結論
TMEは中国最大級の音楽配信会社で、QQ音楽、酷狗音楽、酷我音楽を運営する。筆者の結論は、事業の先行きには不確実性があるものの、現在の値段は10年先の価値に対してやや割安というものだ。音楽への課金が習慣になりつつある一方、無料利用者は減っており、成長を過大評価することはできない。
2025年の売上は45.8億ドル、営業利益は13.5億ドル、純利益は15.4億ドルだった。音楽会員は年間平均1億2510万人に達し、課金単価も上がった。ただし純利益にはユニバーサル・ミュージック・グループ持分の会計処理変更による一時利益が含まれる。これを恒常的な稼ぎとは扱わない。2026年4〜6月期も音楽関連収入は11.0%伸びたが、全社売上の伸びは5.8%にとどまった。
最大の変化は2026年5月に完了した喜馬拉雅の買収である。音楽だけでなく、朗読、音声番組、車載音声へ利用場面が広がった。しかし、買収費用と新株発行の負担は小さくない。さらに9月には10億ドルの社債を発行している。中国の競争政策、バイトダンス系アプリの台頭、テンセントによる議決権支配も、長期保有者が無視できない問題である。
中立では2035年の売上を約80億ドル、営業利益を約21.6億ドル、純利益を20.2億ドルと見る。音楽会員の増加とIP事業の拡大が、ソーシャル娯楽の縮小を補う形だ。中立の時価総額は約267億ドルとなり、保有期間の正味還元も加わる。悲観側の確率を42%と厚くした結果でも、確率加重した現在価値は約158億ドルで、添付の時価総額132億ドルを約19%上回る。大きな安全域ではないが、音楽配信の収益基盤と保有資産を合わせれば、値段に一定の余裕がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点でまず問うのは、10年後も人が音楽を聴くためにお金を払うか、ということだ。答えはおそらく肯定的である。音楽そのものは新しい技術が登場しても消えず、著作権を持つ楽曲には対価を払う必要がある。TMEは中国の大きな利用基盤を抱え、月額課金という繰り返し入る収入も増やしてきた。この部分は長く保有したくなる事業である。
ただし、音楽への需要が続くことと、TMEが高い利益を独占できることは別問題だ。曲の独占契約は競争当局に制限された。利用者がアプリを替える費用は小さく、無料動画から音楽を発見する習慣も広がっている。過去の高い利益率をそのまま10年先へ伸ばすのではなく、会員を維持できる理由と、アーティストに払う費用がどこまで上がるかを考えなければならない。
オーナー利益には、会計上の純利益ではなく、設備やコンテンツ維持に必要な支出を払った後の現金が重要だ。添付の2025年FCFは14.1億ドルで、純利益15.4億ドルより小さい。純利益には一時的な持分再評価益があるため、将来の稼ぐ力を高く見積もる材料には使えない。喜馬拉雅の買収でも、現金と株式を合わせた対価に見合う増分利益が生まれるかが問われる。
もう一つの価値は保有資産である。純現金に加えてスポティファイなどの上場株式を持つ。しかし、これらが最終的に少数株主のものになるとは限らない。支配株主が強く、中国本土から海外への資金移動にも制約があるためだ。資産を額面どおりすべて配当すると考えず、戻る割合を控えめにした。これらを差し引いても、事業の継続価値と資産の合計には現在の時価総額を上回る余地がある。確信度は中程度であり、十分な安全域がなければ大きな賭けをする会社ではない。
何で稼ぐ会社か
TMEの収益は、音楽の月額会費、音楽IPを使った広告や公演、ライブ配信とカラオケの課金から生まれる。2025年の会社開示ではオンライン音楽が売上の81.2%、ソーシャル娯楽などが18.8%だった。オンライン音楽のうち会費収入は約3分の2で、残りは広告、公演、アーティストのグッズ、音楽ライセンスなどである。会社は会計上、全体を一つの報告セグメントとしている。
会費事業の仕組みは単純だ。QQ音楽、酷狗音楽、酷我音楽の利用者が、広告の少なさ、高音質、限定コンテンツなどを求めて料金を払う。2025年の年間平均有料利用者は1億2510万人、月間平均課金額は11.8人民元だった。2023年の月額10.0人民元から値上がりしており、より高いSVIP会員も2025年末には2000万人を超えた。一方、年間平均の月間利用者は2023年の5億8900万人から2025年の5億4700万人に減った。無料利用者を有料へ変える力が、利用者全体の縮小を今は補っている。
広告とIP関連事業では、無料の音楽再生や動画フィードに広告を表示するほか、アーティストの公演、ファンイベント、グッズ販売を手がける。音楽を聴く行為を、会場で楽しみ、商品を買う行為につなげることで、一人のファンから複数の収入を得られる。広告は自社媒体の広告枠を販売する事業であり、広告代理店のように人手で制作や運用を受託する事業とは異なる。
ソーシャル娯楽は全民K歌などのカラオケ、音楽ライブ配信、仮想ギフトが中心だ。配信者への分配が必要で、規制によって投げ銭の使い方が変われば売上が減る。実際、この事業の売上は2023年から2025年にかけて大きく縮んだ。音楽会費とは違い、長期成長を当然視できない。
2026年5月に子会社となった喜馬拉雅は、有料朗読、ポッドキャスト、音声広告などを持つ。TMEは既存の音楽会員と音声会員を組み合わせ、出版社やクリエイターとの契約を広げられる。もっとも、利用者が両方のサービスに加入しても、会社の売上が単純に二倍になるわけではない。重複課金と会員の移行を考慮し、追加の稼ぎは慎重に見る。
優良さと弱いところ
最大の堀は、中国で長年築いた利用者規模と音楽配信の習慣である。三つの主要音楽アプリを合わせた年間平均月間利用者は2025年に5億4700万人だった。膨大な再生履歴と好みの情報を使い、利用者に合う音楽を薦められる。さらに微信やQQから利用者を呼び込めるため、独立系の配信会社より宣伝費を抑えやすい。音楽会社やアーティストにとっても、多数のファンに届く販路となる。
値決め力は実績で確かめられる。音楽の月額平均課金額は2023年の10.0人民元から2025年には11.8人民元へ増え、同じ期間に有料利用者も約24%伸びた。単価を上げながら会員を増やした点は評価できる。営業利益率も2023年の17.2%から2025年には29.4%へ改善した。ただし、この利益率上昇には低収益のソーシャル事業が縮んだ効果もある。音楽事業そのものの価格支配力だけで説明してはならない。
