結論
ナショナル・グリッドは、英国の基幹送電・地域配電と、米国北東部の電力・ガス網を持つ規制公益会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。送配電網そのものは10年後も欠かせないが、巨額投資で増える利益のすべてが既存株主の取り分になるわけではない。
最大の強みは、送配電網が地域独占であり、競争相手が同じ道路に新しい送電線やガス管を敷くことは経済的にも制度的にも難しい点だ。英国では再生可能エネルギーの接続、米国では老朽設備の更新や電化が必要で、設備投資の需要は確かに厚い。会社は2031年3月までの5年間に少なくとも700億ポンドを投資し、規制資産を年約10%増やす計画を掲げている。
その成長には裏面がある。FY2025の純有利子負債は579億ドル、純利益は43.4億ドル、フリーキャッシュフローはマイナス50.3億ドルだった。2024年には約70億ポンドの大型増資も実施した。規制当局が認める投資利回りは安定しているが、株主は配当を受けながら同時に新しい資本を差し出す立場にある。
2026年10月5日の会社発表では、2027年3月期の調整後利益成長率が従来目標の13〜15%をやや上回る見通しとなった。ただし上振れには投資先の一時的な評価益が含まれ、そのまま10年間続く収益ではない。2026年11月5日予定の半期決算は、評価時点では未公表である。
10年中立では、英国の送電投資と米国の規制資産拡大によって純利益が80億ドル程度に増えると考える。それでも資本コスト7.5%と再投資負担を反映した価値は、5つの筋書きの確率加重・現在価値で約637億ドルとなる。台帳の時価総額814億ドルに対して約22%低い。企業の存続力は高いが、優良な設備と割安な株式は同じ意味ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ナショナル・グリッドの事業寿命は非常に長い。人々が電力を使い、工場や住宅が系統に接続する限り、送配電網は必要である。新しい発電技術やAIが生まれても、電力を遠くへ運び、安全に分配する物理的な設備は消えない。長く続く事業を保有するという条件には、十分に合格する。
それでも、長寿命の事業を持つことだけで優れた投資にはならない。重要なのは、利益を再投資したときに株主にどれほど余剰が残るかだ。規制公益は設備投資を続けるほど資産と利益が増えやすいが、その裏で借金、増資、修繕費、金利負担も増える。認可された収益率と株主が要求する資本コストの差が小さいと、規模の拡大は大きな価値創造につながらない。
この会社では英国の送電投資が最も魅力的な成長機会である。新設設備に適正な報酬が認められ、工期と費用が守られれば、長く続く収益が積み重なる。一方、ニューヨークのガス資産は、社会全体が電化へ向かう中で将来の利用者負担が重くなる。10年先の価値は、電力網の伸びがガス網の停滞をどれだけ上回るかに左右される。
株主として警戒すべきことは、成長のために追加の資本を何度も要求されることだ。FY2025は会計上43億ドル余りの利益があっても、投資後の現金は大きく不足した。2024年の増資は、配当を払う会社にも資本注入が必要になりうる事実を示した。配当利回りだけを理由に所有するには、現金収支が弱い。
規制独占という堀には価値を認める。しかし利益の伸びに必要な資金を十分に差し引き、将来の値段にも安全域を求めたい。事業の確実性と株主利益の確実性を分けることが、長期保有で最も大切な判断となる。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、発電所で電気を作ることではなく、電気やガスを運ぶための設備を保有し、使用料を回収することだ。英国では送電・配電の規制収入、米国では電力・ガス料金を通じた設備投資の回収が収益の源泉になる。規制公益の利益は、販売電力量だけでなく、規制当局が認めた設備投資残高と資本収益率に強く左右される。
英国送電事業は、イングランドとウェールズの高圧送電網を保有する。発電事業者から送配電網へ電力を運び、系統運用者を通じて料金を回収する。2025年3月末の規制資産価値は205億ポンド程度で、洋上風力の接続や国内送電容量の増強によって資産が増えている。送電網の運用を担うNational Energy System Operatorは2024年に政府へ売却され、現在のナショナル・グリッドは設備の所有と投資を中心に担う。
英国配電事業は、2021年にPPLから買収した旧ウェスタン・パワー・ディストリビューションを基盤とする。東西ミッドランド、イングランド南西部、南ウェールズの約800万件に電力を届け、4つの地域免許を保有する。電気自動車、ヒートポンプ、住宅や工場の新規接続が設備増強の需要を生む。小売電気料金を自由に決める会社ではなく、地域配電網の利用料金を規制に従って受け取る会社だ。
米国ではニューイングランドとニューヨークが大きな収益源である。ニューイングランドは主にマサチューセッツの電力・ガス配給と高圧送電を担い、ニューヨークは州北部の電力網と州全域の広いガス配給網を持つ。ニューヨークでは電力約170万件、ガス約250万件にサービスを提供している。燃料や購入電力の費用が売上に含まれるため、米国事業は英国送電より売上に対する営業利益率が低く見える。
ナショナル・グリッド・ベンチャーズは英国と欧州大陸を結ぶ国際連系線を運営する。2025年には再生可能エネルギー開発事業をブルックフィールドへ売却し、液化天然ガス基地も売却した。2026年には米国の電源・データセンター向けインフラ事業Joulentへ35%出資する方針を発表し、従来の規制送配電以外にも収益源を広げている。この出資先の売上全額を連結事業の売上に足すことはしない。
優良さと弱いところ
最大の堀は地域独占と物理的ネットワークである。電力会社や需要家は既存の送配電網に接続する必要があり、同じ地域に競合網を建設して切り替えることは現実的ではない。送電線、変電所、配電設備、地下ガス管、土地利用権、許認可、保守体制を一体で持つことが強さの源だ。10年後もこの堀は残り、英国の電化に伴って設備の必要性はむしろ高まる。
ただし、顧客が離れないことと自由に値上げできることは異なる。英国の料金はOfgem、米国の料金は州の公益事業委員会やFERCが決める。英国ではインフレ調整や効率化報酬がある一方、超過利益の一部は消費者へ返される。米国でも認可された投資額と許可ROEが収益を制限する。独占の利益は強いが、独占企業の利益率を無制限に高める仕組みではない。
FY2025の自己資本利益率は8.4%で、過去10年の中央値も8.1%だった。2026年3月期に会社が発表した規制ベースのグループROEは9.8%で、回復の兆しがある。ただし規制上のROEと連結財務諸表の自己資本ROEは定義が異なる。新しい設備に認可収益がつくまでの時間差、工事費の超過、資金調達費用を考えると、増分の株主利益率が常に資本コストを大きく上回るとは限らない。
経営の資本配分は、2021年の英国配電網買収によって電力中心の事業構成へ移った点を評価する。反面、2024年の大型増資は、既存の資本だけでは成長投資を支えられなかった証拠でもある。大型の設備投資を長く続けるため、資本効率の改善より設備資産の拡大が先行しやすい。
