結論
虹技は姫路に本拠を置く鋳物の会社だ。鉄鋼の圧延に使うロール、自動車のプレス金型の鋳物、マンホールの蓋までを手がけ、売上の 9 割が鋳物から来る。ごみ焼却炉や送風機、金属繊維も持つが、規模は小さい。
筆者の結論は「割高」だ。株価は帳簿の自己資本の 3 割にも届かないが、それは安さの証拠ではない。ROE(自己資本で稼ぐ力)は 3% 前後で、株主が求める利回りの 3 分の 1 しかない。ためた利益は帳簿の額ほどの値打ちを持たない。帳簿が厚いことと、株主が豊かになることは別の話だ。
国内の鉄鋼の生産は 10 年で 1〜2 割縮む見通しで、ロールの数量もそれに沿って細る。値上げで物価には追いつけても、それ以上の値決めは難しい。純負債 66 億円と金利の上昇も利益を削る。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を 3 割余り下回る。政策保有株を売って借金を返す決断が出れば見方は変わるが、今はその兆しが無い。帳簿の割安に引かれて買う前に、稼ぐ力の弱さを見ておきたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、虹技は「消えにくいが、持っていても豊かになりにくい」事業だ。ロールと大型の鋳物は技術の蓄積が要り、10 年後も会社は残っているだろう。だが、事業が残ることと、株主が豊かになることは別の話だ。
オーナーとして見ると、稼いだ利益の多くは設備の更新に消える。鋳物の炉や工場は電気と人手を食い、利益率は 4% 前後しかない。自己資本に対して 3% しか稼がない会社が利益をため込めば、そのお金の値打ちは帳簿より小さくなる。
帳簿の自己資本に比べて株価が 3 割と安いのは、この稼ぐ力の弱さを映している。政策保有株を売って借金を返し、還元を厚くする決断があれば話は変わるが、今の経営にその気配は無い。会社を丸ごと買うつもりで眺めても、借金を返し終えるまで手元に残る現金は少ない。筆者は、安全域は帳簿の上にしかなく、本当の価値の上には無いと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は鋳物だ。売上 257 億円のうち 228 億円を Casting Field と呼ぶ鋳物の部門が占める。中心は鉄鋼の圧延機に組み込むロールで、国内の電炉・高炉に納め、一部を輸出する。ロールは鋼材を延ばすたびに摩耗する消耗品で、鉄鋼の生産量に沿って交換の需要が生まれる。
次に大きいのが自動車のプレス金型の鋳物だ。車体の部品を打ち抜く巨大な金型の土台で、新しい車種が出るたびに注文が入る。ほかに連続鋳造の鋳鉄棒(デンスバー)、造船向けの鋳型、上下水道の鉄蓋、大型の産業機械の鋳物がある。2024 年 1 月には小口合金鋳造所を買い、アルミの鋳物にも広げた。
残りの 1 割強が環境の部門だ。ストーカー式のごみ焼却炉、送風機、半導体の工場で使われる搬送用のトランスベクター、金属繊維のメタルファイバーを持つ。焼却炉は赤字で、利益の大半は鋳物が稼ぐ。従業員は連結で 766 人。中国の天津と南通にも拠点がある。売上のほとんどは国内の鉄鋼と自動車の会社に向いており、両業界の設備の投資の波がそのまま業績の波になる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは細い。高合金のロールや大型の金型鋳物は、溶かした鉄の成分と冷やし方の勘所に長年の蓄積が要り、新しく参入する会社はまず無い。その意味で事業は消えにくい。
ただし、値段を決める力は弱い。ロールの買い手は日本製鉄や JFE のような大手で、交渉の力は買い手の側にある。鋳物は大量の電気と銑鉄・スクラップを使い、その上昇を値上げで取り戻すのに時間がかかる。過去 12 年の営業利益率は 0.7〜8.7% と低く、平均は 4% 前後だ。
資本効率はさらに弱い。稼いだ利益の多くは炉や工場の更新に回り、手元に残る現金は少ない。ROE は過去 10 年の中央値で 3.9% にとどまる。自己資本の中には 35 億円の政策保有株が眠り、その配当が利益を支えている。純負債も 66 億円あり、財務は鉄鋼の小さな下請けらしい重さを抱えている。経営は堅実だが、資本を株主に返して効率を上げる意識は薄い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の鉄鋼は縮む局面にある。2025 年度の粗鋼生産は 8,033 万トンと、1968 年度以来の低さに落ちた。高炉の休止と設備の集約が続き、10 年でさらに 1〜2 割縮むというのが業界の共通の見立てだ。ロールの交換の需要は鉄鋼の生産量にほぼ比例するので、虹技の主力の数量もこの流れに沿って細る。
世界では中国の過剰生産が鋼材の値段を押さえている。中国の鉄鋼の輸出は 2025 年に 1 億トンを超え、10 年ぶりの多さだ。鋼材が安ければ鉄鋼会社はロールの値上げを渋る。中国やインドのロールのメーカーも力をつけており、汎用のロールでは価格の競争が強まる。
