結論
エンビプロ・ホールディングスは、金属スクラップや産業廃棄物を集めて資源に戻す会社だ。静岡県富士宮市に本社を置く持株会社で、傘下に金属回収のエコネコル、資源貿易のNEWSCON、ゴム・樹脂の日東化工などを持つ。筆者の結論は 「割高」 である。前期の好業績は金属価格の山で、10年の平均の稼ぎは、そこから下がると見るためだ。
前期(2026年6月期)の営業利益は32億円と、過去最高だった。営業利益率は7.3%で、過去10年の中央値2.7%を大きく上回る。理由は、銅や金・銀など主要な金属の価格が上がったことと、焼却灰から金銀を取り出す高付加価値の回収が増えたことだ。会社自身も、今期は経常利益が1割以上減ると見ている。
財務は並みである。自己資本比率は54%、純現金は8億円。借入は68億円あり、電池リサイクルの工場に40億円の投資も控える。稼ぎが薄いまま設備を増やす局面で、資本の使い方は慎重に見たい。
伸びる芽はある。リチウムイオン電池のリサイクルが前期に利益を3倍に増やした。焼却灰の回収も、取引する自治体を3倍に増やす計画だ。
10年の見立ては、金属価格が平準化し、利益率が4〜5%台に落ち着く形を中心に置いた。
バリュー投資の観点から
まず、事業を10年後も理解できるかを考える。金属スクラップの回収は、分かりやすい事業だ。ただ、利益の大半は世界の金属価格で決まり、経営者が値段を決める力はほとんど無い。筆者は、こうした事業の利益を高い倍率で数えるのは避けたい。
資本の使い方は、どちらとも言えない。前期は市況の山で稼ぎ、ROEは13.6%に上がった。だが、配当は3割にとどまり、残りは設備と投資に回る。電池リサイクルの工場に40億円を投じる計画は、需要が本格化するのが2035年以降と会社自身が見ているだけに、先走りに見える。筆者は、稼ぎが山の間に、資本を成長に張りすぎないかを気にしている。
安全域は、借入が総資産の2割弱で、純現金がプラスという点にある。悲観でも会社が傷む心配は小さい。ただし、平均的な稼ぎは前期の7割ほどに落ちると見るのが妥当で、今の値段は、その平均より高めを織り込んでいると考える。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分かれる。資源循環事業は、鉄や非鉄の金属スクラップ、産業廃棄物、解体、焼却灰からの金銀の回収、廃プラスチックの燃料化、ゴムの再生を手がける。売上は239億円で、全社の利益の大半を稼ぐ。グローバルトレーディングは、鉄スクラップなどを国内外の電炉メーカーに売る貿易の事業だ。売上は247億円と大きいが、利益率は薄い。リチウムイオン電池リサイクルは、使用済みの電池から、ニッケルやコバルトなどを含む「ブラックマス」という粉を取り出す事業だ。売上は26億円と小さいが、前期は利益が3倍になった。
最大の販売先は韓国の鉄鋼メーカーSEAH BESTEELで、売上の11%を占める。上位3社で2割強、国内・韓国・ベトナムの電炉メーカーである。顧客の偏りは中程度だ。連結の従業員は620人で、エコネコルが274人、日東化工が184人を占める。
中計2029は、2029年6月期に売上860億円、経常利益47億円、ROE14%を掲げる。毎期ローリング(見直し)する方式で、計画は動く。柱は、サーキュラーエコノミー(資源を循環させる経済)の具体化だ。
このほか、持分法で、アビヅと富士エコサイクルの利益が5億円入る。障がい福祉の事業も小さく持つ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、広くない。金属スクラップは世界の相場で値段が決まる商品で、集荷の網を持つ会社が有利になるだけだ。強みを生むのは、集荷力と、焼却灰のような許認可と設備が要る分野だ。自治体と長く取引し、焼却灰から金銀を取り出す技術を持つ。この領域は新規参入が難しく、利益率も高い。
弱みは、本業が市況の影響を直接受けることだ。営業利益率は2012年6月期に0%、2025年6月期に2.0%と、市況が悪い年には利益がほとんど出ない。前期の7.3%は特別に良い年である。収益認識の基準が変わって、貿易の売上が形式上減った点にも注意が要る。
資本効率は、年によって大きく動く。ROEは過去10年の中央値で7.6%、最高は2022年6月期の19.7%、最低は2024年6月期の3.2%だ。会社も、ROEが株主資本コスト(8〜9%)を下回る年があり、変動が大きいと認めている。対策に、高収益事業の拡大と、不採算事業からの撤退を挙げる。
