結論
アマゾンは、米国の e コマースの約 4 割を握る小売(自社販売と第三者の出品)、取扱高に乗る広告、クラウドの AWS という 3 つの事業を持つ。2025 年は売上 7,169 億ドル、営業利益 846 億ドル(営業利益率 11.8%)。2026 年 4〜6 月期は売上 2,006 億ドル(前年比 +20%)、営業利益 275 億ドル、AWS は 422 億ドル(+37%、18 四半期で最速)、広告は 198 億ドル(+26%)と勢いは増している。
事業の質は高い。小売は配送網と会員制(プライム)で規模の経済が効き、広告は小売の購買データに乗って粗利益が極めて高く、AWS は契約残高 4,960 億ドルで当面の需要を押さえる。利益の約 6 割は AWS、残りの多くは広告で、小売そのものの営業利益率は 1〜3% 台とみる。
バリュー投資の観点では、強さの代金を見る。2026 年の設備投資は約 2,200 億ドルで営業利益の約 2 倍、直近 12 か月のフリーキャッシュフローはマイナス 76 億ドルに落ちた。純利益には、アンスロピック持分の評価益(4〜6 月期だけで 534 億ドル)という営業と無関係な振れが乗る。事業ごとに市場(取扱高)× シェア(比率)× 価格(10 年で物価並みの約 1.4 倍)を積み上げ、10 年後の中立は営業利益が今の 3.7 倍。倍率は資本コスト 8.0%(基本 8.0% + quality 0%)の利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 2/3 ×(筋書きの ROE − k)。物流網と AWS の強い堀で残る割合 2/3。上限 16.7 倍)の 8 割にあたる約 13.3 倍で、時価総額は約 3.3 兆ドル。今の時価総額(2.7 兆ドル)からの年率は +3% 前後で資本コストに届かない。楽観・やや楽観の上振れは大きいが、やや悲観(AI の単価崩れ)なら 10 年の年率は -3%。総合の差は -28% 前後で、「優良な事業だが、今の値段は上振れを先取りしていてやや割高」が結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後もあるかを問う。答えは、ある。物流網・会員・購買データ・クラウドの規模はどれも複製が難しく、堀は広がる方向にある。事業の質への疑いは小さい。
次にオーナー利益を見る。営業利益 846 億ドル(2025 年)は株式報酬を費用に含むが、成長のための設備投資が減価償却を大きく上回る。2026 年は設備投資が約 2,200 億ドルで、直近 12 か月のフリーキャッシュフローはマイナス 76 億ドル。株主が自由にできる利益は、見かけの純利益 777 億ドルよりずっと小さい。しかも純利益にはアンスロピック持分の評価益という、事業と無関係な振れが乗る。
安全域の議論では、10 年後の中立は営業利益が今の 3.7 倍に育つが、利益ベースの PER 約 13 倍では年率 +3% 前後と資本コストに届かない。中立では安全域がなく、楽観・やや楽観(合計 4 割)の上振れを足しても今の値段をやや下回る。構造的に負ける悲観では 7 割下がる。AWS の AI 設備投資の回収という「わからない部分」が 2,000 億ドル規模で毎年乗っている点で、確信は事業の質には持てるが、値段には強くは持てない。経営の資本配分は、買収より自前の成長投資に偏り、高い値段で自社株を買わない点は良いが、還元がない点で株主の取り分は見えにくい。
何で稼ぐ会社か
アマゾンの売上の約 7 割は小売で、自社販売(1P)と、出品者に場所・決済・物流を貸す第三者サービス(3P。販売数量の約 6 割、売上は手数料と物流費として入る)、プライムなどの会員料、書籍・動画・音楽が含まれる。北米が約 6 割、海外が約 2 割。配送の速さと品ぞろえで購買の入口になっているため、客は検索を最初にアマゾンで行う。そこへ出品者が広告費を払って上位に出る(スポンサード・プロダクツ)。これが広告事業で、2025 年は約 690 億ドル、小売とは別の高収益の事業として値付けする。
AWS は 2025 年の売上が約 1,280 億ドル、営業利益率は 35% 台。仮想マシン、ストレージ、データベース、AI の基盤(自社チップのトレニアム、アンスロピックのモデルを使うベッドロック)を消費量で課金する。2026 年 4〜6 月期の営業利益は 166 億ドルで、全社の営業利益 275 億ドルの 6 割にあたる。電力・半導体・土地の確保が成長の上限で、需要が供給を上回る状態が 2027 年まで続くと会社は言う。
つまり利益の構造は「AWS + 広告が稼ぎ、小売が(ほぼ損益ゼロで)客と取扱高を集める」である。小売が集客装置として働く限り広告が伸び、AWS は別の顧客(企業・政府・AI 事業者)で伸びる。この 3 つは景気に対する強さが違い、AWS は契約で粘り、広告は景気に敏感で、小売は食料雑貨も扱うため比較的粘る。
優良さと弱いところ
