結論
新家工業は、大阪に本社を置く鋼管の専業メーカーだ。鋼板を丸め、溶接して、丸や角の管に仕上げる。使い道は建築、自動車、自転車、物流機器と広い。売上は約400億円、営業利益は19億円である。
筆者の結論は「やや割高」である。10年先の中心の見立てでも、価値は今の時価総額を2割弱下回る。会社が悪いのではない。本業の稼ぐ力が、今の値段に見合っていない。
強みは、細かい注文に応える加工の腕と、土地を貸して稼ぐ収益だ。賃貸は売上の2%に満たないが、営業利益の3割を稼ぐ。一方、鋼管の営業利益率は3%台と薄く、鋼板の値段に振り回される。
会社は10年後に営業利益率10%、自己資本利益率10%を掲げる。ただ、今の中期計画は2年続けて営業利益が目標を下回った。財務は堅く、配当は純利益と同じ水準まで出している。それでも、利益を増やす道筋はまだ見えない。
10年の幅で見ると、下は浅く、上も高くない。賃貸と財務の堅さが悲観を支えるので、会社が傾く筋書きではない。一方、上へ伸びるには、鋼材の高騰のような外部の追い風か、工場刷新の成功が要る。この形では、今の値段を正当化しにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「堅いが、あまり儲からない会社」と見る。
鋼管は、鋼板の値段と客の注文に挟まれる商売で、売値を自分では決められない。営業利益率が8%を超えたのは、鋼材が急騰した2年だけだった。普通の年の稼ぎは、売上の2〜5%。これでは、株主のものになる利益が薄い。
一方、賃貸は別物だ。売上6.9億円、営業利益6.0億円で、利益率は87%。土地は古くから持つもので、帳簿の値は小さいとみられる。ただ、その価値は、毎年の賃料として利益に出ている。売らない限り、株主の手元には賃料の形でしか入らない。
資本の使い方は読みにくい。純利益と同額を配当で出しながら、300億円の投資を計画する。両立には、政策保有株の売却や借入が要る。
10年後に今より強いか。工場が刷新されて利益率が上がれば強くなる。上がらなければ、投資の重さだけが残る。今の値段に、十分な安全域があるとは言えない。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は鋼管関連で、連結売上の98%を占める。丸く造った管を、ロールで四角や異形に成形する「ロールフォーミング」が得意だ。金型を自社で設計し、小ロットの注文にも応じる。ステンレス管や型鋼、精密加工品も作る。製品は建築、自動車、オートバイ、家具、産業機械、物流機器に使われる。
子会社は国内に4社あり、アラヤ特殊金属、大栄鋼業、ステンレスパイプ工業、三宅金属が分担する。海外はインドネシアに生産・販売の現地法人を持つ。
自転車のリムも手がけ、国内トップブランドをうたう。完成車の輸入販売は2025年12月で終えた。
もうひとつの柱が不動産の賃貸だ。土地と建物を貸し、売上は6.9億円、営業利益は6.0億円。利益率は87%に達する。鋼管の営業利益は12.9億円なので、全社の利益の3割は賃貸が稼いでいる。
2026年3月期は売上が5%減り、営業利益は19億円だった。鋼管の営業利益は12%減っている。北米向けの輸出の不透明感と、輸入のステンレスの圧力が重しになった。
今期は営業利益24億円を見込む。第1四半期は7.5億円で、前年より23%増えた。
優良さと弱いところ
腕は確かだが、価格を決める立場にはない。鋼管は、原料の鋼板の値段に加工賃を乗せて売る商売だ。
強みは三つある。第一に、自社設計の金型による異形管の技術。第二に、国内にそろえた拠点と配送網で、小口の注文にも応えられること。第三に、賃貸収益が全体の下支えになることだ。
弱みは利益率の低さである。営業利益率が8%を超えたのは、鋼材が急騰した2022年3月期と2023年3月期の2年だけ。普通の年は2〜5%にとどまる。20年で赤字の期は3回あり、最悪の営業利益率は2010年3月期のマイナス5%だった。
資本効率も低い。自己資本利益率は10年の中央値が6.2%で、資本コストに届かない。会社は10年後に10%を掲げるが、今の中期計画は1年目も2年目も営業利益が目標を下回った。
株主に対する姿勢は前向きだ。配当性向50%を維持し、自社株買いで株数も減らした。ただ、これから300億円規模の投資を計画しており、利益が増えるかは未知数だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
