、全体の AOI は +2% だった。前受け金は 64 億ドル(+25%)で、この先の公演の予約が積み上がっている。
優良さと弱いところ
優良さの核は、会場・チケット・協賛を束ねた規模である。チケットマスターは大型会場の一次販売で約 7 割のシェアとされ(州・司法省の主張)、独占を認める評決が出るほど価格決定力が強い。1 枚あたり収入(手数料)を上げても顧客が逃げにくく、会場との長期契約が競合の参入を阻む。協賛は動員の多さで価格が決まり、利益率 65%。アーティスト側から見ても、世界中の会場を回せる主催者は代わりがきかない。コンサート部門の AOI 率は 2025 年に過去最高の 3.3% で、収益力の改善の余地が残る。
弱い所は 3 つ。1 つ目は規制で、陪審の評決は手数料の引き下げ・会場の開放・チケットマスターの分離のいずれかに行きつく可能性があり、利益の源泉を直接削る。2 つ目は自己資本の薄さで、自己資本比率は 1.2%、PBR は 100 倍超と、資産で守られていない。2020 年は売上が 84% 減り、株価は山から 88% 下がった(リーマンの時)。3 つ目は ROE の見かけで、自己資本が小さく、数字そのものに意味がない。
経営は創業から長いマイケル・ラピーノ氏が率い、買収と会場の拡大で規模を築いてきた。資本配分は、成長投資(会場・フェス・海外)を優先し、配当と自社株買いはほぼ出していない。訴訟の引当(2026 年 1〜3 月に 4.5 億ドル)が重く、還元の再開は訴訟が片づいたあとになる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界のライブ音楽は、コロナ後の反動需要が一巡したあとも、動員・単価の両方が伸びている。ライブ・ネーションの 2026 年の通期見通しは、コンサートの動員 +10% 程度、AOI は 2 桁成長。背景は、配信音楽では得られない体験への支出と、ツアーの大型化・プレミアム席の拡大。チケット価格の上昇に対し、若い層の「体験への支出」が強い間は、単価が物価を上回って伸びる。
競合は、コンサートの主催では AEG(非上場)、チケット販売ではシートギーク、ビビッド・シーツ、イベントブライト、会場側が自前で作る販売網。ライブ・ネーションに比べるとどこも規模が小さく、チケットマスターが一次販売で優位に立つ。ただし 2026 年 4 月の陪審の評決と、司法省との和解で、会場が他社のチケットも使える方向に動く。手数料は 15% で頭を押さえられ、会場の一部は売却される。
隣のスポーツ興行は、TKO グループ(UFC・WWE)が放映権を高く売り、利益率 40% の資産の軽い事業。ライブ・ネーションは会場と人を持つ重い事業で、利益率は薄いが、動員そのものが価格を決めない点が弱い。技術では、AI が宣伝・価格設定・不正対策を安くする一方、転売対策(本人確認・手数料の透明化)の規制が強まる。景気では、固定費が重く、リーマン級の不況で動員とスポンサーが同時に落ちる。
資本政策と M&A
還元は配当なし・自社株買いもほぼなしで、フリーキャッシュフロー(2025 年 約 13 億ドル)は会場・フェス・海外への成長投資と現金の積み上げ、少数株主への分配に回ってきた。設備投資は 2026 年に約 11 億ドル(見通しの下限寄り)。純有利子負債は台帳で約 33 億ドル、借金の多くは固定金利の社債で、借り換えは 2027 年以降に順に来る。借り換えの金利が 5.75% 前後になっても、手元現金の利息が増えるので、利払いの変化は小さい。
M&A は、2010 年のチケットマスターとの合併(当時も独占の審査を受けた)、会場の買収、海外フェスの買収が中心。反トラストの面では、2019 年の同意判決の違反が司法省に問われ、2024 年に提訴され、2026 年 4 月に州側が陪審で勝った。司法省は和解したが、33 州と DC は分離を求めて続けている。
バリュー投資の目では、訴訟が片づいたあとの資本配分が決め手になる。売上の伸びと利益の質(高利益率のチケット・協賛)が守られれば、FCF は 10 年で 20 億ドル台まで増えるはずで、その使い道(自社株買いか成長投資か)で株主の取り分が大きく変わる。10 年の還元は、正味で約 120 億ドルと置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
