結論
ギフトホールディングスは、横浜家系ラーメンの「町田商店」を軸に、ガッツリ系の「豚山」、油そばの「元祖油堂」を広げるラーメン専業の会社である。2025 年 10 月期末で 901 店。直営が約 280 店で、残りは食材を買ってくれるプロデュース店と FC 店だ。
筆者の結論は割高である。稼ぐ力は本物だが、10 年後の中立でも利益は今の 3 倍にとどまり、今の時価総額 877 億円には届かない。
強みは「作る」と「売る」が一つにつながっていることだ。麺・チャーシュー・スープを自社の 8 工場で作り、全店に一括で運ぶ。直営店は店で稼ぎ、プロデュース店は食材を買うことで本部に利益を落とす。加盟料は取らない。店が増えるほど工場が埋まる、という循環が回っている。
売上は 5 年で 3 倍を超え、営業利益率は 9〜10%を保つ。2028 年 10 月期に売上 630 億円という計画も、足元の出店ペースからは無理がない。
それでも割高と見る理由は三つある。ラーメンは参入の壁が低く、家系を名乗る店も多い。出店のための設備投資が営業利益の 1.5 倍に達し、現金が残らない。家賃も年 27 億円と、売上の 7%超を固定で払う。
10 年の中立では、直営が年平均 600 店、プロデュース店が 1,100 店に育ち、純利益は 60 億円ほどになる。事業は強いが、今の値段はその先の成長まで織り込んでいる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い事業だが、払ってよい値段には限りがある。
まず事業の質を見る。工場から店舗までを一社で回し、原価と品質を握る。店が増えるほど固定費が薄まる。10 年後も存在し、今より強い可能性は高いと筆者は見る。
次に堀を見る。ラーメンというジャンルは参入の壁が低く、家系の看板を掲げる店は多い。味では差が付けにくい。堀は一括調達の規模と、直営の出店の速さにある。この差は、他社が追いつけば縮む。
オーナー利益、つまり再投資に使わずに株主が自由に使える利益を見る。営業利益は 34 億円だが、設備投資は 51 億円で、利益のほとんどを店に再投資している。株主に残る利益は、見かけより薄い。
経営については、創業者が一代で築いた速さは評価できる。M&A で価値を壊した過去はない。ただ、同じ速さで走り続けると、新しい店の質が落ちる可能性がある。
安全域の面では、今の値段は 10 年先の成長のかなりの部分をすでに織り込んでいる。中立の筋書きでも、10 年後の時価総額と還元を足して今の値段に届かない。強気の筋書きでようやく今の値段に並ぶ。持つ理由はあるが、払うならもっと安い値段が要る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は二本立てだ。一つは直営店、もう一つはプロデュース店への食材の販売である。
直営店は売上の約 86%を占める。町田商店が主力で、2025 年 10 月期だけで 26 店を出した。豚山は 6 店、油そばの元祖油堂は 15 店と、駅に近い小さな店を急いで増やしている。店は関東が中心で、東海・東北・近畿へ広がる。
プロデュース事業は売上の約 14%だ。町田商店のノウハウを渡し、他の事業者や個人が開く店に、スープ・タレ・麺・チャーシューを売る。店数は国内で 570 を超える。開業を手伝う費用や加盟料は原則取らず、食材を使い続ける約束を結ぶ。豚山と元祖油堂の FC は月額の定額で、海外の Machida Shoten は売上の一定割合か定額だ。
この食材は自社の工場で作る。製麺 5、チャーシュー 1、スープ 2 の計 8 工場で、物流拠点は 4 か所ある。直営店の原価を下げ、プロデュース店への供給で工場の稼働を上げる。
海外はまだ小さい。直営 6 店、プロデュース 13 店、FC 16 店で、中国は好調だが米国は立地と業態が合わず赤字が続き、不採算店を閉めている。
利益は開示がセグメントに分かれていない。店舗で稼ぐ分と、食材で稼ぐ分、本部の費用を足し引きして営業利益 34 億円になる。店は賃借が前提で、年間の家賃は 27 億円。直営店の増加は、そのまま固定の支払いの増加でもある。
優良さと弱いところ
筆者が評価するのは、店の人気ではなく仕組みの強さだ。
町田商店は 17 年で全国に広がったが、家系というジャンル自体は他社も出せる。堀は味ではなく、工場から店までを一社で回す力にある。スープと麺を全店で同じ品質にそろえ、365 日・翌日の納品を目指す。小さな新興チェーンにはまねしにくい。
