株譜
AI 銘柄分析 · 鉄鋼 · 試作

中部鋼鈑株式会社 5461

電炉で厚板を作る国内唯一の専業。財務は鉄壁だが稼ぐ力は資本に見合わず、増産の成功を今の値段は先取りしている

やや割高
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)1,810 円479 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)2,176 円576 億円差 −16.8%
10 年後から見ると やや割高 価値 1,810 円479 億円 · 差 −16.8% · 期待の年率 +4.5%
期待の年率リターン(10 年)+4.5%資本コスト比 −3.3 pt
推定の資本コスト7.8%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 7.8% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

中部鋼鈑は、名古屋の工場で厚板を作る電炉メーカーだ。厚板は橋やビル、建設機械の骨組みに使う厚い鋼板で、これを電炉で専業で作る会社は国内に他にない。筆者の結論は「やや割高」である。財務は鉄壁だが、稼ぐ力が資本の大きさに見合っていない。

強みは立地と専業の身軽さにある。中部・関東・関西の3大都市圏にトラックで届き、スクラップの調達も出荷も有利だ。国内の厚板は高炉3社が8割超を握る。その高炉が造船の細りで設備を畳みはじめ、電炉が埋める余地が生まれている。

弱みは利益の薄さだ。2025年1月の爆発事故で製鋼を約2か月半止め、2026年3月期の営業利益は9億円まで落ちた。新しい電気炉が動き、4直3交代で増産に入ったが、下がった鋼材の値段はまだ戻っていない。

現預金と有価証券は合わせて約250億円ある。時価総額の4割を超える額だが、利息と配当は年3億円ほどしか生まない。資本コストを8%台と見れば、積み上げた資本を活かせていないことになる。

10年後の中立の姿は、数量が増えても営業利益率は6%台で、ROEは資本コストに届かない。筆者は、財布は厚いが稼ぎは細い会社だと見る。

バリュー投資の観点から

バリュー投資の観点で、この会社をどう見るか。事業は好ましい。国内唯一の電炉厚板専業で、立地に根ざした小さな堀がある。借金がなく、事故のような一撃にも耐えた。

気がかりは資本の配分だ。自己資本は750億円あるのに、稼ぎは営業利益で10億円前後の年もある。現預金と有価証券の合計は約250億円で、時価総額の4割を超え、そこから年3億円ほどしか入らない。オーナーの立場なら、この金は事業に使うか、株主に返してほしい。

安全域は確かにある。構造的に負ける筋書きでも、売れる資産が値段の足場になる。ただ、足場があることと、価値が足場より上にあることは別の話だ。事業が資本コストを稼げない限り、積んだ資本は帳簿どおりの価値にならない。

筆者は、持ち続けたい事業だが、今の値段を払うほどの余裕はないと考える。増産が実り、メタルスプレッドが事故前の水準に戻る筋書きは十分ありうる。ただその筋書きですら、利益が資本コストを大きく超えるところまでは行かない。

何で稼ぐ会社か

事業は一本、鉄スクラップを電気炉で溶かし、厚板に仕上げて売ることだ。

厚板は厚さ6ミリ以上の鋼板で、建設機械や産業機械、ビルの柱、橋に使う。連結売上の9割台半ばを鉄鋼関連事業が占め、残りは運送や賃貸などの周辺事業だ。

工場は名古屋市中川区の本社工場ただ1つ。製鋼から圧延までを一つの敷地でつなぎ、都市の真ん中でスクラップを買い、近くの顧客に翌月出荷を基本として届ける。出荷の4割は中部、2割強が関東、2割が関西で、半径300キロの圏内に8割強が収まる。

用途は産業機械・建設機械、建築・土木、問屋経由の店売りが中心だ。造船向けはほとんどない。産業機械向けのシェアが高いと会社は説明する。

販売量は2024年3月期に52万トンだった。事故で大きく落ち込んだあと、2026年3月期は前期比13.7%増に戻した。2027年3月期は約60万トンを計画する。2024年10月に完成した新電気炉は投資額が約80億円で、電力の使用量を15%減らす。2026年4月からは製鋼を4直3交代にして、24時間動かしている。