AIエージェント代替の指定業態には当たらない。収益の核は人月、ソフトの利用席、広告運用ではなく、規制免許と物理的設備である。AIは保守や需要予測を効率化しうるが、送電線や変電所そのものを置き換えることはできない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
英国では、洋上風力を北部や沿岸部から需要地へ運ぶための送電網が不足している。再生可能エネルギーの発電設備を増やしても、接続する送電線がなければ電気を届けられない。Ofgemは2026年4月から2031年3月までのRIIO-T3を決定し、ナショナル・グリッドは2026年3月にその条件を受け入れた。送電設備への投資を大幅に増やす制度的な土台が整った。
英国配電は14の地域免許区域に分かれ、ナショナル・グリッドはそのうち4区域を持つ。これは免許区域数で約29%に当たり、実際の顧客数は約800万件だ。主な事業者はUKパワー・ネットワークス、スコティッシュ・アンド・サザン・エレクトリシティ・ネットワークス、SPエナジー・ネットワークス、ノーザン・パワーグリッドなどである。各社は自社地域で独占し、顧客の奪い合いより設備更新の効率と規制上の成果を競う。
米国の電力需要はデータセンターや電化によって再び増加している。添付の業界前提では、2025年の販売電力量を約4,195TWh、2036年の中立を約5,000TWhと見込む。ただし英国・米国で一斉に設備を増やすと、送電機器、変圧器、専門工事人員の不足が起こる。建設費を規制料金に転嫁できなければ、需要の伸びがそのまま株主利益の伸びにはならない。
ニューヨーク州では、コンソリデーテッド・エジソン、アバングリッド傘下のニューヨーク州電力各社、セントラル・ハドソンなどがそれぞれの地域を持つ。州の電力顧客約860万件に対し、ナショナル・グリッドの電力顧客は約170万件で、約20%に相当する。ガスは州内約250万件を担う大規模事業者だ。ニューイングランドではエバーソース、ユニティルなどが主な比較相手で、マサチューセッツの電力約336万件のうち約130万件を担当する。
天然ガスには電力と逆向きの長期要因がある。ニューヨーク州とマサチューセッツ州は建物の電化と排出削減を進めており、新しいガス接続の需要は抑えられやすい。老朽管の更新は続くが、将来の利用量が減る設備にどこまで投資を認めるかが議論になる。電力網の投資機会が増えても、ガス網が同じ速度で拡大するとは考えない。
国際連系線では、英国の運転中容量は2025年時点で約10.3GW、2030年の政策上の必要量は12〜14GWとされる。ナショナル・グリッドが関与する6連系線は合計7.8GWで、設備総容量の比較では約76%に相当する。ただし共同保有設備を含むため、経済持分のシェアではない。新しい連系線が開通すれば容量シェアは下がり、価格差による収益も変動する。
資本政策と M&A
資本政策は大規模投資と安定配当の両立を目指している。2024年には約70億ポンドの株主割当増資を実施し、手取り約68億ポンドを確保した。FY2025の資料では発行株数が大きく増え、2025年も株数の増加が続いた。配当を受け取っても増資や株式配当によって持ち分が薄まるため、株主への還元は発表した配当額だけでは測れない。
2021年の旧ウェスタン・パワー・ディストリビューション買収は約78億ポンドで、その一方で米ロードアイランド事業をPPLへ売却した。その後、英国ガス送電事業から退出し、2024年には系統運用事業を政府へ売却した。2025年には米国再エネ開発とGrain LNGの売却を完了し、規制ネットワークに資本を集中させた。これは事業を分かりやすくする判断として評価できる。
2026年3月に更新した会社目標は、2031年3月までの累積設備投資700億ポンド以上、資産成長率年約10%、調整後の1株利益成長率年8〜10%である。配当は英国CPIHに沿って増やす方針で、固定額の自社株買い枠は示していない。2027年3月期の調整後利益成長目標は13〜15%からやや上振れする見込みとなった。
2026年7月にはJoulentの35%持分へ17.5億ドルを投じる方針を発表した。データセンター向けの長期電力インフラという成長市場を狙うが、これは規制送配電より事業リスクが高い。持分投資に見合う利益と現金回収が得られるかは、今後確認が必要だ。所有者としては、次の巨額増資を要せずに設備投資を継続できるかを最も重く見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
英国送電は、十年単位で見ても設備が不足している。洋上風力の接続、地域間の送電能力の増強、データセンターと工場への新規接続が重なり、電力網の規制資産は従来より速く増える。2026年からのRIIO-T3が成立し、会社は2031年までに700億ポンド以上の投資を見込んでいる。調達先の約4分の3について供給網や施工体制を確保したという説明も、実行可能性を高める。
規制資産が増えれば、その資産に認められる収益も長期に残る。送電線は競争相手によって容易に奪われず、設備の寿命も数十年に及ぶ。英国配電の800万件の顧客基盤も、電気自動車とヒートポンプの普及によって接続設備を増やせる。米国ではニューヨーク州の電力網強化と、マサチューセッツ州の設備更新に大きな投資余地がある。
米国の規制公益会社と比べても、英国の送電設備の増加余地は大きい。エバーソースやエクセロンは既存設備の更新比率が高いが、ナショナル・グリッドは英国の国家的な送電網拡張を担う。建設費を規制料金に回収できれば、営業利益はFY2025を大きく上回る。
国際連系線も、欧州の再生可能エネルギーの発電地域と需要地域を結ぶために必要だ。2026年のJoulent出資は、長期契約のあるデータセンター向け電源へ新しい利益源を作る可能性がある。2027年3月期の利益見通しの上振れも、規制事業が計画通り進んでいる兆候である。巨額投資を規律正しく実行できれば、十年後の純利益は現在の二倍以上に増える。
慎重な見方
規制公益の成長計画は、設備投資の額と株主価値の増加を混同しやすい。ナショナル・グリッドは2024年に約70億ポンドの増資を必要とし、FY2025にはフリーキャッシュフローが大幅な赤字だった。新しい送電線を建設して会計利益が増えても、そのために発行した株式と増やした借金の負担を差し引かなければ、既存株主の利益は増えない。
英国ではOfgemが設備投資費用の効率性を厳しく審査する。RIIO-T3で認められた実質株主資本コストは6.12%であり、建設費が膨らんでも全額を消費者へ転嫁できる保証はない。大規模な送電線の計画では、土地取得、地域住民との調整、施工業者の不足、資材価格の上昇が工期を延ばす。高い利益率を長く維持できても、増分利益が調達資本に見合わない可能性がある。
米国北東部には、料金を引き上げにくい政治環境がある。ニューヨーク州ではガス料金の据え置き案が出ており、州の脱炭素政策はガス管への新規投資を抑制する。古いガス管の更新には費用がかかるが、顧客数や使用量が減り始めれば、残る顧客へ負担を集中させることになる。料金の認可が遅れれば、投資だけが先行する。
