結論
WEC エナジー(WEC)は、ウィスコンシンを中心にイリノイ・ミネソタ・ミシガンで電気とガスを売る規制公益の持株会社。2025 年の売上は約 98 億ドル、営業利益は約 24 億ドル、純利益は約 16 億ドル。利益の大半は、各州の委員会が認可した投資の残高(収益基盤)に許可 ROE を掛けたもので、送電会社 ATC の持ち分(約 6 割)と、再エネの非規制資産が少し乗る。
会社は 2026〜2030 年に約 375 億ドル(2026 年 1 月の説明では 365 億ドル)を、すべて規制資産に投じる計画を持ち、資産の伸びは年 11% 前後(検索の要約、原文未確認)、1 株利益は年 7〜8%(2028 年以降は上側)を目標にする。2026 年の利益の見通し(前年比 6〜7% 増)は 4〜6 月期の決算でも維持された。伸びの中心はマイクロソフト(マウント・プレザント、2030 年に約 2.6 GW)とヴァンテージ(初期の投資約 150 億ドル)などのデータセンターで、2030 年には資産の約 15% が超大口顧客向けになる見通し。
バリュー投資の観点では、資本コストは基本 8.0% に quality -0.75% を足した 7.25%(公益の規制事業で需要と値決めは安定、借金は重い)。倍率は利益ベースの正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) で、ROE は帳簿の自己資本 ROE(のれん以外に除くものは無い)を 10 年の中立で約 12%、g は上限の 4.5%(販売電力量 +1.5%・料金の実質上昇で見る名目は 4.3% 前後でその範囲内)、RONIC 9.5%。10 年の中立は上限 17.4 倍の約 8 割の 14.4 倍となる。弱みは、純有利子負債 224 億ドル(時価総額の 6 割超)・FCF −10 億ドル・親会社の借金が増える構造、許可 ROE が政治で削られる動き、データセンターの顧客が少数に集まる点である。事業の質は高いが、成長は借金と増資で賄うため、確率は悲観を薄くしすぎず置き、価値と今の時価総額の差は計算に任せる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後もこの事業があるかを問う。ウィスコンシンの電気とガスは、電化とデータセンターで需要が増える今後 10 年も確実に残り、堀は広がる側にある。ただし堀の大部分は州の委員会の手にあり、価格を決める力は無い。許可 ROE が 9.8% から 9.5% へ引き下げる提案が出ているのが、その現れである。
次にオーナー利益を見る。2025 年の純利益 約 16 億ドルのうち配当は約 12 億ドルだが、FCF は −10 億ドルで、不足は借金と増資で埋めている。10 年の中立では増資の払い込み(約 55 億ドル)を引いた正味の還元は約 118 億ドルで、純利益の合計(約 260 億ドル)の 4 割強にとどまる。経営者が自由に取り出せる利益は小さく、収益基盤の伸びの先にしか株主の価値の増加はない。
資本配分は規制の枠の中でよいが、375 億ドルの投資の大きさが、工期・費用・認可の失敗を抱え込む。安全域は、資本コストを 7.25%(基本 8.0% + quality -0.75%)と置き、悲観の確率を 10 年で 12% と置いて確保した。確信度は、規制電力・ガスの基盤では高いが、データセンター 3 社の契約の確度と手頃さの政治では低い。わかりにくい部分を割り引いたうえで、優良な事業をいくらで買えるかは、最後は計算で判断する。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つに分かれる。①ウィスコンシンを中心とする電力(We Energies、ウィスコンシン・パブリック・サービス〈WPS〉、ミシガン北部):発電・配電・販売まで持つ垂直統合で、石炭からガス・再エネ・蓄電池への入れ替えと送電の強化が投資の中身。②ガス配給(ウィスコンシン、イリノイのピープルズ・ガス、ミネソタ、ミシガン):都市ガスの配管の更新が主で、成長は穏やか。③送電会社 ATC の持ち分(約 6 割)と、風力・太陽光などの非規制資産:規制の外にあり、利益は小さいが安定している。燃料費・購入電力費は料金に転嫁されるので、売上の増減と利益の増減は別物である。
利益の決まり方は「収益基盤 × 自己資本比率 × 許可 ROE」。ウィスコンシンの許可 ROE は 9.8% 前後(WPS は現行 9.80%、委員会のスタッフは 9.50% への引き下げを提案)。会社は 2026〜2030 年の投資の資金を、営業のキャッシュ 約 210 億・追加の借金 約 140 億・普通株 約 50 億ドルで賄う設計で、2026 年の普通株の発行は約 9〜11 億ドル(上期に約 7.6 億ドル)。配当は年約 12 億ドルで、配当性向 65〜70%、配当の伸びは年 6.5〜7% が方針。
