結論
北越メタルは、新潟県長岡市の電炉で鉄スクラップを溶かし、建物や土木に使う鉄筋の棒鋼と、その加工品を作る会社だ。トピー工業が議決権の 35% を持つ。筆者の結論はやや割高である。帳簿の自己資本は時価総額の 4 倍以上あるが、その資本で稼げる利益は細く、稼ぎの山でも資本コストに届かない。
2026 年 3 月期は建設計画の見直しで鉄筋の需要が冷え、販売量は 1 割半減って赤字になった。今期も赤字の予想だ。国内の建設は人口の減少と人手不足で細り、鉄筋の値段はスクラップと電力の値段に振り回される。
株価が自己資本の 2 割ほどしかないのは、市場がこの稼ぐ力の弱さを見ているからだ。筆者は、自己資本の厚さを割安の根拠とは見ない。稼ぐ力で測った価値は今の時価総額をやや下回り、上振れは建設需要の回復と業界の再編にかかっている。大株主のトピー工業がどう動くかも、株主の取り分を左右する。借金がほぼないので、倒れる心配は小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の自己資本が時価総額の 4 倍以上あることに目を奪われてはいけない。大事なのは、その資本が毎年いくらの利益を生むかだ。北越メタルの自己資本利益率は 3% 前後で、資本コストの 3 分の 1 にすぎない。ためた利益は、株主にとって帳簿の額ほどの価値を持たない。
電炉の更新や環境対応の投資も続く。株主のものになる利益、つまり再投資の後に残るお金は、会計上の利益よりさらに細い年が多い。
それでも、安全域がまったく無いわけではない。借金はほぼなく、投資有価証券もあるので、倒れる心配は小さい。ただ、オーナーとして長く持ちたい事業かと問われれば、筆者の答えは否だ。値打ちが表に出るのは、再編や買収で資本が組み替えられる時に限られる。その時の値段を決めるのも、少数株主ではなく大株主だ。
何で稼ぐ会社か
事業は鉄鋼の一つだけだ。長岡の工場で鉄スクラップを電気炉で溶かし、圧延して異形棒鋼、つまりコンクリートの中に入れる鉄筋を作る。線材や小さな形鋼も手がける。販売の中心は新潟を軸にした北陸と関東で、ビルやマンション、橋やトンネルの工事に使われる。
もう一つの柱が加工品だ。鉄筋を曲げて溶接した UHY フープ、床の型枠になるファブデッキ、トンネルの岩盤を留めるロックボルトや自穿孔ボルトなど、工事の手間を省く製品をそろえる。素材の鉄筋より値段が安定し、中期経営計画でもプレキャスト工場向けや国土強靱化の需要を取り込むと掲げる。
2026 年 3 月期の売上は 236 億円、販売量は 17 万トンだった。前の期から 3 万トン減り、営業損益は 3 億円の赤字に転じた。稼ぎはスクラップを仕入れて鉄筋を売る値段の差、いわゆるメタルスプレッドで決まる。電力も大量に使うので、電気代の上下が利益を直撃する。
連結の従業員は約 480 人。大株主のトピー工業は自らも電炉を持つ鉄鋼会社で、資本の関係は 1950 年代から続く。
優良さと弱いところ
優良さは高くない。鉄筋は規格で中身が決まる汎用品で、値段はゼネコンや商社との交渉と、地域の需給で決まる。北越メタルは新潟の地場で長く供給してきた信用と、加工品の品ぞろえで一定の地位を持つが、価格を自分で決める力は弱い。
資本効率も低い。自己資本利益率は過去 10 年の中央値で 3% に届かず、最も良かった年でも 6% 台だ。自己資本は 180 億円近くあるのに、営業利益は良い年で 10 億円前後にとどまる。資本が厚いのは、過去の利益をため込み、配当を控えめにしてきた結果でもある。
強みを挙げるなら、無借金に近い財務と、加工品で工事の手間を省く工夫だ。ただし電炉の業界は東京製鐵や共英製鋼のような大手が規模で勝る。筆者は、地場の小さな電炉が単独で稼ぐ力を高めるのは難しく、再編の中でどう生き残るかが本当の問いだと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の鉄鋼需要は構造的に縮んでいる。2025 年度の粗鋼生産は 8,000 万トン強と 57 年ぶりの低さで、建設向けの鉄筋も同じ流れにある。人口の減少に加え、建設現場の人手不足と資材の値上がりで、工事の計画そのものが先送りされている。北越メタルの赤字は、この波をまともに受けた結果だ。
値段の面では、鉄筋の価格はスクラップの値段に連動して動く。スクラップが急に上がると鉄筋への転嫁が遅れ、利幅が削られる。中国の過剰な生産が世界の鋼材の値段の天井を押さえ、輸出で逃げる道も細い。電力の値段の上昇は、電炉の会社に共通の重荷だ。
