結論
アメリカン・ウォーター・ワークスは、米国 14 州で約 1,400 万人に水道・下水を届ける最大の上場水道会社である。収益の約 9 割は州の公益事業委員会が料金を決める規制事業で、残りは米軍基地の給水・排水を請け負う契約事業。利益は、認められた投資残高(レートベース)に許可 ROE を掛けた額で決まり、水の販売量にはほとんど左右されない。
2026 年は投資 約 37 億ドル、通期の調整後利益の見通しを据え置き、長期の利益・配当の成長目標は年 7〜9%。エッセンシャル・ユーティリティーズ(Essential Utilities)との全株式合併は 3 州が承認し、2027 年 3 月末の完了を見込む。ただし合併は未成立なので、本稿は今の会社だけで書いた。
バリュー投資の観点では、水は必需で堀(地域独占・許認可・参入不能)は本物だが、利益の伸びはレートベースの伸びとそれを料金に乗せる政治の許しに完全に依存し、価格を決める力は無い。資本コストは基本 8.0% に品質の上乗せ(循環 −0.5%・値決め力 −0.5%・借金 +1.0%・寿命 −0.5%)を足して 7.5%。倍率は利益ベースの正当化 PER(moat=normal)の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は正当化 PER 14.9 倍(g 4.0%・RONIC 8.4%)の 8.6 割の 12.8 倍。今の GAAP の PER 23.7 倍は、この水準を大きく上回る。確率で重ねた総合は今の時価総額の約 44% 下で、結論は「割高」である。買収でも伸びる会社なのでのれんは除かない。10 年の中立は純利益 約 20 億ドル。優良だが値段が先に行っているというのが結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後もこの事業が存在し今より強いかを問う。水は代替がなく、地域独占の許認可は崩れにくいので、存在は確実で、堀は広がりも狭まりもせず維持される。ただし堀は価格を決める力ではなく、委員会が許す利益の上限でもある。公益事業は成長株と言われるが、実際は投資残高を増やし続ける義務のある会社であり、利益は増えても、そのたびに増資と借入が要る。
次にオーナー利益。純利益 11 億ドルに対し FCF は毎年約 −10 億ドルで、稼いだ利益はすべて設備に回り、さらに配当と増資で資金を継ぎ足している。配当は純利益の 6 割だが、株主が受け取る現金は増資で相殺されるので、1 株あたりの成長は純利益の成長より遅い(10 年で 2〜3 ポイント低い)。オーナー利益は純利益の半分以下というのが実態に近い。経営の資本配分は、規制で回収が認められる投資に限るため、買収で価値を壊す危険は小さいが、合併は規模と引き換えに統合費用とペンシルベニアでの料金の約束を背負う。
安全域は無い。安全域では、利益ベースの正当化 PER 14.9 倍(g 4.0%・RONIC 8.4%・k 7.50%・moat=normal)に対して、10 年の中立を 12.8 倍に置いた。今の PER 23.7 倍はこれより高く、安全域はない。確率で重ねた総合は今の時価総額の約 44% 下で、結論は「割高」である。悲観(手頃さの政治・公営化・PFAS 費用の未回収)では PBR 1.0 倍まで下がる。確信度は、事業の存続は高く、利益の伸びは規制の許しに依存するため中程度である。確率で重ねた期待の年率は 10 年で +0.8% と資本コスト 7.5% に届かない。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つの層からなる。第 1 は規制水道・下水(売上の約 9 割)。約 350 万の接続(家庭・商業・産業・消防)に水を売り、下水を集める。ペンシルベニア・ニュージャージー・ミズーリ・イリノイ・カリフォルニアなど 14 州ごとに料金が決まり、料金申請(レートケース)で、投資した設備・運営費・許可 ROE を回収する。燃料や仕入れの転嫁はほぼ無く、費用は設備の減価償却と人件費・薬品・電力で、営業利益率は約 4 割と電力・ガスより高い。
第 2 が契約事業(マーケット・ベース)で、軍事サービス部門が約 18 の米軍基地の水道・下水を長期契約で運営し、売上の 1 割弱。利益率は規制より低く、国防予算の契約で動く。家庭向けの保険サービス(HOS)は 2025 年に売却済みで、売却に伴う受取利息が一部残る。