堀には明確な限界もある。中国の競争当局は2021年、テンセント側に音楽の独占的な著作権契約を解消するよう命じた。曲の独占という強みが弱まり、現在は品ぞろえ、推薦、会員特典、コミュニティーで勝負する必要がある。利用者が音楽アプリを乗り換える費用も低い。バイトダンスの汽水音楽や網易雲音楽が同じ曲を提供できれば、割高な会費を取り続けることは難しくなる。
財務面には強みがある。添付の2025年数値では純現金は29.4億ドルで、2026年6月末にはスポティファイやユニバーサル・ミュージック・グループを中心とする上場株式も保有している。ただし、それらは価格変動が大きく、テンセントとの資本関係もあるため、すぐ売って株主に返す現金と同じには扱わない。事業の堀は普通以上だが、10年後にも超過利益が大幅に残る強い堀と断定するには、利用者離れと規制の問題が大きい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
中国の音楽配信市場は、利用者数を急増させる段階から、一人当たりの支払額を増やす段階へ移っている。TMEの有料会員数は2025年に1億2510万人だった。これに対し、競合の網易雲音楽は2025年の音楽会費収入が約50.5億人民元で、TMEの約176.6億人民元よりかなり小さい。主要二社の開示会費収入に限ればTMEが約78%を占める。ただし、汽水音楽や咪咕音楽を含めた市場全体の公式な統一シェアではない。
2025年の中国のオンライン音楽会費市場は、主要二社の合計約227億人民元に他社を加え、概算で250〜300億人民元の規模と推定する。この分母ならTMEの会費収入シェアは約59〜71%となる。大きな幅があるのは、他社の無料広告型と有料型の売上を統一して比較できないためだ。2035年には有料化の浸透と名目単価上昇で市場が拡大するが、中国の人口減少を考えれば契約数が世界の動画配信並みに伸びるとは限らない。
競争相手は網易雲音楽だけではない。バイトダンスの汽水音楽は抖音の巨大な短編動画網から楽曲を発見させ、音楽アプリへ利用者を流せる。従来の検索やプレイリストを経由せずに音楽に出会う仕組みは、TMEの推薦機能の価値を下げる可能性がある。短編動画やゲームは音楽を聴く時間も奪う。音楽会社は複数の配信先を選べるため、TMEがかつて持っていた独占的な契約条件を取り戻すことは期待しない。
公演市場には成長余地が残る。中国演出業界協会によれば、2025年の商業公演の興行収入は約616.6億人民元で、観客は約1億9400万人だった。大規模公演は特に伸びている。TMEは音楽アプリから公演やグッズへ利用者を誘導できるが、実際の公演市場では主催者、興行会社、チケット販売会社、抖音などが競争する。TMEの広告やIP収入はまとめて開示されるため、公演単独のシェアは確認できない。
音声配信では喜馬拉雅が大きな利用基盤を持ち、網易雲音楽、蜻蜓FM、無料のポッドキャストなどと競う。朗読や音声作品はAIで制作費を下げられる半面、大量に作られれば希少性も薄れる。業界ノートの世界動画配信の標準的な契約成長率を、そのまま中国音楽に使うのは適切ではない。中立では音楽会員の実質増加を10年で約16%にとどめ、価格とIP事業を成長の主役とする。
資本政策と M&A
資本配分は、過去の自社株買いと近年の配当を評価する一方、買収と支配株主への警戒が必要だ。添付の財務では2021年から2025年にかけて継続的に自社株買いを行い、2024年からは配当も始めた。2025年の配当は約2.8億ドル、自社株買いは約0.9億ドルだった。取締役会は2025年度分として約3.68億ドルの年間配当も承認した。2026年4〜6月には約4億ドルのADSを買い戻した。
大型の判断は喜馬拉雅の買収である。2026年5月18日に買収が完了し、対価は現金で最大12.6億ドル、普通株で最大約1.75億株だった。実際の取得対価は約140億人民元と開示され、現金と新株が組み合わされた。2026年6月末の発行普通株は約33.02億株で、2025年末の約31.48億株から増えた。買収した事業の利益だけでなく、そのために渡した持ち分と現金の費用も評価しなければならない。
2026年9月には10億ドルの無担保社債を発行した。2031年満期の利率は5.05%、2036年満期は5.65%で、資金使途には借り換えと自社株買いが含まれる。純現金を持ちながら負債を増やして買い戻す判断は、必ずしも価値を生まない。2036年に返済を迎える社債もあるため、今後の還元能力は利払いと音声事業の収益化を確かめる必要がある。
支配株主はテンセントである。2026年3月時点で直接・間接の議決権は約93.6%に達し、経済的な持分はそれより大幅に低い。中国事業はVIEという契約支配の仕組みを使う。少数株主には経営判断を変える力がほとんどない。今後の配当と買い戻しについて、個別年度の発表はあるが、10年間の還元総額やROICについて拘束力のある数字の約束はない。独立した非公開化や上場廃止の合意も確認できず、2026年10月13日時点では11月17日の次回決算発表を予定している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
TMEは中国の音楽配信で圧倒的な利用者規模を持つ。2025年の有料会員は年間平均1億2510万人で、月額課金額も増えた。無料利用者が減っても、有料会員の割合は2023年の17.1%から2025年の22.9%へ上がった。今後も無料利用者を高付加価値のSVIPへ変えられれば、利用者全体の伸びに頼らず収益を増やせる。値上げと高額会員の増加が同時に続いた事実は、単なる市場支配より確かな収益力の証拠である。
この会社のもう一つの強みは、音楽の権利を配信以外でも使えることだ。アーティストの公演、限定グッズ、デジタルアルバム、ファンイベントは、一人の熱心な利用者から得られる売上を増やす。中国の大規模公演市場は2025年も拡大した。会社が持つ音楽IPと広告基盤を使えば、独立した興行会社より効率よくファンを集められる。自社で育てたアーティストが成功すれば、従来の配信料以上の利益が残る。
喜馬拉雅の買収も長期的には有利になりうる。音楽会員と朗読会員を組み合わせ、出版社との契約や車載音声を拡充すれば、日常の利用時間が増える。2026年4〜6月の音楽関連収入は11%伸び、買収後の音声売上も加わった。統合が進めば配信技術、推薦、広告販売、顧客獲得の費用を共有できる。