一方で、追い風もなくはない。インフラの老朽化で、橋やトンネルの更新の工事は 10 年続く。脱炭素の流れの中では、スクラップから鉄を作る電炉は高炉より二酸化炭素が少なく、見直される余地がある。業界では工場の集約と再編が続き、残った会社の稼働率が上がる可能性もある。筆者は、国内の数量は 10 年で 1 割前後縮み、値段は物価よりやや遅れて上がる姿を中立と見る。地場の小さな電炉にとっては、需要の量よりも、再編の中での立ち位置の方が大きな問題になる。
資本政策と M&A
還元の方針は連結の配当性向 30% 程度で、安定した配当にも配慮するとしている。ただ赤字の年は配当を絞り、2026 年 3 月期は中間配当だけで期末を見送った。2026 年 8 月には立会外の取引で自己株を 20 万株、発行済みの 5% ほど買い、資本の使い方に動きが出た。
大株主のトピー工業は議決権の 35% を持つ。親会社ではないが、経営に強い影響を持つ立場で、将来トピー工業による完全子会社化や、他の電炉との統合の話が出る余地はある。手元の現金と借金はほぼ同じ額で、余った現金はない。投資有価証券を 30 億円ほど持ち、その配当は利益に入っている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の赤字は建設計画の先送りによる一時の谷で、需要が消えたわけではない。都市の再開発、半導体工場や物流施設の建設、インフラの更新は 10 年続く。計画が動き出せば鉄筋の数量は戻り、固定費の重さが逆に利益を押し上げる。
業界の再編も追い風になる。電炉各社は工場の集約を進めており、供給が減れば値段の交渉力が戻る。北越メタルは新潟の地場で長く供給してきた信用があり、北陸と関東の需要を手堅く取れる。加工品はトンネルや橋の工事で手間を省くので、人手不足の現場ほど重宝される。工場で鉄筋を組んでおけば、現場の職人の数を減らせるからだ。
資本の面でも変化が出ている。2026 年に自己株を 5% 買ったのは、株価が自己資本の 2 割という状態を経営も問題と見ている証拠だ。トピー工業との関係を含めた再編が進めば、厚い自己資本が株主の価値として表に出る。脱炭素の流れで、スクラップから鉄を作る電炉の役割が見直されることも追い風だ。
慎重な見方
国内の建設需要は構造的に縮む。人口の減少と人手不足は一時の現象ではなく、鉄筋の数量は 10 年で 1 割以上減る公算が大きい。地場の小さな電炉は、東京製鐵や共英製鋼のような大手より規模の面で不利で、需要が細れば真っ先に稼働率が落ちる。
利幅も安定しない。スクラップの値段が急に上がると鉄筋への転嫁が遅れ、電力の値段も上がり続ける。中国の過剰な生産が世界の鋼材の値段を押さえ、値上げの天井は低い。過去 12 年で営業利益率が 5% を超えたのは 2 回だけだ。良い年の利益は長続きせず、悪い年の赤字が積み上げを削ってきた。
資本の使い方にも疑問が残る。180 億円近い自己資本を 3% 前後でしか回せず、配当は赤字で絞られる。トピー工業が大株主にいる限り、外からの買収は起きにくい。電炉の更新や脱炭素の投資が重なれば、株主に残る現金はさらに細る。谷からの戻りがあっても、その山で資本コストを超える利益は出ない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。需要の谷からの戻りと再編の期待は筋が通るが、国内の数量の縮みと汎用品の値決めの弱さは構造的で、戻っても資本コストに届く利益は出にくい。中立に最も重みを置き、悲観側を楽観側よりやや重くした。再編や完全子会社化の可能性は、楽観側の確率に含めた。借金がほぼなく倒れる心配が小さいので、悲観を大きく重くはしなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,113 円77 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 205 円8 億円)。 今の値に割り戻すと 1,048 円38 億円、今との差 +2.9%、 期待の年率 +8.6%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,905 円180 億円 | 683 円25 億円 | +448.9% | +18.6% | 559 円20 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,293 円121 億円 | 328 円12 億円 | +255.7% | +13.5% | 724 円27 億円 |