堀は 4 つ。第 1 は物流網で、倉庫・配送・航空の固定資産を持つ競合は少なく、翌日配送を全国に敷くには何十年と数千億ドルが要る。第 2 は会員制のプライム(世界で 2 億人超)で、会員は送料の元を取るために買い物を集中させる。第 3 は広告で、購買の直前に出せるため効果が測れ、広告主はグーグルからお金を回す。第 4 は AWS の規模で、クラウド大手 3 社(アマゾン、マイクロソフト、グーグル)の寡占とデータ移行の費用が客を縛る。
資本効率は改善したが上がり切っていない。営業利益率は 2022 年の 2.6% から 11.8% へ、ROE は 19% 前後。ただし自己資本は 2025 年に 4,111 億ドルへ膨らみ(アンスロピック持分の評価益を含む)、設備投資が売上の 3 割を超えて減価償却が利益を削る局面にある。経営は創業者ジェフ・ベゾス氏から 2021 年にアンディ・ジャシー氏へ移り、人員削減と効率化で利益率を上げた点は評価できる。一方で自社株買いはほとんどなく、配当もない。
弱点は、設備投資の回収が見えにくいこと、アンスロピックへの出資が利益を大きく振らすこと、FTC(米連邦取引委員会)の独占禁止訴訟と EU のデジタル市場法、そして小売は中国系(テム、シーイン)とウォルマートに価格で追われること。事業の質は上位だが、予測のしやすさは 5 年前より落ちた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の e コマース売上は 2026 年 4〜6 月期に 3,402 億ドル(前年比 +12.2%)で、小売全体の 17.1%。年換算で約 1.4 兆ドルあり、10 年後に小売の 3 割前後(約 3 兆ドル)という中立の見通しを使う。成長は +12% から徐々に落ちるが、物価 3.5% が数量の弱さを補う。競争は、ウォルマート・ターゲット・コストコ・テム・シーインが相手で、アマゾンは米国の約 4 割を持つ首位。AI が買い物の入口を変える(検索から AI のエージェントへ)可能性があり、アマゾンは自前の AI 店員(ルーファス)を伸ばす一方、他社の AI から出品者のページを遮る方針を取っている。
広告はグーグル・メタが 8 割近くを持つ市場で、アマゾンは第 3 位。購買の直前に出せる強みで、年 +20% 台の伸びを保つ。ただし景気後退で広告費は真っ先に削られる。
クラウドは、マイクロソフト・グーグル・オラクルが同規模の増設をしており、業界ノートの基盤ソフト領域と同じ構図にある。2026 年の大手の設備投資は約 7,300〜8,050 億ドル、2027 年は 1 兆ドル前後の見方がある。AWS の足元の伸び +37% は AI の需要で、業界ノートは AWS を年 +15〜20% とする。循環でいえば、増設が一斉に稼働する 2027〜2028 年に計算の単価が下がるリスクがある。分かれ目は、AWS の成長が設備投資の増加を上回って続くかである。
資本政策と M&A
還元はほぼない。配当は出さず、自社株買いも 2022 年の 60 億ドルが最後で、株数は株式報酬で年 1〜2% 増えている。資本は全て設備投資(2026 年は約 2,200 億ドル、4〜6 月期だけで 542 億ドル)と買収・出資に回る。純有利子負債は 466 億ドル(時価総額の 1.7%)と小さいが、フリーキャッシュフローがマイナスに転じ、社債の発行が増えている。
M&A は、ホールフーズ(2017 年、約 137 億ドル)、MGM(2022 年、約 85 億ドル)が大型で、規制で iRobot の買収は 2024 年に断念した。今後の大型買収は FTC・EU の審査で難しく、買われる側になる可能性もない。重心は AI への出資で、アンスロピックに合計 80 億ドルを出し、その評価益が利益に乗る。
今後の資本配分の鍵は、設備投資の回収率が資本コスト 8.0% を上回るか、そして設備投資が一巡した後に自社株買いと配当へ振り向けるかである。経営が還元に動くのは、早くて設備投資のピークを過ぎた 2030 年以降とみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AWS は 2026 年 4〜6 月期に前年比 +37%、営業利益率 39% で、契約残高 4,960 億ドルが 2〜3 年分の売上を押さえている。AI の需要は供給を上回り、電力と半導体を押さえた者が価格を決める。自前チップ(トレニアム)で粗利益も守れる。広告は年 +26% で伸び、購買の直前に出せるので、グーグルから広告費を奪い続ける。小売は物流の自動化(ロボット)で人件費を抑え、営業利益率が 1 桁後半へ上がれば、全社の営業利益は 10 年で 4〜5 倍になりうる。
さらにアンスロピックの持分は、同社の上場や評価額の上昇で数千億ドルの含み益になりうる。設備投資は重いが、データセンターは希少な資源で、10 年単位で稼働率が高く回収できる。AI のエージェントが買い物を代行する世界でも、品ぞろえと配送を持つアマゾンは入口を失わず、むしろ強まる。 さらに、経営が設備投資のピークを過ぎれば自社株買いに動く余地があり、10 年後のオーナー利益は今より大きく増える。物流網・会員・クラウドの規模という 3 つの堀は、時間とともに競合との差を広げる方向に働く。