資本政策も追い風になりうる。年間配当と自社株買いが続き、純現金と上場株式を保有する。経営陣が新しい大型買収を抑え、稼いだ利益を株主に戻せば、事業の成長に還元が重なる。競争が激しくても、規模、会員課金、コンテンツの収益化という三つの強みが残れば、2035年には現在より大幅に高い利益を稼ぐ会社になれる。
慎重な見方
最大の問題は、無料利用者が減っていることだ。年間平均の音楽月間利用者は2023年の5億8900万人から2025年の5億4700万人へ減った。会費収入は増えているが、元になる利用者の数は拡大していない。若い利用者が抖音や汽水音楽で音楽を発見し、そのまま無料で聴く習慣を身につければ、TMEの有料会員への転換にも限界が来る。会費の値上げが解約につながる局面では、数量と単価が同時に悪化する。
著作権の独占も以前ほど強くない。中国当局は2021年に独占契約の解消を命じ、網易雲音楽は2024年にTMEを相手取って競争上の問題を争う訴訟を起こした。音楽会社は複数の配信先に楽曲を提供でき、人気アーティストの契約費用を引き上げる交渉力を持つ。再生数が大きいからといって、収入の増分がすべてTMEに残るわけではない。
ソーシャル娯楽の縮小も現実に進んでいる。2025年の売上は前年から7.3%減り、2026年4〜6月には16.4%減った。中国のライブ配信規制、未成年者への制限、利用者の支出行動の変化が続けば、この事業は10年で半分以下になりうる。音楽の広告も、AIによる検索や推薦がアプリ画面を経由しなくなることで、広告を表示できる機会が減る。
喜馬拉雅には買収額に見合う利益を生む責任がある。音声作品はAIで大量生産できるため、一般的な朗読や情報番組の差別化が難しくなる。統合費用や無形資産の償却が残り、期待した利益が出なければ減損が必要になる。さらにテンセントは議決権を圧倒的に支配しており、少数株主が資本政策を修正させるのは難しい。保有株式が値下がりし、中国の資金移動規制も強まれば、帳簿の資産価値をそのまま株主の価値にはできない。
どちらに重みを置いたか
音楽会員の継続課金と実際に通った単価上昇については、強気の見方に説得力がある。しかし、無料利用者の減少、著作権独占の解消、ソーシャル娯楽の縮小はすでに起きている事実であり、慎重な見方も強い。特に喜馬拉雅は買収直後で、10年間の投資収益率を判断するには実績が短い。
確率は楽観側24%、中立34%、悲観側42%とした。悲観側を厚くしたのは、競争による数量減少と中国の支配構造を重く見たためである。AIによる広告接点の減少は数量と長期成長に反映し、確率で同じ理由を重ねて引いていない。中立の事業価値は十分に大きく、保有資産も下値を支える。最終的な判断はやや割安だが、確信度は高すぎない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 14.45 ドル225 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 5.06 ドル79 億ドル)。 今の値に割り戻すと 10.14 ドル158 億ドル、今との差 +20.6%、 期待の年率 +10.5%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 34.84 ドル542 億ドル | 9.14 ドル142 億ドル | +422.9% | +21.5% | 3.08 ドル48 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 24.56 ドル382 億ドル | 7.53 ドル117 億ドル | +281.6% | +17.2% | 5.46 ドル85 億ドル |
| 中立 | 34% | 17.21 ドル267 億ドル | 6.11 ドル95 億ドル | +177.3% | +13.0% | 7.93 ドル123 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 6.29 ドル98 億ドル | 3.54 ドル55 億ドル | +16.9% | +1.9% | 2.56 ドル40 億ドル |
| 悲観 | 16% | 2.20 ドル34 億ドル | 0.90 ドル14 億ドル | −63.1% | −10.7% | 0.50 ドル8 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 14.45 ドル225 億ドル | 5.06 ドル79 億ドル | +132.0% | +10.5% | 19.51 ドル303 億ドル |
今の株価時価総額 8.41 ドル131 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 楽観:会員の有料化が進み、音楽IPと音声が第二の収益源に 利益 37 億ドル · PER 14.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 34.84 ドル542 億ドル
2035年、音楽有料会員は1億8500万人に達し、年間会費単価は32ドルへ上がる。微信との結びつきが強まり、無料利用者の減少を有料化率の上昇が大きく上回る。網易雲音楽と汽水音楽は競争を続けるものの、TMEは会員収入の市場シェアを維持し、高音質や限定公演で高額会員を増やす。新たな曲を発見し、限定商品や公演で楽しむ一連の体験が、会員を離れにくくする。
公演、グッズ、広告では実質の取引量が2025年の2.1倍になる。中国の公演市場の拡大に加え、TMEがアーティストとの契約を深め、興行や商品で取り分を増やすためだ。喜馬拉雅では音声会員と車載音声の利用が広がり、2035年の売上は17.6億ドルになる。AIで朗読制作を効率化でき、出版社との契約と独自の人気番組が品質の差を保つ。
ソーシャル娯楽も下げ止まり、ライブ配信の収益化が改善する。音楽会員とIP事業の利益率が高まり、全社営業利益は約41.5億ドル、純利益は36.9億ドルに達する。大型の追加買収は避け、10年間の正味還元は142億ドルとなる。喜馬拉雅の取得で発行した株式の対価相当も、この正味還元から差し引いてある。利益成長と還元が重なり、堀は現在より広がる。
- オンライン音楽の会費:数量 1.9(年間平均の音楽有料会員数(億人))× 価格 32(有料会員1人当たり年間会費収入(ドル))→ 売上 59 億ドル・営業利益 24 億ドル。有料会員1.85億人。会員数は約1.48倍、名目単価は約1.63倍。高額会員の拡大と離脱の抑制が続く。
