結論
韓国電力公社は、韓国全国の送配電・電力小売と、原子力・火力の発電子会社を抱える国策電力会社である。筆者の結論は「割安」である。値段が安いのは需要の先細りではなく、政府が料金を政治的に決め、2022年には巨額赤字を抱え込んだ記憶が残るからだ。
2025年の連結純利益は約60億ドルに回復した。産業向け料金の引き上げと発電費用の落ち着きが効いた。ただし2026年上期の営業利益は前年同期比約17%減り、9月には年末まで電気料金を据え置く決定が出た。電力網を独占していても、利益を自由に決められるわけではない。
10年後も送電線と原子力は必要で、半導体工場とデータセンターが数量を押し上げる。ただし産業用は地域別の料金引き下げ案があり、韓国水力原子力の発電コストと独立系発電からの調達価格の差は株主に帰属するとは限らない。中立の筋書きでは純利益が約62億ドル、ROEが8%弱となり、現在より増えた自己資本も高い価値は生まない。
それでも今の会社全体の時価総額は約136億ドルで、継続黒字が残るなら安全域は大きい。5筋書きの価値を資本コスト8.5%で割り引くと約323億ドル、差は約プラス137%となる。ただし極端な赤字再発なら株主に残る価値はごく小さく、財務改善と料金制度の正常化を確認し続ける必要がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、送電網と原子力は10年後も必要であり、なくなる事業とは思わない。韓国の半導体工場が増えれば、電気を使う場所まで届ける電力網が最も確かな資産になる。ただし必要不可欠という性質と、少数株主に利益が残るという性質は同じではない。政府が料金を政治目的で抑えたとき、設備を売って別の国へ移すことはできない。
オーナーの立場からは、2025年の利益60億ドルを毎年そのまま自由に取り出せる金だとは思わない。送電線を増強し、原子力発電所の安全を保ち、借金を借り換えなければ事業は続かない。2025年の純利益とフリーキャッシュフローの間には大きな差があった。それでも株主にとっての改善は、配当を急いで増やすより、料金の適正化と純負債の削減を続けることにある。
韓電の堀は物理的には強いが、増分の自己資本利益率が資本コストを安定して上回る証拠は弱い。2035年に自己資本が厚くなっても利益が2025年並みなら、利益ベースの価値は簿価より低くなる。反対に、国策として必要な投資へ適正な料金回収が認められれば、今の小さい時価総額には大きな余白がある。資産価値だけを安全域と呼ばず、利益の継続性、政府の行動、配当可能額を分けて検証するのが長期保有の条件だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの根は全国の電力販売である。2025年は約5,494億kWhを売り、住宅向け約884億kWh、一般・商業向け約1,383億kWh、産業向け約2,802億kWh、その他約424億kWhに分かれた。産業向けの売上単価が最も高く、2025年は181.9ウォン/kWhだった。家庭の単価は159.0ウォンである。利用者は送配電網を実質的に選べないが、料金は政府との制度協議で決まり、原価の自動転嫁は保証されない。
発電では子会社の韓国水力原子力が原子力・水力を持ち、韓国南東発電、韓国中部発電、韓国西部発電、韓国南部発電、韓国東西発電が主に火力を担う。2025年に韓電が調達した電力の約33%は原子力・水力、33%は系列の非原子力、34%は独立系発電事業者が供給した。系列発電会社から親会社への卸販売は連結で消えるので、需要家への最終販売と二重に売上へ足してはいけない。
外部向けには発電所の設計・保守、海外発電投資などがある。韓電KPSと韓電技術は上場子会社であり、少数株主持分も存在する。韓電KDNは電力系統の情報管理や受託開発を担い、2025年の単体売上は7,735億ウォンだった。大半が系統内の仕事なので、連結外販の取り分は小さい。海外の原子力技術は輸出可能でも、親会社が契約金額を全額稼ぐとは限らない。
米国の州規制電力会社と違い、認可自己資本に固定の利益率を掛ければ収益が決まるわけではない。政府・韓国電力取引所・電力料金制度・卸電力価格が重なり、売電単価と発電・購入電力原価の差が、最後に株主へ残る利益を決める。
優良さと弱いところ
他社が簡単にまねできない強みは明白だ。全国の送配電網、系統運用、原子力・火力の大規模設備、許認可と技術者集団である。2025年末にグループは国内発電設備容量の約53%を持ち、発電所の新設・系統接続には長い時間が要る。電力供給の信頼性も高く、10年先も電力網を迂回して工場を運営するのは難しい。
だが、経済的な堀は物理的独占ほど強くない。政府と韓国産業銀行の保有は合計51.1%で、投資家のためより物価と産業政策を優先できる。2022年には燃料高を料金へ十分転嫁できず、営業赤字が258億ドルに達した。2025年のROE18%は回復の強さを示すが、過去10年の中央値は約マイナス0.1%である。値上げが一度通っても、次も通るとは限らない。
実際、2025年の産業向け料金は2023年比で約18%高くなり、利益が大きく戻った。しかし2026年には地方産業向けの料金を最大10%下げる案が示された。民間のGS EPSやSK E&Sは発電では競うが、送配電の大半を再構築できない。発電設備が守る供給力は堀であっても、投資の増分利回りが株主の資本コストを超えるかは政治に依存する。
総有利子負債は2025年末に約924億ドル、純負債は約879億ドルで、営業キャッシュフローに対する負担が重い。政府の信用は資金繰りを助けても、普通株の取り分を保証しない。したがって堀は「普通」とし、国家独占という言葉だけで高い資本効率を約束しない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