慎重な見方
利益の質が落ちている。設備投資が営業利益の 2 倍になり、フリーキャッシュフローはマイナスに転じた。2026 年の 2,200 億ドルはメモリ価格の高騰で上がったもので、同じ設備が割高になっている。純利益は、アンスロピックの評価益で膨らんでいて、事業の稼ぎ方を示さない。AWS の契約残高は、アンスロピックやオープンエーアイなど赤字の AI 事業者に偏っており、資金調達が止まれば質が落ちる。
クラウドは、マイクロソフト・グーグル・オラクルが同じ規模の増設をしており、2027〜2028 年に供給が追いつくと単価が崩れる。広告は景気後退で真っ先に減り、AI の検索・エージェントが購買の入口を握れば、手数料と広告の価値が下がる。小売は、テム・シーイン・ウォルマートの価格競争と、FTC の訴訟・EU の規制で利益が削られる。PER 35 倍は、これらの全部を割り引かずに 10 年成長が続くことを前提にしている。資本コスト 8.0% の利益ベースで見ると、中立の 10 年後でも年率は資本コストに届かない。
どちらに重みを置いたか
事業の質と足元の勢いは強気の見方が強く、確率は楽観側に寄せた(楽観・やや楽観の合計 4 割)。値段の議論は互角に近い。倍率を利益ベース(資本コスト 8.0%・資本コストを超える ROE は先で薄れる)にすると、中立の 10 年後(PER 約 13 倍)の年率は +3% 前後で資本コストに届かず、楽観側の上振れを足しても期待値は今を 3 割近く下回る。一方、設備投資の回収に失敗するやや悲観では 10 年の年率が -3% で、慎重な見方にも分がある。悲観は 12%(構造的な負けと AI 設備投資の失敗)に置いた。結論は「優良な事業だが、やや割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 336.08 ドル3.64 兆ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 37.13 ドル4,020 億ドル)。 今の値に割り戻すと 180.94 ドル1.96 兆ドル、今との差 −27.7%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 14% | 623.91 ドル6.76 兆ドル | 73.89 ドル8,000 億ドル | +178.7% | +10.8% | 97.69 ドル1.06 兆ドル |
| やや楽観 | 26% | 452.38 ドル4.90 兆ドル | 50.80 ドル5,500 億ドル | +101.0% | +7.2% | 130.83 ドル1.42 兆ドル |
| 中立 | 30% | 308.29 ドル3.34 兆ドル | 32.33 ドル3,500 億ドル | +36.0% | +3.1% | 102.18 ドル1.11 兆ドル |
| やや悲観 | 18% | 165.03 ドル1.79 兆ドル | 18.47 ドル2,000 億ドル | −26.7% | −3.1% | 33.03 ドル3,576 億ドル |
| 悲観 | 12% | 74.39 ドル8,054 億ドル | 4.62 ドル500 億ドル | −68.4% | −10.9% | 9.48 ドル1,026 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 336.08 ドル3.64 兆ドル | 37.13 ドル4,020 億ドル | +49.1% | +4.1% | 373.21 ドル4.04 兆ドル |
今の株価時価総額 250.38 ドル2.71 兆ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 14% 楽観:購買の入口と AI 基盤の両方を握り、小売の収益性も上がる 利益 4,094 億ドル · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 623.91 ドル6.76 兆ドル
10 年後(2035 年)、e コマースが小売の 35% になり、取扱高は 2.3 兆ドル。AI のエージェントが購買を代行する世界でも、品ぞろえと配送を持つアマゾンが入口を握る。広告は取扱高の 15% で 3,450 億ドル、営業利益率 50%。AWS は市場 2.2 兆ドル・シェア 28% で 6,160 億ドル、営業利益率 38%。小売は物流の自動化で営業利益率 7% まで上がる。アンスロピックの持分が数千億ドルに育つ。規制は和解で収まり、AI 事業者の契約も予定どおり売上に変わる。事業の質の高さから、オーナー利益のうち株主還元に回る割合が上がり、自社株買いが増える。倍率は正当化 PER 18.3 倍の 9.0 割にあたる 16.5 倍に置いた。