第 3 が成長の仕掛けで、小規模水道の買収と、老朽配管の更新・PFAS(有機フッ素化合物)の処理・鉛管の置換え投資である。2026 年の投資 37 億ドルの大部分は管路の更新で、規制で回収が認められた分だけレートベースが増える。販売水量は節水で横ばいから微減であり、成長は水量でなく投資残高と料金の積み上げで決まる。
優良さと弱いところ
堀の中心は地域独占と規制そのものである。水道は競合する配管を引けず、顧客は業者を選べない。その代わり料金は委員会が決め、AWK は価格を決める力を持たない。第 1 の強みは規模で、全米最大のため調達・技術・資金調達の費用が小規模事業者より低く、約 5 万と言われる小さな水道事業者の買収余地を持つ。第 2 は投資の回収の確実さで、2026 年に決着した 3 州(ウェストバージニア・メリーランド・ペンシルベニア)の料金案件は、いずれも投資のほぼ全額の回収が認められた。第 3 は営業利益率 36〜37% と ROE 10% の安定で、過去 12 期の ROE は 8〜11%(2021 年は売却益で 17%)に収まる。
弱い所は 4 つ。第 1 に手頃さ。1 世帯の水道代は所得の 1% 未満が会社の説明だが、東部の低所得層では 2〜3% に達する地域があり、料金上昇が政治の標的になる。第 2 に借金への依存で、自己資本比率は約 3 割、純有利子負債は 158 億ドルで FCF は毎年マイナス(投資が営業の稼ぎを超える)。成長のたびに増資と借入が要る。第 3 に ROE が許可 ROE をいつも下回る(申請から料金改定まで 1 年近い遅れ)。第 4 に PFAS・鉛管の義務化費用が料金に乗らなければ利益を削る。
資本効率は、レートベースを増やすほど利益が増えるので投資すれば増益というのが構造だが、投資で得られる利益は許可 ROE に自己資本比率を掛けた額に限られ、株主にとっての収益性は 10% 前後で頭打ちである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の水道は分散した業界で、約 5 万の水道事業者が残る。大手は AWK、エッセンシャル・ユーティリティーズ、カリフォルニア・ウォーター・サービス、H2O アメリカ(旧 SJW)で、上場の純粋な水道会社は数社しかない。海外の大手ヴェオリア(Veolia)などは米国で契約型の運営をするが、規制水道では AWK が最大である。市場は規制の枠の中での取り合いで、シェアの取り合いは小規模事業者の買収で起こる。AWK は買収でレートベースを年 1〜2% 上乗せできると見られる。
需要の構造は、水量が減り続け(節水機器・人口の減る地域)、投資の義務が増える(古い管の更新・鉛管・PFAS)。AWK は PFAS の対策に約 20 億ドル、鉛管置換え規則に約 15 億ドルを見込む。費用が増えれば料金が上がり、料金が上がれば手頃さが議論になる。委員会は投資の全額を認める傾向だが、ペンシルベニア・ニュージャージーなどで資本効率と手頃さの目が厳しくなっている。
金利の影響は大きい。水道は配当の高い債券の代わりとして買われるため、金利が上がると株価が下がる。2022 年の利上げ局面で AWK は約 30% 下げた(リーマンは約 22%)。10 年国債が 5% の世界では、債券に対する株の優位が小さく、過去の PER 中央 27 倍は低金利の時代のものと見て、そのまま持ち越さない。
競争では、公営化(自治体による買い戻し)が長期の脅威で、民営の水道が高いと受け止められた地域で議論が起こる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向は純利益の 6 割前後、会社は配当を利益と同じ年 7〜9% で増やす。自社株買いは無く、逆に成長の資金は増資で賄う。2026 年 6 月に先渡し契約で約 4.8 億ドル(340 万株)を調達し、さらに約 470 万株分が 2026 年末までに残っている。10 年で見ると自己資本は 108 億ドルから 200〜230 億ドルへ倍増し、その大半は増資と内部留保(純利益から配当を引いた残り)である。
買収は、2026 年にネクサス・ウォーターを予定より早く完了、同年上半期だけで規制事業の買収に 3.5 億ドルを使った。最大の案件がエッセンシャル・ユーティリティーズとの全株式合併で、AWK 株主が 69%、エッセンシャル株主が 31% を持つ。ケンタッキー・オハイオ・バージニアが承認、テキサスは和解の見通しで、ペンシルベニアは 2026 年 8 月に非全員一致の和解が行政法判事に提出され、委員会の承認待ち。完了は 2027 年 3 月末の見込み。まだ成立していない株式交換なので、本稿は相手を足さず今の会社だけで書く。成立した時の得失(規模の拡大・統合費用・ペンシルベニアでの料金の約束)は筋書きの文章と確率で触れる。
