結論
コンステレーション・エナジーは、米国で最大の原子力発電(約 22 GW・年 約 1,830 億 kWh)を持つ独立系の発電・電力販売会社である。2022 年にエクセロンから分離上場し、2026 年 1 月にカルパイン(Calpine)を約 218 億ドル(新株 5,000 万株と現金 約 45 億ドル)で買収して、ガス・地熱・蓄電池など約 23 GW と大きな小売の顧客基盤を加え、総出力は約 55 GW になった。電力の売り先は PJM(米国東部の卸電力市場)が約 7 割を占める。
利益の源は、原子力の電気をいくらで売れるかにほぼ尽きる。市場価格・容量価格・長期の契約価格(メタ、マイクロソフト、アマゾン、グーグルなど)と、原子力の生産税額控除(45U)が効く。2026 年 4〜6 月期の調整後営業利益は 9.2 億ドルで前年同期の約 1.5 倍、通期の調整後 1 株利益の見通しは上方修正され、会社は 2029〜2030 年まで基礎の利益が年 20% 超伸びると示している。一方で GAAP の純利益は時価評価の損益で大きくぶれる。
バリュー投資の観点では、事業の質と値段を分けて見る必要がある。原子力は新設が事実上できず、既存の炉は電力不足の中で価値が上がる。しかし価格を決める力は無く、PJM の容量価格の上限(1 MW・日あたり 325 米ドル)や再規制の議論のように、政治が価格を押さえ込める。資本コストは基本 8.0% に品質の上乗せ(循環 +0.5%・値決め力 +0.5%・寿命 −0.5%)を足した 8.5%。倍率は利益ベースの正当化 PER(moat=strong)の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は正当化 PER 16.3 倍(g 4.0%・RONIC 15.1%)の 7.5 割の 12.3 倍。今の GAAP の PER 37 倍は、この水準を大きく上回る。確率で重ねた総合は今の時価総額の約 28% 下で、結論は「やや割高」である。今の調整後 PER は 22 倍台、GAAP では 37 倍。優良な資産だが、価格を市場と政治が決めるので楽観と悲観の差が大きく、今の値段は利益ベースの正当化 PER に対して高く、安全域はない、というのが結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後にこの事業が存在し今より強いかを問う。原子力の既存炉は、需要が伸び新設が難しい限り、10 年後もより貴重になる公算が高い。堀は広がる。ただし堀の中身は「供給が限られること」であり、価格を決める力ではない。電力は規制と政治が最終的に価格を決める商品で、堀が利益に変わる度合いは政策に左右される。ここが規制公益ではなく独立系の弱さである。
次にオーナー利益を考える。調整後の純利益は 2026 年で約 43 億ドル。原子力は燃料費・保守費が低く、減価償却に近い額を保守投資に回せば、利益の 8〜9 割が株主のものになるが、買収・再稼働・出力増強の成長投資が年 50 億ドル前後あり、残りは自社株買いに回る。安全域では、利益ベースの正当化 PER 16.3 倍(g 4.0%・RONIC 15.1%・k 8.50%・moat=strong)に対して、10 年の中立を 12.3 倍に置いた。今の PER 37 倍はこれより高く、安全域はない。確率で重ねた総合は今の時価総額の約 28% 下で、結論は「やや割高」である。
10 年の筋書きを確率で重ねると、価値は今の時価総額を約 28% 下回り、期待の年率は 3.6% で資本コスト 8.5% に届かない。10 年の構造的な負け(政治・需要の幻)では、悲観の時価総額は今の 1 割台半ばまで下がる。確信度は、原子力の存続は高いが、価格と政治は低い。安全域は厚くないので、買うなら調整の時が良い、というのが本質価値の評価である。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく 3 つ。第 1 に原子力(約 22 GW、イリノイ・ペンシルベニア・ニューヨーク・メリーランドなどの発電所)で、稼働率は 93〜95%、年間約 1,830 億 kWh を発電する。収入は卸電力の市場価格、PJM などの容量収入、州の補助(イリノイ・ニューヨークのゼロ排出クレジット)、データセンターなどとの長期契約、そして 45U の生産税額控除(市場価格が低い時に下支えする)で構成される。燃料費は低く、利益のほとんどは売値で決まる。
第 2 がカルパインから加わったガス・地熱・水力・風力の発電(約 23 GW)で、テキサス・カリフォルニア・PJM に集中する。ガス火力は稼働率が 30〜60% と低く、卸電力と容量の収入、ピーク時の価格の跳ね上がりで稼ぐ。ガスタービンの新設費が 2,000 $/kW を超え納期も 5〜7 年になったので、既存の発電所の価値は上がっている。カルパイン買収の条件で、ブラゾス・バレー(606 MW)の売却が最後に残っている。
