結論
大阪製鐵は、日本製鉄が議決権の過半を持つ電炉メーカーだ。建築・土木向けの形鋼と棒鋼を作り、売り先は国内の建設現場である。筆者の結論は「割高」。理由は一つで、帳簿の自己資本に見合う利益が、10 年以上出ていないことだ。
2026 年 3 月期は 209 億円の赤字に沈んだ。インドネシアの合弁から撤退し、200 億円の損失を計上したためだ。足かせは消えたが、会社は国内だけの電炉に戻る。国内の形鋼需要は人口減と建設の細りで縮み、中国からの H 形鋼の輸入も増えている。
そこへ 7 月の熊本地震が重なった。熊本工場が全面再開したのは 10 月である。今期の営業利益の予想は 10 億円で、自己資本 1,100 億円に対する ROE は 1% に届かない。
10 年後の中立の姿は、国内出荷が 1 割ほど減り、営業利益率が 5% 台に戻る程度だ。純利益は 30 億円台、ROE は 3% に届かない。資本コストを大きく下回る事業の価値は、今の時価総額の半分に満たない。
強みは親会社の後ろ盾と、堺に入れた新しい電気炉である。ただ、どちらも数字を劇的には変えない。完全子会社化への期待が株価を支えているが、それは事業の価値ではなく、買う側の値付け次第の話だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは「この会社を持ち続けたいか」だ。大阪製鐵には、持ち続けたいと思わせる材料が乏しい。
事業の質は市況品である。値段は買い手が決め、原料のスクラップと電力は自分で決められない。こういう会社は、需要が縮む局面で利益が先に細る。10 年以上の ROE の低さが、それを物語っている。
資本の使い方も合格点に届かない。インドネシアの損失は、海外に出る時の見積もりの甘さを示した。これから稼ぐ利益を、新しい投資に回しても資本コストを超える見込みは薄い。ならば、利益は株主に返すのが筋だが、親子上場の下で少数株主の声は届きにくい。
安全域はどこにあるか。純現金は 30 億円ほどで、自己資本の厚さも稼ぐ力の裏付けにはならない。帳簿の資産は、事業が資本コストを稼げない限り、帳簿の額では評価できない。
今の値段は、完全子会社化の期待を含んでいる。それは当たるかもしれないが、当たらなければ事業の価値に戻る。筆者は、そこに安全域を見ない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、鉄スクラップを電気炉で溶かして作る建築・土木向けの鋼材だ。山形鋼や溝形鋼などの形鋼、軽軌条、異形棒鋼が主な製品である。エレベーターのガイドレールは国内首位とされる。
工場は国内に四つある。堺市の堺工場は日本製鉄の和歌山地区の構内にあり、溝形鋼などを作る。熊本県宇土市の西日本熊本工場は異形棒鋼と丸鋼を担い、岸和田工場がそれに続く。栃木県小山市の東京鋼鐵は 2016 年に TOB で子会社にした電炉で、山形鋼を受け持つ。大阪市大正区の恩加島工場は、製鋼を 2016 年に、圧延を 2022 年に止めた。
2026 年 3 月期までは、インドネシアの合弁 KOS も連結に入っていた。形鋼と鉄筋を作る会社で、2024 年 12 月期の売上は 253 億円、最終損益は 13 億円の赤字だった。現地のインフラ予算が絞られて需要が急に縮み、競争も激しくなった。売却先は見つからず、2026 年 1 月に撤退を決め、4 月に生産を止めた。
これで事業は国内に絞られる。会社は堺の電気炉の更新(約 87 億円、2026 年 2 月に稼働)と、東京鋼鐵との山形鋼・溝形鋼のセット販売で、立て直しを図る。製品の値段はスクラップ価格と電力費に引っ張られる市況品だ。値上げを通せるかどうかが、利益を左右する。
優良さと弱いところ
堀は薄い。筆者が優良な会社と呼べない理由である。形鋼も棒鋼も規格品で、買い手は値段で選ぶ。差がつくのはコストと立地くらいで、ガイドレールの首位も全社の利益を動かすほどの規模ではない。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 2% で、資本コストに一度も届いていない。自己資本比率は 70% 台と固いが、それは稼げずに積み上がった資産の厚みでもある。
資本の使い方には疑問が残る。インドネシアの合弁では 200 億円の損失を出し、今の時価総額の 3 割近くが消えた。海外で作れるはずの利益は、最後まで出なかった。
一方で、2025 年の自己株 TOB は日本製鉄から割引価格で買い取る形で、残る株主には得だった。ただ、親子上場は解消されず、少数株主の期待は肩透かしを食った。
