結論
新報国マテリアルは、半導体と液晶パネルの製造装置に使う、熱で伸び縮みしない合金(インバー合金)の鋳物を作る会社だ。従業員は 100 人弱。客先は露光装置のキヤノンとニコンで、売上の半分を超える。
2026 年 12 月期は中間決算で売上が 10%、営業利益が 19% 増え、足元の勢いは強い。だが筆者の結論は「割高」だ。確率をかけた本質価値は今の時価総額の 6 割に届かない。受注の山を平均と見てはいけない。
この会社の価値は、客先の装置が鋳物のステージを使い続けるかにかかる。強みは、低熱膨張合金で世界でも数少ないトップメーカーという立場と、金属積層造形という新しい武器だ。
いちばん気にしているのは客先の偏りだ。2 社の投資が止まると売上が急に細る。過去 20 年に赤字の期が 2 回あり、2009 年には営業利益率が −62% まで落ちた。財務は強く、実質の純現金が時価総額の 3 割弱ある。割高と見る理由は、財務ではなく、10 年の平均の稼ぐ力が今の値段に届かないことにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」と問う。低熱膨張合金の鋳物は、精密装置が続く限り必要で、この点は評価できる。ただし客先の 2 社が装置を作り続けるかは、10 年先が読めない。
株主のものになる利益は、設備投資が小さく、純利益に近い。2026 年 12 月期の純利益 6.5 億円は、受注の山の数字で、10 年の平均は 7 億円台と置く。
経営は、研究開発に売上の 6% を投じ、金属積層造形で次を探している。資本の使い方は、現金を積み上げながら配当を 4 割出す、堅実な形だ。ただし現金の積み上げが大きく、自己資本の利回りは低いままになる。
安全域は、今の値段にない。時価総額 83 億円は、10 年の平均の純利益の 11 倍にあたる。実質純現金 22 億円を引いても、事業の値段は割高と筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は特殊合金で、売上の 97% を占める。1 つ目は低熱膨張合金(インバー合金)の鋳物。温度が変わっても寸法が変わらない性質を生かし、露光装置と検査装置のステージや構造材に使う。半導体・液晶パネル向けが売上の約 7 割。2 つ目は高温高強度合金の鋳物で、鉄鋼メーカーのシームレスパイプ(継ぎ目のない鋼管)を作る工具などに使う。日本製鉄が売上の 1 割台を占める。
副業として不動産賃貸があり、売上は 1.5 億円ながら営業利益が 1.2 億円と利益率が高い。
客先はキヤノンが約 3 割、ニコンが約 3 割、日本製鉄が 1 割台。この 3 社で売上の 7〜8 割を占める。製造は三重県と埼玉県の工場で、金属積層造形の新設備もそれぞれにある。
従業員は単体で 99 名と少なく、研究開発費は売上の 6% にあたる 3.6 億円を投じている。2025 年 12 月期は売上が 11% 減り、営業利益は 4.7 億円に落ちたが、赤字には入らなかった。固定費は重くない。次の 3 年の目標は、売上 100 億円と、インバー合金のグローバルニッチトップだ。
優良さと弱いところ
強みは、低熱膨張合金の鋳物で積み上げた製造ノウハウだ。インバー合金は鋳造が難しく、割れや寸法のばらつきを抑える技術は簡単にまねできない。会社も自らを「低熱膨張合金、シームレスパイプ製造用工具のトップメーカー」と位置づける。
弱みは 3 つ。第 1 に客先 2 社への偏り。露光装置は ASML が世界の大半を握り、キヤノンとニコンの装置の市場は大きくない。第 2 に利益率の振れ。2016 年 12 月期の 16.6% から 2020 年 12 月期の 5.6% まで動いた。第 3 に規模。売上 55 億円、従業員 99 名では、素材や工法が変わった時の対応力に限りがある。
資本効率は、過去 10 年の ROE の中央値が 10.2% で k に近い。ただし 2014 年から 2017 年の 25% 以上は、自己資本が小さかった頃の数字だ。今は 7% 前後に落ち着く。
経営は、金属積層造形に投資し、売上 100 億円という目標を掲げる点を評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体製造装置の市場は、AI 向けの先端ロジックとメモリの投資で 2026 年に 9% 伸びる見込みだ。ただし、この会社の客先が作る露光装置は、EUV(極端紫外線)の ASML に押されている。キヤノンはナノインプリント(型を押し当てて回路を作る方式)、ニコンは液晶パネル向けとパッケージ向けで、それぞれ生き残りを図る。液晶パネルの露光装置は、中国のパネル投資の波を受ける。
この鋳物の需要は、装置の台数よりもステージの大型化と精度の要求に左右される。精度が上がるほど、熱で伸び縮みしない素材の価値は高まる。逆に、客先が別の素材(セラミックスや炭素繊維)に切り替えると、需要は一気に細る。
鉄鋼向けの高温高強度合金の鋳物は、シームレスパイプの需要と日本製鉄の工具調達に結びつく。数量は横ばいから微減。
半導体向けの受注の山谷は、客先の装置投資の波そのものだ。10 年の平均の利益は、山の利益でなくその間の平均で測る。2026 年 12 月期の好調は、2025 年の落ち込みからの戻りと、装置投資の回復が重なったものだ。
