結論
新日本電工は、鉄鋼に欠かせない合金鉄を作る会社だ。高炭素フェロマンガンは国内トップで、近年は焼却灰を溶かして金などを取り出す事業と、電子部品向けの機能材料が利益を支える。
筆者の結論は、今の値段はやや割高だ。理由は、稼ぐ力が資本コストに届かないことにある。自己資本利益率は過去 10 年の中央値で 4〜5% にとどまる。元手より価値が小さい会社に、元手並みの値段は付けにくい。
足元の業績は良い。2026 年の上期は、営業利益が発足以来の高水準になった。ただ、これは合金鉄のマージンの改善と、焼却灰から回収する金属の高値に助けられた面が大きい。合金鉄は、マンガン鉱石の値動きで利益が数年で倍にも半分にも振れる。
手札は焼却灰資源化だ。炉を 4 基から 6〜7 基に増やし、受入は 10 年で 1.7 倍に伸びる。ここは自治体の長期契約に近く、合金鉄より安定している。
それでも、新炉の償却が先に利益を食う。会社の目標を 8 割達成する姿で、10 年後の価値は今の値段をやや下回ると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「事業は分かるが、持ち続けたいとは言い切れない」位置にある。
事業は理解しやすい。鉄鋼のための合金を作り、自治体の灰を処理して金を取り出す。10 年後も事業は残る。ただ、主力の合金鉄は、国内の鉄鋼が細るほど守りの色が濃くなる。堀は価格を決める力ではなく、供給の安定と認証にある。
オーナーの手に残る利益は少ない。焼却灰の炉の増設に、これから数百億円規模の投資が続く。稼ぎが資本コストを超えて初めて価値が生まれるが、今の ROE は届いていない。投資の回収は、完成してみなければ分からない。
経営は、損切りの判断が早い。合金鉄の炉の停止と海外の出資の全額減損は、前向きに評価している。ただ、借入を増やして投資に使う財務の方針には、一歩引いて見ている。
安全域は厚くない。今の値段は、利益が 5〜6 割増える姿をすでに半分は払っている。筆者は、この銘柄は値下がりを待つ姿勢が合うと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 5 つある。売上の半分強を占めるのは合金鉄だ。マンガン鉱石を電気炉で還元し、鉄鋼メーカーの脱酸・強度づけに使う高炭素フェロマンガンを作る。国内ではトップの供給元で、徳島が主力工場だ。
2 つ目は焼却灰資源化だ。全国 94 の市町村・事務組合から焼却灰を預かり、茨城県の鹿島で 1,500 度で溶かす。無害なスラグ(エコラロック)は道路などの資材になり、金・銀・銅は溶融メタルとして売る。利益率が高く、会社の成長の中心だ。
3 つ目は機能材料だ。ネオジム磁石の原料になるフェロボロン、電子部品に使う酸化ホウ素と酸化ジルコニウム、電池材料がある。国内で独自性の高い品が多い。電池材料は電気自動車の伸びの鈍化で低迷している。
残りは水処理と水力発電だ。水処理は有機フッ素化合物(PFAS)の吸着塔なども手がける。水力は固定価格買取で安定した利益を出す。
最大の顧客は鉄鋼業界で、日本製鉄が議決権の 25.3% を持つ。海外には、マレーシアの合金鉄会社に 25% を出資していたが、損失が続いたため 2026 年に全額を減損し、撤退を検討している。
事業別の売上と利益は開示の区分と説明資料をもとにした筆者の推定である。
優良さと弱いところ
堀は、技術と許認可と、鉄鋼との長い付き合いにある。高炭素フェロマンガンは、国内で作れる会社が限られ、鉄鋼各社と価格を決める仕組み(原料に連動する式)を持つ。焼却灰の溶融は、自治体の許可と実績が壁になる。ただ、どちらも広がる堀ではなく、守る堀だ。
価格を決める力は弱い。合金鉄は世界の市況で決まり、海外の安い品が入れば国内も引きずられる。2025 年には、高値で買った鉱石が在庫に残り、会計上の利益が実力より 25 億円ほど下振れした。
資本の効率は低い。過去 10 年の自己資本利益率の中央値は 4〜5% で、10% を超えたのは数年だけだ。赤字の期も 4 回ある。2015 年と 2019 年は大きな純損失を出した。
財務は堅い。自己資本比率は 76% で、純負債は小さい。ただ、会社は今後、財務の余力を投資に使い、借入を増やす方針だ。
筆者が評価するのは、痛みを伴う判断を実行する点だ。2021 年に鹿島の合金鉄炉を止め、2026 年にはマレーシアの出資を全額減損して撤退へ動いた。気がかりなのは、焼却灰の増設に 100 億円規模の投資を続けるのに、回収を確かめられる前に次の炉を決めていくことだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
主力の合金鉄は、日本の鉄鋼の景気に結びついている。国内の粗鋼生産は 2025 年度に 8,033 万トンで、57 年ぶりの低水準だった。人口の減少と製造業の海外移転で、10 年かけてさらに細る。数量の追い風は期待しにくい。