第 3 が顧客向けの電力・ガスの販売(法人・自治体・家庭)で、約 250 TWh を売る。売上は大きいが、仕入れを転嫁する事業で営業利益率は 4〜5%。役割は、自社の発電の出口と、ヘッジ(価格変動の保険)を提供して価格の安定した収益にすること。売上の 5 割強はこの部門だが、利益への寄与は 1 割強にとどまる。
優良さと弱いところ
優良さの中心は原子力の堀である。第 1 に新設ができない。米国で新しい大型炉は 2 基しか完成しておらず、許認可・費用・工期のどれも民間には重い。第 2 に既存炉の価値が上がっている。電力需要は 2 年で 3.8% 増え、データセンターが大きく伸ばす。第 3 に長期契約(メタのクリントン 約 1,121 MW・20 年、マイクロソフトのクレーン・20 年、アマゾンのカルバート・クリフス・20 年、グーグルの 890 MW、2026 年の 920 MW の原子力の契約)で、価格を 10〜20 年固定できる。ただし契約の相手は卸の市場価格より高い値を払ってもよい大口顧客に限られる。
弱い所は 4 つある。第 1 に価格を決める力が無い。卸価格・容量価格は市場と規制で決まり、PJM の容量価格には上限が付き、延長の申請も出ている。2026 年 1 月には連邦政府と州知事がデータセンターの電力を別枠で調達する案を示し、独立系の取り分に切り込む動きが現れた。第 2 に利益の質が悪い。GAAP の純利益は時価評価の損益で動き、2025 年は営業利益 40 億ドルに対し純利益 23 億ドル。調整後の数字を基準にしても、税額控除の売却・ヘッジの評価益が混ざる。第 3 にカルパイン買収後の負債とのれん(115 億ドル)。有利子負債は約 247 億ドルに増え、利払いは年 11 億ドル近い。第 4 に PJM への集中(約 69%)。
資本効率は、自己資本が小さい(のれんを除けば 200 億ドル台)ため ROE は 15% 前後に見えるが、原子力の簿価が安いことによる面が大きく、新規投資の収益とは別物。経営は自社株買いを積極的に行っており(2026 年上半期 約 20 億ドル)、資本配分の姿勢は株主寄りだが、株価が高い時の買いは価値を壊す。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の電力需要は 2025 年に過去最高の 4,195 TWh、EIA は 2027 年まで年 +1.9% と見る。伸びを引っ張るのは商業用(データセンター)で、発表済みの大口プロジェクトは約 55 GW。ただし引き合いは確約と別で、ERCOT の 2030 年の見通しが 208 GW から 138 GW に切り下げられたように、需要は幻になりうる。供給側は、石炭の廃止が進み、ガスタービンが 5〜7 年待ちで、新設の複合サイクルは 2,000 $/kW を超える。需給がひっ迫して既存発電所の価値が上がるのが独立系にとっての追い風。
価格の仕組みでは、PJM の容量オークションが 2028/29 年分で上限の 1 MW・日あたり 325 米ドルに 3 年連続で張り付き、必要量に 6,831 MW 足りなかった。上限が無ければ約 555 米ドルとされ、政治が価格を押さえているのが実態である。2029/30 年分(2026 年 12 月)までの措置を延ばすかが最大の分かれ目になる。住宅用の電気料金は 2026 年に約 5% 上がり、東海岸では 12% 超の州もあり、上がる請求書は再規制・補助つき発電・大口負荷の別料金化といった政治の標的になる。
競合では、独立系はビストラ・NRG エナジーと寡占(PJM と ERCOT の大部分)で、ビストラもメタ・AWS と長期契約を結び、競争は価格より顧客の取り合いになる。規制公益(デューク・サザン・ドミニオン)が自前の発電所を建てる動きは、規制料金で回収できるので独立系より有利で、競合になりうる。2026 年は買収で規模を取りに行く時代で、コンステレーションのカルパイン、NRG の LS パワー、ビストラの原子力・ガスの買収が続く。
原子力の税額控除(45U)は 2032 年まで残る見込みで、風力・太陽光のような期限の問題は小さい。税制と許認可の風向きは原子力に好意的で(免許更新・出力増強・再稼働を後押し)、ここは追い風である。
資本政策と M&A
資本政策は、投資適格の維持・配当の年 10% 以上の増加・二桁の収益が見込める成長投資・自社株買いの順。自社株買いの枠は 50 億ドルで、2026 年上半期に約 20 億ドルを実行した(カルパインで増えた 5,000 万株の約 2 割を消した計算)。配当は 2025 年が約 5 億ドルと利益の 2 割弱で低く、還元の主役は自社株買いである。