韓国の電力市場は成熟しているが、数量が静かに伸びる余地はある。2025年の韓電販売量は549TWhで、前年とほぼ横ばいだった。産業用は2.1%減り、化学・鉄鋼の不振が響いた一方、一般・商業向けは2.6%増えた。2026年に政府が示した2040年の需要見通しの改定案は、半導体工場とAIデータセンターを大きく織り込んだ。ただし電力の引き合いと工場の完成は違い、送電網や用地が整うまで売電量にはならない。
韓電グループは2025年末に発電容量の53.4%を持ち、民間などが46.6%を占める。実際の発電量のうち独立系の比率は約36%で、GS EPS、SK E&S、ポスコ・インターナショナルなどが卸発電の競争相手だ。小売では全国送配電網に代わる大規模な事業者はないが、再エネの直接購入契約、自家発電、系統外の供給が少しずつシェアを削る。発電段階の競争で仕入れ価格が上がれば、小売独占の利点は減る。
最大の論点は数量より料金である。燃料費調整単価は2026年末にも5ウォン/kWhで据え置かれ、四半期の算式が示す7.3ウォンを全額反映しなかった。2026年8月の産業向け地域別料金案は、地方の工場に最大10%の値下げを与え、値上げは伴わない構想である。政策目標が家計と産業の負担軽減に傾けば、電力会社に投資の回収を待たせる。
原子力の長期稼働と送電網の更新には追い風があるが、石炭設備の環境対策、LNGの輸入価格、発電所の安全投資が費用を押し上げる。米国の典型的な規制会社は認可ROEとレートベースが収益の道筋だが、韓電は料金と卸調達費の差から考える必要がある。この違いが米国同業より高い資本コストと厚い悲観確率の理由である。
資本政策と M&A
経営の優先順位は株式還元より電力供給、設備投資、巨額の借金の返済である。2025年のフリーキャッシュフローは約36億ドルだったが、純負債は約879億ドル残る。2021~2023年の料金抑制で傷んだ自己資本を再建するだけでも利益の留保が要る。金利環境の変化を踏まえると、借り換えで10年目の年間利払いは2025年比で税前約15億ドル増えるという保守的な試算になる。
2025年度に対応する配当は2026年の株主総会で総額9,899億ウォンと決まり、約7億ドル相当を翌年に支払った。添付の財務データが示す2025年の現金配当約1.5億ドルとは計上時点が異なる。赤字だった2022~2023年は配当をほぼ止めた。10年にわたる安定増配率や大規模な自社株買いの数字の約束はない。2025年の発行普通株数は2026年上期にも変わっていない。
会社は2035年のエネルギー事業改革や海外・新成長事業の拡大を掲げ、過去に2035年売上127兆ウォン、海外・成長事業20兆ウォンという構想を示した。ただし契約済みの外部売上としては確認できず、全額を株主の利益に見込まない。国内の設備と海外原子力案件への投資も収益性を精査すべきである。国策として事業統合や増資がありうるが、合意済みの非公開化や買収、上場廃止予定は確認されない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最も確かな資産は全国に張り巡らされた送配電網であり、半導体・データセンター投資が実現するほど希少性は高まる。韓国では工場が別の小売送電網を選べないので、電力需要の取り込みを左右するのは接続設備と系統増強の速さだ。政府が2040年需要を引き上げたことは産業政策上も大規模な送電建設を後押しする。2025年の販売量は549TWhにとどまるが、2035年には産業向けだけで400TWhを超える余地がある。大口需要には契約と設備計画が必要なため、曖昧な申込量より稼働済みの電力使用量を重視すればよい。
電源構成にも利点がある。子会社の韓国水力原子力の原子力・水力は2025年の調達量の約3分の1を担い、発電価格は民間のLNG火力より低かった。原子力設備の高稼働と送電の更新投資を組み合わせれば、化石燃料輸入が増える局面でも費用を相対的に抑えられる。2025年の産業向け電気料金は2023年より約18%上がり、実際に政策変更で利益が回復した実績がある。設備の規模を増やしつつ十分な回収が認められるなら、2022年の赤字は恒常的な姿ではない。
政府が筆頭株主側にいることは、利益配分を制限する半面、信用不安による事業の断絶を避ける力にもなる。純負債の重さから再投資・債務削減を先行させても、10年の後半には配当余力が戻る。少数株主に残る収益が大きい場合、現在の時価総額はその継続的な稼ぐ力を十分反映していない。
慎重な見方
2022年の巨額赤字は、顧客が逃げなくても公益企業が株主のために利益を稼げないと証明した。燃料が上がっても政治が料金を止めれば、全国独占の設備は売却しにくい重い固定費になる。2026年9月も燃料費調整の算式は7.3ウォンの上昇を示したのに、実際には上限5ウォンを据え置いた。地方工場の料金を最大10%下げる新制度まで構想されている。2025年の産業料金で得た利益が、政治の都合で逆流するのは十分ありうる。
株主にとって最も怖いのは、政府が債務の支払いと供給維持は守るが、普通株の利益配分まで守るとは約束しないことだ。政府と韓国産業銀行は議決権の過半を持ち、独立株主が料金や投資判断を左右しにくい。2025年末の純負債約879億ドルは時価総額の6倍以上であり、燃料価格や借り換え金利が少し動くだけで利益を食う。連結の大きな簿価を清算時に現金で回収できるとも限らない。
発電の競争は残る。2025年末の民間などの発電容量シェアは46.6%で、民間発電からの購入電力費用を必ずしも小売料金へ転嫁できない。政府の産業誘致策で工場の自家発電・再エネ直接購入が進めば、収益の良い産業需要も減る。2026年上期の減益は2025年の利益回復が安定成長を保証しない証拠だ。安い帳簿倍率だけで財務危機を無視してはいけない。
どちらに重みを置いたか