ガバナンスは単一クラスの株式で、特に目立つ問題は見当たらない。買われる側になる可能性は時価総額と合併で低い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
水道は需要が景気に左右されず、リーマンでも株価の下げは約 22% で済んだ。AWK は全米最大で、年 8〜9% のレートベースの成長(2026 年の投資 37 億ドル、2026〜2030 年に 190〜200 億ドル)を会社が示し、2026 年に決着した 3 州の料金案件は投資のほぼ全額の回収を認めた。利益と配当を年 7〜9% で増やす目標を、毎年のように達成してきた。
老朽配管の更新・鉛管の置換え・PFAS 処理は義務で、規制が投資を求める以上、回収も認めざるを得ない。合併でエッセンシャルが加われば、全米で唯一の規模の水道になり、調達・資金調達・統合の効果が出る。小規模事業者の買収も続き、レートベースを年 1〜2% 上乗せする。金利が下がらなくても、債券の利回り 5% に対し、物価について行ける配当の伸びと投資の回収は魅力で、規制公益の PER は金利が高くても正当化 PER の上限(15 倍前後)の近くまで評価されうる。10 年後の純利益は 23 億ドルに達し、PER も正当化 PER の上限近く(15 倍前後)を保つ。
慎重な見方
今の PER 23.7 倍は、借金の重さを入れた k 7.5% の成熟後の姿(利益ベースの正当化 PER は 13〜15 倍)より高い。純利益は増えるが、配当と増資を合わせた資金の循環で FCF は毎年マイナスで、自己資本は 10 年で倍になる。1 株の成長は純利益より遅く、会社の言う年 7〜9% の利益成長も、株の増加を引くと 1 株では 5〜6% に落ちる。
最大の問題は手頃さである。会社は水道代が所得の 1% 未満というが、東部の低所得層では 2〜3% に達し、料金の上昇率は年 6% 前後と物価の倍近い。ペンシルベニア・ニュージャージーで委員会の目が厳しくなっており、許可 ROE の引き下げ・投資の一部の否認・料金改定の遅れが起こりうる。公営化の議論も、料金の高い地域で再燃する。PFAS と鉛管の義務化は 35 億ドル規模の費用で、回収が遅れれば利益を削る。合併は統合費用とペンシルベニアでの料金の約束(引き下げ)を伴い、規模の利益が出るかは確かでない。2022 年は金利が上がって 30% 下がった。金利が 5% を超えれば、水道は債券の代わりとして売られる。
どちらに重みを置いたか
事業の質と成長の確実さは強気の見方が強い。倍率は正当化 PER の 7〜10 割に置いた(10 年の中立 12.8 倍=正当化 PER 14.9 倍の 8.6 割)。今の PER を見て寄せていない。会社の言う年 7〜9% の利益成長は、増資で増える株を引いた 1 株では 5〜6% に落ちるので、全部は信じない。確率は強気側 32%・弱気側 30% に置き、手頃さの累積と公営化で悲観を 12% と厚くした。筋書きを確率で重ねた総合は今の時価総額の約 44% 下で、結論は「割高」である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 123.68 ドル241 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 23.18 ドル45 億ドル)。 今の値に割り戻すと 76.15 ドル149 億ドル、今との差 −46.8%、 期待の年率 +0.3%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 173.03 ドル337 億ドル | 23.08 ドル45 億ドル | +36.9% | +3.2% | 15.69 ドル31 億ドル |
| やや楽観 | 24% | 153.03 ドル298 億ドル | 24.10 ドル47 億ドル | +23.7% | +2.1% | 42.51 ドル83 億ドル |
| 中立 | 38% | 131.38 ドル256 億ドル | 23.59 ドル46 億ドル | +8.2% | +0.8% | 58.89 ドル115 億ドル |