人の面では、提出会社の平均年齢は39歳、勤続は7年台と、若い組織だ。M&Aで規模を広げてきたため、勤続は短い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本では、金属スクラップの発生量が増えにくい。建築も自動車も人口減で量が頭打ちになり、国内の粗鋼生産は2025年度に57年ぶりの低水準になった。スクラップを溶かす電炉メーカーが縮めば、国内の引き取りも減る。エンビプロが韓国やベトナムの電炉向けに輸出するのは、その裏返しだ。
一方で、資源として見れば追い風もある。銅や金・銀、ニッケルの価格は上がり、リサイクル品の価値を押し上げた。EUでは廃車の再生材使用が義務になる見込みで、使用済み自動車から樹脂や金属を取り出す技術が求められる。電池のリサイクルは、電気自動車が使い終わる2035年以降に本格化する。会社も、当面は工程の端材や民生用の電池が中心だと見ている。
競争は、同業の回収業者、非鉄大手の環境事業、異業種の参入だ。有報は競合の社名を挙げていない。DOWAや三菱マテリアルといった非鉄の大手は、同じ電池や基板のリサイクルを手がけている、と筆者は見る。
地政学も効く。前期の有報は、中東情勢でドバイ向けの貨物に影響が出たと記す。為替は150円に固定して見るが、実際には円安が輸出の採算を押し上げる。
業界全体は、成長産業ではないが、環境規制と資源の再利用で需要が下支えされる。許認可と設備を持つ会社が、時間をかけて取り分を増やす構図だ。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は株主資本配当率(DOE)2.5%を下限とし、連結の配当性向は25〜35%を目標にする。前期の期末配当は総額で約7億円。利益の3割ほどにあたる。自社株買いは見当たらない。
稼ぎの7割は社内に残る。その使い道が、設備と投資だ。前期の設備投資は13.6億円で、富士のRPF(廃プラスチックなどの固形燃料)工場が中心だった。今後は、電池リサイクルのVOLTAがブラックマス工場に40億円を投じる計画で、場所と時期は未定である。自己資金と借入で賄う。有利子負債はすでに68億円ある。
政策保有株は小さい。残りは約2億円で、前期に2.5億円を売った。縮減の方針は明確だ。持分法の会社が2社あり、利益に5億円ほど入る。
潜在株式が113万株あり、発行済みの3.8%にあたる。行使されれば薄まるが、影響は小さい。TOBなど再編の可能性は、筆者は小さくないと見るが、筋書きには入れていない。株主優待は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
循環経済の流れは、構造的な追い風だ。EUの再生材義務、国内の資源循環への投資、金属価格の上昇が、リサイクル品の価値を押し上げている。エンビプロは、焼却灰から金銀を取り出す技術を持ち、取引自治体を3倍の66か所に増やす計画を立てた。参入の難しい分野で、利益率は高い。
電池リサイクルは、前期に利益が3倍になった。処理能力を1万トンから1.5万トンに増やし、ブラックマスの工場を新設する。電気自動車の使用済み電池が本格的に出てくる2035年以降は、先行した会社が大きく伸びる。
前期の営業利益率7.3%は、一時的な市況の山だけではない。ゴム関連の構造改革や高付加価値品の回収が、利益率の底上げに効いた。中計2029は経常利益47億円を掲げており、前期の36億円からさらに伸びる。ROE14%を達成すれば、資本コストを超える優良なリサイクル会社になる。
経営の資本配分も、変わってきた。不採算事業からの撤退と、ゴム関連の構造改革を進め、政策保有株も縮減している。稼ぎの出る事業に資本を寄せる方向は、バリュー投資家から見ても筋が通っている。
慎重な見方
前期の稼ぎは、市況の山にすぎない。営業利益率7.3%は過去最高で、中央値の2.7%の2.7倍だ。銅や金の価格が元に戻れば、利益は急速に縮む。会社自身が、今期の経常利益を1割以上減ると予想している。2025年6月期の営業利益は10億円にとどまった。
中計は、毎期ローリング(見直し)する方式で、数字の信頼度が低い。電池リサイクルは、需要が本格化するのが2035年以降で、それまでは先行投資が続く。工場に40億円を投じても、稼働率が上がらなければ負担になる。借入は68億円あり、金利が上がる局面での負担も増える。