プロデュース店は、独立したい人にとって「開業の入口」になる。加盟料が安く、食材は本部から買えばよい。この低いハードルで店数が伸び、本部は食材の利益を積み上げる。ただし店の質がばらつけば、ブランド全体の評判が傷む。
資本効率は高い。ROE は過去 10 年の中央値で 22%。ただし店を増やすたびに設備投資が要り、利益より早く現金が出ていく。ROE の高さは、店を出し続けられる間の数字だと見る。
弱い所もある。油そばは模倣されやすいと会社自身が書いている。類似の商号で家系を名乗る店も多い。賃借の店と人件費に頼る業態で、最低賃金の上昇は直接利益に響く。
経営は創業者の田川翔氏への依存が大きい。2008 年に個人で始めた店を、株式を公開する会社まで育てた実績は重いが、10 年先まで同じ規律が続くかは別の話だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ラーメン店の市場は広がっている。帝国データバンクによれば、2025 年度は 8,855 億円で、10 年前の 1.7 倍だ。2027 年度にも 1 兆円に届くとされる。
ただし広がっているのは金額で、杯数ではない。価格が上がった分が大きい。原価は 2020 年から 4 割上がり、倒産も 2025 年に 59 件ある。値上げが通る店と、通らない店の差が開く局面だ。
この中で、全国チェーンが勝ちやすい。食材の一括調達と自社工場で原価を抑え、駅前の出店と採用を同時に進められるからだ。小さな個人店は、原価と人手の上昇に耐えにくい。
同じ領域で大きな競合は、日高屋のハイデイ日高、幸楽苑、来来亭、魁力屋、壱角家、一蘭などだ。家系では壱角家が 130 店ほどで並び、豚山の近くには二郎系の店が多い。ギフトは直営の出店速度で他社を引き離してきた。
10 年の見通しは次のとおり。人口は減るので、国内のラーメンの杯数は横ばいかやや減る。伸ばすのは、市場の中での店のシェアと、客単価の上昇だ。ただし客単価は「千円の壁」に近づき、値上げの余地は物価並みが限度とみる。
海外は、日本のラーメンへの需要が強い。ただしギフトは足場が小さく、10 年の利益の柱になるのは国内の直営だと筆者は見ている。
資本政策と M&A
資本は、ほぼすべてを出店に回している。配当性向は 20%を目安とし、自社株買いの実績は確認できない。設備投資は 2025 年 10 月期に 51 億円と、営業利益の 1.5 倍に達した。
2026 年 10 月期の営業利益は 48 億円の見通しで、中期経営計画(2026〜2028 年)では 2028 年 10 月期に売上 630 億円、営業利益 63 億円、店舗 1,316 を掲げる。ROE20%以上を保つ目標も置く。
M&A は計画に重点テーマとして書かれているが、具体的な案件は出ていない。買う側として、繁盛店・チェーン・工場を探す姿勢だ。大型の買収で価値を壊した実績は今のところない。
筆者がこの会社で気にするのは、ためた利益の使い道である。ROE が高いうちは、再投資が正しい。ただし新しい店ほど、既存の町田商店ほどは稼がない。出店が先、利益が後という形が続くので、投資の質を見張る必要がある。
借金は少なく、純有利子負債は 37 億円。ただし家賃という固定の約束が年 27 億円あり、見かけほど身軽ではない。2028 年 3 月期ごろから新リース会計基準が適用され、貸借対照表の形が変わる点にも注意したい。
TOB の対象になる確率は、外部の試算で 10 年で 16%ほどだ。
株主優待(現物の還元):年およそ2億円を会社の費用ベースで見込む(優待(100株で年数千円)×優待株主約2万人×原価率。会社の開示額は確認できず推計)。費用は販管費として利益から引き済みなので、10年の還元には「年額×10×続く見込み」(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)を受け取り分として足した。自己資本の流れには入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
町田商店は 17 年で全国に広がり、いまも出店のたびに高い売上を出している。2026 年 10 月期は第 3 四半期までの経常利益が 56%増で、通期の見通しも上方に修正された。計画を毎年上回る会社である。
ラーメンは日本の国民食で、市場はまだ広がる。10 年後の市場を 1 兆 2 千億円とすれば、直営 900 店の売上は 1,500 億円ほどで、市場の 1 割強にとどまる。ハイデイ日高が数百店で外食の雄になった例を見れば、まだ小さい。