| やや悲観 | 18% | 91.74 ドル179 億ドル | 24.62 ドル48 億ドル | −18.8% | −2.1% | 20.94 ドル41 億ドル |
| 悲観 | 12% | 55.59 ドル108 億ドル | 17.95 ドル35 億ドル | −48.7% | −6.4% | 8.82 ドル17 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 123.68 ドル241 億ドル | 23.18 ドル45 億ドル | +2.5% | +0.3% | 146.86 ドル286 億ドル |
今の株価時価総額 143.23 ドル279 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:レートベースが年 9% で伸び、規制の協力が続く 利益 23 億ドル · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 173.03 ドル337 億ドル
10 年後(2035 年末)、レートベースは年 8.8% で約 620 億ドルと 2025 年の 2.3 倍。鉛管・PFAS・老朽管の義務投資がすべて回収され、小規模事業者の買収が接続を 415 万に増やす。1 接続あたり売上は年 7.0%(物価 1.41 倍 × 実質 1.37 倍)で約 2,640 ドル、営業利益率は効率化で 45%。軍事サービスは 23 基地。純利益は約 23 億ドル(2025 年の 2.1 倍)、ROE 9.9%。金利は 5.3% の借り換えで利払いは増えるが、料金で回収される。増資は 10 年で約 57 億ドル、配当は約 102 億ドル。金額は合併を含まない今の会社だけの値。倍率は 正当化 PER 15.4 倍に対して 14.7 倍(9.5 割)に置いた(規制が投資を全額認め料金改定の遅れが縮まる、水道の独占の堅さを見て上限の 9.5 割)。増資の払い込みは 10 年で約 57 億ドル(自己資本の増加 − 純利益の合計 + 配当 から)で、配当 102 億ドルからこれを引いた正味の還元は 45 億ドル。
- 規制水道・下水:数量 4.2(接続数(百万))× 価格 2,640(1 接続あたり年間売上(ドル))→ 売上 110 億ドル・営業利益 49 億ドル。接続数 × 1 接続あたり年間売上
- 契約事業(米軍基地の水道・下水):数量 23.0(契約基地数)× 価格 0.31(1 基地あたり年間売上(億ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。契約基地数 × 1 基地あたり売上
倍率:正当化 PER 15.4 倍(g 4.0%、RONIC 8.7%=k 7.50%+残る割合 0.50×(事業の ROE 9.9%−k)、moat=normal。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 14.7 倍(9.5 割)に置いた。規制が投資を全額認め料金改定の遅れが縮まる、水道の独占の堅さを見て上限の 9.5 割。g の内訳:給水量は実質ほぼ横ばい(接続増 +1.5%・1 件あたり使用量の減少)× 規制資本の伸び(投資が料金の基礎に入り名目で増える)で、名目の長期 g は 4.0〜4.5% だが、k−g≥3.5% の守りで 4.0% に抑えた。純利益は GAAP の考え方。
確率:10 年のあいだ会社目標(年 8〜9%)を保ち、手頃さの政治も抑えられ、合併の効果も出る、の同時成立。10 年で 8% と置く。
やや楽観 24% やや楽観:投資は概ね回収され、料金は物価を上回って上がる 利益 22 億ドル · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 153.03 ドル298 億ドル
10 年後、レートベースは年 8.2% で約 585 億ドル、1 接続あたり売上は年 6.5%(実質で年 +3%)で約 2,532 ドル、接続 410 万。営業利益率は 44.5%。ペンシルベニアなどで許可 ROE が 9.7% 前後に落ち着き、PFAS・鉛管の費用は 8〜9 割が回収される。軍事サービスは 21 基地。純利益は約 21.7 億ドル(年 7.1%)。配当は 10 年で約 99 億ドル、増資は約 52 億ドル。倍率は 正当化 PER 15.3 倍に対して 13.8 倍(9.0 割)に置いた(投資が計画どおり回収され ROE が保たれるので上限の 9.0 割)。1 接続あたり売上は物価(1.41 倍)に対し実質 1.31 倍と、中立よりわずかに高い。買収は年 1.5% の接続増を支え、エッセンシャルとの合併は今の会社だけで書く。ROE は許可 ROE との差(約 0.1 ポイント)まで縮む。増資の払い込みは 10 年で約 52 億ドル(自己資本の増加 − 純利益の合計 + 配当 から)で、配当 99 億ドルからこれを引いた正味の還元は 47 億ドル。