電力網が必要であり続けるという見方は強い。しかし株式の取り分については、2022年の料金抑制と2026年の凍結・地域割引案を重く見る。5つの確率は楽観側27%、中立34%、悲観側39%として、典型的な米国規制電力会社より下方へ寄せた。特に政府の供給維持は株主還元の保証ではない。
他方、2025年の黒字回復を全否定するのも不自然である。工場向け単価の実際の改善があり、資本コストを割り引いた期待価値は現在の時価総額を大きく上回る。結論は割安だが、料金と借金の動向で価値の分布が極端に変わる株である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 56.42 ドル724 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 9.08 ドル117 億ドル)。 今の値に割り戻すと 30.99 ドル398 億ドル、今との差 +199.8%、 期待の年率 +23.0%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 121.55 ドル1,561 億ドル | 17.13 ドル220 億ドル | +1,241.3% | +34.2% | 12.48 ドル160 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 89.47 ドル1,149 億ドル | 14.41 ドル185 億ドル | +904.6% | +30.0% | 18.70 ドル240 億ドル |
| 中立 | 34% | 66.87 ドル859 億ドル | 11.68 ドル150 億ドル | +659.7% | +26.0% | 26.71 ドル343 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 25.35 ドル325 億ドル | 3.89 ドル50 億ドル | +182.8% | +12.0% | 7.31 ドル94 億ドル |
| 悲観 | 14% | 2.18 ドル28 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −78.9% | −14.4% | 0.31 ドル4 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 56.42 ドル724 億ドル | 9.08 ドル117 億ドル | +533.5% | +23.0% | 65.50 ドル841 億ドル |
今の株価時価総額 10.34 ドル133 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:AI・半導体需要と料金改革が利益を定着させる 利益 110 億ドル · PER 12.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 121.55 ドル1,561 億ドル
国内では半導体集積地への送電線が遅れず整い、電力販売量が約786TWhへ増える。産業用は425TWhで、企業の自家発電・直接購入契約が増えても電力系統と小売のシェアはほぼ保たれる。物価に近い料金改定が行われ、工場向けの地域別料金引き下げは送電混雑の解消とコスト削減で吸収できる。住宅向けと一般・商業向けの需要も、冷暖房の電化とデータセンターの稼働で伸びる。
韓国水力原子力の低コストの発電比率が安定し、老朽石炭設備の更新費用も合理的に回収される。民間発電のSK E&SやGS EPSから買う電力量は増えても、卸値と小売料金の差が持続する。海外原子力関連の設計・保守と電源投資も増えるが、成立前の案件を無条件に利益へ足さない。AIで受託工数が減るICT外販の寄与は小さい。
連結営業利益は200億ドル前後、純利益は110億ドルまで育つ。10年間の純利益累計840億ドルから正味の配当等220億ドルを引くため、自己資本は約954億ドルとなる。政府は公共料金の責任を残しながらも収益性を認め、物理的な独占が経済的な堀へ変わる。
- 住宅向け電力販売:数量 113(販売電力量(TWh))× 価格 16(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 181 億ドル・営業利益 22 億ドル。住宅需要は電化で約1.28倍、料金は物価に近い上昇
- 一般・商業向け電力販売:数量 196(販売電力量(TWh))× 価格 18(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 355 億ドル・営業利益 57 億ドル。データセンター・商業施設の増加で販売量約1.42倍
- 産業向け電力販売:数量 425(販売電力量(TWh))× 価格 18(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 765 億ドル・営業利益 119 億ドル。半導体拡張で量約1.52倍、地域差料金の影響を工場移転で相殺
- その他用途の電力販売:数量 52.0(販売電力量(TWh))× 価格 11(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 57 億ドル・営業利益 5 億ドル。農業などの補助料金を少し是正
- 外部の発電・設計・保守・海外案件:数量 38.0(2025年価格換算の外部役務市場獲得額(億ドル))× 価格 1.50(2025年基準の受託単価指数)→ 売上 57 億ドル・営業利益 9 億ドル。海外原子力・保守の外需が増え、外販契約市場が拡大
- 電力ICT外販(KEPCO KDNの一部):数量 8.5(外販向け提供工数(千人月))× 価格 1.34(受託単価(万ドル/人月))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替で人月0.85倍、単価は値下げ競争で基準年以下