純有利子負債579億ドルはFY2025のEBITDAの約6倍であり、通常の事業会社と比べて重い。低金利時代に発行した借金を新しい金利で借り換えると、規制利益の増加が利払いに吸収される。2026年10月の利益見通し上振れには投資先の一時的評価益も含まれており、恒常的な稼ぐ力として扱えない。さらにJoulentのような非規制投資が増えるほど、送配電の安定性だけでは企業全体を評価できなくなる。
どちらに重みを置いたか
送配電網が長期に必要である点は強い見方が優勢である。英国送電の投資計画と規制制度が既に具体化しており、利益成長の方向は比較的読みやすい。ただし、増資と負債、米国ガスの規制、工事費の超過が既存株主の取り分を削る可能性は無視できない。
確率は楽観側31%、中立35%、悲観側34%とした。通常の米国規制公益より英国送電の成長余地を評価して楽観側にも重みを与えたが、利益率と設備投資の見通しには保守性を残した。結論は事業の質の否定ではなく、正味の株主還元を含めて割り引いた価値が現在の時価総額を下回るというものだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 105.59 ドル1,050 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 18.39 ドル183 億ドル)。 今の値に割り戻すと 64.04 ドル637 億ドル、今との差 −23.7%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 173.71 ドル1,727 億ドル | 27.66 ドル275 億ドル | +139.9% | +10.0% | 20.14 ドル200 億ドル |
| やや楽観 | 21% | 138.04 ドル1,372 億ドル | 25.65 ドル255 億ドル | +95.0% | +7.6% | 34.37 ドル342 億ドル |
| 中立 | 35% | 108.63 ドル1,080 億ドル | 19.11 ドル190 億ドル | +52.2% | +4.7% | 44.71 ドル445 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 65.92 ドル655 億ドル | 12.57 ドル125 億ドル | −6.5% | −0.7% | 17.27 ドル172 億ドル |
| 悲観 | 12% | 55.91 ドル556 億ドル | 6.54 ドル65 億ドル | −25.6% | −3.1% | 7.49 ドル75 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 105.59 ドル1,050 億ドル | 18.39 ドル183 億ドル | +47.7% | +4.3% | 123.98 ドル1,233 億ドル |
今の株価時価総額 83.95 ドル835 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:送電網の増強が順調に進み、規制投資が大きな利益を生む 利益 110 億ドル · PER 15.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 173.71 ドル1,727 億ドル
英国の洋上風力接続と広域送電の増強が予定通り進み、高圧送電網の実質規制資産は470億ドルに達する。Ofgemとの関係は安定し、設備投資の増分に十分な回収が認められる。英国配電も電気自動車とヒートポンプの普及に支えられ、実質規制資産は211億ドルに増える。建設費の超過を抑え、両事業とも強い収益力を維持する。
米国ではニューヨークとマサチューセッツの電力系統増強が進み、老朽設備の更新費用も順調に料金へ反映される。ニューヨークの実質規制資産は365億ドルに増え、ガス設備の成長鈍化を電力投資が補う。国際連系線も運転容量を9.8GWへ増やし、欧州域内の電力融通需要を取り込む。Joulentは契約済み案件を予定通り建設し、持分利益が生じる。
2035年の営業利益は約163億ドル、純利益は110億ドルに達する。増資を最小限に抑えながら配当を続け、10年間の正味株主還元は275億ドルとなる。規制上の堀は保たれ、利益の伸びが資本調達負担を上回る。
- 英国電力送電:数量 470(2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル))× 価格 0.18(実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 83 億ドル・営業利益 46 億ドル。送電設備の実質拡大と高い投資回収率が両立する。
- 英国電力配電:数量 211(2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル))× 価格 0.29(実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 61 億ドル・営業利益 29 億ドル。電化需要の増加と効率的な設備更新が続く。
- 米国ニューイングランド:数量 190(2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル))× 価格 0.67(規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 127 億ドル・営業利益 33 億ドル。電力網の認可投資が増え、ガスの停滞を補う。
- 米国ニューヨーク:数量 365(2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル))× 価格 0.56(規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 204 億ドル・営業利益 51 億ドル。投資回収の遅れが解消し、料金改定が順調に進む。
- ナショナル・グリッド・ベンチャーズ:数量 9.8(運転中の国際電力連系線容量(GW、共同保有分も総容量))× 価格 2.30(連系線1GW当たりの年間セグメント売上の代理単価(億ドル))→ 売上 23 億ドル・営業利益 7 億ドル。新しい連系線が稼働し、既存設備の利用率も高い。
- 英国系統運用事業(売却済):数量 0.0(FY2025に連結された月数(か月))× 価格 2.18(連結1か月当たりの売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却済みであり将来の収益を含まない。
- その他・不動産関連:数量 1.0(事業年度の換算単位(年))× 価格 2.30(その他事業1年度当たりの売上(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 −1 億ドル。小規模事業と本社費用が残る。
倍率:2035年のROEは110÷1010.2=10.89%。k7.5%、strong moatの残存割合2/3からRONICは約9.76%となる。長期g4.0%は、送配電市場の実質成長約1%、規制資産のシェア維持、名目価格成長約3%による。正当化PERは(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)で約17.54倍。規制認可と施工実行がともに順調な筋書きとして上限の約89.5%に当たる15.7倍を採用する。株主の持続的な超過収益を評価するが、市場の過去倍率は用いない。
