結論
AES は、米国の契約型の再生可能エネルギー・蓄電(データセンター向けの長期契約を含む)、インディアナ州とオハイオ州の規制公益、南米などの発電を持つ総合型の発電会社である。売上は約 122 億ドル、営業利益は約 20 億ドルだが、純有利子負債は連結で 287 億ドル(うち AES の持ち分は約 227 億ドル)と、時価総額 107 億ドルの約 2.7 倍に達する。利払いが営業利益の 8 割近くを食うため、GAAP の純利益(2025 年は 9.4 億ドル)は減損・デリバティブの評価・債務消却損で毎年大きくぶれる。
買収提案(GIP・EQT などが株式価値で約 107 億ドル、事業価値で約 334 億ドルを提示。株主は承認済みだが規制承認は未了)は未成立なので筋書きに入れず、会社単体で価値を測った。減損はほぼ毎年出る慢性的な費用なので、調整後との差の 3 割強だけを正常化として戻し、2025 年の正常化した持ち分の純利益を 12 億ドルとした。
資本コストは基本 8.0% に品質の上乗せ(借金 +1.0%・寿命 +0.5%)を足した 9.5%。倍率は利益ベースの正当化 PER(moat=weak、残る割合 1/3)の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は正当化 PER 11.5 倍(g 4.0%・RONIC 10.8%。ROE は筋書きの純利益 17.5 ÷ 自己資本 130 の 13.5%)の 8.5 割の 9.7 倍。今の GAAP の PER 11.4 倍は、この水準を上回る。確率で重ねた総合は今の時価総額の約 12% 下で、結論は「やや割高」である。ただし負債の重さから悲観の確率を厚く(10 年 16%)、谷の深さも時価総額の 2〜3 割まで置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後もこの事業が今より強いかを問う。AES の規制公益と契約型の再エネは存続するが、強くなるかは借金次第である。堀は規制公益の地域独占だけがはっきりしており、再エネと南米は入札と市場の価格で決まり、堀は狭い。
次にオーナー利益。正常化した純利益 12 億ドルのうち、成長に再投資せず株主に回せる分は、年約 18 億ドルの成長投資と毎年マイナスのフリーキャッシュフロー(2025 年 −16 億ドル)を考えると、ほぼ無い。配当は約 5 億ドルで、純負債は 2022 年から 74 億ドル増えた。『稼いだ分を借金で成長に回す』構造は、金利 5% の世界では株主に回る分が薄い。式(帳簿の ROE 13.5%、資本コスト 9.5%、残る割合 1/3)が示す倍率 11 倍台は、成長が資本コストをわずかに超える程度の会社の値である。
安全域は無い。安全域では、利益ベースの正当化 PER 11.5 倍(g 4.0%・RONIC 10.8%・k 9.50%・moat=weak)に対して、10 年の中立を 9.7 倍に置いた。今の PER 11.4 倍はこれより高く、安全域は無い。確率で重ねた総合は今の時価総額の約 12% 下で、結論は「やや割高」である。確信度は低い(フリーキャッシュフロー・減損・規制・南米の政策と、予測しにくい要因が多い)。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく 3 つ。第 1 は契約型の再生可能エネルギー・蓄電(約 18 GW が稼働)。10〜20 年の電力購入契約(PPA)で固定価格を得る風力・太陽光・蓄電池で、ハイパースケーラーとの契約が増えている。データセンター顧客との署名済み契約は 8.2 GW(稼働 4.2 GW、バックログ約 4 GW。会社は別の数え方で約 12 GW とも説明)、署名済み PPA の再エネバックログは 11.1 GW(2027 年までの建設中 4.8 GW)。グーグルとはテキサス州で 20 年の併設発電、アマゾンとはカリフォルニア州で太陽光 450 MW と蓄電 225 MW、マイクロソフトとは MISO で 475 MW を結んだ。売上は運転容量 × 1 GW あたりの売上に、開発サービス(売却益に近い収入)が加わり、この部分は年ごとにぶれる。
第 2 はインディアナ州(AES インディアナ)とオハイオ州(AES オハイオ)の規制公益で、顧客は約 110 万件。料金は規制当局が認める投資残高(レートベース)に許可利益率を掛けて決まるので、価格は販売量ではなく投資の伸びで動く。オハイオでは送電がレートベースの約 4 割になる見通しで、インディアナでは 1.2 GW のガス再稼働を計画している。基本料金の引き上げは、インディアナが年 0.71 億ドル(2024 年の命令)、オハイオが年 1.68 億ドル(2024 年の和解)。
第 3 は南米などの発電(ガス・石炭・水力)で、チリ・コロンビア・パナマ・ドミニカ・メキシコ・ブルガリアなど。多くは長期契約で燃料費が転嫁され、利益率が相対的に高いが、石炭の閉鎖や売却(チリのベンタナス石炭 537 MW は 2025 年 1 月に売却)で縮む方向にある。コロンビアのチボル水力(約 1,000 MW)は 2024 年の洪水から回復した。親会社は子会社から配当(親会社のフリーキャッシュフローは年 11〜12 億ドル規模)を受け、利払いと開発に充てる構造である。
優良さと弱いところ