国内のスクラップ発生量は人口減で細り、電炉メーカーの引き取りも縮む。貿易の事業は薄利で、中東情勢の悪化にも弱い。配当性向は3割で、利益の大半は社内に残るが、その使い道は設備と投資で、資本コストを超える保証は無い。ROEの中央値7.6%は、資本コストにも届かない。
最後に、前期の営業利益の伸びを、経営の実力と読むのは早い。同じ事業で、2025年6月期は営業利益率が2%にとどまった。たった一期で体質が変わったと考えるのは危うい。
どちらに重みを置いたか
市況の山を差し引けば、稼ぐ力は並みだと筆者は見る。焼却灰や電池リサイクルの伸びは確かだが、本業の大半は世界の金属価格に左右される。中立では、利益率を過去最高の6割強に置いた。楽観には電池と焼却灰の成功を、悲観には市況の反落と先行投資の失敗を割り当て、悲観側に少し厚めに確率を配った。10年の本質価値は今の時価総額の 6割 ほどで、結論は 割高 になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 992 円283 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 229 円65 億円)。 今の値に割り戻すと 615 円175 億円、今との差 −5.7%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,087 円595 億円 | 389 円111 億円 | +279.8% | +14.3% | 198 円56 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,450 円413 億円 | 319 円91 億円 | +171.4% | +10.5% | 354 円101 億円 |
| 中立 | 38% | 1,056 円301 億円 | 274 円78 億円 | +103.9% | +7.4% | 505 円144 億円 |
| やや悲観 | 22% | 475 円135 億円 | 112 円32 億円 | −10.0% | −1.0% | 129 円37 億円 |
| 悲観 | 12% | 244 円70 億円 | 42 円12 億円 | −56.1% | −7.9% | 34 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 992 円283 億円 | 229 円65 億円 | +87.2% | +6.5% | 1,221 円348 億円 |
今の株価時価総額 652 円186 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 焼却灰と電池リサイクルが育ち、利益が高水準で定着する 利益 40 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 2,087 円595 億円
焼却灰から金銀を取り出す事業が、取引自治体を66か所まで広げ、利益の柱になる。金属価格は高止まりし、リサイクル品の価値が保たれる。電池リサイクルは、2035年以降の使用済み電池の増加を先取りし、処理量を今の3倍強まで増やす。
ゴムとポリマーの事業は、再生原料の量産が軌道に乗る。営業利益は50億円ほどに上がり、前期の山を越える。営業利益率は6〜7%で定着する。
配当は利益の3割を保ちつつ増え、自己資本は400億円を超える。ROEは12%に乗り、資本コストを上回る。M&Aは小さな成功にとどまる。
10年の終わりには、資源循環は市況に左右される回収業から、技術で稼ぐ資源企業へと姿を変えている。
- 資源循環事業:数量 32.9(取扱量(万トン相当)。開示がないため推定)× 価格 11(1トンあたり売上(万円・名目・金属と燃料の混合))→ 売上 368 億円・営業利益 30 億円。数量1.1倍・価格1.40倍。焼却灰の自治体が3倍に増え、金属価格は高止まり
- グローバルトレーディング事業:数量 64.9(取扱量(万トン)。開示がないため推定)× 価格 5.44(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 353 億円・営業利益 8 億円。数量1.05倍。東南アジアの電炉との連携が進む
- リチウムイオン電池リサイクル事業:数量 2.8(処理量(万トン)。資料の食い違いがあり推定)× 価格 43(1トンあたり売上(万円・名目・金属の売却を含む))→ 売上 120 億円・営業利益 19 億円。処理量が3.5倍。2035年以降の電池発生を先取り