鋼管の需要は、建築と設備、自動車、インフラの更新で決まる。国内は人口減と建設の人手不足で、数量が増えにくい。会社自身も、国内需要は縮み、安い海外製品の流入で輸出も減ると見ている。
値段は、原料の鋼板に左右される。鋼板が上がると鋼管も上がるが、転嫁には時間がかかる。2022〜23年は鋼材の高騰で、利益率が8〜10%まで上がった。鋼材が落ち着くと、利益は半分以下に戻った。
競争は二重だ。国内には丸一鋼管のような大手がいて、規模と全国の販売網で勝る。ステンレスでは、安い輸入材が圧力になっている。
成長の手がかりは、ASEANと高付加価値品である。インドネシアの現地法人を起点に、需要の伸びる地域を狙う。脱炭素向けのグリーン鋼材や、軽量形鋼の新規製造にも踏み出す。
世界の鉄鋼は、中国の過剰生産で需給が緩む。輸出が強まれば、アジアの鋼管価格にも波及する。日本の国内鋼材需要は年5,000万トンを割り込んでおり、鉄鋼連盟は下げ止まりを期待する段階とみる。
10年を通した前提は、1ドル150円で動かさない。数量は実質で横ばいからやや減少、値段は物価をやや下回って上がると置く。
資本政策と M&A
還元は厚い。配当性向は50%を維持する方針で、中期計画の期間中は総還元性向100%を基本とする。下限配当も掲げる。2026年3月期は、純利益とほぼ同額を配当した。株数は2025年3月期に約14%減っている。
ただし、これだけ出せたのは、投資が控えめだったからだ。今後は2033年度までに約300億円の投資を計画する。内訳は、工場の刷新やDXなどの基盤強化が最大で、研究開発やM&A、環境対応が続く。原資は営業キャッシュフローと政策保有株の売却代金だ。純現金は11億円しかなく、還元と投資を両立できるかが課題になる。
工場は、関西と千葉を量産、名古屋を開発、山中を自転車部品とステンレスの集約拠点にする。M&Aは、水平・垂直の統合で技術と販路を得る狙いだ。
買われる側の可能性は否定できない。kabufu の推計では、10年以内の買収の確率は2割ほどである。株主優待はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の営業利益率は、底に近い水準だ。2023年3月期には鋼材の高騰のもとで10%を付けた。鋼板の値段が落ち着き、転嫁の仕組みが整えば、利益率は戻る。
今期の営業利益は、会社の予想で24億円、前期より27%増える。第1四半期は7.5億円で、すでに2割以上伸びた。工場の刷新と自動化が進めば、人手不足の影響も和らぐ。
成長の手がかりもある。インドネシアの現地法人を起点に、ASEANの需要を取り込む。脱炭素のグリーン鋼材や軽量形鋼など、付加価値の高い製品が増える。長期ビジョンは、営業利益率10%、自己資本利益率10%を掲げている。
賃貸収益も強い。営業利益の3割を稼ぐ事業は、景気の波に左右されにくい。土地は古くから持つもので、帳簿の値は小さく、実際の価値は大きいとみられる。
配当は純利益並みに出しており、下限配当もある。自社株買いで株数も減らした。PBR1倍を掲げる経営は、株主を向いている。
10年を通して見れば、鋼管は社会の基盤を支える素材だ。水道やガスの管の更新、建物の補修、物流機器の需要はなくならない。一度客に認められた加工の腕は、簡単には置き換わらない。
慎重な見方
本業の稼ぐ力は、会社が思うほど強くない。営業利益率が8%を超えたのは、鋼材高騰の2年だけだ。ふだんは2〜5%で、20年で3回、赤字を出した。
中期計画は、2期続けて営業利益が目標を下回った。今期予想の24億円も、最終年度の目標35億円には遠い。輸入のステンレスの圧力や、北米向けの輸出の不透明感は、構造的に続く。
国内の鋼管需要は人口とともに縮む。建築の着工が落ちれば、量が減って固定費が重くなる。
300億円の投資は、純現金が11億円しかない会社には重い。配当を純利益並みに出しながら、投資を進めるのは難しい。政策保有株の売却で穴を埋めても、それは一度きりの原資だ。
賃貸は安定しているが、利益全体の3割で、本業の弱さを埋めきれない。自己資本利益率は10年の中央値で6.2%と、資本コストを下回る。厚い自己資本は、株主にとって使われていない資本でもある。