買収は、2026 年のカルパイン(約 218 億ドル、現金 約 45 億ドル+新株)と、2026 年 9 月に発表したロードアイランド州エネルギーセンターの買収(シェルから)。ガス火力を足して、ヘッジと小売でつなぐ戦略。のれんが 115 億ドルに膨らみ、長期債は 72 億ドルから 191 億ドルへ増えた。成長投資は、クレーン(スリーマイル 1 号機)の再稼働(2027 年目標)、クリントン・ドレスデンなどの出力増強、ジンナ・ナイン・マイル・ポイントの免許更新(2049 年まで)に向かう。免許更新・増強・需要対応で最大 9,300 MW を足せると会社は言う。
再編では、買収される側にはなりにくい(時価総額が約 980 億ドル)。他の独立系や規制公益の発電を買う側に回る可能性は残り、規制承認(FERC・司法省)の条件として資産売却を課される。ガバナンスは単一クラスの株式で、特に目立つ問題は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
原子力は米国で最も価値が上がっている資産で、PJM の容量が必要量に 6,800 MW 足りない状況は需給のひっ迫が構造的であることを示す。メタ・マイクロソフト・アマゾン・グーグルが 15〜20 年の契約で原子力の電気を買い、卸の市場価格より高い値(クレーンは報道で最大 115 $/MWh)を払うのは、企業が確実な電源に価値を見ているからだ。2025〜2026 年の契約は実現価格を引き上げ、2027 年のクリントン(メタ)、クレーンの再稼働、2029〜2032 年の 920 MW の契約が順に利益に乗る。
カルパインの買収で、ガス・地熱の約 23 GW と小売を持ち、ヘッジと顧客提供の力が上がる。2026 年上半期だけで自社株買い 約 20 億ドル。会社は基礎の利益が 2029〜2030 年まで年 20% 超と言い、2026 年の見通しも上方修正された。免許更新で 2049 年まで稼働し、出力増強と再稼働で最大 9,300 MW を足せる。AI の電力需要は始まったばかりで、10 年後の実現価格は物価(年 3.5%)を超えて上がり、PER も金利の高さに関わらず希少性で正当化 PER の上限(17 倍)の近くまで届く。
慎重な見方
今の調整後の PER は 22 倍台で、GAAP では 37 倍。成熟後の倍率を業界の目安 16〜18 倍と見れば、今の値段は需要の確約と高い契約価格を先に織り込んでいる。2026 年 3 月に会社が示した見通しは市場予想を下回って株は 8% 下がり、大型の新規契約が無かった点が嫌われた。引き合いは約束ではなく、ERCOT の需要の見通しが 3 割以上切り下げられたことが示すとおり、データセンターの需要は幻になりうる。
最大の問題は価格を決める力が無いこと。PJM の容量価格は上限 325 米ドル(1 MW・日)に 3 年連続で張り付き、連邦政府と州知事は 1 月にデータセンターの電力の緊急調達を提案し、料金 +5%(東海岸は +12%)が政治の標的になっている。上限は恒久化されうるし、原子力に補助や別の規制が及ぶ前例はニューヨークやイリノイにある。利益の質も低い:GAAP は時価評価で動き、調整後も税額控除の売却益を含む。カルパインでのれん 115 億ドル、負債 247 億ドル、利払いは年 11 億ドル。2021 年 2 月の寒波では他社が営業赤字になった。倍率は 22 倍から 16〜18 倍へ戻るだけで、利益が 1.5 倍に伸びても株価は上がらない。
どちらに重みを置いたか
事業の質(原子力の希少性)は強気の見方が強い。しかし値段と政治は慎重な見方が強い。会社が示す年 20% 超の成長は、基準年が不明確で、自社株買いによる 1 株の増加も混ざる。倍率は正当化 PER の 7〜10 割に置いた(10 年の中立 12.3 倍=正当化 PER 16.3 倍の 7.5 割)。今の PER を見て寄せていない。確率は、楽観・やや楽観を 32%、悲観・やや悲観を 32% に置いた。価格の上限・再規制・需要の幻のリスクが累積するので悲観を厚く置く。安全域は厚くない。筋書きを確率で重ねた総合は今の時価総額の約 28% 下で、結論は「やや割高」である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 285.14 ドル1,026 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 102.96 ドル371 億ドル)。 今の値に割り戻すと 194.59 ドル701 億ドル、今との差 −23.8%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 614.25 ドル2,211 億ドル | 150.28 ドル541 億ドル | +199.6% | +11.6% | 76.45 ドル275 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 416.31 ドル1,499 億ドル | 128.33 ドル462 億ドル | +113.4% | +7.9% | 119.82 ドル431 億ドル |