- その他(障がい福祉・コンサル):数量 5.9(当社の取り分(実質、億円・今の値段基準))× 価格 134(名目の価格指数(今=100))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。数量1.3倍
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.47 倍、時価総額 573 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金属価格の高止まりと、焼却灰・電池リサイクルの成功が10年続く必要がある。前期の市況の山を10年に延ばす読みは取らないため、8%に抑える。
やや楽観 20% 電池リサイクルが育ち、市況の山の6割ほどを保つ 利益 28 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 1,450 円413 億円
電池リサイクルは、処理量を今の2倍強まで増やし、利益が積み上がる。焼却灰の回収も、取引自治体を増やして利益に貢献する。金属価格は前期の山からは下がるが、過去の平均よりは高い水準を保つ。
営業利益は40億円ほどで、前期より2割強低い。営業利益率は5.5%前後と、過去の山と平均の中間になる。
配当は利益の3割で増え、自己資本は370億円ほどに増える。ROEは9%近くで、資本コストにほぼ並ぶ。電池への投資は成功とまでは言えないが、回収は進む。
経営は市況の谷でも投資の手を止めず、10年の終わりには電池と焼却灰が全体の3分の1の利益を稼ぐ。
- 資源循環事業:数量 30.8(取扱量(万トン相当)。開示がないため推定)× 価格 11(1トンあたり売上(万円・名目・金属と燃料の混合))→ 売上 330 億円・営業利益 25 億円。数量1.03倍・価格1.34倍
- グローバルトレーディング事業:数量 61.8(取扱量(万トン)。開示がないため推定)× 価格 5.20(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 321 億円・営業利益 7 億円。数量横ばい・価格1.30倍
- リチウムイオン電池リサイクル事業:数量 1.8(処理量(万トン)。資料の食い違いがあり推定)× 価格 41(1トンあたり売上(万円・名目・金属の売却を含む))→ 売上 73 億円・営業利益 10 億円。処理量が2.2倍
- その他(障がい福祉・コンサル):数量 5.0(当社の取り分(実質、億円・今の値段基準))× 価格 134(名目の価格指数(今=100))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。数量1.1倍
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.41 倍、時価総額 378 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:焼却灰の拡大と電池リサイクルの伸びが、市況の反落を一部補う形。事業の構造改革の効果が残る分、中立の次に起こりやすい。
中立 38% 金属価格が平準化し、焼却灰の伸びで国内の縮小を埋める 利益 21 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,056 円301 億円
金属価格は過去の平均に戻り、前期の山の利益は消える。かわりに、焼却灰の回収が国内のスクラップ発生量の減少を相殺し、数量は1割弱の減少にとどまる。電池リサイクルは、処理量が今の2倍に増えるが、本格化は2035年以降で利益は限られる。ブラックマスの値段は金属の相場に連動するので、1トンあたりの価格は物価並みには上がらず、10年で1.2倍にとどまる。
営業利益は26億円ほどと、前期の8割にとどまる。営業利益率は4%台で、過去の中央値の倍近くに上がる。中計の掲げるROE14%には届かない。
配当は利益の3割を保ち、自己資本は330億円ほどに増える。ROEは6%台で、資本コストに届かない。普通の資源リサイクル会社として10年を終える筋書きだ。
- 資源循環事業:数量 29.0(取扱量(万トン相当)。開示がないため推定)× 価格 10(1トンあたり売上(万円・名目・金属と燃料の混合))→ 売上 302 億円・営業利益 20 億円。数量0.97倍・価格1.30倍(金属価格は平準化)。焼却灰の伸びが国内発生量の減少を相殺