一方で、値段を守る動きもある。EU が 2025 年 11 月に合金鉄のセーフガードを発動し、欧州と米国の高炭素フェロマンガンの市況は落ち着いた。原料のマンガン鉱石は中国の需要減で弱含み、これが国内のマージンを支えている。
焼却灰資源化は、別の構造で動く。自治体は焼却炉の更新費が重く、灰を溶融して減らす委託を選ぶ例が増えている。競合には、栃木のメルテック、名古屋の中部リサイクルなどがある。新日本電工は民間で国内最大級だが、受入は能力の 6 割強で、需要が埋まるかが焦点だ。
機能材料は、電池材料と電子部品材料で明暗が分かれる。電気自動車の伸びが鈍り、電池向けは在庫調整と受託の終了が続く。酸化ホウ素・酸化ジルコニウムは、AI データセンター向けの電子部品で底堅い。
つまり、この会社の本質は、市況で揺れる本業と、安定しているが規模が小さい新事業の組み合わせだ。10 年後は、新事業の比重が高まり、利益の揺れがやや小さくなる姿と筆者は見る。
資本政策と M&A
資本の使い方は、前向きに動いている。
還元は、実力ベースの純利益の 4 割を配当にし、1 株あたりの下限を設ける方針だ。2026 年は前年から増配する見込みで、増配幅は 5 割近い。さらに自己株買いを 40 億円の枠で進め、1,200 万株を 2026 年 8 月に消却した。前の計画期間の総還元性向は 52% と厚い。
一方、投資は重くなる。2030 年までに戦略投資で 450〜500 億円を見込み、焼却灰の炉に総額 120 億円を投じる。財務の方針は、純負債の割合を今の 0.1 倍台から 0.3〜0.45 倍に上げて投資を進めることだ。利益の安定しない合金鉄を持つ会社にとっては、背伸びに見える。
海外は整理に向かう。マレーシアの合金鉄会社への出資は全額減損し、第三者への売却などで完全に手を引くことを検討している。南アフリカのマンガン鉱山の権益は残る。
再編では、日本製鉄が約 25% の大株主である点が効く。同社との関係が深く、第三者が動く余地は小さい。完全子会社化に進む可能性はあるが、時期も条件も読めず、筋書きには織り込まない。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の業績は、これまでの会社とは違う。2026 年の上期は営業利益が発足以来の高水準で、実力ベースの経常利益は通期で 75 億円と、前年を 22 億円上回る。会社の 2027 年の目標である 100 億円は、射程に入った。
第 1 は焼却灰資源化だ。受入は能力の 6 割強しか埋まっておらず、5・6・7 号炉の増設で 22 万トンに広げる。自治体の灰は、焼却炉が更新されても毎年必ず出る。契約は長く、需要は景気に左右されない。溶融メタルの金も、値上がりが利益を押し上げている。
第 2 は、負担が消えることだ。マレーシアの出資は全額減損され、年 10 億円前後の持分損が下期から消える。ここが消えるだけで、純利益は 2025 年より 2 倍近くになる。
第 3 は合金鉄の守りだ。EU のセーフガードで欧州と米国の市況が安定し、国内は新しい価格式で変動を抑えた。能力も 20 万トンに増える。
さらに、AI データセンター向けの酸化ホウ素・酸化ジルコニウムが伸びる。配当は実力ベースの純利益の 4 割で、増配を続ける。利益が 2030 年に 130 億円へ向かえば、今の値段は安く見える。
慎重な見方
今の株価は、一番良い年の利益を前提にしている。慎重に見る点は 3 つある。
第 1 は利益のぶれだ。過去 10 年の純利益は、赤字から 80 億円まで大きく動いた。2025 年も在庫の損で 14 億円に落ちている。合金鉄は鉱石の値動きで年によって倍半分になる。今の好調が続くと考えるのは危うい。
第 2 は資本の効率だ。自己資本利益率の中央値は 4〜5%で、資本コストの 8.5% に届かない。会社が目指す ROE 10% は、10 年で数回しか達していない。
第 3 は投資の重さだ。焼却灰の炉に 120 億円、新しい溶融炉に約 100 億円を投じ、借入も増やす。受入が能力の 6 割強にとどまる中で増設を続けており、稼働が追いつかなければ、償却だけが残る。
