結論
リゾートトラストは、会員制リゾートホテルの会員権を売り、会員から年会費と利用料を取り続ける会社だ。エクシブやベイコート倶楽部、サンクチュアリコートを展開し、会員は14.5万人にのぼる。近年は会員制の検診クラブ「ハイメディック」とシニアレジデンスにも広げ、利益の柱は会員権・ホテル運営・メディカルの3つになった。
筆者の結論は、利益で測った本質価値は今の時価総額をやや下回る、というものだ。事業の質は高い。紹介が新規入会の約8割を占め、退会は年1〜2%にとどまる。だが成長のほとんどは、新しいホテルを建てて会員権を売る循環の中にある。ホテルを1つ建てるのに600億円規模の投資がかかる。会員から預かった保証金は約1,360億円あり、表の「純現金」は見かけほど自由なお金ではない。
10年後の中立は、営業利益が約540億円、純利益が約400億円、利益の伸びは年6%台だ。会社が掲げる年10%の利益成長には届かない。物価の3%に、会員数と単価の実質の伸びが乗る形でも、そこまでは見込めないと筆者は見る。ホテル運営の利益率が5%台から7%台へ上がれるかが、最初の分かれ目になる。
会社の計画どおりに進めば、10年後の価値は今の1.4倍ほどになる。反対に、株や不動産の資産効果が崩れて会員権が売れなくなれば、固定費の重いホテル運営だけが残る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点でまず問うのは、10年後もこの会社を持ち続けたいか、だ。答えは「持ち続けたい面もある」である。会員という顧客を一生涯つかむ設計は魅力があり、退会が年1〜2%という数字は他の消費関連にはまれな粘りを示す。
次に、利益のうち株主に残るお金(オーナー利益)はいくらか。会計上の営業利益は、新ホテルの会員権を売った年に繰り延べられ、開業した年にまとめて計上される。つまり、見かけの利益と手元に残るお金の間にずれがある。筆者はこのずれと、ホテルを建て続けるために毎年かかる投資を割り引いて、利益の質をやや低く見る。
3つ目は経営の資本配分だ。会員権の価格設定は総事業費の2倍超で、新規開発の採算は高い。取締役の半減とDOEの導入も評価できる。ただ「新規ホテルは1年に1〜1.5施設」というペースは、販売が止まれば在庫を抱える裏返しでもある。
安全域は、今の値段にはほぼない。強気の計画が実現しても本質価値は今の時価総額の1.4倍ほどで、中立では今を下回る。堀が強いと認めきれず、成長が投資に食われる以上、払ってよい値段には限りがあると筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
事業は3つの層に分けて見ると分かりやすい。まず「売る」層。ホテルの会員権は、1口が1,000万円前後(高級タイプは4,000万円超)で、約8割が既存会員の紹介で決まる。登録料は契約時に、不動産代金は開業時に売上へ入る。このため利益は新しいホテルの開業年に膨らみ、開業のない年にはへこむ。会社が「評価営業利益」という実力値を別に開示するのは、この凸凹を均すためだ。
次に「運営する」層。会員制ホテル42か所を運営し、年会費(運営管理費)と宿泊・料飲の収入を得る。稼働率は5〜6割台と高くない(サンクチュアリコートで65%台)。固定費が重く、利益率は長く5%を下回ってきた。年会費の改定が効いて、2026年3月期は利益が前期の約2.7倍の56億円になった。
3つ目が「医療・介護」層。ハイメディックは会員3.4万人の高級検診クラブで、販売の約7割をホテル会員の購入が占める。一般健診は年65万人の受診を受託する。シニアレジデンスは23施設2,090室、入居率は約89%だ。利益はメディカル全体で83億円と、会員権・ホテルに次ぐ第3の柱に育った。
どの層も「会員」という同じ顧客につながる。ホテルの会員が検診クラブに入り、いずれは自社のシニア施設に移る。会社はこの一生涯の関係を事業の核に置く。
優良さと弱いところ
いちばんの強みは、会員基盤の厚さと、その粘りだ。会員は14.5万人(20.5万口)。国内の富裕層165万世帯に対する浸透率は8%にすぎず、新規入会の約8割が紹介で決まる。退会率は年1〜2%と低い。会員1口あたりの年間利用額は2022年から年6.5%のペースで伸びた。
次に、価格を上げられる力がある。会員権の販売価格、年会費、ルームチャージ、料飲を、2022年度から繰り返し、数%から15%の幅で改定してきた。それでも契約高は5期連続で過去最高を更新し、2026年3月期は1,322億円に達した。
一方で、堀は東京ディズニーリゾートのような独占ではない。東急ハーヴェストクラブなど、似た会員制の競合がある。筆者が強い堀と認めないのは、そのためだ。リゾートの会員制という形は、資金さえあれば他社も作れる。強みは、50年かけて積んだブランドと会員の紹介網にあり、これは数年では追いつけない。