プロデュース事業が伸びる余地も大きい。独立したい人は多く、加盟料の安さで 1,700 店まで増える。食材の利益が毎年積み上がり、工場の稼働が上がるほど利益率が上がる。
駅近の小さな店は家賃が安く、立ち上げの投資が小さい。油堂のように新しいジャンルを足しても、同じ工場と物流で回せる。海外は中国で好調で、10 年かけて数百店の利益の柱に育つ。
計画の営業利益率 10%以上、ROE20%以上を守れるなら、10 年後の純利益は 110 億円を超える。倍率も高い ROE に応じて上がる。今の値段は、この道筋なら妥当だ。
慎重な見方
ラーメンは参入の壁が低く、会社自身も「模倣されやすい」と認めている。油そばは真似され、家系は同じ看板の店であふれる。流行のジャンルは 10 年も続かないことが多く、店が増えるほど 1 店当たりの客が減る。
出店のための投資は営業利益の 1.5 倍に達する。利益で賄えず、借金か増資に頼る。出店が鈍った瞬間に、これまでの高い成長を前提にした値付けは崩れる。
家賃は年 27 億円。売上が落ちても家賃は減らず、店の採算を直接削る。最低賃金が上がり続ければ、人手に頼る店の利益率は下がる。原価は 5 年で 4 割上がった。
プロデュース店は、本部が品質を直接管理できない。1 店の問題が、ブランド全体の評判に響く。店が増えるほど、管理の目は届かなくなる。
海外は、米国で赤字が続き不採算店を閉めている。小さな足場で「世界のラーメン市場の 5 割」を掲げるのは、現実とかけ離れている。創業者への依存も大きい。
計画の売上 630 億円は、出店が全部うまくいった場合の数字だ。既存店が前年並みという前提でも、新しい店の売上が既存の町田商店に届かなければ、利益率は落ちる。いまの値段は、その失敗の余地をほとんど見ていない。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の見方が勝つ。自社工場から店までの仕組みは本物で、成長の実績も重い。一方、値段の面では慎重な見方が勝つ。出店投資と家賃の重さ、参入の壁の低さは、利益の持続を疑わせる。
確率は中立を最も厚くし、強気側は 1 割にとどめた。やや悲観と悲観を合わせて 3 割強に置いたのは、流行の入れ替わりが速いジャンルだからだ。資本コストには個別の懸念を足していない。
10 年後の中立でも、時価総額と還元を足して今の値段に届かない。強気の筋書きでようやく並ぶ。総合は大きな割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 2,336 円937 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 343 円137 億円)。 今の値に割り戻すと 1,288 円516 億円、今との差 −43.4%、 期待の年率 +1.6%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,973 円1,994 億円 | 521 円209 億円 | +141.3% | +9.2% | 549 円220 億円 |
| やや楽観 | 24% | 3,673 円1,472 億円 | 446 円179 億円 | +80.9% | +6.1% | 989 円396 億円 |
| 中立 | 33% | 2,420 円970 億円 | 372 円149 億円 | +22.6% | +2.1% | 921 円369 億円 |
| やや悲観 | 21% | 672 円269 億円 | 239 円96 億円 | −60.0% | −8.8% | 191 円77 億円 |
| 悲観 | 12% | 149 円60 億円 | 87 円35 億円 | −89.6% | −20.3% | 28 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,336 円937 億円 | 343 円137 億円 | +17.7% | +1.6% | 2,679 円1,074 億円 |
今の株価時価総額 2,277 円913 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 強気:直営 900 店とプロデュース 1,700 店へ 利益 114 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 4,973 円1,994 億円
直営は 900 店、プロデュース店は 1,700 店まで広がる。町田商店に続き、豚山と元祖油堂が都市部の駅前に定着し、10 年のあいだ新しい店の売上が既存店に近い水準を保つ。