優良さと弱いところ

この会社の強みは、技術の独自性よりも、立地と専業の組み合わせにある。

国内で電炉の厚板を専業で作る会社は他にない。多額の設備投資と熟練の技、スクラップの購買網がそろわないと参入できず、新規の競合は出にくい。電炉の主要10社で比べた営業利益率は、2022・23年度とも1位だったと会社は説明する。

一方、堀は狭い。厚板の値段は高炉の建値に引っ張られ、値上げも値下げも高炉の動き次第だ。工場は1か所で、2025年1月の事故が示したとおり、止まれば売上が丸ごと止まる。売上は500億円規模と小さく、スクラップや電力の値上がりを値段に移すのに時間がかかる。

資本の使い方は、ここまで保守的すぎた。自己資本比率は9割近くあり、過去10年のROEの中央値は3.8%にとどまる。ただ、経営は変わりつつある。配当を利益に連動させる方式から、純資産に対して一定率を払う方式に改め、政策保有株の売却も進めている。

堀の強さは普通と見る。長く続く力はあるが、価格を自分で決められる会社ではない。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

国内の鉄鋼需要は構造的に細っている。2025年度の粗鋼生産は8,033万トンと、1968年度以来の低さだった。人口減と建設の弱さ、製造業の海外移転が重なっている。

厚板では、需要の細りより供給の細りのほうが速い。会社の推計では、国内の厚板の需要は2021年度の900万トンから2026年度に860万トンへ減る。造船が240万トンから160万トンへ縮む一方、土木・建築は160万トンから200万トンへ増える。高炉の供給は同じ期間に110万トン減る。この差が、電炉の取り分になる。

厚板は電炉の比率が14%にすぎない。高炉が設備を畳むほど、脱炭素を求める建設会社は電炉の厚板に向かう。電炉法のCO2は高炉の約5分の1だ。

競合は日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の高炉3社と、電炉の東京製鐵、中山製鋼所である。2022年度の国内シェアは中部鋼鈑が約6%。中山製鋼所には半製品のスラブを供給していて、競合であり顧客でもある。

脅威は2つある。1つは中国の過剰生産で、世界の需給ギャップは2026年に6.3億トンへ広がる。厚板は今のところ輸入の影響が小さいが、円高になれば荒れる。もう1つは、スクラップや電力が上がるのに厚板の値段が追いつかない局面だ。2026年3月期はまさにこれで、単価が11.7%下がり、利益が薄くなった。

資本政策と M&A

還元は手厚いが、利益を超えている。配当の基準は、純資産に対して3.5%を払う方式で、業績が悪くても減らさない仕組みだ。2027年3月期の配当は約30億円と、会社の純利益予想の3倍を超える。

この払い方はこれまで手元資金で賄えた。ただ、資金は2025年3月期末の214億円から、2026年3月期末は129億円に減った。増産に伴う売上債権と在庫の積み増しが主因だ。

政策保有株は少しずつ手放している。2026年3月期は投資有価証券の売却益が4.8億円、売却と償還の収入が86億円あった。残る投資有価証券は約118億円である。

大株主は三井物産スチールが9%、取引先の持株会が6%で、商社や取引先が並ぶ。支配株主はいない。

買収は、買う側としての具体的な動きは確認できない。買われる側の可能性は、小型で純資産に対して株価が安く、現金が厚い点から、筆者は否定できないと見る。kabufuの試算では、10年以内に買収される確率は約2割だ。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

厚板の電炉化は、まだ入口に立ったところだ。国内の厚板の約86%は高炉が作っている。その高炉が造船の細りを受けて設備を畳み、2021年度から2026年度で供給が110万トン減る。需要の減りは40万トンにとどまる。差し引き70万トンの穴を、脱炭素を求める建設会社が電炉の厚板で埋めに来る。

会社はこの波に備えて、新電気炉を2024年10月に動かし、2026年4月から製鋼を4直3交代にした。事故前の52万トンは通過点で、80万トン、さらに100万トンという目標が現実味を帯びる。輸出もアジア向けで四半期に1.2万トンが決まり、年5万トン規模の新しい販路が見えてきた。

