結論
ヨドコウは、めっき鋼板とカラー鋼板を作る独立系の鋼板メーカーだ。売上の 9 割強が鋼板関連で、屋根・壁材やヨド物置はその川下にある。物置の会社というより、素材屋が最終製品まで手を伸ばした会社と見るのが実態に近い。
筆者の結論は割高である。純現金が時価総額の 4 分の 1 あり、財務の安全性は申し分ない。それでも稼ぐ力は ROE で 5〜6%にとどまり、資本コストの 8.5% に届かない。届かない会社が持つ純資産は、帳簿の額面より価値が低い。
国内の建築向け需要は人口とともに細る。値段は鋼材の市況に引かれ、自社で決めにくい。中期経営計画は 2028 年度に営業利益 200 億円を掲げるが、10 年の中立は 150 億円ほどとみる。400 億円規模の買収を計画しているが、当たるかどうかは別の話だ。
配当性向 75% と政策保有株の縮減は、前向きな変化である。それでも 10 年の確率加重の価値は、今の時価総額を 4 割ほど下回る。JFE 系との再編など、買われる側に回る可能性は強気の筋書きに入れた。ただ、それだけで今の値段を支える重みは置けなかった。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業が 10 年後も強いかを問う。国内の建築向け鋼材は細る需要で、値段を自社で決められない。強くなる事業ではないと筆者は見る。守りは堅いが、攻めの武器が乏しい。
次に、稼いだ利益のうち株主が自由に使える分を見る。設備の更新と自動化に毎年かなりの投資が要り、純利益のすべてが株主のものにならない。配当性向 75% を維持できれば還元は厚いが、その原資は薄い利益である。
経営の資本配分の評価はまだ定まらない。現金を抱え込んだ過去と、還元を厚くした直近が混在している。400 億円規模の買収は、うまくいけば事業を広げ、失敗すれば現金を溶かす。バリュー投資家は、買収の中身が見えるまで高い評価を与えない。
最後に安全域だ。無借金で純現金が時価総額の 4 分の 1 ある。倒産の心配はない。ただ、ROE が資本コストに届かない会社が簿価の 1 倍近くで売買されている。現金の裏づけがあっても、安全域は厚くない。払ってよい値段は、純現金と事業の稼ぐ力を足した額で、今の時価総額より低い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は鋼板関連事業で、2026 年 3 月期の売上の 94.5% を占める。中身は 3 つの部門に分かれ、部門ごとの数字は開示されていない。筆者の推定では、売上は鋼板が約 6 割、建材が約 2 割、エクステリアが約 1.6 割だ。
鋼板部門は、亜鉛めっき鋼板とカラー鋼板を作って売る。カラー鋼板は家電や建物の外装に使われ、同社は 1964 年から作る。店売り向けの流通網が強みで、商社や問屋を通して全国の加工業者に届く。
建材部門は、折板(山と谷のある屋根材)やパネルなどの屋根・壁材だ。工場・倉庫・公共建築が主な買い手で、データセンターなど新しい分野の開拓を進めている。エクステリア部門は、ヨド物置とヨドガレージが主力である。物置は 1970 年から手がけ、ホームセンターなどで売られる。
残りは、鉄鋼用・製紙用のロール、道路用のグレーチング、自社ビルを貸す不動産だ。不動産は売上が小さいが、利益率は 6 割近い。海外売上は約 760 億円で全体の 4 割弱にあたり、タイ・台湾の加工拠点が支える。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、素材から最終製品までの一貫生産と店売りの販売網だ。普通の板金加工会社が持たない塗装・めっきの設備を持ち、物置のような最終製品まで自社で作れる。ヨド物置は 50 年以上続くブランドである。
弱みも明確だ。川上の高炉を持たない独立系は、原板を高炉メーカーなどから買う立場にある。日本製鉄系や JFE 系の鋼板会社は、原板の調達と規模で優位に立つ。値段は市況に連動し、自社で決める余地は小さい。
収益力は目立たない。過去 10 年の ROE の中央値は 4.8% で、営業利益率は 1.9% から 8.5% の間を動いた。直近の ROE 8.6% は、投資有価証券の売却益など一回きりの利益を含む。実力はもっと低いと筆者は見る。
一方、無借金で、自己資本比率は 76% ある。事業が谷に入っても潰れる心配はない。資本の使い方には課題が残る。長く純現金と政策保有株を抱え込み、2024 年には株主提案を受けた。いまは配当性向 75% を掲げ、姿勢は変わりつつある。ただ、その実効は数年見てから判断したい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の鋼材需要は構造的に縮んでいる。2025 年度の粗鋼生産は 8,033 万トンと、57 年ぶりの低水準だった。人口減と建設需要の弱さが、鋼板の主な行き先である建築・住宅を細らせている。