親会社との関係は強みでも縛りでもある。堺工場は日鉄の構内にあり、原料や設備で後ろ盾を得られる。その反面、事業の将来は親会社の方針に左右される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の鋼材需要は、構造的に縮んでいる。2025 年度の国内粗鋼生産は 57 年ぶりの低水準になり、鋼材の内需は 2 年続けて 5,000 万トンを割る見通しだ。人口減と、人手不足や資材高による建設の細りが背景にある。
輸入も重い。H 形鋼の輸入は 2025 年に 12 万トンと前年の 2 割増で、4 年前の 3 倍を超えた。中国の安い鋼材が国内相場を押し下げる。形鋼は他の鋼材より、この影響を受けやすい。
競合は多い。H 形鋼では東京製鐵が国内首位で、大和工業は JFE スチールと協業を始めた。鉄筋は共英製鋼が強い。日本製鉄も中山製鋼所と電気炉の合弁で合意しており、電炉の供給は減りにくい。市場は分散し、価格は買い手が決める。
足元は二重苦だ。2025 年秋以降は形鋼の値上げが通ったが、2026 年にはスクラップ価格と電力費が急に上がり、今期のマージンが縮んだ。7 月の熊本地震は、熊本工場の生産を 2 か月以上止めた。
筆者は、国内の電炉業界は設備の集約と再編が続くと見る。需要が縮む市場で、小さな電炉が単独で資本コストを上回る利益を稼ぐのは難しい。分かれ目は、堺の新電気炉でコストをどこまで下げられるかである。
資本政策と M&A
還元は細っている。2025 年 3 月期までは配当を出していたが、2026 年 3 月期は無配とし、2027 年 3 月期の中間配当も見送った。期末は上期決算の公表時に決める。
アクティビストのストラテジックキャピタルが約 10% を持つ。2024 年 11 月に日鉄へ完全子会社化を求める書簡を送り、2025 年 4 月には DOE 8% を軸にした還元の株主提案を出した。会社は自己株 TOB を選び、発行済み株式の 29% 近い自己株を消した。日鉄は全量を応募し、議決権比率は 56.1% に下がったが、子会社のままだ。
M&A の歴史は波乱が多い。2007 年に東京鋼鐵を株式交換で完全子会社にしようとして、株主総会で否決された。日本初の例とされる。2016 年に TOB で子会社にし直した。
完全子会社化は日鉄が決める話で、時期も価格も読めない。当方の試算では、10 年以内の TOB や買収の確率は 24.5% だ。ただ、買収の値付けは事業の価値とは別物である。ここでは、事業が稼ぐ力だけで価値を測る。
点検済み(2026-10-19):起点の利益(谷)、自己株 TOB 後の株数、帳簿の資産の床を確かめた。割高に見せる見落としは見つからなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最悪期は過ぎた。連結営業利益は 2018 年 3 月期から 2020 年 3 月期に 70 億円前後、2024 年 3 月期にも 70 億円あった。足を引っ張ったのはインドネシアで、撤退で最大の重しは消える。国内だけの電炉に戻れば、利益率は戻りうる。
堺の新しい電気炉が動き出し、電力と電極のコストが下がる。東京鋼鐵との山形鋼・溝形鋼のセット販売で、品ぞろえも広がる。2025 年秋以降は形鋼の値上げが通り、今期のスクラップ高も価格に転嫁が進んでいる。熊本も 10 月に全面再開した。
自己資本比率は 70% を超え、財務の余裕は大きい。アクティビストの圧力と日鉄の存在があるので、無配が続く展開も考えにくい。DOE を軸にした還元が始まれば、ROE は自己資本の圧縮でも上がる。
国内の建設需要は、老朽インフラの更新と都市の再開発で底を打つ。中国の過剰生産は貿易の壁で抑えられ、輸入の増加は頭打ちになる。そのとき、国内の電炉の再編が進み、生き残った会社の利益率は 8% 台まで戻る。
慎重な見方
10 年以上、資本コストに届く利益を出していない。ROE の中央値は 2% で、構造は変わっていない。今期の営業利益は 10 億円に下がり、スクラップ高と電力費で、値上げが原価に追いつかない。市況品の弱さが出ている。
国内の建設は、人口減で戻らない。粗鋼生産は 57 年ぶりの低水準で、H 形鋼の輸入は 4 年で 3 倍になった。日鉄が中山製鋼所と電気炉の合弁を作れば、供給はさらに増え、形鋼の値段は押される。