| 中立 | 36% | 268.83 ドル968 億ドル | 108.61 ドル391 億ドル | +47.9% | +4.0% | 135.88 ドル489 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 152.53 ドル549 億ドル | 75.83 ドル273 億ドル | −10.5% | −1.1% | 45.67 ドル164 億ドル |
| 悲観 | 12% | 40.33 ドル145 億ドル | 45.28 ドル163 億ドル | −66.5% | −10.3% | 10.27 ドル37 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 285.14 ドル1,026 億ドル | 102.96 ドル371 億ドル | +52.1% | +4.3% | 388.10 ドル1,397 億ドル |
今の株価時価総額 255.21 ドル919 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:需給のひっ迫が続き、原子力が新設費に近い価格で売れる 利益 135 億ドル · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 614.25 ドル2,211 億ドル
10 年後(2035 年末)、電力需要は年 2% 超で伸び続け、新設のガスが 2,000 $/kW 超・納期 5〜7 年のままで、既存の原子力・ガスの価値が新設費に近づく。原子力の実現価格は 115 $/MWh(年 +6%)、発電量は再稼働・出力増強・免許更新で 200 TWh。ガスも 110 $/MWh、営業利益率 40%。連結の調整後純利益は約 136 億ドル(2026 年の約 3 倍)。配当は年 8% 前後、自社株買いは 10 年で約 450 億ドル。金額は会社全体の値。倍率は 正当化 PER 17.8 倍に対して 16.4 倍(9.2 割)に置いた(容量価格の上限が外れ原子力が新設費に近い価格で売れる筋書きでも、価格を決めるのは市場と政治なので堀(moat=strong)でも上限の 9.2 割)。
- 原子力発電:数量 200(発電量(TWh))× 価格 115(実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量+契約+補助。税額控除は営業利益に含み価格に入れない))→ 売上 230 億ドル・営業利益 127 億ドル。発電量×実現価格
- ガス・地熱・再エネ発電:数量 120(発電量(TWh))× 価格 110(実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量))→ 売上 132 億ドル・営業利益 53 億ドル。カルパインを含む
- 顧客向けの電力・ガス販売:数量 270(販売電力量(TWh))× 価格 135(1 MWh あたりの顧客への売値($/MWh))→ 売上 364 億ドル・営業利益 18 億ドル。小売・法人販売
倍率:正当化 PER 17.8 倍(g 4.0%、RONIC 20.1%=k 8.50%+残る割合 0.67×(事業の ROE 26.0%−k)、moat=strong。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 16.4 倍(9.2 割)に置いた。容量価格の上限が外れ原子力が新設費に近い価格で売れる筋書きでも、価格を決めるのは市場と政治なので堀(moat=strong)でも上限の 9.2 割。g の内訳:原子力の発電量は再稼働・出力増強で実質 +1〜2%、価格は物価(3.5%)に契約更新のずれを引いた伸びで、名目の長期 g は 3.5〜4.5%(式では 4.0%)。純利益は GAAP の考え方。
確率:データセンター・電化の需要が現実になり、価格の上限が外れ、原子力の増強と再稼働が予定どおり進む、の同時成立。10 年で 1 割。
やや楽観 22% やや楽観:契約が厚く、価格は物価を少し上回る 利益 103 億ドル · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 416.31 ドル1,499 億ドル