- 音楽広告・公演・IP収益:数量 210(自社広告接触と公演・IP取引の実質複合数量指数(2025年=100))× 価格 0.19(複合数量指数1単位当たりの名目売上(億ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 12 億ドル。公演とIP商品の実質数量が2.10倍。広告は画面来訪の減少を新しい動画広告枠で補う。
- ソーシャル娯楽・カラオケ:数量 0.1(年間平均のソーシャル課金利用者数(億人))× 価格 160(課金利用者1人当たり年間売上(ドル))→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。規制への対応が進み課金者が800万人へ回復。ライブ娯楽の収益化も改善する。
- 喜馬拉雅・長尺音声:数量 0.3(有料音声会員・広告収益を換算した年間収益化利用者数(億人相当))× 価格 55(収益化利用者1人相当の年間売上(ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 5 億ドル。喜馬拉雅の収益化利用者3200万人相当。会員特典、広告、車載音声が成功する。
倍率:k8.0%、g3.0%、事業ROEは36.9÷217.9で約16.9%。moat=normalの残存割合0.5からRONICは約12.46%。正当化PERは(1−0.03÷0.1246)÷(0.08−0.03)×1.03で約15.64倍。音楽会員の継続課金とIPの成長を評価するが、競争による超過利益の減衰を考慮し上限の約92%である14.4倍とする。純利益は株式報酬と買収償却を控除した会計利益。余剰資産34億ドルの利息相当0.476億ドルを純利益から除き、戻る割合50%の17億ドルを別に足す。
確率:楽観の成立には、無料利用者の減少を止め、SVIPへの転換を続け、さらに公演・IPと喜馬拉雅の両方を成功させる必要がある。2025年の会員課金と2026年のIP関連売上は好調だが、著作権規制と汽水音楽の競争があるため7%にとどめる。
やや楽観 17% やや楽観:会員の値上げとIP拡大が続き、買収の統合も進む 利益 28 億ドル · PER 13.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 24.56 ドル382 億ドル
音楽の有料会員は1億6500万人へ増える。2025年の年間平均から約32%増であり、中国の人口増加を当てにした数字ではない。主要アプリの無料利用者を会員に転換し、SVIPの特典を広げることで到達する。年間会費単価は30.2ドルとなり、物価に加えて高額会員の構成比上昇が効く。網易雲音楽と汽水音楽はシェアを広げるが、TMEも大規模な会員基盤を維持する。
公演、グッズ、広告の実質数量は2025年の1.78倍となる。広告単価には競争圧力が残るものの、IP商品や限定公演が全体の収益性を押し上げる。喜馬拉雅は音声会員の拡大と経費の統合によって売上が11.5億ドルとなり、利益率も22%へ改善する。音楽との共通会員特典により利用頻度が高まるが、音声市場を独占するほどにはならない。
ソーシャル娯楽は大きく成長せず、投げ銭規制の影響が残る。それでも音楽本体の高収益性が維持され、全社営業利益は約31億ドル、純利益は27.5億ドルとなる。経営は大型買収を控え、配当と自社株買いを続ける。10年間の正味還元は117億ドルで、喜馬拉雅取得時の新株発行による持分の希薄化相当額も控除した。堀は維持され、収益力は現在より高まる。
- オンライン音楽の会費:数量 1.7(年間平均の音楽有料会員数(億人))× 価格 30(有料会員1人当たり年間会費収入(ドル))→ 売上 50 億ドル・営業利益 19 億ドル。会員数が1.32倍。高額会員の浸透で年間単価が1.54倍となる。
- 音楽広告・公演・IP収益:数量 178(自社広告接触と公演・IP取引の実質複合数量指数(2025年=100))× 価格 0.18(複合数量指数1単位当たりの名目売上(億ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 9 億ドル。公演とIP商品の販売増加が広告接触数の伸び悩みを補う。
- ソーシャル娯楽・カラオケ:数量 0.1(年間平均のソーシャル課金利用者数(億人))× 価格 143(課金利用者1人当たり年間売上(ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。課金者数はおおむね維持され、高額な娯楽サービスの販売が改善する。
- 喜馬拉雅・長尺音声:数量 0.3(有料音声会員・広告収益を換算した年間収益化利用者数(億人相当))× 価格 46(収益化利用者1人相当の年間売上(ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 3 億ドル。音声の収益化利用者2500万人相当。会員の統合と車載利用が進む。
倍率:k8.0%、g3.0%、事業ROEは27.5÷197.9で約13.9%。moat=normalでRONICは約10.95%。10年目利益に対する正当化PERは約14.96倍。会員課金とIP拡大の実績があるため上限の約90%となる13.5倍を採用する。中国の著作権競争と買収統合リスクのため上限を使い切らない。純利益は会計利益。余剰資産34億ドルの利息相当0.476億ドルを控除し、実現割合50%の17億ドルを足す。
確率:高額会員の増加と広告・公演の伸びには実績があり、喜馬拉雅との統合にも合理性がある。しかし無料利用者が減少しているため、楽観より実現しやすいものの17%に抑える。
中立 34% 中立:有料化は続くが、音楽配信は成熟し社会娯楽が縮む 利益 20 億ドル · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 17.21 ドル267 億ドル
2035年の音楽有料会員は1億4500万人となる。2025年の1億2510万人から10年間で約16%の増加であり、無料利用者の減少を課金率の上昇で補う形だ。年間会費単価は27.7ドルとなり、米国共通前提の名目物価上昇におおむね沿う。高額会員への移行は続くが、網易雲音楽と汽水音楽が価格競争を仕掛けるため、物価を大きく上回る値上げまではできない。