資本政策と M&A
還元は安定配当が基本で、年 2 回。2025 年 12 月期は性向が 4 割強。自己株式の取得も小さく行う。2026 年 2 月には買収防衛策の継続を検討すると開示している。
現金預金は 33 億円で、借入は 11 億円。定期預金 15 億円が現金同等物に入らず、実質の純現金は 22 億円(時価総額の 3 割弱)。運転資金と設備投資の備えを引いた 12 億円を、事業に要らない余った現金と見た。戻り方は、配当と少額の自己株式取得の実績はあるが、方針が強くないので 0.75 とした。
上場株は 2.6 億円と小さい。M&A の実績は目立たない。買収される可能性は 10 年で 2 割弱と推計される。TOB の上乗せは本質価値に含めていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026 年 12 月期の中間決算は、売上が 10%、営業利益が 19% 増えた。通期の会社予想は営業利益 6.5 億円だが、中間の勢いはそれを上回る。半導体と液晶パネルの装置投資が回復し、受注の質も上がっている。
低熱膨張合金の鋳物で世界でも数少ない専業で、客先は技術の変更に簡単に動けない。新設の金属積層造形が量産に入れば、単価の高い部品が加わる。純現金は 22 億円あり、無借金に近い。配当も出し、自己株式の取得も行う。小さな会社で、売上 100 億円の目標に届けば、利益は 2 倍になる。受注残も増えており、足元の増益は 1 年で終わらない。ステージの精度要求は年々高まり、熱で伸び縮みしない素材の価値はむしろ上がる。会社の目標どおり売上が 100 億円に達すれば、営業利益は 10 億円を超える。2 年続けて営業利益が 8 億円を超えれば、10 年の平均を見直す材料になる。足元の増益が 2 年続けば、利益の平均を見直す材料になる。
慎重な見方
足元の増益は、2025 年 12 月期の落ち込みからの戻りにすぎない。営業利益は 2022〜2024 年の 6 億円台と同じ水準を回復しただけで、平均を超えていない。時価総額 83 億円は、2026 年 12 月期の予想純利益の 13 倍にあたり、山の利益を前提にしている。
客先はキヤノンとニコンの 2 社で、露光装置は ASML に押されている。客先が別素材のステージに切り替えれば、需要は一気に消える。2009 年 12 月期の営業利益率は −62% に落ちた。
従業員 99 名の会社が、金属積層造形で大手と戦うのは難しい。研究開発費の 3.6 億円は、営業利益 4.7 億円に近い。売上 100 億円の目標は、10 年たっても届かないまま、投資だけが先行する危険がある。純現金は厚いが、それは事業が稼いだ分ではなく、使い道が少なかった分だ。現金の使い方が変わらない限り、株主の取り分は増えない。
どちらに重みを置いたか
足元の勢いは本物だが、山を平均と見ない慎重な見方が 10 年の中立に近い。確率は中立に 3 割、やや悲観と悲観に 4 割を置き、楽観は 9% にとどめた。純現金の厚みが悲観の床を支えるが、事業の稼ぐ力が今の値段を支えるには足りない。この判断は、受注の山と谷をならした 10 年の平均に基づく。確率の配分は、客先の偏りの大きさと、足元の増益が続く可能性の両方を踏まえたものだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,408 円95 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 345 円23 億円)。 今の値に割り戻すと 887 円60 億円、今との差 −21.6%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 2,951 円200 億円 | 666 円45 億円 | +219.5% | +12.3% | 326 円22 億円 |
| やや楽観 | 21% | 1,982 円134 億円 | 488 円33 億円 | +118.2% | +8.1% | 519 円35 億円 |
| 中立 | 31% | 1,540 円104 億円 | 385 円26 億円 | +70.0% | +5.5% | 597 円40 億円 |
| やや悲観 | 24% | 756 円51 億円 | 237 円16 億円 | −12.3% | −1.3% | 238 円16 億円 |
| 悲観 | 15% | 447 円30 億円 | 44 円3 億円 | −56.6% | −8.0% | 74 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,408 円95 億円 | 345 円23 億円 | +54.8% | +4.5% | 1,753 円118 億円 |
今の株価時価総額 1,132 円77 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 露光装置と検査装置の投資が 10 年続き、低熱膨張鋳物の数量が 6 割増える 利益 13 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 2,951 円200 億円