データセンターは、マイクロソフトのマウント・プレザント(2030 年に約 2.6 GW、検索の要約)、ヴァンテージ(初期 約 150 億ドル、2028 年完成、5 年の需要 1.3 GW)、オラクル(ポート・ワシントン)が柱。委員会は 2026 年 4 月に超大口顧客料金を承認し、最低契約 15 年・対象を 100 MW 以上に下げ・新設発電の費用を全額顧客が払う形に直した。これで一般の家庭が費用を負う懸念は和らぐが、オラクルはこの決定の審査を裁判所に求めている。新設のガス火力は 2027 年末から稼働を始める計画。
優良さと弱いところ
堀は 3 層。第 1 は地域独占で、競合は無い。第 2 は、ウィスコンシンという委員会が比較的協調的な州で、最大の電力会社として投資を認可されやすいこと(ミネソタのエクセル・エナジー、コロラドの許可 ROE 9.3% と比べると、価格を決める力は強い側)。第 3 は、送電会社 ATC の持ち分と、規制資産だけに投資する規律で、買収で規模を増やさない点。弱みは、堀の中身が委員会の判断に左右される点で、家庭の料金は 2025〜26 年の認可で 2 年累計 12% 超上がり、手頃さの政治が強まっている。
資本効率は、帳簿の自己資本 ROE が 11〜12%(2025 年 11.4%)と許可 ROE 9.8% を上回る。これは親会社の借金を使って公益子会社の自己資本を厚くしているためで、親会社の借金の比率は約 3 割まで上がった。自己資本比率は総資産の 26%、純有利子負債は 224 億ドルで時価総額の 6 割超、FCF は 2025 年に −10 億ドル。格付けは子会社が S&P で A−、ムーディーズで A2(第三者の要約)、FFO ÷ 借金 15% 超を目標にする。同業のサザン(SO)・デューク(DUK)ほどの収益力は無いが、エクセル(XEL)やデトロイト・エジソン(DTE)よりは財務が厚い。
経営は、規制資産への集中と、配当と増資の規律で評価できる。弱みは、5 年で約 375 億ドルという大きな計画の実行(タービンの高騰・納期、認可の遅れ)と、超大口顧客の少なさ(マイクロソフト・ヴァンテージ・オラクルの 3 社に偏る)。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の電力需要は 2025 年に過去最高の約 4,195 TWh、EIA は 2026〜2027 年に年 +1.9% と見る(業界ノート)。伸びの中心はデータセンターで、ウィスコンシンはマイクロソフトの約 2.6 GW、ヴァンテージの 1.3 GW が数字に出る数少ない州。ただし引き合いは確約ではなく、テキサスでは見通しが切り下げられ、ウィスコンシンでも州知事選の候補がデータセンターの一時停止に触れた。
競争の形は州の委員会との交渉である。投資の認可率と許可 ROE が堀で、フロリダ・ジョージア・インディアナ・ウィスコンシンは早く高く認められ、ニュージャージー・ニューヨーク・カリフォルニアは手頃さに敏感。同じ中西部のアライアント(LNT)、アメレン(AEE)、エクセル(XEL)、DTE エナジー(DTE)、CMS エナジー(CMS)がデータセンターの誘致で競い、オハイオ・インディアナ・ミネソタに需要が流れる可能性がある。ウィスコンシンは土地と水に余裕があり、電源構成の転換の最中で、新設のガス火力と風力・蓄電池を組み合わせられる。
設備では、ガスタービンの価格が 2019 年比で約 3 倍・納期 5〜7 年と、新設ガスが高い。税額控除は 2025 年の包括税制法で風力・太陽光に期限が付き、WEC の再エネ計画に向かい風と追い風が混ざる。M&A は、ネクステラ(NEE)によるドミニオン(D)の買収合意など再編が動くが、規制公益どうしの合併は州の承認が 12〜18 か月かかる。WEC は時価総額(約 340 億ドル)の大きさから、買う側・買われる側のどちらにもなりにくい。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、配当(性向 65〜70%)と、借金・普通株・ハイブリッド債による資金調達。2026 年の普通株の発行は約 9〜11 億ドル(市場売却・配当再投資・従業員制度)で、上期に約 7.6 億ドルが済んだ。5 年の計画で普通株は約 53〜57 億ドル(2026 年 4 月の 8-K の資金計画)。会社全体の時価総額で書くので、増資は払い込みを還元から引いて織り込んだ。
M&A の歴史では、2015 年のインテグリス(ウィスコンシン・パブリック・サービスの親)の買収が最大で、その後は規制資産への投資と、ATC・風力の持ち分に集中している。再編の波に加わる気配は無い。資本配分は規制の枠の中でよいが、375 億ドルの計画は工期・費用・認可の失敗を抱え込み、超過費用が認可されなければ株主の損失になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
