結論
日本鋳鉄管は、埼玉県久喜市の工場で水道用のダクタイル鋳鉄管(粘りのある鋳鉄で作る管)を作る会社だ。国内ではクボタと栗本鐵工所に次ぐ3番手で、JFEスチールが3割を持つ。ガス管や樹脂管、マンホールの鉄蓋も手がける。
筆者の結論は、10年の稼ぐ力で測ると今の値段は高い、というものだ。水道管の更新は必要だが、自治体のお金が足りず、発注量は細っている。工場は余り、値段の競争で利益は消えた。2026年3月期の営業利益は2.6億円、売上の2%にも届かない。
そこで会社は大きく動いた。電気炉に切り替え、2027年からはクボタの小口径の直管も全量をこの工場で作る。クボタが2割を出す合弁会社だ。中計は2027年度に純利益8億円、ROE8%を目指す。
ただ、そのために借金が膨らんだ。純負債は時価総額を超え、金利が上がれば利払いが重くなる。過去の最高益の年でもROEは5%台だった。筆者は、中計が半分実る姿を中心に置いても、資本コストに届かないと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日本鋳鉄管は「必要とされるが、値段を決められない会社」だ。
水道管は国の暮らしに欠かせない。古い管は確実に増え、いつかは替えなければならない。その需要の確かさは本物だ。だが、買い手の自治体にはお金がなく、売り手は3社で工場を余らせている。必要とされることと、儲かることは別だ。
オーナーとして見るなら、合弁の決断は評価できる。工場を満たさなければ固定費に押しつぶされる業界で、最大手と組んで量を確保した。だが、その代わりに借金を増やし、作る量の一部はクボタの言い値で納めることになる。
過去10年のROEの中央値は3%だ。中計が掲げる8%は、この会社が一度も届いたことのない水準だ。筆者は、合弁の効果を半分ほど見込んでも、資本コストの9%近くには届かないと見る。安全域は、今の値段にはない。
何で稼ぐ会社か
事業は2つある。2026年3月期の売上159億円のうち、ダクタイル鋳鉄関連が140億円、樹脂管・ガス関連が20億円だ。利益は前者が0.9億円、後者が1.7億円で、規模の小さいガスの方が稼いでいる。
ダクタイル鋳鉄関連の中心は、水道の配水管に使う鋳鉄管と継手、上下水道のマンホールの鉄蓋だ。買い手は全国の水道事業体、つまり市町村で、工事会社を通じて入札で納める。地震で抜けない耐震型の管が主力で、施工を楽にする工具や、管の傷みを診断するサービスも売る。
樹脂管・ガス関連は、都市ガスの導管に使う鋳鉄管とポリエチレン管、レジンコンクリートの製品だ。大株主の東京瓦斯との関係が深い。グループ会社で倉庫と運送、廃材のリサイクルも手がける。
稼ぎの形を変えるのが、クボタとの合弁だ。2026年12月に久喜工場の直管の製造部門を分社し、クボタが19.9%を出す。2027年1月から、自社とクボタの小口径の直管を全量ここで作る。クボタは自社の京葉工場で作っていた分を、この合弁から買う形になる。工場の稼働が上がり、固定費が薄まるのが狙いだ。
そのために電気炉を新設し、2025年10月に旧来のキュポラ炉を止めた。設備投資は2025年度だけで33億円に上った。
優良さと弱いところ
事業の質は低い。最大の理由は、値段を決める力がないことだ。水道管は自治体の入札で買われ、クボタが大半を握る市場で3番手の会社は値段の追随者になる。原料や電気代が上がっても、価格の改定は自治体の予算に縛られて遅れる。営業利益率は過去10年で最高でも5%台、2019年3月期には大きな損失も出した。
需要も細っている。管路の更新率は下がり続け、水道用のポリエチレン管を採用する自治体も増えている。人口が減れば水道料金の収入も減り、自治体は管の更新を先送りする。
合弁は筋の良い一手だ。業界の工場の余りを減らし、クボタの量で稼働を埋める。独占禁止法の確認も済んでいる。ただ、クボタに作って納める仕事は、値段をクボタと決める仕事でもある。利幅は厚くならない。
財務は弱くなった。借入は1年で47億円増え、純負債は自己資本の6割に迫る。営業利益で利払いを賄う力は3倍を切っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
水道管の市場は、必要と予算が食い違っている。国内の水道管は高度成長期に敷いたものが多く、法定の耐用年数40年を超えた管の割合は年々増えている。2024年の能登半島地震では、耐震化の遅れが断水の長期化を招いた。国は水道の所管を国土交通省に移し、上下水道の耐震化を急ぐ方針を打ち出した。
それでも発注量は増えていない。水道事業を担う市町村は、人口減で料金収入が細り、管の更新の費用を賄えない。料金の値上げは政治的に難しく、更新率は1%を下回る水準で低迷している。工事を担う人手の不足も、発注を絞る要因だ。
供給の側は、クボタ、栗本鐵工所、日本鋳鉄管の3社が国内の鋳鉄管を作る。どの工場も設備が余っており、日本鋳鉄管とクボタの合弁は、その余りを減らす再編の一歩だ。