半導体と液晶パネルの製造装置の投資が長く続き、露光装置や検査装置のステージ(位置を決める台)に使う低熱膨張鋳物の数量が 10 年で 6 割増える。インバー合金のグローバルニッチで首位という立場を生かし、金属積層造形(金属粉を溶かして形を作る新工法)が加わって単価も上がる。営業利益は 15 億円、純利益は 12 億円台に乗る。配当は性向 4 割を保ち、現金は積み上がる。ただし 10 年の終わりに山が来る確率は低く、この筋書きは 1 割に届かない。売上は 100 億円を超え、会社が掲げる目標に届く。
- 低熱膨張合金鋳物:数量 1,920(出荷重量(トン。推定))× 価格 0.04(1 トンあたりの売上(億円))→ 売上 81 億円・営業利益 12 億円。低熱膨張鋳物 1,920 トン(推定)× 1.34 倍、利益率 15%
- 高温高強度合金鋳物:数量 1,800(出荷重量(トン。推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。高温高強度鋳物 1,800 トン × 1.34 倍、利益率 8%
- 不動産賃貸:数量 10.0(賃貸物件(件相当。推定))× 価格 0.17(1 件相当あたりの賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸 10 件相当 × 賃料 1.15 倍、利益率 78%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 15.2 倍、時価総額 200 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2016 年 12 月期の営業利益率 16.6% が山の水準。そこまでは戻らない前提で 15% に置いた。シェアの高さは強みだが、客先の 2 社の投資の山谷に左右される会社で、楽観は 1 割に届かない。
やや楽観 21% ステージ向けの需要が伸び、利益率は 11% 台に乗る 利益 9 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,982 円134 億円
低熱膨張鋳物の数量が 10 年で 35% 増え、価格は物価並みに上がる。高温高強度鋳物は鉄鋼向けで 1 割の増加にとどまる。営業利益は 11 億円、営業利益率は 12% 台。配当性向は 4 割で、純現金は少しずつ積み上がる。2026 年 12 月期の中間決算で見えた増益の流れが、ある程度続く筋書きだ。ただし利益率は 2016 年 12 月期の山の水準には届かず、売上は 80 億円台にとどまる。売上は 80 億円台にとどまり、2016 年 12 月期の山の利益率には届かない。客先の偏りは変わらないが、ステージの精度の要求が上がる分だけ単価は守れる。
- 低熱膨張合金鋳物:数量 1,620(出荷重量(トン。推定))× 価格 0.04(1 トンあたりの売上(億円))→ 売上 68 億円・営業利益 9 億円。低熱膨張鋳物 1,620 トン × 1.34 倍、利益率 12.5%
- 高温高強度合金鋳物:数量 1,650(出荷重量(トン。推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。高温高強度鋳物 1,650 トン × 1.34 倍、利益率 6%
- 不動産賃貸:数量 10.0(賃貸物件(件相当。推定))× 価格 0.17(1 件相当あたりの賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸 10 件相当 × 1.15 倍、利益率 78%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.84 倍、時価総額 134 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2022 年 12 月期から 2024 年 12 月期の営業利益は 6.4 億円、6.3 億円、6.5 億円と安定していた。需要が伸びれば 11 億円までは届く。ただし 2025 年 12 月期は 4.7 億円に落ちており、5 分の 1 に置いた。
中立 31% 数量は景気の山谷をならして 2 割増え、営業利益率は 11% 前後 利益 8 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 1,540 円104 億円
低熱膨張鋳物は、半導体と液晶パネルの装置の更新で数量が 10 年で 2 割増える。価格は物価の 1.34 倍。高温高強度鋳物は鉄鋼のシームレスパイプ用の工具で、数量は横ばい。営業利益は 9 億円、営業利益率は 10.8%。受注の山谷をならした平均の利益で、2026 年 12 月期の好調はその山とみる。減価償却は 2 億円台のまま、設備更新の分だけ増える。配当は性向 4 割を守り、自己株式の取得は小さい。研究開発費は物価で増え、金属積層造形の費用も加わる。客先の偏りは変わらず、2 社の投資の波に利益が左右される構図が続く。