計画の確度が高い。会社は 5 年の計画を約 375 億ドルに据え、2026 年の 1 株利益の見通しを維持し、資産の伸びは年 11% 前後、1 株利益は 2028 年から年 7〜8% の上側に入ると説明する。ウィスコンシンは委員会が協調的で、超大口顧客料金も最低契約 15 年・新設発電費の全額負担という形で承認された。マイクロソフトの 2.6 GW とヴァンテージの 1.3 GW はすでに数字に出て、計画の外にさらに引き合いが並ぶ。
事業の質は米国の規制公益で上位。許可 ROE 9.8% は、コロラド 9.3%・ニューメキシコ 9.5% のエクセルより高く、ウィスコンシンは土地・水・送電網に余裕があり、新設のガス火力は 2027 年末から稼働して需要に追いつく。送電会社 ATC の持ち分と風力の非規制資産が利益の安定に効く。
資本コスト 7.25% の規制電力で、収益基盤が年 10% 前後伸びて ROE が 12% 前後なら、正当化 PER の上限は 17〜18 倍が成り立つ。今の GAAP の PER 22.6 倍は上限(17〜18 倍)を上回るが、収益基盤が年 10% 前後伸びる間は、倍率が縮んでも株価の下げは限られる、と見る。
慎重な見方
借金と増資で成長を買っている会社である。純有利子負債は 224 億ドルで時価総額の 6 割超、FCF は 2025 年に −10 億ドル。5 年で約 375 億ドルを投じ、不足は借金で埋めるため、借換えの金利が 5.75% 前後に上がり(brief の推定で 10 年後に 4 億ドルの減益)、親会社の借金の比率は約 3 割まで上がっている。FFO ÷ 借金 15% の水準を保てなければ格付けが下がる。
許可 ROE は政治に削られる。WPS で委員会のスタッフが 9.8% から 9.5% への引き下げを提案し、家庭の電気料金は 2025〜26 年に 2 年累計 12% 超上がった。2027〜28 年の We Energies の申請(+4.7%・+4.5%)にも反発が強い。データセンターの顧客は 3 社に偏り、オラクルは超大口料金の決定を裁判所で争い、州知事選の候補は一時停止に触れた。契約が縮めば、先行した発電・送電の投資が一般の料金に回り、手頃さの政治が悪化する。
k 7.25% での PER 17〜18 倍(上限)は、金利 5% の世界では高すぎ、ROE が 12% 前後に高く出るのは親会社の借金で自己資本が薄いからで、質の高い利益とは言えない。
どちらに重みを置いたか
規制事業の質と計画の勢い、委員会との関係は強気の見方が上回るが、財務の厚みと許可 ROE の引き下げ、顧客の偏りは慎重な見方が突いている。倍率は k 7.25%・帳簿の ROE・g 3.7% の正当化 PER の約 8 割に置き(10 年の中立 14.4 倍)、利益は会社目標(1 株利益 年 7〜8%)の下限に近い所に置いた。確率は中立に寄せ、楽観・やや楽観の合計を 10 年 28%、やや悲観・悲観の合計を 10 年 34% とした。悲観を 10 年で 12% と厚くしたのは、手頃さの政治・データセンターの偏り・借金の厚みが重なる筋書きの重さによる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 141.70 ドル459 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 35.51 ドル115 億ドル)。 今の値に割り戻すと 95.40 ドル309 億ドル、今との差 −14.9%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 219.58 ドル711 億ドル | 34.84 ドル113 億ドル | +126.9% | +8.5% | 17.81 ドル58 億ドル |
| やや楽観 | 21% | 186.20 ドル603 億ドル | 35.73 ドル116 億ドル | +97.9% | +7.1% | 46.60 ドル151 億ドル |
| 中立 | 38% | 148.15 ドル480 億ドル | 36.47 ドル118 億ドル | +64.6% | +5.1% | 70.16 ドル227 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 117.60 ドル381 億ドル | 36.72 ドル119 億ドル | +37.6% | +3.2% | 33.95 ドル110 億ドル |
| 悲観 | 12% | 42.12 ドル136 億ドル | 30.27 ドル98 億ドル | −35.5% | −4.3% | 8.69 ドル28 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 141.70 ドル459 億ドル | 35.51 ドル115 億ドル | +58.0% | +4.7% | 177.21 ドル574 億ドル |
