結論
中央可鍛工業は、自動車の鋳物部品を作る名古屋の会社だ。可鍛鋳鉄(粘りを出した鉄の鋳物)とダクタイル鋳鉄、アルミの部品を、鋳造から加工、組み立てまで一貫で作る。売上は 387 億円、営業利益は 19 億円。トヨタが売上の 45% を占め、日野が約 7% で続く。
筆者の結論は、今の値段はほぼ妥当で、割安とは言い切れないというものだ。株価は純資産の 3 割で、純現金 35 億円と投資有価証券 34 億円を持つ。時価総額は 97 億円しかない。数字だけを見ると、解散価値を大きく割っている。
だが、安い理由ははっきりしている。稼ぐ力が資本コストに届かない。営業利益率は 5% 前後が上限で、毎年の値下げ要請が利益を削る。しかも電動化で、エンジン周りの鋳物は 10 年で減る。
厚い現金は、返ってくる前提で数えられない。配当性向は 13% と低く、株主に戻す方針も弱い。それでも悪い筋書きで崖にならないのは、この現金と持ち株があるからだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は安いが、割安とは言えない。純資産 321 億円に対して時価総額は 97 億円。純現金と持ち株を足せば、時価総額の 7 割に届く。つまり、事業の部分をほぼ無料で手に入れる形になる。
それでも安全域が厚いとは言えない。事業は買い手のトヨタが価格を決め、電動化で 10 年後に部品が減る。稼ぐ力は、投下した資本の 5% 前後にすぎない。ためた現金は、経営者が株主に戻さない限り、市場がそのまま評価しない。
経営者の資本配分は、安全を優先し、配当を絞り、現金をためる型だ。短期ではつらいが、悪い年に会社を守る効果はある。
筆者は、中立の価値が今の値段を少し上回るが、悪い筋書きの重みを織り込むと今の値段とほぼ同じになると見る。純現金と持ち株は下値を支えるが、上値を押し上げる力はない。配当や自社株買いを増やす動きが出れば、見方は変わる。逆に、現金が電動化への投資に消えれば、いまの安全域は薄れる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は可鍛事業で、売上は 376 億円。自動車部品と産業機械部品の鋳物を作り、鋳鉄とアルミの両方を扱う。1944 年創業で、1950 年代の後半からトヨタの協力工場として取引してきた。
強みは一貫生産だ。鋳造、機械加工、組み立て、検査までを自社で行い、完成度の高い部品として納める。国内の工場のほか、中国の蘇州に子会社と持分法の関連会社を持つ。ダクタイル鋳鉄を作る岐阜の久尻工場は、年産 1.4 万トンの能力がある。
金属家具事業は、オフィス用の椅子などを作る子会社チューキョーが担う。売上は 11 億円と小さく、2025 年に株式交換で完全子会社にした。
利益は可鍛事業のセグメント利益が 33 億円と大きく見えるが、本社費などの全社費用が約 14 億円あり、連結の営業利益は 19 億円になる。従業員は連結で約 970 人、平均年齢は 39 歳台と若い。設備投資は年 25 億円ほどで、中身は設備の更新が中心だ。2026 年度は日進工場の鋳造設備の更新に約 8 億円を投じる計画で、能力は増やさない。
優良さと弱いところ
優良さは、取引の深さにある。トヨタと 70 年近く取引があり、鋳造から加工までを担う協力工場として組み込まれている。トヨタは筆頭株主でもあり、持株比率は 5% だ。取引先が簡単に替えられない点は堀といえる。
だが堀は買い手の側にある。トヨタに価格を決められ、毎年の値下げ要請に応えるしかない。営業利益率は過去 20 年で 5.8% が最高で、赤字の年も 2 回ある。2026 年 3 月期の 4.9% は、その上限に近い。
資本の使い方は保守的だ。配当性向は 13%、DOE(純資産に対する配当の割合)は 1% に満たない。自己資本比率は 68% と厚く、ROE は 5% 台にとどまる。ためた現金を事業に生かせていない。
評価できるのは、財務の安全性と、チューキョーの完全子会社化でグループの統治を整えた点だ。弱い点は、取引先の偏りと、稼いだ現金を株主に戻す意思の薄さである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車の鋳物部品は、完成車メーカーの系列に入った数少ない会社が分け合う市場だ。日本の可鍛鋳鉄の生産は 2024 年で年 2.7 万トンほどと小さく、縮む傾向にある。需要はエンジンや駆動系の部品が中心で、電気自動車が増えると減る。