弱みは3つある。第1に、稼働率が5〜6割台で、ホテル運営の利益率が薄い。第2に、会員権の販売が株価・不動産価格に左右される。2009年3月期は営業利益率が6%台に落ち、2021年3月期は最終赤字になった。第3に、ホテルの新設は投資が先で、回収は会員権の販売次第になる。資本の使い方は、総事業費の2.0〜2.3倍の会員権を売って回収する設計で、一定の規律はある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
会員制リゾートの市場は、国内の富裕層の厚みで決まる。純金融資産1億円以上の世帯は2023年に165万世帯と、2021年より11%増えた。リゾートトラストの会員は、入会時で50代前半が中心、よく使うのは60代だ。会社は2030年にかけて、この年代の金融資産がさらに増えると見ている。
競合は東急不動産の東急ハーヴェストクラブが代表格で、預託制と共有制の2つの形で会員を集めている。会社は自らを「会員制事業のオンリーワン企業」と称する。ホテルを自前で建て、会員権の販売から運営までを一貫して行う点が、他社との違いだ。
逆風もある。1つ目は人手だ。ホテルは人件費が毎年3〜5%ずつ上がり、2024年度までの2年間で固定費が60〜70億円増えた。2つ目は、会員権の二次流通の評価だ。値上げを重ねて新規の販売価格を上げるほど、中古の会員権との差が開く。これが紹介を中心とする販売の強さを損なわないかを、筆者は気にしている。3つ目は、新規ホテルの開発費の高騰だ。会社は1室を共有する人数を36人から45人に増やすなどして、回収の倍率を守ろうとしている。
医療の側では、健診市場は労働人口の減少で緩やかな縮小が見込まれる。その中で、会員制の検診は高所得層の需要を取り込めるため、市場全体よりは強い。ただ、一般健診は人手と設備の競争が厳しく、利益率は15〜20%が上限になる。
資本政策と M&A
資本政策は、この数年で整った。中期経営計画(2025年4月〜2030年3月)で、株主資本配当率(DOE)5%を目標、4.5%を下限に置いた。先の3年は総還元性向50%をめざす。ROEは15%(最終年度16.5%)が目標だ。
投資の規模は大きい。5年でホテル事業に2,500億円(うち約2,000億円は棚卸資産で、会員権の販売で回収する)、メディカルに250億円、デジタルに150億円を見込む。借入余力は800億円と説明しており、有利子負債は約100億円と軽い。
ガバナンスは改善している。取締役を18名から9名へ半減し、社長がCEOを兼ねた。筆頭株主は宝塚コーポレーションで12%台。代表取締役ファウンダーの伊藤勝康氏は、会社サイトで創業者として紹介されている。買収される可能性より、自ら買う側に回る場面が多いと筆者は見る。メディカルでは先端医療や海外に10年で1,000億円規模を投じる計画で、買収が成果を出すかどうかは見通しにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会員制の堀は思っているより深い。紹介が新規入会の約8割を占め、退会は年1〜2%にとどまる。会員1口あたりの利用額は年6.5%のペースで伸びており、値上げをしても会員は離れていない。2026年3月期の契約高は5期連続の過去最高だった。
売る側では、純金融資産1億円以上の世帯が165万まで増え、会員の浸透率はまだ8%だ。東京・関東と九州への展開で、まだ空白の地域が残る。サンクチュアリコートは1年に1〜1.5施設のペースで開発が続く。
ホテル運営は、年会費の改定で営業利益率が5%台に戻った。中計の7%が実現すれば、利益は固定費の重さを乗り越えて跳ねる。メディカルは、ハイメディック会員を3.5万人から6.5万人へ、一般健診を65万人から100万人へ広げ、2034年に営業利益200億円以上をめざす。会員のホテルから検診、シニアまでの「一生涯」の設計が回れば、利益は年10%で伸びる。10年後の営業利益は800億円に届く。
慎重な見方
成長の中身を疑うべきだ。会員権の利益は、新ホテルを売った年に繰り延べられ、開業した年に計上される。つまり、利益は新しいホテルを建て続ける限りしか続かない。1施設に600億円かけ、その回収は会員への販売に頼る。
会員の層は高齢化が進む。入会は50代前半、よく使うのは60代だ。会員が増え続けて口数が積み上がるほど、将来の運営費と、返す約束の保証金も積み上がる。会員から預かった保証金は約1,360億円あり、そのうち約290億円は退会時に返す。株や不動産が下がれば、会員権は真っ先に買い控えられる。2009年と2021年には、実際に利益が大きく落ちた。
ホテル運営は稼働率が5〜6割台と薄い。人件費が毎年3〜5%上がる中で、7%の利益率を保てる保証はない。値上げを重ねるほど、中古の会員権との差が開き、紹介の勢いが鈍る恐れもある。賃借の検診施設やシニア施設は、新リース会計で負債が表に載る。10年後の営業利益は、今の水準を大きく下回る可能性がある。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の言い分が勝つが、利益の大きさと確実さでは慎重な言い分が重い。会社の計画(年10%成長)は、新ホテルの販売が毎年続く前提に寄りかかっており、その前提は景気と資産価格に左右される。