自社工場は稼働が上がり、食材の原価が下がる。プロデュース店の食材の利益が積み上がり、本部の利益率が上がる。直営店は新しい店ほど小さな投資で立ち上がり、営業利益率は 10%台を保つ。
海外は中国を柱に数百店の利益源となる。米国は立て直しが済み、赤字は消える。大型の買収はなく、出店と工場への再投資が中心で、創業者から次の世代への引き継ぎも円滑に進む。
この筋書きでも家賃と人件費は物価なみに上がる。だが値上げは物価並みに通り、客数は落ちない。
株主優待は現物の還元で、年およそ2億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に20億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 直営店(町田商店・豚山・元祖油堂ほか):数量 900(直営店の年平均店数(店))× 価格 1.63(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,469 億円・営業利益 191 億円。年平均 900 店・1 店売上の指数 1.34
- プロデュース・FC(食材の販売):数量 1,700(取引先のプロデュース店・FC 店の年平均店数(店))× 価格 0.11(1 店当たり年間食材売上(億円))→ 売上 194 億円・営業利益 58 億円。取引先 1700 店・1 店の食材売上の指数 1.34
倍率:事業の純利益 114 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍。全体の PER 17.34 倍、時価総額 1,977 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直営の出店速度と食材の利益が 10 年そろって計画を上回る必要があり、ジャンルの入れ替わりも早いので 1 割にとどめた。
やや楽観 24% やや強気:計画をほぼ達成し 10 年続く 利益 86 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 3,673 円1,472 億円
中期経営計画をおおむね達成し、そのあとも出店を続ける。直営は 750 店、プロデュース店は 1,400 店に達する。
新規の店は、既存の町田商店より売上がやや低い。それでも駅前の立地の良さと、工場からの安定した供給で、店ごとの採算は保つ。営業利益率は 10%近くで安定する。
値上げは物価をわずかに下回る水準にとどまる。客数が減る前の、ぎりぎりの線で止める。人件費の上昇は自動化と深夜帯の人員見直しでかなり吸収する。
海外は中国と東南アジアで数十店ずつ増える。大きな利益の柱にはならないが、国内への依存を少し薄める。M&A は工場や小さなチェーンを数件買う程度で、価値を壊すほどの失敗はない。
株主優待は現物の還元で、年およそ2億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に20億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 直営店(町田商店・豚山・元祖油堂ほか):数量 750(直営店の年平均店数(店))× 価格 1.61(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,206 億円・営業利益 151 億円。年平均 750 店・1 店売上の指数 1.32
- プロデュース・FC(食材の販売):数量 1,400(取引先のプロデュース店・FC 店の年平均店数(店))× 価格 0.11(1 店当たり年間食材売上(億円))→ 売上 159 億円・営業利益 46 億円。取引先 1400 店・1 店の食材売上の指数 1.33
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍。全体の PER 16.85 倍、時価総額 1,449 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2028 年 10 月期までの計画は足元の出店ペースの延長で現実的。その後 7 年も勢いを保てるかが分かれ目なので 2 割台とした。
中立 33% 中立:国内の出店が続き、成長は鈍る 利益 60 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 2,420 円970 億円