海外での失敗は、経営の目利きの弱さを示した。インドネシアで 200 億円を失い、2025 年の自己株 TOB でも最大 220 億円の現金を使った。残る純現金は 30 億円ほどで、地震の復旧費用と KOS の後始末の支払いが、さらに手元を削る。
完全子会社化の期待は、買い手の気分次第で消える。日鉄は 2025 年の TOB でも、少数株主を残す道を選んだ。事業が稼がない限り、帳簿の 1,100 億円は、その額で売れるわけではない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方に重みを置いた。国内だけの電炉は、需要が縮むほど利益率が下がる構造にあり、強気が頼る「利益率の回復」は、10 年の平均では 5% 台がせいぜいと見る。堺の新電気炉は追い風だが、輸入と再編の圧力を打ち消すほどではない。
確率は、中立に最も厚く置き、やや悲観と悲観に合計で 4 割を置いた。強気が示す上振れは、アクティビストと日鉄の動き次第で現実味はある。ただ、それは還元と価格の話で、稼ぐ力そのものは変わらない。楽観は 1 割に満たない確率とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,326 円397 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 341 円102 億円)。 今の値に割り戻すと 830 円248 億円、今との差 −65.8%、 期待の年率 −3.7%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,410 円721 億円 | 769 円230 億円 | +31.1% | +2.7% | 223 円67 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,892 円566 億円 | 585 円175 億円 | +2.1% | +0.2% | 446 円133 億円 |
| 中立 | 36% | 1,524 円456 億円 | 401 円120 億円 | −20.6% | −2.3% | 693 円207 億円 |
| やや悲観 | 25% | 792 円237 億円 | 150 円45 億円 | −61.1% | −9.0% | 236 円70 億円 |
| 悲観 | 14% | 503 円150 億円 | 0 円0 億円 | −79.3% | −14.6% | 70 円21 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,326 円397 億円 | 341 円102 億円 | −31.2% | −3.7% | 1,667 円499 億円 |
今の株価時価総額 2,425 円726 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 堺の新電気炉と値上げが効き、利益率が戻る 利益 60 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,410 円721 億円
国内の建設需要が老朽インフラの更新で下げ止まり、H 形鋼の輸入も頭打ちになる。堺の新しい電気炉が電力と電極のコストを下げ、東京鋼鐵とのセット販売でシェアも守る。値上げは物価並みに通り、営業利益率は 8% 台に戻る。
DOE を軸にした還元が根づき、自己資本の積み上がりも抑えられる。日鉄は拠点の集約を進め、国内の電炉で生き残った数少ない会社として、稼ぐ力を取り戻す。ただ、需要の縮む市場での話で、ROE は 4% を少し超える程度にとどまる。インドネシアの失敗は教訓として生き、新しい海外投資は慎重になる。
- 国内の電炉(堺・熊本・岸和田・東京鋼鐵):数量 83.0(鋼材出荷量(万トン、推定))× 価格 13(出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目))→ 売上 1,111 億円・営業利益 94 億円。出荷 0.98 倍・価格 1.42 倍・営業利益率 8.5%
- インドネシア(KOS・撤退):数量 0.0(鋼材出荷量(万トン、推定))× 価格 8.04(出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み。売上・利益ともゼロ
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 721 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の需要が底を打ち、値上げが定着し、堺のコスト低下が重なる必要がある。複数の好材料が 10 年続く前提で、確率は低い。