ガスの導管は、新しい住宅の減少と電化の流れで、工事量が減り続けている。
筆者は、10年で国内の鋳鉄管の量は1割ほど減り、値段は物価並みに上がると見る。耐震化の予算が大きく増えれば上振れはありうるが、自治体のお金の制約は簡単には解けない。
鋳鉄管は丈夫で長持ちする。水道の幹線や地震の多い地域では、今後も鋳鉄管が選ばれ続ける。
資本政策と M&A
還元は安定配当が基本で、2025年度の配当は総額0.8億円ほどだ。自社株買いはしていない。中計は2027年度にROE8%を掲げるが、そのための原資は工場の投資に回っている。
大株主はJFEスチールが30%、東京瓦斯が10%で、2社で4割を持つ。JFEホールディングスにとっては持分法の会社だ。鉄鋼の本業から見れば小さく、JFEが買い増すか手放すかは読みにくい。クボタは合弁会社に出資するが、日本鋳鉄管の株は持っていない。業界の再編がさらに進めば、会社ごとの統合もありうるが、筆者はその確率を高くは見ない。
電気炉と能力の増強に2025年度だけで33億円を使い、短期と長期の借入を合わせて41億円増やした。借金を返しながら配当を増やす余地は小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本鋳鉄管は、業界の再編の勝ち組になりうる。クボタは自社の京葉工場で作っていた小口径の直管を、この会社の合弁会社から全量買う。最大手が自分の工場を止めてまで任せるのは、久喜工場の力を認めたからだ。2027年からは、工場が満ちる。
鋳鉄管の工場は固定費が重い。量が増えれば、その分だけ利益は大きく膨らむ。電気炉に替えたことで、原料に鉄くずを使え、二酸化炭素も半分になる。脱炭素を求める自治体の入札でも有利になる。
需要の底も見えてきた。能登半島地震で耐震化の遅れがはっきりし、国は水道を国土交通省に移して上下水道の耐震化を急ぐ。古い管は確実に増え、いつかは替えなければならない。
中計は2027年度に純利益8億円、ROE8%を掲げる。達成すれば、今の時価総額は利益の6倍にすぎない。JFEと東京瓦斯が大株主で、会社が揺らぐ心配も小さい。
ガスも悪くない。東京瓦斯との長い取引があり、値上げとリサイクルで利益を守っている。小さな事業だが、稼ぎは安定している。
慎重な見方
水道管は、必要でも買われない。市町村には管を替えるお金がなく、更新率は下がり続けている。国が耐震化を叫んでも、予算が付かなければ発注は増えない。小口径の発注は前年割れが続いている。
合弁は量を増やすが、利幅は増やさない。クボタに納める直管の値段はクボタと決める。最大手が自分の工場を止めたのは、自社で作るより安く買えるからだ。その安さを担うのは日本鋳鉄管の方だ。
借金も重くなった。純負債は時価総額を超え、営業利益で利払いを賄う力は3倍を切る。金利が上がれば、増えた利益の多くは銀行に渡る。
中計の8%も信じにくい。過去10年のROEの中央値は3%で、最高の年でも5%台だ。2019年3月期には減損で自己資本の4割を失った。期待が外れれば、借金だけが残る。
合弁で量が増えても、ガスの導管工事は減り続け、ポリエチレン管も鋳鉄管の需要を奪う。工場を満たすために作る量を増やしても、売れる値段が付かなければ、稼働の高さは利益にならない。少数株主が受け取れるのは、細い配当だけだ。
どちらに重みを置いたか
合弁で工場を満たす筋は、強気の言い分に理がある。ただ、量が増えても利幅を決めるのはクボタと自治体で、借金も増えた。確率は中立を中心に置き、過去の減損の前例と純負債の重さを見て慎重な側を強気より厚くした。2027年度に経常利益が10億円を超えれば、見方を強気に寄せる。逆に利益率が2%を割る年が続けば、慎重な側をさらに厚くする。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,936 円62 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 340 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 1,060 円34 億円、今との差 −29.6%、 期待の年率 +4.2%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,161 円134 億円 | 622 円20 億円 | +217.6% | +12.3% | 478 円15 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,112 円100 億円 | 467 円15 億円 | +137.7% | +9.0% | 716 円23 億円 |
| 中立 | 38% | 2,241 円72 億円 | 373 円12 億円 | +73.6% | +5.7% | 993 円32 億円 |
| やや悲観 | 20% | 171 円6 億円 | 156 円5 億円 | −78.3% | −14.2% | 65 円2 億円 |