確率:英国RIIO-T3の投資を計画通り実行でき、米国の料金認可も順調に進む展開。送配電の長期需要には根拠があるが、建設費・資金調達・規制の全てがそろう必要があるため10%とする。
やや楽観 21% やや楽観:規制投資が堅調に進み、利益は高い伸びを保つ 利益 94 億ドル · PER 14.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 138.04 ドル1,372 億ドル
英国の電力網増強は一部で工事の遅れがあるものの、長期計画の大部分が実行される。高圧送電の実質規制資産は440億ドルへ増え、英国配電も203億ドルへ拡大する。料金規制は設備投資の合理的な収益を認め、効率化の成果も一部は株主に残る。顧客基盤は安定し、地域独占の優位は維持される。
米国の電力投資は続き、ニューヨークの実質規制資産は345億ドル、ニューイングランドは180億ドルへ増える。ガス配給の成長は緩やかになるが、電力網の更新と新規接続が全体を支える。エバーソースなど同業との規制上の収益率の差は大きくないものの、資産成長が営業利益を押し上げる。
国際連系線は9GW程度まで増え、欧州の電力価格差から一定の利益を得る。Joulentの持分投資は大きな上振れまでは生まないが、資本損失も出さない。2035年の純利益は94億ドルとなり、10年間の正味株主還元は255億ドルに達する。規制網の堀は強く残り、資本効率は現在より改善する。
- 英国電力送電:数量 440(2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル))× 価格 0.17(実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 74 億ドル・営業利益 39 億ドル。送電投資の大半を予定に近い条件で回収する。
- 英国電力配電:数量 203(2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル))× 価格 0.28(実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 56 億ドル・営業利益 25 億ドル。EVと住宅電化が規制資産の増加を支える。
- 米国ニューイングランド:数量 180(2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル))× 価格 0.64(規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 115 億ドル・営業利益 29 億ドル。投資回収はおおむね予定通り進む。
- 米国ニューヨーク:数量 345(2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル))× 価格 0.54(規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 185 億ドル・営業利益 43 億ドル。料金認可が改善し、資産成長に利益が伴う。
- ナショナル・グリッド・ベンチャーズ:数量 9.0(運転中の国際電力連系線容量(GW、共同保有分も総容量))× 価格 2.15(連系線1GW当たりの年間セグメント売上の代理単価(億ドル))→ 売上 19 億ドル・営業利益 6 億ドル。既存連系線を中心に安定した収益を得る。
- 英国系統運用事業(売却済):数量 0.0(FY2025に連結された月数(か月))× 価格 2.18(連結1か月当たりの売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却済みのためゼロ。
- その他・不動産関連:数量 1.0(事業年度の換算単位(年))× 価格 2.20(その他事業1年度当たりの売上(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 −1 億ドル。小規模事業の収益は限られる。
倍率:2035年ROEは94÷950.2=9.89%。k7.5%、strong moatの2/3残存を使うとRONICは約9.10%。長期g3.9%は、英国送電の残存投資需要と米国配電の実質拡大が約0.8〜1%、価格上昇が約3%で続く前提。正当化PERは約16.49倍となる。規制事業の成長の質を評価しつつ、建設投資の負担を考慮して上限の約88.5%に当たる14.6倍とする。
確率:英国の送電投資計画の具体性と、米国の規制資産の長期成長を評価する。ただし工期の遅れや一部投資の回収遅延を見込み、全面的な楽観より高い21%とする。
中立 35% 中立:送配電網は着実に大きくなるが、増資と借金が利益成長を薄める 利益 80 億ドル · PER 13.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 108.63 ドル1,080 億ドル
英国の送電投資は続き、高圧送電の実質規制資産は420億ドルに増える。洋上風力の接続や送電網更新によって規制収入は積み上がるが、設備投資の増加速度は2031年以降に緩やかになる。英国配電の実質規制資産は190億ドルに拡大する。FY2025に見られた高い配電利益率は一時的な規制収入の影響を含むため、長期には落ち着く。
米国ではニューヨークの実質規制資産が340億ドル、ニューイングランドが174億ドルまで増える。電力網の増強がガス配給の停滞を補い、地域独占による収益の安定性は保たれる。ただしニューヨークの料金認可は慎重で、エバーソースなど同業を大きく上回る資本収益率までは実現しない。2026年のJoulent投資も、企業全体を変えるほどの利益にはならない。
2035年の売上は約419億ドル、営業利益は約124億ドル、純利益は80億ドルとなる。借換金利の上昇による税引後の利益圧迫も含めている。配当は増えるが、新株の発行や株式配当を差し引いた10年間の正味還元は190億ドルにとどまる。企業の規模は大きくなるが、既存株主が享受する利益の伸びは資産成長ほど速くない。
- 英国電力送電:数量 420(2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル))× 価格 0.17(実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 69 億ドル・営業利益 36 億ドル。実質RAVは約1.57倍、規制回収単価は約1.38倍となる。
- 英国電力配電:数量 190(2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル))× 価格 0.27(実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 51 億ドル・営業利益 22 億ドル。実質資産は緩やかに増え、利益率は平準化する。