世界の電気自動車は新車の約 25% まで増えたが、日本は 3% に満たない。トヨタはハイブリッドを軸にするため、内燃機関系の部品は当面残る。ただ、10 年のうちには電動化が進み、エンジン周りの鋳物は減る。会社も有価証券報告書で「エンジンレスなど自動車の構造変化」を事業の危険に挙げている。
一方、足回りや駆動系の鋳物は電気自動車にも使われる部品が混じる。アルミ部品は軽量化の流れで増える面がある。競合は、鋳物を作る国内の専業メーカー(日本ピストンリング系ではなく鋳造・鍛造の中堅)と、完成車メーカー自身の内製だ。
もう一つの力が完成車メーカーの値下げ要請だ。毎年のコスト削減の求めで、物価が上がっても価格は同じだけ上がらない。原料費や電力費の転嫁が遅れると、利益が一気に削られる。
資本政策と M&A
資本政策は慎重を通り越して消極的だ。配当性向は 13%で、DOE は 1% に満たない。来期は小幅の増配を予想し、方針は「収益状況に応じて、安定配当を重視」とだけ書かれている。株主優待もあり、クオカードを年 1 回贈る(保有株数と保有年数で額が変わる)。費用は年 1 億円に満たず、利益に入っているため、還元にも数えない。
手元の現金は 70 億円、借入は 33 億円で、純現金は 35 億円まで積み上がった。投資有価証券は 34 億円で、トヨタ株が 20 億円を占める。株主には、トヨタ、取引先の持株会(CMC 協力会)、三菱 UFJ 銀行、豊田自動織機、三井住友銀行が並ぶ。安定株主が多く、敵対的な動きは起きにくい。
M&A は小さく、2025 年にチューキョーを完全子会社にしたのが最近の例だ。中国の蘇州に持分法の会社と関連会社への出資がある。トヨタ系の再編に巻き込まれる可能性は否定できないが、公表されたものはない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
株価は純資産の 3 割で、純現金と投資有価証券だけで時価総額の 7 割にのぼる。事業の価値は、ほぼ無料で手に入る。2026 年 3 月期の純利益は 22 億円と過去 5 年の最高で、PER は 5 倍に満たない。トヨタ向けの鋳物は、ハイブリッドが続く間は仕事がある。
トヨタとの取引は 70 年近い。トヨタは筆頭株主でもあり、系列の協力工場として切られにくい。電気自動車でも足回りや駆動系の鋳物は必要で、アルミ部品は電動車で増える。全社費用の重さは、売上が伸びれば薄まる。
資本の面でも、東証の PBR 改善の要請を受ければ、会社は現金の有効活用を迫られる。配当性向が 13% と低いので、増配や自社株買いの余地が大きい。純現金 35 億円を株主に返すだけで、時価総額の 3 割を占める。2026 年 3 月期は売上、営業利益、純利益のすべてが過去 5 年の最高だった。足元の改善は、自動車部品の販売増と収益改善によるもので、一時的な要因だけではない。
慎重な見方
安い理由は、稼ぐ力が資本コストに届かないことだ。営業利益率は 5% 前後が過去 20 年の上限で、今年は上限近い。2027 年 3 月期は営業利益を 16 億円(15% 減)と見ており、第 1 四半期も経常利益が 39% 減った。
トヨタは売上の 45% を占める価格の決定者で、毎年の値下げ要請がある。電動化で鋳鉄の部品は 10 年で減る。固定費が重く、台数が減ると利益が急速に薄くなる。全社費用だけで年 14 億円ある。
厚い現金は、経営者が株主に戻す意思を示していない。配当性向は 13%、DOE は 1% 未満で、この現金は返ってくると見なせない。ためた現金で電動化への投資を成功させられる保証もない。PBR が 0.3 倍でも、ROE が資本コストの半分なら、それは割安ではない。営業利益の 16 億円という会社予想も、足元の弱さを示す。2026 年 3 月期の純利益には特別利益も乗っており、平常の稼ぐ力は 15 億円前後とみるべきだ。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は資産の厚さを根拠にするが、返ってこない現金は半分の値で数える。慎重な見方の指摘(稼ぐ力が資本コストに届かない、値下げ要請、電動化)は実績で裏づけられる。確率は中立を 4 割に置き、悲観側をやや厚くした。純現金の戻り方は 0.5 とし、現金と持ち株は悲観の床に入れた。資産の厚さは下値を支えるが、稼ぐ力の弱さが上値を抑える。双方を同時に認めるのが、この株の見方である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,466 円231 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 240 円38 億円)。 