動員は 2025 年に 1.59 億人(+5%)、2026 年 4〜6 月は +10% と加速しており、通期でも 10% 前後の伸びを見込む。前受け金は 64 億ドル(+25%)で、公演の予約が先行している。単価は、プレミアム席・ダイナミックプライシング・VIP 体験で物価を上回る。チケットマスターは販売枚数 +8%、AOI +14% で、手数料は 15% の上限があっても、枚数と 1 枚あたりの付加価値で伸びる。協賛は AOI 率 65% で、動員が増えるほど利益に直結する。
コンサートの AOI 率は過去最高の 3.3% で、スタジアム・フェスの先行投資が回収に入る 2027 年以降は 4% 台に上がる余地がある。司法省との和解で、規制は手数料の上限と会場の開放という限られた形に収まり、分離は避けられる。会社は評決に対して控訴し、数年を稼ぐので、その間に利益は積み上がる。FCF は 10 年で 2 倍以上になり、訴訟のあとに自社株買いが始まれば、株主の取り分が大きく増える。ライブは代わりがきかない体験で、10 年後も需要は強い。
慎重な見方
独占を違法とする評決が出て、33 州と DC が分離を求めている。チケットマスターは AOI の 4 割強を稼ぐ最も利益率の高い部分で、手数料の上限(15%)・会場の開放・一部アンフィシアターの売却のどれもが、直接ここを削る。分離が通れば、コンサートの薄利(利益率 3%)に戻る会社になる。2026 年 4〜6 月のコンサート AOI は -14% で、新会場と海外フェスの投資の回収が遅れている。
売上の 8 割を占めるコンサートの利益率は 3% で、動員が 1 割落ちれば赤字に近づく。2020 年は売上が 84% 減り、2008〜09 年は株価が 88% 下がった。自己資本比率 1.2%、PBR 100 倍超で、資産の裏づけは無い。さらに、今の値段はならした利益の約 50 倍で、成熟後の 20 倍台に縮むだけで株価は半分になる。前受け金が増えるのは先食いの面もあり、景気が崩れると払い戻しと固定費が同時に来る。FCF の利回り 3% は、国債 5% を割っている。
どちらに重みを置いたか
事業の強さは疑いないが、払う値段の高さと独占の評決が重く、慎重な見方のほうが少し強い。強気が正しければ、10 年で利益が 5 倍近くになる筋書きもあり、楽観は 8% と置いた。ただし、陪審の評決があり、分離・上限・開放のどれかが実際に来る確率が高いので、悲観・やや悲観の合計を 40% と厚く置いた。結論は、成長を認めても、独占プレミアムを織り込みすぎた値段は割高の側。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 95.60 ドル222 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 45.18 ドル105 億ドル)。 今の値に割り戻すと 69.75 ドル162 億ドル、今との差 −60.0%、 期待の年率 −2.1%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 189.09 ドル438 億ドル | 94.89 ドル220 億ドル | +62.7% | +5.0% | 22.72 ドル53 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 146.56 ドル340 億ドル | 73.33 ドル170 億ドル | +26.0% | +2.3% | 43.98 ドル102 億ドル |
| 中立 | 32% | 118.66 ドル275 億ドル | 51.76 ドル120 億ドル | −2.3% | −0.2% | 54.53 ドル126 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 42.57 ドル99 億ドル | 21.57 ドル50 億ドル | −63.2% | −9.5% | 16.03 ドル37 億ドル |
| 悲観 | 15% | 16.95 ドル39 億ドル | 6.47 ドル15 億ドル | −86.6% | −18.2% | 3.51 ドル8 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 95.60 ドル222 億ドル | 45.18 ドル105 億ドル | −19.3% | −2.1% | 140.78 ドル326 億ドル |
今の株価時価総額 174.50 ドル405 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 権利と会場の独占的な位置が厚くなり、利益が 5 倍に近づく 利益 30 億ドル · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 189.09 ドル438 億ドル