値段は中国の過剰生産に押さえられる。世界の鉄鋼の生産能力は需要を大きく上回り、安い鋼材が輸出に回る。国内の建材向け鋼板も、輸入材との競争から逃れられない。
業界は再編に向かう。同社は JFE スチール・JFE 鋼板と建材薄板での連携を検討し、中山製鋼所とは電炉材の活用に向けた業務提携で基本合意した。脱炭素の流れで高炉材から電炉材へ原板が移ることは、独立系には調達の選択肢が広がる好機でもある。
需要の下支えもある。老朽化した工場・倉庫の更新、データセンターや物流施設の建設は、折板やパネルの買い手になる。物置はイナバ製作所やタクボなどと競い、新築が減る中で、既存住宅の買い替えと大型・高単価品に軸を移している。景気の山と谷の差は、素材より建築の方が穏やかだが、利益率が薄い分、原板の値動きの影響は大きい。海外ではタイと台湾で、家電や建材向けの加工需要を取り込もうとしている。
資本政策と M&A
還元の方針は大きく前向きに変わった。中期経営計画 2028 は、配当性向 75% 以上と、年間配当に下限を設けて維持することを掲げる。自己株式の保有は発行済株式の 10% 未満とし、いまの約 8% を超えない。政策保有株は 3 年で 2026 年 3 月末の残高の 20%、約 63 億円を減らす。
2024 年にはアクティビストのストラテジックキャピタルが、DOE 6% など還元の拡充と自己株の消却を求めた。会社は提案に反対したが、取締役会で買収防衛策の廃止を決めた。経営が株主の目を意識し始めた転機である。
投資には 3 年で 620 億円を充てる。うち 400 億円規模を、買収を含む成長戦略に使う。資金は営業キャッシュフロー 500 億円以上と資産売却で賄い、足りなければ借入も使う。買収の中身はまだ明かされていない。純現金が約 500 億円ある会社が、資本コストを超える稼ぎの買収を重ねられるか。最も大きな見どころだ。
買われる側になる可能性も残る。純現金が厚く、純資産に近い値段で売買されてきた。機械試算では 10 年以内の買収・TOB の確率は 2 割弱である。
政策保有株の含み益(評価差額金169億円、税引き後)は、半分だけ価値に足した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社の計画どおり進めば、10 年で利益は大きく伸びる。中計 2028 は営業利益 200 億円、ROE 8% を掲げ、長期ビジョンも売上 2,500 億円の水準を示す。直近の営業利益 119 億円から見て、無理な数字ではない。
建材とエクステリアは、数量より中身で稼げる。データセンターや物流施設向けの折板、大型で高単価の物置は、鋼板より利益率が高い。鋼板は自動化と電炉材の活用で、コスト競争力を上げられる。
資本政策が変わったことも見逃せない。配当性向 75% は、10 年で見れば純利益の大半を株主へ戻す約束だ。政策保有株の縮減で得た資金も、還元や買収に回る。純現金が約 500 億円あり、400 億円規模の買収で事業を広げる体力は十分にある。
JFE 系の鋼板会社との建材薄板での連携や、中山製鋼所との提携は、独立系の弱点である規模と原板の調達を補う。再編が進めば、単独の会社が買われる際の上乗せも期待できる。株主提案を受けて経営が株主を意識し始めた今は、変わり目だと言える。
慎重な見方
国内の建築向け需要は、人口とともに確実に細る。2025 年度の粗鋼生産は 57 年ぶりの低水準で、住宅の新築も減る。数量を伸ばす材料は乏しく、会社の計画は買収に頼る部分が大きい。
値段を決められない点も重い。中国の過剰生産が安い鋼材を押し出し、独立系は原板を高炉メーカーなどから買う立場で、値上がり分を全部は転嫁できない。営業利益率が 1.9% まで落ちた年もある。直近の純利益の増加には、一回きりの売却益が混じっている。
ROE の中央値は 4.8% で、資本コストを大きく下回る。純現金が厚くても、それは資本を遊ばせている結果だ。ためた現金の値打ちは、利益を生まないなら額面未満になる。
買収にも不安がある。400 億円規模の買収は、買収で価値を生んだ実績に乏しい中で打ち出された。買う値段が高ければ、現金が減るだけだ。物置はホームセンターの低価格品と競り合い、ブランドだけでは値段を保てない。再編に期待して買われる値段は、実力より高い。
どちらに重みを置いたか
財務の強さと還元の改善では強気の見方が正しい。だが、稼ぐ力が資本コストに届かないという核心は、慎重な見方のほうが強い。確率は、やや悲観と悲観を足した 3 分の 1 強に寄せ、中立を 4 割弱に置いた。