今の値に割り戻すと 775 円122 億円、今との差 +28.0%、 期待の年率 +10.9%(資本コスト 9.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,340 円369 億円 | 380 円60 億円 | +348.9% | +16.2% | 218 円34 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,007 円317 億円 | 317 円50 億円 | +283.4% | +14.4% | 395 円62 億円 |
| 中立 | 40% | 1,742 円275 億円 | 272 円43 億円 | +232.3% | +12.8% | 806 円127 億円 |
| やや悲観 | 22% | 831 円131 億円 | 190 円30 億円 | +68.6% | +5.4% | 225 円35 億円 |
| 悲観 | 13% | 450 円71 億円 | 38 円6 億円 | −19.5% | −2.1% | 63 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,466 円231 億円 | 240 円38 億円 | +181.6% | +10.9% | 1,706 円269 億円 |
今の株価時価総額 606 円96 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:鋳鉄の台数を守り、電動向けのアルミが育つ 利益 29 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,340 円369 億円
トヨタがハイブリッドを中心に据え続け、鋳鉄部品の台数は 10 年でほとんど減らない。足回りや駆動系の鋳物は、電気自動車にも必要な部品が混じるため、減り方は緩やかだ。価格は物価並みに通る。
アルミ部品は電動車のモーター周りの受注で 1.6 倍に増える。全社費用は物価で膨らむが、売上が伸びるので吸収できる。蘇州の子会社も取引先の拡大で稼働が上がる。
営業利益は 35 億円ほど、利益率は 6% を超えて過去の山を上回る。純利益は 29 億円、ROE は 5% 台に上がる。配当は性向を引き上げ、還元が厚くなる。東証の資本効率の要請も、その流れを後押しする。
- 鋳鉄部品(可鍛・ダクタイル):数量 43.9(鋳鉄部品の出荷量(千トン、推定))× 価格 8.98(1 千トンあたり売上(億円、加工込み))→ 売上 394 億円・営業利益 39 億円。台数 98%。値上げは物価並み
- アルミ部品・産業機械部品:数量 6.4(アルミ・産業機械部品の出荷量(千トン、推定))× 価格 25(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 161 億円・営業利益 15 億円。電動向けのアルミが 1.6 倍
- 金属家具(オフィス家具):数量 82.0(椅子などの出荷(千脚相当、推定))× 価格 0.19(1 脚あたり売上(億円/千脚))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 337 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:トヨタがハイブリッドを軸に内燃機関系を長く使い、アルミ部品でも電動向けの受注が取れる上振れ。取引先が 1 社に偏るため、薄く置いた。
やや楽観 17% やや楽観:鋳鉄は 1 割弱減るが、アルミが補う 利益 24 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,007 円317 億円
鋳鉄部品の台数は 1 割弱減る。トヨタの値下げ要請で価格は物価の 8 割ほどしか上がらない。アルミ部品は 1.35 倍に増え、電動向けの比率が上がる。
営業利益は 27 億円、利益率は 5% 台。全社費用は物価で増えるが、更新投資の償却は新しい設備の分だけだ。ROE は 4% 台後半。トヨタ以外の取引先も少しずつ増え、依存度は下がる。純利益は 23 億円ほどで、配当は 2 倍近くまで増える。持ち株の配当と持分法の利益が、営業外で年 5 億円ほど利益を支える。アルミ部品の電動向けは、まだ立ち上がりの途上にある。