確率は楽観を1割、やや楽観を約2.5割、中立を約3.5割、やや悲観を約2割、悲観を約1割に置いた。強気の見方は、実績(5期連続の最高契約高)が裏付けるため、悲観より楽観寄りの山を高くした。ただ、利益の質の低さを理由に、中立の倍率を上限の約85%に抑えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,490 円7,413 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 659 円1,401 億円)。 今の値に割り戻すと 2,198 円4,669 億円、今との差 +24.1%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,145 円1.31 兆円 | 786 円1,670 億円 | +291.4% | +14.6% | 693 円1,472 億円 |
| やや楽観 | 26% | 4,682 円9,947 億円 | 723 円1,535 億円 | +205.2% | +11.8% | 1,405 円2,985 億円 |
| 中立 | 36% | 3,758 円7,984 億円 | 668 円1,418 億円 | +149.9% | +9.6% | 1,593 円3,385 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,408 円2,991 億円 | 605 円1,285 億円 | +13.7% | +1.3% | 403 円855 億円 |
| 悲観 | 8% | 290 円616 億円 | 396 円842 億円 | −61.2% | −9.0% | 55 円117 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,490 円7,413 億円 | 659 円1,401 億円 | +134.3% | +8.9% | 4,149 円8,814 億円 |
今の株価時価総額 1,771 円3,762 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 会社の計画どおりに会員権・ホテル運営・メディカルが同時に伸びる10年 利益 617 億円 · PER 20.4 倍 · 株価時価総額 6,145 円1.31 兆円
新しいホテルが1年に1〜1.5施設のペースで開業し、会員権の販売数量は今より25%増える。九州と関東の空白地域が埋まり、価格は物価を上回って上がる。ホテル運営は年会費の改定と稼働率の改善で利益率が10%まで上がる。
メディカルは、ハイメディックの会員が6.5万人(会社が2034年の目標とする水準)に届く。一般健診は100万人を超え、会員制の検診が高所得層の定番になる。シニアは入居率が9割を超え、利益率が1割に乗る。
10年後の営業利益は約850億円。会社が掲げる年10%以上の成長に近い姿だ。ROEは16%近くまで上がり、DOE5%の還元を続けても自己資本は厚くなる。会員の一生涯を囲い込む循環が、完成形に近づいた10年である。
- 会員権販売(ホテル・メディカル):数量 123(年間販売口数(百口))× 価格 1,889(1口あたり契約高(万円))→ 売上 1,670 億円・営業利益 468 億円。販売数量が今の1.25倍、価格は物価を上回る
- ホテル・レストラン運営:数量 24.5(会員制ホテル・ゴルフの会員口数(万口))× 価格 91(1口あたり年間売上(万円))→ 売上 2,237 億円・営業利益 224 億円。会員口数が増え、1口あたりの売上も改定で上がる。利益率10%
- ハイメディック(会員制検診・会員向け商品):数量 6.5(ハイメディック会員(万人))× 価格 124(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 805 億円・営業利益 225 億円。会員6.5万人、1人あたり売上も上がる
- 一般健診(MS法人):数量 101(年間健診受診者(万人))× 価格 2.34(1人あたり受託収入(万円))→ 売上 236 億円・営業利益 47 億円。受診者100万人、利益率20%
- シニアレジデンス:数量 2,790(入居室数(室))× 価格 1,166(1室あたり年間売上(万円。エイジングケア等を含む))→ 売上 325 億円・営業利益 32 億円。入居率9割超、利益率1割