- グローバルトレーディング事業:数量 55.6(取扱量(万トン)。開示がないため推定)× 価格 5.00(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 278 億円・営業利益 5 億円。数量0.9倍・価格1.25倍。電炉の縮小で取扱量が減る
- リチウムイオン電池リサイクル事業:数量 1.6(処理量(万トン)。資料の食い違いがあり推定)× 価格 40(1トンあたり売上(万円・名目・金属の売却を含む))→ 売上 63 億円・営業利益 8 億円。処理量が2倍。価格は1.20倍:ブラックマスの値段はニッケル・コバルトなど金属の相場に連動し、物価並みには上がらないとみる。需要の本格化は2035年以降
- その他(障がい福祉・コンサル):数量 4.5(当社の取り分(実質、億円・今の値段基準))× 価格 134(名目の価格指数(今=100))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 256 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金属価格が過去の平均に戻り、焼却灰と電池の伸びが国内の縮小を相殺する形。もっとも起こりやすい形として4割弱に置く。
やや悲観 22% 金属価格が反落し、電池への投資が重荷になる 利益 7 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 475 円135 億円
金属価格が反落し、前期の山のあとに市況の谷が来る。国内のスクラップ発生量は想定どおり細り、貿易の取扱量も縮む。電池リサイクルへの投資は回収が遅れ、利益率は5%にとどまる。
営業利益は8億円ほどまで落ちる。営業利益率は1.6%で、過去の谷の水準だ。固定費の重さと、設備の減価償却が物価に連動しないことが、利益を圧迫する。
配当は下限のDOE 2.5%に近づき、投資は絞られる。ROEは2%台に下がる。事業は残るが、もう優良とは呼べない水準だ。
経営は新しい投資を絞り、借入の返済を優先する。10年の終わりには、事業の姿は今とあまり変わらない。
- 資源循環事業:数量 26.3(取扱量(万トン相当)。開示がないため推定)× 価格 9.60(1トンあたり売上(万円・名目・金属と燃料の混合))→ 売上 253 億円・営業利益 10 億円。数量0.88倍・価格1.20倍。金属価格が反落
- グローバルトレーディング事業:数量 49.4(取扱量(万トン)。開示がないため推定)× 価格 4.60(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 227 億円・営業利益 3 億円。数量0.8倍。電炉の縮小と貿易摩擦
- リチウムイオン電池リサイクル事業:数量 1.0(処理量(万トン)。資料の食い違いがあり推定)× 価格 36(1トンあたり売上(万円・名目・金属の売却を含む))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。処理量1.3倍・利益率は5%
- その他(障がい福祉・コンサル):数量 4.1(当社の取り分(実質、億円・今の値段基準))× 価格 120(名目の価格指数(今=100))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量0.9倍
倍率:ROE 約2% が k を大きく下回り、稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 75 億円ほど。売れる資産の税後は約 100 億円で、大きい方を床にして今の自己資本に 0.5 倍を掛けた。事業が黒字を保つ分、清算前提より割り引かない。
確率:金属価格が反落し、電池への先行投資が遅れる形。素材の回収業は市況に弱く、起きる可能性は軽くない。
悲観 12% 市況の崩れと電池工場の失敗が重なり、稼ぐ力が細る 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 244 円70 億円
市況の崩れと、国内の発生量の減少が同時に来る。貿易は赤字に近くなり、資源循環も利益がほとんど出ない。40億円を投じた電池の工場は稼働率が上がらず、減損になる。