- 規制水道・下水:数量 4.1(接続数(百万))× 価格 2,532(1 接続あたり年間売上(ドル))→ 売上 104 億ドル・営業利益 46 億ドル。接続数 × 1 接続あたり年間売上
- 契約事業(米軍基地の水道・下水):数量 21.0(契約基地数)× 価格 0.31(1 基地あたり年間売上(億ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。契約基地数 × 1 基地あたり売上
倍率:正当化 PER 15.3 倍(g 4.0%、RONIC 8.6%=k 7.50%+残る割合 0.50×(事業の ROE 9.7%−k)、moat=normal。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 13.8 倍(9.0 割)に置いた。投資が計画どおり回収され ROE が保たれるので上限の 9.0 割。g の内訳:給水量は実質ほぼ横ばい(接続増 +1.5%・1 件あたり使用量の減少)× 規制資本の伸び(投資が料金の基礎に入り名目で増える)で、名目の長期 g は 4.0〜4.5% だが、k−g≥3.5% の守りで 4.0% に抑えた。純利益は GAAP の考え方。
確率:手頃さの政治が限定的で、会社目標の下限〜中間で推移する。
中立 38% 中立:投資は回収されるが、手頃さが料金の伸びを実質で年 2% 台に抑える 利益 20 億ドル · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 131.38 ドル256 億ドル
10 年後、レートベースは年 7.5%(業界ノートの中立)で約 548 億ドル、2025 年の 2.1 倍。1 接続あたり売上は年 5.9%(物価 1.41 倍 × 実質 1.30 倍)で約 2,385 ドル、接続は買収と開発で年 1.5% 増えて 406 万。営業利益率は効率化で 44%、軍事サービスは 20 基地。営業利益 約 42 億ドル、利払いは約 17.5 億ドル(借金の増加と 5.3% への借り換え)、純利益は約 20.0 億ドル(年 6.3%、2025 年の 1.8 倍)。ROE は 9.2%(許可 9.8% 前後の遅れ)。配当は 10 年で約 96 億ドル、増資は約 50 億ドル(自己資本は 217 億ドル)。エッセンシャルとの合併は成立しても今の会社だけで書く。倍率は 正当化 PER 14.9 倍に対して 12.8 倍(8.6 割)に置いた(独占の堅さはあるが、手頃さが料金の伸びを抑え ROE が k を 2% 前後しか超えないので上限の 8.6 割(中立は 1÷k が床))。増資の払い込みは 10 年で約 50 億ドル(自己資本の増加 − 純利益の合計 + 配当 から)で、配当 96 億ドルからこれを引いた正味の還元は 46 億ドル。
- 規制水道・下水:数量 4.1(接続数(百万))× 価格 2,385(1 接続あたり年間売上(ドル))→ 売上 97 億ドル・営業利益 43 億ドル。接続数 × 1 接続あたり年間売上
- 契約事業(米軍基地の水道・下水):数量 20.0(契約基地数)× 価格 0.31(1 基地あたり年間売上(億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。契約基地数 × 1 基地あたり売上
倍率:正当化 PER 14.9 倍(g 4.0%、RONIC 8.4%=k 7.50%+残る割合 0.50×(事業の ROE 9.2%−k)、moat=normal。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 12.8 倍(8.6 割)に置いた。独占の堅さはあるが、手頃さが料金の伸びを抑え ROE が k を 2% 前後しか超えないので上限の 8.6 割台(中立は 1÷k が床)。g の内訳:給水量は実質ほぼ横ばい(接続増 +1.5%・1 件あたり使用量の減少)× 規制資本の伸び(投資が料金の基礎に入り名目で増える)で、名目の長期 g は 4.0〜4.5% だが、k−g≥3.5% の守りで 4.0% に抑えた。純利益は GAAP の考え方。