明るい材料もある。インドや東南アジアでは電炉と高炉の新設が続き、高合金のロールの需要は伸びる。国内でも電炉への転換が進めば、ロールの種類が変わり、技術のある会社に注文が集まる。自動車のプレス金型は電気自動車の大型の一体成形で形が変わり、金型の鋳物の需要が細るか膨らむかはまだ読めない。鋳物の業界全体は、電気代の上昇と若い作業者の不足という共通の重荷を背負っている。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。2026/03 期から連結の配当性向 30% を目標に掲げ、配当は年 1.6 億円ほどだ。自社株買いはほとんどしていない。総還元性向は 3 割台で、利益の 7 割は会社に残る。
政策保有株は上場 20 銘柄で 35 億円あり、時価総額に近い額を取引先の株で持っている。減らす方針の数字は見当たらない。取引先持株会、住友生命、三井住友銀行が上位に並ぶ株主の構成は、持ち合いの色が濃い。
M&A は 2024 年の小口合金鋳造所の買収のように、小さな鋳物会社を取り込む形が中心だ。親会社は無く、買われる側の話も表に出ていない。純負債 66 億円を抱え、大きな買収や厚い還元に回す余力は乏しい。第 8 次の 3 カ年計画(2028/03 期まで)は省人化と脱炭素と人材を掲げるが、利益や ROE の数字の目標は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
株価は自己資本の 3 割に満たず、政策保有株 35 億円だけで時価総額の 8 割を超える。会社が持つ資産に比べてあまりに安い。
事業も見かけほど悪くない。高合金のロールと大型の金型鋳物は、新しく参入する会社がまず無い技術の世界だ。国内の鉄鋼が縮んでも、インドや東南アジアの製鉄所の新設で輸出の需要は伸びる。2024 年の小口合金鋳造所の買収で、鉄とアルミの両方を受けられる鋳物屋になった。自動車の大型の一体成形が広がれば、金型の鋳物の注文はむしろ増える。
利益率も 2025/03 期に 4.2% まで戻し、値上げが通ることを示した。環境の部門では、半導体の工場向けのトランスベクターと送風機が好調だ。焼却炉の赤字を止めるだけで、全社の利益は 1 割以上増える。
配当性向 30% の目標を掲げた今、市場の評価が変われば株価の戻りは大きい。持ち合いを解き、政策保有株を売って還元に回せば、資本の稼ぐ力は一気に上がる。
慎重な見方
帳簿の安さは価値の証拠にならない。ROE は 10 年の中央値で 3.9% と、資本コストの半分にも届かない。稼がない資本をいくら積んでも、株主の取り分は増えない。
政策保有株 35 億円は売る方針の数字が無く、配当を利益に入れたまま持ち続けている。売れない資産を足して安いと言うのは、絵に描いた餅を数えるのと同じだ。しかも純負債が 66 億円あり、政策保有株を全部売っても借金は消えない。
主力のロールは国内の鉄鋼の生産量に縛られる。2025 年度の粗鋼生産は 57 年ぶりの低さで、高炉の休止はこれからも続く。中国とインドのロールの会社は安値で攻めてくる。鋳物は大量の電気を使い、電気代の上昇がそのまま利益を削る。
10 年前から利益率はほとんど上がっていない。値上げはしても、上がった費用を取り戻すのが精一杯だった。借り換えの金利が 3.5% に上がれば、薄い純利益はさらに細る。焼却炉の部門も赤字が続き、二本目の柱になる気配は無い。若い作業者が集まらない鋳物の現場では、省人化の投資がさらに資本を食う。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。政策保有株と帳簿の厚さは確かに安く見せるが、売る方針が無く、借金が資産を上回る。事業の稼ぐ力は資本コストに遠く、10 年でそれが変わる証拠は値上げの定着の一度きりだ。確率は中立に厚く置き、悲観の側を楽観の側よりやや重くした。強気の見方のうち、輸出と金型鋳物の伸びには一理あるので、やや楽観にも 2 割の重みを残した。それでも価値の重心は今の時価総額の下にある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,702 円56 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 459 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 1,101 円36 億円、今との差 −13.7%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,083 円134 億円 | 701 円23 億円 | +275.2% | +14.1% | 383 円13 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,684 円88 億円 | 548 円18 億円 | +153.5% | +9.7% | 646 円21 億円 |
