結論
北洋銀行は、北海道の預金・貸出で首位に立つ地方銀行だ。道内シェアは 3 割台半ばから 4 割近くとみられる。筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。理由は一つで、金利が上がる世界では貸出と債券運用の利ざやが広がり、利益の水準が一段上がるからだ。
会社は 2028 年度に純利益 500 億円、ROE 11% を掲げる。2026 年 3 月期の実績は 256 億円だった。筆者は 10 年後の中立を純利益 608 億円に置く。計画より慎重に見るのは、北海道の人口が全国より速く減り、貸出の量が伸びにくいからだ。
10 年後の中立は 600 億円強で、ROE は 10% 前後になる。ただし量は増えず、利ざやで稼ぐ構図は変わらない。人口減が加速すれば、この利益は守れない。再編の波は道内にも及びうる。確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額(約4,486億円)に対し10年で−16.1%、「やや割高」と見る(資本コスト8.75%、10年の筋書きだけで測る)。PBR は 2 年あまりで 0.4 倍から 1.2 倍へ上がり、利益の回復はかなり織り込まれている。それでも倍率に余裕が残る、というのが筆者の見立てだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、北洋銀行は「堀は広いが、地盤が痩せていく会社」だ。道内首位の顧客基盤は本物で、金利の上昇がそのまま利益を押し上げる。追加の設備投資も要らない。株主が自由に使えるお金は、利益のおよそ 6 割ほどと見ている。
問題は、10 年後もこの事業が今より強いかだ。人口が減るなかで、物価と利ざやの上昇だけで稼ぎを伸ばす構図になる。筆者は、売上が伸びるのは金利のおかげで、事業が強くなったからではないと見る。金利が定常化した後に、成長の源が何かを問いたい。
資本の配分は、これから問われる。還元を厚くする方針は歓迎だが、純資産に対して約 3 兆円の有価証券を抱え、金利の変動に弱い。債券を割安で買い増し、高く売れる局面を待てる体力があるかどうかが、安全域の本体だ。
払う値段に安全域は薄い。計画の 500 億円を信じなくても、10 年後の中立の純利益 608 億円に正当化 PER を掛けた時価総額が、今の値段の水準を左右する。ただし悲観側の筋書きに入る確率も無視できない。確信度は並みに置く。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は四つある。一つ目は道内の法人貸出だ。農業、水産、観光、建設、小売、医療まで、地元企業の多くが北洋銀行に口座を持つ。二つ目は住宅ローンを中心とする個人貸出で、札幌圏に厚い。三つ目は有価証券の運用だ。預金は 11 兆円を超え、貸出の 8 兆円弱を 3 兆円ほど上回る。この余りを円債・外債・投信・株式で回し、利息と配当で年 450 億円ほどを稼ぐ。四つ目は投資信託・保険・相続などの手数料と、北洋証券、人材派遣、産業再生といった非金融の事業だ。
今の位置は買収と合併でできた。1998 年に北海道拓殖銀行の営業を譲り受け、2008 年に札幌銀行と合併した。2012 年には持株会社と一つの銀行に戻っている。道内の店舗と顧客は、この二つで一気に厚くなった。2016 年の調査では、道内シェアは 34.8%、2 位の北海道銀行は 15.1% と、2 倍以上の差があった。
競合は北海道銀行(ほくほくフィナンシャルグループ)、信用金庫、農協だ。農業向けの貸出は農協が強く、小口の個人は信金とゆうちょ銀行が競る。北洋は広域の貸出と札幌圏の個人で強みを出す。
人口の少ない地方部では、信用金庫との共同窓口や ATM の相互利用を広げている。店舗を増やさずに顧客との接点を保つ工夫だ。
優良さと弱いところ
最大の堀は、道内の預金と貸出で首位という顧客基盤だ。北海道は一つの県より広く、全域に店を持つ銀行は他にない。企業は融資で、個人は給与口座と住宅ローンで北洋と付き合い、乗り換えは面倒だ。この粘り強さが、預金コストを抑える力になる。
弱点は三つある。第一に人口だ。北海道は人口が減るのが速く、札幌への集中も進む。地方部の店は先細りで、貸出残高の伸びは都市部の地銀に劣る。第二に資本の薄さだ。連結の単純な自己資本比率は 2.9% で、有価証券が約 3 兆円と大きい。金利が急に動くと、評価損益で純資産が振れる。第三に収益力だ。ROE は長く 2〜5% 台で、利ざやも薄かった。直近の 6% 台は金利上昇の初期の果実にすぎない。
筆者は、地方銀行の中では「規模は大きいが稼ぐ力は並み」と見る。堀は広いが、地域の成長が弱い。
一方、半導体の新工場や洋上風力など、道内で大きな資金需要が生まれつつある。首位の銀行にだけ回ってくる案件が多く、ここは追い風になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