2035 年にはコンサートの動員が年 3.1%(約 2.2 億人)、1 人あたり収入が年 4.5% で、売上は約 440 億ドルまで伸びる。ticketing は他社に開放されても、会場との長期契約と規模でシェアを守り、手数料の上限の下でも 1 枚あたりの収入は年 3.8%。協賛は年 9% で単価が上がり、AOI は約 67 億ドル(2025 年の 2.8 倍)。陪審の評決は控訴で覆るか、軽い救済で終わり、チケットマスターは残る。デジタル広告や配信が代替できない体験の需要が、動員と単価の両方を押し上げる。営業利益は約 50 億ドル、純利益は約 30 億ドル。会場・チケット・協賛を一体で持つ強みが、独占の評決を乗り越えた世界である。
- コンサート(主催・マネジメント・会場運営):数量 216(動員(百万人))× 価格 203(1 人あたり収入(ドル。チケット・飲食・物販・駐車の合計))→ 売上 438 億ドル・営業利益 21 億ドル。動員(百万人)と 1 人あたり収入
- チケット販売(チケットマスター):数量 462(手数料つきの販売枚数(百万枚))× 価格 14(1 枚あたりの収入(ドル。手数料・付帯サービス))→ 売上 63 億ドル・営業利益 23 億ドル。手数料つき販売枚数と 1 枚あたり収入
- スポンサー・広告:数量 216(動員(百万人))× 価格 20(1 人あたり協賛収入(ドル))→ 売上 42 億ドル・営業利益 28 億ドル。動員と 1 人あたり協賛収入
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 9.0%(基本 8.0%+quality +1.0%)、g 4.0%(動員 +1%・単価は物価並み、上限の 4%)。事業の ROE 60%(自己資本が 0 近く(前受け金で運転資本が負)で帳簿の ROE は意味を持たないので、ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債))から取った値。SCHEMA_US §1)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=34.5%、式の PER=17.7 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 18.4 倍。 置いたのは 14.71 倍(上限の 80%)。チケットマスターの寡占は強いが、独占の評決の救済策と景気で動員が振れるので、式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:権利・会場・チケット・協賛の 4 つが相乗して利益を伸ばす筋書き。陪審の評決があり規制が厳しくなる流れなので 8% と薄く置く。
やや楽観 20% プレミアム化と協賛が伸び、利益が 3.5 倍になる 利益 23 億ドル · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 146.56 ドル340 億ドル
10 年で動員が年 2.7%、1 人あたり収入が年 4.1%(プレミアム化が効く)、協賛は単価が年 8.2% で伸びる。ticketing は手数料の上限(15%)の下で 1 枚あたり収入が年 3.3%、利益率は 35% を守る。コンサートの AOI 利益率は 4.3% まで上がる。州側の訴訟は手数料の引き下げと会場の一部開放で終わり、チケットマスターの分離は避けられる。AOI は約 58 億ドル、営業利益は約 41 億ドル、純利益は約 23 億ドル。借り換えの金利は 5.75% で、現金の利息で一部を相殺する。成熟した倍率は、g 5%・k − g 3.5%・事業の ROE 65% の式で約 28 倍(10 年目の利益に掛けるので ×(1+g)、純負債は 1 ドルで引く)。
- コンサート(主催・マネジメント・会場運営):数量 208(動員(百万人))× 価格 195(1 人あたり収入(ドル。チケット・飲食・物販・駐車の合計))→ 売上 406 億ドル・営業利益 18 億ドル。動員(百万人)と 1 人あたり収入
- チケット販売(チケットマスター):数量 446(手数料つきの販売枚数(百万枚))× 価格 13(1 枚あたりの収入(ドル。手数料・付帯サービス))→ 売上 58 億ドル・営業利益 20 億ドル。手数料つき販売枚数と 1 枚あたり収入