強気の筋書きは、再編と買収が当たる場合に限って成り立つ。しかも、その場合でも ROE はようやく資本コストに並ぶ程度で、倍率は大きく上がらない。結果として、確率加重の価値は今の時価総額を 4 割ほど下回る。事業の実力を否定するのではなく、今の値段が実力に比べ高いという判断だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,220 円1,748 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 588 円842 億円)。 今の値に割り戻すと 965 円1,383 億円、今との差 −31.1%、 期待の年率 +2.6%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,943 円2,785 億円 | 789 円1,130 億円 | +95.1% | +6.9% | 219 円313 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,568 円2,247 億円 | 681 円976 億円 | +60.7% | +4.9% | 450 円645 億円 |
| 中立 | 37% | 1,359 円1,947 億円 | 618 円886 億円 | +41.2% | +3.5% | 732 円1,048 億円 |
| やや悲観 | 25% | 845 円1,211 億円 | 528 円756 億円 | −1.9% | −0.2% | 343 円492 億円 |
| 悲観 | 10% | 363 円520 億円 | 279 円400 億円 | −54.1% | −7.5% | 64 円92 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,220 円1,748 億円 | 588 円842 億円 | +29.1% | +2.6% | 1,807 円2,590 億円 |
今の株価時価総額 1,400 円2,006 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 再編と買収が当たり、独立系の強みが利益に出る 利益 183 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 1,943 円2,785 億円
独立系の弱みだった規模が、再編と買収で薄まる。JFE 系の鋼板会社との建材薄板での連携が実を結び、原板の調達と販売網を共同で使えるようになる。計画する 400 億円規模の買収は、屋根壁材とエクステリアの周辺で高採算の事業を足す形で当たる。データセンターや物流倉庫の鉄骨需要が折板とパネルを押し上げ、建材の数量は 15% 増える。ヨド物置は大型の高付加価値品に寄せ、台数を保ったまま単価で稼ぐ。鋼板は電炉材の活用で脱炭素の注文にも応じ、営業利益率は 6.5% まで上がる。全体の営業利益率は 8% に届き、会社が掲げる 200 億円を大きく超える。ただし ROE は資本コストをようやく上回る程度で、倍率は過去の水準を大きく超えない。
- 鋼板(めっき鋼板・カラー鋼板):数量 88.0(鋼板の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 19(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,715 億円・営業利益 112 億円。数量 88 万トン × 1 トン 19.5 万円、営業利益率 6.5%
- 建材(折板・屋根壁材・パネル):数量 25.3(建材の出荷量(鋼材換算、万トン・年、推定))× 価格 25(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 644 億円・営業利益 71 億円。数量 25.3 万トン × 1 トン 25.5 万円、営業利益率 11.0%
- エクステリア(ヨド物置・ヨドガレージ):数量 35.0(出荷台数(万台・年、推定))× 価格 13(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 450 億円・営業利益 56 億円。35.0 万台 × 1 台 12.9 万円、営業利益率 12.5%