| 悲観 | 12% | 93 円3 億円 | 93 円3 億円 | −87.6% | −18.8% | 22 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,936 円62 億円 | 340 円11 億円 | +51.1% | +4.2% | 2,275 円73 億円 |
今の株価時価総額 1,506 円48 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 合弁で工場が満ち、耐震化の予算も増える 利益 12 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 4,161 円134 億円
合弁会社が2027年から自社とクボタの小口径の直管を全量作り、久喜工場はほぼフル稼働になる。電気炉で原料に鉄くずを使えるようになり、エネルギーの費用も下がる。工場を満たした分だけ固定費が薄まり、ダクタイル鋳鉄関連の利益率は6%に上がる。
能登半島地震を機に国が上下水道の耐震化の予算を厚くし、自治体の発注量も増える。耐震管の値段は物価以上に上がる。
営業利益は19億円、純利益は12億円近くになる。借入は利益で返り、利払いは軽くなる。ROEは8%台に乗り、中計の目標が続く姿だ。それでも資本コストにはわずかに届かない。
- ダクタイル鋳鉄関連(水道管・継手・鉄蓋・工事・診断):数量 57.0(鋳鉄管・鉄蓋の出荷量(千トン、推定))× 価格 5.06(1千トンあたりの売上(億円、推定))→ 売上 288 億円・営業利益 17 億円。自社35千トン+OEM22千トン。単価はクボタ向けOEM(自社品の約4分の3の単価)が混ざる分、平均が物価ほど上がらない(自社品は物価並み)
- 樹脂管・ガス関連:数量 9.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 2.80(1千トンあたりの売上(億円、推定))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。値上げが通る
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 134 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の2027年度の目標(経常11億円・ROE8%)が実り、その水準が続く姿。前の中計でも最高益の年は経常9億円で、目標を超えて続く筋は1割とした。
やや楽観 20% 合弁の効果が出て、利益率が5%に戻る 利益 9 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,112 円100 億円
合弁会社がクボタ向けの直管を安定して作り、工場の稼働は大きく上がる。自治体の発注量は横ばいだが、管の値段は物価並みに上がり、電気炉の立ち上げの費用もなくなる。ダクタイル鋳鉄関連の利益率は5%に戻り、2023年度の最高益の水準を上回る。
ガスは導管工事が減るが、値上げとリサイクルの事業で利益を守る。
営業利益は15億円、純利益は8.75億円になる。借入の返済が進み、利払いは今より少し軽くなる。配当は増えるが、ROEは7%弱で、資本コストには届かない。
JFEと東京瓦斯との関係も安定し、ガス管の受注も細りながら続く。
- ダクタイル鋳鉄関連(水道管・継手・鉄蓋・工事・診断):数量 54.0(鋳鉄管・鉄蓋の出荷量(千トン、推定))× 価格 4.93(1千トンあたりの売上(億円、推定))→ 売上 266 億円・営業利益 13 億円。自社33千トン+OEM21千トン。単価はクボタ向けOEM(自社品の約4分の3の単価)が混ざる分、平均が物価ほど上がらない(自社品は物価並み)
- 樹脂管・ガス関連:数量 8.8(出荷量(千トン、推定))× 価格 2.75(1千トンあたりの売上(億円、推定))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。値上げで守る
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 100 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:合弁の契約と電気炉はすでに動いており、工場の稼働が上がる効果は確度が高い。発注量が増えなくても利益率が戻る筋として2割。
中立 38% 合弁で工場は埋まるが、利幅は薄いまま 利益 6 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,241 円72 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、中計の効果が半分ほど出る姿だ。合弁会社のOEMで工場の量は5割近く増えるが、クボタに納める直管の値段は低く、利幅は薄い。自社の水道管の出荷量は、自治体の予算の制約で1割減る。