やや楽観 18% 国内の縮小を、コスト低下がほぼ埋める 利益 47 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,892 円566 億円
国内の出荷は 1 割に届かない減り方にとどまり、値段は物価並みに上がる。堺の電気炉のコスト低下と東京鋼鐵との連携で、営業利益率は 7% まで戻る。2018 年から 2020 年の利益水準に近づくが、当時ほどの需要はない。
還元は純利益の 4 割ほどに戻り、無配は解消される。日鉄の方針は現状維持で、親子上場は続く。インドネシアのような大きな失敗は起きず、国内に絞った経営が安定する。ROE は 3% 台にとどまり、資本コストを下回る。事業は悪くないが、株主が報われるほどには稼げない、という位置づけである。
- 国内の電炉(堺・熊本・岸和田・東京鋼鐵):数量 81.0(鋼材出荷量(万トン、推定))× 価格 13(出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目))→ 売上 1,053 億円・営業利益 74 億円。出荷 0.95 倍・価格 1.38 倍・営業利益率 7.0%
- インドネシア(KOS・撤退):数量 0.0(鋼材出荷量(万トン、推定))× 価格 8.04(出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み。売上・利益ともゼロ
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 566 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:堺の新電気炉は動き始めており、コスト低下は実現しやすい。ただ、需要の縮小と輸入が利益率の上値を抑える。
中立 36% 国内は縮み、利益率は中位で踏みとどまる 利益 35 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,524 円456 億円
国内の出荷は 10 年で 1 割ほど減る。値段は物価並みに上がるが、スクラップ価格や電力費の変動で、利益率は年ごとに大きく振れる。均すと営業利益率は 5% 台で、過去 10 年の中位に近い。
堺の電気炉はコストを下げるが、輸入材と電炉各社の競争が、その分を値段から吸い上げる。日鉄との関係は変わらず、完全子会社化は起きない。還元は純利益の 4 割程度で、自己資本は緩やかに増える。
営業利益は 50 億円台、純利益は 30 億円台で、ROE は 3% に届かない。資本コストを下回る事業が、静かに続く 10 年になる。
- 国内の電炉(堺・熊本・岸和田・東京鋼鐵):数量 78.0(鋼材出荷量(万トン、推定))× 価格 13(出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目))→ 売上 983 億円・営業利益 54 億円。出荷 0.92 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 5.5%
- インドネシア(KOS・撤退):数量 0.0(鋼材出荷量(万トン、推定))× 価格 8.04(出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み。売上・利益ともゼロ
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 418 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の構造的な縮小と、コスト改善・値上げの相殺という最もありうる姿。10 年の平均では、利益率は過去の中位に落ち着くと見る。
やや悲観 25% 輸入材と電炉の供給過剰で、利益が細る 利益 16 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 792 円237 億円
国内の出荷は 2 割減る。H 形鋼の輸入が増え続け、電炉の合弁など新しい供給も加わり、値上げは物価の 9 割にとどまる。営業利益率は 3% まで下がる。
堺の新電気炉のコスト低下は、そのまま値下げ競争に消える。東京鋼鐵との連携も、規模のメリットを生むには足りない。還元は小さく、無配に近い年も出る。日鉄は拠点の集約を検討するが、少数株主に有利な形にはならない。