さらに、足元の実力ベースの利益は、貴金属の高値に助けられている。金属が下がれば、焼却灰の利益は 3〜4 割落ちる。電池材料は戻らず、国内の鉄鋼は人口とともに細る。2025 年の営業利益は、2021 年の 84 億円を下回ったままだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。理由は、利益のぶれと、資本効率が資本コストに届かない点が、構造的で動かしにくいからだ。強気の根拠である焼却灰は本物だが、新炉の償却が先に重くなる。そこで確率は、中立に 38% を置いたうえで、やや悲観に 22%、悲観に 12% と厚く置いた。ただ、足元の勢いと、撤退による負担の消失は無視できない。楽観とやや楽観に合わせて 28% を残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 605 円755 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 210 円262 億円)。 今の値に割り戻すと 407 円508 億円、今との差 −1.0%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,217 円1,520 億円 | 320 円400 億円 | +274.2% | +14.1% | 123 円154 億円 |
| やや楽観 | 20% | 884 円1,104 億円 | 256 円320 億円 | +177.4% | +10.7% | 228 円285 億円 |
| 中立 | 38% | 675 円843 億円 | 224 円280 億円 | +118.9% | +8.1% | 342 円427 億円 |
| やや悲観 | 22% | 285 円356 億円 | 168 円210 億円 | +10.2% | +1.0% | 100 円124 億円 |
| 悲観 | 12% | 95 円119 億円 | 88 円110 億円 | −55.5% | −7.8% | 22 円27 億円 |
| 加重平均 | 100% | 605 円755 億円 | 210 円262 億円 | +98.2% | +7.1% | 815 円1,017 億円 |
今の株価時価総額 411 円513 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:焼却灰が計画どおり満杯になり、合金鉄も底堅い 利益 115 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 1,217 円1,520 億円
焼却灰の 5・6・7 号炉が予定どおり動き、受入は今の 2 倍に乗る。自治体は焼却炉を更新せず、ごみ処理の延命に溶融を選び続ける。金など溶融メタルの値段も高止まりする。
合金鉄は国内の鉄鋼が持ちこたえ、EU・米国の輸入制限で国内外の値段が守られる。高炭素フェロマンガンは 20 万トン体制になり、利益率が 7% 台まで戻る。機能材料は酸化ホウ素・酸化ジルコニウムが AI データセンター向けで伸び、電池材料の落ち込みを埋める。パータマからの撤退も済み、毎年 10 億円の赤字は消える。
営業利益は 170 億円に届き、会社の 2030 年目標をやや上回る。還元は配当に自社株買いを足して厚くなる。ただ、自己資本は利益の積み上がりで膨らみ、ROE は 10% 前後にとどまる。
- 合金鉄:数量 20.0(出荷量(万トン・合金鉄の合計))× 価格 29(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 590 億円・営業利益 44 億円。数量 20.00 × 単価 29.480、営業利益率 7.5%
- 機能材料:数量 4.5(出荷量(万トン・混合))× 価格 70(1 トンあたり売上(万円・製品の混合))→ 売上 315 億円・営業利益 54 億円。数量 4.50 × 単価 70.000、営業利益率 17.0%
- 焼却灰資源化:数量 18.0(受入量(万トン))× 価格 18(1 トンあたり売上(万円・処理料と金属売却の合計))→ 売上 315 億円・営業利益 82 億円。数量 17.98 × 単価 17.500、営業利益率 26.0%
- 電力:数量 2.3(発電量(億 kWh))× 価格 15(1 kWh あたり売上(円))→ 売上 33 億円・営業利益 12 億円。数量 2.30 × 単価 14.560、営業利益率 35.0%
- 水処理・その他:数量 240(納入・受注の件数(件))× 価格 0.40(1 件あたり売上(億円))→ 売上 96 億円・営業利益 7 億円。数量 240.00 × 単価 0.402、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 115 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 12.96 倍、時価総額 1,490 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:焼却灰の炉増設が計画どおり進み、自治体の受入が埋まる必要がある。そこに貴金属の高値と電子部品向けの追い風が重なる形で、起こりにくい。