- AWS(クラウド):数量 15,603(クラウド基盤・AI 基盤・サーバーソフトの世界市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質))× 価格 39.5%(アマゾンのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 6,160 億ドル・営業利益 2,341 億ドル。市場 +14%/年・シェア 28%(シェア・比率 28%・物価指数 1.41)
- 広告:数量 16,312(アマゾンの総取扱高(億ドル、自社販売と第三者の合計、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.21(取扱高に対する広告売上の比率(テイクレート)× 物価指数)→ 売上 3,450 億ドル・営業利益 1,725 億ドル。広告は取扱高比 15%(シェア・比率 15%・物価指数 1.41)
- 小売・会員・その他:数量 16,312(アマゾンの総取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.93(取扱高に対する売上の比率(自社販売の売上と手数料・物流・会費)× 物価指数)→ 売上 15,180 億ドル・営業利益 1,063 億ドル。自動化・収益性向上(シェア・比率 66%・物価指数 1.41)
倍率:上限の正当化 PER 18.3 倍に対し、16.5 倍(9.0 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(楽観 +1.0 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 15.0%(k 8.00% + 残る割合 0.67 ×(事業の ROE − k))、moat は 強い。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 18.5%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 4094 億ドル × 16.5 倍で 67551 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:物流・会員・購買データの堀が広がり、AI のエージェントの買い物も自社に集まる展開。大型の事業で 10 年間これが続く確率は 1〜2 割。
やや楽観 26% やや楽観:堀は広がるが、AI の単価競争で AWS は年 +13% 台 利益 3,274 億ドル · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 452.38 ドル4.90 兆ドル
10 年後、取扱高は 2.1 兆ドル。AWS は市場 2 兆ドル・シェア 26% で 5,200 億ドル、営業利益率 36%。広告は 2,940 億ドル、営業利益率 48%。小売は営業利益率 6%。マイクロソフト・グーグルとの価格競争は続くが、アマゾンは自前チップの原価差と物流の規模で守る。純利益は 3,280 億ドル(2025 年の 4.2 倍)、利益ベースの正当化 PER の 90% で PER 約 14 倍。アンスロピックなどの持分は評価益として別に残り、設備投資が一巡した後は自社株買いが少しずつ始まる。規制は続くが、事業分割には至らない。倍率は正当化 PER 17.6 倍の 8.5 割にあたる 15.0 倍に置いた。
- AWS(クラウド):数量 14,184(クラウド基盤・AI 基盤・サーバーソフトの世界市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質))× 価格 36.7%(アマゾンのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 5,200 億ドル・営業利益 1,872 億ドル。市場 +13%/年(シェア・比率 26%・物価指数 1.41)
- 広告:数量 14,894(アマゾンの総取扱高(億ドル、自社販売と第三者の合計、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.20(取扱高に対する広告売上の比率(テイクレート)× 物価指数)→ 売上 2,940 億ドル・営業利益 1,411 億ドル。広告は取扱高比 14%(シェア・比率 14%・物価指数 1.41)
- 小売・会員・その他:数量 14,894(アマゾンの総取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.92(取扱高に対する売上の比率(自社販売の売上と手数料・物流・会費)× 物価指数)→ 売上 13,650 億ドル・営業利益 819 億ドル。営業利益率 6%(シェア・比率 65%・物価指数 1.41)