- ロール・グレーチング・不動産ほか:数量 0.5(製品出荷の重さ換算(万トン・年、推定))× 価格 299(1 トンあたり売上(万円・名目、賃料を含む混合値))→ 売上 150 億円・営業利益 17 億円。数量 0.50 万トン換算 × 単価 299 万円(賃料含む)、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 179 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)334 億円。全体の PER 12.87 倍、時価総額 2,632 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再編と買収が両方うまくいく必要があり、会社が過去に買収で価値を生んだ実績も乏しいので低く置いた。
やや楽観 20% 建材とエクステリアの高採算化が進む 利益 142 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,568 円2,247 億円
国内の鋼板は数量を保ち、建材とエクステリアで利益率を積み上げる。折板・パネルは老朽建物の更新と物流・データセンター向けで 5% 増える。エクステリアは新築の減少を、既存住宅の買い替えと大型・高単価品でならして、営業利益率が 11% に上がる。海外のタイと台湾は高付加価値品に寄せて下支えとなる。買収は小ぶりな案件に終わり、会社の計画にある 200 億円には届かないが、営業利益は 180 億円台に乗る。配当性向 75% は守られ、政策保有株の縮減で得た資金も還元に回る。事業は堅実だが、稼ぐ力が資本コストに届かない構造は変わらない。
- 鋼板(めっき鋼板・カラー鋼板):数量 80.0(鋼板の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 19(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,537 億円・営業利益 85 億円。数量 80 万トン × 1 トン 19.2 万円、営業利益率 5.5%
- 建材(折板・屋根壁材・パネル):数量 23.1(建材の出荷量(鋼材換算、万トン・年、推定))× 価格 25(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 575 億円・営業利益 55 億円。数量 23.1 万トン × 1 トン 24.9 万円、営業利益率 9.5%
- エクステリア(ヨド物置・ヨドガレージ):数量 32.9(出荷台数(万台・年、推定))× 価格 12(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 411 億円・営業利益 45 億円。32.9 万台 × 1 台 12.5 万円、営業利益率 11.0%
- ロール・グレーチング・不動産ほか:数量 0.5(製品出荷の重さ換算(万トン・年、推定))× 価格 293(1 トンあたり売上(万円・名目、賃料を含む混合値))→ 売上 147 億円・営業利益 15 億円。数量 0.50 万トン換算 × 単価 293 万円(賃料含む)、営業利益率 10.5%
倍率:事業の純利益 138 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)334 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 2,056 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の需要減を高付加価値化で埋める筋書きで、会社の計画に近い。ただ中計の 200 億円には届かない。
中立 37% 数量は細り、値上げで売上を保つ 利益 118 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,359 円1,947 億円
国内の建築向け需要は人口とともに細り、鋼板の数量は 5% 減、エクステリアは 12% 減る。海外の拡販と建材の更新需要がその一部を埋める。物価の上昇は値上げで転嫁でき、価格は 3 割強上がる。利益率は鋼板 5%、建材 8%、エクステリア 10% で、今の水準とほぼ同じだ。人件費の上昇は自動化で吸収する。会社の言う 200 億円には届かず、営業利益は 150 億円ほどになる。買収は 400 億円の枠の一部しか使われず、買った事業は資本コストをやっと超える程度とする。ROE は 5% 台、配当性向 75% は続く。堅い会社だが、特別に伸びる会社ではない。
- 鋼板(めっき鋼板・カラー鋼板):数量 76.0(鋼板の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 19(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,439 億円・営業利益 72 億円。数量 76 万トン × 1 トン 18.9 万円、営業利益率 5.0%