やや楽観 20% やや楽観:焼却灰が伸び、機能材料が電池の穴を埋める 利益 90 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 884 円1,104 億円
焼却灰は炉の増設が進み、受入は今の 1.8 倍ほどになる。ただ、新炉の立ち上げ費用と減価償却が先に出て、利益率は少し下がる。
機能材料は、AI 向けの電子部品材料が伸びる一方、電池材料は戻らない。差し引きで利益は緩やかに増える。
合金鉄は海外の持分から手を引いたぶん、利益のぶれが小さくなる。国内の鉄鋼は細るが、価格改定の仕組みで利益は守られる。
営業利益は 130 億円台で、会社の 2030 年の目標に近い。配当性向 40% は守られ、自社株買いも小さく続く。自己資本利益率は 8% 台後半と、資本コストにほぼ並ぶ。
- 合金鉄:数量 19.2(出荷量(万トン・合金鉄の合計))× 価格 29(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 566 億円・営業利益 38 億円。数量 19.20 × 単価 29.480、営業利益率 6.8%
- 機能材料:数量 4.2(出荷量(万トン・混合))× 価格 68(1 トンあたり売上(万円・製品の混合))→ 売上 286 億円・営業利益 44 億円。数量 4.20 × 単価 68.000、営業利益率 15.5%
- 焼却灰資源化:数量 15.5(受入量(万トン))× 価格 17(1 トンあたり売上(万円・処理料と金属売却の合計))→ 売上 264 億円・営業利益 65 億円。数量 15.54 × 単価 17.000、営業利益率 24.5%
- 電力:数量 2.3(発電量(億 kWh))× 価格 15(1 kWh あたり売上(円))→ 売上 33 億円・営業利益 11 億円。数量 2.30 × 単価 14.560、営業利益率 34.0%
- 水処理・その他:数量 216(納入・受注の件数(件))× 価格 0.40(1 件あたり売上(億円))→ 売上 87 億円・営業利益 5 億円。数量 216.00 × 単価 0.402、営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 90 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.91 倍、時価総額 1,072 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:焼却灰の増設と電子部品向けの伸びが、会社計画の 8 割ほどで進めば成り立つ。足元の好調を見れば十分ありうる。
中立 38% 中立:焼却灰が柱になり、合金鉄は市況の波を抱えたまま横ばい 利益 69 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 675 円843 億円
利益の柱は合金鉄から焼却灰資源化へ移る。受入は今の 1.7 倍の 14 万トンになるが、能力 22 万トンは埋まりきらない。新炉の償却が重く、利益率は今より少し下がる。
合金鉄は、国内の粗鋼生産が緩やかに細るため、数量が 1 割ほど減る。値段は原料のマンガン鉱石に連動して物価並みに上がるが、利益率は 6% 前後にとどまる。機能材料は電子部品向けが伸び、売上は今の 1.7 倍になる。
水力は固定価格買取で額が固定され、物価に連動しない。パータマからの撤退で年 10 億円の赤字が消え、営業外の足かせが外れる。営業利益は 100 億円台で、純利益は 70 億円弱。
自己資本は 960 億円ほどに増える。ROE は 7% 前後で、資本コストには届かない。
- 合金鉄:数量 18.4(出荷量(万トン・合金鉄の合計))× 価格 29(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 542 億円・営業利益 33 億円。数量 18.40 × 単価 29.480、営業利益率 6.0%
- 機能材料:数量 3.8(出荷量(万トン・混合))× 価格 67(1 トンあたり売上(万円・製品の混合))→ 売上 251 億円・営業利益 33 億円。数量 3.75 × 単価 67.000、営業利益率 13.0%
- 焼却灰資源化:数量 14.0(受入量(万トン))× 価格 17(1 トンあたり売上(万円・処理料と金属売却の合計))→ 売上 235 億円・営業利益 52 億円。数量 14.03 × 単価 16.750、営業利益率 22.0%
- 電力:数量 2.3(発電量(億 kWh))× 価格 15(1 kWh あたり売上(円))→ 売上 33 億円・営業利益 11 億円。数量 2.30 × 単価 14.560、営業利益率 33.0%