銀行業は、長い低金利の時代を終え、金利のある世界に入ったばかりだ。短期金利が 2% に向けて上がる間、貸出金利は先に上がり、預金金利は遅れて付いてくる。利ざやは構造的に広がる。北洋銀行の今の純利益は、この初期の果実だ。
ただ北海道は、量の面では不利だ。人口は年 1% ほどのペースで減り、貸出残高の伸びは全国の地銀より鈍い。そこで物価の上昇が効く。貸出残高は名目で伸びるから、金利の上昇と物価の上昇を合わせれば、人口減を埋められる。筆者はこの二つの力が拮抗すると見る。
道内にだけある追い風もある。千歳市では最先端半導体の量産を目指すラピダスが進み、関連企業の進出が続く。北洋の頭取は 2026 年 4 月、同社への融資を「できる範囲で検討したい」と述べた。報道では半導体関連の融資は 2030 年度までに累計 3,000 億円規模になるとされる。観光、農業、洋上風力などを合わせても、数量を押し上げる力は限られる。
業界全体の大きな動きは再編だ。千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行などが統合に動く。北海道では北洋と北海道銀行の二強が競り合い、統合の話は出ていない。両行は公金収納の一部を 2027 年 4 月から共同化すると発表しており、協力の範囲は広がっている。北洋の頭取は、人口減の地方部では信用金庫との連携が柱になると語っており、信金との統合も「選択肢としてはあり得る」とした。
資本政策と M&A
還元は厚くなる方向だ。新しい中期経営計画(2026〜2028 年度)は、配当性向 40% 以上、総還元性向 50% を目安とし、自社株買いは機動的に行うとする。配当は 2026 年 3 月期の実績から 2027 年 3 月期の予想へ増配する計画だ。株主優待も北海道の特産品中心に拡充した。
筆者が気にするのは資本の使い方だ。連結の自己資本比率のコントロール水準は 11.0%(下限 10.0%)で、余裕は大きくない。還元を厚くするには、利益の伸びが前提になる。
政策保有株は、純資産に対する時価比率が 2026 年 3 月末で 31% 台と高い。2029 年 3 月末までに 20% 未満にする目標で、売却益は債券ポートフォリオの入れ替えと、成長投資、還元に回す。売却は株価の下落時に資本を守る意味もある。
M&A は、1998 年の拓銀営業譲受、2008 年の札幌銀行との合併、2018 年の北洋証券の完全子会社化、2022 年の北海道共創パートナーズの取得と、道内で完結している。大きな買収で価値を壊した履歴はない。TOB で買われる確率は小さい(kabufu の推定で 10 年以内 16.7%)。筆者は、動くとすれば信金との連携か統合、北海道銀行との協力の広がりだと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利が 2% へ上がる間、貸出の利ざやは広がり、債券の入れ替えで利回りも上がる。北洋の収益は、この二つが同時に効くという意味で、銀行の中でも感応度が高い。2026 年 3 月期の純利益は 256 億円だが、2028 年度には 500 億円、ROE 11% の計画で、道内首位の基盤を考えれば射程にある。
道内に固有の追い風も大きい。ラピダスをはじめとする半導体関連の投資が千歳に集まり、関連企業の進出と住宅・インフラの需要が連なる。半導体関連の融資は 2030 年度までに累計 3,000 億円規模になるとの報道がある。洋上風力や観光、農業の大型投資も、道内最大手にまず声がかかる。
さらに、政策保有株の売却で得る資金を債券ポートフォリオの入れ替えと成長投資に回せる。債券の入れ替えが進むほど、利息配当金は 450 億円台から増えていく。経費率は 50% 程度まで下がる計画で、人件費の上昇を IT 投資で吸収できれば、利益の伸びは計画に近づく。北海道銀行との公金収納の共同化など、同業との協力でコストを下げる余地もある。
慎重な見方
北海道は人口の減りが速く、地方部の貸出と預金は構造的に縮む。貸出残高の伸びは、物価の上昇を加味しても全国の地銀に劣る。利ざやの広がりは見込めるが、預金金利を上げずに済む余裕は少ない。道内は北海道銀行、信金、農協が競り合い、貸出の利ざやは全国でも薄い部類だ。金利が上がっても、競争で広がりが小さくなりうる。
資本も薄い。連結の単純な自己資本比率は 2.9% で、有価証券は約 3 兆円ある。金利の上昇で債券の含み損が膨らめば、純資産が削られ、還元の余地がなくなる。株式系資産が純資産の 3 割を占める点も、株価が崩れた時の弱みになる。
計画の 500 億円は、経費率を 50% まで下げ、成長投資の収益を見込むという強気の前提に立つ。会社の 2027 年 3 月期の予想は 294 億円で、2028 年 3 月期の市場予想は 355 億円どまりだ。計画との間には大きな溝がある。PBR はすでに 2 年あまりで 0.4 倍から 1.2 倍へ上がり、ROE の回復は織り込まれている。リーマン級の信用収縮が来れば、地方の中小企業の貸倒れと有価証券の評価損が同時に出る。この時に自己資本の薄さが問題になる。