- 建材(折板・屋根壁材・パネル):数量 21.3(建材の出荷量(鋼材換算、万トン・年、推定))× 価格 24(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 520 億円・営業利益 42 億円。数量 21.3 万トン × 1 トン 24.4 万円、営業利益率 8.0%
- エクステリア(ヨド物置・ヨドガレージ):数量 30.8(出荷台数(万台・年、推定))× 価格 12(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 379 億円・営業利益 38 億円。30.8 万台 × 1 台 12.3 万円、営業利益率 10.0%
- ロール・グレーチング・不動産ほか:数量 0.5(製品出荷の重さ換算(万トン・年、推定))× 価格 286(1 トンあたり売上(万円・名目、賃料を含む混合値))→ 売上 143 億円・営業利益 14 億円。数量 0.50 万トン換算 × 単価 286 万円(賃料含む)、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 114 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)334 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,756 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要の縮みと値上げの転嫁がほぼ釣り合う、最も起こりやすい姿。独立系で規模の弱みを残す。
やや悲観 25% 国内の縮みと輸入材の圧力で薄利が続く 利益 84 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 845 円1,211 億円
国内の需要減が想定より速く進み、中国など海外の安い鋼板が値段の上値を押さえる。鋼板の数量は 12% 減り、価格は物価に届かず 3 割の上昇にとどまる。独立系は原板を高炉メーカーなどから買う立場で、値上がり分を全部は転嫁できない。ヨド物置は新築の減少とホームセンターの低価格品に押され、台数が 2 割減る。買収は 400 億円規模の枠を使うが、価格が高く、稼ぎが資本コストを下回って現金だけが減る。配当性向 75% は守るが、配当の総額は細る。事業が崩れるわけではない。ただ、利益は今より 2 割ほど少なくなる。
- 鋼板(めっき鋼板・カラー鋼板):数量 70.4(鋼板の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 18(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,293 億円・営業利益 49 億円。数量 70 万トン × 1 トン 18.4 万円、営業利益率 3.8%
- 建材(折板・屋根壁材・パネル):数量 20.2(建材の出荷量(鋼材換算、万トン・年、推定))× 価格 24(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 478 億円・営業利益 29 億円。数量 20.2 万トン × 1 トン 23.6 万円、営業利益率 6.0%
- エクステリア(ヨド物置・ヨドガレージ):数量 28.0(出荷台数(万台・年、推定))× 価格 12(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 335 億円・営業利益 25 億円。28.0 万台 × 1 台 11.9 万円、営業利益率 7.5%
- ロール・グレーチング・不動産ほか:数量 0.5(製品出荷の重さ換算(万トン・年、推定))× 価格 278(1 トンあたり売上(万円・名目、賃料を含む混合値))→ 売上 132 億円・営業利益 11 億円。数量 0.47 万トン換算 × 単価 278 万円(賃料含む)、営業利益率 8.0%
倍率:資本コスト8%。余った現金を除いた事業のROE3.9%がk以下なのでPERの上限は1÷k=11.8倍で、その約7割の8.2倍に置く。伸びと値決め力を低く見て、上限より低めに置く。
確率:国内の縮みが速く、輸入材で値上げが転嫁しきれない。慎重な見方の方が強いので、確率を楽観側より厚くした。
悲観 10% 構造的に負け、素材屋の旨みを失う 利益 29 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 363 円520 億円