直営は年平均 600 店、プロデュース店は 1,100 店まで増える。ただし 2028 年以降は適した立地が減り、出店のペースは落ちる。
新しい店は、既存の町田商店より売上が低い。営業利益率は 9%ほどで、今より少し下がる。人件費と家賃が物価で上がり、値上げはそれに少し届かない。
プロデュース店は、独立希望者が減り、新しい店の質もばらつく。食材の利益は伸びるが、直営ほどは伸びない。
海外は小さな利益源にとどまる。ジャンルは定着し、会社は国内で 10 年かけて堅実に成長する優良なラーメンチェーンとなる。ただし高成長の時代は終わり、利益の伸びは売上の伸びに近づく。
株主優待は現物の還元で、年およそ2億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に20億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 直営店(町田商店・豚山・元祖油堂ほか):数量 600(直営店の年平均店数(店))× 価格 1.58(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 950 億円・営業利益 114 億円。年平均 600 店・1 店売上の指数 1.3
- プロデュース・FC(食材の販売):数量 1,100(取引先のプロデュース店・FC 店の年平均店数(店))× 価格 0.11(1 店当たり年間食材売上(億円))→ 売上 124 億円・営業利益 35 億円。取引先 1100 店・1 店の食材売上の指数 1.32
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.85 倍、時価総額 951 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の達成度と、ジャンルの競争の厳しさの中間。強気と慎重の言い分のうち、慎重の側がやや強いので確率の重心を中立から少し下に置いた。
やや悲観 21% やや慎重:出店が早く頭打ちになる 利益 29 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 672 円269 億円
出店は 2028 年ごろに頭打ちになる。直営は 470 店、プロデュース店は 850 店で伸びが止まる。
新しい店の売上は、既存の町田商店の 8 割に届かない。同じ家系や二郎系の競合が近くに出て、客が分かれる。営業利益率は 6%台に落ちる。
家賃と人件費は上がり続け、値上げは物価に追いつかない。「千円の壁」の手前で客が離れるため、客単価は物価よりゆっくりしか上がらない。
プロデュース店は、店の入れ替わりが増え、食材の販売は伸び悩む。海外は米国の撤退が響く。会社は黒字を保ち配当も続けるが、成長の物語は終わり、普通の外食チェーンとして評価される。
株主優待は現物の還元で、年およそ2億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.75で10年に15億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 直営店(町田商店・豚山・元祖油堂ほか):数量 470(直営店の年平均店数(店))× 価格 1.52(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 715 億円・営業利益 68 億円。年平均 470 店・1 店売上の指数 1.25
- プロデュース・FC(食材の販売):数量 850(取引先のプロデュース店・FC 店の年平均店数(店))× 価格 0.11(1 店当たり年間食材売上(億円))→ 売上 93 億円・営業利益 24 億円。取引先 850 店・1 店の食材売上の指数 1.28
倍率:ROE 9.3%(純利益 29 億円 ÷ 自己資本 312 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 8.25% + 残る割合 1/2 ×(9.3 − 8.25)= 8.8%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 12.8 倍。ROE は k をわずかに上回る程度で、家系・二郎系との競合で新しい店の稼ぎが伸びず、堀も先で薄れるため、上限の 7 割へは引き上げず 9.0 倍に置いた。