公演、IP商品、広告の実質数量は2025年の1.51倍となる。公演やグッズへの支出が増える一方、広告はAIによる音楽発見の変化でアプリ画面への来訪が伸びにくい。ソーシャル娯楽は課金者が550万人に減り、投げ銭単価も低下する。2026年に買収した喜馬拉雅は年間売上7.6億ドルの事業となり、音声作品と車載音声が安定した収益を生む。ただし、巨額の追加買収や音声市場の独占は想定しない。
全社売上は約80億ドル、営業利益は約21.6億ドル、純利益は20.2億ドルとなる。営業利益率は約27%で、2025年の29.4%より低い。音楽配信の収益力は続くが、公演費用と新規音声事業が利益率を抑えるためだ。10年間の利益累計は170億ドル、正味還元は95億ドルとなり、自己資本は約190億ドルへ増える。過去の利益率改善がある程度残るものの、堀は大きく広がらず、成熟した音楽プラットフォームになる。
- オンライン音楽の会費:数量 1.5(年間平均の音楽有料会員数(億人))× 価格 28(有料会員1人当たり年間会費収入(ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 14 億ドル。有料会員1.45億人。数量1.16倍、年間単価1.41倍。会員転換が人口減少を補う。
- 音楽広告・公演・IP収益:数量 151(自社広告接触と公演・IP取引の実質複合数量指数(2025年=100))× 価格 0.17(複合数量指数1単位当たりの名目売上(億ドル))→ 売上 26 億ドル・営業利益 6 億ドル。実質取引量1.51倍、単価約1.37倍。公演・グッズが拡大し、広告にはAIによる接触減少を含める。
- ソーシャル娯楽・カラオケ:数量 0.1(年間平均のソーシャル課金利用者数(億人))× 価格 115(課金利用者1人当たり年間売上(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。課金者550万人。投げ銭規制と競争で単価は物価に追いつかず、事業は縮小する。
- 喜馬拉雅・長尺音声:数量 0.2(有料音声会員・広告収益を換算した年間収益化利用者数(億人相当))× 価格 38(収益化利用者1人相当の年間売上(ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。音声の収益化利用者2000万人相当。買収後の会員・広告収入が緩やかに増える。
倍率:k8.0%、g3.0%。事業ROEは20.2÷189.9で約10.64%。moat=normal、残存割合0.5からRONICは約9.32%。正当化PER=(1−0.03÷0.0932)÷(0.08−0.03)×1.03で約13.97倍。会費収入の安定を評価するが、音楽著作権の競争、無料利用者の減少、ソーシャル娯楽の縮小から上限の約91%である12.7倍とした。ROEがkを上回るため1÷kの12.5倍も下回らない。GAAPに相当するIFRS純利益を用い、株式報酬と買収償却を戻していない。余剰資産の利息相当0.476億ドルを除いた事業純利益19.724億ドルにPERを掛け、資産の実現価値17億ドルを足す。
確率:2025年の音楽会員数とARPPUの伸び、2026年の音楽関連収入の増加を評価する一方、無料利用者の減少とソーシャル娯楽の縮小を反映する。喜馬拉雅が大きく失敗も成功もしない筋書きとして34%とする。
やや悲観 26% やや悲観:無料アプリに会員を奪われ、音声買収の利益も伸びない 利益 10 億ドル · PER 9.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6.29 ドル98 億ドル
2035年の音楽有料会員は1億2200万人と、2025年の水準をやや下回る。汽水音楽が抖音からの集客を広げ、網易雲音楽も独自のコミュニティーで利用者を維持する。TMEの無料利用者が減り続けることで、新しい会員を獲得する費用が上がる。年間会費単価は23ドルにとどまり、名目物価に追いつかない。高額会員は残るが、割引や無料プランへの移行が増える。
公演やIP商品の取引量は増えるものの、広告表示の接触機会が減り、複合数量は2025年の1.10倍にとどまる。ソーシャル娯楽は課金者400万人となり、投げ銭規制と動画配信競争で売上が半減に近づく。喜馬拉雅も会員の重複が多く、音声広告の単価が弱いため、売上は4.5億ドル程度にとどまる。買収による新しい利用場面は増えたが、投資額に見合う利益を得られない。
全社売上は約52億ドル、営業利益は約10.5億ドル、純利益は9.5億ドルとなる。営業利益率は20%程度で、2025年の水準を維持できない。営業費用と音楽著作権料が重く、追加の買収は行わない。10年間の純利益累計は112億ドルだが、還元は55億ドルへ縮小する。喜馬拉雅の買収で既に発行した株式の対価も正味還元から控除する。堀は狭まり、以前のような利益率で値付けできない会社になる。
- オンライン音楽の会費:数量 1.2(年間平均の音楽有料会員数(億人))× 価格 23(有料会員1人当たり年間会費収入(ドル))→ 売上 28 億ドル・営業利益 8 億ドル。有料会員数は約2%減。年間単価は1.17倍で物価上昇率を下回る。
- 音楽広告・公演・IP収益:数量 110(自社広告接触と公演・IP取引の実質複合数量指数(2025年=100))× 価格 0.15(複合数量指数1単位当たりの名目売上(億ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 2 億ドル。公演は増えても広告の接触量と価格が伸びず、IP収益の利益率が低下する。
- ソーシャル娯楽・カラオケ:数量 0.0(年間平均のソーシャル課金利用者数(億人))× 価格 95(課金利用者1人当たり年間売上(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。課金者400万人。規制と競争によって仮想ギフト収入がさらに減る。
- 喜馬拉雅・長尺音声:数量 0.1(有料音声会員・広告収益を換算した年間収益化利用者数(億人相当))× 価格 32(収益化利用者1人相当の年間売上(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。音声の課金者相当は1400万人にとどまり、買収による成長が失速する。