10 年後、原子力の実現価格は 100 $/MWh(年 +4.9%)、発電量は 198 TWh。ガスは 95 $/MWh、営業利益率 36%、小売は物価並みに値上げ。連結の調整後純利益は約 102 億ドル。配当と自社株買いの合計は 10 年で約 460 億ドル(連結)。長期契約の入れ替えが年 4〜5% の価格上昇を支え、PJM の容量価格は 300〜350 米ドル(1 MW・日)。クレーン・クリントンの契約価格が通年で乗り、免許更新で 2049 年までの稼働が見えるので、原子力の利益は 2035 年まで途切れず伸びる。小売は物価並みに値上げし、カルパインの統合の効果で利ざやも少し改善する。ただし 45U は 2032 年に終わり、新規供給と政治の押さえで価格は新設費までは届かない。倍率は 正当化 PER 17.1 倍に対して 14.6 倍(8.5 割)に置いた(契約の積み上がりが続くが、45U の終了と政治の押さえが残るので上限の 8.5 割)。
- 原子力発電:数量 198(発電量(TWh))× 価格 100(実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量+契約+補助。税額控除は営業利益に含み価格に入れない))→ 売上 198 億ドル・営業利益 99 億ドル。発電量×実現価格
- ガス・地熱・再エネ発電:数量 116(発電量(TWh))× 価格 95(実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量))→ 売上 110 億ドル・営業利益 40 億ドル。カルパインを含む
- 顧客向けの電力・ガス販売:数量 265(販売電力量(TWh))× 価格 134(1 MWh あたりの顧客への売値($/MWh))→ 売上 355 億ドル・営業利益 16 億ドル。小売・法人販売
倍率:正当化 PER 17.1 倍(g 4.0%、RONIC 17.4%=k 8.50%+残る割合 0.67×(事業の ROE 21.9%−k)、moat=strong。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 14.6 倍(8.5 割)に置いた。契約の積み上がりが続くが、45U の終了と政治の押さえが残るので上限の 8.5 割。g の内訳:原子力の発電量は再稼働・出力増強で実質 +1〜2%、価格は物価(3.5%)に契約更新のずれを引いた伸びで、名目の長期 g は 3.5〜4.5%(式では 4.0%)。純利益は GAAP の考え方。
確率:需要が現実になり、政治の抑え込みも限定的。ただし 45U の期限と新規供給で上限がある。
中立 36% 中立:希少性は保たれるが、政治が価格の上昇を押さえる 利益 79 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 268.83 ドル968 億ドル
10 年後、原子力の実現価格は 90 $/MWh(年 +3.8%。業界ノートの 85〜95)、発電量は 195 TWh(再稼働・増強・免許更新の分が増える)。45U は 2032 年に終わり営業利益率は 46%。ガスは 112 TWh・85 $/MWh、営業利益率 33%。小売は 260 TWh・132 $/MWh で営業利益率 4%。連結の調整後純利益は約 79 億ドル(2028 年から年 6%)。配当は 10 年で約 95 億ドル、自社株買いは約 310 億ドル、株式報酬の分を引いた連結の正味の還元は約 390 億ドル。倍率は 正当化 PER 16.3 倍に対して 12.2 倍(7.5 割)に置いた(希少性は保たれるが、価格は市場と政治が決め利益の振れが大きいため上限の 7.5 割(景気と政治の振れを倍率に入れる))。ROE は買収ののれんを含めて 18% 前後、のれんを除くと 25%。
- 原子力発電:数量 195(発電量(TWh))× 価格 90(実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量+契約+補助。税額控除は営業利益に含み価格に入れない))→ 売上 176 億ドル・営業利益 81 億ドル。発電量×実現価格
- ガス・地熱・再エネ発電:数量 112(発電量(TWh))× 価格 85(実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量))→ 売上 95 億ドル・営業利益 31 億ドル。カルパインを含む
- 顧客向けの電力・ガス販売:数量 260(販売電力量(TWh))× 価格 132(1 MWh あたりの顧客への売値($/MWh))→ 売上 343 億ドル・営業利益 14 億ドル。小売・法人販売