- 米国ニューイングランド:数量 174(2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル))× 価格 0.61(規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 106 億ドル・営業利益 27 億ドル。電力投資が伸び、ガス設備の成長は鈍る。
- 米国ニューヨーク:数量 340(2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル))× 価格 0.51(規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 173 億ドル・営業利益 38 億ドル。電力網の更新で成長するが、料金認可は慎重である。
- ナショナル・グリッド・ベンチャーズ:数量 8.2(運転中の国際電力連系線容量(GW、共同保有分も総容量))× 価格 2.05(連系線1GW当たりの年間セグメント売上の代理単価(億ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 5 億ドル。売却事業の消失を既存連系線の利益で補う。
- 英国系統運用事業(売却済):数量 0.0(FY2025に連結された月数(か月))× 価格 2.18(連結1か月当たりの売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却済みのため将来売上はない。
- その他・不動産関連:数量 1.0(事業年度の換算単位(年))× 価格 2.00(その他事業1年度当たりの売上(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。小規模な売上と関連費用が残る。
倍率:2035年の帳簿ROEは80÷945.2=8.46%。これは新しい設備投資のために要する自己資本を含む値であり、規制資産を除外して高く補正しない。k7.5%、strong moatの残存割合2/3によりRONICは約8.14%。長期g3.5%は、2035年以降の実質市場・資産成長約0.5%、地域シェア維持、名目価格約3.0%で構成する。会社の2031年までの資産成長10%を永久成長へ流用しない。正当化PERは約14.75倍で、規制上の堀の質を評価しつつ再投資負担を残し、その約91.5%に当たる13.5倍とする。
確率:英国の規制資産拡大を中心に利益成長は続くが、2031年以降に投資成長率が鈍り、米国ガス事業の停滞と借換負担が生じる展開。会社の長期目標を全期間へ単純延長しないため、最も大きい35%を与える。
やや悲観 22% やや悲観:工事費と料金規制が重なり、資産成長の利益が薄くなる 利益 58 億ドル · PER 11.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 65.92 ドル655 億ドル
英国の送電網増強は続くが、大型工事の遅れと資材価格の上昇によって投資回収が後ろへずれる。英国送電の実質規制資産は360億ドルにとどまり、規制回収単価も物価の上昇に追いつかない。英国配電では新規接続と電化投資が想定より少なく、実質規制資産の増加は170億ドルまでとなる。送配電網の独占は維持されるが、超過利益を生む力は弱まる。
米国ではニューヨーク州の料金抑制が長引き、ガス管の新規投資に対する認可が慎重になる。ニューヨークの実質規制資産は276億ドル、ニューイングランドは147億ドルにとどまる。電力網の拡大は続いても、エバーソースなどとの規制上の収益力の差を広げられない。連系線でも競合設備が増え、英国市場における容量シェアが下がる。
2035年の営業利益は約90億ドル、純利益は58億ドルとなる。借換費用と設備投資の資金負担が利益の伸びを吸収し、自己資本利益率は資本コストを下回る。減配や資金調達の見直しを行いながら、正味の株主還元は10年間で125億ドルに縮む。設備は残るが、成長投資が大きな株主価値を生まない。
- 英国電力送電:数量 360(2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル))× 価格 0.15(実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 55 億ドル・営業利益 27 億ドル。投資認可の遅れと費用超過が重なる。
- 英国電力配電:数量 170(2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル))× 価格 0.25(実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 43 億ドル・営業利益 18 億ドル。電化の進行が遅れ、投資成長率が下がる。
- 米国ニューイングランド:数量 147(2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル))× 価格 0.56(規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 82 億ドル・営業利益 19 億ドル。料金回収とガス管更新の収益が伸び悩む。
- 米国ニューヨーク:数量 276(2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル))× 価格 0.46(規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 127 億ドル・営業利益 28 億ドル。料金抑制とガス資産の停滞が続く。
- ナショナル・グリッド・ベンチャーズ:数量 7.8(運転中の国際電力連系線容量(GW、共同保有分も総容量))× 価格 1.72(連系線1GW当たりの年間セグメント売上の代理単価(億ドル))→ 売上 13 億ドル・営業利益 3 億ドル。新規連系線の競争で収益性が低下する。
- 英国系統運用事業(売却済):数量 0.0(FY2025に連結された月数(か月))× 価格 2.18(連結1か月当たりの売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却済みのためゼロ。
- その他・不動産関連:数量 1.0(事業年度の換算単位(年))× 価格 1.60(その他事業1年度当たりの売上(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 −1 億ドル。小規模事業は費用負担が重い。
倍率:2035年ROEは58÷900.2=6.44%でk7.5%を下回る。strong moatの残存割合を使ってもRONICは約6.80%であり、長期g3.0%の正当化PERは約12.78倍となる。資本コスト未満のROEではPERが1÷kを超えないことを確認した。規制上の超過収益が消え、投資の回収に遅れが残るため11.3倍とする。中立の13.5倍より明確に低く、市場の過去倍率は根拠にしない。
確率:英国の投資回収遅延と米国の料金抑制は十分に起こり得る。既存網の存続は固いが資本効率は下がるため、米国の優良規制公益よりもやや慎重な22%を与える。