倍率:上限の正当化 PER 17.6 倍に対し、15.0 倍(8.5 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(やや楽観 +0.5 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 13.5%(k 8.00% + 残る割合 0.67 ×(事業の ROE − k))、moat は 強い。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 16.3%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 3274 億ドル × 15.0 倍で 48979 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:物流と広告の質は保たれ、クラウドは大手 3 社の寡占が続くが、AI の単価が下がり利益率は小幅に落ちる。
中立 30% 中立:優良な成熟企業として成長は年 +10%、倍率は平常化 利益 2,504 億ドル · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 308.29 ドル3.34 兆ドル
10 年後、売上は 1.9 兆ドル弱(2025 年の 2.6 倍、年 +10%)。取扱高 1.9 兆ドルで広告は 2,470 億ドル(取扱高比 13%、営業利益率 46%)、小売・会員は営業利益率 4.5%。AWS は市場 1.75 兆ドル(名目。価格は物価並みの 1.41 倍、実質の市場は 2.1 倍)・シェア 24.5%(マイクロソフト・グーグルと分け合い、首位は保つ)で 4,290 億ドル、営業利益率 34%。設備投資は売上の 2 割に落ち着き、減価償却の累積で利益率は伸びない。AI は基盤の一部になり、超過成長は一巡する。倍率は正当化 PER 16.7 倍の 8.0 割にあたる 13.3 倍に置いた。
- AWS(クラウド):数量 12,411(クラウド基盤・AI 基盤・サーバーソフトの世界市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質))× 価格 34.5%(アマゾンのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 4,288 億ドル・営業利益 1,458 億ドル。市場 +11.7%/年・シェア微増(シェア・比率 24.5%・物価指数 1.41)
- 広告:数量 13,475(アマゾンの総取扱高(億ドル、自社販売と第三者の合計、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.18(取扱高に対する広告売上の比率(テイクレート)× 物価指数)→ 売上 2,470 億ドル・営業利益 1,136 億ドル。広告は取扱高比 13%(シェア・比率 13%・物価指数 1.41)
- 小売・会員・その他:数量 13,475(アマゾンの総取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.90(取扱高に対する売上の比率(自社販売の売上と手数料・物流・会費)× 物価指数)→ 売上 12,160 億ドル・営業利益 547 億ドル。営業利益率 4.5%(シェア・比率 64%・物価指数 1.41)
倍率:上限の正当化 PER 16.7 倍に対し、13.3 倍(8.0 割)に置いた。新しく投じる資本の稼ぎは先で薄れるので 8.0 割に置いた。上限の中身は g 4.0%、RONIC 12.0%(k 8.00% + 残る割合 0.67 ×(事業の ROE − k))、moat は 強い。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 14.0%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 2504 億ドル × 13.3 倍で 33378 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:業界ノートの中立(e コマース 年 +9%、AWS 年 +12〜13%、小売の営業利益率 4〜5%)に沿う。
やや悲観 18% やや悲観:AWS の価格競争と小売の規制で利益率が下がる 利益 1,584 億ドル · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 165.03 ドル1.79 兆ドル
10 年後、AWS は大手 3 社の増設競争で価格が実質で毎年下がり、市場は 1.45 兆ドル、シェア 21% で 3,045 億ドル、営業利益率 28%。広告は AI の検索に入口を一部奪われ取扱高比 11%、営業利益率 42%。小売は FTC・EU の規制(手数料・自社優遇の制限)とテム・シーインの価格攻勢で営業利益率 3%。純利益は 1,590 億ドル。成長が 1 桁前半に落ち、ROE 11%・g 4% の利益ベースの正当化 PER の 90% で約 11.5 倍。それでも物流と会員は残るが、設備投資の回収に失敗した会社としての評価がつく。設備投資の回収率が資本コストをわずかに下回り、利益は伸びても価値は増えにくい。AI 事業者の契約は一部が他社へ移る。倍率は正当化 PER 15.0 倍の 7.5 割にあたる 11.3 倍に置いた。