どちらに重みを置いたか
強い方は、金利上昇による利益水準の切り上がりを重く見る見方だ。ただし計画の数字までは信じず、10 年後の中立は計画の 500 億円に頼らず純利益 608 億円に置いた。人口減と資本の薄さは慎重な見方の指摘どおりで、悲観とやや悲観を合わせて 10 年で 4 割近くの確率を置いた。確率は中立に厚く、悲観側にやや寄せている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,678 円6,277 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 530 円1,982 億円)。 今の値に割り戻すと 1,074 円4,017 億円、今との差 −4.7%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,875 円1.08 兆円 | 778 円2,912 億円 | +224.2% | +12.5% | 365 円1,367 億円 |
| やや楽観 | 23% | 2,393 円8,952 億円 | 668 円2,500 億円 | +171.6% | +10.5% | 704 円2,634 億円 |
| 中立 | 30% | 1,965 円7,351 億円 | 577 円2,160 億円 | +125.6% | +8.5% | 763 円2,853 億円 |
| やや悲観 | 24% | 913 円3,416 億円 | 393 円1,470 億円 | +15.9% | +1.5% | 313 円1,173 億円 |
| 悲観 | 13% | 242 円905 億円 | 237 円888 億円 | −57.5% | −8.2% | 62 円233 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,678 円6,277 億円 | 530 円1,982 億円 | +95.9% | +7.0% | 2,208 円8,260 億円 |
今の株価時価総額 1,127 円4,216 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 金利の定常化と道内の大型投資で、ROE が 11% 台に 利益 843 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 2,875 円1.08 兆円
10 年間で短期金利 2%・長期金利 3% が定着し、貸出と債券の利ざやは高い水準で安定する。ラピダスを核とする半導体の集積が千歳から札幌圏へ広がり、洋上風力や観光でも大型の資金需要が続く。北洋は道内首位の立場から、これらの案件にまず声がかかる。信用金庫との連携で店舗の費用を抑え、経費率は 45% 台まで下がる。2036 年 3 月期の純利益は 840 億円ほど、ROE は 11% 台後半に乗る。資本は十分に厚くなり、還元も大きく積み上がる。道内で半導体と再エネの投資が連なる 10 年は、最大手の銀行にとって最良の局面になる。この姿は、金利・人口・投資の三つが同時に良い方へ出ることが条件で、実現は容易ではない。
- 法人貸出:数量 7.0(法人・事業性貸出の平残(兆円))× 価格 1.5%(預貸の利ざや(%))→ 売上 1,013 億円・営業利益 587 億円。残高 6.99 兆円(名目)× 利ざや 1.45%、利益率 58%
- 個人貸出:数量 4.0(個人向け貸出の平残(兆円))× 価格 1.3%(預貸の利ざや(%))→ 売上 494 億円・営業利益 257 億円。残高 3.95 兆円(名目)× 利ざや 1.25%、利益率 52%
- 有価証券運用:数量 3.8(有価証券の平残(兆円))× 価格 1.2%(運用利回りから調達費用を引いた利ざや(%))→ 売上 440 億円・営業利益 387 億円。残高 3.82 兆円(名目)× 利ざや 1.15%、利益率 88%
- 手数料・非金融:数量 3.4(預かり資産・決済などの取扱残高(兆円))× 価格 1.0%(実効手数料率(%))→ 売上 350 億円・営業利益 161 億円。残高 3.42 兆円(名目)× 率 1.03%、利益率 46%
倍率:事業の純利益 843 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.76 倍、時価総額 10,757 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年間、短期金利 2%・長期金利 3% が定着し、半導体・洋上風力などの大型投資が道内に続き、人口減も札幌圏への集中で緩やかに収まる。全部が噛み合う前提で、確度は高くない。