- スポンサー・広告:数量 208(動員(百万人))× 価格 18(1 人あたり協賛収入(ドル))→ 売上 37 億ドル・営業利益 24 億ドル。動員と 1 人あたり協賛収入
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 9.0%(基本 8.0%+quality +1.0%)、g 4.0%(動員 +1%・単価は物価並み、上限の 4%)。事業の ROE 60%(自己資本が 0 近く(前受け金で運転資本が負)で帳簿の ROE は意味を持たないので、ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債))から取った値。SCHEMA_US §1)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=34.5%、式の PER=17.7 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 18.4 倍。 置いたのは 14.71 倍(上限の 80%)。チケットマスターの寡占は強いが、独占の評決の救済策と景気で動員が振れるので、式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:動員のプレミアム化と協賛の単価上昇が効き、規制は手数料の上限で収まる筋書き。
中立 32% 動員は年 2.5% で伸び、利益は 3 倍弱になる 利益 19 億ドル · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 118.66 ドル275 億ドル
動員は年 2.5%、1 人あたり収入は年 3.8%(物価 3.5% にわずかに上乗せ)で、コンサートの売上は約 385 億ドル、AOI 利益率は 4.0%。ticketing は枚数が年 2.7%、1 枚あたり収入が年 3%(上限の下で物価を割る)、利益率は 33% に下がる。協賛は単価が年 7.4%、利益率 62%。AOI は本社費を引いて約 50 億ドル、営業利益は約 34 億ドル、純利益は約 19 億ドル。配当は出さず、訴訟が片づいたあとに自社株買いで 10 年に約 120 億ドルを正味で返す。成熟の倍率は、g 4.0%・k 9.0%・事業の ROE 60% の式 17.7 倍 ×(1+g)=18.4 倍の 80% で、純利益の約 14.7 倍。
- コンサート(主催・マネジメント・会場運営):数量 204(動員(百万人))× 価格 189(1 人あたり収入(ドル。チケット・飲食・物販・駐車の合計))→ 売上 385 億ドル・営業利益 15 億ドル。動員(百万人)と 1 人あたり収入
- チケット販売(チケットマスター):数量 429(手数料つきの販売枚数(百万枚))× 価格 13(1 枚あたりの収入(ドル。手数料・付帯サービス))→ 売上 54 億ドル・営業利益 18 億ドル。手数料つき販売枚数と 1 枚あたり収入
- スポンサー・広告:数量 204(動員(百万人))× 価格 17(1 人あたり協賛収入(ドル))→ 売上 34 億ドル・営業利益 21 億ドル。動員と 1 人あたり協賛収入
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 9.0%(基本 8.0%+quality +1.0%)、g 4.0%(動員 +1%・単価は物価並み、上限の 4%)。事業の ROE 60%(自己資本が 0 近く(前受け金で運転資本が負)で帳簿の ROE は意味を持たないので、ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債))から取った値。SCHEMA_US §1)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=34.5%、式の PER=17.7 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 18.4 倍。 置いたのは 14.71 倍(上限の 80%)。チケットマスターの寡占は強いが、独占の評決の救済策と景気で動員が振れるので、式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界ノートの中立(動員 年 +2.5%・単価 年 +3.5〜4%)に近い。ticketing の利益率が 36% から 33% に下がる程度の規制を織り込む。