- AWS(クラウド):数量 10,284(クラウド基盤・AI 基盤・サーバーソフトの世界市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質))× 価格 29.6%(アマゾンのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 3,045 億ドル・営業利益 853 億ドル。価格競争・シェア低下(シェア・比率 21%・物価指数 1.41)
- 広告:数量 12,411(アマゾンの総取扱高(億ドル、自社販売と第三者の合計、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.16(取扱高に対する広告売上の比率(テイクレート)× 物価指数)→ 売上 1,925 億ドル・営業利益 808 億ドル。入口の一部が AI へ(シェア・比率 11%・物価指数 1.41)
- 小売・会員・その他:数量 12,411(アマゾンの総取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.87(取扱高に対する売上の比率(自社販売の売上と手数料・物流・会費)× 物価指数)→ 売上 10,850 億ドル・営業利益 326 億ドル。規制・価格競争(シェア・比率 62%・物価指数 1.41)
倍率:上限の正当化 PER 15.0 倍に対し、11.3 倍(7.5 割)に置いた。中立(8.0 割)より 0.5 割低くした。利益の質が悪い筋書きだからだ。上限の中身は g 4.0%、RONIC 10.0%(k 8.00% + 残る割合 0.67 ×(事業の ROE − k))、moat は 強い。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 11.1%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 1584 億ドル × 11.3 倍で 17868 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:クラウド大手の価格競争と、小売への規制・中国系の価格攻勢が同時に進む展開。起きても不思議はない。
悲観 12% 悲観:構造変化で優良企業でなくなる(AI が入口を奪い、AWS の利益が崩れる) 利益 714 億ドル · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 74.39 ドル8,054 億ドル
10 年後、AI のエージェントが購買の入口を握り、アマゾンは「配送の下請け」に近づく。広告の価値が下がり、取扱高比 9%、営業利益率 35%。AWS は大手 3 社の消耗戦と設備投資の減損で営業利益率 22%、シェアは 18% に下がる。小売は FTC の命令で自社優遇と会員の抱き合わせを制限され、営業利益は 0 に近い。アンスロピックなどの AI 事業者の契約は縮み、持分は損失になる。営業利益は 899 億ドル(2025 年とほぼ同じ)、純利益 720 億ドル。成長が止まり、ROE 6.5% が資本コストを下回るので、伸びても価値は増えず PER は 1÷k = 約 11 倍。優良企業でなく普通の小売・インフラ会社としての値付けになる(PBR 約 0.7 倍。ROE が資本コストを下回るので、資産の帳簿価格を割る)。
- AWS(クラウド):数量 7,447(クラウド基盤・AI 基盤・サーバーソフトの世界市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質))× 価格 25.4%(アマゾンのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 1,890 億ドル・営業利益 416 億ドル。過剰設備・単価崩れ(シェア・比率 18%・物価指数 1.41)
- 広告:数量 9,929(アマゾンの総取扱高(億ドル、自社販売と第三者の合計、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.13(取扱高に対する広告売上の比率(テイクレート)× 物価指数)→ 売上 1,260 億ドル・営業利益 441 億ドル。入口を AI に奪われる(シェア・比率 9%・物価指数 1.41)
- 小売・会員・その他:数量 9,929(アマゾンの総取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.85(取扱高に対する売上の比率(自社販売の売上と手数料・物流・会費)× 物価指数)→ 売上 8,400 億ドル・営業利益 42 億ドル。規制・価格競争(シェア・比率 60%・物価指数 1.41)