しかも、この会社の利益は鋼材の値動きに大きく左右される。自分で変えられない要因に頼る利益に、高い倍率を払う理由は見当たらない。
どちらに重みを置いたか
慎重な言い分が強い。強気の言い分の中心は「利益率が戻る」だが、会社自身の計画が2年続けて外れており、根拠が乏しい。賃貸と財務の堅さは、悲観を深くしすぎない床になる。
そこで確率は、中立に4割を置き、やや悲観までを厚めにした。やや楽観より上は合わせて24%、やや悲観より下は36%とした。
最後に効くのは、会社の計画への信頼度である。目標が外れ続けている間は、慎重な言い分を優先し、利益率の回復は中立にも入れ込みすぎない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,840 円271 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,458 円139 億円)。 今の値に割り戻すと 2,308 円220 億円、今との差 −14.5%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,180 円589 億円 | 2,255 円215 億円 | +212.6% | +12.1% | 506 円48 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,260 円406 億円 | 1,835 円175 億円 | +125.9% | +8.5% | 1,097 円105 億円 |
| 中立 | 40% | 3,225 円308 億円 | 1,678 円160 億円 | +81.7% | +6.2% | 1,961 円187 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,251 円119 億円 | 1,101 円105 億円 | −12.8% | −1.4% | 564 円54 億円 |
| 悲観 | 12% | 939 円90 億円 | 472 円45 億円 | −47.7% | −6.3% | 169 円16 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,840 円271 億円 | 1,458 円139 億円 | +59.3% | +4.8% | 4,298 円410 億円 |
今の株価時価総額 2,698 円257 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 工場の刷新と高付加価値品で、利益率が鋼材高騰期に近づく 利益 43 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 6,180 円589 億円
工場の刷新が計画どおり進み、自動化で人手不足の影響が和らぐ。ロールフォーミングの技術を生かした高付加価値品と、グリーン鋼材が売れ、鋼管の出荷量は今の1.1倍になる。値段は物価をわずかに上回り、鋼材の高騰期のように転嫁が進む。
インドネシア法人を起点としたASEANの販売が立ち上がり、国内の縮みを補う。鋼管の営業利益率は8%に届く。会社が掲げる10%には届かないが、過去の山に近い水準だ。
賃貸は物価並みに賃料が上がり、営業利益の安定した柱として残る。全社の営業利益は56億円と、今の3倍になる。
配当は純利益の5割を上回り、自社株買いも続く。ただし300億円の投資は予定どおり使われ、現金が余る筋書きではない。
- 鋼管関連:数量 24.2(出荷量(万トン))× 価格 25(1トンあたり平均売上(万円)。鋼板の値段と加工賃で動く)→ 売上 595 億円・営業利益 48 億円。出荷量1.10倍、値段1.36倍。営業利益率8.0%
- 不動産賃貸:数量 1.0(1式(賃貸面積と稼働率は横ばい))× 価格 9.69(年間の賃料収入(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 8 億円。賃料1.40倍。営業利益率87%
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.8 倍、時価総額 589 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場刷新、ASEAN、グリーン鋼材がすべてうまくいき、鋼材高騰期に近い利益率に戻る必要がある。中期計画の目標は2期続けて未達で、実績が追いついていないので、6%にとどめた。