悲観 12% 悲観:規制の対立が長期化し、成長投資が株主価値をほとんど生まない 利益 51 億ドル · PER 10.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 55.91 ドル556 億ドル
英国では大型送電工事の費用が膨らみ、完成後も十分な回収を認められない案件が増える。送電事業の実質規制資産は350億ドルにとどまり、価格の上昇も物価を下回る。英国配電では人口や需要の伸びが弱く、規制資産の実質増加はほとんど進まない。既存の送配電網は必要だが、規制上の利益が資本コストを十分に上回らない。
ニューヨーク州ではガス管の利用量が減り、老朽設備の維持費を残る顧客へ転嫁することへの反発が強まる。電力網の設備更新は続くが、認可投資の採算は低下する。ニューヨークとニューイングランドの実質規制資産は、それぞれ255億ドルと137億ドルにとどまる。国際連系線は新規競合との価格差縮小で収益が低迷し、Joulentの持分投資から十分な現金収益を得られない。
2035年の営業利益は約77億ドル、純利益は51億ドルとなる。名目利益はFY2025を上回るが、十年間の物価上昇を考えると実質的な稼ぐ力は細る。設備投資を維持するため新株資金を追加し、正味の株主還元は65億ドルに縮小する。保有する地域網には継続価値が残るものの、優良な成長公益会社としての評価は失われる。
- 英国電力送電:数量 350(2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル))× 価格 0.15(実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 54 億ドル・営業利益 26 億ドル。工期遅延と料金回収制限が長く続く。
- 英国電力配電:数量 163(2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル))× 価格 0.25(実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 41 億ドル・営業利益 17 億ドル。規制資産の実質成長が停滞する。
- 米国ニューイングランド:数量 137(2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル))× 価格 0.55(規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 75 億ドル・営業利益 15 億ドル。ガス設備の負担と料金規制が重い。
- 米国ニューヨーク:数量 255(2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル))× 価格 0.45(規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル))→ 売上 116 億ドル・営業利益 23 億ドル。ガス需要の鈍化と認可遅延が続く。
- ナショナル・グリッド・ベンチャーズ:数量 7.8(運転中の国際電力連系線容量(GW、共同保有分も総容量))× 価格 1.55(連系線1GW当たりの年間セグメント売上の代理単価(億ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 2 億ドル。連系線の採算悪化と非規制投資の不振が重なる。
- 英国系統運用事業(売却済):数量 0.0(FY2025に連結された月数(か月))× 価格 2.18(連結1か月当たりの売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。売却済みで事業価値を加えない。
- その他・不動産関連:数量 1.0(事業年度の換算単位(年))× 価格 1.50(その他事業1年度当たりの売上(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 −1 億ドル。小規模事業の費用負担が残る。
倍率:2035年ROEは51÷925.2=5.51%で、k7.5%を大幅に下回る。strong moatの残存割合2/3でもRONICは約6.18%となる。長期g2.5%は、実質設備需要のほぼ停滞、ガス資産の縮小、インフレに届かない規制回収単価を反映する。正当化PERは約12.20倍で、ROEがk未満の会社に認める上限1÷k=13.33倍も下回る。超過投資の失敗が続くため10.9倍とし、51億ドルの純利益に掛けて555.9億ドルとする。現在の純資産518.2億ドルも下回らない。
確率:英国の建設超過費用、米国ガス事業の停滞、料金抑制、金利負担の増加が長く重なる場合。送配電網自体は必要で倒産を中心に考えないが、規制資本の拡大が価値創造につながらなくなる確率を12%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
英国電力送電
イングランド・ウェールズの高圧送電網を保有し、Ofgemの料金規制のもとで送電設備の投資と運営から収益を得る。洋上風力の接続と送電容量の増強が主要な成長要因である。
| 数量2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル) | 価格実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 267 | 0.12 | 32 | 17 |
| 10 年後 中立 | 420 | 0.17 | 69 | 36 |
取り方:National Grid FY2025/26決算に掲載された2025年3月末の英国送電RAVは205.25億ポンド。比較用の換算係数を1ポンド1.30ドルとして約267億ドルを数量の起点とする。2025年度の同事業売上24.84億ポンドを、全社売上がfactsの237億ドルに一致する共通換算で32.03億ドルとした。価格0.11996は年間売上を実質RAVで割った値であり、料金表の単一単価ではない。2025年の法定営業利益12.77億ポンドを全社の法定営業利益比率で配分して17.1億ドルとした。英国ではイングランド・ウェールズの当該高圧送電地域を独占し、スコットランド側ではSSE系とSP系の送電会社が別地域の免許を保有する。将来は設備投資の実質増加を数量に、インフレと規制回収率を価格に入れ、名目RAVの成長を二重計上しない。
英国電力配電
東西ミッドランド、南西イングランド、南ウェールズの4免許区域で約800万件に電力を届ける。電化と設備更新のための投資をOfgemの規制料金で回収する。
| 数量2025年の価格水準に固定した規制資産価値(億ドル) | 価格実質規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 159 | 0.20 | 31 | 21 |
| 10 年後 中立 | 190 | 0.27 | 51 | 22 |