倍率:事業ROEは9.5÷171.9で約5.53%とk8.0%を下回る。利益を再投資しても株主価値を十分に増やせないため、PERの上限は1÷kの12.5倍。会員流出と著作権費用の上昇が続く筋書きなので、上限より低い9.3倍を使用する。余剰資産は現在の34億ドルの75%に減って25.5億ドルとする。受取利息相当0.357億ドルを純利益から除き、戻る割合50%の12.75億ドルを足す。過去の市場倍率や現在の株価から倍率を決めていない。
確率:音楽の無料月間利用者減少、競合の拡大、ソーシャル娯楽の収入減少は実際に起きている。さらに喜馬拉雅の統合利益が想定を下回る可能性は十分あるため26%とする。AIの広告接点縮小は数量側に織り込み、確率で重複させない。
悲観 16% 悲観:音楽アプリの競争力が崩れ、買収資産の減損も重なる 利益 3 億ドル · PER 8.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2.20 ドル34 億ドル
2035年には音楽の有料会員が8500万人へ減る。汽水音楽が無料の音楽発見と視聴を握り、網易雲音楽も独自のファンコミュニティーを維持する。音楽会社は配信先を分散させ、TMEに対して著作権料の引き上げを求める。年間会費単価は19.5ドルと2025年並みに戻る。名目物価が10年で上昇していることを考えれば、これは実質的な大幅値下げである。
広告と公演・IP事業の実質数量は2025年の7割となる。無料アプリで音楽が消費され、TMEが販売できる広告接触の価値が低下する。ソーシャル娯楽は課金者250万人まで減り、配信者への分配負担も残る。喜馬拉雅では音声作品の差別化が難しくなり、会員数と広告単価が低迷する。買収で生じた無形資産やのれんの減損も必要となる。
全社売上は約29億ドルに減り、営業利益は約3.6億ドル、純利益は3.2億ドルとなる。利益率を過去のピークへ戻す根拠はなく、設備や開発費を抑えて小さな利益を維持する会社になる。2026年以降の10年間で減損前の累積利益を約52億ドルと見込むが、IPと買収資産の減損など約27億ドルを差し引き、純利益の累計は25億ドルとなる。正味還元は14億ドルに細り、自己資本は約126億ドル残るが、その大半を高い収益率で使えない。保有資産の一部は残るため倒産に近い状態とはしないものの、音楽配信の堀は大きく失われる。
- オンライン音楽の会費:数量 0.9(年間平均の音楽有料会員数(億人))× 価格 20(有料会員1人当たり年間会費収入(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。有料会員が約3分の1減り、会費単価も名目でほぼ横ばいとなる。
- 音楽広告・公演・IP収益:数量 70.0(自社広告接触と公演・IP取引の実質複合数量指数(2025年=100))× 価格 0.12(複合数量指数1単位当たりの名目売上(億ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。広告接触とIP取引が減少し、値段も物価に全く追いつかない。
- ソーシャル娯楽・カラオケ:数量 0.0(年間平均のソーシャル課金利用者数(億人))× 価格 70(課金利用者1人当たり年間売上(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。課金者250万人となり、固定費と配信者関連費用を賄えず赤字となる。
- 喜馬拉雅・長尺音声:数量 0.1(有料音声会員・広告収益を換算した年間収益化利用者数(億人相当))× 価格 23(収益化利用者1人相当の年間売上(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。音声の有料利用と広告収入が弱まり、買収時に期待した規模に届かない。
倍率:2035年のROEは3.2÷125.9で約2.54%とk8.0%を大幅に下回る。ROEが資本コストを超えないためPERの上限は1÷kの12.5倍。音楽のシェア喪失と収益悪化が長引き、その後の実質成長も見込めないので8.7倍とする。これには成長率の低下と新規投資の低収益を反映している。余剰資産は17億ドルまで減り、利息相当0.238億ドルを利益から控除したうえで、戻る割合50%の8.5億ドルを別に足す。時価総額は(3.2−0.238)×8.7+8.5=約34.27億ドル。税後で換金できる資産の床32億ドルを下回らない。
確率:無料音楽アプリへの利用者流出、著作権費用の上昇、ソーシャル娯楽の継続的な縮小、中国の規制強化、喜馬拉雅の減損が重なる必要がある。単純な景気後退ではなく構造的な負けであり、確率は16%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
オンライン音楽の会費
QQ音楽、酷狗音楽、酷我音楽などの有料会員課金。標準会員、広告つき会員、高額なSVIPなどを含む。2025年売上の約54%に相当する。
| 数量年間平均の音楽有料会員数(億人) | 価格有料会員1人当たり年間会費収入(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.3 | 20 | 25 | 10 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 28 | 40 | 14 |
取り方:2025年20-Fの年間平均有料会員1億2510万人と月額平均課金11.8人民元を使用した。会社開示の年間会費売上176.60億人民元は約25.25億ドルだが、財務は添付factsの全社売上45.8億ドルを正とするため、公式の売上構成比53.67%を適用して24.6億ドルとし、対応する単価を19.65ドルに統一した。営業利益は部門別に開示されず、音楽のロイヤルティとプラットフォーム費用を考慮した推定である。中国市場は主要二社の会費売上合計約227億人民元を起点に、他社を含む市場全体を250〜300億人民元と概算し、TMEの売上シェアを59〜71%と推定する。競合の網易雲音楽の2025年会費売上は約50.5億人民元。ほかに汽水音楽などがあり、会社の正式な市場シェアではない。中立では会員数を10年で1.16倍、単価を1.41倍とする。
音楽広告・公演・IP収益
自社音楽媒体の広告、コンサートやファンイベント、アーティスト関連グッズ、デジタルアルバム、著作権ライセンスなど。会費以外の音楽関連事業。
| 数量自社広告接触と公演・IP取引の実質複合数量指数(2025年=100) | 価格複合数量指数1単位当たりの名目売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.13 | 13 | 3 |