構造的に負ける 10 年だ。新築住宅の着工が急に落ち、国内の建築向け鋼材の需要が 3 割減る。中国などからの輸入材が国内の値段を押し下げ、独立系は規模で高炉系に負ける。鋼板の営業利益率は 1.5% まで落ち、物置もホームセンターの自社ブランドや新興勢に押される。買収は高値づかみとなり、のれんと設備の減損で自己資本を 330 億円ほど減らす。配当は数年で削られる。事業は残るが、素材屋としての旨みは失われ、価値は手元の現金と持ち株の値打ちにほぼ頼る形になる。独立系として単独で生き残る道は狭まり、JFE 系など他社の傘下に入る選択も現実味を帯びるが、その時の値段は純資産を大きく割る水準にとどまる。
- 鋼板(めっき鋼板・カラー鋼板):数量 56.0(鋼板の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 17(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 965 億円・営業利益 15 億円。数量 56 万トン × 1 トン 17.2 万円、営業利益率 1.5%
- 建材(折板・屋根壁材・パネル):数量 17.2(建材の出荷量(鋼材換算、万トン・年、推定))× 価格 22(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 381 億円・営業利益 11 億円。数量 17.2 万トン × 1 トン 22.2 万円、営業利益率 3.0%
- エクステリア(ヨド物置・ヨドガレージ):数量 21.7(出荷台数(万台・年、推定))× 価格 11(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 246 億円・営業利益 7 億円。21.7 万台 × 1 台 11.3 万円、営業利益率 3.0%
- ロール・グレーチング・不動産ほか:数量 0.4(製品出荷の重さ換算(万トン・年、推定))× 価格 257(1 トンあたり売上(万円・名目、賃料を含む混合値))→ 売上 109 億円・営業利益 6 億円。数量 0.42 万トン換算 × 単価 257 万円(賃料含む)、営業利益率 5.0%
倍率:悲観は事業の稼ぐ力が資本コストを大きく下回り、積み上げた利益は額面を割る。値打ちは稼ぐ力(純利益 ÷ k)か、売れる資産の税引き後のどちらか大きい方で測る。後者が上回るので、純現金と政策保有株の税引き後約 520 億円を、今の自己資本 2,026 億円に対する比(0.257 倍)で書いた。
確率:着工の急減、輸入材の流入、買収の失敗が重なる複合の筋書き。独立系の素材屋では十分あり得るので 1 割は置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鋼板(めっき鋼板・カラー鋼板)
亜鉛めっき鋼板・カラー鋼板を作り、商社・問屋・加工業者へ売る素材の事業。国内と海外(タイ・台湾)を含む。
| 数量鋼板の出荷量(万トン・年、推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.0 | 14 | 1,130 | 57 |
| 10 年後 中立 | 76.0 | 19 | 1,439 | 72 |
取り方:部門別は非開示。鋼板関連事業の売上 1,847 億円のうち、鋼板部門が約 6 割とみて 1,130 億円、出荷量を約 80 万トン(めっき・カラー鋼板の平均単価を 1 トン 14 万円強と仮定)とした。数量は実質、物価 3% と原板の値動きは価格に入れる。営業利益は 5% と推定。
建材(折板・屋根壁材・パネル)
工場・倉庫・公共建築向けの折板、パネルなどの屋根・壁材。
| 数量建材の出荷量(鋼材換算、万トン・年、推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22.0 | 18 | 400 | 32 |
| 10 年後 中立 | 21.3 | 24 | 520 | 42 |
取り方:部門別は非開示。建材部門を売上約 2 割の 400 億円とみて、鋼材換算で約 22 万トン、1 トン 18 万円強(加工費込み)と仮定した。営業利益率は 8% と推定。
エクステリア(ヨド物置・ヨドガレージ)
物置・ガレージなど住宅向けの最終製品。
| 数量出荷台数(万台・年、推定) | 価格1 台あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35.0 | 9.05 | 317 | 32 |
| 10 年後 中立 | 30.8 | 12 | 379 | 38 |