- 低熱膨張合金鋳物:数量 1,440(出荷重量(トン。推定))× 価格 0.04(1 トンあたりの売上(億円))→ 売上 61 億円・営業利益 7 億円。低熱膨張鋳物 1,440 トン × 1.34 倍、利益率 11%
- 高温高強度合金鋳物:数量 1,500(出荷重量(トン。推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。高温高強度鋳物 1,500 トン × 1.34 倍、利益率 5%
- 不動産賃貸:数量 10.0(賃貸物件(件相当。推定))× 価格 0.17(1 件相当あたりの賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸 10 件相当 × 1.15 倍、利益率 78%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.97 倍、時価総額 104 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2014 年 12 月期から 2025 年 12 月期の営業利益の平均は 6 億円弱で、山でも谷でもない。10 年の物価の上昇と数量の 2 割増を乗せて 9 億円とした。
やや悲観 24% 客先の投資が細り、数量は横ばいで価格も物価に届かない 利益 4 億円 · PER 10.4 倍 · 株価時価総額 756 円51 億円
露光装置や検査装置の投資が伸びず、低熱膨張鋳物の数量は横ばい、価格は物価に届かず 1.25 倍。高温高強度鋳物は鉄鋼向けの縮小で 15% 減る。営業利益は 4.5 億円、純利益は 3.8 億円。配当は性向を保てず、減る。固定費の重い鋳造の稼働が下がり、利益率は 5% 台に落ちる。研究開発費は削れず、金属積層造形の事業化も遅れる。売上は 60 億円台にとどまり、営業利益率は 2020 年 12 月期に近い 5% 台に戻る。純現金の積み上がりだけが、株主の取り分を支える。売上は 60 億円台にとどまり、営業利益率は 2020 年 12 月期に近い 5% 台に戻る。純現金の積み上がりだけが、株主の取り分を支える。
- 低熱膨張合金鋳物:数量 1,200(出荷重量(トン。推定))× 価格 0.04(1 トンあたりの売上(億円))→ 売上 47 億円・営業利益 3 億円。低熱膨張鋳物 1,200 トン × 1.25 倍、利益率 6%
- 高温高強度合金鋳物:数量 1,275(出荷重量(トン。推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。高温高強度鋳物 1,275 トン × 1.25 倍、利益率 3%
- 不動産賃貸:数量 10.0(賃貸物件(件相当。推定))× 価格 0.15(1 件相当あたりの賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸 10 件相当 × 1.0 倍、利益率 70%
倍率:ROE 4.6% で稼ぎは k に届かない。PER は 1÷k の 11.1 倍が上限で、利益が薄い谷の年を平均的に見るため、約 8 割の 10.37 倍に置いた。余った現金は 0.75 倍で足している。
確率:2020 年 12 月期は営業利益率が 5.6% に落ち、営業利益は 2.2 億円だった。投資が細る年が数年続けば、同じ水準に戻る。確率を 4 分の 1 弱に置いた。
悲観 15% 露光・検査装置の客先が別の方式に移り、低熱膨張鋳物の需要が細る 利益 −1 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 447 円30 億円
客先が鋳物から別の素材のステージに切り替え、低熱膨張鋳物の数量は 45% 減る。価格も物価に届かず、固定費の重い鋳造の稼働が大きく下がって営業赤字になる。自己資本は減損で 52 億円に減るが、純現金と賃貸不動産があり、継続はできる。配当は大きく減り、資産を頼りに生き残る。売上は 35 億円前後まで落ち、2009 年 12 月期に近い落ち込みになる。従業員の整理と設備の縮小で固定費は下がるが、再建には数年かかる。売上は 35 億円前後まで落ち、2009 年 12 月期に近い落ち込みになる。固定費の整理に数年かかり、事業の価値は資産に近づく。
- 低熱膨張合金鋳物:数量 660(出荷重量(トン。推定))× 価格 0.03(1 トンあたりの売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 −2 億円。低熱膨張鋳物 660 トン × 1.10 倍、利益率 −8%
- 高温高強度合金鋳物:数量 900(出荷重量(トン。推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。高温高強度鋳物 900 トン × 1.10 倍、利益率 0%
- 不動産賃貸:数量 10.0(賃貸物件(件相当。推定))× 価格 0.15(1 件相当あたりの賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸 10 件相当 × 1.0 倍、利益率 70%