- 水処理・その他:数量 200(納入・受注の件数(件))× 価格 0.40(1 件あたり売上(億円))→ 売上 80 億円・営業利益 4 億円。数量 200.00 × 単価 0.402、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 69 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 811 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 2030 年目標(経常 130 億円)の 8 割ほどに届く姿を中心に置く。焼却灰は新炉の稼働が遅れがちで、合金鉄の利益は市況に左右される実績が根拠。
やや悲観 22% やや悲観:国内の鉄鋼が細り、焼却灰の増設が重荷になる 利益 41 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 285 円356 億円
国内の粗鋼生産が 7,000 万トン台へ細り、高炭素フェロマンガンの数量は 15% 減る。海外の合金鉄が安値で入り、利益率は 4〜5% に下がる。
焼却灰は、自治体が自前の施設を延命して受入が伸びず、受入は 11 万トン台にとどまる。120 億円の増設と 100 億円規模の新溶融炉の償却が重くのしかかり、利益率は 2 割を切る。金属の値段も今の高値から下がる。
機能材料は電池材料が戻らず、半導体向けも設備投資の波で伸び悩む。パータマの撤退費用や南アフリカの鉱山の持分損も、営業外で利益を削る。
営業利益は 70 億円弱、純利益は 40 億円ほど。ROE は 5% を割り、配当は下限の維持で精一杯になる。
- 合金鉄:数量 17.0(出荷量(万トン・合金鉄の合計))× 価格 29(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 486 億円・営業利益 24 億円。数量 17.00 × 単価 28.600、営業利益率 5.0%
- 機能材料:数量 3.0(出荷量(万トン・混合))× 価格 64(1 トンあたり売上(万円・製品の混合))→ 売上 192 億円・営業利益 21 億円。数量 3.00 × 単価 64.000、営業利益率 11.0%
- 焼却灰資源化:数量 11.5(受入量(万トン))× 価格 16(1 トンあたり売上(万円・処理料と金属売却の合計))→ 売上 180 億円・営業利益 34 億円。数量 11.51 × 単価 15.625、営業利益率 19.0%
- 電力:数量 2.3(発電量(億 kWh))× 価格 14(1 kWh あたり売上(円))→ 売上 31 億円・営業利益 10 億円。数量 2.30 × 単価 13.650、営業利益率 31.0%
- 水処理・その他:数量 176(納入・受注の件数(件))× 価格 0.39(1 件あたり売上(億円))→ 売上 69 億円・営業利益 3 億円。数量 176.00 × 単価 0.390、営業利益率 4.0%
倍率:資本コスト8.5%。余った現金を除いた事業のROE4.6%がk以下なのでPERの上限は1÷k=11.8倍で、その約6割の7.5倍に置く。合金鉄の薄利と新炉の償却負担が重く、利益の質は中立より低い。
確率:国内の粗鋼生産の細りと、焼却灰の新炉の遅れや稼働の低さが重なる筋書き。片方だけでも十分ありうるので、高めに置く。
悲観 12% 悲観:合金鉄が輸入に押され、焼却灰の投資も回収できない 利益 12 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 95 円119 億円
高炉の休止が続き、国内の粗鋼生産は 6,000 万トン台まで細る。中国・東南アジアの安い合金鉄が入り、高炭素フェロマンガンは数量が 3 割減る。値段は輸入品に引きずられ、物価に追いつかない。国内の製造拠点を減らす再編に追い込まれる。
焼却灰は、増設した炉が埋まらない。自治体の発注は価格競争になり、貴金属も値下がりする。新炉の減価償却だけが利益を圧迫し、減損が出る。機能材料の電池材料は縮小し、利益の穴を埋める柱がなくなる。
営業利益は 30 億円を割る水準まで細り、自己資本は減損で 100 億円ほど毀損する。会社の今の姿からは遠く、再建の途上にある会社として評価される。
- 合金鉄:数量 14.0(出荷量(万トン・合金鉄の合計))× 価格 26(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 370 億円・営業利益 13 億円。数量 14.00 × 単価 26.400、営業利益率 3.5%
- 機能材料:数量 2.7(出荷量(万トン・混合))× 価格 58(1 トンあたり売上(万円・製品の混合))→ 売上 155 億円・営業利益 12 億円。数量 2.70 × 単価 57.500、営業利益率 8.0%