| 10 年後 中立 | 151 | 0.17 | 26 | 6 |
取り方:2025年20-Fでは非会費のオンライン音楽収入が90.66億人民元であり、全社45.8億ドルと整合するよう同事業の売上構成比27.55%を掛けて12.6億ドルとした。広告表示回数、公演観客数、グッズ数量の内訳は会社が開示していないため、数量は広告接触量と公演・IP商品の実質取引量を組み合わせた標準指数で表す。これは人数や公演数の実測値ではない。中国演出業界協会の2025年公演観客約1.94億人、興行収入約616.6億人民元を外部市場の物差しとし、広告はTMEが保有する音楽利用者基盤から発生すると考える。市場全体に対するTMEの公演単独シェアは非開示なので断定しない。2035年中立の数量151は、広告接触の実質成長を抑え、公演・IP販売を強める複合想定である。価格指数の上昇は物価よりやや低い。広告は自社媒体の枠の販売であり、広告制作・運用受託ではない。AIエージェント代替によるアプリ画面への来訪減少を数量に含めた。
ソーシャル娯楽・カラオケ
全民K歌などのカラオケ、音楽ライブ配信、仮想ギフト、ソーシャル会員と広告。配信者への収益分配と規制の影響が大きい。
| 数量年間平均のソーシャル課金利用者数(億人) | 価格課金利用者1人当たり年間売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.1 | 123 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 115 | 6 | 1 |
取り方:2025年20-Fのソーシャル娯楽等売上61.76億人民元は全社の18.8%であり、添付facts基準では約8.6億ドルとなる。2024年の開示では年間平均課金者数790万人、月額ARPPU70.2人民元だったが、2025年の同一形式の数量は確認できない。2025年は利用者減少を踏まえ年間平均700万人と推定し、総売上を割った年間単価を約123ドルとする。2022年から2024年にかけてソーシャルARPPUは大幅に下落しており、今後の価格が物価に追いつかない根拠になる。競合は抖音、快手など大規模なライブ配信事業者で、同じ定義の市場規模とシェアは開示されていない。投げ銭規制のため中立では数量と単価の両方が縮む。利益率は部門開示がないため、配信者分配と管理費を考慮した推定である。
喜馬拉雅・長尺音声
2026年5月に買収した音声配信事業。朗読、ポッドキャスト、会員課金、広告、車載音声などを含む。FY2025の連結実績には含まない。
| 数量有料音声会員・広告収益を換算した年間収益化利用者数(億人相当) | 価格収益化利用者1人相当の年間売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 32 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 38 | 8 | 1 |
取り方:喜馬拉雅の買収完了日は2026年5月18日なので、2025年のTME連結売上には含めない。2026年4〜6月決算では買収後の約44日間に4.07億人民元、約0.60億ドルの売上が連結された。これを単純年換算すると約5億ドル規模だが、季節性と会計上の範囲に注意が必要である。過去の喜馬拉雅資料では月間課金利用者が約1500万人台と報告されており、年間売上を課金者相当で割った収益化単価は数十ドルと推定できる。広告と非会員収益も含まれるので、数量は実人数と完全には一致しない。2025年の基準価格32ドルは将来予測の参考単価で、2025年にTMEが販売した価格ではない。音声分野で喜馬拉雅は大手だが、音声市場全体での統一シェアは確認できない。会社は2026年の買収後に会員、広告、技術の統合を開始した。
リスクと懸念
音楽利用者の減少と競合への流出
音楽の年間平均月間利用者は2023年の5億8900万人から2025年の5億4700万人へ減少した。現在は有料化率の上昇が収入を支えているが、この流れは永続しない。汽水音楽が抖音の推薦機能から利用者を呼び込み、網易雲音楽もファンのコミュニティーを維持すれば、新規会員数が減る。会費を上げた時に解約が増えるようになれば、数量と単価の両方が予想を下回る。
著作権料と競争法による堀の縮小
2021年の中国当局の命令で、テンセント側は音楽の独占的な著作権契約を解消した。曲の独占で利用者を囲い込む力は弱まった。人気アーティストや大手レーベルが複数の配信会社に楽曲を提供できるため、TMEは利用者の規模だけで著作権料を抑えられなくなる。網易雲音楽が2024年に起こした競争関連訴訟も、将来の事業条件に不確実性を残している。
AIエージェント代替と無料コンテンツ
TMEの音楽会員は人月課金や業務ソフトではないため、その代替率をそのまま適用する対象ではない。一方、自社媒体の広告枠はAIエージェント代替の影響を受ける。利用者がAIアシスタントや短編動画から直接音楽を再生すれば、音楽アプリを開いて広告を見る機会が減る。また、AI音声合成によって一般的な朗読や音声番組が大量生産されれば、喜馬拉雅の独自作品の希少性が低下する。中立では広告関連数量と長期のgに反映し、同じ理由で資本コストを引き上げていない。
喜馬拉雅の買収価格と統合リスク
2026年に買収した喜馬拉雅の取得対価は約140億人民元に達し、現金支出と新株発行の両方を伴った。買収後の売上は増えるが、それだけでは株主価値が増えたことにはならない。音声会員と音楽会員の重複、広告単価の弱さ、コンテンツ投資、無形資産の償却が想定以上なら、買収資産の減損につながる。株式発行による持分の希薄化も、実際の株主収益を下げる。
中国のVIEと支配株主による少数株主リスク
TMEはケイマン諸島の持株会社で、中国事業の重要な許認可はVIEと呼ばれる契約上の支配関係を通じて保有している。さらにテンセントは複数種類株と議決権委任などによって圧倒的な議決権を持つ。少数株主は関連当事者取引、大型買収、配当方針を変更させにくい。契約支配への規制、海外上場規則の変更、中国からの送金制約が強まる場合、営業利益が残っても株主の回収価値は低下しうる。
ソーシャル娯楽の構造的な縮小