倍率:長期のg3.0%(国内電力量の実質0.5~1%と料金の名目2~2.5%)、k8.5%、moat=normalで残る割合0.50。2035年の帳簿ROEは11.5%(純利益110÷自己資本954.4)で、RONIC=k+0.50×(ROE−k)=10.01%。式(1−g÷RONIC)÷(k−g)×(1+g)は13.12倍。これを上限とし、利益の安定性に応じて12.2倍(上限の93%)とした。市場のPERやPBRを参照していない。K-IFRS純利益を用い、純現金の別建て加算はない。
確率:工場投資・系統整備・電気料金の原価連動が同時に進む。2035年戦略の海外・成長事業も相当程度実現するが、政治的な料金抑制が消える保証はないため9%。
やや楽観 18% やや楽観:産業料金の上昇と低コスト電源が続く 利益 82 億ドル · PER 11.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 89.47 ドル1,149 億ドル
韓国の工場立地は半導体が牽引し、産業向け電力は380TWhへ伸びる。商業・データセンター向けも177TWhに達し、全国小売網の実質シェアはほぼ守られる。政府の地域別料金制度では一部の工業地域が安くなるが、全社では段階的な基本料金の見直しを許す。需要増と送電網の増強が、規制電力としての規模の利点を強める。
原子力の稼働率が高まり、石炭火力の更新は水準を選んで進める。発電段階では民間のGS EPSやSK E&Sの競争が残るため、利益率は楽観ほど高くならない。海外事業は設計・保守を中心に外部契約を積み重ね、送電設備への追加投資も無理な買収で膨らませない。ICTの受託仕事はAIエージェントに一部奪われる。
営業利益は約163億ドル、純利益は82億ドルとなる。2026年以降の純利益累計は710億ドル、配当等の正味還元は185億ドルで、自己資本は約859億ドルへ厚くなる。2025年の高いROEをそのまま延長するのではなく、料金の定着と負債のゆっくりした圧縮で競争力が残る筋書きである。
- 住宅向け電力販売:数量 104(販売電力量(TWh))× 価格 15(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 159 億ドル・営業利益 18 億ドル。住宅販売量は2025年比約17%伸びる
- 一般・商業向け電力販売:数量 177(販売電力量(TWh))× 価格 17(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 302 億ドル・営業利益 47 億ドル。商業需要とデータセンターの稼働で市場規模が拡大
- 産業向け電力販売:数量 380(販売電力量(TWh))× 価格 17(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 646 億ドル・営業利益 97 億ドル。産業需要は増えるが地域別料金の値下げが単価を削る
- その他用途の電力販売:数量 48.0(販売電力量(TWh))× 価格 10(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 50 億ドル・営業利益 4 億ドル。補助用途の料金見直しが少し進む
- 外部の発電・設計・保守・海外案件:数量 33.0(2025年価格換算の外部役務市場獲得額(億ドル))× 価格 1.35(2025年基準の受託単価指数)→ 売上 45 億ドル・営業利益 5 億ドル。設備保守・原子力輸出の受託を拡大
- 電力ICT外販(KEPCO KDNの一部):数量 7.5(外販向け提供工数(千人月))× 価格 1.28(受託単価(万ドル/人月))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。人月0.75倍、名目単価も基準年以下
倍率:長期のg3.0%(国内電力量の実質0.5~1%と料金の名目2~2.5%)、k8.5%、moat=normalで残る割合0.50。2035年の帳簿ROEは9.5%(純利益82÷自己資本859.4)で、RONIC=k+0.50×(ROE−k)=9.02%。式(1−g÷RONIC)÷(k−g)×(1+g)は12.50倍。これを上限とし、利益の安定性に応じて11.2倍(上限の90%)とした。市場のPERやPBRを参照していない。K-IFRS純利益を用い、純現金の別建て加算はない。
確率:工場・商業需要の増加は十分あり得るが、料金を上げる自由はなく、2026年に出された地域別の値下げ案も利益を制約するため18%。
中立 34% 中立:量は増えるが価格規制が利益を薄める 利益 62 億ドル · PER 9.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 66.87 ドル859 億ドル
電気の販売量は2035年に約632TWhへ増える。半導体とデータセンターの計画の一部が実現する一方、素材産業の需要停滞と省エネで伸びは抑えられる。産業向けは330TWh、商業向けは163TWhを確保し、直販や自家発電の進展で小売シェアをわずかに失う。料金は長期では上がるが、産業用の地域割引と家庭料金の政治的な上限が続き、物価3.5%の累積上昇に届かない。
2026年上期は連結営業利益が前年より約17%減った。原子力子会社の改善だけで小売・火力部門のコストを完全には補えず、2025年の好況を固定化できない。国の送電投資と老朽設備更新は必要だが、民間発電との購入電力費用を十分な利幅で回収できるかは料金政策次第である。ICT外販の事務系人月はAIエージェント代替で35%減るが、全社影響は軽微にとどまる。