利益の面でも余地がある。2023年3月期には営業利益123億円、営業利益率16%を出した実績がある。メタルスプレッドが戻れば、固定費が薄まる増産局面でこの水準に近づく。

さらに、自己資本750億円のうち約250億円は金融資産で、時価総額の4割を超える。株価は純資産を大きく下回る。経営は時価総額1,000億円を掲げており、自社株買いや増配で資本の効率を直す余地は大きい。

慎重な見方

数量が増えても、利益は増えない。厚板の値段は高炉の建値に従い、スクラップや電力の上昇は後から値段に乗る。2026年3月期は販売量が13.7%増えたのに、単価が11.7%下がり、営業利益は66%減った。増産が利益に直結しないことを、この1年がすでに示している。

高炉の撤退で生まれる穴も、あてにならない。国内の厚板需要は人口減と造船の縮みで細り、高炉が設備を絞れば絞るほど、残った高炉は稼働率を守るために値段を下げて取りに来る。電炉が取れる分は、思うほど多くない。2025年度の国内粗鋼は57年ぶりの低水準だ。

営業利益率16%の2023年3月期は、メタルスプレッドが例外的に開いた年の数字である。過去10年のROEの中央値は3.8%で、資本コストをずっと下回ってきた。

工場は1か所しかなく、事故が起きれば売上が止まる。2027年3月期の配当は約30億円で、純利益予想の3倍を超える。この払い方を続ければ、積み上げた現金はいずれ運転資金の増加に消えていく。現金が厚いことは、儲かることとは別の話だ。

どちらに重みを置いたか

慎重な見方のほうが一歩強い。数量が戻ることは強気の見方のとおり確かだが、それが営業利益率の回復と同じ意味にはならない。この会社は過去10年のうち7年、営業利益率が10%に届かなかった。さらに、利益が回復しても、自己資本が大きく、ROEが資本コストを超えにくい。

このため確率は慎重側に寄せた。10年の筋書きは、楽観とやや楽観を合わせて約3割、やや悲観と悲観を合わせて約3.5割とした。厚い金融資産が構造的な負けの床になる点は評価し、悲観の確率を1割強にとどめた。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した株価時価総額 2,422 円641 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 971 円257 億円)。 今の値に割り戻すと 1,810 円479 億円、今との差 −16.8%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 7.8%)→ やや割高

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 8% 5,514 円1,459 億円 1,398 円370 億円 +217.6% +12.3% 553 円146 億円
やや楽観 20% 3,543 円938 億円 1,209 円320 億円 +118.4% +8.1% 950 円252 億円
中立 37% 2,586 円685 億円 1,077 円285 億円 +68.3% +5.3% 1,355 円359 億円
やや悲観 23% 947 円251 億円 756 円200 億円 −21.8% −2.4% 392 円104 億円
悲観 12% 813 円215 億円 378 円100 億円 −45.3% −5.8% 143 円38 億円
加重平均100% 2,422 円641 億円971 円257 億円 +55.9% +4.5% 3,393 円898 億円

今の株価時価総額 2,176 円576 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。

楽観 8% 増産が実り、厚板の電炉化が進む 利益 94 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 5,514 円1,459 億円

高炉が厚板の設備を畳み、電炉が穴を埋める流れが10年続く。新電気炉と4直3交代が生き、販売量は80万トン前後へ伸びる。アジア向けの輸出も年5万トン規模の柱になる。

値段は物価を上回って上がる。脱炭素を求める建設会社が電炉の厚板に価値を認め、高炉との値差が縮むからだ。固定費が薄まり、営業利益率は10%に届く。

資本の使い方も改まる。余った資金は自社株買いと増配に回り、自己資本の積み上がりが止まる。それでもROEは10%に迫り、資本コストをやっと超える。

事故のような再発もなく、スクラップと電力の値上がりも値段に移せる。何もかもうまく回った10年の姿である。

  • 鉄鋼関連事業(厚板・スラブ):数量 80.0(鉄鋼製品販売量(万トン、厚板+スラブ))× 価格 15(1トン当たり販売単価(万円、名目))→ 売上 1,209 億円・営業利益 121 億円。販売量が事故前の5割増し。単価は物価を上回って上昇。営業利益率10%