倍率:赤字で稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後 30 億円(下の内訳)に近く、減損後の自己資本 52 億円に 0.58 倍を掛けた。今の自己資本 58 億円に対しては 0.52 倍。事業の経済性から置いた値で、市場の値付けには依らない。
確率:2009 年 12 月期は営業利益率 −62% まで落ちた。特定の客先と用途に偏る小さな鋳造会社が、技術の置き換えで赤字に入る確率を 15% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
低熱膨張合金鋳物
露光装置・検査装置のステージや構造材に使う、熱で伸び縮みしないインバー合金などの鋳物。
| 数量出荷重量(トン。推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,200 | 0.03 | 38 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,440 | 0.04 | 61 | 7 |
取り方:特殊合金 53.9 億円のうち半導体・FPD 向けが約 7 割(37.7 億円)。出荷重量は開示がなく、1 トンあたり約 0.03 億円の合金鋳物として 1,200 トンと推定した。営業利益は特殊合金の 3.5 億円を配分した推定。
高温高強度合金鋳物
鉄鋼のシームレスパイプ製造用の工具など、高温で強度を保つ鋳物。
| 数量出荷重量(トン。推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 0.01 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 0.01 | 22 | 1 |
取り方:特殊合金 53.9 億円の残り約 3 割(16.2 億円)。1 トンあたり約 0.011 億円として 1,500 トンと推定した。営業利益は配分の推定。
不動産賃貸
保有する不動産の賃貸。
| 数量賃貸物件(件相当。推定) | 価格1 件相当あたりの賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.0 | 0.15 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 0.17 | 2 | 1 |
取り方:売上 1.5 億円、営業利益 1.19 億円は開示。件数は推定。賃料は物価の 3% より緩く、10 年で 1.15 倍とした。
リスクと懸念
客先 2 社への偏り
キヤノンとニコンで売上の半分超。2 社の投資が止まる、または別の素材に切り替えると、売上が急に細る。
露光装置の市場構造
露光装置は ASML が大半を握る。キヤノンとニコンの装置の市場が縮めば、鋳物の需要も縮む。
受注の山と谷
営業利益率は −62%(2009 年)から 16.6%(2016 年)まで動いた。足元の増益を平均と見ると過大評価になる。
原材料のニッケル価格
インバー合金はニッケルを多く使う。価格が上がると、転嫁が遅れて利益を削る。
規模の小ささと新事業
従業員 99 名で金属積層造形に投資しており、研究開発費は営業利益に近い。事業化が遅れると負担が重い。
今後の分かれ目
- 2026 年 12 月期の営業利益が 8 億円を超える
- 山が高いのか構造が変わったのかを確かめ、中立の置き方を上に見直す。
- 客先が別素材のステージに切り替えると表明する
- 低熱膨張鋳物の数量を下げ、悲観の確率を上げる。
- 金属積層造形が量産に入り、売上が出る
- 単価と利益率を上に直し、楽観の確率を上げる。
- 配当性向や自己株式取得の方針が強まる
- 余った現金の戻り方を 0.75 から 1.0 に見直す。
- 買収防衛策の更新や他社の買収提案が出る
- 提案価格を本質価値と比べる。TOB の上乗せは含めていない。
見ておくもの
- 半導体・FPD 向けの受注と売上(客先の投資)
- 営業利益率(10% 前後を保てるか)
- キヤノン・ニコンの比率の推移
- 金属積層造形の売上化
- 配当性向と自己株式取得
倍率と資本コストの決め方
数量 × 価格をセグメントごとに積み、k 8% と ROE から倍率を決めた。ROE が k 以下で PER は 1÷k の 11.1 倍が上限。中立は 9.9 倍に置いた。今の時価総額は考慮していない。2026 年 12 月期の好調は山とみて、過去 12 年の平均に近い営業利益率 11% 弱で中立を置いた。余った現金 12 億円は別に足し、戻り方 0.75 を掛けた。新リース会計基準の影響は小さい見込み。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→15.2 倍・やや楽観 PER 9.5→13.84 倍・中立 PER 9.9→12.97 倍・やや悲観 PER 9→10.37 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。