倍率:式どおり:g 1.5%(g はこの筋書きの数量と価格から置いた)、ROE 6.5%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))、k 8.00%。(1−g÷RONIC)÷(k−g) の値は来年の利益に対する倍率なので、10 年目の利益には ×(1+g) で 11.3 倍。RONIC = k + 残る割合 0.67 ×(事業の ROE − k)= 7.0%。上限の正当化 PER 12.5 倍の 9.0 割で、上限の内側。10 年目の利益の伸びは年 10% 未満なので 1 段。時価総額は、書いた純利益 714 億ドル × 11.3 倍で 8054 億ドル。
確率:リーマン級の景気後退に加え、10 年の間に構造的な負け(AI のエージェントが買い物の入口を握る・クラウドの消耗戦・規制)が起きる。確率は 1 割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
AWS(クラウド)
クラウド基盤・AI 基盤・データベース。消費量課金で、契約残高が先の売上を押さえる。
| 数量クラウド基盤・AI 基盤・サーバーソフトの世界市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質) | 価格アマゾンのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 3 年 1.11・10 年 1.41) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,800 | 22.1% | 1,280 | 470 |
| 10 年後 中立 | 12,411 | 34.5% | 4,288 | 1,458 |
取り方:マイクロソフトの分析と同じ世界市場(2025 年は 5,800 億ドル、推定)に、AWS の 2025 年売上約 1,280 億ドルのシェア 22.1% を置いた。営業利益は決算の AWS 営業利益率 36〜37% から。売上 = 市場(実質)× シェア × 物価指数。競合はマイクロソフト(Azure、シェア 2 割強)とグーグル(1 割強)、オラクル。市場の名目の伸びのうち物価分(10 年 1.41 倍)を価格に、残りを実質の数量に置いた(AI 計算の単価の下落は実質の数量の伸びの中で吸収)。
広告
スポンサード・プロダクツ、動画広告、プライム・ビデオの広告。小売の購買データに乗る。
| 数量アマゾンの総取扱高(億ドル、自社販売と第三者の合計、2025 年の値段に直した実質、推定) | 価格取扱高に対する広告売上の比率(テイクレート)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8,000 | 0.09 | 686 | 310 |
| 10 年後 中立 | 13,475 | 0.18 | 2,470 | 1,136 |
取り方:総取扱高は 8,000 億ドル前後(推定)。広告売上 2025 年約 686 億ドルを割ったテイクレート 8.6%。営業利益率は開示がなく、粗利益が高い点から 45% と推定。売上 = 取扱高(実質)× テイクレート × 物価指数。リテールメディアではウォルマート・コネクト(約 64 億ドル)を大きく引き離し、デジタル広告全体ではグーグル・メタに次ぐ 3 位。
小売・会員・その他
自社販売、第三者の出品への手数料と物流、プライム会費、サブスク。広告は別。
| 数量アマゾンの総取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定) | 価格取扱高に対する売上の比率(自社販売の売上と手数料・物流・会費)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8,000 | 0.65 | 5,203 | 66 |
| 10 年後 中立 | 13,475 | 0.90 | 12,160 | 547 |
取り方:全社売上 7,169 億ドルから AWS(1,280)と広告(686)を引いた 5,203 億ドル。営業利益は全社 846 億ドルから AWS(470)と広告(310)を引いた残りで、約 1.3%。売上 = 取扱高(実質)× 比率 × 物価指数。米国の e コマースの約 4 割を握り、ウォルマート(1 割弱)、テム・シーインが価格で追う。
リスクと懸念
AI 設備投資の回収
2026 年の設備投資は約 2,200 億ドルで、営業利益の約 2 倍。直近 12 か月のフリーキャッシュフローはマイナスに転じた。AWS の AI の消費量が想定どおり伸びないと、減価償却だけが残り、営業利益率が 30% 台前半から 20% 台へ落ちる。メモリ価格の高騰で投資額が増えたことも原価を押し上げる。
アンスロピックなど AI 事業者への依存