今の株価時価総額 112.15 ドル363 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:超大口契約が確定し、収益基盤が年 9〜10% で伸び続ける 利益 42 億ドル · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 219.58 ドル711 億ドル
2035 年末、超大口顧客向けは 3 社に加えて新規の契約も積み上がり、収益基盤は約 860 億ドル(10 年で年 9.7%。2030 年まで年 12%)に達する。ウィスコンシンの委員会が投資を速く認可し、新設ガス・風力・蓄電池・送電の費用が許可 ROE(9.8〜10%)で回収される。ミネソタのエクセルやミシガンの DTE と競って、電源に余裕のある州として大口契約を取り込む。純利益は約 41.7 億ドル(2025 年の約 2.6 倍)。 増資は 10 年で約 86 億ドル、配当は約 199 億ドルで、正味の還元は約 113 億ドル。倍率は正当化 PER 18.0 倍(ROE 12.9%・g 3.7%・RONIC 10.1%・moat 普通)に対し 0.95 倍の 17.1 倍に置く。
- 電力(ウィスコンシン・ミシガン:We Energies・WPS):数量 635(収益基盤(億ドル))× 価格 0.25(収益基盤あたりの売上(燃料費・購入電力の転嫁を含む))→ 売上 156 億ドル・営業利益 53 億ドル。収益基盤 635 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.2454
- ガス配給(ウィスコンシン・イリノイ・ミネソタ・ミシガン):数量 185(収益基盤(億ドル))× 価格 0.31(収益基盤あたりの売上(ガスの調達費の転嫁を含む))→ 売上 58 億ドル・営業利益 10 億ドル。収益基盤 185 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.3139
- 送電会社 ATC の持ち分・非規制の再エネ:数量 40.0(資産(億ドル))× 価格 0.05(資産あたりの売上)→ 売上 2 億ドル・営業利益 2 億ドル。収益基盤 40 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.05
倍率:正当化 PER 18.0 倍(g 3.7%・RONIC 10.1%=k 7.25%+残る割合 0.50×(事業の ROE 12.9%−k)、moat=normal。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 17.1 倍(9.5 割)に置いた。規制の質が高く投資の回収が計画どおり進む筋書きなので、上限の 9.5 割。
確率:超大口契約が確定し、投資が許可 ROE で認められ続ける。10 年でも重なる確率は 1 割未満の 7%。
やや楽観 21% やや楽観:計画に近い形で、収益基盤は年 9% 近く伸びる 利益 38 億ドル · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 186.20 ドル603 億ドル
2035 年末、収益基盤は約 795 億ドル(10 年で年 8.9%)。2030 年までは会社の計画に近い年 11.3% で伸び、その後は投資が小さくなり年 6.5% に鈍る。許可 ROE は 9.8% が保たれ、データセンターは計画どおり稼働する。純利益は約 37.8 億ドル(2025 年の約 2.4 倍)。 増資は 10 年で約 72 億ドル、配当は約 187 億ドルで、正味の還元は約 116 億ドル。倍率は正当化 PER 17.7 倍(ROE 12.5%・g 3.7%・RONIC 9.9%・moat 普通)に対し 0.90 倍の 15.9 倍に置く。
- 電力(ウィスコンシン・ミシガン:We Energies・WPS):数量 580(収益基盤(億ドル))× 価格 0.24(収益基盤あたりの売上(燃料費・購入電力の転嫁を含む))→ 売上 142 億ドル・営業利益 47 億ドル。収益基盤 580 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.2447
- ガス配給(ウィスコンシン・イリノイ・ミネソタ・ミシガン):数量 176(収益基盤(億ドル))× 価格 0.31(収益基盤あたりの売上(ガスの調達費の転嫁を含む))→ 売上 55 億ドル・営業利益 10 億ドル。収益基盤 176 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.314