- 鋳鉄部品(可鍛・ダクタイル):数量 42.0(鋳鉄部品の出荷量(千トン、推定))× 価格 8.70(1 千トンあたり売上(億円、加工込み))→ 売上 365 億円・営業利益 35 億円。台数 94%
- アルミ部品・産業機械部品:数量 5.4(アルミ・産業機械部品の出荷量(千トン、推定))× 価格 24(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 132 億円・営業利益 11 億円。1.35 倍
- 金属家具(オフィス家具):数量 80.0(椅子などの出荷(千脚相当、推定))× 価格 0.19(1 脚あたり売上(億円/千脚))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。微減
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 276 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:トヨタの電動化はゆっくり進むが、10 年では内燃機関系が減る。アルミで補うのが現実的な上振れ。
中立 40% 中立:鋳鉄は 1 割減り、アルミの増加で全体は横ばい 利益 19 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,742 円275 億円
鋳鉄部品は台数が 10 年で 1 割減る。トヨタ向けは売上の 45% で、毎年の値下げ要請を受けながら、価格は物価の上昇分の 7 割ほどしか上がらない。鋳造の原料費(スクラップや電力)の転嫁は遅れる。
アルミ部品は台数が 2 割増え、産業機械向けの鋳物が支える。金属家具は小さく、利益に効かない。
全社費用(本社費など)は物価で膨らみ、約 20 億円になる。営業利益は 22 億円、利益率は 4.5%。純利益は 19 億円で、ROE は 4% 台。投資有価証券の配当と持分法の利益が利益の底を支える。
- 鋳鉄部品(可鍛・ダクタイル):数量 40.3(鋳鉄部品の出荷量(千トン、推定))× 価格 8.58(1 千トンあたり売上(億円、加工込み))→ 売上 346 億円・営業利益 31 億円。台数 90%。値下げ要請で価格は 1.28 倍止まり
- アルミ部品・産業機械部品:数量 4.8(アルミ・産業機械部品の出荷量(千トン、推定))× 価格 24(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 117 億円・営業利益 9 億円。台数 1.2 倍
- 金属家具(オフィス家具):数量 78.0(椅子などの出荷(千脚相当、推定))× 価格 0.19(1 脚あたり売上(億円/千脚))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。台数 95%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 226 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の中心的な見通しに沿う。トヨタの電動化が緩やかに進み、鋳鉄の台数は 1 割減る。アルミの増加で補う。同領域の標準(中立 3〜4 割)より少し厚く置いた。
やや悲観 22% やや悲観:電動化が速く、鋳鉄が 2 割減る 利益 10 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 831 円131 億円
鋳鉄部品の台数が 10 年で 2 割減る。減った台数の分だけ、完成車メーカーは値下げを強く求める。固定費の重い鋳造は、台数が落ちると利益率が一気に下がる。
アルミ部品は横ばい。全社費用は物価で増えるので、営業利益は 9 億円ほどに縮む。
配当は性向を保つが、利益が小さいので額は増えない。純現金は将来の設備更新と人員の再編に使われ、積み上がりは弱い。トヨタとの取引は残るが、新しい車種の受注では他社に負ける場面が増える。営業外の収益(持ち株の配当)は残るが、営業利益の落ち込みを埋められない。投資有価証券の評価損が出る年もある。
- 鋳鉄部品(可鍛・ダクタイル):数量 36.0(鋳鉄部品の出荷量(千トン、推定))× 価格 8.00(1 千トンあたり売上(億円、加工込み))→ 売上 288 億円・営業利益 20 億円。台数 8 割、固定費で利益率が低下