| 中立 | 42% | 1,566 円51 億円 | 487 円16 億円 | +61.1% | +4.9% | 862 円28 億円 |
| やや悲観 | 20% | 767 円25 億円 | 366 円12 億円 | −11.1% | −1.2% | 227 円7 億円 |
| 悲観 | 10% | 274 円9 億円 | 152 円5 億円 | −66.5% | −10.4% | 43 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,702 円56 億円 | 459 円15 億円 | +69.5% | +5.4% | 2,161 円71 億円 |
今の株価時価総額 1,275 円42 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% ロールの高機能化と環境装置が両輪になる 利益 11 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,083 円134 億円
国内の鋼材の生産は縮むが、高合金の圧延ロールは寿命の長さで選ばれ、インドや東南アジアの電炉・高炉向けの輸出が伸びる。自動車のプレス金型鋳物は、大型の一体成形の車体部品で需要が戻る。環境の側では、ごみ焼却炉の更新と、半導体工場向けのトランスベクター・送風機が利益の柱に育つ。省人化の投資が効いて、電気代と人件費の上昇を値上げで取り戻し、営業利益率は 6% 台に乗る。純利益は 10 億円を超え、配当も今の倍近くに増える。それでも資本の稼ぐ力は資本コストに届かない。設備の更新に利益の多くが消えるため、ためた資本が株主の取り分として膨らむ速さは鈍い。
- 鋳物(Casting Field):数量 52.3(鋳物の出荷量(千トン・推定))× 価格 57(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 298 億円・営業利益 19 億円。5.2 万 t × 57.1 万円/t、利益率 6.5%
- 環境・機能材料:数量 75.0(受注案件の数(件・年、推定))× 価格 0.68(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 3 億円。75 件 × 0.68 億円、利益率 5%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 134 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ロールの輸出と半導体向け送風機が同時に伸び、営業利益率が 2007 年の山に近づく筋書き。過去 10 年で 6% を超えた年が 2 期しかなく、低く置いた。
やや楽観 20% 値上げが定着し、ロールの輸出が補う 利益 7 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,684 円88 億円
国内の需要は細るが、ロールと金型鋳物の値上げが電気代と原料の上昇を上回って定着する。アルミ鋳造の小口合金鋳造所を取り込んだ効果で、鉄とアルミの両方を受けられる鋳物屋として自動車の顧客を守る。環境の側は焼却炉の基幹改良と送風機が安定して黒字になる。営業利益率は 5% 前後と、2010 年代半ばの水準に戻る。借金の金利は上がるが、利益の増加がそれを吸収する。配当は性向 30% のまま増え、政策保有株は少しずつ減らして借金の返済に回す。それでも ROE は 3〜4% と、資本コストの半分に届かない。帳簿は厚くなるが、株主の取り分は利益ほどには増えない。
- 鋳物(Casting Field):数量 50.0(鋳物の出荷量(千トン・推定))× 価格 56(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 282 億円・営業利益 15 億円。5.0 万 t × 56.3 万円/t、利益率 5.2%
- 環境・機能材料:数量 70.0(受注案件の数(件・年、推定))× 価格 0.66(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 2 億円。70 件 × 0.66 億円、利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 88 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025/03 期に営業利益率 4.2% まで戻した実績があり、値上げの浸透と小口合金鋳造所の取り込みが続けば届く範囲。