倍率:事業の純利益 617 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.4 倍。全体の PER 20.36 倍、時価総額 12,562 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会員権の販売、ホテル運営の利益率改善、メディカルの会員増の3つが同時に計画どおり進む必要がある。実績は強いが、3つがそろう確率は高くない。
やや楽観 26% 開業と価格改定が順調に続き、利益率が緩やかに戻る10年 利益 483 億円 · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 4,682 円9,947 億円
会員権の販売数量は今より1割ほど増え、価格は物価を少し上回る。新ホテルの開業は続くが、1年に1施設を下回る年も出る。ホテル運営は稼働率の改善で利益率が8%台に乗る。
メディカルは、ハイメディック会員が5.6万人まで増える。一般健診は9万人近く増え、80万人を目指す。シニアの利益率は9%近くまで上がる。
10年後の営業利益は約660億円。会社の10%成長にはやや届かないが、近年の勢いを部分的に保つ姿だ。ROEは14%近くに上がり、還元もDOE5%の水準を守る。
新ホテルの開発費は膨らむが、会員権の販売で回収できる範囲に収まる。会員のホテルから検診への乗り換えも進み、運営の固定費の重さが少しずつ軽くなる。強い成長ではなく、堅実な改善が10年続く姿である。
- 会員権販売(ホテル・メディカル):数量 110(年間販売口数(百口))× 価格 1,848(1口あたり契約高(万円))→ 売上 1,465 億円・営業利益 396 億円。販売数量1.12倍、価格は物価をやや上回る
- ホテル・レストラン運営:数量 22.9(会員制ホテル・ゴルフの会員口数(万口))× 価格 88(1口あたり年間売上(万円))→ 売上 2,020 億円・営業利益 172 億円。口数1.3倍、利益率8.5%
- ハイメディック(会員制検診・会員向け商品):数量 5.6(ハイメディック会員(万人))× 価格 120(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 670 億円・営業利益 174 億円。会員5.6万人、利益率26%
- 一般健診(MS法人):数量 87.8(年間健診受診者(万人))× 価格 2.26(1人あたり受託収入(万円))→ 売上 199 億円・営業利益 37 億円。受診者88万人、利益率18.5%
- シニアレジデンス:数量 2,511(入居室数(室))× 価格 1,141(1室あたり年間売上(万円。エイジングケア等を含む))→ 売上 287 億円・営業利益 26 億円。入居2,500室、利益率9%
倍率:事業の純利益 483 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.6 倍。全体の PER 19.63 倍、時価総額 9,481 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の勢い(5期連続の契約高最高、ホテルの利益2.7倍)が数年は続くと見るのが自然で、中立より少し上の山をはっきり置く。
中立 36% 物価並みの値上げと会員の緩やかな増加で、利益が年6%台で伸びる10年 利益 395 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 3,758 円7,984 億円
新ホテルは年に1施設ほどのペースで開業し、会員権の販売数量は今よりわずかに増える程度にとどまる。価格は物価並みの上昇だ。ホテルの会員口数は2割近く増え、年会費・料飲の売上は物価と口数の両方で伸びる。運営の利益率は7%台半ばまで改善するが、中計の想定より緩やかだ。
メディカルは、ハイメディック会員が5.6万人まで増え、利益率は24%程度に落ち着く。一般健診は78万人、シニアは入居率92%で利益率8%まで上がる。
10年後の営業利益は約540億円、純利益は約400億円。会社の計画(年10%成長)より低い着地になる。ROEは12%台で、今の13%台を保てない。ホテルを建て続ける投資と、高齢化する会員の運営費が、利益の伸びを抑える。
- 会員権販売(ホテル・メディカル):数量 102(年間販売口数(百口))× 価格 1,808(1口あたり契約高(万円))→ 売上 1,330 億円・営業利益 346 億円。販売数量1.04倍、価格は物価並み
- ホテル・レストラン運営:数量 20.9(会員制ホテル・ゴルフの会員口数(万口))× 価格 84(1口あたり年間売上(万円))→ 売上 1,764 億円・営業利益 132 億円。口数1.19倍、利益率7.5%
- ハイメディック(会員制検診・会員向け商品):数量 5.6(ハイメディック会員(万人))× 価格 114(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 641 億円・営業利益 154 億円。会員5.6万人、利益率24%