優良さは、事業の部品ごとに差が大きい。強みは 3 つ。第 1 に規制公益は料金が認可され、需要の景気感応度が低い(堀は許認可と地域独占)。第 2 に契約型の再エネは、10〜20 年の PPA が収益を固定し、データセンターという信用力の高い顧客を持つ。第 3 に南米の発電は、長期契約と水力・ガスの組み合わせでキャッシュを出す。
弱い所は 4 つ。第 1 に借金が重すぎる。連結の純有利子負債 287 億ドル(時価総額比 269%)、自己資本比率 13%、2025 年のフリーキャッシュフローは約 −16 億ドル(2024 年 −46 億ドル、2023 年 −47 億ドル)で、成長は借金と少数株主の資金で賄ってきた。第 2 に利益の質が低い。2025 年の GAAP の純利益 9.4 億ドルと、会社が出す調整後の約 16.7 億ドルの差は 7 億ドル超で、減損が 2021〜2025 年のほぼ毎年出ており、一時的とは言い切れない。第 3 に価格を決める力が弱い。再エネの PPA は競争入札、南米は契約更新の価格が市場に連動する。第 4 に資本配分の実績がまちまち(資産売却で負債圧縮を約束しながら、純負債は 2022 年の 213 億ドルから 287 億ドルへ増えた)。
資本効率は、帳簿の自己資本 ROE(25% 前後)が減損で痩せた自己資本による見かけで、新規投資の ROIC は借金の税引き後の金利(約 4.5%)を数ポイント上回る程度。事業としては並みの優良さで、レバレッジが株主の取り分をほぼ決めている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の電力需要は 2025 年に過去最高の 4,195 TWh、EIA は 2026 年 4,288 TWh、2027 年 4,356 TWh(年 +1.9%)と見ており、伸びはデータセンターなどの商業用が引っ張る。この追い風は、既存の原子力・ガスを持つコンステレーション・エナジー(CEG)・ビストラ(VST)・NRG エナジー(NRG)が最も強く受け、AES は新設の再エネ・蓄電・ガスで需要に応える立場にある。
再エネは、2025 年に成立した米国の税制法で、風力・太陽光の税額控除が着工期限つきで縮み、蓄電池は残るため、新規の風力・太陽光の採算は、控除が効くものと効かないものとで二極化する。金利 5% の世界では、資本の重い再エネの開発の収益が圧迫される一方、データセンター向けは電力会社より高い単価で長期契約を結べる。競合は、ネクステラ・エナジー(NextEra Energy Resources)・ブルックフィールド・リニューアブル(Brookfield Renewable)・オーステッド(Ørsted)など。ネクステラは規模と調達の安さでシェアを取り、AES は米国で上位ながら資金調達力が弱い。
規制公益は、データセンターの接続・ガス火力の再稼働・送電の更新で投資が増える(レートベース年 7〜9% の伸び)が、電気料金の上昇への政治の反発(家庭向けの料金は 2026 年に約 5% 上昇、東海岸の州で 12% 台)が許可利益率と料金改定の足かせになる。南米は、チリの石炭の閉鎖・再エネの飽和(昼間の卸価格の低下)、コロンビアの水力の天候、メキシコ・ブルガリアの政策リスクが並ぶ。独立系の同業(CEG・VST・NRG)は PJM・ERCOT で原子力・ガスの稀少性を売るが、AES はその市場の価格の上昇を直接には受けず、規模と財務でも劣る。
資本政策と M&A
資本政策の核は資産の入れ替え(アセット・リサイクリング)。再エネの少数持ち分(AGIC の売却:2025 年第 1 四半期に 4.5 億ドル)や石炭・海外資産を売り、年約 18 億ドルの成長投資(自己資金)に回す。2025 年は資産売却の目標 4〜5 億ドルを達成。配当は 2025 年で約 5 億ドル(正常化した純利益の 4 割強)、自社株買いはほぼ無く、株式報酬(小さい)と優先株の転換でわずかに株が増える。コスト削減は 2026 年に年 3 億ドルの見込み。
M&A は、買われる側の提案が出ている。GIP(ブラックロック傘下)・EQT インフラストラクチャー VI・カルパース・カタール投資庁が、2026 年 3 月に現金で買収する契約を結び(株式価値約 107 億ドル、負債込みの事業価値約 334 億ドル、2025 年 7 月の観測前の 30 日平均に対し 4 割強の上乗せ)、6 月 26 日に株主が約 97.9% の賛成(発行株の約 67.2%)で承認した。完了は 2026 年末〜2027 年初の見込みだが、連邦・インディアナ州・オハイオ州・海外各国の承認待ちで、未成立。買い手は購入額の全額を自己資金で出し、買収負債は足さない。この評価では未成立の買収は入れず単体で書く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
契約型の再エネは、データセンターの電力不足が追い風になる。署名済みの PPA バックログは 11.1 GW、うち 4.8 GW が建設中で、2027 年までに運転入りする。グーグル(テキサスの併設発電)・アマゾン・マイクロソフトとの長期契約は、AES の再エネの売上を 10〜20 年固定にし、新設の単価は従来より高い。規制公益は、インディアナのガス再稼働 1.2 GW・オハイオの送電投資でレートベースが年 7〜9% 伸び、許可利益率を掛けた利益が積み上がる。