- 送電会社 ATC の持ち分・非規制の再エネ:数量 39.0(資産(億ドル))× 価格 0.05(資産あたりの売上)→ 売上 2 億ドル・営業利益 2 億ドル。収益基盤 39 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.0512
倍率:正当化 PER 17.7 倍(g 3.7%・RONIC 9.9%=k 7.25%+残る割合 0.50×(事業の ROE 12.5%−k)、moat=normal。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 15.9 倍(9 割)に置いた。許可 ROE がおおむね保たれ投資が計画どおり進むので、上限の 9 割。
確率:会社の計画に近い形で収益基盤が年 10% 前後(2030 年まで)で伸びる。21%。
中立 38% 中立:収益基盤は 2030 年まで年 10% 台、その後 5% 台に鈍る 利益 33 億ドル · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 148.15 ドル480 億ドル
2035 年末、収益基盤は約 722 億ドル(10 年で年 7.8%)。2030 年までは年 10.2% で伸び、その後は投資が小さくなり年 5.5% に鈍る。大口契約の一部が縮み(テキサスで見通しが切り下げられた前例)、許可 ROE は 9.5〜9.8% に落ち着く。純利益は約 33.2 億ドル(2025 年の約 2.1 倍、年 7.6%)。借換えが 5.75% 前後になり財務費用が増える。 増資は 10 年で約 55 億ドル、配当は約 173 億ドルで、正味の還元は約 118 億ドル。倍率は正当化 PER 17.4 倍(ROE 11.9%・g 3.7%・RONIC 9.6%・moat 普通)に対し 0.83 倍の 14.4 倍に置く。
- 電力(ウィスコンシン・ミシガン:We Energies・WPS):数量 518(収益基盤(億ドル))× 価格 0.24(収益基盤あたりの売上(燃料費・購入電力の転嫁を含む))→ 売上 126 億ドル・営業利益 41 億ドル。収益基盤 518 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.244
- ガス配給(ウィスコンシン・イリノイ・ミネソタ・ミシガン):数量 166(収益基盤(億ドル))× 価格 0.31(収益基盤あたりの売上(ガスの調達費の転嫁を含む))→ 売上 52 億ドル・営業利益 9 億ドル。収益基盤 166 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.3142
- 送電会社 ATC の持ち分・非規制の再エネ:数量 38.0(資産(億ドル))× 価格 0.05(資産あたりの売上)→ 売上 2 億ドル・営業利益 2 億ドル。収益基盤 38 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.0528
倍率:正当化 PER 17.4 倍(g 3.7%・RONIC 9.6%=k 7.25%+残る割合 0.50×(事業の ROE 11.9%−k)、moat=normal。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 14.4 倍(8.3 割)に置いた。規制の質は高いが、ROE が k を超える幅は限られ、増資で薄まるので、上限の 8.3 割。
確率:大口需要は大きいが一部は縮み、料金の政治が許可 ROE を 9.5〜9.8% に抑える標準的な筋書き。最も起きやすい。
やや悲観 22% やや悲観:許可 ROE が 9% 台前半に下がり、投資の認可が削られる 利益 28 億ドル · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 117.60 ドル381 億ドル
2035 年末、収益基盤は約 637 億ドル(10 年で年 6.5%)。2030 年までは年 8.5%、その後は手頃さの政治で認可が削られ年 4.5% に鈍る。許可 ROE は 9.2〜9.5% に下がり、超大口契約はヴァンテージの一部が遅れる。純利益は約 28.0 億ドル(2025 年の約 1.8 倍)。 増資は 10 年で約 35 億ドル、配当は約 154 億ドルで、正味の還元は約 119 億ドル。倍率は正当化 PER 17.0 倍(ROE 11.3%・g 3.7%・RONIC 9.3%・moat 普通)に対し 0.80 倍の 13.6 倍に置く。
- 電力(ウィスコンシン・ミシガン:We Energies・WPS):数量 447(収益基盤(億ドル))× 価格 0.24(収益基盤あたりの売上(燃料費・購入電力の転嫁を含む))→ 売上 109 億ドル・営業利益 33 億ドル。収益基盤 447 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.243