- 焼却灰資源化:数量 9.0(受入量(万トン))× 価格 14(1 トンあたり売上(万円・処理料と金属売却の合計))→ 売上 124 億円・営業利益 16 億円。数量 8.99 × 単価 13.750、営業利益率 13.0%
- 電力:数量 2.3(発電量(億 kWh))× 価格 13(1 kWh あたり売上(円))→ 売上 30 億円・営業利益 9 億円。数量 2.30 × 単価 13.000、営業利益率 30.0%
- 水処理・その他:数量 160(納入・受注の件数(件))× 価格 0.36(1 件あたり売上(億円))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。数量 160.00 × 単価 0.360、営業利益率 2.0%
倍率:資本コスト8.5%。余った現金を除いた事業のROE1.6%がk以下なのでPERの上限は1÷k=11.8倍で、その約6割の6.5倍に置く。利益が薄く減損も出るため、帳簿の自己資本は価値の床にならない。売れる資産の床は足さない(水力などの資産の売却額を確かめられないため、稼ぐ力で測った)。構造的な負けなので、やや悲観より低く置く。
確率:国内の製鉄の縮みと輸入材の攻勢で合金鉄が構造的に負け、焼却灰の増設も裏目に出る筋書き。主力の合金鉄が市況事業である点を踏まえ 12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
合金鉄
鉄鋼の脱酸・合金化に使う高炭素フェロマンガンが中心。国内トップ。海外の持分は撤退へ。
| 数量出荷量(万トン・合金鉄の合計) | 価格1 トンあたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20.0 | 22 | 440 | 30 |
| 10 年後 中立 | 18.4 | 29 | 542 | 33 |
取り方:国内の高炭素フェロマンガンの能力は年 18 万トン。ほかのマンガン合金・フェロシリコンなどを合わせて 20 万トンとみて、単価 22 万円を置いた。売上 440 億円は、全社売上 773 億円から他の事業を引いた残りに合わせた筆者の推定。営業利益 30 億円は、2025 年の実力ベース経常利益(国内 12 億円)に金利・本社配賦を戻した見当。
機能材料
酸化ホウ素・フェロボロン・酸化ジルコニウム・電池材料。国内で独自性の高い品目が多い。
| 数量出荷量(万トン・混合) | 価格1 トンあたり売上(万円・製品の混合) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.0 | 50 | 150 | 25 |
| 10 年後 中立 | 3.8 | 67 | 251 | 33 |
取り方:2023 年の見通しで売上の 18% という開示から売上 150 億円とし、出荷 3.0 万トン・混合単価 50 万円と置いた推定。営業利益 25 億円は 2025 年の実力ベース経常利益 22 億円に近い水準。品目別の数量は開示がない。
焼却灰資源化
自治体の焼却灰を高温で溶かし、スラグと金・銀などの有価金属に分ける。茨城県の鹿島で炉 4 基。
| 数量受入量(万トン) | 価格1 トンあたり売上(万円・処理料と金属売却の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8.4 | 13 | 105 | 28 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 17 | 235 | 52 |
取り方:取引先は 94 の自治体・事務組合、受入は年 8.4 万トン(会社の発表)。能力 13 万トンに対し稼働は 6 割強。売上 105 億円は筆者の推定で、1 トンあたり 12.5 万円(処理料と溶融メタルの売却)。営業利益 28 億円は 2025 年の実力ベース経常利益 21 億円に減価償却と金利の戻しを足した見当。 数量は実物(焼却灰の受入トン)で、名目の市場の伸びではない。
電力
自社の水力発電。固定価格買取制度(FIT)で売る。
| 数量発電量(億 kWh) | 価格1 kWh あたり売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.3 | 13 | 30 | 12 |
| 10 年後 中立 | 2.3 | 15 | 33 | 11 |
取り方:水力発電の売電を年 2.3 億 kWh、売電単価は price_unit の欄の水準と置いた筆者の推定(開示なし)。固定価格買取は 2037 年ごろまで額が固定され、物価に連動しないため、10 年の価格は物価の 1.34 倍でなく 1.1 倍強にとどめた。営業利益 12 億円は設備の減価償却が小さい水力の特徴から、利益率 4 割とした。