財務面では、2026 年にコスト削減が年 3 億ドル見込まれ、第 2 四半期の調整後 EBITDA は前年の 6.81 億ドルから 8.98 億ドルに伸び、上半期の営業キャッシュフローは 22.5 億ドルと前年の 15.2 億ドルから大きく増えた。調整後 EBITDA は 2027 年まで年 5〜7% の成長目標で、実績は 2025 年に約 28.7 億ドル。親会社のフリーキャッシュフローは年 11〜12 億ドル。資産売却で負債を圧縮すれば、利払いの重さは徐々に下がり、持ち分の純利益は 10 年で 25 億ドルまで伸びる。買収提案そのものが、プロの買い手が事業価値 334 億ドル(調整後 EBITDA の 11.6 倍)を払う価値を認めた証拠である。
慎重な見方
利益の質が低い。2025 年の GAAP の純利益 9.4 億ドルは調整後の約 16.7 億ドルの半分強で、減損が毎年出る。純有利子負債は 287 億ドル、自己資本比率 13%、フリーキャッシュフローは 2023〜2025 年に −47・−46・−16 億ドルと 3 年連続のマイナスで、成長は借金頼み。金利 5% の世界では、借り換えで金利が上がり利払いが増え続ける。式の資本コストは基本 8.0% に品質 +1.5% の 9.5% で、借金の重さは quality の借金(+1.0%)と悲観の確率で表したが、それでも割り引きが楽観にすぎないおそれは残る。
税額控除の縮小(2025 年の税制法)で、風力・太陽光の採算が悪くなり、データセンター向けの PPA の単価も競争で下がる。南米は石炭の閉鎖・再エネの飽和・政策の変更で縮み、規制公益は電気料金の上昇への政治的な反発で許可利益率が下がる。2008〜09 年は株価が 73% 下がった。さらに今の株価は買収価格に張り付いているだけで、単体の価値ではない。買収が成立しなければ、買い手が去った後の AES は負債を抱えたまま単体に戻る。調整後 EBITDA に対する事業価値 11.6 倍は、負債の多い会社には高い。
どちらに重みを置いたか
本業(規制公益と契約型の再エネ)の成長は確かで、利益ベースの正当化 PER(10 年の中立は 9.7 倍)では今の時価総額をやや下回る(総合 −12%)。負債の重さとフリーキャッシュフローのマイナスは、quality の借金 +1.0% で k に入れたうえ、悲観・やや悲観の確率を厚く置いた(悲観 16%・やや悲観 24%)。楽観側は買収提案が示す価値(調整後 EBITDA の 11.6 倍)とデータセンター契約で支え、確率は 25% に抑えた。倍率は正当化 PER の 7〜10 割に置いた(10 年の中立 9.7 倍=正当化 PER 11.5 倍の 8.5 割)。今の PER を見て寄せていない。筋書きを確率で重ねた総合は今の時価総額の約 12% 下で、結論は「やや割高」である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 21.05 ドル150 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 7.38 ドル53 億ドル)。 今の値に割り戻すと 13.18 ドル94 億ドル、今との差 −11.9%、 期待の年率 +6.6%(資本コスト 9.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 40.64 ドル290 億ドル | 11.90 ドル85 億ドル | +251.0% | +13.4% | 3.68 ドル26 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 31.53 ドル225 億ドル | 10.50 ドル75 億ドル | +180.8% | +10.9% | 7.57 ドル54 億ドル |
| 中立 | 35% | 23.88 ドル171 億ドル | 8.68 ドル62 億ドル | +117.5% | +8.1% | 11.40 ドル81 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 15.25 ドル109 億ドル | 5.32 ドル38 億ドル | +37.4% | +3.2% | 4.94 ドル35 億ドル |
| 悲観 | 16% | 3.22 ドル23 億ドル | 2.10 ドル15 億ドル | −64.4% | −9.8% | 0.85 ドル6 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 21.05 ドル150 億ドル | 7.38 ドル53 億ドル | +89.9% | +6.6% | 28.43 ドル203 億ドル |
今の株価時価総額 14.97 ドル107 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:データセンター電力の担い手として規模が倍近くになる 利益 25 億ドル · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 40.64 ドル290 億ドル