確率:議論の落としどころ。水の存続は確かだが、料金は手頃さの政治が押さえる。
やや悲観 18% やや悲観:手頃さで認可が絞られ、公営化と PFAS 費用がのしかかる 利益 17 億ドル · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 91.74 ドル179 億ドル
10 年後、レートベースは年 6.3% で約 490 億ドルにとどまる。委員会は 1 接続あたり売上の伸びを年 4.9%(実質 +1.4%)に抑え、許可 ROE を 9.0% 前後に下げ、投資の一部を否認する。PFAS・鉛管の費用の 2 割が回収されない。公営化の議論で、料金の高い一部の地域が自治体に買い戻される(接続 395 万)。軍事サービスは 19 基地。純利益は約 16.8 億ドル(年 4.4%)、ROE は 8.4%。利払いは 5.4% への借り換えで約 15.7 億ドル。倍率は 正当化 PER 14.2 倍に対して 10.7 倍(7.5 割)に置いた(手頃さの政治と費用の未回収で RONIC が k に近づくので上限の 7.5 割(1÷k の近く))。増資の払い込みは 10 年で約 42 億ドル(自己資本の増加 − 純利益の合計 + 配当 から)で、配当 90 億ドルからこれを引いた正味の還元は 48 億ドル。
- 規制水道・下水:数量 4.0(接続数(百万))× 価格 2,167(1 接続あたり年間売上(ドル))→ 売上 86 億ドル・営業利益 37 億ドル。接続数 × 1 接続あたり年間売上
- 契約事業(米軍基地の水道・下水):数量 19.0(契約基地数)× 価格 0.31(1 基地あたり年間売上(億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。契約基地数 × 1 基地あたり売上
倍率:正当化 PER 14.2 倍(g 4.0%、RONIC 8.0%=k 7.50%+残る割合 0.50×(事業の ROE 8.4%−k)、moat=normal。式 (1−g÷RONIC)÷(k−g))に対して 10.7 倍(7.5 割)に置いた。手頃さの政治と費用の未回収で RONIC が k に近づくので上限の 7.5 割(1÷k の近く)。g の内訳:給水量は実質ほぼ横ばい(接続増 +1.5%・1 件あたり使用量の減少)× 規制資本の伸び(投資が料金の基礎に入り名目で増える)で、名目の長期 g は 4.0〜4.5% だが、k−g≥3.5% の守りで 4.0% に抑えた。純利益は GAAP の考え方。
確率:手頃さの政治は 10 年で累積し、2〜3 割で現実になる。許可 ROE の引き下げ・投資の一部の否認・公営化の議論が重なる。
悲観 12% 悲観:構造的に負ける(手頃さの政治・公営化・費用の未回収) 利益 12 億ドル · PBR 1.0 倍 · 株価時価総額 55.59 ドル108 億ドル
10 年後、手頃さを理由に委員会が許可 ROE を 8% 台まで下げ、投資の 3 割を回収から外し、公営化が東部の複数の地域に広がる。レートベースは年 5% 以下の約 433 億ドルにとどまり、増資と借入の費用(5.6%)が利益を食う。PFAS・鉛管の費用の 4 割が未回収で、合併の統合費用と料金引き下げの約束も重い。1 接続あたり売上は年 3.3% と物価を下回り(実質 −0.2%)、営業利益率 41%。軍事サービスも 18 基地に減る。純利益は約 12.3 億ドル、ROE 6.5%、自己資本は減損後の 190 億ドル。もう優良ではなくなっている。規制資本の簿価(認可で回収される分)が床なので、今の自己資本 108 億ドルに 1.0 倍を掛けて測る。増資の払い込みは 10 年で約 45 億ドル(自己資本の増加 − 純利益の合計 + 配当 から)で、配当 80 億ドルからこれを引いた正味の還元は 35 億ドル。
- 規制水道・下水:数量 3.9(接続数(百万))× 価格 1,850(1 接続あたり年間売上(ドル))→ 売上 71 億ドル・営業利益 29 億ドル。接続数 × 1 接続あたり年間売上