- 一般健診(MS法人):数量 78.0(年間健診受診者(万人))× 価格 2.16(1人あたり受託収入(万円))→ 売上 169 億円・営業利益 29 億円。受診者78万人、利益率17%
- シニアレジデンス:数量 2,390(入居室数(室))× 価格 1,116(1室あたり年間売上(万円。エイジングケア等を含む))→ 売上 267 億円・営業利益 21 億円。入居2,390室、利益率8%
倍率:事業の純利益 395 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍。全体の PER 19 倍、時価総額 7,505 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会員権の販売は、新ホテルの開発が続く限り安定する一方、景気・資産価格・人手の制約もある。2人の議論の落としどころとして、最も重みを置く。
やや悲観 20% 会員権の販売が鈍り、ホテル運営の改善も限られる10年 利益 255 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 1,408 円2,991 億円
会員権の販売数量が今の9割弱に細る。新ホテルの開発が鈍り、会員への値上げも中古との差が気になって控えめになる。価格は物価に追いつかない。ホテル運営は人件費の上昇に年会費の改定が追いつかず、利益率は5%にとどまる。
メディカルは成長が鈍り、ハイメディックの会員は4.7万人にとどまる。一般健診は競争で利益率が15%に下がる。シニアは入居率の改善が止まり、利益率は6%どまり。
10年後の営業利益は約350億円と、今より少し増えるだけだ。物価の分を除けば実質では減る。会員制の堀は保たれるが、成長の力が弱まった会社になる。
- 会員権販売(ホテル・メディカル):数量 86.2(年間販売口数(百口))× 価格 1,754(1口あたり契約高(万円))→ 売上 1,091 億円・営業利益 262 億円。販売数量0.88倍、価格は物価に届かない
- ホテル・レストラン運営:数量 19.4(会員制ホテル・ゴルフの会員口数(万口))× 価格 82(1口あたり年間売上(万円))→ 売上 1,589 億円・営業利益 79 億円。口数1.1倍だが人件費に追いつかず利益率5%
- ハイメディック(会員制検診・会員向け商品):数量 4.7(ハイメディック会員(万人))× 価格 109(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 514 億円・営業利益 113 億円。会員4.7万人、利益率22%
- 一般健診(MS法人):数量 71.5(年間健診受診者(万人))× 価格 2.07(1人あたり受託収入(万円))→ 売上 148 億円・営業利益 22 億円。受診者72万人、利益率15%
- シニアレジデンス:数量 2,232(入居室数(室))× 価格 1,066(1室あたり年間売上(万円。エイジングケア等を含む))→ 売上 238 億円・営業利益 14 億円。入居2,230室、利益率6%
倍率:ROE 9.6%。RONIC=8.8%、正当化PERは13.6倍。構造的に成長が鈍る筋書きなので、上限の約78%(10.6倍)に置いた。
確率:株や不動産の調整、会員の高齢化、値上げ疲れのうち2つ程度が重なる、無理のない構造変化。2009年・2021年の落ち込みの実績が、確率の下限を支える。
悲観 8% 会員権の販売が構造的に細り、運営の固定費だけが重く残る10年 利益 70 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 290 円616 億円
会員権の販売数量が今の半分近くに落ちる。紹介が細り、新ホテルの会員が埋まらず、在庫が積み上がる。価格は物価に追いつかない。ホテル運営は稼働率が伸びず、人件費の上昇で利益率は3%まで下がる。
メディカルは新規の検診施設が計画どおり埋まらず、ハイメディック会員は3.5万人にとどまる。シニアは赤字から抜け出せない。賃借の施設の家賃は売上が落ちても残る。
10年後の営業利益は約100億円。会員制の看板は残るが、もはや優良な成長会社ではない。預り保証金の返還も重くのしかかる。
会員が高齢になって退会が増える一方、新しい会員が入ってこない。年会費で運営費をまかなう設計が崩れ、会員1人あたりの負担を上げるか、サービスを削るしかなくなる。会社は事業の一部を売って立て直しを図るが、時間がかかる10年になる。
- 会員権販売(ホテル・メディカル):数量 53.9(年間販売口数(百口))× 価格 1,551(1口あたり契約高(万円))→ 売上 604 億円・営業利益 109 億円。販売数量0.55倍、価格は物価に届かない