- アルミ部品・産業機械部品:数量 4.0(アルミ・産業機械部品の出荷量(千トン、推定))× 価格 23(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 90 億円・営業利益 5 億円。横ばい
- 金属家具(オフィス家具):数量 70.0(椅子などの出荷(千脚相当、推定))× 価格 0.17(1 脚あたり売上(億円/千脚))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:ROE は 2.2% で k に遠く届かない。稼ぐ力に見合う PER の上限 1÷k = 11.1 倍の 6.3 割として 7.0 倍に置いた。
確率:トヨタの電動化が業種ノートの中心より速く進めば、エンジン周りの鋳物が減る。全社費用は固定費として残り、利益が大きく削られる。
悲観 13% 悲観:電動化で鋳鉄が半減し、構造的に稼げなくなる 利益 −10 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 450 円71 億円
電気自動車の普及と、トヨタの取引先の絞り込みで、鋳鉄部品の台数は半分近くに減る。価格は据え置かれ、固定費が重く、工場の稼働率が落ちて営業赤字になる。
アルミ部品も新しい受注が取れない。工場の再編、人員の削減、設備の減損が続く。
配当は大きく減る。残るのは純現金、投資有価証券、運転資本と、売れる工場用地や設備で、自己資本の 3 割ほどの価値になる。トヨタは株主として残るが、取引の縮小は止められない。人員の削減や拠点の統合に伴う費用も重くなる。値下げ要請に応えられない工場は、取引から外される。経営は現金の取り崩しで耐えることになる。
- 鋳鉄部品(可鍛・ダクタイル):数量 25.0(鋳鉄部品の出荷量(千トン、推定))× 価格 6.70(1 千トンあたり売上(億円、加工込み))→ 売上 168 億円・営業利益 0 億円。台数 55%、価格は据え置き、利益ゼロ
- アルミ部品・産業機械部品:数量 2.5(アルミ・産業機械部品の出荷量(千トン、推定))× 価格 19(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 47 億円・営業利益 −1 億円。赤字
- 金属家具(オフィス家具):数量 60.0(椅子などの出荷(千脚相当、推定))× 価格 0.14(1 脚あたり売上(億円/千脚))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:赤字の筋書きなので、稼ぐ力でなく売れる資産で測る。今の自己資本 321 億円の 0.22 倍(約 71 億円)に置いた。減損で自己資本を 206 億円まで減らした。
確率:構造的な負け筋。エンジン周りの鋳物が要らなくなり、トヨタが内製化・取引先の絞り込みを進める。純現金と有価証券が厚いので、同領域の標準(15%)よりやや薄くした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鋳鉄部品(可鍛・ダクタイル)
可鍛鋳鉄とダクタイル鋳鉄の自動車部品。鋳造から機械加工、組み立て、検査までを自社で一貫して行う。トヨタ系が中心。
| 数量鋳鉄部品の出荷量(千トン、推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円、加工込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 44.8 | 6.70 | 300 | 27 |
| 10 年後 中立 | 40.3 | 8.58 | 346 | 31 |
取り方:可鍛事業の売上 375.7 億円のうち、鋳鉄部品を約 300 億円とした。出荷量は岐阜久尻工場の年産 1.4 万トン(ダクタイル)と可鍛鋳鉄の国内生産(2024 年 27 千トン)から、グループ全体で約 4.5 万トンと推定。営業利益は可鍛事業のセグメント利益 33 億円を鋳鉄とアルミで分けた推定。
アルミ部品・産業機械部品
自動車用のアルミ鋳造部品と、産業機械向けの鋳物。電動化でも使われる部品が混じる。
| 数量アルミ・産業機械部品の出荷量(千トン、推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 19 | 75 | 6 |
| 10 年後 中立 | 4.8 | 24 | 117 | 9 |
取り方:可鍛事業の残り約 75 億円を、アルミ部品と産業機械部品とした。内訳の開示がなく推定。アルミは重量あたりの値段が鋳鉄より高いので 1 千トン 18.75 億円で置いた。営業利益は推定。