やや楽観 23% 利ざやの定着と成長投資で、ROE 11% 前後 利益 715 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,393 円8,952 億円
短期金利 2%・長期金利 3% が定着し、法人・個人の利ざやは 10 年前より 0.4〜0.5 ポイント広がる。債券はすべて新しい利回りに入れ替わり、有価証券の収益が着実に積み上がる。半導体関連の融資は計画どおり進み、札幌圏の個人貸出と手数料収入も伸びる。人口減は続くが、物価の上昇と金利が貸出残高を名目で押し上げる。経費率は 50% を割る。2036 年 3 月期の純利益は 715 億円、ROE は 11% 前後で、還元も着実に積み上がる。信用金庫との共同店舗が広がり、地方部の店の費用が下がる点も寄与する。
- 法人貸出:数量 6.7(法人・事業性貸出の平残(兆円))× 価格 1.4%(預貸の利ざや(%))→ 売上 941 億円・営業利益 517 億円。残高 6.72 兆円(名目)× 利ざや 1.40%、利益率 55%
- 個人貸出:数量 3.8(個人向け貸出の平残(兆円))× 価格 1.2%(預貸の利ざや(%))→ 売上 456 億円・営業利益 224 億円。残高 3.80 兆円(名目)× 利ざや 1.20%、利益率 49%
- 有価証券運用:数量 3.7(有価証券の平残(兆円))× 価格 1.1%(運用利回りから調達費用を引いた利ざや(%))→ 売上 386 億円・営業利益 336 億円。残高 3.68 兆円(名目)× 利ざや 1.05%、利益率 87%
- 手数料・非金融:数量 3.2(預かり資産・決済などの取扱残高(兆円))× 価格 1.0%(実効手数料率(%))→ 売上 325 億円・営業利益 140 億円。残高 3.17 兆円(名目)× 率 1.03%、利益率 43%
倍率:事業の純利益 715 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.52 倍、時価総額 8,952 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利の定常化と道内の投資が、業界の上位レンジに近い水準で実現する。経費率の改善は計画の延長線上。
中立 30% 中立:金利は定常化し、量は伸びず利ざやで稼ぐ 利益 608 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,965 円7,351 億円
10 年のうちに短期金利 2%・長期金利 3% が定着し、貸出と債券の利ざやは高めの水準で安定する。一方、道内の人口は減り続け、貸出残高の伸びは名目で年 2〜2.5% にとどまる。札幌圏への集中が進み、地方部の店は信用金庫との共同店舗へ移る。半導体関連や観光の需要は貸出を支えるが、全体を押し上げるほどではない。手数料は NISA の拡大と相続で伸び、経費率は 48% 前後まで下がる。2036 年 3 月期の純利益は 600 億円ほど、ROE は 10% 前後になる。会社の計画(ROE 11%)をやや下回る水準に、10 年かけて落ち着く姿だ。人口減が重い分、計画の純利益 500 億円には 3 年では届かず、その先でゆっくり超える。
- 法人貸出:数量 6.5(法人・事業性貸出の平残(兆円))× 価格 1.4%(預貸の利ざや(%))→ 売上 873 億円・営業利益 454 億円。残高 6.46 兆円(名目)× 利ざや 1.35%、利益率 52%
- 個人貸出:数量 3.7(個人向け貸出の平残(兆円))× 価格 1.2%(預貸の利ざや(%))→ 売上 421 億円・営業利益 198 億円。残高 3.66 兆円(名目)× 利ざや 1.15%、利益率 47%
- 有価証券運用:数量 3.5(有価証券の平残(兆円))× 価格 1.0%(運用利回りから調達費用を引いた利ざや(%))→ 売上 354 億円・営業利益 300 億円。残高 3.54 兆円(名目)× 利ざや 1.00%、利益率 85%
- 手数料・非金融:数量 3.0(預かり資産・決済などの取扱残高(兆円))× 価格 1.0%(実効手数料率(%))→ 売上 298 億円・営業利益 119 億円。残高 2.96 兆円(名目)× 率 1.00%、利益率 40%
倍率:事業の純利益 608 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.09 倍、時価総額 7,351 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期 2%・長期 3% が定着し、与信費用が景気循環を経て平均的な水準に戻る、中心の筋書き。