取り方:2025年3月末の英国配電RAVは122.54億ポンドで、比較用に約159億ドルへ換算した。2025年度の配電売上24.21億ポンドを全社factsに合わせて31.22億ドル、法定営業利益16.0億ポンド相当を21.4億ドルとした。FY2025の営業利益率は規制上のタイミング要因で高く、そのまま将来へ延長しない。英国の配電市場は14免許区域であり、同社は4区域を保有する。区域数のシェアは約29%、自社地域内ではほぼ100%の独占だ。UKパワー・ネットワークス、SSE系、SP系、ノーザン・パワーグリッドが他地域の主な事業者となる。実質RAVの増減と、規制された収益のインフレ調整を分けて予想する。
米国ニューイングランド
マサチューセッツを中心に電力配電・ガス配給・高圧送電を行う。規制資産の拡大、電力系統の強靱化、老朽ガス管更新が主要な投資需要である。
| 数量2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル) | 価格規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 122 | 0.46 | 56 | 14 |
| 10 年後 中立 | 174 | 0.61 | 106 | 27 |
取り方:2025年3月末のNew Englandのrate baseは約122億ドルと開示されている。2025年度のセグメント売上43.06億ポンドを、全社売上237億ドルに合わせて55.51億ドルに換算した。法定営業利益10.08億ポンドを基礎として13.5億ドルとした。マサチューセッツの電力顧客約336万件のうち同社は約130万件、顧客数の市場シェアは約39%であり、競合するエバーソース、ユニティルなどは異なる免許地域を持つ。地域内では設備への接続を独占する。価格には電気・ガスの購入費用の転嫁も含まれるため、単純な電力量単価ではなく規制資産当たりの売上で把握する。
米国ニューヨーク
ニューヨーク州北部の電力網と州内広域のガス配給網を持つ。設備更新や電力網増強に加え、規制料金改定の時期が利益を大きく左右する。
| 数量2025年の価格水準に固定した米国規制資産(億ドル) | 価格規制資産1億ドル当たりの年間売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 231 | 0.37 | 86 | 17 |
| 10 年後 中立 | 340 | 0.51 | 173 | 38 |
取り方:2025年3月末のNew Yorkのrate baseは約231億ドル。2025年度のセグメント売上66.89億ポンドを、factsの全社売上に整合する換算で86.26億ドルとした。法定営業利益12.69億ポンドを基礎に営業利益17.0億ドルとした。州の電力顧客約860万件に対し、同社の電力顧客約170万件は約20%に当たる。ガスは約250万件を担い、州内最大級である。コンソリデーテッド・エジソン、アバングリッド系、セントラル・ハドソンなどが別地域を担う。設備資産の数量は地域独占のもとで投資認可に沿って増え、価格はNYPSCやFERCの料金回収条件と燃料費の転嫁を含む。
ナショナル・グリッド・ベンチャーズ
英国と欧州各国を結ぶ国際電力連系線などの非規制・準規制インフラを保有する。2025年に再エネ開発とGrain LNGを売却し、2026年にはJoulentへの少数持分投資を発表した。
| 数量運転中の国際電力連系線容量(GW、共同保有分も総容量) | 価格連系線1GW当たりの年間セグメント売上の代理単価(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 7.8 | 2.23 | 17 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.2 | 2.05 | 17 | 5 |
取り方:会社開示では英国と欧州を結ぶ運転中の6連系線の設備容量は計7.8GW。2025年度NGV売上13.50億ポンドをfactsの全社売上へ換算して17.42億ドルとした。価格2.2333はNGV全体の売上を連系線総容量で割った代理単価であり、連系線の実際の利用料金ではない。FY2025には後に売却した再エネ開発とLNGも含むため、将来の単価はこれらの売却分を除く。FY2025法定利益は一時費用の影響でほぼゼロだが、FY2026には連系線から継続利益が発生している。英国全体の運転中連系線容量約10.3GWに対し同社が関与する設備は約76%で、共同持分を考慮した経済シェアとは異なる。将来のJoulent持分利益は35%投資先の会計上の取り分だけを評価し、Joulentの売上全額は連結しない。
英国系統運用事業(売却済)
英国の系統運用業務を担っていた事業。2024年に政府へ売却されたため、FY2025には期中の実績が残るが将来の売上はゼロになる。
| 数量FY2025に連結された月数(か月) | 価格連結1か月当たりの売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6.0 | 2.18 | 13 | −3 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 2.18 | 0 | 0 |
取り方:FY2025のUK Electricity System Operator売上10.12億ポンドを、factsの全社売上に合わせて13.05億ドルとした。2024年10月の売却までの約6か月を数量とし、月間平均売上を価格とする。法定営業損失は一時的な規制・売却関連項目を含めて約2.85億ドルのマイナスとして全社営業利益に整合させた。英国の系統運用事業は売却済みのため、今後は独立したNational Energy System Operatorが担当する。全ての10年筋書きで数量と売上はゼロとする。
その他・不動産関連
英国の不動産事業などの小規模事業と、グループ関連の費用を含む。中核の規制送配電とは収益の性格が異なる。
| 数量事業年度の換算単位(年) | 価格その他事業1年度当たりの売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 1.51 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 2.00 | 2 | 0 |
取り方:FY2025のOther売上1.16億ポンドを全社factsの売上へ整合させて1.51億ドルとした。物件売却件数や個別契約価格は継続的に開示されないため、年換算の事業量を1とする近似である。FY2025の法定営業損益は小幅赤字だったが、通常の本社費用はこれより大きく、一時的な利益調整が含まれる。将来は小規模事業売上と本社関連コストを保守的に見積もる。
リスクと懸念
巨額設備投資と資金調達の不足
2031年3月までの設備投資目標は700億ポンド以上で、既存のキャッシュフローだけでは賄いにくい。FY2025のフリーキャッシュフローはマイナス50.3億ドル、純有利子負債は579億ドルだった。工事費が計画を超過すると借金か増資が必要になり、会計上の利益が増えても既存株主の正味還元は減る。
英国の料金規制と工事費の未回収
OfgemはRIIO-T3で大規模投資を認める一方、工事費の効率性や消費者負担を審査する。英国送電の認可された実質株主資本コストは6.12%であり、設備投資の全てが高い超過利益を生むわけではない。物価上昇、機器不足、施工遅延が重なると、投資額が増えても規制上の回収と株主利益が追いつかない。