- ホテル・レストラン運営:数量 16.7(会員制ホテル・ゴルフの会員口数(万口))× 価格 74(1口あたり年間売上(万円))→ 売上 1,241 億円・営業利益 37 億円。口数0.95倍、利益率3%
- ハイメディック(会員制検診・会員向け商品):数量 3.5(ハイメディック会員(万人))× 価格 98(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 344 億円・営業利益 52 億円。会員3.5万人、利益率15%
- 一般健診(MS法人):数量 61.8(年間健診受診者(万人))× 価格 1.86(1人あたり受託収入(万円))→ 売上 115 億円・営業利益 12 億円。受診者62万人、利益率10%
- シニアレジデンス:数量 1,711(入居室数(室))× 価格 933(1室あたり年間売上(万円。エイジングケア等を含む))→ 売上 160 億円・営業利益 0 億円。入居1,710室、損益ゼロ
倍率:ROE 3.6%は資本コスト以下なので正当化PERの上限は1÷8%=12.5倍。構造的に負ける筋書きで、上限の約70%(8.8倍)に置いた。稼ぐ力(純利益70億円)で測る。
確率:資産価格の長い調整、会員の退会増、中古の会員権の暴落による紹介の停止が重なる必要があり、起こる確率は低い。ただ会員制ビジネスの前提が崩れる筋書きで、深さは大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
会員権販売(ホテル・メディカル)
エクシブ・ベイコート・サンクチュアリコートのホテル会員権とハイメディック会員権を売る。登録料は契約時、不動産代金は開業時に売上へ入る。
| 数量年間販売口数(百口) | 価格1口あたり契約高(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 98.0 | 1,349 | 955 | 256 |
| 10 年後 中立 | 102 | 1,808 | 1,330 | 346 |
取り方:2026/03期の契約高1,322億円(ホテル1,221億・メディカル94億ほか)を、ホテル約6,100口・メディカル約3,700口(推定。中計は5年で計4万口)で割って1口平均約1,350万円とした。売上は契約高の約7割(開業まで繰り延べる分があるため)。数量は富裕層世帯と会員の買い増しで決まる。
ホテル・レストラン運営
会員制ホテル42か所と海外1か所の運営。年会費(運営管理費)、宿泊・料飲、保証金償却が収入。
| 数量会員制ホテル・ゴルフの会員口数(万口) | 価格1口あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.6 | 63 | 1,109 | 56 |
| 10 年後 中立 | 20.9 | 84 | 1,764 | 132 |
取り方:2025/03末の会員口数(ホテル約14.0万口・ゴルフ約3.0万口)に2026/03期の新規販売を足して約17.6万口(推定)。売上1,109億円を割って1口あたり年63万円。売上には年会費・料飲・保証金償却・カハラなど海外を含む。
ハイメディック(会員制検診・会員向け商品)
会員制の高級検診クラブ「ハイメディック」。月会費と登録料に、サプリ・エイジングケアなど会員向け商品を足す。
| 数量ハイメディック会員(万人) | 価格1人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.5 | 85 | 299 | 61 |
| 10 年後 中立 | 5.6 | 114 | 641 | 154 |
取り方:会員約3.5万人(2025年度末の会社目標水準)。メディカル全体の売上559億円から、一般健診約105億円とシニア約155億円(推定)を除いた約299億円を割った。営業利益はメディカル83億円の内訳を推定(ハイメディック約61億円)。 数量は実物(会員数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
一般健診(MS法人)
全国18の医療機関の健診業務を受託する。企業の健康診断が中心。
| 数量年間健診受診者(万人) | 価格1人あたり受託収入(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 65.0 | 1.62 | 105 | 16 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 2.16 | 169 | 29 |
取り方:受診者は年約65万人(会社資料)。連結の売上は医療機関ベース175億円(1人2.7万円)ではなく、受託収入として約105億円(推定)。営業利益率は中計の15〜20%の下限寄りで置いた。
シニアレジデンス