稼ぐ力は細り、ROE は 1% 台に落ちる。会社は存続するが、価値は売れる資産の額に近づく。需要の縮む市場で、小さな電炉が規模も堀も持たないまま戦う難しさが、数字に出る 10 年である。
- 国内の電炉(堺・熊本・岸和田・東京鋼鐵):数量 68.0(鋼材出荷量(万トン、推定))× 価格 12(出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目))→ 売上 801 億円・営業利益 24 億円。出荷 0.80 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 3.0%
- インドネシア(KOS・撤退):数量 0.0(鋼材出荷量(万トン、推定))× 価格 8.04(出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み。売上・利益ともゼロ
倍率:稼ぐ力(純利益約 16 億円 ÷ k)は 180 億円に届かない。価値は売れる資産の税引き後の床に近づくと見て、今の自己資本 1,114 億円に 0.17 倍を掛けた。
確率:H 形鋼の輸入増と電炉の新設が重なれば起こる。需要の縮小は確実で、値上げが物価に届かない展開は十分ありうる。
悲観 14% 構造的な負け:電炉の供給過剰で稼げない会社になる 利益 −5 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 503 円150 億円
国内の建設が想定以上に縮み、出荷は 4 割減る。中国材と電炉の供給過剰で、値上げは物価の半分にしか届かない。スクラップと電力費の上昇を転嫁できず、営業利益率は 0 を割り込む。
堺工場は日鉄の構内にあり、親会社が拠点を集約すれば、製品の移管や縮小を受け入れることになる。熊本や岸和田の整理も避けられず、減損が積み上がる。無配が続き、自己資本は損失と整理費用で目減りする。
10 年後は、もう優良な電炉ではない。残るのは、売れる資産と純現金を、閉鎖の費用で割り引いた額だ。インドネシアの撤退で見えた「需要の急減に勝てない」姿が、国内でも繰り返される。
- 国内の電炉(堺・熊本・岸和田・東京鋼鐵):数量 51.0(鋼材出荷量(万トン、推定))× 価格 11(出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目))→ 売上 553 億円・営業利益 −6 億円。出荷 0.60 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 -1.0%
- インドネシア(KOS・撤退):数量 0.0(鋼材出荷量(万トン、推定))× 価格 8.04(出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み。売上・利益ともゼロ
倍率:純利益は赤字で、稼ぐ力では測れない。価値は売れる資産の税引き後の床で決まると見て、今の自己資本 1,114 億円に 0.135 倍を掛けた。
確率:インドネシアでも需要の急減に勝てなかった。国内でも同じ形の負けが起きる筋書きで、10 年という期間なら無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の電炉(堺・熊本・岸和田・東京鋼鐵)
建築・土木向けの形鋼・棒鋼を国内の 4 工場で作って売る。事業の全てが国内に絞られる。
| 数量鋼材出荷量(万トン、推定) | 価格出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 85.0 | 9.42 | 801 | 15 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 13 | 983 | 54 |
取り方:出荷量は開示を確かめられず推定。連結売上 951 億円からインドネシア分約 150 億円を引いた約 800 億円を、トン当たり 9.4 万円と置いて 85 万トンとした。営業利益 15 億円も推定で、連結の -2.6 億円との差をインドネシアの赤字に当てた。
インドネシア(KOS・撤退)
形鋼・鉄筋を作る合弁子会社。2026 年 1 月に撤退を決め、4 月に生産を止めた。以降の売上と利益はゼロ。