10 年後(2035 年末)、署名済み PPA とその後の契約で運転容量は約 44 GW(約 2.4 倍)、1 GW あたり売上は物価の 1.41 倍に新設の高い単価を混ぜて約 1.35 倍。規制公益は販売量が年 2% 増(データセンター・電化)、レートベースの伸びで 1 MWh あたり売上が約 1.54 倍。南米は価格が物価以上(約 1.48 倍)。営業利益は約 48 億ドル。借金は資産売却で圧縮され、純利益は 25 億ドルに届く。配当と自社株買いを合わせた還元は 10 年で約 85 億ドル。税額控除の縮小の影響は蓄電池・データセンター向けへの組み替えで吸収する。競合に勝つ筋書きでは、データセンターの電力不足で再エネ・蓄電・併設発電の需要が供給を上回り、ネクステラ・エナジーなどが取り切れない案件が AES に回る。規制公益の許可利益率も維持され、全社の利益が約 2 倍になる。買収は成立しない前提。倍率は 正当化 PER 12.2 倍に対して 11.6 倍(9.5 割)に置いた(データセンター契約で伸びる分の ROE が k を少し超えるが、競争(ネクステラ・エナジーなど)と陳腐化で堀は弱く(moat=weak)、RONIC は k のすぐ上なので上限の 9.5 割)。 10 年の純利益の累計は約 158 億ドル(2025 年の正常化値 12 億ドルから 25.0 億ドルへ。報告値との差(調整後への戻し 年 2.6 億ドル)を引く)。自己資本は今の 69 億ドルにこの累計を足し、還元 85 億ドルを引いた約 142 億ドル。
- 契約型の再生可能エネルギー・蓄電:数量 44.0(運転容量(GW))× 価格 300(1 GW あたりの年間売上(百万ドル/GW。電力+容量+開発サービス))→ 売上 132 億ドル・営業利益 23 億ドル。運転容量×1GWあたり売上
- 規制公益(インディアナ・オハイオ):数量 40.0(販売電力量(TWh。数量=市場。独占地域なのでシェアは 100%))× 価格 188(1 MWh あたりの売上($/MWh。燃料費・購入電力費の転嫁を含む))→ 売上 75 億ドル・営業利益 14 億ドル。販売量×1MWhあたり売上
- 南米などの発電(エネルギーインフラ):数量 80.0(発電・販売量(TWh))× 価格 80(1 MWh あたりの売上($/MWh))→ 売上 64 億ドル・営業利益 12 億ドル。発電量×単価
倍率:正当化 PER 12.2 倍(g 4.0%、RONIC 12.2%=k 9.50%+残る割合 0.33×(事業の ROE 17.6%−k)、moat=weak。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 11.6 倍(9.5 割)に置いた。データセンター契約で伸びる分の ROE が k を超えるが、競争(ネクステラ・エナジーなど)と陳腐化で堀は弱く(moat=weak、残る割合 1/3)、借金が重いので上限の 9.5 割どまり。g の内訳:市場の伸び(実質)約 1% × シェアの変化 横ばい × 価格(物価 3.5% に対し契約更新・料金改定のずれで差し引く)で、名目の長期 g は 4.0〜4.5% だが、k−g≥3.5% の守りで 4.0% に抑えた。純利益は GAAP の考え方。式の ROE は帳簿の自己資本に対する値(筋書きの純利益 ÷ 自己資本。40% 以下なので ROIC には直さない)。
確率:再エネの運転容量が倍以上、規制公益の伸びが 8% 台、南米の価格が物価以上、借金が減る、のすべてが 10 年続く必要がある。税額控除の縮小と金利 5% の下でその確率は低い。
やや楽観 18% やや楽観:成長が会社目標どおりに続く 利益 21 億ドル · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 31.53 ドル225 億ドル
10 年後、運転容量は約 40 GW、1 GW あたり売上は 1.30 倍(物価 1.41 倍より、既存の PPA の低い物価連動の分だけ下回る)。規制公益は販売量が年 2% 増・1 MWh あたり売上が約 1.49 倍。南米は量が約 2% 減、単価は物価並み(1.44 倍)。営業利益は約 42 億ドルで、純利益は 21 億ドル。利払いは借り換えで約 5 億ドル増えるが、規模の拡大と税額控除の取り分で吸収する。10 年の還元は約 75 億ドルで、資産売却の収入が成長投資の元手を補う。競合に対しては、データセンター向けの再エネでネクステラ・エナジーやブルックフィールド・リニューアブルとシェアを分け合い、取られる分と取る分が相殺する。AES は新規の独立系再エネの中で上位を保つが、資金調達の弱さで勝ち切らない。買収は成立しない前提。倍率は 正当化 PER 11.9 倍に対して 10.7 倍(9.0 割)に置いた(ROE が k を少し超える程度で、堀は弱いので上限の 9.0 割(1÷k が床))。 10 年の純利益の累計は約 139 億ドル(2025 年の正常化値 12 億ドルから 21.0 億ドルへ。報告値との差(調整後への戻し 年 2.6 億ドル)を引く)。自己資本は今の 69 億ドルにこの累計を足し、還元 75 億ドルを引いた約 133 億ドル。
- 契約型の再生可能エネルギー・蓄電:数量 40.0(運転容量(GW))× 価格 288(1 GW あたりの年間売上(百万ドル/GW。電力+容量+開発サービス))→ 売上 115 億ドル・営業利益 19 億ドル。運転容量×1GWあたり売上