中立 42% 縮む国内で、細く長く稼ぐ鋳物屋 利益 4 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,566 円51 億円
国内の高炉と電炉は設備を集約し、ロールの数量はじわじわ減る。自動車の金型鋳物も車種の減少で細る。虹技は値上げで物価の上昇には追いつくが、それ以上の値決めはできない。営業利益率は 4% 前後と過去の平均どおりで、借り換えの金利が上がる分だけ純利益が削られる。配当は性向 30% を守り、政策保有株はそのまま持ち続ける。環境の部門は焼却炉の改良工事で細く稼ぐが、全社を押し上げるほどではない。事業は存続するが、資本の稼ぐ力は資本コストの 4 分の 1 ほどにとどまる。市場がこの会社に高い倍率を付ける理由は、10 年後も見当たらない。
- 鋳物(Casting Field):数量 46.8(鋳物の出荷量(千トン・推定))× 価格 56(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 260 億円・営業利益 10 億円。4.7 万 t × 55.5 万円/t(物価の 1.34 倍)、利益率 4%
- 環境・機能材料:数量 63.0(受注案件の数(件・年、推定))× 価格 0.65(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。63 件 × 0.65 億円、利益率 2%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 51 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の粗鋼生産が 10 年で 1〜2 割縮むという業種の前提に、過去 10 年の中央値に近い利益率を合わせた中心の筋書き。
やや悲観 20% 電気代と人手不足で利益が細る 利益 2 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 767 円25 億円
国内の鉄鋼の減産が想定より深く、ロールの交換の周期も延びる。鋳物は大量の電気を使うので、電気代の上昇が値上げより先に利益を削る。若い作業者が集まらず、省人化の投資も負担になる。営業利益率は 2〜3% に沈み、借り換えの金利がさらに純利益を薄くする。配当は減り、政策保有株の配当が利益を支える形になる。焼却炉の部門は受注の波で赤字の年が増える。会社は存続するが、資本の稼ぐ力は資本コストの 1 割ほどになる。政策保有株を売る決断も遅れ、帳簿の厚さは株主の手に届かない。借り換えのたびに金利が上がり、借金の返済が還元より先に来る。
- 鋳物(Casting Field):数量 41.3(鋳物の出荷量(千トン・推定))× 価格 54(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 222 億円・営業利益 7 億円。4.1 万 t × 53.8 万円/t、利益率 3%
- 環境・機能材料:数量 55.0(受注案件の数(件・年、推定))× 価格 0.64(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。55 件 × 0.64 億円、利益率 1%
倍率:ROE 1% 前後で k を大きく下回る。価値は稼ぐ力(純利益÷k)までで、利益の薄さと借金の重さを見て 1÷k の 6.3 割の 7.0 倍。純負債 66 億円が政策保有株の税後の額を上回り、売れる資産の床は立たない。
確率:2021〜2022 年の営業利益率 1〜2% の局面が長引く筋書き。電気代と人件費の上昇を値上げで取り切れない年が続く。
悲観 10% 国内の鋳物が構造的に消え、赤字が続く 利益 −7 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 274 円9 億円
国内の高炉の休止が重なり、ロールの需要は 3 分の 2 に縮む。中国とインドの鋳物メーカーが安値でロールを売り込み、価格は物価に追いつかない。金型鋳物も自動車の生産の海外移転で減る。営業損益は赤字に落ち、工場の減損で自己資本が 30 億円ほど削られる。配当はほぼ止まり、借金の返済のために政策保有株を売る。焼却炉の部門も更新の受注を大手に奪われる。事業は小さく残るが、少数株主が受け取れる価値はわずかになる。工場の土地や設備は売っても帳簿の値にならず、清算の価値も期待できない。会社が清算されない限り、少数株主は細い配当を待つだけになる。
- 鋳物(Casting Field):数量 35.8(鋳物の出荷量(千トン・推定))× 価格 50(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 180 億円・営業利益 −2 億円。3.6 万 t × 50.4 万円/t(物価に追いつかない)、赤字