- 契約事業(米軍基地の水道・下水):数量 18.0(契約基地数)× 価格 0.31(1 基地あたり年間売上(億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。契約基地数 × 1 基地あたり売上
倍率:悲観の床は規制資本の簿価(認可で回収される分)で、今の自己資本 108 億ドルに 1.0 倍(108 億ドル)。稼ぐ力(純利益 12.3 ÷ k 7.5% = 164 億ドル)の 66% に置いた。のれんを除いた ROE 6.9% は k に届かず、構造的な低 ROE を PBR で測る。
確率:合併の統合費用・PFAS と鉛管の費用の未回収・公営化・利上げが重なる最悪の筋書き。前例(東部の料金案件の否認、公営化の議論)から 1 割強と置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
規制水道・下水
14 州の約 350 万接続に水を売り下水を集める地域独占。利益は規制資本(レートベース)に許可 ROE を掛けた分で決まり、料金は州委員会が決める。
| 数量接続数(百万) | 価格1 接続あたり年間売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.5 | 1,343 | 47 | 19 |
| 10 年後 中立 | 4.1 | 2,385 | 97 | 43 |
取り方:接続数は約 350 万(会社資料の概数)。売上は 2025 年の全社 51 億ドルから契約事業 約 4 億ドルを引いた約 47 億ドル(推定)を接続で割り、1 接続あたり年 約 1,343 ドル。営業利益 19.4 億ドル(利益率 約 41%)は推定。売上 = 百万接続 × ドル × 0.01(億ドル)。販売水量は節水で横ばい〜微減なので数量は接続数で置く。成長はレートベース(約 266 億ドル = 自己資本 108 + 純負債 158 億ドルで近似)の伸びを、料金(1 接続あたり売上)の上昇で回収する形になる。価格は物価(10 年 1.41 倍)に投資回収の実質分が上乗せされる。競合と照らすと、エッセンシャル・ユーティリティーズはペンシルベニア中心で利益率が低く、カリフォルニア・ウォーター・サービスは西部の小規模。AWK は規模と営業利益率(約 4 割)が最上位で、うまくいけば(認可どおり回収)利益はレートベースの伸びと同じ年 8% 台、競合や委員会に押されれば(手頃さで認可が絞られる)年 5% 台に落ちる。
契約事業(米軍基地の水道・下水)
軍事サービス部門。約 18 の米軍基地の水道・下水を長期契約で運営。HOS は 2025 年に売却済み。
| 数量契約基地数 | 価格1 基地あたり年間売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 18.0 | 0.22 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 0.31 | 6 | 1 |
取り方:契約基地数は約 18(会社資料の概数・推定)。売上 約 4 億ドル(推定)を割って 1 基地あたり 0.22 億ドル。営業利益率は約 15%(推定)。価格は契約の物価調整で物価並みに上がるのが基本(10 年 1.41 倍)。競合はヴェオリアなどの契約型の運営会社で、契約の更新・入札に負ければ基地数が減り、勝てば増える。全社の利益の 3% 程度なので、全体への効きは小さい。
リスクと懸念
手頃さと料金の政治
水道代は所得の 1% 未満というのが会社の説明だが、東部の低所得層では 2〜3% に達する地域がある。料金の上昇は年 6% 前後と物価の倍近く、ペンシルベニア・ニュージャージーで委員会の質問が出ている。許可 ROE の引き下げ・投資の一部の否認・改定の遅れは、利益の伸びに直撃する。最大のリスク。
エッセンシャルとの合併の実行
全株式の合併で、AWK 株主 69%・エッセンシャル株主 31%。3 州が承認、ペンシルベニアは非全員一致の和解が委員会の承認待ち。完了は 2027 年 3 月末の見込みで、遅れや条件(料金の引き下げの約束・統合費用)が重ければ、規模の利益が出ない。本稿は成立前の今の会社だけで書いた。
PFAS・鉛管の義務化費用
PFAS の対策は約 20 億ドル(2026〜28 年が中心)と年 5,000 万ドル以内の運営費、鉛管の置換えは約 15 億ドル。回収が認められる前提だが、手頃さで認可が絞られれば利益を削る。規制値の変更・訴訟(PFAS の責任)も不確実。
金利と借金への依存