- 規制公益(インディアナ・オハイオ):数量 39.0(販売電力量(TWh。数量=市場。独占地域なのでシェアは 100%))× 価格 182(1 MWh あたりの売上($/MWh。燃料費・購入電力費の転嫁を含む))→ 売上 71 億ドル・営業利益 13 億ドル。販売量×1MWhあたり売上
- 南米などの発電(エネルギーインフラ):数量 78.0(発電・販売量(TWh))× 価格 78(1 MWh あたりの売上($/MWh))→ 売上 61 億ドル・営業利益 11 億ドル。発電量×単価
倍率:正当化 PER 11.9 倍(g 4.0%、RONIC 11.6%=k 9.50%+残る割合 0.33×(事業の ROE 15.8%−k)、moat=weak。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 10.7 倍(9.0 割)に置いた。調整後 EBITDA が年 5〜7% で伸び、規制公益の許可利益率が保たれる筋書き。堀は弱く借金が重いので上限の 9 割。g の内訳:市場の伸び(実質)約 1% × シェアの変化 横ばい × 価格(物価 3.5% に対し契約更新・料金改定のずれで差し引く)で、名目の長期 g は 4.0〜4.5% だが、k−g≥3.5% の守りで 4.0% に抑えた。純利益は GAAP の考え方。式の ROE は帳簿の自己資本に対する値(筋書きの純利益 ÷ 自己資本。40% 以下なので ROIC には直さない)。
確率:調整後 EBITDA の年 5〜7% が 2027 年を越えて 10 年続く筋書き。規制公益の許可利益率が維持されるのが条件で、起きる確率は高いが、10 年は政治・金利・税制が動く余地が大きい。
中立 35% 中立:成長は資本コスト並みで、株主の取り分は薄いまま 利益 18 億ドル · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 23.88 ドル171 億ドル
10 年後、運転容量は約 36 GW(倍)、1 GW あたり売上は 1.25 倍(既存の PPA の物価連動は年 1〜2%、新設分は高め。物価の 1.41 倍を下回る理由)。規制公益は販売量が年 1.7% 増の約 38 TWh、1 MWh あたり売上は物価並みの約 1.44 倍(レートベースの伸びを含む)。南米は量が約 5% 減(石炭の閉鎖・売却)、単価は物価並みの 1.41 倍で、利益率は 17.5% に下がる。営業利益は約 36 億ドル。純有利子負債は成長投資で増え、借り換えは全部が新しい金利(約 5.75%)になり、持ち分の純利益は 17.5 億ドル(2025 年の正常化値から年 4% 強)。配当は 10 年で約 62 億ドル(配当性向 4 割台)。競合に対しては、ネクステラ・エナジー・ブルックフィールド・リニューアブルと並ぶ上位の独立系として、シェアを維持する前提。勝てば利益は楽観側へ、負ければやや悲観側へ動く。買収は成立しない前提。倍率は 正当化 PER 11.5 倍に対して 9.7 倍(8.5 割)に置いた(堀は弱く借金が重く、利払いと減損が利益の伸びを削るので上限の 8.5 割)。 10 年の純利益の累計は約 123 億ドル(2025 年の正常化値 12 億ドルから 17.5 億ドルへ。報告値との差(調整後への戻し 年 2.6 億ドル)を引く)。自己資本は今の 69 億ドルにこの累計を足し、還元 62 億ドルを引いた約 130 億ドル。
- 契約型の再生可能エネルギー・蓄電:数量 36.0(運転容量(GW))× 価格 278(1 GW あたりの年間売上(百万ドル/GW。電力+容量+開発サービス))→ 売上 100 億ドル・営業利益 15 億ドル。運転容量×1GWあたり売上
- 規制公益(インディアナ・オハイオ):数量 38.0(販売電力量(TWh。数量=市場。独占地域なのでシェアは 100%))× 価格 176(1 MWh あたりの売上($/MWh。燃料費・購入電力費の転嫁を含む))→ 売上 67 億ドル・営業利益 12 億ドル。販売量×1MWhあたり売上
- 南米などの発電(エネルギーインフラ):数量 76.0(発電・販売量(TWh))× 価格 76(1 MWh あたりの売上($/MWh))→ 売上 58 億ドル・営業利益 10 億ドル。発電量×単価
倍率:正当化 PER 11.5 倍(g 4.0%、RONIC 10.8%=k 9.50%+残る割合 0.33×(事業の ROE 13.5%−k)、moat=weak。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 9.7 倍(8.5 割)に置いた。式と実績の落としどころ。再エネは運転容量が倍近くに増えるが、利払いと減損が利益の伸びを削り、堀は弱く借金も重いので上限の 8.5 割(中立は 1÷k の床の 0.9 倍を下回らせない)。g の内訳:市場の伸び(実質)約 1% × シェアの変化 横ばい × 価格(物価 3.5% に対し契約更新・料金改定のずれで差し引く)で、名目の長期 g は 4.0〜4.5% だが、k−g≥3.5% の守りで 4.0% に抑えた。純利益は GAAP の考え方。式の ROE は帳簿の自己資本に対する値(筋書きの純利益 ÷ 自己資本。40% 以下なので ROIC には直さない)。
確率:式と実績の落としどころ。再エネは運転容量が倍近くに増えるが、利払いと減損が利益の伸びを削り、規制公益の安定が下を支える。強気と慎重が拮抗するので中立を最も厚くした。