連結売上は約1,005億ドル、営業利益は約124億ドル、純利益は約62億ドルで2025年から大きくは増えない。純利益累計610億ドルから配当等150億ドルを戻し、自己資本は約794億ドルへ育つ。ROEは8%を切るので、帳簿の増加すべてが株主価値になるわけではない。
- 住宅向け電力販売:数量 95.0(販売電力量(TWh))× 価格 15(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 138 億ドル・営業利益 14 億ドル。住宅量は緩やかに増え、値上げは物価未満
- 一般・商業向け電力販売:数量 163(販売電力量(TWh))× 価格 16(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 258 億ドル・営業利益 35 億ドル。商業・データセンターの一部が運転を開始
- 産業向け電力販売:数量 330(販売電力量(TWh))× 価格 16(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 528 億ドル・営業利益 74 億ドル。産業向け330TWh、地域別料金が平均単価を抑制
- その他用途の電力販売:数量 44.0(販売電力量(TWh))× 価格 9.70(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 43 億ドル・営業利益 2 億ドル。政策目的の低料金が続き収益性は低い
- 外部の発電・設計・保守・海外案件:数量 30.5(2025年価格換算の外部役務市場獲得額(億ドル))× 価格 1.22(2025年基準の受託単価指数)→ 売上 37 億ドル・営業利益 3 億ドル。海外案件は既契約の確度を重視し実質成長は限定的
- 電力ICT外販(KEPCO KDNの一部):数量 6.5(外販向け提供工数(千人月))× 価格 1.20(受託単価(万ドル/人月))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替で実質人月0.65倍、単価0.80倍
倍率:長期のg3.0%(国内電力量の実質0.5~1%と料金の名目2~2.5%)、k8.5%、moat=normalで残る割合0.50。2035年の帳簿ROEは7.8%(純利益62÷自己資本794.4)で、RONIC=k+0.50×(ROE−k)=8.15%。式(1−g÷RONIC)÷(k−g)×(1+g)は11.84倍。ROEがk以下なのでPERの上限は1÷k=11.76倍とし、利益の安定性に応じて9.6倍(上限の82%)とした。市場のPERやPBRを参照していない。K-IFRS純利益を用い、純現金の別建て加算はない。
確率:送配電独占が残り工場需要も長期では増える公算が大きい。しかし2026年上期の減益と料金据え置きが示すように、費用上昇を即時に転嫁できないため34%を中心とする。
やや悲観 25% やや悲観:電力料金の凍結と燃料高が再燃 利益 30 億ドル · PER 8.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 25.35 ドル325 億ドル
物価が上がっても政府は住宅料金の引き上げを遅らせ、工場向けには地方の産業支援を優先する。産業需要は295TWhと小幅な伸びにとどまり、全国の送配電網を保守する固定費が重くなる。韓国国内の小売網は独占のままだが、顧客が離れないことと値上げできることは別である。民間発電の稼働率が上がり、韓電の発電子会社が収益性の低い電源を抱える。
2027年から数年間は燃料の高値と料金認可の遅れで利益が極端に薄くなる。営業利益が回復しても、借換金利が約5.75%へ上がった負債の支払いを優先し、老朽発電所の償却と環境投資が配当に先行する。設計・保守契約の採算も競争で下がり、ICTはAIエージェントの代替がさらに進む。
2035年の営業利益は約80億ドル、純利益は30億ドルとなる。中間期の弱い利益を含めた10年間の累計は210億ドルと、期首・期末平均を単純に使う場合より低い。正味の配当50億ドルを除くと自己資本は約494億ドルで、資本コストに届かない収益力となる。
- 住宅向け電力販売:数量 91.0(販売電力量(TWh))× 価格 13(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 116 億ドル・営業利益 7 億ドル。住宅向けの値上げは政治的に限られる
- 一般・商業向け電力販売:数量 145(販売電力量(TWh))× 価格 14(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 200 億ドル・営業利益 18 億ドル。サービス需要の拡大は弱い
- 産業向け電力販売:数量 295(販売電力量(TWh))× 価格 14(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 398 億ドル・営業利益 58 億ドル。石油化学・鉄鋼低迷と地域割引で単価が停滞
- その他用途の電力販売:数量 41.0(販売電力量(TWh))× 価格 8.40(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 34 億ドル・営業利益 1 億ドル。低い優遇単価の据え置きが続く
- 外部の発電・設計・保守・海外案件:数量 25.0(2025年価格換算の外部役務市場獲得額(億ドル))× 価格 1.10(2025年基準の受託単価指数)→ 売上 28 億ドル・営業利益 2 億ドル。外販案件の採算と量が低迷
- 電力ICT外販(KEPCO KDNの一部):数量 5.5(外販向け提供工数(千人月))× 価格 1.10(受託単価(万ドル/人月))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AI代替で人月0.55倍、単価0.73倍