純有利子負債 158 億ドル(時価総額の 6 割)、FCF は毎年約 −10 億ドル。借り換えのたびに利払いが増え(5.75% 前後)、増資も続く。金利が 5% を超えて上がれば、債券の代わりとして株が売られる(2022 年は −30%)。増資を株価の安い時に迫られれば価値が薄まる。
公営化(自治体の買い戻し)
民営の水道が高いと受け止められた地域で、自治体が買い戻す議論が起こる。買い戻しは投資残高の簿価に近い価格で補償されるが、成長の源のレートベースが減り、地域によっては悪い前例になる。10 年の悲観に厚く反映した。
水量の減少と気象
節水機器・人口の減る地域・猛暑や干ばつで販売水量は横ばい〜微減。料金の仕組み(固定料金の割合・水量の変動の調整)で影響は小さく、猛暑・渇水での利益のぶれが数%出る。値上げ幅が大きいと節水が進み、水量の減少がさらに速まる連鎖も、手頃さの議論と結びつくと無視できない。
ペンシルベニア・イリノイなど大型州への集中
ペンシルベニア・ニュージャージー・イリノイ・ミズーリ・カリフォルニアで利益の大半。いずれかの料金案件が厳しく決まると全体の伸びが落ちる。イリノイは 5.77 億ドルの投資の料金申請が 2027 年 1 月の見込み。
今後の分かれ目
- ペンシルベニア・イリノイの次の料金案件で、許可 ROE が 9.5% を下回る
- やや悲観の確率を上げ、10 年の純利益を 1 割下げて見る。手頃さの政治が料金全体に広がる兆し。
- エッセンシャルとの合併が 2027 年 3 月末までに成立し、料金の約束が小さい
- 規模の利益が出て、中立の利益に 3〜5% の上振れ。ただし本稿の筋書きには入れていないので、確率を楽観側に少し寄せる。
- 合併の承認が条件つき(料金の引き下げ・統合費用が重い)、または遅れる
- 統合費用で数年の利益が薄まる。やや悲観の確率を上げる。
- 10 年国債が 6% を超えて上がる
- 債券の代わりとして株が売られ、PER が 3〜4 倍縮む。悲観の確率を上げる。
- PFAS 規制が強化される、または回収が認められない
- 35 億ドル規模の投資が料金に乗らず、10 年の純利益が 1〜2 割下がる。
- 自治体が民営の水道を買い戻す動きが東部の大都市に広がる
- レートベースの伸びが下がる。悲観の確率を厚くする。
見ておくもの
- ペンシルベニア・イリノイ・ニュージャージーの料金案件の許可 ROE と回収率
- エッセンシャルとの合併の承認(ペンシルベニア委員会・テキサス)と完了の時期
- 2026 年の調整後利益の実績と長期目標(年 7〜9%)
- 増資の額と株価(先渡し契約の残り)、純有利子負債・格付け
- PFAS・鉛管の規制値と費用の回収の決定
- 水道代の所得に対する割合と、委員会の手頃さの議論
- 小規模事業者の買収件数とレートベースへの上乗せ
倍率と資本コストの決め方
今の PER 23.7 倍を見る前に、数量と価格でセグメントを積み、純利益と自己資本を決め、倍率は利益ベースの正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g)(RONIC=k+残る割合×(事業の ROE−k)、moat=normal)の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は正当化 PER 14.9 倍(g 4.0%・RONIC 8.4%・k 7.50%)の 8.6 割の 12.8 倍。悲観の床は過去の PBR でなく、今の自己資本と稼ぐ力(純利益 ÷ k)から置いた。今の値段に寄せていない。結論は、総合で今の時価総額の約 44% 下の「割高」。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 5% + β 0.89 × 5%。基本 8.0%(米国)+ quality −0.5% = 7.5%。内訳は循環 −0.5%(水は必需で需要が景気に左右されない)、値決め力 −0.5%(料金は委員会が決めるが手頃さの政治で上げ幅は抑えられる)、借金 +1.0%(純負債は EBITDA の約 4.6 倍・時価総額の 6 割で、借換えと増資が続く)、寿命 −0.5%(許認可の地域独占は数十年続く)。負債は規制で回収されるので上乗せ 0。手頃さ・合併・PFAS は k に足さず、確率と筋書きで表した。長期の g は物価 3.5% + 実質 0.5% 前後で、k−g≥3.5% の守りで 4.0% に抑えた。