やや悲観 24% 人口減が貸出を削り、収益力が資本コスト付近に戻る 利益 332 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 913 円3,416 億円
金利は定常化するが、道内の人口減が加速し、貸出残高の伸びは名目でも年 1% ほどにとどまる。預金は札幌圏とネットに流れ、預金コストが高止まりする。利ざやの広がりは想定の 3 分の 2 に縮み、経費率は 55% 台から下がらない。10 年のどこかで景気後退が来て、与信費用が平時を大きく超える年がある。資本は薄く、還元は慎重になる。2036 年 3 月期の純利益は 330 億円ほど、ROE は 6% 台で、資本コストをわずかに下回る。銀行としては存続するが、株主の取り分は増えない。道内で信用金庫や北海道銀行との再編の話が出ても、規模の利益は小さい。
- 法人貸出:数量 5.7(法人・事業性貸出の平残(兆円))× 価格 1.2%(預貸の利ざや(%))→ 売上 689 億円・営業利益 317 億円。残高 5.75 兆円(名目)× 利ざや 1.20%、利益率 46%
- 個人貸出:数量 3.2(個人向け貸出の平残(兆円))× 価格 1.0%(預貸の利ざや(%))→ 売上 325 億円・営業利益 133 億円。残高 3.25 兆円(名目)× 利ざや 1.00%、利益率 41%
- 有価証券運用:数量 3.2(有価証券の平残(兆円))× 価格 0.9%(運用利回りから調達費用を引いた利ざや(%))→ 売上 272 億円・営業利益 223 億円。残高 3.20 兆円(名目)× 利ざや 0.85%、利益率 82%
- 手数料・非金融:数量 2.6(預かり資産・決済などの取扱残高(兆円))× 価格 1.0%(実効手数料率(%))→ 売上 257 億円・営業利益 87 億円。残高 2.64 兆円(名目)× 率 0.97%、利益率 34%
倍率:10年後のROE6.3%(純利益332億円÷自己資本5,230億円)。ROEはk8.75%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.4倍までが上限。筋書きは「人口減が貸出を削り、収益力が資本コスト付近に戻る」。上限の9.0割に置き、10.29倍。還元を会社の方針(50%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:道内の人口減が想定より速く、競争で利ざやの広がりが小さい。10 年のどこかで景気後退も混ざる。資本の薄さも考え、確率は厚めに置く。
悲観 13% 構造的に負け、道内首位でも資本効率が戻らない10年 利益 99 億円 · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 242 円905 億円
10 年のどこかで世界的な信用収縮が起き、道内の与信費用が急増する。人口減は想定を超えて加速し、貸出需要そのものが縮む。債券運用では金利の急変で大きな評価損が出て、純資産が削られる。預金は札幌圏とネット銀行へ流れ、預金コストが上がる一方で利ざやは縮む。信金・北海道銀行との再編でも、統合のコストばかりが重く、規模の経済は出ない。もう優良とは言えず、資本を守るために還元は絞られる。2036 年 3 月期の純利益は 100 億円に届かず、ROE は 2% に満たない。道内首位の看板は残るが、稼ぐ力は失われ、規模の経済も働かない。
- 法人貸出:数量 4.8(法人・事業性貸出の平残(兆円))× 価格 0.7%(預貸の利ざや(%))→ 売上 333 億円・営業利益 140 億円。残高 4.76 兆円(名目)× 利ざや 0.70%、利益率 42%
- 個人貸出:数量 2.7(個人向け貸出の平残(兆円))× 価格 0.5%(預貸の利ざや(%))→ 売上 146 億円・営業利益 53 億円。残高 2.66 兆円(名目)× 利ざや 0.55%、利益率 36%
- 有価証券運用:数量 2.8(有価証券の平残(兆円))× 価格 0.3%(運用利回りから調達費用を引いた利ざや(%))→ 売上 83 億円・営業利益 55 億円。残高 2.76 兆円(名目)× 利ざや 0.30%、利益率 66%
- 手数料・非金融:数量 2.0(預かり資産・決済などの取扱残高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率(%))→ 売上 175 億円・営業利益 46 億円。残高 2.00 兆円(名目)× 率 0.88%、利益率 26%