ダクタイル鋳鉄関連の利益率は4%になる。過去10年の平均よりは高いが、最高益の年には届かない。ガスは量が減り、利益は横ばいだ。
営業利益は11.6億円になる。借入は少しずつ減るが、金利の上昇で利払いは今より重い。純利益は6.3億円、ROEは5%台にとどまる。合弁は会社を守ったが、資本コストを超える会社には変えなかった。
- ダクタイル鋳鉄関連(水道管・継手・鉄蓋・工事・診断):数量 51.5(鋳鉄管・鉄蓋の出荷量(千トン、推定))× 価格 4.83(1千トンあたりの売上(億円、推定))→ 売上 249 億円・営業利益 10 億円。自社31.5千トン+OEM20千トン。単価はクボタ向けOEM(自社品の約4分の3の単価)が混ざる分、平均が物価ほど上がらない(自社品は物価並み)
- 樹脂管・ガス関連:数量 8.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 2.70(1千トンあたりの売上(億円、推定))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。量は減り利益は横ばい
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 72 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:合弁で量は確保できるが、自社の水道管の発注量は細り、値段の交渉力も変わらない。中計の効果が半分ほど出る姿として4割弱。
やや悲観 20% 発注量が細り、合弁でも利益が出ない 利益 1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 171 円6 億円
自治体の財政は苦しく、水道管の更新は先送りが続く。ポリエチレン管を選ぶ自治体も増え、自社の鋳鉄管の量は2割以上減る。合弁会社のクボタ向けの量も、クボタ自身の販売が減る分だけ細る。
原料と電気代、人件費は上がるが、入札の値段は物価ほど上がらない。ダクタイル鋳鉄関連の利益率は1.5%に落ちる。
営業利益は3.5億円にとどまり、借入の利払いでほとんど消える。純利益は0.5億円だ。工場の更新の投資は続き、借金は減らない。価値は稼ぐ力で測るしかなく、それはほとんど残らない。JFEと東京瓦斯が株主でいる限り会社は続くが、少数株主の取り分は小さい。
- ダクタイル鋳鉄関連(水道管・継手・鉄蓋・工事・診断):数量 43.0(鋳鉄管・鉄蓋の出荷量(千トン、推定))× 価格 4.30(1千トンあたりの売上(億円、推定))→ 売上 185 億円・営業利益 3 億円。自社27千トン+OEM16千トン。単価はクボタ向けOEM(自社品の約4分の3の単価)が混ざる分、平均が物価ほど上がらない(自社品は物価並み)
- 樹脂管・ガス関連:数量 7.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 2.50(1千トンあたりの売上(億円、推定))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。導管工事が減る
倍率:ROEはほぼ0%で、稼ぐ力は純利益0.5億円÷k=約5.7億円。純負債が約64億円あり、土地や退職給付の資産を売っても借金を返すと手元に残らないので、資産の床は置けない。今の自己資本99億円に0.055倍をかけた5.5億円とする。
確率:水道管の更新率は下がり続け、ポリエチレン管も増えている。合弁で量を集めても値段が付いてこない筋は十分ありうるので2割。
悲観 12% 赤字が続き、工場の減損に追い込まれる 利益 −3 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 93 円3 億円
リーマン級の不況で自治体の工事が止まり、資材と電気代の値上がりだけが残る。鋳鉄管の量は3割以上減り、合弁会社の工場も稼働を落とす。ダクタイル鋳鉄関連は赤字になる。
借入の借り換えの金利は上がり、利払いが重くなる。会社は電気炉と直管の設備で減損を出し、自己資本は3割減る。配当はほぼ止まる。
親会社格のJFEが支えれば会社は残るが、少数株主に届く価値はほとんどない。最悪の場合、増資で株が薄まる恐れもある。
合弁会社もクボタが量を絞り、工場の稼働は再び下がる。借入の返済の期限が重なり、銀行との交渉が続く年になる。
- ダクタイル鋳鉄関連(水道管・継手・鉄蓋・工事・診断):数量 36.0(鋳鉄管・鉄蓋の出荷量(千トン、推定))× 価格 3.90(1千トンあたりの売上(億円、推定))→ 売上 140 億円・営業利益 −3 億円。量が3割以上減り赤字
- 樹脂管・ガス関連:数量 6.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 2.30(1千トンあたりの売上(億円、推定))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。とんとん