倍率:長期のg3.0%(国内電力量の実質0.5~1%と料金の名目2~2.5%)、k8.5%、moat=normalで残る割合0.50。2035年の帳簿ROEは6.1%(純利益30÷自己資本494.4)で、RONIC=k+0.50×(ROE−k)=7.28%。式(1−g÷RONIC)÷(k−g)×(1+g)は11.01倍。ROEがk以下なのでPERの上限は1÷k=11.76倍とし、利益の安定性に応じて8.3倍とした。市場のPERやPBRを参照していない。K-IFRS純利益を用い、純現金の別建て加算はない。悲観側の床は税・負債控除後の売却可能な非中核持分等を推定した35億ドルで検算した。
確率:2026年の料金据え置きと産業向け地域割引の検討がすでに起きており、政府の負担分担が株主に不利になる展開は現実的。2022年ほどの赤字には戻らない筋を25%。
悲観 14% 悲観:国民負担を優先し株主の稼ぐ力を失う 利益 5 億ドル · PER 5.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2.18 ドル28 億ドル
産業用の地域割引が恒久化し、鋼材・化学工場の操業縮小と工場の自家発電・直接購入が進む。産業用販売量は235TWhに減り、家庭向けも人口減少と効率改善で減る。政府が原価上昇の相当部分を料金に移さず、国内小売の独占は株主の利益を守らない。民間のGS EPS、SK E&Sなどは発電事業でシェアを取り、韓電は旧式火力の維持・環境投資を強いられる。
2026年の黒字のあと、2027年には利益が縮み、2028~2030年に燃料高と規制遅れでまとまった赤字を計上する。利益の道筋は2026年38億ドル、2027年20億ドル、2028年から3年間は合計155億ドルの損失、その後2031~2035年に計11億ドルの微益となる想定で、期間の純利益累計は約マイナス86億ドルになる。配当は止まり、政府支援は電力供給と債務の借換えを優先する。
2035年は営業利益約47億ドルでも、金利・税・少数株主持分の後に純利益は5億ドルしか残らない。自己資本は約248億ドルへ減り、株主が持つのは国家の送電設備そのものではなく、厳しい料金政策の後に残る小さな利益請求権である。
- 住宅向け電力販売:数量 83.0(販売電力量(TWh))× 価格 12(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 96 億ドル・営業利益 5 億ドル。人口と省エネで家庭販売量が減る
- 一般・商業向け電力販売:数量 127(販売電力量(TWh))× 価格 12(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 154 億ドル・営業利益 11 億ドル。サービス需要も縮小し、料金が実質大幅低下
- 産業向け電力販売:数量 235(販売電力量(TWh))× 価格 11(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 259 億ドル・営業利益 34 億ドル。石油化学・鉄鋼縮小と直接購入で量・単価とも減る
- その他用途の電力販売:数量 37.0(販売電力量(TWh))× 価格 7.40(平均販売単価(米セント/kWh))→ 売上 27 億ドル・営業利益 1 億ドル。農業や教育の優遇が維持される
- 外部の発電・設計・保守・海外案件:数量 18.0(2025年価格換算の外部役務市場獲得額(億ドル))× 価格 1.00(2025年基準の受託単価指数)→ 売上 18 億ドル・営業利益 1 億ドル。原子力輸出・工事案件が延期・失注
- 電力ICT外販(KEPCO KDNの一部):数量 4.8(外販向け提供工数(千人月))× 価格 1.02(受託単価(万ドル/人月))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。AI代替で人月0.48倍、単価0.68倍
倍率:長期のg3.0%(国内電力量の実質0.5~1%と料金の名目2~2.5%)、k8.5%、moat=normalで残る割合0.50。2035年の帳簿ROEは2.0%(純利益5÷自己資本248.4)で、RONIC=k+0.50×(ROE−k)=5.26%。式(1−g÷RONIC)÷(k−g)×(1+g)は8.04倍。ROEがk以下なのでPERの上限は1÷k=11.76倍とし、政策リスクと残存する赤字の再発可能性から5.6倍とした。市場のPERやPBRを参照していない。K-IFRS純利益を用い、純現金の別建て加算はない。国策電力網の価値は現金化しにくく、株主は債務より劣後するため、帳簿の資本をそのまま床にしない。
確率:2022年の巨額赤字が前例であり、料金政治と燃料費ショックが連続すると普通株の利益がほぼ消える。ただし政府の電力供給維持能力があるため、常態的な失敗の確率は14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
住宅向け電力販売
韓国の家庭に電気を供給する。送配電・燃料・設備更新を含む一体の経済性を最終需要の電力量で表す。
| 数量販売電力量(TWh) | 価格平均販売単価(米セント/kWh) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 88.5 | 11 | 99 | 8 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 15 | 138 | 14 |