| 数量鋼材出荷量(万トン、推定) | 価格出荷 1 万トン当たりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 6.00 | 150 | −18 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 8.04 | 0 | 0 |
取り方:2024 年 12 月期の売上 253 億円から需要の急減で縮んだ約 150 億円を、トン 6 万円と置いて 25 万トンとした推定。営業損益は連結の営業利益 -2.6 億円から国内分を引いた逆算の推定。
リスクと懸念
国内の形鋼需要の縮小
人口減と建設の細りで、国内の鋼材需要は構造的に縮む。固定費の重い電炉は、出荷が減るほど利益率が下がる。10 年で出荷が 2 割落ちれば、営業利益はほとんど残らない。
中国材の輸入と電炉の供給過剰
H 形鋼の輸入は 4 年で 3 倍になった。日鉄と中山製鋼所の電炉合弁など、国内でも供給は減りにくい。値段を買い手が決める市場で、シェアか利益のどちらかを手放すことになる。
スクラップ価格と電力費
電炉の原価は、スクラップと電力で決まる。今期は 2 つが同時に上がり、値上げが追いつかなかった。2026 年は中東情勢もあり、電力費の上振れが続く恐れがある。
親会社の方針と少数株主の立場
日鉄は議決権の過半を持つ。堺工場も日鉄の構内にある。親会社が拠点の集約や製品の移管を決めれば、事業の価値は動く。少数株主には、それを止める力がない。
地震の後始末とインドネシアの清算
熊本工場は 2026 年 7 月の地震で止まり、10 月に全面再開した。復旧の費用や失った出荷の影響は、まだ見えない。KOS の解散に伴う支払いが、残る純現金を削る恐れもある。
資本配分の失敗
海外の合弁は 200 億円の損失で終わった。新しい電気炉への投資や、東京鋼鐵との連携も、資本コストを超える利益を生まなければ価値を壊す。無配が続けば、積み上がる自己資本は報われない。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 年続けて 6% を超えたら
- 10 年の中立の利益率を 5% 台から上げてよい。堺の新電気炉の効果が定着したと判断し、楽観とやや楽観の確率を厚くする。
- 日鉄が完全子会社化の TOB を発表したら
- 事業の価値とは別に、買収の値段が付く。提示価格を事業の稼ぐ力と比べ、少数株主にとって妥当かを確かめる。
- 国内の鋼材需要が 5,000 万トンを割り続けたら
- やや悲観と悲観の確率を上げる。出荷の減少は固定費の負担を重くし、利益率が一段下がる。
- DOE を軸にした株主還元の方針を会社が示したら
- 余った自己資本が株主に戻る。ROE の改善は見込めるが、事業の稼ぐ力は変わらないので、価値は還元の額だけ増える。
- H 形鋼の輸入が 15 万トンを超えたら
- 形鋼の値段は下がる。国内のシェアを守るために、利益率を削る展開を想定する。
- KOS の清算で追加の支払いが出たら
- 純現金が減り、悲観側の床が下がる。清算の費用と残高を確認し直す。
見ておくもの
- 営業利益率の推移と、スクラップ・電力費の転嫁の進み具合
- 堺の新電気炉の稼働率と、トン当たりのコスト
- 日鉄の方針(完全子会社化・拠点の集約・電炉合弁)
- H 形鋼の輸入量と国内の鋼材需要(鉄連の見通し)
- 配当の再開と DOE を軸にした還元方針
倍率と資本コストの決め方
事業を国内(堺・熊本・岸和田・東京鋼鐵)とインドネシア(撤退)に分け、国内の出荷と価格で 10 年を積んだ。倍率は資本コスト 8.25%(基本 7.5% に品質 +1.5%)と ROE から決めた。ROE は全ての筋書きで k を下回り、PER の上限は 1÷k の 11.1 倍。その 6〜9 割に置いた。悲観は稼ぐ力と今の自己資本に掛けた床で測った。今の株価や過去・同業の倍率から置いていない。完全子会社化の期待も入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.12 倍・やや楽観 PER 9.5→12.12 倍・中立 PER 8.5→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に品質 +1.5% を足した 9.0%。同じ領域の東京製鐵と同じ幅。大和工業・共英製鋼より厚いのは、国内だけに戻り海外の補いが無いため。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。