倍率:赤字で稼ぐ力はなく、純負債が売れる資産を上回るので資産の床もない。立て直しの可能性だけを残し、今の自己資本99億円に0.03倍をかけた3億円とする。
確率:2019年3月期に大きな減損で自己資本の4割を失った前例がある。借金が増えた今、リーマン級の不況と発注の減少が重なる筋は1割強ある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ダクタイル鋳鉄関連(水道管・継手・鉄蓋・工事・診断)
上下水道用のダクタイル鋳鉄管と継手、鉄蓋、施工用品、管路の診断。合弁会社からのクボタ向けOEMを含む。
| 数量鋳鉄管・鉄蓋の出荷量(千トン、推定) | 価格1千トンあたりの売上(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35.0 | 3.99 | 140 | 1 |
| 10 年後 中立 | 51.5 | 4.83 | 249 | 10 |
取り方:2026年3月期のダクタイル鋳鉄関連の売上139.55億円・利益0.87億円(短信)。出荷量の開示はなく、継手・鉄蓋・工事を含めた売上を1トン約40万円と置いて割り戻した推定。
樹脂管・ガス関連
ガス用の鋳鉄管とポリエチレン管、レジンコンクリート製品、物流とリサイクル。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1千トンあたりの売上(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 2.02 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 8.5 | 2.70 | 23 | 2 |
取り方:2026年3月期の樹脂管・ガス関連の売上20.22億円(内部取引込み)・利益1.68億円(短信)。出荷量の開示はなく、1トン約20万円と置いた推定。
リスクと懸念
自治体の発注量
水道管の買い手は市町村で、人口減で料金収入が細り、管の更新を先送りしている。更新率は1%を下回り、主力の小口径の発注は前年割れが続く。耐震化の予算が増えなければ、量は細り続ける。
借金と金利
電気炉と合弁の設備で借入が1年で47億円増え、純負債は時価総額を超えた。金利が上がれば利払いは利益の大きな部分を食う。利益が出ない年が続けば、借り換えの条件も厳しくなる。
合弁の利幅
合弁会社はクボタ向けの直管を作るが、その値段はクボタと決める。量は増えても利幅が薄ければ、工場を満たす効果は小さい。クボタの持ち分19.9%の分、利益の一部は外に出る。
ポリエチレン管への置き換え
水道用のポリエチレン管は軽く、施工が早い。採用する自治体が増えており、小口径の鋳鉄管の需要を奪っていく。人手不足の工事現場ほど、軽い管が好まれる。
原料と電気代
電気炉は鉄くずと電気を大量に使う。電気代と鉄くずの値段が上がれば原価が膨らみ、入札の値段に転嫁できるまで利益が削られる。
大株主の意向
JFEスチールが30%、東京瓦斯が10%を持つ。JFEが持ち分を手放すか、業界の再編で会社ごとの統合を求めれば、少数株主の立場は大きく変わる。
今後の分かれ目
- 合弁会社が2027年から計画どおりにOEMを始め、経常利益が10億円を超える
- 中計の効果が本物。ダクタイルの利益率の中立を上げ、強気の側に確率を寄せる。
- 国が上下水道の耐震化の補助を大きく増やす
- 自治体の発注量が戻る。自社の出荷量の中立を引き上げる。
- 借入が2年続けて減る
- 財務の重しが軽くなる。kの借金の分を下げる。
- 利益率が2%を下回る年が続く
- 合弁でも利幅が出ない。中立の利益率を下げ、慎重な側に確率を寄せる。
- JFEが持ち分を動かす
- 業界の再編や会社の売却の可能性を見る。買い手の条件次第で筋書きを見直す。
見ておくもの
- 水道の鋳鉄管の発注量と小口径の出荷
- 合弁会社の稼働とクボタ向けの量
- ダクタイル鋳鉄関連の利益率
- 借入の残高と支払利息
- 上下水道の耐震化の国の予算
倍率と資本コストの決め方
倍率は全社のROEと資本コスト8.75%から決めた。中立はROEが5%台にとどまるため上限1÷k=11.4倍の7.5割の8.6倍。今のPER・PBR(0.5倍前後)は見ていない。中計の2027年度の目標は強気の側の根拠にとどめ、中立は効果を半分とした。純負債が重いので、悲観側は稼ぐ力で測り、資産の床は置かなかった。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→11.43 倍・やや楽観 PER 9.1→11.43 倍・中立 PER 8.6→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。