水処理・その他
水処理装置・薬剤・PFAS 吸着塔など。環境の周辺事業。
| 数量納入・受注の件数(件) | 価格1 件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 160 | 0.30 | 48 | 3 |
| 10 年後 中立 | 200 | 0.40 | 80 | 4 |
取り方:水処理とその他の売上 48 億円を、年 160 件・1 件 0.3 億円とみた筆者の推定(開示なし)。営業利益 3 億円は利益率 6% の見当。全社の本社費・研究費は adjust に入れる。
リスクと懸念
合金鉄の市況と在庫の評価損益
高炭素フェロマンガンは、原料の鉱石と製品の値段が世界の市況で動く。2025 年は高値で買った鉱石が在庫に残り、会計上の利益が実力より約 25 億円下振れした。逆に鉱石が上がる年は評価益が出る。年ごとの利益は素直に読めない。
国内の鉄鋼の縮み
国内の粗鋼生産は 2025 年度に 57 年ぶりの低水準だった。高炉の休止が続けば、合金鉄の国内数量は 10 年で 1〜2 割減りうる。顧客が日本製鉄を中心に偏っており、取引条件の変更が利益に直結する。
焼却灰の増設の回収
炉を 4 基から 6〜7 基に増やし、総額 120 億円を投じる。受入は今 8.4 万トンで能力の 6 割強。自治体が自前の施設を延命すれば、増設炉が埋まらず、償却だけが利益を圧迫する。5 号炉は決定済みだが、6 号炉本体の判断は後ろにずれた。
貴金属相場への依存
焼却灰から回収する金・銀・銅の売却益が利益を押し上げている。2026 年は焼却灰の実力ベース経常利益が 35 億円に伸びたが、貴金属が下がれば同じ数量でも利益が大きく減る。
マレーシアの撤退の実行
パータマには 72 億円の投資損失を計上し、全額を減損した。完全撤退を検討するが、売却先や条件は決まっていない。撤退に追加の費用や保証が出れば、営業外の損失が残る。持分法の損失が年 10 億円前後出ていたことも忘れてはいけない。
電池材料の低迷
機能材料のうち電池材料は、電気自動車の伸びの鈍化で需要が低迷し、受託事業も 2026 年 3 月に終わった。機能材料全体の利益は 22 億円から 15 億円に下がる見通しで、電子部品向けの伸びで埋められるかが分かれ目になる。
財務方針の転換
純負債の割合を 0.1 倍台から 0.3〜0.45 倍に上げて投資を進める方針だ。合金鉄の赤字の年に借入が重なれば、財務の安全度が下がる。2019 年に赤字を出した時の純負債は、自己資本の 1 割強だった。
今後の分かれ目
- 焼却灰の受入が能力の 8 割を超える
- 新炉の投資が回収できる見通しになる。中立から強気の筋書きに寄り、利益の質が上がる。
- 貴金属の値段が今の水準から 3 割下がる
- 焼却灰の実力ベースの利益が 35 億円から 25 億円台に下がる。全体の営業利益も 1 割ほど減る。
- 国内の粗鋼生産が 7,000 万トンを割る
- 高炭素フェロマンガンの数量が減り、やや悲観の筋書きに寄る。価格式が利益を守る度合いが試される。
- パータマの権益を第三者に売り、追加の費用が出ない
- 営業外の足かせが完全になくなる。純利益が営業利益に近づき、純利益÷営業利益の比が上がる。
- 次期中期経営計画(2027 年開始)で投資と借入の額が増える
- 利益より投資が先行する。資本コストを超える稼ぎが示されるかを見る。示されなければ慎重に見る。
- 日本製鉄が持株比率を高める・完全子会社化を打ち出す
- 少数株主の価値は条件次第で動く。条件を見るまで判断しない。
見ておくもの
- 焼却灰の受入量(炉の稼働率)と溶融メタルの売却価格
- 高炭素フェロマンガンの国内外のマージンと粗鋼生産
- 機能材料の営業利益(電池材料と電子部品材料の内訳)
- パータマの権益譲渡の発表
- 2027 年開始の新中計の投資額と ROE 目標
倍率と資本コストの決め方
今の株価・PER には寄せていない。先にセグメントごとに数量と単価(物価並みの 1.34 倍が基本)で 10 年後の売上と利益を積み、その時点の ROE から倍率を決めた。ROE が資本コスト 8.5% を下回る中立では、PER の上限 1÷k=11.8 倍の約 7.5 割に置いた。楽観側は RONIC を使った式の 9 割・8.5 割に収めた。やや悲観・悲観は稼ぐ力(純利益÷k)で測り、床は足していない。為替は 150 円で動かさず、2025 年の営業利益は在庫評価損を除いた実力の水準で置いた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.96 倍・やや楽観 PER 10→11.91 倍・中立 PER 9.4→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。