倍率:事業の純利益 93 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 14.68 倍、時価総額 1,459 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:高炉の撤退、新電気炉、輸出、メタルスプレッドの回復が10年間そろう必要がある。経営が掲げた100万トンに近い姿で、確度は高くない。

やや楽観 20% 増産は進み、利益率は事故前の6割 利益 66 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 3,543 円938 億円

販売量は72万トンまで伸びる。高炉の撤退が続き、電炉の厚板の取り分が少しずつ広がる。輸出は景気次第で増減するが、アジア向けが年3万トンほど積み上がる。

値段は物価並みに上がる。営業利益率は8%で、過去10年の中央値に近い。事故前の高い利益率までは戻らない。

資本の使い方は少しだけ改まる。配当は純資産連動を保ち、政策保有株の売却を進める。純利益は66億円ほどになる。

この筋書きでも、ROEは8%弱と資本コストに届かない。数量の成功は、利益率の回復と同じ意味にならない。

事故前の2023年3月期のように、メタルスプレッドが例外的に開く年も混じる。それでも平均すれば、好況の年と不況の年がならされ、電炉の同業並みの稼ぎに落ち着く。

  • 鉄鋼関連事業(厚板・スラブ):数量 72.0(鉄鋼製品販売量(万トン、厚板+スラブ))× 価格 14(1トン当たり販売単価(万円、名目))→ 売上 1,035 億円・営業利益 83 億円。販売量は55%増。単価は物価並みに1.38倍。営業利益率8%

倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 12.97 倍、時価総額 938 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:会社の80万トン目標を少し下回る72万トンで、利益率も中計の目標には届かない。業界見通しの上位レンジに近い想定。

中立 37% 数量は伸びるが、稼ぐ力は資本に届かない 利益 47 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 2,586 円685 億円

国内の厚板需要は人口減と造船の縮みで細る。ただ、高炉の撤退と電炉化の流れで、中部鋼鈑の販売量は66万トンまで伸びる。事故前の52万トンと、会社の目標80万トンの間に着地する。

値段は物価並みに上がる。営業利益率は6%台で、電炉の同業と同じ水準だ。スクラップと電力の上昇を値段に移すのに時間がかかるため、高炉の建値に頼る限り、利益率は高くならない。

経営は資本を少しずつ効率よく使うようになるが、大きくは変わらない。配当は純資産連動で、毎年28億円ほど払い続ける。純利益は47億円まで戻り、事故前の年に近づく。

利益が物価で伸びても、積み上がった資本が利益を薄める。ROEは6%前後で、資本コストに届かない。

  • 鉄鋼関連事業(厚板・スラブ):数量 66.0(鉄鋼製品販売量(万トン、厚板+スラブ))× 価格 14(1トン当たり販売単価(万円、名目))→ 売上 921 億円・営業利益 58 億円。販売量は4割増。単価は物価並みに1.34倍。営業利益率は6.3%

倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 12.82 倍、時価総額 685 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:国内の厚板需要の細りを、高炉の撤退と輸出が補う中心線。会社の80万トン目標には届かない。会社計画より慎重な線で、中立にしては悲観寄りに見えるが、過去10年の実績に近い。

やや悲観 23% 高炉の値下げと輸入で利益率が戻らない 利益 23 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 947 円251 億円

高炉は設備を畳んでも、残した設備の稼働率を守るために値段を下げて取りに来る。電炉の厚板の取り分は思うほど増えず、販売量は54万トンにとどまる。

輸出は円高で採算が合わず、アジア向けは細る。中国の過剰生産が続き、世界の鋼材価格の天井は低いままだ。

値段は物価の伸びに届かず、10年で1.28倍にとどまる。営業利益率は3%台で、2026年3月期とほぼ同じ苦しさが続く。

配当は純資産連動を守れず、段階的に減らす。純利益は23億円ほど。金融資産は取り崩され、余った現金の使い道はますます見えなくなる。

新電気炉の電力の節約や4直3交代の効果は出るが、値段の下落がそれを打ち消す。経営は拡販を急ぎ、値引きでシェアを守る。結果として利益は増えない。

  • 鉄鋼関連事業(厚板・スラブ):数量 54.0(鉄鋼製品販売量(万トン、厚板+スラブ))× 価格 13(1トン当たり販売単価(万円、名目))→ 売上 720 億円・営業利益 25 億円。販売量は16%増にとどまる。単価は1.28倍。営業利益率3.5%