| 中立 | 36% | 2,082 円76 億円 | 164 円6 億円 | +120.6% | +8.2% | 809 円30 億円 |
| やや悲観 | 22% | 656 円24 億円 | 55 円2 億円 | −30.2% | −3.5% | 156 円6 億円 |
| 悲観 | 12% | 580 円21 億円 | 0 円0 億円 | −43.0% | −5.5% | 70 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,113 円77 億円 | 205 円8 億円 | +127.7% | +8.6% | 2,318 円85 億円 |
今の株価時価総額 1,018 円37 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 建設の回復と再編で稼働が戻る 利益 16 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 4,905 円180 億円
先送りされていた再開発や工場、インフラの更新の工事が一斉に動き出し、鉄筋の需要が戻る。電炉の業界では工場の集約が進み、北越メタルは新潟と北陸の供給の要として稼働率を上げる。販売量は 20 万トンを超え、加工品の比率も上がる。
スクラップと鉄筋の値差は広がり、値上げも定着する。営業利益率は 5% と、過去の良い年に近い水準を保つ。配当は配当性向 30% に戻り、自己株の取得も続く。トピー工業との統合などで資本の使い方が変われば、この筋書きを上回る値段もありうる。それでも自己資本利益率は 7% 台で、資本コストには届かない。
- 鉄鋼(棒鋼・加工品):数量 20.5(鋼材と加工品の販売量(万トン))× 価格 19(1 トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 393 億円・営業利益 20 億円。20.5 万トン × 1 トン 19.15 万円(今の 1.38 倍)、営業利益率 5%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 180 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建設需要の回復、近隣の供給の減少、値上げの定着がそろう必要がある。トピー工業を軸にした再編で資本が組み替えられる可能性も、この筋書きに含めた。
やや楽観 20% 需要が戻り、利幅も平年に 利益 11 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,293 円121 億円
建設現場の人手不足は続くが、先送りされた工事は数年かけて動き出す。鉄筋の販売量は 18 万トン台に戻り、加工品はプレキャスト工場向けで伸びる。スクラップの値段は落ち着き、鉄筋への転嫁も平年並みに進む。
営業利益率は 3.8% と、過去の平均をやや上回る水準になる。償却は取得した時の値段のままなので、値段が物価で上がる分の一部は利益に残る。配当は配当性向 30% で続くが、自己資本利益率は 5% 台にとどまり、資本コストには届かない。厚い自己資本は、稼ぎを伸ばすより守りの役に回る。自己株の取得は時々あるが、大きな規模にはならない。
- 鉄鋼(棒鋼・加工品):数量 18.5(鋼材と加工品の販売量(万トン))× 価格 19(1 トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 347 億円・営業利益 13 億円。18.5 万トン × 1 トン 18.74 万円(今の 1.35 倍)、営業利益率 3.8%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 120 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建設の計画の先送りが数年で解け、販売量と利幅が過去の平年並みに戻る筋書き。谷からの戻りとしては無理のない前提なので、楽観の 2 倍に置いた。
中立 36% 数量は細り、利幅は薄いまま 利益 7 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,082 円76 億円