確率:参入の壁が低く、流行の入れ替わりが速いジャンルであること、設備投資が利益を上回る構造から、出店の頭打ちが早く来る可能性を 2 割に置いた。
悲観 12% 慎重:流行が去り、店と家賃だけが残る 利益 4 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 149 円60 億円
ラーメンのブームが去り、家系も油そばも同じ看板の店であふれる。町田商店の既存店は客数を落とし、新しい店の多くは立ち上がらずに閉める。直営は年平均 320 店、プロデュース店は 600 店まで縮む。
1 店の売上は物価に追いつかず、値引きに近い販促で客を保つ。営業利益率は 5%にとどまる。食材の販売も、店が減るので工場の稼働が下がり、利益は薄くなる。
一方で家賃は減らない。解約には違約金がかかり、売上が落ちても固定の支払いは残る。本部の費用は 26 億円ほど残り、営業利益はわずかな黒字になる。
店舗の設備は減損し、自己資本は削られる。会社は存続し配当も続けるが、成長を前提にした評価は終わる。
株主優待は現物の還元で、年およそ2億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.5で10年に10億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 直営店(町田商店・豚山・元祖油堂ほか):数量 320(直営店の年平均店数(店))× 価格 1.40(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 448 億円・営業利益 22 億円。年平均 320 店・1 店売上の指数 1.15・家賃は固定で残る
- プロデュース・FC(食材の販売):数量 600(取引先のプロデュース店・FC 店の年平均店数(店))× 価格 0.10(1 店当たり年間食材売上(億円))→ 売上 61 億円・営業利益 9 億円。取引先 600 店・1 店の食材売上の指数 1.20
倍率:悲観の稼ぐ力は事業の純利益 4 億円 ÷ k 8.25% = 約 50 億円と小さい。純現金は無く純有利子負債が 37 億円ある。そこで売れる資産の税引き後(約 60 億円)を床とみて、今の自己資本 103 億円に対する PBR 0.58 倍で測った。店舗の内装は売れず、価値は工場・物流の資産と敷金の返還にしかない。家賃は固定の約束として残る。
確率:家系・油そばのブームが 10 年のうちに去り、設備投資を回収できずに店と家賃だけが残る筋書き。ジャンルの入れ替わりの速さと、模倣のしやすさから 1 割余りを置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営店(町田商店・豚山・元祖油堂ほか)
町田商店・豚山・元祖油堂などの直営のラーメン店。賃借の店舗で、家賃は固定の約束。
| 数量直営店の年平均店数(店) | 価格1 店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 253 | 1.22 | 308 | 40 |
| 10 年後 中立 | 600 | 1.58 | 950 | 114 |
取り方:2025 年 10 月期の直営店事業の売上 308.1 億円を、期首 228 店と期末 278 店の平均 253 店で割った 1 店売上 1.22 億円。利益は開示が無く、店舗利益率 13% と推定(本部費・工場を調整に分けた)。先の 1 店売上は物価 1.34 倍を基に、新しい店が既存より小さい分を引いて中立 1.30 倍に置いた。
プロデュース・FC(食材の販売)
他の事業者が開くプロデュース店・FC 店に、自社工場のスープ・タレ・麺・チャーシューを売る事業。
| 数量取引先のプロデュース店・FC 店の年平均店数(店) | 価格1 店当たり年間食材売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 594 | 0.09 | 51 | 15 |
| 10 年後 中立 | 1,100 | 0.11 | 124 | 35 |
取り方:2025 年 10 月期のプロデュース事業の売上 50.7 億円を、期首 574 店と期末 614 店の平均 594 店で割った 1 店当たり約 850 万円。利益は開示が無く、食材の利益率 29% と推定。食材の値段は物価に近く上がるとみて、中立 1.32 倍に置いた。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
リスクと懸念