取り方:韓国電力公社の2025年契約別販売資料で住宅向け88,473,843MWh、平均158.97ウォン/kWh。2025年連結売上97.4293兆ウォンと添付factsの685.5億ドルを突き合わせた基準換算1ドル約1,421ウォンで11.185米セント/kWhとした。数量TWh×単価(セント/kWh)×0.1=億ドル。営業利益8億ドルは実際の部門開示ではなく、住宅の送配電費用が高いことを踏まえた単位費用推計。小売はほぼ全国独占で、競争相手との奪い合いではなく家庭の需要と料金認可が数量・価格を決める。
一般・商業向け電力販売
商店・オフィス・データセンターなどへの小売供給。設備電化と情報処理需要が数量を左右する。
| 数量販売電力量(TWh) | 価格平均販売単価(米セント/kWh) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 138 | 12 | 168 | 21 |
| 10 年後 中立 | 163 | 16 | 258 | 35 |
取り方:2025年の一般・商業向け販売138,315,365MWhと平均172.69ウォン/kWhを韓国電力のESG統計から取得。商品を売る単位はTWh、価格は2025年の一定ウォン換算による米セント/kWhであり、rev_factor=0.1。営業利益21億ドルは相対的に高い稼働率と電力系統維持費を想定した分析上の配賦で、会計上の独立セグメント利益ではない。市場は韓国国内の商業電力需要で、韓電の小売シェアはほぼ全量。産業用の直接購入契約・自家発電の普及が将来の逸失要因となる。
産業向け電力販売
半導体工場、鉄鋼、化学などへの大口供給。政策的な産業支援と発電費用の転嫁が利益を左右する。
| 数量販売電力量(TWh) | 価格平均販売単価(米セント/kWh) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 280 | 13 | 359 | 62 |
| 10 年後 中立 | 330 | 16 | 528 | 74 |
取り方:2025年の産業用販売280,221,380MWh、平均181.90ウォン/kWh(2023年153.71ウォン)を韓電の契約別統計から取得。販売量は2024年から2.1%減で、石油化学・鉄鋼の低調さを反映。単価は12.798米セント/kWh。2025年の相対的に高い料金と大口顧客の系統費用の低さから営業利益62億ドルを推計したが、正式な部門別利益ではない。SK E&S、GS EPS、ポスコ・インターナショナルなどの民間発電は韓電へ卸売りする競争相手で、小売料金で直接競う会社とは区別する。
その他用途の電力販売
農業、教育、街灯、深夜契約など。供給義務が強く、用途別優遇料金が多い。
| 数量販売電力量(TWh) | 価格平均販売単価(米セント/kWh) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 42.4 | 7.77 | 33 | 1 |
| 10 年後 中立 | 44.0 | 9.70 | 43 | 2 |
取り方:2025年の農業・教育・街灯・深夜電力を含むその他販売42,406,671MWh、平均110.42ウォン/kWhを会社の契約別統計から取得。2025年の単価は7.769米セント/kWh。低い料金で原価の回収余地が薄いと考え、営業利益0.8億ドルに抑えた独自推計。農業支援など政策目的の価格が多く、物価への自動連動は期待できない。
外部の発電・設計・保守・海外案件
国内外の発電事業の外部販売、原子力関連の設計・保守、海外プロジェクトを含む。グループ内部の発電売買は消去する。
| 数量2025年価格換算の外部役務市場獲得額(億ドル) | 価格2025年基準の受託単価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 25.4 | 1.00 | 25 | 3 |
| 10 年後 中立 | 30.5 | 1.22 | 37 | 3 |
取り方:2025年の連結売上685.5億ドルから用途別販売の計658.594億ドルと、外販ICT推計1.5億ドルを引いた25.406億ドルが出発点。6-Kの2026年上期外部売上には原子力発電0.478兆ウォン、火力1.258兆ウォン、設計・保守0.285兆ウォン、海外等0.377兆ウォンがあり、電力小売以外に外部顧客が存在することを確認。契約件数・稼働MW当たり外販を一括開示しないため、2025年価格の外部契約市場の獲得売上(億ドル)を実質数量の代理とし、価格は契約単価指数1.0。営業利益3億ドルは外部保守の利益率と少数株主持分を踏まえた推計で、発電子会社から親会社への内部売上は二重に計上しない。
電力ICT外販(KEPCO KDNの一部)
系統監視・ICT受託・業務システムのうち、グループ外に売る役務の推計。内向きの電力設備管理と重複計上しない。
| 数量外販向け提供工数(千人月) | 価格受託単価(万ドル/人月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.0 | 1.50 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6.5 | 1.20 | 1 | 0 |
取り方:KEPCO KDNの公式会社案内は2025年売上7,735億ウォン・従業員2,917人とするが、大半はグループ内業務で連結消去される。外販額・提供人月は非開示のため、内部向けを除いた外販を約1.5億ドル、外部向け労務約1万人人月(10千人月)、平均単価約1.5万ドル/人月と仮定した。千人月×万ドル/人月×0.1=億ドル。電力系統の現場制御は人月代替の対象外だが、運用ソフト・受託開発・監視報告の事務作業をAIエージェント代替の人月型と判定。中立の実質人月0.65倍、名目単価0.8倍、当事業単体の長期g=0%とする。全社売上への影響は1%未満。
リスクと懸念
料金の政治と利益の取り分