やや悲観 25% チケットマスターの優位が崩れ、利益は伸びても倍率が縮む 利益 8 億ドル · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 42.57 ドル99 億ドル
州側が求めたチケットマスターの分離が一部通り、手数料の上限・会場の開放とあわせ、ticketing の販売枚数の伸びが年 2%、1 枚あたり収入が年 1.8% に落ち、利益率は 28% まで下がる。コンサートは動員が年 1.8%、単価が年 3.3% で、利益率は 3.3%。協賛は他社への開放の影響で更改が鈍る。AOI は約 36 億ドル、営業利益は約 20 億ドル、純利益は約 8 億ドル。2025 年の AOI(24 億ドル)の 1.5 倍で、成長は残るが、利益が売上ほど伸びない。分離したチケットマスターの価値は別に出るが、会社全体では共通の費用と会場との関係が崩れ、倍率は 18 倍に縮む。借金は 5.75% の借り換えで利払いが約 7 億ドルに増える。
- コンサート(主催・マネジメント・会場運営):数量 191(動員(百万人))× 価格 181(1 人あたり収入(ドル。チケット・飲食・物販・駐車の合計))→ 売上 344 億ドル・営業利益 11 億ドル。動員(百万人)と 1 人あたり収入
- チケット販売(チケットマスター):数量 396(手数料つきの販売枚数(百万枚))× 価格 11(1 枚あたりの収入(ドル。手数料・付帯サービス))→ 売上 45 億ドル・営業利益 13 億ドル。手数料つき販売枚数と 1 枚あたり収入
- スポンサー・広告:数量 191(動員(百万人))× 価格 14(1 人あたり協賛収入(ドル))→ 売上 27 億ドル・営業利益 15 億ドル。動員と 1 人あたり協賛収入
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 9.0%(基本 8.0%+quality +1.0%)、g 3.5%(物価並み)。事業の ROE 35%(自己資本が 0 近く(前受け金で運転資本が負)で帳簿の ROE は意味を持たないので、ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債))から取った値。SCHEMA_US §1)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=22.0%、式の PER=15.3 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 15.8 倍。 置いたのは 12.66 倍(上限の 80%)。チケットマスターの寡占は強いが、独占の評決の救済策と景気で動員が振れるので、式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:陪審の独占認定と州側の分離の申し立てがあり、10 年のうちに優位が削られる筋書きを 25% と厚く置く。
悲観 15% 分離と手数料規制で構造的に負け、薄い利益に戻る 利益 4 億ドル · PER 9.8 倍 · 株価時価総額 16.95 ドル39 億ドル
チケットマスターが分離され、手数料の厳しい上限(実質で 1 割台前半)と他社への開放で、ticketing の利益率が 24% に落ち、販売枚数も 12% 減る。コンサートはスポーツ・配信と時間を奪い合い、動員が 2025 年比 8% 増にとどまり、単価も年 2.5%、利益率 2.8%。協賛は更改が値下がりし、利益率が 54% に落ちる。もう優良な独占ではなく、AOI は約 21 億ドル、営業利益は約 7 億ドル、純利益は約 -1 億ドルで、ならして約 4 億ドルと置く。2025 年の AOI と比べても減益にあたる。倍率は薄利の興行会社として 15 倍。借金の利払い 7.5 億ドルが利益をほぼ食い、自社株買いは止まる。
- コンサート(主催・マネジメント・会場運営):数量 172(動員(百万人))× 価格 167(1 人あたり収入(ドル。チケット・飲食・物販・駐車の合計))→ 売上 287 億ドル・営業利益 8 億ドル。動員(百万人)と 1 人あたり収入
- チケット販売(チケットマスター):数量 290(手数料つきの販売枚数(百万枚))× 価格 9.39(1 枚あたりの収入(ドル。手数料・付帯サービス))→ 売上 27 億ドル・営業利益 7 億ドル。手数料つき販売枚数と 1 枚あたり収入