AWS の契約残高 4,960 億ドルの多くが、まだ黒字化していない AI 事業者(アンスロピック・オープンエーアイ)に偏る。資金調達が止まれば契約の質が落ち、アンスロピック持分の評価益(4〜6 月期に 534 億ドル)も損に転じる。利益の振れが大きい。
クラウド大手の価格競争
マイクロソフト・グーグル・オラクルも同規模の増設を進め、2027〜2028 年に供給が追いつくと計算の単価が下がる。AWS は全社の営業利益の約 6 割を稼ぐため、利益率の低下が全社の利益を直撃する。 価格が下がる速さは、増設の稼働時期と需要の見通しの外れで決まり、数年のうちに急に来る。
規制と独占への反発
FTC の独占禁止訴訟(自社優遇・価格・出品者への手数料)と EU のデジタル市場法が続く。是正命令が出れば、広告の表示順や会員の抱き合わせに制限がかかり、広告・小売の利益率を削る。大型 M&A は事実上できない。 事業分割の命令は最悪の筋書きで、物流・広告・クラウドの一体運営が崩れる。
AI が購買の入口を変える
検索や AI のエージェントが購買の入口を握ると、アマゾンの広告(検索結果の上位枠)の価値と手数料の根拠が弱まる。アマゾンは自社の AI 店員(ルーファス)と他社の AI の遮断で守るが、客が離れる可能性は残る。 変化は 5 年かけて静かに進み、気づいた時には広告の単価が下がっている形になりやすい。
景気後退と関税
広告費・自社販売の数量・出品者の仕入れは景気後退で減る。2025 年の相互関税は中国製品の原価を押し上げ、価格を上げにくい。2008〜09 年と 2022 年に株価は 5 割以上下がった。 景気後退では AWS の契約が粘る分、全社の利益の落ち方は小売中心の会社より浅い。
今後の分かれ目
- AWS の成長が 35% 以上を 2027 年末まで保ち、設備投資の増加率が売上の増加率を下回ったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし倍率は成長の減速を先に映すので、時価総額が追いつく前に利益が伸びる保証はない。
- アンスロピックやオープンエーアイが資金調達に失敗する、または契約を大きく縮めたら
- AWS の契約残高の相当部分が揺らぐ。やや悲観の確率を大きく上げ、持分の評価損も織り込む。
- 広告売上が年 +20% を 2028 年まで保ち、取扱高比 12% を超えたら
- 広告の営業利益が楽観側へ寄る。小売の収益性が上がらなくても全社の利益は上振れする。
- クラウド大手の増設が稼働し、AI 計算の単価が 2 年で 3 割以上下がったら
- AWS の営業利益率は 30% 前後へ落ちる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- FTC が自社優遇や会員の抱き合わせの是正、または事業分割を命じたら
- 広告・小売の利益率が数ポイント下がり、倍率も 2〜3 倍下げて見る。
- 設備投資が売上の 20% 以下に落ち、フリーキャッシュフローが純利益の 8 割まで戻り、自社株買いが始まったら
- オーナー利益の質が改善し、倍率を 2〜3 倍上げてよい。
見ておくもの
- AWS の成長率と営業利益率、四半期の設備投資額(リース込み)と対売上比
- AWS の契約残高と、AI 事業者が占める割合
- 広告売上の伸びと、取扱高に対する比率
- 北米・海外の小売の営業利益率
- フリーキャッシュフローと、株式報酬を差し引いた正味の株主還元
- アンスロピック持分の評価益損(利益の一過性)
- FTC の訴訟・EU デジタル市場法の進展
倍率と資本コストの決め方
今の PER 34.8 倍を見る前に、AWS(市場 × シェア)、広告と小売(取扱高 × 比率)に分け、いずれも実質の数量 × 比率 × 物価指数(10 年 1.41 倍)で売上を、営業利益率で利益を積み上げ、次に ROE・g・k から倍率を決めた。倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 2/3 ×(筋書きの ROE − k)。物流網と AWS の強い堀で残る割合 2/3)の 8 割に置いた(k 8.0%・g 4%・ROE は筋書きの純利益 ÷ 自己資本で 6〜19%)。10 年目も年 1 割超で伸びる筋書きは、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g)。今の倍率には寄せていない。結果、10 年後の中立は資本コストに届かず、上振れを足しても「やや割高」に出た。上振れに頼る結論である点を確信度として書いた。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β 1.33 × 5%。資本コスト k = 基本 8.0% + quality 0% = 8.0%(v2。株価の揺れ(β)は使わない)。純有利子負債は軽く、事業も傾いていない。AI 設備投資とアンスロピック依存で予測しにくい面は個別のリスクなので k に足さず、確率(悲観 10〜12%)と筋書きの利益率で表した。extra は 0。