ソーシャル娯楽の収入は2023年の104.27億人民元から2025年の61.76億人民元へ縮小した。2026年4〜6月も前年同期比16.4%減である。未成年者の支出制限やライブ配信の規制、抖音や快手との競争が継続すれば、仮想ギフトの課金者と単価はさらに減る。事業規模が小さくなっても運営費用の一部は残るため、赤字化すると音楽会員事業の利益を食い始める。
保有株式の価格変動と借り換え・資本配分
TMEはスポティファイとユニバーサル・ミュージック・グループなどの上場株式を保有する。2025年末から2026年6月末にかけて、その評価額は約262億人民元から約191億人民元に減った。これらの資産を現在の価値のまま永久に保有できる保証はない。さらに2026年9月には利率5%台の社債を発行しており、借入金で自社株買いを続ければ将来の利払いが増える。買収と買い戻しの優先順位を誤ることが長期の株主価値を傷めうる。
今後の分かれ目
- 音楽の年間有料会員が2028年に1億4000万人を超え、ARPPUも上昇を続けたら
- 無料利用者の減少を有料化で補う仕組みが維持されていると判断する。中立の2035年有料会員数と単価を上方修正し、やや楽観の確率を上げる。ただし値上げによる利益率改善が実際に残っているかも確認する。
- 音楽の年間有料会員が2年連続で減少し、ARPPUも下がったら
- 会員課金の堀が縮小していると判断する。中立の数量と価格を同時に下げ、やや悲観と悲観の確率を引き上げる。無料アプリへの流出が一時的な景気要因でないかを重視する。
- 音楽会費以外の収入が年率10%以上で増え、営業利益率も維持できたら
- 広告枠だけでなく、公演やグッズへの収益の広がりが本物だと判断する。音楽IP関連の実質数量と利益率を引き上げる。一方、売上だけ増えて利益率が下がるなら、追加の成長価値は認めない。
- 喜馬拉雅の年間売上が8億ドル規模へ拡大し、買収関連費用を控除した営業利益率が15%を超えたら
- 買収資産の収益化が中立想定に近づいたと見る。音声事業の利益率と増分ROICを再評価し、買収失敗の確率を下げる。売上の統合だけでなく、追加投資を差し引いた利益を確認する。
- ソーシャル娯楽の売上減少が年15%以上で続き、赤字化したら
- この事業の縮小を一時的ではなく構造的なものとして扱う。悲観側の数量と利益率を引き下げ、経営が撤退や事業整理を進めなければ全社の利益予測も下げる。
- 新たな大型買収や増資が続き、正味還元が純利益を大幅に下回ったら
- 株主に残るオーナー利益が減ったと判断する。自己資本と現金の使い道を再評価し、資産の戻る割合を引き上げない。買収後の利益が投資額に見合うかを確認するまでは、楽観側の確率を増やさない。
- 中国のVIE規制や海外上場規則が厳しくなり、配当・送金に具体的な制限が生じたら
- 営業利益の予想が変わらなくても、少数株主の回収価値を引き下げる。余剰現金の実現割合と悲観の床を見直し、重大な場合は上場継続を前提とする分析そのものを停止する。
見ておくもの
- 音楽の年間有料会員数と有料化率。2026年以降は四半期のMAU・ARPPUの開示を終了するため、年末の会員数と会費収入を組み合わせて確認する。
- SVIP会員数と高額会員の構成比。2025年末の2000万人超からどれだけ増えるか。
- 音楽会費売上の成長率と、会費以外の音楽関連売上の成長率。
- 網易雲音楽と汽水音楽の利用者、会員価格、コンテンツ契約の変化。
- ソーシャル娯楽収入の減少率と配信者分配費用。
- 喜馬拉雅の売上・営業利益・会員収益、買収償却、のれん減損の有無。
- スポティファイ・ユニバーサル・ミュージック・グループの持分評価額と売却・配当の動き。
- 配当、自社株買い、新株発行、借入残高を差し引いた正味の還元。
- 中国の音楽著作権規制、網易雲音楽との訴訟、VIE・海外上場に関する政策。
- 2026年11月17日発表予定の第3四半期決算で、喜馬拉雅の連結効果と音楽関連収入の伸びが確認できるか。
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や市場PERを先に見て10年後の倍率を決めていない。2025年の会費売上を有料会員数と年間単価で再現し、非会費収入は会社の売上構成と公演市場、ソーシャル娯楽は過去の課金利用者、喜馬拉雅は2026年の買収後実績から組み立てた。10年目の利益には2025年の一時的な持分再評価益を繰り返していない。資本コストは8.0%、長期gは3.0%、堀はnormalとし、ROEからRONICを求めて正当化PERの上限を計算した。中立のPER12.7倍は理論上限約13.97倍の約91%であり、現在の市場倍率を参照していない。余剰資産は純現金と上場株式を区別して税・価格変動・株主への実現割合を調整した。中国事業はすでにIFRSのリース会計を使っており、家賃を固定負担として扱い、純現金を過大評価しない。中立の自己資本は114.9+170−95=189.9億ドルと整合する。5筋書きの時価総額は541.51、381.82、267.49、97.78、34.27億ドルの順に低下する。確率加重現在価値は約157.6億ドルで、添付基準の時価総額132.3億ドルに対して約19%高い。したがって総合判断はやや割安である。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%にquality0.0%を加え、資本コストを8.0%とした。βや現在の市場倍率は使わない。業界内ではHUYAより音楽会員課金の安定性が高く、ネットフリックスに近い資本コストとする。ただしテンセント支配、中国の規制、M&A失敗などの個別リスクは資本コストに加算せず悲観の筋書きと確率に入れる。事業の存続自体は現状で危機にないためdistress上乗せは不要である。
同じ業種(コミュニケーション・サービス)の AI 分析
読んだ資料
- Tencent Music Entertainment Group 2025 Annual Report, Form 20-F(2026年4月17日、事業構成・会員数・保有資産・VIE・支配株主)
- Tencent Music Entertainment Group Second Quarter 2026 Results(2026年8月11日、最新四半期・喜馬拉雅連結・自社株買い)
- Tencent Music Entertainment Group Announces Closing of US$1,000 Million Notes Offering(2026年9月10日、2031年・2036年満期の社債)