参入の壁が低く、真似されやすい
会社自身が、ラーメンは参入の壁が低く、油そばは模倣されやすく、同じ家系を名乗る類似の店も多いと書いている。新しいジャンルで当たっても、2〜3 年で競合が増えれば、新しい店の売上と利益率が下がる。
出店の投資が利益を上回る
設備投資は 2025 年 10 月期に 51 億円で、営業利益の 1.5 倍だった。出店が計画どおりに進まなければ、新しい店の投資が回収できず、減損に変わる。自己資本比率は 47%と余裕があるが、拡大が続く限り現金は残らない。
家賃という固定の支払い
年間の家賃は 27 億円で、売上の約 7.6%を占める。店舗は賃借が前提で、売上が落ちても家賃は減らない。悲観の筋書きでは、この固定費が利益を直接削る。2028 年 10 月期からは新リース会計基準で負債の形も変わる。
人件費と食材の値上がり
最低賃金の上昇と採用難は、直営の店の利益率を直接削る。ラーメンの原価は 2020 年から約 4 割上がった。麺は小麦、チャーシューは豚肉と輸入に頼る部分があり、円安にも弱い。値上げが「千円の壁」に近づくと、物価分を転嫁しきれない。
創業者への依存
創業者の田川翔氏が 2008 年に個人で始めた事業で、有価証券報告書も創業者への依存をリスクに挙げている。出店の速さと食材の仕組みを作った人の経営が、10 年先まで同じ規律で続くかは確かめにくい。
プロデュース店の品質のばらつき
プロデュース店と FC は、本部が運営を直接管理できない。品質や衛生の問題が起きれば、店が増えるほどブランド全体への影響が大きくなる。加盟料を取らない代わりに、食材の購入が止まれば本部の利益も落ちる。
海外展開の遅れ
海外は直営 6 店、プロデュース 13 店、FC 16 店とまだ小さい。米国は立地と業態が合わず赤字が続き、不採算店を閉めている。長期の目標である「世界のラーメン市場の 5 割」は、現実の利益の筋書きには入れていない。
今後の分かれ目
- 2026 年 10 月期の通期で営業利益が 48 億円を達成し、2027 年 10 月期に 50 億円を超えたら
- 2028 年 10 月期の計画の達成がほぼ確実になるので、やや強気側の確率を上げる。ただし倍率は上限があり、価値は大きくは変わらない。
- 新しい店の売上が既存の町田商店の 8 割を下回る状態が続いたら
- 出店のペースを落とさざるを得ず、やや慎重・慎重側へ寄せる。出店先が小さくなるほど投資の回収が遅れる。
- 国内直営の既存店売上が 2 期続けて前年を割ったら
- ジャンルの競争が強まり、客数が競合に流れ始めた合図とみる。慎重側へ寄せる。
- 食材の原価が物価を超えて上がり、値上げが間に合わない状況が 2 年続いたら
- 営業利益率が 9%を割る前提に変え、中立の利益を引き下げる。
- 米国で赤字が止まり、中国・東南アジアで直営が 50 店を超えたら
- 海外が国内以外の利益の柱になりうるので、強気側の確率を少し上げる。
- 田川社長が経営から離れる、または持ち株を大きく売却したら
- 創業者依存のリスクが表に出る。出店の規律が崩れないかを確かめるまで、慎重側へ寄せる。
見ておくもの
- 月次の国内直営の既存店売上と客数
- 直営店の新規出店数と、新しい店の立ち上がり(売上が既存店の何割か)
- 営業利益率とラーメン原価(小麦・豚肉)の動き
- プロデュース店・FC 店の純増と食材の売上
- 2028 年 10 月期の新リース会計基準の適用後の負債と純有利子負債
倍率と資本コストの決め方
店数(実質)と 1 店売上(名目)を、直営と食材の販売に分けて 10 年を積み上げた。自己資本は今の 103 億円に期間の純利益を足して還元を引いて流し、ROE は結果とした。倍率は正当化 PER の上限の 7〜9 割に置き、今の値段や同業の倍率は使っていない。悲観は今の自己資本ではなく売れる資産の床で置いた。直営は賃借で、家賃 27 億円は固定の約束として悲観に残した。新リース会計基準で営業利益・負債の形が 2028 年 10 月期から変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.4→17.34 倍・やや楽観 PER 14.4→16.85 倍・中立 PER 13.1→15.85 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。個別のリスクは k に足さず、筋書きの確率で表した。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。