倍率:正当化 PER 16.3 倍(g 4.0%、RONIC 15.1%=k 8.50%+残る割合 0.67×(事業の ROE 18.4%−k)、moat=strong。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 12.2 倍(7.5 割)に置いた。希少性は保たれるが、価格は市場と政治が決め利益の振れが大きいため上限の 7.5 割(景気と政治の振れを倍率に入れる)。g の内訳:原子力の発電量は再稼働・出力増強で実質 +1〜2%、価格は物価(3.5%)に契約更新のずれを引いた伸びで、名目の長期 g は 3.5〜4.5%(式では 4.0%)。純利益は GAAP の考え方。
確率:議論の落としどころ。原子力の存続は高い確度で確かだが、価格は物価に実質 +1% 以内の範囲に政治が押さえる。
やや悲観 20% やや悲観:価格の上限が定着し、税額控除も終わる 利益 52 億ドル · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 152.53 ドル549 億ドル
10 年後、PJM の容量価格の上限は恒久化し、データセンターの契約も新設費に届かない水準で決まって、原子力の実現価格は 78 $/MWh(年 +2.3%)にとどまる。ガスは新設の増加で稼働率が上がらず営業利益率 27%。小売の利ざやも薄い。連結の調整後純利益は約 52 億ドルで、2026 年の水準をわずかに上回る程度。利払いは約 12 億ドルで、自社株買いは年 20 億ドル前後に落ちる。新設のガス・蓄電池が増え、ガスの稼働率と容量収入が伸びない一方、人件費・資材は物価で上がるので、営業利益率は原子力で 40%、ガスで 27% まで下がる。データセンターの需要は半分程度しか実現せず、契約の更新も既存の価格に近い水準でまとまる。倍率は 正当化 PER 15.1 倍に対して 10.6 倍(7.0 割)に置いた(価格が新設費に届かず利益が伸びないので、上限の 7.0 割(1÷k×0.95 が床))。
- 原子力発電:数量 193(発電量(TWh))× 価格 78(実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量+契約+補助。税額控除は営業利益に含み価格に入れない))→ 売上 151 億ドル・営業利益 60 億ドル。発電量×実現価格
- ガス・地熱・再エネ発電:数量 108(発電量(TWh))× 価格 72(実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量))→ 売上 78 億ドル・営業利益 21 億ドル。カルパインを含む
- 顧客向けの電力・ガス販売:数量 255(販売電力量(TWh))× 価格 130(1 MWh あたりの顧客への売値($/MWh))→ 売上 332 億ドル・営業利益 12 億ドル。小売・法人販売
倍率:正当化 PER 15.1 倍(g 4.0%、RONIC 12.5%=k 8.50%+残る割合 0.67×(事業の ROE 14.4%−k)、moat=strong。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 10.6 倍(7.0 割)に置いた。価格が新設費に届かず利益が伸びないので、上限の 7.0 割(1÷k×0.95 が床)。g の内訳:原子力の発電量は再稼働・出力増強で実質 +1〜2%、価格は物価(3.5%)に契約更新のずれを引いた伸びで、名目の長期 g は 3.5〜4.5%(式では 4.0%)。純利益は GAAP の考え方。
確率:政治の抑え込みは 2〜3 割の確率で起こり、10 年では累積する。2032 年の 45U の終了も重なる。
悲観 12% 悲観:構造的に負ける(政治・需要の幻・再規制) 利益 23 億ドル · PBR 1.0 倍 · 株価時価総額 40.33 ドル145 億ドル
10 年後、PJM 域内で「発電を規制公益に戻す」再規制か、原子力への価格規制・補助つき調達が実現し、独立系の卸電力の価値が構造的に下がる。データセンターの需要は想定の半分しか実現せず、新設のガス・蓄電池が過剰供給で、原子力の実現価格は 66 $/MWh(年 +0.6%)。ガスは営業利益率 18%。利払い 13 億ドルとのれん 115 億ドルの一部の減損で、連結の調整後純利益は約 23 億ドル、自己資本 310 億ドル。もう優良ではなくなっている。今の自己資本 145 億ドルに 1.0 倍を掛けて測り、時価総額は今の 1 割台半ば。
- 原子力発電:数量 188(発電量(TWh))× 価格 66(実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量+契約+補助。税額控除は営業利益に含み価格に入れない))→ 売上 124 億ドル・営業利益 40 億ドル。発電量×実現価格
- ガス・地熱・再エネ発電:数量 100(発電量(TWh))× 価格 55(実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量))→ 売上 55 億ドル・営業利益 10 億ドル。カルパインを含む