倍率:資本コスト7.8%。余った現金を除いた事業のROE3%がk以下なのでPERの上限は1÷k=11.6倍で、その約7割の8倍に置く。利益率が戻らず、稼ぐ力は薄い。余った現金は筋書きに書かず、今の額の0.75倍で足した。

確率:高炉が稼働率を守るために値段を下げ、中国材の流入も続く。増産しても利益が出ない最近の1年が続く、現実味のある筋書き。

悲観 12% 電炉の厚板も値崩れし、優良さを失う 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 813 円215 億円

国内の厚板需要が人口減で想定より速く縮む。高炉が設備の撤退を取りやめ、中国の過剰分が円高で国内に入り込む。電炉同士の値下げ競争も始まる。

販売量は40万トンまで落ち、値段は物価の伸びに大きく届かず1.15倍にとどまる。固定費をまかなえず、鉄鋼関連事業は赤字に沈む。

大きな追加投資をした新電気炉の償却が重くのしかかる。配当は大きく削られ、経営は資産の売却で資金を作る。

事業の価値はほぼ消え、残るのは現預金と売れる有価証券だけになる。

名古屋の工場は都市の真ん中にあり、土地の価値は残る。ただ、操業を続けるほど赤字が出るため、経営は縮小か売却の判断を迫られる。株主の取り分は、資産を処分して得る額に近づく。

  • 鉄鋼関連事業(厚板・スラブ):数量 40.0(鉄鋼製品販売量(万トン、厚板+スラブ))× 価格 12(1トン当たり販売単価(万円、名目))→ 売上 479 億円・営業利益 −5 億円。販売量は事故後の水準に逆戻り。単価は1.15倍。赤字

倍率:稼ぐ力はほぼ消え、価値は純現金と売れる有価証券の税後(215億円)の床で測る。今の自己資本750億円に0.287を掛けた額で、稼ぐ力(純利益÷k)より床のほうが大きい。

確率:高炉の撤退が止まり、輸入が国内に入り、電炉同士も値下げ競争に入る構造的な負け筋。単一工場・単一製品の会社で、10年という期間を考えれば無視できない確率として1割強を置いた。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

鉄鋼関連事業(厚板・スラブ)

名古屋の本社工場で、鉄スクラップを電気炉で溶かして厚板とスラブを作り、産業機械・建築土木・問屋向けに売る。連結売上の約95%。運送や賃貸などの周辺事業(売上約28億円・営業利益約4億円)は調整の欄に入れた。

数量鉄鋼製品販売量(万トン、厚板+スラブ)価格1トン当たり販売単価(万円、名目)売上営業利益
今 2026/03 46.4 10 484 6
10 年後 中立 66.0 14 921 58

取り方:開示は売上483.5億円・利益5.5億円と、販売量が前期比13.7%増・単価が11.7%減という変化率のみ。前期の販売量を約41万トンと置いて逆算し、今期を約46万トン・約10.4万円と推定した(2024年3月期は52万トン・約12.5万円)。

リスクと懸念

高炉の建値と輸入に左右される値段

厚板の値段は高炉3社の建値に連動し、中部鋼鈑が自分で決められない。2026年3月期は販売量が増えたのに単価が11.7%下がり、営業利益は66%減った。高炉が稼働率を守るために値下げに転じれば、増産の効果は消える。

単一工場の事故リスク

製鋼から圧延までが名古屋の本社工場1か所にある。2025年1月の水蒸気爆発では、製鋼を約2か月半止めただけで、2025年3月期の純利益が76%減った。同じ規模の事故や災害が再び起きれば、売上が丸ごと止まる。再発防止策は取ったが、集中の構造は変わっていない。