やや悲観 24% やや悲観:負債と税制に押され、成長が止まる 利益 12 億ドル · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 15.25 ドル109 億ドル
10 年後、風力・太陽光の控除の縮小と金利 5% で再エネの開発が鈍り、運転容量は約 30 GW、1 GW あたり売上は 1.15 倍(PPA の更新が低い単価)。規制公益は電気料金への政治的反発で料金改定が抑えられ、1 MWh あたり売上は 1.35 倍。南米は石炭の閉鎖と再エネの飽和(昼間の卸価格の低下)で量が 1 割以上減り、利益率が 15% に下がる。営業利益は約 26 億ドルだが、純有利子負債(持ち分ベース約 300 億ドル)の利払いが営業利益の大半を食い、毎年の減損も加わって、持ち分の純利益は 11.5 億ドルと 2025 年の正常化値と同じ水準で動かない。配当は据え置き。競合に負ける筋書きでは、ネクステラ・エナジーやブルックフィールド・リニューアブルが調達コストの差で入札を取り続け、AES の新規の運転容量の伸びが止まる。残る規制公益が利益を支えるが、全社では伸びない。倍率は 1÷k = 10.5 倍に対して 9.5 倍(9.0 割)に置いた(ROE が k を下回り借入金利も重いので、1÷k の下に置いた)。 10 年の純利益の累計は約 91 億ドル(2025 年の正常化値 12 億ドルから 11.5 億ドルへ。報告値との差(調整後への戻し 年 2.6 億ドル)を引く)。自己資本は今の 69 億ドルにこの累計を足し、還元 38 億ドルを引いた約 122 億ドル。
- 契約型の再生可能エネルギー・蓄電:数量 30.0(運転容量(GW))× 価格 255(1 GW あたりの年間売上(百万ドル/GW。電力+容量+開発サービス))→ 売上 77 億ドル・営業利益 10 億ドル。運転容量×1GWあたり売上
- 規制公益(インディアナ・オハイオ):数量 37.0(販売電力量(TWh。数量=市場。独占地域なのでシェアは 100%))× 価格 165(1 MWh あたりの売上($/MWh。燃料費・購入電力費の転嫁を含む))→ 売上 61 億ドル・営業利益 10 億ドル。販売量×1MWhあたり売上
- 南米などの発電(エネルギーインフラ):数量 70.0(発電・販売量(TWh))× 価格 70(1 MWh あたりの売上($/MWh))→ 売上 49 億ドル・営業利益 7 億ドル。発電量×単価
倍率:事業の ROE 9.4% が k 9.50% 以下なので、伸びても価値は増えず正当化 PER は 1÷k = 10.5 倍。これに対して 9.5 倍(9.0 割)に置いた。ROE が k を下回り借入金利も重いので、1÷k の下に置いた(0.9 倍)。g の内訳:市場の伸び(実質)約 1% × シェアの変化 横ばい × 価格(物価 3.5% に対し契約更新・料金改定のずれで差し引く)で、名目の長期 g は 4.0〜4.5% だが、k−g≥3.5% の守りで 4.0% に抑えた。純利益は GAAP の考え方。式の ROE は帳簿の自己資本に対する値(筋書きの純利益 ÷ 自己資本。40% 以下なので ROIC には直さない)。
確率:10 年のうちに金利・税制・規制のどれかが不利に動く確率は高く、AES の負債では傷が深い。フリーキャッシュフローがマイナスの 3 年連続の実績を踏まえ、中立に次ぐ確率とした。
悲観 16% 悲観:構造的に負け、もう優良ではない 利益 3 億ドル · PER 9.2 倍 · 株価時価総額 3.22 ドル23 億ドル
10 年後、構造的に負ける。税額控除の廃止で再エネの採算が悪く、資金調達が止まって新規の開発ができず、運転容量は約 24 GW に縮む(売却・失効)。規制公益は許可利益率が下がり料金改定が抑えられる。南米は石炭の閉鎖・通貨の下落・政策変更で量・単価とも落ちる。純有利子負債は借り換えで金利が約 7% に上がり、営業利益 14 億ドルの大半が利払いに消え、持ち分の純利益は 2.5 億ドル。減損と資産の売却が続き、配当は 15 億ドル(10 年合計)に削る。式の倍率でも、会社の価値は今の時価総額の 2 割強まで下がる。競合との比較では、ネクステラ・エナジーが市場を取り切り、AES は規制公益と一部の南米の資産だけが残る小さな会社になる。 10 年の純利益の累計は約 30 億ドル(2025 年の正常化値 12 億ドルから 2.5 億ドルへ。報告値との差(調整後への戻し 年 2.6 億ドル)を引く)。自己資本は今の 69 億ドルにこの累計を足し、還元 15 億ドルを引いた約 84 億ドル。
- 契約型の再生可能エネルギー・蓄電:数量 24.0(運転容量(GW))× 価格 230(1 GW あたりの年間売上(百万ドル/GW。電力+容量+開発サービス))→ 売上 55 億ドル・営業利益 4 億ドル。運転容量×1GWあたり売上
- 規制公益(インディアナ・オハイオ):数量 35.0(販売電力量(TWh。数量=市場。独占地域なのでシェアは 100%))× 価格 150(1 MWh あたりの売上($/MWh。燃料費・購入電力費の転嫁を含む))→ 売上 53 億ドル・営業利益 7 億ドル。販売量×1MWhあたり売上
- 南米などの発電(エネルギーインフラ):数量 60.0(発電・販売量(TWh))× 価格 62(1 MWh あたりの売上($/MWh))→ 売上 37 億ドル・営業利益 4 億ドル。発電量×単価