政府と韓国産業銀行が議決権の過半を持ち、電力料金は消費者物価と産業政策を優先して決まりうる。2026年第4四半期も燃料費調整の算定額7.3ウォンに対し実際は5ウォンで止まり、物価が上がっても転嫁が遅れる。2022年の大赤字が示すように独占であっても高いROEを保証しない。
巨額負債と借り換えの利払い
2025年末の有利子負債は約924億ドル、現金等は約44億ドルで、純負債879億ドルは時価総額の6倍超。借り換え後の金利を約5.75%とすれば、10年先の利払いは現状比で税前約15億ドルの増加となる。2026年以降に利益が細れば設備投資と借金返済を優先し、配当や普通株の持ち分が犠牲になる。
産業料金の地域差と工場の自家発電
2026年8月には地方産業用を最大10%引き下げる制度案が公表された。産業用は2025年の販売電力量の約51%を占めるため、小さな単価変更でも利益への感応度が高い。半導体の需要が増えても、直接購入契約や自家発電への流出と政策割引で、売上の伸びが資本利益に変わらない可能性がある。
発電コスト・原子力の稼働・環境費
韓国水力原子力の原子力発電が安定すれば安価な電源を持つ利点が生きる。しかし原子力の長期停止、LNG・石炭価格の上昇、老朽火力の更新、炭素排出費用が重なると、購買電力コストが急増する。2026年上期に小売と非原子力発電の利益が悪化したように、電源全体の組み合わせで利益率は大きく揺れる。
政府支配・上場子会社と少数株主
韓国政府と韓国産業銀行の持ち分合計51.1%は、電力の安定供給と産業誘致を少数株主利益より優先しうる。韓電技術・韓電KPSには外部株主がいて、連結営業利益がすべて親会社の普通株主に届くわけでもない。政府支援が債務の保証になっても、配当や増資条件、ADR投資家の利益保護が自動的に続くわけではない。
AIエージェント代替と発電設備投資の収益性
韓電KDNの外部向け受託開発・運用報告・情報処理の人月サービスはAIエージェント代替の対象となる。中立では外部工数を10年で0.65倍に縮める。系統の実地制御や送電・原子力保守は置き換えにくく、全社への直接影響は小さい。一方でスマートグリッドや海外原子力案件に資本を使っても、認可や受注の遅れで投下資本の利回りが不足する危険がある。
今後の分かれ目
- 産業向けの地域別料金制度が正式施行され、地方の平均単価が5%以上下がったら
- 産業向け売上・利益を引き直し、中立の純利益が圧迫される可能性を見る。価格引き下げが送電費の削減を伴わないなら、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 2027年以降、四半期の燃料費連動の上限を広げ、調達費を継続して料金で回収できたら
- 原価と売電単価の差が安定する。2022年型の損失再発確率を引き下げ、楽観・やや楽観へ確率を移す。
- 半導体集積地とAIデータセンターの実稼働で産業・商業販売電力量が2025年比20%以上増えたら
- 売電量と送電設備の稼働率が高まる。料金の値引きが同時に起きないなら、10年の上方筋書きの数量を採り入れる。
- 純有利子負債が2025年末の879億ドルから継続して減少し、配当後もFCFが黒字なら
- 借換利息の負担と少数株主の希薄化不安が下がる。ROEの持続性を見直し、リスク分布の下方の厚さを減らす。
- 石炭・LNG購入価格が高騰し、電気料金が2年以上据え置かれたら
- 2022年に近い赤字の経路を検討する。配当をゼロにする可能性を含め、悲観の利益・自己資本を引き下げる。
- 韓電KDNの外販人月がAIエージェント導入で前年から10%以上減少したら
- 電力系統の保守・制御と、代替される受託ソフトを区別してICT利益を引き直す。ICTは全社の小部分なので、電力事業の倍率を同じ理由で下げない。
見ておくもの
- 韓国の四半期燃料費調整単価と、実際の住宅・産業別売電単価
- 2026年8月に提案された産業向け地域別料金の正式施行と、工場の直接購入・自家発電量
- 販売電力量:産業280TWh、商業138TWh、家庭88TWhの2025年水準からの変化
- 原子力稼働率、韓電系と民間発電の調達電力量・卸購入価格
- 純有利子負債879億ドル、営業キャッシュフロー、設備投資と配当後FCF
- 2026年上期の営業利益4.913兆ウォンからの回復、営業外利払い
- KDN外販の人月契約・案件数、AI導入による受託単価と労務投入の変化
- 政府・韓国産業銀行の合計議決権51.1%と配当・資本政策の公表
倍率と資本コストの決め方
比較対象の米国規制会社の倍率やKEPの現在の株価を価値決定に使わなかった。国内の家庭・商業・産業・その他用途の2025年売電量と用途別単価から出発し、韓国政府の料金権限、半導体需要、民間発電との卸調達、2026年上期の減益を反映した。親会社と発電子会社の内部電力取引は二重計上しない。
現在の簿価だけを床にせず、2035年の営業利益から利払い・税・少数株主持分を引いた純利益を使う。長期gは3.0%、k8.5%、moatは普通で残存割合1/2とし、正当化PERの上限に10年目利益の(1+g)を乗じた。ROEがk以下ならPER上限1/kを守る。中立は上限11.76倍の約82%で9.6倍、楽観は正当化PER約13.1倍の約93%で12.2倍。悲観は低収益と政策リスクからさらに引いた。純利益は株式報酬費用を含むK-IFRSの数値で、余剰現金を別建てで二重加算しない。株数は原株の2倍のADR換算で、企業全体の価値を測る。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国上場株の共通基本8.0%+quality0.5%=8.5%。過去の市場倍率、株価変動のβや規模プレミアムは使わない。政府の料金政策や韓国固有の株主保護はkへ二重上乗せせず、利益の筋書きと下方確率で評価。事業が継続不能に近いとは見ないためdistress加算は0。負債の借換え金利は約5.75%。