スクラップと電力のコスト

原料の鉄スクラップと電力は、値上がりすると利益を直撃する。厚板の値段に移すには時間がかかる。新電気炉は電力の使用量を15%減らすが、20年固定のオフサイトPPAは通常分の一部にとどまる。メタルスプレッドの縮小が続けば、増産しても利益が出ない。

国内厚板需要の細り

造船向けは韓国・中国の台頭で2021年度の240万トンから2026年度に160万トンへ縮む見通しだ。土木・建築が200万トンへ伸びても、全体は細る。人口減と建設現場の人手不足も、国内需要の重しになる。

金融資産の使い道

現預金と有価証券で約250億円あるが、利息と配当は年3億円ほどしか生まない。これが長く続くと、資本全体の収益が資本コストに届かない。増産の運転資金や配当に使われれば減っていくが、買収で使えば失敗のリスクが生じる。

利益を超える配当

2027年3月期の配当は約30億円で、純利益予想の3倍を超える。純資産に対する3.5%の基準は、業績が悪い年でも払う仕組みだ。この払い方は現金の減りを早める。厳しい年が続けば、基準を下げる判断を迫られる。

今後の分かれ目

2027年3月期の販売量が60万トンを超え、メタルスプレッドが事故前の水準へ戻った場合
楽観・やや楽観の確率を上げてよい。営業利益率が8%を超えて定着するかどうかが次の分かれ目になる。
高炉が厚板の設備の撤退を取りやめ、値下げに転じた場合
やや悲観・悲観に重みを移す。電炉の厚板の取り分が広がるという前提が崩れる。
自社株買いが大きく実施された場合
金融資産の効率が改善する。余った現金の戻り方の評価が上がる。
新電気炉の電力の使用量が計画どおり下がり、4直3交代で稼働が安定した場合
コスト競争力が強まり、営業利益率の下限が上がる。中立の筋書きの利益率を見直す。
製鋼工場で2度目の事故が起きた場合
売上の停止に加え、取引先が高炉に戻る恐れが出る。悲観の確率を上げる。
同業の電炉や高炉、商社から買収の打診があった場合
買収価格は純資産と金融資産が目安になる。今の値段より高い可能性があるが、10年の筋書きは変えない。

見ておくもの

  • 鉄鋼製品の販売量(2027年3月期の約60万トン計画に対する進捗)
  • メタルスプレッド(厚板の販売単価とスクラップ価格の差)
  • 高炉3社の厚板設備の撤退・集約の動き
  • 新電気炉の電力使用量と4直3交代の稼働率
  • アジア向けの輸出受注と円相場
  • 自社株買いなど資本政策の発表

倍率と資本コストの決め方

価格・数量・利益率はセグメントから積み上げ、倍率はROEとkから決めた。今の株価や過去のPBR・同業のPERは使っていない。中立のROEが6.1%でk(8.6%)を下回るので、PERの上限は1÷k。上限の約85%に置いた。金融資産は余った現金100億円を戻り方1.0で別に足し、残りは運転資金とみて事業のPERに含めた。新リース会計基準の影響は、リース債務が年0.1億円と小さく、今と同じ形で置いても結果は動かない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.6→14.68 倍・やや楽観 PER 10.5→12.97 倍・中立 PER 10→12.82 倍)。

資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に品質の調整+1.1%を足した8.6%(β・規模は使わない)。電炉の厚板は市況で利益が大きく振れるので循環+0.8。厚板は競争相手が少なく、値決め力は0。純現金で借金は0。単一工場・単一製品の脆さを寿命+0.3で見た。個別の事故リスクはkでなく筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.60% → 7.80%。