国内の建設需要は人口の減少で細り、鉄筋の販売量は谷の 17 万トンから少し戻って 17.5 万トンで落ち着く。値段はスクラップと電力の値段を追って上がるが、物価よりやや遅れる。加工品が利幅を少し支える。
営業利益率は 2.6% と、過去 12 年の中央値並みにとどまる。償却が物価で増えない分は利益の支えになるが、電気炉の更新の投資がその分を食う。配当は配当性向 30% で、自己資本はゆっくり積み上がる。自己資本利益率は 3% 台のままで、厚い資本は稼ぎにつながらない。大株主との関係も今のまま続き、資本の組み替えは起きない。
- 鉄鋼(棒鋼・加工品):数量 17.5(鋼材と加工品の販売量(万トン))× 価格 18(1 トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 321 億円・営業利益 8 億円。17.5 万トン × 1 トン 18.32 万円(今の 1.32 倍。物価よりやや低い)、営業利益率 2.6%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 76 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の数量が緩やかに縮み、値段は物価よりやや遅れて上がる、業種のノートの中立と同じ姿。強気と慎重の言い分の落としどころとして最も重く置いた。
やや悲観 22% 需要の縮みと値下げで、稼ぎはほぼゼロに 利益 1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 656 円24 億円
人手不足で建設の計画は戻らず、鉄筋の販売量は 15 万トン台に落ちる。大手の電炉が値下げで数量を取りに来て、北越メタルの値段は物価に大きく遅れる。加工品も公共工事の予算の伸び悩みで横ばいにとどまる。
営業利益はほぼゼロになり、純利益は投資有価証券の配当でかろうじて黒字を保つ程度だ。配当は細り、自己資本は横ばいにとどまる。株主の価値を支えるのは、稼ぐ力ではなく、手元の投資有価証券と借金のない財務になる。近隣の電炉との統合の話が出ても、条件は買い手に有利になりやすい。電炉の更新の投資も先送りされ、工場の競争力はじわじわ落ちる。
- 鉄鋼(棒鋼・加工品):数量 15.5(鋼材と加工品の販売量(万トン))× 価格 17(1 トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 269 億円・営業利益 1 億円。15.5 万トン × 1 トン 17.35 万円(今の 1.25 倍)、営業利益率 0.5%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロなので PER は使わず、今の自己資本 177 億円に PBR 0.134 倍を掛けた。値は床の資産(投資有価証券の税後)に近い。自己資本の多くは設備と在庫で、稼がない設備は売っても値がつきにくい。
確率:国内の建設の縮みが速まり、地場の小さな電炉が値下げを迫られる筋書き。業界で実際に起きている流れで、楽観側より重く置いた。
悲観 12% 地場の電炉が淘汰される 利益 −7 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 580 円21 億円
国内の建設需要は大きく縮み、鉄筋の販売量は 13 万トンまで落ちる。スクラップと電力の値段は高止まりし、値上げは通らない。大手の電炉の安値攻勢で、地場の電炉は値段でも数量でも負ける。脱炭素の規制で、電炉の更新に大きな投資を求められることも重なる。
赤字が毎年続き、電気炉の帳簿の値打ちは減損で削られる。配当は止まり、自己資本は 3 割近く減る。残る価値は投資有価証券と、工場の土地くらいになる。トピー工業が支えるか、工場を閉じるかの判断を迫られる。少数株主は、その判断の値段を決める立場にない。手元の資産が残っても、それが株主に配られる保証はない。
- 鉄鋼(棒鋼・加工品):数量 13.0(鋼材と加工品の販売量(万トン))× 価格 16(1 トンあたりの売上(万円・名目))→ 売上 207 億円・営業利益 −6 億円。13 万トン × 1 トン 15.96 万円(今の 1.15 倍)、営業利益率 −3%