取り方:部門別は非開示。エクステリアを約 317 億円とみて、年約 35 万台、平均約 9 万円(物置と大型のガレージの平均)と仮定した。台数は実質、物価と高付加価値化は 1 台の売上に入れる。営業利益率は 10% と推定。
ロール・グレーチング・不動産ほか
鉄鋼用・製紙用のロール、道路用のグレーチング、自社ビル賃貸など。
| 数量製品出荷の重さ換算(万トン・年、推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目、賃料を含む混合値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.5 | 214 | 107 | 11 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 286 | 143 | 14 |
取り方:ロール 34 億円・グレーチング 29 億円・不動産 14 億円・他 30 億円の合計 107 億円。単価は高付加価値のロールと賃料を混ぜた平均で、重さ換算の数量とは粗く対応するだけ。営業利益 11 億円(不動産が 8 億円)。
リスクと懸念
国内の建築需要の縮み
売上の大半が建築・住宅向けの鋼材に結びつく。新築着工の減少が想定より早く進めば、数量の下振れが全部門に及ぶ。2025 年度の国内粗鋼生産は 57 年ぶりの低水準で、構造的な縮みは続く。
原板の調達と値決めの弱さ
川上の高炉を持たない独立系は、原板を高炉メーカーなどから買う。中国の安い鋼材が値段の上値を押さえ、原板の値上がりを製品価格に全部は転嫁できない。営業利益率は 1.9% から 8.5% を動いてきた。
買収の失敗
400 億円規模の買収を計画するが、中身は未公表。純現金が約 500 億円ある会社が高値で買えば、現金が減るだけで ROE は上がらない。過去に買収で価値を生んだ実績は乏しい。
再編に取り残される
JFE 系との建材薄板での連携は検討中で、中山製鋼所との提携は基本合意の段階だ。連携が進まなければ、独立系は規模で高炉系に劣るまま、コスト競争で差をつけられる。
エクステリアの競争
ヨド物置はイナバ製作所、タクボなどと競う。新築の減少とホームセンターの低価格品が、台数と単価の両方を圧迫するおそれがある。
一回きりの利益への依存
2026 年 3 月期の純利益は営業利益を大きく上回り、投資有価証券の売却益などが混じる。政策保有株の縮減で得る売却益は先細りで、これを除くと実力の利益は 110〜120 億円ほどだ。
今後の分かれ目
- 400 億円規模の買収が、営業利益率 8% 以上の事業を買う形で公表されたら
- やや楽観と楽観の確率を上げてよい。ただし買収額が純現金を超え、稼ぎが資本コストを下回るなら、むしろ悲観側へ寄せる。
- JFE 系の鋼板会社との建材薄板の連携が、共同の生産・販売に進んだら
- 規模の弱みが薄まるので、鋼板の営業利益率を 1 ポイント上げた筋書きの確率を増やす。
- 鋼板関連の営業利益率が 2 期続けて 5% を下回ったら
- 原板の転嫁が効かなくなっているとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 配当性向 75% が崩れ、現金が再び積み上がり始めたら
- 資本配分の改善は一時的だったとみて、余った現金の戻り方を見直す。
- 新築住宅着工が 2 年連続で大きく落ちたら
- エクステリアと建材の数量を下方修正し、悲観の筋書きに近づける。
- 買収提案や TOB が出たら
- 純現金と政策保有株の裏づけがあるので、買う側の提示額が価値を上回るかを確かめる。
見ておくもの
- 鋼板関連の営業利益率と、国内・海外の出荷量
- 400 億円規模の買収の中身と金額
- JFE 系との建材薄板での連携、中山製鋼所との提携の進み具合
- 配当性向 75% の維持と、政策保有株の縮減の進み具合
- 新築住宅着工と非住宅(倉庫・データセンター)の鉄骨需要
倍率と資本コストの決め方
数量×価格でセグメントを積み、物価 3% は価格に入れた(鋼板は 1.34 倍が中立)。倍率は資本コスト 8%(基本 7.5% に循環 +0.5%・値決め力 +0.5%)と、事業の ROE が資本コストを下回るという経済性から、上限 1÷k の 7〜9 割に置いた。今の PER や PBR、過去の倍率は使っていない。時価総額は事業の純利益×PER に、余った現金 250 億円を帳簿の値で足して出した。悲観は稼ぐ力ではなく、純現金と政策保有株の税引き後で床を置いた。リースが重い事業ではないので、10 年後の数字は今と同じ形で置いた。政策保有株の含み益は評価差額金の半分だけ余った資産として足し、その利息分を純利益から引いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。