倍率:事業の ROE 3.0% が k 9.50% 以下なので、伸びても価値は増えず正当化 PER は 1÷k = 10.5 倍。これに対して 9.2 倍(8.7 割)に置いた。構造的な負けで g は 3.0%(市場の伸び 実質 約 1% × シェアの変化 大きく減 × 価格 物価に対し差し引く)に落ちる前提。10 年目の成長は年 10% 以下なので 2 段階にしない。純利益は GAAP(株式報酬は費用、減損は 3 割強だけ正常化)。 時価総額 23 億ドルは帳簿の自己資本 84 億ドルの 0.27 倍と低いが、持ち分の純有利子負債 約 300 億ドルが先に払われ、株主の取り分は資産の価値から借金を引いた残りで、金利 約 7% の借り換えと資産の売却が続く構造的な負けの姿を置いている。売却益が出ても利払いに消えるので、帳簿に近い値までは戻さない。 EV でも見た:(時価総額 23 + 純有利子負債 287)÷ 営業利益 14.3 = 約 22 倍と高く出るのは、借金が先に払われ株主の取り分が小さい構造的な負けの姿を置いているため。利益の倍率で出した値と食い違わない。
確率:負債が重い会社では、10 年のうちに借り換えの失敗・税制の不利・規制の逆風・南米の政策の変更のどれか 1 つが致命傷になる。独立系の悲観の確率は NRG 16%・VST 14% で、AES は NRG(負債が大きい)と同じ 16% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
契約型の再生可能エネルギー・蓄電
風力・太陽光・蓄電池。10〜20 年の PPA(データセンター向けを含む)で固定価格を得る。開発サービス(売却益に近い収入)も含む。
| 数量運転容量(GW) | 価格1 GW あたりの年間売上(百万ドル/GW。電力+容量+開発サービス) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 18.0 | 222 | 40 | 6 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 278 | 100 | 15 |
取り方:運転容量は風力・太陽光・蓄電池で約 18 GW(推定。連結ベース)。SBU の開示が画像のみで文字では取れないため、全体の売上 122 億ドルを 3 つに分けた推定(約 40 億ドル)。1 GW あたり 222 百万ドルは、太陽光の 100〜130・風力 190 前後・蓄電池・開発サービスの混合。営業利益 6 億ドルは減損・デリバティブの評価を含む報告値に近い推定。
規制公益(インディアナ・オハイオ)
AES インディアナと AES オハイオ。顧客約 110 万件。料金は認可されたレートベースで決まる。
| 数量販売電力量(TWh。数量=市場。独占地域なのでシェアは 100%) | 価格1 MWh あたりの売上($/MWh。燃料費・購入電力費の転嫁を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 32.0 | 122 | 39 | 7 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 176 | 67 | 12 |
取り方:販売電力量はインディアナ約 17 TWh・オハイオ(配電)約 15 TWh の推定、計 32 TWh。1 MWh あたり 122 $/MWh は、売上約 39 億ドル(推定)÷ 販売量。レートベース(約 100 億ドル規模)の伸びと燃料費の転嫁が価格に入る。営業利益 6.5 億ドルは推定。
南米などの発電(エネルギーインフラ)
チリ・コロンビア・パナマ・ドミニカ・メキシコ・ブルガリアなどのガス・石炭・水力。長期契約で燃料費は転嫁。
| 数量発電・販売量(TWh) | 価格1 MWh あたりの売上($/MWh) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 80.0 | 54 | 43 | 8 |
| 10 年後 中立 | 76.0 | 76 | 58 | 10 |
取り方:発電・販売量は約 80 TWh(推定。石炭の売却で縮小中)、価格は約 54 $/MWh(推定。長期契約の電力量価格と燃料転嫁の平均)。営業利益 8.3 億ドルは 3 つの中で最も高い利益率(約 19%)の推定。本社費 −0.5 億ドルを調整に置き、全体を kabufu の営業利益 20.3 億ドルに合わせた。
リスクと懸念
負債の重さと借り換え
連結の純有利子負債は 287 億ドルで時価総額の約 2.7 倍、自己資本比率 13%。借り換えは約 5.75% で行われ、10 年で約 5 億ドルの利払いの増加(税引き前)が見込まれる。信用の収縮期に借り換えが難しくなれば、株主の持ち分が一気に削られる。2008〜09 年は株価が 73% 下がった。
フリーキャッシュフローが毎年マイナス
2023〜2025 年のフリーキャッシュフローは −47・−46・−16 億ドル。成長を借金・少数株主・資産売却で賄っており、純負債は 2022 年の 213 億ドルから 287 億ドルへ増えた。成長投資の収益が借金の金利を上回らなければ、規模が増えても株主の価値は増えない。