営業利益は赤字に沈み、借入の返済に追われる。配当は下限のDOE 2.5%を割り、投資は止まる。自己資本は減損で目減りする。
価値は、稼ぐ力ではなく、工場の土地・建物や運転資金などの売れる資産で測られる。会社の存続を脅かす水準ではないが、株主には成長の望みが乏しい資産株になる筋書きだ。
筆者は、この筋書きの確率を低くは置けないと見る。市況の影響を直接受ける回収業は、谷で赤字になりやすい。
- 資源循環事業:数量 22.4(取扱量(万トン相当)。開示がないため推定)× 価格 8.40(1トンあたり売上(万円・名目・金属と燃料の混合))→ 売上 188 億円・営業利益 3 億円。数量0.75倍・価格1.05倍。国内発生量が細り市況も崩れる
- グローバルトレーディング事業:数量 40.2(取扱量(万トン)。開示がないため推定)× 価格 4.00(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 161 億円・営業利益 1 億円。数量0.65倍・価格は据え置き
- リチウムイオン電池リサイクル事業:数量 0.6(処理量(万トン)。資料の食い違いがあり推定)× 価格 31(1トンあたり売上(万円・名目・金属の売却を含む))→ 売上 20 億円・営業利益 −2 億円。工場が稼働せず赤字
- その他(障がい福祉・コンサル):数量 3.2(当社の取り分(実質、億円・今の値段基準))× 価格 110(名目の価格指数(今=100))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:赤字が続き、稼ぐ力ではなく売れる資産で測る。ただし清算されない限り少数株主は引き出せないので、売れる資産の約 7 割を価値として数えた。PBR は今の自己資本に掛けた値。
確率:市況が崩れ、40億円の電池工場も稼働しない形。2012年6月期に赤字になった前例がある。5%の下限は超え、1割強に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
資源循環事業
金属スクラップ、産業廃棄物、解体、焼却灰からの金銀の回収、廃プラスチックの燃料化、ゴム・樹脂の再生。全社の利益の大半を稼ぐ中核。
| 数量取扱量(万トン相当)。開示がないため推定 | 価格1トンあたり売上(万円・名目・金属と燃料の混合) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 29.9 | 8.00 | 239 | 24 |
| 10 年後 中立 | 29.0 | 10 | 302 | 20 |
取り方:有報の資源循環事業の売上 239.40億円(金属スクラップ・産廃・焼却灰・RPF・ゴム)を、平均単価8万円/トン(金属は高く、RPFは低い混合)と置いた推定で取扱量 29.9万トンとした。数量の開示はない。営業利益は経常 26.27億円(持分法益を含む)から持分法益などを引き、営業ベースで 24.0億円と置いた推定。
グローバルトレーディング事業
鉄スクラップなどを国内外の電炉メーカーへ売る貿易の事業。売上は大きいが利益率は薄い。
| 数量取扱量(万トン)。開示がないため推定 | 価格1トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 61.8 | 4.00 | 247 | 6 |
| 10 年後 中立 | 55.6 | 5.00 | 278 | 5 |
取り方:有報のグローバルトレーディング事業の売上 247.30億円(鉄スクラップ等の国内外の電炉向け貿易)を、平均単価4万円/トンと置いた推定で取扱量 61.8万トンとした。営業利益は経常 7.03億円から 6.0億円と置いた推定。収益認識の変更(純額表示)で形式上の売上が減った点に注意。
リチウムイオン電池リサイクル事業
使用済みや工程端材の電池からニッケル・コバルトなどを含むブラックマスを取り出す事業。VOLTAが担う。
| 数量処理量(万トン)。資料の食い違いがあり推定 | 価格1トンあたり売上(万円・名目・金属の売却を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 0.8 | 33 | 26 | 7 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 40 | 63 | 8 |