倍率:10年後のROE2.4%(純利益99億円÷自己資本4,212億円)。ROEはk8.75%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.4倍までが上限。筋書きは「構造的に負け、道内首位でも資本効率が戻らない10年」。上限の8.0割に置き、9.14倍。還元を会社の方針(50%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:リーマン級の信用収縮に加え、人口減の加速、債券運用の失敗、広域の大手やネット銀行への顧客流出が重なる想定。10 年という期間では相応の確率を置く。資本が薄い銀行なので、1 割台に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
北海道内の企業向け貸出。農業・水産・観光・建設・小売・医療など地元企業の取引が中心で、半導体・再エネ関連の大型案件も加わる。
| 数量法人・事業性貸出の平残(兆円) | 価格預貸の利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 0.9% | 450 | 170 |
| 10 年後 中立 | 6.5 | 1.4% | 873 | 454 |
取り方:グループの貸出は約 8 兆円。法人・事業性を約 6 割の 5.0 兆円と推定し、利ざやを 0.90% とおいた。地銀の中では薄めの水準で、道内の競争の厳しさを映す。収益は預金などの調達コストを引いた粗利益、利益は経費と与信費用の割り当て後。残高は名目で、道内の人口減を入れて中立は年 3.0%(物価 3% + 実質マイナス)。利ざやは率なので物価では上がらず、預金ベータ 40% で 3 年 +0.27%・10 年 +0.45% 広がる(業種ノートの地銀の置き方)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。札幌圏に厚く、地方部では人口減で縮む。
| 数量個人向け貸出の平残(兆円) | 価格預貸の利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 0.8% | 225 | 70 |
| 10 年後 中立 | 3.7 | 1.2% | 421 | 198 |
取り方:貸出の残り約 4 割弱を個人向け 3.0 兆円と推定し、利ざやを 0.75% とおいた。住宅ローンは競争が激しく、法人より薄い。残高は名目で、人口減を入れて中立は年 2.4%。利ざやは変動型の比率が高く、預金ベータ 40% で 3 年 +0.24%・10 年 +0.40% 広がる(業種ノートの地銀の置き方)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
有価証券運用
預金が貸出を上回る分を、円債・外債・投信・株式で運用する。債券の入れ替えで利回りが上がっていく。
| 数量有価証券の平残(兆円) | 価格運用利回りから調達費用を引いた利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.9 | 0.5% | 160 | 130 |
| 10 年後 中立 | 3.5 | 1.0% | 354 | 300 |
取り方:中期経営計画の運用資産(円債 約 2.4 兆・外債と投信 約 0.26 兆・株式系 約 0.34 兆)から約 2.9 兆円と推定した。利息配当金は約 450 億円、利回り 1.55%。預金の調達費用を引いた手残りの利ざやを 0.55% とおいた。債券は平均 4 年ほどで入れ替わるので、3 年後は約 7 割が新しい利回りになり +0.25%、10 年後は +0.45%(預金コストの上昇を差し引いた後)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
手数料・非金融
投資信託・保険・相続・決済などの手数料、北洋証券、人材派遣・産業再生などの非金融事業。
| 数量預かり資産・決済などの取扱残高(兆円) | 価格実効手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 1.0% | 205 | 55 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 1.0% | 298 | 119 |
取り方:役務取引と非金融の収益を約 205 億円と推定し、取扱残高 2.0 兆円(預かり資産が中心)で割った実効の率 1.0% 強とした。残高は名目で、NISA 拡充と資産形成の流れ、中期経営計画の成長投資(3 年で費用 137 億円・収益 75 億円)を入れて年 3.7〜4%。手数料率は低コスト商品の流れで横ばいから微減。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
リスクと懸念
北海道の人口減と地方部の縮小
北海道は人口の減りが全国より速く、札幌圏への集中も進む。地方部の貸出と預金は縮み、店舗網の維持コストは重い。貸出残高の伸びは物価の上昇を入れても都市部の地銀に劣り、利ざやの広がりを数量の減りが食う展開もありうる。信金との連携で費用を抑える途上にある。