- 環境・機能材料:数量 45.0(受注案件の数(件・年、推定))× 価格 0.62(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 −1 億円。45 件 × 0.62 億円、赤字
倍率:赤字なので PBR で今の自己資本 155 億円に掛ける。稼ぐ力はゼロで、純負債 66 億円が政策保有株の税後 25 億円を上回るため売れる資産の床も立たない。工場は売っても簿価にならない。清算されない少数株主の取り分として 9 億円ほどに置いた。
確率:国内の高炉休止が続き、鋳物の需要が中国・インド製に置き換わる構造的な負けの筋書き。財務が持つ間に縮小と減損が進む。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鋳物(Casting Field)
圧延用ロール、自動車プレス金型鋳物、デンスバー、鋳型、鉄蓋、産機鋳物、アルミ鋳物。
| 数量鋳物の出荷量(千トン・推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.0 | 41 | 228 | 9 |
| 10 年後 中立 | 46.8 | 56 | 260 | 10 |
取り方:出荷量の開示は無い。ロール・金型鋳物・小物の混じった 1 トンあたり単価を 40 万円前後と見て、売上 227.7 億円から約 5.5 万トンと推定(推定)。数量は実質、物価は単価に入れる。
環境・機能材料
ごみ焼却炉、送風機、トランスベクター、メタルファイバー。
| 数量受注案件の数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 0.49 | 29 | −1 |
| 10 年後 中立 | 63.0 | 0.65 | 41 | 1 |
取り方:環境エンジニアリング 20.6 億円・機能材料 8.4 億円・その他 0.3 億円の合計を、焼却炉の改良工事から送風機・繊維の受注まで平均 0.49 億円の案件が年 60 件と推定(推定)。
リスクと懸念
国内の鉄鋼の縮小
ロールの需要は国内の粗鋼生産にほぼ比例する。高炉の休止が想定より速ければ、主力の数量が 10 年で 3 割以上減る。
電気代と原料の上昇
鋳物は大量の電気と銑鉄・スクラップ・合金鉄を使う。値上げが追いつくまでの半年から 1 年、利益が大きく削られる。2022 年はこれで営業利益率が 0.7% まで落ちた。
金利の上昇と借金
有利子負債は 90 億円ある。借り換えの金利が 3.5% に上がれば、利払いは年 2 億円ほど増え、薄い純利益の半分近くを食う。
中国・インドのロールとの競争
中国とインドのロールのメーカーは安値で汎用品を攻めている。高合金の品でも技術の差が縮まれば、輸出の伸びは見込めなくなる。
人手の不足
鋳物の現場は暑く重い仕事で、若い作業者が集まりにくい。省人化の投資が遅れれば、人件費の上昇と生産の制約が同時に効く。
政策保有株の値下がり
時価総額に近い 35 億円の取引先の株を持つ。相場が崩れれば自己資本が削られ、配当の減少で利益も細る。
今後の分かれ目
- 政策保有株を売る方針と金額を開示する
- 借金の返済か還元に回れば、資本の稼ぐ力は上がる。売った分を価値に足して見直す。
- 国内の高炉の休止がさらに発表される
- ロールの数量の見通しを悲観の側へ寄せる。
- インド向けなどロールの輸出が売上の 2 割を超える
- 数量の縮小を輸出が補う形が見え、やや楽観の確率を上げる。
- 焼却炉の部門が黒字に転じる
- 全社の利益率が 1 ポイントほど上がる。中立の利益率を見直す。
- 営業利益率が 2 年続けて 2% を割る
- 電気代と人件費を値上げで取り戻せない構造が見え、やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 国内の粗鋼生産(日本鉄鋼連盟の月次)
- 鋳物部門の営業利益率
- ロールの輸出の比率
- 政策保有株の売却の開示
- 有利子負債と借り換えの金利
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価と PBR 0.27 倍を見ずに決めた。どの筋書きでも ROE は k 8% を下回るので、PER は 1÷k=11.1 倍を上限に、ROE の低さに応じて 6〜9 割に置いた。政策保有株は配当を利益に残すので価値に足さず、悲観の床にも純負債を差し引くと残らないので数えていない。帳簿の安さに引かれて倍率を上げていないかを点検した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.5 倍・やや楽観 PER 9.2→12.5 倍・中立 PER 8.3→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。