- ガス配給(ウィスコンシン・イリノイ・ミネソタ・ミシガン):数量 154(収益基盤(億ドル))× 価格 0.31(収益基盤あたりの売上(ガスの調達費の転嫁を含む))→ 売上 48 億ドル・営業利益 8 億ドル。収益基盤 154 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.3144
- 送電会社 ATC の持ち分・非規制の再エネ:数量 36.0(資産(億ドル))× 価格 0.06(資産あたりの売上)→ 売上 2 億ドル・営業利益 2 億ドル。収益基盤 36 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.055
倍率:正当化 PER 17.0 倍(g 3.7%・RONIC 9.3%=k 7.25%+残る割合 0.50×(事業の ROE 11.3%−k)、moat=normal。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 13.6 倍(8 割)に置いた。許可 ROE と投資の認可が絞られ、RONIC が k に近づくので、上限の 8 割。
確率:許可 ROE が 9% 台前半に下がり、手頃さの政治で投資の認可が削られる。22%。
悲観 12% 悲観:手頃さの政治と大口契約の縮みが重なり、もう優良な規制電力ではなくなる 利益 20 億ドル · PBR 1.0 倍 · 株価時価総額 42.12 ドル136 億ドル
2035 年末、手頃さの政治が強まり、委員会は許可 ROE を 9.0% 前後へ下げ、大規模な設備投資の認可を削る。データセンターの契約はオラクルの係争やマイクロソフトの計画縮小で縮み、先行した発電・送電の費用が一般の料金に回る。収益基盤は約 566 億ドル(年 5.2%)にとどまり、純利益は約 20.4 億ドル(2025 年の約 1.3 倍)。格付けが下がり、借金のコストが上がる。倒産には至らず、規制資本の裏付けが床になり、今の自己資本の PBR 1.00 倍で測る。 増資は 10 年で約 28 億ドル、配当は約 126 億ドルで、正味の還元は約 98 億ドル。
- 電力(ウィスコンシン・ミシガン:We Energies・WPS):数量 389(収益基盤(億ドル))× 価格 0.24(収益基盤あたりの売上(燃料費・購入電力の転嫁を含む))→ 売上 94 億ドル・営業利益 22 億ドル。収益基盤 389 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.242
- ガス配給(ウィスコンシン・イリノイ・ミネソタ・ミシガン):数量 143(収益基盤(億ドル))× 価格 0.31(収益基盤あたりの売上(ガスの調達費の転嫁を含む))→ 売上 45 億ドル・営業利益 8 億ドル。収益基盤 143 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.3147
- 送電会社 ATC の持ち分・非規制の再エネ:数量 35.0(資産(億ドル))× 価格 0.06(資産あたりの売上)→ 売上 2 億ドル・営業利益 2 億ドル。収益基盤 35 億ドル × 収益基盤あたりの売上 0.057
倍率:悲観の床は今の自己資本に掛ける決まり(SCHEMA §1-3)なので、規制資本の裏付けである今の自己資本 136.4 億ドルに PBR 1.00 倍を掛けた。この筋書きの実現 ROE は 9.0%(純利益 20.4 億ドル ÷ 自己資本 227 億ドル)で、k 7.25% を上回る(式の PBR は ROE÷k = 1.24 倍)が、構造的に負けた会社を自己資本より高くは評価せず、1.0 倍を上限にした。PER に直すと約 6.7 倍。悲観の確率と利益の落ち込みで表したので、倍率でさらに下げてはいない。純利益は GAAP。
確率:手頃さの政治・データセンターの偏り・借金の厚みが重なり、もう優良な規制電力ではなくなる確率を 12% と置いた(AEP の 13%、エクセルの 13% と近い)。財務が厚い方なので少し低い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
電力(ウィスコンシン・ミシガン:We Energies・WPS)
ウィスコンシンを中心に、発電から配電・販売まで持つ最大の事業。ガス火力・風力・蓄電池・送電の投資と、データセンター向けの大口供給が成長の中心。
| 数量収益基盤(億ドル) | 価格収益基盤あたりの売上(燃料費・購入電力の転嫁を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 205 | 0.32 | 66 | 17 |