- スポンサー・広告:数量 172(動員(百万人))× 価格 11(1 人あたり協賛収入(ドル))→ 売上 20 億ドル・営業利益 11 億ドル。動員と 1 人あたり協賛収入
倍率:利益ベースの正当化 PER。k 9.0%(基本 8.0%+quality +1.0%)、g 3.0%(物価を下回る)。事業の ROE 12.1%(自己資本が 0 近く(前受け金で運転資本が負)で帳簿の ROE は意味を持たないので、ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債))から取った値。SCHEMA_US §1)。 moat=normal(残る割合 0.50)で RONIC=10.5%、式の PER=11.9 倍、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) で 12.3 倍。 置いたのは 9.83 倍(上限の 80%)。チケットマスターの寡占は強いが、独占の評決の救済策と景気で動員が振れるので、式の値より低めに置いた。借金は純利益の利払いと k で数え、純負債を別に引かない。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:チケットマスターの分離・手数料の厳しい規制・動員の頭打ちが同時に来る構造的な負け。陪審が独占を認定しているので 15% とやや厚く置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
コンサート(主催・マネジメント・会場運営)
アーティストと契約して公演を主催し、会場・飲食・物販の収入も得る。
| 数量動員(百万人) | 価格1 人あたり収入(ドル。チケット・飲食・物販・駐車の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 159 | 131 | 208 | 7 |
| 10 年後 中立 | 204 | 189 | 385 | 15 |
取り方:動員は 2025 年の 1.59 億人。売上は約 210 億ドルからチケット部門との取引消去を引いた約 208 億ドル(推定)、AOI は 6.87 億ドル(利益率 3.3%)。営業利益ではなく AOI で置き、減価償却・株式報酬・本社費は全社の調整に入れた。
チケット販売(チケットマスター)
一次・二次のチケット販売と手数料の収入。
| 数量手数料つきの販売枚数(百万枚) | 価格1 枚あたりの収入(ドル。手数料・付帯サービス) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 330 | 9.39 | 31 | 11 |
| 10 年後 中立 | 429 | 13 | 54 | 18 |
取り方:売上約 31 億ドル、AOI 約 11 億ドル(利益率 35%)。2026 年 4〜6 月の手数料つき 9,000 万枚と売上 8.5 億ドルから、通年の枚数を約 3.3 億枚(推定)、1 枚あたり約 9.4 ドルとした。
スポンサー・広告
企業が会場・ツアー・フェスに払う協賛と広告。
| 数量動員(百万人) | 価格1 人あたり協賛収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 159 | 8.18 | 13 | 9 |
| 10 年後 中立 | 204 | 17 | 34 | 21 |
取り方:売上約 13 億ドル、AOI 8.45 億ドル(利益率 65%)。動員に連動する収入とみなし、1 人あたり約 8.2 ドルとした。
リスクと懸念
独占の評決と、チケットマスターの分離
2026 年 4 月に連邦陪審が独占を違法と認定した(過剰請求は 1 枚あたり 1.72 ドル)。州側は 5 月にチケットマスターの分離を求める方針を示し、判事が救済の中身を決める。分離されれば、AOI の 4 割強を稼ぐ高利益率の事業が失われ、会場・協賛との相乗効果も崩れる。会社は控訴するが、数年は不確実性が残る。
司法省との和解の中身(手数料の上限・会場の開放)
手数料 15% 上限、他社チケットへの会場の開放、一部アンフィシアターの売却が内容で、裁判所の承認待ち。1 枚あたり収入の伸びが物価を下回り、販売枚数のシェアも下がりうる。売却されるアンフィシアターの利益も失われる。
景気後退と、固定費の重さ