取り方:有報のリチウムイオン電池リサイクル事業の売上 26.41億円を、処理量 0.8万トン(資料により年7,000〜8,000トン)・1トンあたり33万円(ブラックマスの売却額を含む)と置いた推定。営業利益は経常 7.04億円から 6.5億円と置いた推定。
その他(障がい福祉・コンサル)
障がい福祉とサステナビリティのコンサルティング。小さな事業。
| 数量当社の取り分(実質、億円・今の値段基準) | 価格名目の価格指数(今=100) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 4.5 | 100 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4.5 | 134 | 6 | 0 |
取り方:その他(障がい福祉・サステナビリティコンサル)の売上 4.50億円。数量は実質(今の値段基準の億円)、価格は物価の指数(今=100)、rev_factor=0.01。連結の消去 73.3億円と本社費 4.7億円は、筋書きの調整として別に引く。
リスクと懸念
金属価格の反落
前期の営業利益32億円は、銅や金・銀の高値に支えられた過去最高だ。価格が過去の平均に戻れば、利益は急速に縮む。会社も今期の経常利益を1割以上減ると見ている。
国内スクラップ発生量の減少
人口減と建設・製造の縮小で、国内のスクラップ発生量は増えにくい。電炉メーカーの引き取りも縮み、集荷の競争が強まる。
電池リサイクルの先行投資
VOLTAのブラックマス工場に40億円を投じる計画だが、電池の本格的な発生は2035年以降と会社自身が見ている。稼働率が上がらなければ減損になる。
貿易の薄利と地政学
グローバルトレーディングは売上が大きく利益率が薄い。前期は中東情勢でドバイ向けの貨物に影響が出た。為替や貿易規制でも採算が動く。
環境・法令と事故
廃棄物処理法など多数の許認可と、排水・火災などの管理が要る。事故や違反は、許認可と評判の両方を傷つけうる。
借入と希薄化
有利子負債は68億円で総資産の2割弱。工場投資の借入が増えれば、利払いが重くなる。潜在株式は発行済みの3.8%ある。
今後の分かれ目
- 焼却灰事業の取引自治体が計画どおり66か所に広がる
- 利益率の高い事業の比重が上がり、市況に左右されにくい稼ぎが育つ。
- 銅や金・銀の価格が前期の水準から大きく下がる
- 資源循環の利益が急に縮み、営業利益率は2〜3%台に戻る。
- 電池の使用済み発生が想定より早まる
- VOLTAの工場の稼働率が上がり、投資の回収が早まる。
- 電池工場が稼働せず減損に至る
- 自己資本が目減りし、借入の負担が重くなる。悲観の筋書きに近づく。
- 中東情勢や貿易規制で貿易事業が止まる
- 貿易の取扱量が落ち、売上と利益が下がる。
- 配当性向を引き上げる、または自社株買いを始める
- 社内に残る利益の使い道が株主に向き、資本効率の評価が上がる。
見ておくもの
- 銅・金・銀・鉄スクラップの価格と、四半期の営業利益率
- 焼却灰事業の取引自治体数と回収量
- VOLTAの工場の着工時期と、電池の処理量
- 会社予想の修正と中計のローリングの数字
- 有利子負債と純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価に寄せず、10年後の ROE と資本コスト 8%(基本 7.5% + 循環・値決めの +1.25%)から式で出した正当化 PER の約 7〜8 割に置いた。今の株価と PER(8 倍弱)は見ていない。前期の営業利益32億円は金属価格の山なので出発点にせず、過去の中央値と山の間(営業利益率 4%台)で中立を組んだ。数量は取扱量(推定)で国内発生量の減少を織り込み、価格は物価の 1.34 倍を基本に、金属は平準化させた。純現金は 8 億円で時価総額の 4% のため、余った現金は分けない。持分法の利益は純利益に残し、価値には別に足さない。悲観は売れる資産の税後を床にした。賃借は小さく、新リース会計基準の影響は軽い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→14.47 倍・やや楽観 PER 9.5→13.41 倍・中立 PER 8→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.25% = 8.75%。電池への先行投資や市況の山は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.00%。