やや楽観 18% 転嫁が進み、鋼管の利益率が6%台まで戻る 利益 33 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,260 円406 億円
転嫁の仕組みが整い、鋼板の値上がり分を値段に乗せやすくなる。出荷量は今の1.03倍とわずかに増え、値段は物価並みの1.33倍になる。ステンレスは輸入材に押されるが、小口の加工で守る。
工場の刷新は、費用が先に出るが、2030年ごろから生産性の改善が利益に出てくる。鋼管の営業利益率は6.2%と、普通の年の上限に近づく。
インドネシアは小さいが黒字化し、全社の足を引っ張らなくなる。賃貸は物価の伸びに近いペースで増える。全社の営業利益は42億円ほどで、今の2倍強だ。
還元は、配当性向50%に自社株買いを足す形で続く。ただし、投資の資金が要るため、総還元性向100%は続けられない。
- 鋼管関連:数量 22.7(出荷量(万トン))× 価格 24(1トンあたり平均売上(万円)。鋼板の値段と加工賃で動く)→ 売上 545 億円・営業利益 34 億円。出荷量1.03倍、値段1.33倍。営業利益率6.2%
- 不動産賃貸:数量 1.0(1式(賃貸面積と稼働率は横ばい))× 価格 9.27(年間の賃料収入(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 8 億円。賃料1.34倍。営業利益率87%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 406 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益は今期、会社予想で2割以上増える。第1四半期も23%増で、利益の回復は進んでいる。この勢いが10年の高めの水準に定着する筋書きとして、18%を置いた。
中立 40% 数量は細り、値段は物価をやや下回って上がるだけ 利益 25 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,225 円308 億円
国内の建築と設備の需要は、人口減と建設の人手不足で細る。出荷量は今の0.95倍に減る。一方、水道・ガスの更新や、小ロットの加工、インドネシアの販売が下支えになる。
値段は、鋼板の値上がりを時間をかけて転嫁し、物価をやや下回る1.30倍になる。営業利益率は鋼管で4.8%、全社で6.2%。過去の普通の年の上限に近い水準で、会社が掲げる10%は達成されない。
賃貸は、土地の賃料が物価より遅いペースで上がり、利益の3割弱を稼ぎ続ける。全社の営業利益は31億円ほどで、物価の伸びを少し上回る程度だ。
純利益は25億円ほど。配当は純利益の6〜7割になり、自己資本はゆっくり増える。
- 鋼管関連:数量 20.9(出荷量(万トン))× 価格 23(1トンあたり平均売上(万円)。鋼板の値段と加工賃で動く)→ 売上 491 億円・営業利益 24 億円。出荷量0.95倍、値段1.30倍(鋼板の転嫁が遅れ物価をやや下回る)。営業利益率4.8%
- 不動産賃貸:数量 1.0(1式(賃貸面積と稼働率は横ばい))× 価格 8.65(年間の賃料収入(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 8 億円。賃料1.25倍(長期契約で物価より遅い)。営業利益率87%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 308 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の言い分(回復と成長)と慎重な言い分(計画未達と国内の縮み)の落としどころ。実力は物価並みの増加にとどまるとみて、4割を置いた。
やや悲観 24% 国内需要の縮みと価格競争で、鋼管の利益が薄くなる 利益 15 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,251 円119 億円