- 顧客向けの電力・ガス販売:数量 250(販売電力量(TWh))× 価格 125(1 MWh あたりの顧客への売値($/MWh))→ 売上 312 億ドル・営業利益 6 億ドル。小売・法人販売
倍率:悲観の床は今の自己資本 145 億ドルに 1.0 倍(145 億ドル)。稼ぐ力(純利益 23 ÷ k 8.5% = 271 億ドル)の 54% に置いた。構造的に負けた姿で、のれんを除いた ROE は約 9.8% と k に近く、のれん 115 億ドルの一部の減損も見込む。市場の倍率からは置いていない。
確率:独立系の存立そのものが政治に左右される。前例(2014 年のエナジー・フューチャー・ホールディングスの破産、2021 年の寒波)と PJM 域内の再規制の議論から 1 割強と置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
原子力発電
米国最大の原子力(約 22 GW)。卸電力・容量・州の補助・長期契約・45U 税額控除で稼ぐ。営業利益は税額控除を含む。
| 数量発電量(TWh) | 価格実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量+契約+補助。税額控除は営業利益に含み価格に入れない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 183 | 62 | 113 | 42 |
| 10 年後 中立 | 195 | 90 | 176 | 81 |
取り方:発電量は稼働率 93〜95%・約 22 GW から約 183 TWh(推定)。実現価格は 62 $/MWh(推定)。売上 = TWh × $/MWh × 0.01(億ドル)。営業利益は 45U の税額控除を含む推定。
ガス・地熱・再エネ発電
2025 年は旧来のガス・水力・風力・太陽光のみ。2026 年 1 月にカルパインの約 23 GW のガス・地熱・蓄電池が加わる。
| 数量発電量(TWh) | 価格実現した 1 MWh あたりの売値($/MWh。電力+容量) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 22.0 | 52 | 11 | 3 |
| 10 年後 中立 | 112 | 85 | 95 | 31 |
取り方:2025 年末にはカルパインが連結に入っていないので旧来の設備のみ(推定 22 TWh・52 $/MWh)。カルパイン後は発電量 約 100 TWh 台になる(筋書きで置く)。
顧客向けの電力・ガス販売
法人・自治体・家庭への電力・ガスの販売。仕入れを転嫁し、ヘッジの提供で薄い利ざやを取る。カルパインの小売を加えて大きくなる。
| 数量販売電力量(TWh) | 価格1 MWh あたりの顧客への売値($/MWh) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 150 | 96 | 144 | 6 |
| 10 年後 中立 | 260 | 132 | 343 | 14 |
取り方:2025 年の売上 268 億ドルから発電の売上(約 124)を引いた残りを顧客向けと置き、約 150 TWh・96 $/MWh(推定)。営業利益率 4% 前後。
リスクと懸念
PJM の価格の枠の延長・恒久化と再規制
容量価格の上限(1 MW・日あたり 325 米ドル)と下限の枠は 2029/30 年分までの措置で、延長の申請が出ている。上がる電気料金(住宅 +5%・東海岸 +12% 超)への政治の反発は、上限の恒久化や、データセンターの電力の別枠調達、発電を規制公益に戻す議論につながり、発電の約 7 割が PJM に集まる同社に直撃する。
データセンター需要の幻
引き合いは約束ではない。ERCOT は 2030 年の見通しを 208 GW から 138 GW に切り下げ、テキサス州知事は待ち行列の監査を命じた。2026 年 3 月に同社が大型の新規契約を示せず株が 8% 下がったように、確約になる契約の量と価格が評価を左右する。AI の効率化で需要が半分になれば、価格が新設費に届かなくなる。
利益の質(時価評価・税額控除・調整後の数字)
GAAP の純利益は時価評価の損益で動き、2025 年は営業利益 40 億ドルに対し純利益 23 億ドル、2026 年 4〜6 月期も調整後 9.2 億ドルに対し GAAP 5.1 億ドル。調整後の数字はヘッジの評価益や税額控除の売却を含み、オーナー利益と同じではない。45U は 2032 年まで。
カルパイン買収後の負債とのれん