金属家具(オフィス家具)
子会社チューキョーが作るオフィス用の椅子など。2025 年に株式交換で完全子会社になった。
| 数量椅子などの出荷(千脚相当、推定) | 価格1 脚あたり売上(億円/千脚) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 82.0 | 0.14 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 0.19 | 15 | 1 |
取り方:売上 11.5 億円・セグメント利益 0.5 億円は開示。1 脚 14 千円相当で換算した推定。
リスクと懸念
トヨタへの集中
トヨタが売上の 45%、日野が約 7%。トヨタの調達方針の変更や、電動化に合わせた取引先の絞り込みが起きれば、売上が一度に動く。トヨタ・豊田自動織機が株主でも、取引の継続は保証されない。
電動化で鋳物が減る
エンジン周りの鋳鉄部品は電気自動車に要らない。有価証券報告書も「エンジンレスなど自動車の構造変化」を挙げる。10 年で鋳鉄の台数が半分に減る筋書きでは、固定費の重い鋳造は赤字になる。
値下げ要請と原料の転嫁
完成車メーカーの毎年の値下げ要請で、価格は物価ほど上がらない。鋳鉄の原料(スクラップ)と電力の値上がりを転嫁するのも遅れる。全社費用だけで年 14 億円あり、利益が薄い年は一気に消える。
現金を株主に戻さない
純現金 35 億円と投資有価証券 34 億円は、時価総額の 7 割にあたる。配当性向 13% では、株主には戻ってこない。電動化に向けた投資に使われ、失敗すれば現金が減る。
設備更新の負担
設備投資は年 25 億円で、更新が中心。鋳造設備は更新の値段が物価で膨らみ、償却より投資のほうが多くなって、現金が細る。今ある設備の償却は物価で増えないため、会計の利益は見かけ上よくなる。
AI エージェントの影響
主な事業は鋳物の製造で、人月や画面操作を売る仕事ではない。AI エージェントによる直接の置き換えは小さい。工場の検査や段取りの省力化は、むしろ人手不足への追い風になる。
今後の分かれ目
- トヨタが内燃機関系の部品を長く使い続ける(ハイブリッド中心)
- 鋳鉄の台数が 10 年で 1 割減にとどまり、楽観に近づく。営業利益は 30 億円台に乗る。
- 会社が配当性向を 3 割へ引き上げ、自社株買いを始める
- 純現金の戻り方を 1.0 に見直せる。現金 25 億円の価値が 2 倍になり、価値は 1 割強上がる。
- トヨタが取引先の絞り込みを進め、売上が 2 割減る
- 固定費が重く、営業利益はほぼゼロまで落ちる。やや悲観から悲観の筋書きに近づく。
- アルミ部品で電動車向けの受注が取れる
- アルミの売上が 10 年で 1.6 倍になり、鋳鉄の縮みを補える。
- トヨタ系の再編で、トヨタが持株を引き上げる・買い増す
- 株主構成が変わり、値付けが動く可能性がある。取引上の力関係は変わらない。
見ておくもの
- トヨタ向けの売上比率(45%)と鋳鉄の出荷台数
- 営業利益率と全社費用(原料・電力の転嫁の進み具合)
- 配当性向・自社株買いなど株主還元の方針の変更
- アルミ部品・電動車向けの受注
- 純現金と投資有価証券の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースで置き、今の株価・過去や同業の PER・PBR は使っていない。中立は ROE 4.0% が k 9.0% に届かないため PER の上限は 1÷k = 11.1 倍で、その 7.7 割の 8.5 倍。余った現金は純現金 35 億円のうち 25 億円とし、戻り方は 0.5。投資有価証券の配当と持分法の利益は利益に残したので、価値は別に足していない。悲観は純現金と有価証券と運転資本の売却額を今の自己資本に掛けた。k は基本 7.5% に quality +1.5%。結果は PBR 0.3 倍という割安さに寄せず、式の結果をそのまま出した。新リース会計基準は借入にリース 6 億円が既に入り影響は小さく、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.11 倍・やや楽観 PER 9→11.11 倍・中立 PER 8.5→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足した 9.0%。電動化の縮みは k の寿命で一度だけ見て、悲観の確率はさらに上げていない。