国内の鋼管需要が想定より早く縮み、出荷量は今の0.85倍になる。輸入のステンレスや安い鋼管に押され、値段は物価に追いつかない。人手不足で工期が遅れ、建築向けの出荷も落ちる。
固定費が重い工場で稼働が落ちると、利益が急に削られる。鋼管の営業利益率は2.5%まで下がる。工場の刷新費用は先に出るが、利益に結びつかない。
賃貸は安定しているが、賃料の伸びは物価を下回る。全社の営業利益は18億円ほどで、今とほぼ同じだ。名目で同じということは、実質では3割の目減りである。
配当は下限の水準へ下がり、自社株買いは止まる。自己資本利益率は4%を割る。
- 鋼管関連:数量 18.7(出荷量(万トン))× 価格 23(1トンあたり平均売上(万円)。鋼板の値段と加工賃で動く)→ 売上 422 億円・営業利益 11 億円。出荷量0.85倍、値段1.25倍。営業利益率2.5%
- 不動産賃貸:数量 1.0(1式(賃貸面積と稼働率は横ばい))× 価格 8.30(年間の賃料収入(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 7 億円。賃料1.20倍。営業利益率86%
倍率:事業のROE約3.7%がk8%を大きく下回り、ためた利益は額面を大きく割る。利益が谷に向かう筋書きでもあり、上限の1÷k=11.8倍の約6割強の7.5倍に置いた。
確率:利益率が普通の年に2〜5%台だったこと、中期計画が2期連続で未達なこと、国内需要が縮むことを考え、24%を置いた。同じ領域の丸一鋼管(20%)より厚いのは、規模が小さく海外の稼ぎが薄いため。
悲観 12% 鋼管が赤字に落ち、賃貸と現金だけが残る 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 939 円90 億円
国内の建築需要が大きく落ち、輸入材との価格競争に負ける。出荷量は今の0.7倍に減り、鋼板の値上がりを転嫁できない。鋼管は赤字になる。
300億円規模の工場投資は、需要が細るなかで回収できず、減損が出る。自己資本は減り、配当は下限まで切る。自社株買いは止まる。
賃貸は残り、年に5億円ほどの営業利益を稼ぐ。ただし賃料は物価に連動せず、固定された長期契約の形になる。
価値は鋼管の稼ぐ力ではなく、賃貸の収益と、現金・運転資本の回収で測られる。
自己資本は大きく減るが、純現金と賃貸が残るので、会社の存続を脅かす水準ではない。株主にとっては、成長を期待できない資産株になる筋書きだ。
- 鋼管関連:数量 15.4(出荷量(万トン))× 価格 22(1トンあたり平均売上(万円)。鋼板の値段と加工賃で動く)→ 売上 334 億円・営業利益 −3 億円。出荷量0.70倍、値段1.20倍。固定費を回収できず営業赤字(利益率−1%)
- 不動産賃貸:数量 1.0(1式(賃貸面積と稼働率は横ばい))× 価格 6.92(年間の賃料収入(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 6 億円。賃料は据え置き(1.0倍)。営業利益率85%
倍率:鋼管が赤字で、稼ぐ力は賃貸の分だけ。床は稼ぐ力と売れる資産のうち大きい方で、賃貸の稼ぎ(税引き後約4.1億円)を資本コスト8%で割った約48億円、純現金約11億円、鋼管を畳む時に回収できる運転資本の一部約31億円の合計約90億円。今の自己資本344億円の0.26倍として置いた。
確率:20年で赤字の期が3回あり、鋼材の下落と建築の落ち込みが重なると赤字に落ちる。ただし賃貸と財務が下支えになるので、12%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鋼管関連
普通鋼鋼管、ステンレス鋼管、異形鋼管(ロールフォーミング)、精密加工品、自転車リム、インドネシア法人。建築・自動車・物流機器・家具などに使われる。自転車の完成車の販売は2025年12月で終了。
| 数量出荷量(万トン) | 価格1トンあたり平均売上(万円)。鋼板の値段と加工賃で動く | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22.0 | 18 | 398 | 13 |
| 10 年後 中立 | 20.9 | 23 | 491 | 24 |