| 10 年後 中立 | 518 | 0.24 | 126 | 41 |
取り方:収益基盤 約 205 億ドル(推定。会社の全社の収益基盤を原文では確認できていないため、自己資本 136 億ドル+純負債 224 億ドルの計 360 億ドルから建設仮勘定などを除いた約 340 億ドルを置き、電力を 6 割・ガスを 3 割・その他を 1 割弱に割り振った)。売上 約 66 億ドル(推定)、営業利益 約 17 億ドル(送電持ち分の利益を含めた推定。全社の営業利益 約 24 億ドルに合わせた)。ウィスコンシンの許可 ROE は 9.8% 前後で、ミネソタのエクセル(9.60%)・コロラドの 9.3% より高い側。競合は無く、価格は州の委員会が決める。
ガス配給(ウィスコンシン・イリノイ・ミネソタ・ミシガン)
都市ガスの配管の更新が投資の中心。ウィスコンシンとイリノイ(ピープルズ・ガス)が大きく、成長は穏やか。
| 数量収益基盤(億ドル) | 価格収益基盤あたりの売上(ガスの調達費の転嫁を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 105 | 0.29 | 30 | 6 |
| 10 年後 中立 | 166 | 0.31 | 52 | 9 |
取り方:収益基盤 約 105 億ドル(推定)、売上 約 30 億ドル(推定)、営業利益 約 5.7 億ドル(推定)。暖冬・厳冬で販売が動くが、利益は規制の収益基盤で決まる。イリノイは老朽管の交換の費用回収の制度が政治の標的になりやすい。競合は無い。
送電会社 ATC の持ち分・非規制の再エネ
送電会社 ATC(約 6 割の持ち分)と、WEC インフラストラクチャー・デベロップメントの風力・太陽光など。規制の外にあり小さいが安定。
| 数量資産(億ドル) | 価格資産あたりの売上 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.0 | 0.07 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 0.05 | 2 | 2 |
取り方:資産 約 30 億ドル(推定)、売上 約 2 億ドル、営業利益 約 1.3 億ドル(推定)。ATC は持ち分法で利益に入るので、規模の目安として置いた推定。契約が長く、価格は契約で決まる。
リスクと懸念
許可 ROE の引き下げと手頃さの政治
WPS で委員会のスタッフが許可 ROE を 9.80% から 9.50% に下げる案を出した(会社の要求は 9.90%)。家庭の電気料金は 2025〜26 年の認可で 2 年累計 12% 超上がり、2027〜28 年の We Energies の申請(+4.7%・+4.5%)にも反発が強い。許可 ROE が 9.3〜9.5% まで下がれば、利益の伸びが 1 割ほど下がる。
借金と増資に頼る資金繰り
純有利子負債 224 億ドルで時価総額の 6 割超、FCF は 2025 年に −10 億ドル。5 年で約 375 億ドルを投じ、不足は借金で埋めるため、借換えの金利が 5.75% 前後になり、brief の推定で利払いは 10 年後に 4 億ドル増える。親会社の借金の比率は約 3 割で、FFO ÷ 借金 15% を割れば格付けが下がる。
データセンター 3 社への偏り
超大口顧客の柱はマイクロソフト(約 2.6 GW)・ヴァンテージ(1.3 GW)・オラクルの 3 社に偏る。オラクルは超大口料金の決定を裁判所で争い、州知事選の候補は一時停止に触れた。契約が縮めば、先行した発電・送電の費用が一般の料金に回る。
工期・費用の超過
計画は約 375 億ドルと大きく、ガスタービンは 2019 年比で価格が約 3 倍・納期 5〜7 年。超過費用が認可されなければ直接の損失になる(サザンのボーグル 3・4 号機の前例)。新設ガスは 2027 年末の稼働が目標で、遅れれば需要に追いつけない。
税額控除と再エネ政策の変化
2025 年の包括税制法で風力・太陽光の税額控除に期限が付いた。着工の期限内なら使えるが、延びれば計画の費用が上がる。実現 ROE を支える税額控除と建設中の資産の収益(AFUDC)が縮めば、帳簿の利益の伸びが落ちる。
超大口料金の決定をめぐる訴訟
委員会は 2026 年 4 月に超大口顧客料金を承認し、最低契約 15 年・対象 100 MW 以上・新設発電費の全額を顧客が負担という形に直した。オラクルは審査を裁判所に求めている。判決で条件が緩めば一般の家庭が費用を負い、強まれば誘致が鈍る。
今後の分かれ目
- 超大口顧客の契約が確約のまま積み上がり、マイクロソフト 2.6 GW・ヴァンテージ 1.3 GW に新規が加わったら
- 収益基盤の伸びが年 11% 台で保たれ、楽観・やや楽観の確率を 10 年で 4 ポイント上げる。逆にマイクロソフトの計画が縮めば、中立の収益基盤を 1 割下げる。