利益の質(減損と評価損益)
2025 年は GAAP の純利益 9.4 億ドルに対し、調整後は約 16.7 億ドル。減損・デリバティブ・債務消却損で差が 7 億ドル超。2026 年の上半期は純利益 6.62 億ドルだが、デリバティブの評価益・フルエンス株の売却益を含み、持続しない。正常化値 12 億ドルはこの慢性的な費用の 3 割強しか戻していない。
税制と補助(風力・太陽光の控除の縮小)
2025 年の税制法で風力・太陽光の税額控除が着工期限つきで縮み、新規案件の採算が下がる(蓄電池は残る)。AES は 2027 年までの建設中 4.8 GW を持つが、その後の案件の採算と、控除を売る市場(譲渡)の価格が利益に直結する。
規制公益の許可利益率と電気料金への反発
AES インディアナ・AES オハイオはレートベースの伸びが利益の柱だが、家庭向けの電気料金の上昇(2026 年に約 5%、東海岸の州で 12% 台)への政治的な反発で、料金改定の認可が遅れ・縮む恐れがある。許可利益率が 1 ポイント下がると規制公益の利益が約 1 割減る。
南米の政策・通貨・天候
チリの石炭の閉鎖と昼間の卸価格の低下、コロンビアの水力の天候(2024 年のチボルの洪水)、メキシコ・ブルガリアの政策、通貨の下落が利益に効く。南米は 3 部門で最も利益率が高く、ここが崩れると全体の利払いを支えられない。
買収提案の不成立(単体に戻る)
GIP・EQT などの提案は株主が承認したが、連邦・インディアナ州・オハイオ州・海外各国の承認が未了。成立しなければ今の株価(買収価格に張り付いている)は単体の価値へ戻る。この評価は買収を入れていないので、成立した場合は株価が買収価格で打ち止めになる点だけが違う。
今後の分かれ目
- 買収提案が承認を得て完了する
- 株主は現金で買収価格を受け取り、株価は買収価格で打ち止め。式の本質価値より低くても、成立後の値上がりは無い。この評価は単体なので、成立した場合は持ち分の価値は買収価格に確定する。
- 買収提案が規制当局の反対や条件変更で破談になる
- 株価は単体の価値へ戻る。負債の重さが再び効くため、やや悲観・悲観の確率が上がり、式の本質価値と今の値の差が縮むか、割高の側へ動く。
- データセンター向けの新規の長期契約(1 GW 以上・20 年)が決まる
- 再エネの売上が固定され、1 GW あたり売上と利益率が上がる。楽観・やや楽観の確率を上げ、10 年の純利益を 1〜2 億ドル上げる。
- 風力・太陽光の税額控除が前倒しで終わる、または控除の売却価格が大きく下がる
- 再エネの新設の採算が悪化し、建設中以外の案件が止まる。やや悲観の確率を上げる。蓄電池への組み替えが間に合うかが分かれ目。
- 金利がさらに上がる(10 年国債 5% 超)
- 借り換えで利払いが想定(約 5.75%)を超え、持ち分の純利益が数億ドル削られる。倍率は物価と金利を動かさない前提のままで、利益の側に効かせる。
- 資産売却(南米の石炭・再エネの少数持ち分)が進み、純負債が減る
- 利払いが減り、悲観の確率を下げられる。式の資本コストは変えず、確率の側に効かせる。
見ておくもの
- 買収提案の規制承認(連邦・インディアナ州・オハイオ州・海外)と完了の時期
- 署名済み PPA バックログ(11.1 GW)の運転入りの進み具合と、建設中 4.8 GW の遅延
- 親会社のフリーキャッシュフロー(年 11〜12 億ドル規模)と純有利子負債の推移
- GAAP の純利益と調整後との差(減損・デリバティブ)、2026 年の通期の純利益
- AES インディアナ・AES オハイオの料金改定の認可(許可利益率)と電気料金への政治的反発
- 風力・太陽光の税額控除の着工期限と、控除の売却価格
- チリ・コロンビアの卸価格・水力の天候・石炭の閉鎖の進み具合
倍率と資本コストの決め方
今の PER 11.4 倍を見る前に、数量と価格でセグメントを積み、純利益と自己資本を決め、倍率は利益ベースの正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g)(RONIC=k+残る割合×(事業の ROE−k)、moat=weak)の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は正当化 PER 11.5 倍(g 4.0%・RONIC 10.8%・k 9.50%)の 8.5 割の 9.7 倍。悲観の床は過去の PBR でなく、その筋書きの稼ぐ力(純利益 ÷ k)から置いた。今の値段に寄せていない。結論は、総合で今の時価総額の約 12% 下の「やや割高」。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β 2.80 × 5%。基本 8.0%(米国)+ quality +1.5% = 9.5%。内訳は借金 +1.0%(純有利子負債は時価総額の約 2.7 倍・自己資本比率 13%、利払いが営業利益の 8 割近くを食う)、寿命 +0.5%(再エネの入札競争・南米の石炭の閉鎖・税額控除の縮小で事業の寿命が読みにくい)、循環 0・値決め力 0。連結の負債の約 2 割は少数株主の持ち分で、AES の持ち分の純負債は契約の事業価値 334 億ドル − 株式価値 107 億ドル = 約 227 億ドルと数える。個別のリスク(減損・規制・南米)は k に足さず確率と悲観の深さで表す。