有利子負債は 2025 年末の約 95 億ドルから約 247 億ドルに増え、のれんは 4 億ドルから 115 億ドルに増えた。利払いは年 11 億ドル近く。自社株買いを年 40 億ドル近く続けながら、成長投資にも年 50 億ドル前後を回しており、不況や価格の下落が来ると投資適格の維持が試される。
寒波・猛暑などの緊急時の損失
2021 年 2 月の寒波では、ビストラが営業赤字・NRG も巨額の損失を出し、テキサスの卸価格が上限の 9,000 $/MWh に張り付いた。カルパインでテキサスの比重が上がり、小売の顧客への供給義務もあるので、緊急時の損失は筋書きの下振れ要因として残る。
原子力固有のリスク(停止・許認可・資産の老朽)
2026 年 4〜6 月期は定期点検が 86 日(前年 41 日)で原子力の稼働率が 93.0% に下がった。クレーン(スリーマイル 1 号機)の再稼働は 2027 年が目標で、遅れる前例がある。事故や規制の変更が起これば、収益の中心が止まる。
自社株買いの価格規律
2026 年上半期に約 20 億ドルを買い、枠は 50 億ドル。還元の主役が自社株買いで配当が低いので、株価が式の価値(10 年後の中立で PER 12 倍前後)より高い水準で買い続けると、残る株主の価値を落とし、負債の返済も遅れる。
今後の分かれ目
- PJM の価格の枠が 2029/30 年分の後も恒久化される
- 容量収入の上振れが消え、原子力の実現価格の上昇は年 2〜3% に落ちる。やや悲観・悲観の確率を上げ、10 年の PER を 1 倍下げて見る。
- PJM の上限が外れ、容量価格が 400 米ドル(1 MW・日)を超える
- 原子力・ガスの実現価格が新設費に近づき、10 年後の純利益が 3〜4 割増える。楽観・やや楽観の確率を上げる。ただし政治の反発も強まるので、PER は 1 倍ほどしか上げない。
- 大型データセンターとの新規契約(1 GW 以上・20 年・100 $/MWh 超)が決まる
- 原子力の契約比率が上がり、利益のぶれが小さくなる。倍率を 1〜1.5 倍上げて見直す。
- クレーンの再稼働が 2028 年以降にずれる、または原子力で重い事故・長期停止が起きる
- 収益に加える約 835 MW が遅れ、数年のあいだ純利益が数億ドル下がる。許認可の信頼も下がるので悲観を厚くする。
- 不況でガス・卸電力の価格が 3〜4 割落ちる
- ガス・小売の利益が崩れ、純利益はならして 3 割減。PBR 1 倍前後が床で、自社株買いを止めて配当を守る。
- 自社株買いが株価の高い時に急ぎ、負債が増える
- オーナー利益の価値が薄まる。資本配分の評価を下げる。
見ておくもの
- PJM の容量オークション(2029/30 年分・2026 年 12 月)と価格の枠の延長の可否
- データセンター・大企業との長期契約の新規の量と価格($/MWh)、グーグル 890 MW・アマゾン 190 MW の次
- クレーンの再稼働の時期(2027 年目標)と NRC の最終の許可
- 調整後 1 株利益の実績(2026 年の見通し 11.50〜12.50)と GAAP との差、自社株買いの額と平均の取得単価
- 純有利子負債・利払いの推移と格付け、ブラゾス・バレーの売却の完了
- 電気料金の上昇率と PJM 域内の再規制・補助つき調達の議論
- 2029/30 年以降の長期見通し(年 20% 超の基準年と中身)
倍率と資本コストの決め方
今の PER 37 倍を見る前に、数量と価格でセグメントを積み、純利益と自己資本を決め、倍率は利益ベースの正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g)(RONIC=k+残る割合×(事業の ROE−k)、moat=strong)の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は正当化 PER 16.3 倍(g 4.0%・RONIC 15.1%・k 8.50%)の 7.5 割の 12.3 倍。悲観の床は過去の PBR でなく、今の自己資本と稼ぐ力(純利益 ÷ k)から置いた。今の値段に寄せていない。結論は、総合で今の時価総額の約 28% 下の「やや割高」。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β 1.00 × 5%。基本 8.0%(米国)+ quality +0.5% = 8.5%。内訳は循環 +0.5%(卸電力と容量の価格で利益が大きく振れる)、値決め力 +0.5%(価格は市場と政治が決める。堀は供給の少なさで、価格を決める力ではない)、寿命 −0.5%(原子力の免許は更新され数十年続く。強い堀と同じ理由なので下げは −0.5% まで)、借金 0(純負債は時価総額の約 6%。カルパイン買収の負債は EBITDA の 3 倍弱)。PJM の容量価格の上限・再規制・買収後の負債は k に足さず、筋書きと確率で表した。