同じ業種(鉄鋼)の AI 分析

割安 高砂鐵工5458 純現金が時価総額の 6 割ある小さな帯鋼の会社。安く見えるが、稼ぐ力は資本コストに届かない 本質価値との差 +31.9% · 10 年 割安(年 +10.5%) やや割安 中央可鍛工業5607 純資産の 3 割で買えるトヨタ系の鋳物屋。厚い現金と持ち株が支えるが、稼ぐ力は資本コストに届かず値上がりの根拠は薄い 本質価値との差 +28.0% · 10 年 やや割安(年 +10.9%) やや割安 イボキン5699 姫路で解体・産廃・スクラップを一貫で手がける小さな会社。解体の需要は伸びるが、相場と入札に利益を握られ、今の値段はやや高い 本質価値との差 +26.6% · 10 年 やや割安(年 +9.7%) やや割安 株式会社神戸製鋼所5406 鉄鋼は薄利でも機械・電力が稼ぐ複合経営、ニッチ特化と1高炉・1電炉への転換が鍵 本質価値との差 +22.9% · 10 年 やや割安(年 +9.5%) やや割安 サンユウ5697 日本製鉄系のみがき棒鋼と冷間圧造用線の中堅。加工賃の是正で利益は戻ったが、自動車の電動化と国内生産の縮みが重く、今の値段はやや高い 本質価値との差 +21.2% · 10 年 やや割安(年 +9.1%) やや割安 日本冶金工業5480 高機能材の伸びは本物だが、借金の重さと市況の振れが効く。今の値段は筋書きの加重とほぼ釣り合う 本質価値との差 +18.8% · 10 年 やや割安(年 +8.9%) やや割安 東京鐵鋼株式会社5445 鉄筋一本の電炉。足元の利益は山の高さだが、今の値段は山が崩れる前提をほぼ織り込んでいる 本質価値との差 +14.6% · 10 年 やや割安(年 +8.5%) 適正 モリ工業5464 ステンレス管の国内最大手で財務は盤石。だが稼ぐ力は資本コストに届かず、厚い現金の使い道が評価を分ける 本質価値との差 +5.3% · 10 年 適正(年 +7.6%) 適正 合同製鐵株式会社5410 鉄筋と形鋼を作る電炉の中堅。縮む国内で資産だけが重く、帳簿の安さは割安の証拠にならない 本質価値との差 +5.0% · 10 年 適正(年 +8.2%) 適正 共英製鋼株式会社5440 国内の鉄筋は縮み、頼みの米国投資は時価総額に迫る大きさ。稼ぐ力は資本コストに届いていない 本質価値との差 +5.0% · 10 年 適正(年 +7.8%) 適正 JFEホールディングス株式会社5411 鉄鋼本体の稼ぐ力は薄いが商社・エンジニアリングが支え、重い純負債をどこまで圧縮できるかが分かれ目 本質価値との差 +4.0% · 10 年 適正(年 +7.9%) 適正 日本精線5659 ステンレス線の国内首位で半導体向けは伸びるが、稼ぐ力は資本コストに届かず、厚い手元資金も親会社の下では戻りが限られる 本質価値との差 +3.6% · 10 年 適正(年 +6.9%) 適正 北越メタル5446 新潟の鉄筋の電炉。建設の冷え込みで赤字に沈み、自己資本の厚さほどには稼げない 本質価値との差 +2.9% · 10 年 適正(年 +8.6%) 適正 新日本電工5563 合金鉄の市況の波に、焼却灰資源化という新しい柱が加わる。ただ ROE は資本コストに届かず、値段は成長をやや先取りしている 本質価値との差 −1.0% · 10 年 適正(年 +7.1%) 適正 日本金属5491 ステンレスを紙より薄く延ばす腕はあるが、主力の自動車向けが細り、稼ぎは資本コストに遠く届かない 本質価値との差 −3.3% · 10 年 適正(年 +8.6%) 適正 大和工業株式会社5444 稼ぎの主役は国内ではなく北米の合弁。今の値段は海外頼みの好循環が続く前提に寄りすぎている 本質価値との差 −3.8% · 10 年 適正(年 +6.6%) 適正 エンビプロ・ホールディングス5698 金属スクラップと焼却灰の資源化が柱。前期は市況の山で、結論は 割高 本質価値との差 −5.7% · 10 年 適正(年 +6.5%) 適正 東京製鐵株式会社5423 財務は強いが事業は谷の底。純現金が時価総額の4割を占める一方、稼ぐ力の回復は10年かかる 本質価値との差 −9.9% · 10 年 適正(年 +5.9%) やや割高 株式会社中山製鋼所5408 新電気炉に社運を賭ける電炉メーカー。