ニューヨーク州の料金抑制
ニューヨークでは電力・ガス料金の手頃さが強い政治課題となっている。2026年5月にはニューヨーク市とロングアイランドのガス配給料金を据え置く提案も提出された。設備更新に必要な投資を行っても料金認可が遅れれば、規制資産に見合うROEを実現できず、米国事業の利益率が長期間低下する。
ガス配給網の長期的な縮小
米国北東部では、建物の電化と温室効果ガス削減政策によって天然ガスの新規接続が制限されやすい。老朽管を更新する費用は残る一方、利用者数や使用量が伸びなくなると、単位当たりの維持費が高まる。規制当局が投資回収を認めない場合、ガス事業は電力事業より低い資本効率となる可能性がある。
新しい借換金利と信用力
FY2025の純負債はEBITDAの約5.9倍と重い。今後の借換金利が約5.75%に移行すると、低金利時代の債務より利払いが増える。会社は信用格付けの維持を目指すが、規制上の回収が遅れたり投資のための借金が急増したりすれば、格付けを守るために追加の株式資本が必要になる。
Joulent出資とデータセンター需要の過大評価
2026年に発表した17.5億ドルのJoulent持分投資は、通常の規制送配電と異なり、大口需要家との契約履行、発電設備の建設、燃料調達、案件採算に依存する。AIデータセンターの発表済み需要がすべて稼働するとは限らない。需要見通しが下方修正されると、長期資本の回収が遅れ、非規制投資に損失が発生する可能性がある。
暴風雨・サイバー障害・重要インフラの損傷
送電線とガス管は長寿命だが、暴風雨、洪水、サイバー攻撃、重大な設備故障による復旧費用が大きい。保守投資を削ると安全性が損なわれ、事故後には賠償や規制上の罰則につながる。AIによる需要予測や保守効率化は可能でも、現場設備の安全管理と更新投資を不要にはしない。費用の回収が遅れると株主利益が傷む。
今後の分かれ目
- 英国送電のRIIO-T3対象工事が概ね計画通り進み、工事費の超過も抑えられたら
- 英国送電の実質規制資産と回収収益の見通しを引き上げる。中立からやや楽観へ確率を移し、利益率の改善が続くかを確認する。
- 英国送電の大型プロジェクトで工事費の超過と認可遅延が続いたら
- 実質規制資産の増加と営業利益率を引き下げ、やや悲観の確率を上げる。設備投資の額ではなく、認可された回収額と実際の現金収支を重視する。
- ニューヨーク州の次の料金改定で投資に見合う許可ROEが維持されたら
- ニューヨーク事業の規制利益の安定性を高く評価する。ガス事業の需要停滞が残っても、電力設備の成長で補える確率を上げる。
- ガス配給の新規接続が大幅に減り、老朽管更新費用の回収も制限されたら
- ニューイングランドとニューヨークの将来利益率を下げる。ガス資産の価値を再検討し、10年後のやや悲観と悲観の重みを増す。
- 2026年以降も大型の株主割当増資を繰り返すことになったら
- 会社全体の事業価値が増えても、正味の株主還元から増資払込額を差し引く。規制資産成長に対して既存株主の利益が追いついているかを点検する。
- Joulentが長期契約のある発電設備を予定通り稼働させ、投下資本に見合う現金収益を生んだら
- 非規制事業から得られる利益を上積みする。ただし35%持分投資であり、出資先の売上全額を連結せず、持分利益と分配される現金を確認する。
- 純有利子負債の増加が止まり、投資後フリーキャッシュフローが継続的に黒字化したら
- 資金調達と追加増資のリスクが下がるため、正味の株主還元見通しを引き上げる。営業利益率よりも負債、設備投資、配当の関係が改善したかを重視する。
見ておくもの
- 英国送電RIIO-T3の実際の設備投資額、建設費超過率、認可回収額
- 英国送電・配電の規制資産RAVの実質成長率と回収単価
- 米国New England・New Yorkのrate baseと実現ROE
- ニューヨーク州のガス料金据え置き案と次回料金認可
- 会社の2031年までの700億ポンド以上の設備投資計画の進捗
- FY2027の調整後利益成長率と一時的評価益を除く利益
- 純有利子負債、FFO対純負債比率、信用格付け
- 現金配当、株式配当、追加増資を差し引いた正味株主還元
- Joulentの発電設備の建設進捗、長期契約と持分利益
- 英国の国際連系線容量と市場全体に占めるシェア
倍率と資本コストの決め方
評価の出発点はfactsのFY2025財務であり、売上237億ドル、営業利益66.1億ドル、純利益43.4億ドル、自己資本518.2億ドルを使った。2026年の公表資料は、事業構造・規制資産・投資計画・直近の業績見通しを更新するために使用し、factsの財務実績を無断で置き換えていない。2025年のセグメント売上は会社開示の構成比で全社237億ドルへ整合させ、実質規制資産の成長と名目価格上昇を分離した。売却済みESOの売上は2035年にゼロとし、再エネ開発とGrain LNGの売却もNGVの将来単価に反映した。
資本コストは8.0%にquality -0.5%を加えた7.5%で、現在の株価やβは使わない。中立のROE8.46%、RONIC8.14%、長期g3.5%から正当化PER上限14.75倍を計算し、その約91.5%である13.5倍を採用した。楽観とやや楽観もそれぞれのROE、RONIC、gから上限を求めている。全ての筋書きで純利益はGAAP基準とし、金利負担と株式報酬を費用として扱う。純現金は存在しないため余剰現金加算は行わない。
自己資本の道筋は、FY2025の518.2億ドルに10年間の利益累計を加え、配当から株式報酬・株式配当・新規払込資本を控除した正味還元を差し引いている。正味還元は楽観275億ドル、やや楽観255億ドル、中立190億ドル、やや悲観125億ドル、悲観65億ドルである。中立の内訳目安は、累積宣言配当365億ドルから株式配当85億ドル、株式報酬相当5億ドル、新規増資払込85億ドルを差し引いた190億ドルである。自己資本945.2億ドルは、初期518.2億ドル+累積純利益617億ドル−正味還元190億ドルと一致する。
時価総額は各筋書きで純利益×PERと一致し、楽観1727億ドルから悲観555.9億ドルまで順序を守る。悲観の価値は現在の自己資本518.2億ドルを超え、悲観の時価総額と還元の合計も現在の時価総額を下回る。確率は10%・21%・35%・22%・12%で合計100%。10年後時価総額の確率加重平均を7.5%で10年割り引き、正味還元を期間の中間で割り引いた価値は約636.7億ドルである。台帳の時価総額813.9億ドルとの差は約マイナス21.8%で、判定はやや割高となる。現在の市場PERや同業の市場倍率から逆算していない。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の共通基準8.0%にquality -0.5%を加え、株主資本コストを7.5%とした。英国送電の長期投資機会を認めるが、同業のAEEやDUKより借金が重いため、最も低い資本コストにはしない。βや現在の株価倍率は使わない。存続の危機ではないのでdistress上乗せはゼロとする。規制や非規制投資の個別リスクは資本コストではなく利益の筋書きと確率に反映する。