倍率:赤字が続くので PER は使わず、今の自己資本 177 億円に PBR 0.12 倍を掛けた。稼ぐ力は赤字で床にならず、値は投資有価証券を市況の落ち込みで目減りさせた税後の額にそろえた。
確率:国内の建設が大きく縮み、スクラップ高と電力高が重なる構造的な負け。地場の単一工場の電炉は最初に淘汰されやすく、楽観より重い 12% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鉄鋼(棒鋼・加工品)
電炉で作る異形棒鋼・線材・形鋼と、フープ・デッキ・ロックボルトなどの加工品。
| 数量鋼材と加工品の販売量(万トン) | 価格1 トンあたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.0 | 14 | 236 | −3 |
| 10 年後 中立 | 17.5 | 18 | 321 | 8 |
取り方:有報の販売数量 170 千トンと売上 235.98 億円から、1 トンあたり 13.88 万円とした。数量は実際のトン数(実質)、物価とスクラップ・電力の値段の転嫁は 1 トンあたりの売上に入れる。償却は年 7 億円前後で、物価で増やさず、更新の投資の分だけ足す。
リスクと懸念
国内の建設需要の縮み
人口の減少と建設現場の人手不足で、工事の計画が先送りされている。鉄筋の数量が戻らなければ、固定費の重さで赤字が続く。新潟と北陸は人口の減り方が全国より速く、地場の需要に頼る会社には逃げ場が少ない。
スクラップと電力の値段
原料のスクラップは国際的な市況で動き、急に上がると鉄筋への転嫁が遅れて利幅が削られる。電炉は電力を大量に使うので、電気代の上昇はそのまま費用になる。2026 年 3 月期の後半の赤字もスクラップ高が一因だった。
大手との規模の差
東京製鐵や共英製鋼は工場が多く、生産の効率と調達の力で勝る。需要が細る局面では、小さな電炉が先に値下げを迫られ、稼働率も落ちる。単独で規模を追う道は限られている。
設備の更新と脱炭素の投資
電気炉や圧延の設備は古くなれば更新が要り、建築費や機械の値段は物価以上に上がっている。二酸化炭素の削減目標に向けた投資も重なる。償却を上回る投資が続けば、株主に残る現金は細る。
大株主の影響
トピー工業が議決権の 35% を持ち、経営に強い影響がある。外からの買収は起きにくく、再編の形と値段は大株主の意向で決まる。少数株主に有利な条件になるとは限らない。
今後の分かれ目
- 建設計画の先送りが解け、販売量が 20 万トンを回復したら
- 固定費の重さが逆に効き、利益は大きく戻る。やや楽観の筋書きに近づく。
- トピー工業が完全子会社化や統合を提案したら
- 自己資本の厚さが買収の値段に反映される可能性がある。楽観の筋書きに近づくが、条件は大株主の意向しだいだ。
- スクラップの値段が急騰し、転嫁が追いつかない状態が続いたら
- 赤字が長引き、やや悲観の筋書きに重みが移る。
- 近隣の電炉が閉鎖され、地域の供給が減ったら
- 稼働率と値段の交渉力が戻り、中立より上の筋書きに近づく。
- 電力の値段がさらに 2 割上がったら
- 利幅が削られ、悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 月々の販売量と鉄筋の値段
- スクラップの値段と鉄筋との値差
- 電力の契約の値段
- 自己株の取得や配当の方針
- トピー工業との資本の関係の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10 年後の自己資本利益率が資本コスト 8.75% に届かないことから、PER の上限を 1÷k の約 10.8 倍とし、利益の質に応じて置いた。悲観側は稼ぐ力が細るので、投資有価証券の税後を床にした。今の株価と自己資本の比は見ておらず、自己資本の厚さを割安の根拠にしていない。投資有価証券の配当は利益に残すので、その値打ちは中立以上の価値に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.43 倍・やや楽観 PER 9.5→11.43 倍・中立 PER 8→11.43 倍・やや悲観 PBR 0.145→0.134 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.75%。赤字だが財務は堅く、存続を疑う状態ではないので上乗せはしない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.75%。