- We Energies の 2027〜28 年の料金決定で許可 ROE が 9.5% 以下に下がったら
- 利益の伸びが 1 割下がり、やや悲観・悲観の確率を各 3 ポイント上げる。
- オラクルの審査請求で超大口料金の条件が緩んだら
- 一般の家庭の負担への懸念が強まり、手頃さの政治が悪化する。やや悲観の確率を 3 ポイント上げる。
- FFO ÷ 借金が 15% を割り、格付けが引き下げられたら
- 借換えコストが上がり増資が増える。悲観の確率を 3 ポイント上げ、資本コストの見方を高い側(借金・値決めの目安を悪い側)に寄せる。
- 10 年国債の利回りが 5% を大きく超えて上がったら(6% 超)
- 借換えコストが利益を圧迫し、倍率が縮む。k の見方を上側に寄せる。
- 次回の資本計画の更新で計画が 400 億ドルを超えて引き上げられたら
- 収益基盤の伸びは強まるが増資と借金も増えるので、価値の増加は純利益の伸びから増資の払い込みを引いた正味で見る。
見ておくもの
- 超大口顧客の契約量(マイクロソフト・ヴァンテージ・新規)と最低契約・担保の強さ
- We Energies の 2027〜28 年の料金決定(5-UR-112)と WPS の許可 ROE
- 住宅料金の前年比(2 年累計 12% 超の後の反発)
- オラクルの審査請求の結果と州知事選での一時停止の議論
- 普通株の発行額(年約 11 億ドル)・親会社の借金・FFO ÷ 借金・格付け
- 新設ガス火力の 2027 年末の稼働と、タービンの納期・費用
- 10 年国債 5% の維持
倍率と資本コストの決め方
今の PER(GAAP 22.6 倍)を見る前に、収益基盤を数量、収益基盤あたりの売上を価格として電力・ガス・送電持ち分を積み、純利益は収益基盤 × 約 4.6〜4.9% で置いた。倍率は利益ベースの正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)、RONIC=k+残る割合×(事業の ROE − k)(moat 普通・残る割合 1/2)で上限を出し、その 7〜10 割に置いた。k は基本 8.0% に quality −0.75% を足した 7.25%。10 年の中立は ROE 11.9%・g 3.7%・RONIC 9.6% で正当化 PER 17.4 倍、これに対し 14.4 倍(0.83 倍)。10 年の楽観は正当化 PER 18.0 倍に対し 17.1 倍(0.95 倍)、やや悲観は 17.0 倍に対し 13.6 倍(0.80 倍)に置いた。ROE は親会社の借金で自己資本が薄い分だけ高く出るので、10 年の自己資本比率を 38〜40% に戻す増資を置いて 12% 前後にとどめた。今の PER は 2025 年の利益で測った値で、成長した後の利益に掛ける倍率とは比べない。結果は総合で今の時価総額に対し -12%(やや割高)で、今の株価に寄せて逆算していない。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 5% + β 0.80 × 5%。基本 8.0% + coc.quality -0.75% = 7.25%(4 つの目安と理由は quality_parts・quality_why)。借金の金利(借り換えで 5.75% 前後)より株の k が低くならない(k は 7.25%)。規模は S&P 500 で 0、上乗せ(extra)も 0。許可 ROE の引き下げ・データセンターの偏り・借金の厚みという個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益と確率(悲観を 10 年で 12%)で表す。倍率は利益ベースの正当化 PER の 7〜10 割(multiple.why)。長期の g は 4% まで、かつ k − g ≥ 3.5% なので k 7.25% では g 3.75% が上限。
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読んだ資料
- WEC Energy Group 2026 年 4〜6 月期決算のまとめ(Nasdaq)
- WEC Energy Group 4〜6 月期の決算説明のまとめ(MarketBeat)
- WEC Energy Group 2026 年 1 月の投資家向け説明(SEC 8-K)
- ウィスコンシン州委員会が超大口顧客料金を修正して承認(BizTimes)
- We Energies のデータセンター料金(Yale Clean Energy Forum)
- WPS の料金申請に対する委員会スタッフの意見(S&P Global)
- ウィスコンシンの電気料金の認可(WPR)
- WEC の時価総額(MarketChameleon)