債券の評価損と資本の薄さ
有価証券は約 3 兆円で、うち円債が約 2.4 兆円と大半を占める。金利が急に上がれば評価損が出て、純資産が目減りする。連結の単純な自己資本比率は 2.9% と薄く、規制上の自己資本比率にも余裕は大きくない。債券の入れ替えの失敗は、還元の余地を直接削る。
信用コストの正常化
与信費用は歴史的に低い。金利の上昇で道内の中小企業の資金繰りが悪化すれば、費用は増える。観光・農業・建設は市況と天候、為替に左右されやすい。リーマン級の収縮では、貸倒れと保有株式の評価損が同時に出る。業績が急に崩れた過去(2009 年 3 月期は赤字)もある。
競争による利ざやの薄さ
北海道銀行、信用金庫、農協が競り合い、貸出の利ざやは地銀のなかでも薄い。金利が上がっても、預金の確保競争で預金コストが先に上がれば、広がりが小さくなる。ネット銀行や広域展開の銀行が住宅ローンで攻めてくる面もある。
計画と実績の差
中期経営計画は 2028 年度に純利益 500 億円・経費率 50% 程度を掲げる。会社の 2027 年 3 月期の予想は 294 億円で、計画との間には大きな差がある。計画が未達に終われば、株価は期待の剥落で調整する。成長投資の費用は 3 年で 137 億円と先に出る。
半導体・再エネ案件の集中
ラピダスなど半導体関連への融資は、報道では 2030 年度までに累計 3,000 億円規模とされる。大型案件は特定の企業と投資計画に依存し、遅れや中止があれば貸出の伸びも利ざやも期待を下回る。大きな額を貸す以上、1 社の経営悪化が与信費用に響くリスクも持つ。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を 2% へ計画より速く上げたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。貸出の利ざやの広がりと、預金金利の追随の速さを決算で確かめる。
- 道内の与信費用が四半期で急に増えたら
- やや悲観・悲観に重みを移す。どの業種(観光・農業・建設)で増えたか、担保の質を見る。
- 債券の評価損が拡大し、純資産が大きく減ったら
- 還元の余地と自己資本の厚さを見直す。自社株買いが止まれば、倍率の根拠が弱まる。
- ラピダス関連の融資が計画どおり実行され、利ざやも確保できたら
- 貸出の伸びが数字に出るので、中立の貸出残高の見通しを上げる。逆に遅れや中止なら、強気の根拠が一つ減る。
- 信用金庫や北海道銀行との統合・再編が表に出たら
- 経費率の改善は期待できるが、買う側の資本負担と統合コストも出る。条件を見て中立の確率を再配分する。
- 政策保有株の売却が計画より速く進んだら
- 売却益で債券の入れ替えと還元を厚くできる。一方、株価の下落時の緩衝材を失う面も確かめる。
見ておくもの
- 道内の貸出残高の伸び(法人・個人)と預貸の利ざやの推移
- 有価証券の評価損益と自己資本比率(コントロール水準 11.0%)
- 与信費用と道内の倒産件数
- ラピダス・半導体・洋上風力関連の融資の実行額
- 信用金庫との共同窓口の拡大と、経費率(目標 50% 程度)の推移
- 政策保有株の縮減の進み(2029 年 3 月末に純資産比 20% 未満)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は10年後のROEとk 8.75%(基本7.5%+quality +1.25%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・9・8.5割に置いた(下限は1÷k=11.4倍)。やや悲観・悲観はROEがk(8.75%)以下なので、PERは1÷k=11.4倍が上限で、その9・8割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、自己資本に対するROE約2%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9.75%)と10年の中立のPERは10.3倍から8.8倍に下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.12→12.76 倍・やや楽観 PER 11.43→12.52 倍・中立 PER 11.43→12.09 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β 0.82 × 5% + 規模 0.50%。基本7.5%に quality +1.25% を足して k 8.75%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(自己資本の薄さと還元の厚さの綱引き)は k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。