自立型・介護型の有料老人ホームを全国に23施設、2,090室運営。
| 数量入居室数(室) | 価格1室あたり年間売上(万円。エイジングケア等を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,860 | 833 | 155 | 6 |
| 10 年後 中立 | 2,390 | 1,116 | 267 | 21 |
取り方:2,090室に入居率約89%を掛けて約1,860室。売上は推定約155億円(2025/03期は145億円)で、入居金の償却収入を含む。営業利益は中計の目標5〜10%を下回り、現状は数%(推定)。
リスクと懸念
会員権の販売が止まる
会員権は株価や不動産価格に左右される贅沢品だ。2009年3月期は営業利益率が6%台に落ち、2021年3月期は最終赤字だった。販売が1年止まれば、新ホテルの開発費が先行して資金を食う。
利益の凸凹と質
会員権の利益は新ホテルの開業時にまとめて計上される。2027年3月期の計画でも、開業物件の規模が小さく実現益が約20億円減る。見かけの利益と、手元に残るお金のずれは大きい。
ホテル運営の収益力
稼働率は5〜6割台で、固定費が重い。2年間で固定費が60〜70億円増えた。人件費が年3〜5%上がる中で、利益率7%の目標を保てるかが課題になる。
預り保証金と会員の高齢化
預り保証金は約1,360億円。うち約290億円は退会時に返す約束だ。会員の入会は50代前半、中心は60代で、高齢化に伴う退会が増えれば返還と運営費の負担が積み上がる。
新規ホテルの開発費と投資回収
ホテル1施設に600億円規模、5年で2,500億円を投じる。建築費の上昇を、共有人数の増加(36人から45人)や価格改定で吸収しているが、会員権の販売価格が頭打ちになれば回収の倍率が下がる。
メディカルの新規投資
先端医療や海外に10年で1,000億円規模を投じる計画だ。BNCT(がんの放射線治療装置)の承認申請は2026年4月で、実際の収益化は不透明。失敗すれば利益率の高いメディカルの質が崩れる。
リース会計と賃借施設
ハイメディックの施設やシニアの一部は賃借だ。新リース会計(2028年3月期から)で賃借の約束が負債として載り、自己資本比率が下がる。悲観では、家賃は売上が落ちても減らない固定費として残る。
今後の分かれ目
- 会員権の年間契約高が1,000億円を割る
- ホテル新設の回収が遅れ、10年のやや悲観・悲観の筋書きに近づく。
- ホテル運営の営業利益率が2029年度に7%を超える
- 固定費の重さを抜け出した証拠で、やや楽観・楽観の筋書きに近づく。
- ハイメディック会員が2029年度に4.5万人に届く
- メディカルの成長計画が実現し、利益構成が安定する。中立の上振れ。
- 会員権の二次流通で価格が大きく下がり、紹介が鈍る
- 新規入会の8割を占める紹介が細り、会員権販売の数量が計画を下回る。
- 株価・不動産が大きく下落する
- 会員権が買い控えられ、利益は繰延の減少と重なって急減する。2009年や2021年型の落ち込み。
- 会社がメディカルで大型の買収・出資に踏み切る
- 成長は加速するが、投資回収が見えにくく、ROEが目標に届かなくなるおそれ。
見ておくもの
- 会員権の年間契約高(ホテル・メディカル)と新規物件の販売進捗
- ホテル運営の営業利益率(5%台から7%)と稼働率
- ハイメディック会員数(3.5万人から4.5万人)と一般健診の受診者数
- 預り保証金の残高と、退会による返還の額
- 評価営業利益と会計上の営業利益のずれ
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで決めた。各筋書きの自己資本は今の値に純利益を足して還元を引いて流し、ROEは結果として出した。資本コスト7.25%(基本7.5%+目安の合計0.5%)を超えるROEは先で薄れるとして(残る割合1/2。強い堀は認めない)、長期の成長4%で利益ベースの正当化PERを出し、利益の質(繰延の波・投資負担)から楽観90%・やや楽観88%・中立85%に置いた。やや悲観・悲観は構造的な負けの稼ぐ力から、それぞれ約78%・約70%に置き、7割へ引き上げていない。今のトレーリングPER18倍前後は使っていない。会計の形はリースを家賃のまま営業費用に入れた今の形でそろえ、新リース会計(2028年3月期から)で営業利益と有利子負債の形が変わる点には触れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.9→20.36 倍・やや楽観 PER 14→19.63 倍・中立 PER 12.9→19 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に、4つの目安の合計+0.5%を足して8.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。