2020 年は売上が 84% 減り、2008〜09 年の株価は山から 88% 下がった。コンサートの利益率は 3% で、動員が 1 割減れば赤字に近づく。スポンサーも景気に連動し、前受け金の払い戻しが資金繰りを圧迫する。自己資本比率が 1.2% で、資産の裏づけが無い。
チケット価格への消費者の反発と、動員の頭打ち
単価を物価以上に上げ続けると、若い層が離れ、動員の伸びが鈍る。チケットの手数料への社会的な批判と、手数料の透明化の規制が、プレミアム化を抑える。転売対策の義務化もコストを増やす。10 年で単価が物価に追いつかなければ、利益の伸びは動員頼みになる。
新会場・フェスへの先行投資の回収の遅れ
2026 年 4〜6 月のコンサート AOI は -14% で、新会場の開業前費用と海外フェスの投資が重い。設備投資は年約 11 億ドルで、回収が遅れれば FCF の伸びが鈍る。スタジアム公演の時期ずれで四半期の利益が振れる。
訴訟の賠償・弁護費用と、還元の遅れ
2026 年 1〜3 月に 4.5 億ドルの引当を計上した。州側の損害賠償や弁護費用がさらに出れば、還元の再開が遅れる。株主のものになる利益は、FCF よりかなり小さい(株式報酬・少数株主分・訴訟費用を引く)。
今後の分かれ目
- 裁判所が、チケットマスターの分離を命じる
- ticketing の利益率が消え、やや悲観・悲観の確率を上げる。会社全体の倍率は 10 年で 18 倍以下に置き直す。分離されたチケットマスターの価値は別に出るが、会場との契約関係が崩れる点を差し引く。
- 救済が、手数料の上限と会場の開放にとどまり、分離は退けられる
- やや楽観・中立の確率を数ポイント上げる。10 年の ticketing の利益率 33% を保ってよい。
- コンサートの AOI 率が 4% を超え、新会場の先行投資の回収が見える
- コンサートの 10 年の利益率を 4.3% 以上に置き直す。
- 動員の伸びが 1 桁前半に落ち、前受け金の伸びが鈍る
- 動員の伸びを年 2% 以下に下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 訴訟が片づき、自社株買いが再開される(年 20 億ドル規模)
- 10 年の還元(約 120 億ドル)の置き方を上げてよい。ただし株式報酬で増える株を引いた正味で考える。
- 景気後退で動員が 1 割以上落ちる、またはスポンサー更改が止まる
- 悲観の確率を上げる。倍率は 1÷k(約 11 倍)まで下げ、ならした利益で測る。
見ておくもの
- コンサートの動員と 1 人あたり収入(四半期)
- コンサート AOI 率と、新会場・フェスの先行投資
- チケットマスターの販売枚数と AOI(通期は 1 桁半ばの成長見通し)
- 前受け金(2026 年 4〜6 月 64 億ドル)
- 反トラスト:判事の救済命令・司法省和解の承認・州側の控訴
- 調整後 FCF(2025 年 約 13 億ドル)と自社株買いの再開
- スポンサー AOI(4〜6 月 2.57 億ドル)
倍率と資本コストの決め方
今の PER(赤字・ならして約 50 倍)や株価を見る前に、コンサート・チケット・協賛の 3 つを数量 × 価格で 2035 年に積み上げ、減価償却・株式報酬・利払い・少数株主分・税を引いて純利益を出した。倍率は利益ベースの正当化 PER(2026-10-18 の決まり):10 年後の中立は k 9.0%(基本 8.0%+quality +1.0%)・g 4.0%・ROIC からの ROE 60%(自己資本が 0 近くで帳簿の ROE は使えない)、moat=normal で RONIC 34.5%、式 17.7 倍 ×(1+g) の 80%(チケットマスターの寡占は強いが、評決の救済策と景気で動員が振れる)で約 14.7 倍。純利益は利払い後なので純負債は別に引かない。独占の訴訟は確率と筋書きでも表した。EV を AOI で見ても 6〜8 倍にとどまる(注記)。結果は大きく割高に出たが、これは今の値段が 10 年の利益の 3 倍化と高い倍率を同時に織り込んでいるからで、悲観を厚くしたせいではない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k は基本 8.0% + quality +1.0% = 9.0%。景気で動員が振れる循環(+0.5%)と、自己資本が 0 近くで借り換えの金利が薄い純利益を削る点(debt +0.5%)を入れた。独占の評決・分離の訴訟は k に足さず、確率(悲観とやや悲観の合計 40%)と筋書きの手数料・利益率で表した。存続は危なくないので上乗せは 0。