取り方:鋼管関連396.0億円・営業利益12.9億円に、終了した自転車と小さなその他の売上1.6億円・営業損失0.15億円を足した値。トン数の開示はなく、平均単価を1トン18万円(普通鋼とステンレス、加工品の混ざり)と置いた推定で、出荷量を22万トンとした。
不動産賃貸
土地と建物の賃貸。売上は小さいが利益率が87%と高く、全社の営業利益の約3割を稼ぐ。
| 数量1式(賃貸面積と稼働率は横ばい) | 価格年間の賃料収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 6.92 | 7 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 8.65 | 9 | 8 |
取り方:会社開示の売上6.92億円・営業利益6.03億円。賃貸面積は変わらない前提で、数量は1式、値段は賃料の伸びで置く。
リスクと懸念
鋼材価格の変動と転嫁の遅れ
鋼管の値段は原料の鋼板に連動し、転嫁には時間がかかる。鋼材が上がる局面は利益が出るが、下がる局面では在庫の評価も含めて急に利益が削られる。利益率の振れが大きい事業だ。
国内需要の構造的な縮み
建築・設備向けは、人口減と建設の人手不足で数量が増えにくい。日本の鋼材需要は年5,000万トンを割り込んでいる。下げ止まりが遅れれば、固定費の重い工場で利益が薄くなる。
300億円規模の投資の回収
2033年度までに約300億円を投じる計画だが、純現金は11億円にとどまる。還元との両立が難しく、投資が利益に結びつかなければ、償却費だけが重くのしかかる。
輸入材と海外の価格競争
ステンレスは安い輸入材の圧力を受ける。世界の鉄鋼は中国の過剰生産で需給が緩んでおり、アジアの鋼管価格にも波及しうる。北米向けの輸出も先行きが見えにくい。
中期計画の未達と目標の高さ
今の中期計画は1年目も2年目も営業利益が目標を下回った。長期ビジョンは営業利益率10%を掲げるが、普通の年は2〜5%だ。目標が先延ばしになれば、資本効率の改善は遠のく。
賃貸収益への依存
営業利益の3割を稼ぐ賃貸は安定しているが、鋼管の弱さを隠している面もある。契約の更新や賃料の見直しで減れば、全社の利益が一段と落ちる。
今後の分かれ目
- 鋼管の営業利益率が、2年続けて6%を超えたら
- 転嫁の仕組みが定着したとみて、中立の利益率と、やや楽観より上の確率を引き上げる。
- 営業利益が、会社の今期予想24億円に届かない状態が続いたら
- 中期計画の未達が3期続くことになり、慎重な見方を強める。やや悲観の確率を上げる。
- 工場刷新の最初の拠点で、生産性の改善が数字に出たら
- 300億円の投資が利益に結びつく証拠になり、中立の利益率を引き上げる。
- 純現金が積み上がらないまま、配当が純利益を上回り続けたら
- 還元が持続できないとみて、配当の前提を下げる。
- インドネシア法人が黒字化し、ASEANの販売が伸びたら
- 国内の縮みを補う道筋が見えたとして、数量の前提を引き上げる。
- 政策保有株の売却や、賃貸不動産の活用方針が示されたら
- 遊休資産の戻し方が明確になるので、資本効率の見方を見直す。
見ておくもの
- 鋼管の営業利益率(鋼板の値段との連動)
- 中期計画の営業利益の達成度(今期予想24億円)
- 工場刷新の進捗と償却費
- インドネシア法人と北米向けの出荷
- 配当と自社株買い、政策保有株の売却、純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
売上は鋼管の出荷量と1トンあたり売上、賃貸の賃料で積み上げた。今の株価とPERは見ずに筋書きを置いた。倍率は資本コスト8%(基本7.5%に循環+0.5%・値決め力+0.25%・寿命+0.25%)と長期成長4%、事業のROEから出る正当化PERの9.3〜9.6割に置いた。10年後の営業利益率は、鋼材高騰期の山ではなく、普通の年の上限に近い水準に置いた。賃貸と政策保有株の稼ぎは利益に残るため、余った資産として足していない。リース会計の影響は小さく、調整していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→13.8 倍・やや楽観 PER 10.4→12.5 倍・中立 PER 9.7→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。