投資は時価総額の2倍超で、成功しても資本コストに届きにくい 本質価値との差 −12.8% · 10 年 やや割高(年 +5.8%) やや割高 虹技5603 鋳物とロールで細く長く稼ぐが、資本の稼ぐ力は資本コストに遠く、帳簿の割安は価値にならない 本質価値との差 −13.7% · 10 年 やや割高(年 +5.4%) やや割高 丸一鋼管5463 財務は鉄壁だが、鋼管は値段を自分で決められない。稼ぐ力に対して今の値段は先を行っている 本質価値との差 −14.4% · 10 年 やや割高(年 +5.1%) やや割高 新家工業7305 鋼管の専業で、賃貸収益が利益の3割を支える堅い会社。ただ本業の稼ぐ力は薄く、今の値段は回復を先取りしている 本質価値との差 −14.5% · 10 年 やや割高(年 +4.8%) やや割高 大平洋金属5541 製錬所は赤字、稼ぎは鉱山の持分と現金。製錬をどう片づけるかで価値が決まり、今の値段は筋書きの加重を上回る 本質価値との差 −18.7% · 10 年 やや割高(年 +5.2%) やや割高 日本製鉄株式会社5401 USスチールの重い借金を背負いながら国内の構造減をどこまで補えるかが本質価値の分かれ目 本質価値との差 −19.9% · 10 年 やや割高(年 +5.4%) やや割高 日亜鋼業5658 鉄の線材を加工する地味な専業。資産は厚いが稼ぐ力が低く、結論は 割高 本質価値との差 −21.2% · 10 年 やや割高(年 +3.9%) やや割高 新報国マテリアル5542 露光装置のステージに使う低熱膨張合金の鋳物で、2 社の客先に頼る小さな会社。足元は好調だが、中立の値打ちは今の値段に届かない 本質価値との差 −21.6% · 10 年 やや割高(年 +4.5%) やや割高 三菱製鋼5632 高炉由来の特殊鋼とばねの二本柱。利益は薄く、資本コストに届かない。今の値段は計画の達成を先取りしている 本質価値との差 −22.4% · 10 年 やや割高(年 +4.2%) やや割高 日本鋳造5609 温度で伸びない合金LEXと大型鋳鋼の老舗。半導体の山谷が大きく、10年の価値は今の値段を下回る 本質価値との差 −24.3% · 10 年 やや割高(年 +4.7%) やや割高 大同特殊鋼5471 自動車向け鋼材の細りを新分野で埋められるかが勝負。今の値段は、その成功をかなり先取りしている 本質価値との差 −27.6% · 10 年 やや割高(年 +3.2%) やや割高 パウダーテック5695 コピー機のトナーを運ぶ鉄の粉で世界大手。印刷が細り資本は稼がず、10年では割高 本質価値との差 −29.5% · 10 年 やや割高(年 +2.9%) やや割高 日本鋳鉄管5612 水道管の国内3番手。クボタとの合弁で工場を満たす賭けに出たが、借金が膨らみROEは1%。中計が実っても今の値段は高い 本質価値との差 −29.6% · 10 年 やや割高(年 +4.2%) 割高 株式会社ヨドコウ5451 素材の鋼板で稼ぐ堅実な独立系。だが ROE は資本コストに届かず、今の値段は割高とみる 本質価値との差 −31.1% · 10 年 割高(年 +2.6%) 割高 愛知製鋼5482 トヨタグループ唯一の素材メーカー。電動化の逆風を新事業で埋め切れるかが焦点で、今の値段はその成功を先取りしている 本質価値との差 −34.8% · 10 年 割高(年 +2.1%) 割高 大阪製鐵株式会社5449 インドネシアの傷は消えたが、国内だけの電炉に残る稼ぐ力は薄い。今の値段は日鉄の完全子会社化の期待まで抱えている 本質価値との差 −65.8% · 10 年 割高(年 −3.7%)

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読んだ資料

  1. 24中期経営計画(中部鋼鈑、2024年5月)
  2. IRセミナー(ログミーファイナンス)
  3. 中部鋼鈑 年80万トン体制へ「さらなる省人化進める」(日本経済新聞)

分析日 2026-10-19