株譜
AI 銘柄分析 · 鉄鋼 · 試作

日本精線 5659

ステンレス線の国内首位で半導体向けは伸びるが、稼ぐ力は資本コストに届かず、厚い手元資金も親会社の下では戻りが限られる

適正
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)1,337 円411 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)1,291 円397 億円差 +3.6%
10 年後から見ると 適正 価値 1,337 円411 億円 · 差 +3.6% · 期待の年率 +6.9%
期待の年率リターン(10 年)+6.9%資本コスト比 −0.6 pt
推定の資本コスト7.5%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 7.5% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

日本精線は、ステンレスの細い線をつくる専業メーカーだ。髪の毛より細い極細線から、ばね、医療用の針まで、線の太さと材質の使い分けで稼ぐ。金属の繊維を焼き固めたフィルターも手がけ、半導体工場のガスの浄化に使われる。

筆者の結論は、今の値段は事業の価値に対してやや割高、というものだ。理由は単純で、元手に対する稼ぎが資本コストに届かない。手元の現金は厚いが、親会社の大同特殊鋼が株の半分を握るため、株主に戻る額は割り引いて見る。

強みは、国内首位の線づくりの技術と、半導体向けの伸びだ。超精密ガスフィルターは世界の市場が育つ分野で、同社の売上は 10 年で倍近くになるとみる。一方、前期の減益を招いた太陽光パネル向けの極細線は、戻りが鈍い。銀から銅への移行が進み、他の金属への置き換えも起きている。

10 年の中心は、売上が 670 億円、営業利益が 58 億円ほどの姿だ。利益は増えるが、自己資本利益率は 7% 台にとどまる。割高の幅は、現金の戻り方の評価で動く点に注意したい。

バリュー投資の観点から

バリュー投資の観点では、この会社は手堅いが、資本の効率が足りない。

良い点は 3 つある。技術で守られた線づくり、借金のない財務、客の工程に組み込まれる製品だ。10 年後も事業は残り、半導体と医療の比重は高まる。

悪い点は、稼ぎに比べて元手が余っていることだ。自己資本の 3 分の 1 強は現金で、事業はその分を使っていない。親会社が半分を握るため、少数株主に現金が届く速さも自由にならない。

見るべきはオーナー利益、つまり再投資を引いて株主のものになる利益である。設備投資が小さいので、利益の多くは手元に残る。ただ、それを使う先が今の事業には乏しい。

経営については、配当性向を引き上げた姿勢は評価できる。半面、前の中計の利益目標を外した事実は重い。10 年の筋書きは、会社の計画よりひとまわり控えめに置くのが筋だろう。

安全域は、現金がある分だけ底が固い。しかし事業の稼ぎが資本コストを超える余地は小さく、今の値段に上乗せの安全域はない。

何で稼ぐ会社か

稼ぎの源は、線の太さと材質を細かく使い分ける力にある。売上 466 億円の約 8 割がステンレス鋼線、残りが金属繊維だ。開示は部門別の売上までで、利益の内訳は筆者の推定である。

汎用の鋼線は、売上の 3 割強を占める。ねじ、ばね、機械部品、日用品に使う標準品だ。国内向けが中心で、原料のニッケルや鉄の値動きは売値に転嫁する。利益率は低い。

高機能の鋼線は、売上の 5 割弱を占め、利益の柱でもある。中身は 3 つある。1 つ目は極細線で、太陽電池の電極を印刷する網や、電子部品の製造に使う。2 つ目は半導体の検査に使う極細のばね線だ。3 つ目は医療用で、カテーテルの芯線や縫合針、インスリン注射器のばねがある。線径は 9 マイクロメートルまで細くなり、8 マイクロメートルの量産も狙う。

金属繊維は、ステンレスの細い繊維を焼き固めたフィルターだ。半導体装置向けのガスフィルター(NASclean)が年 50 億円ほど、炭素繊維やフィルム、電池の製造に使うナスロンが年 39 億円ほどある。高機能・独自製品の比率は 66% で、中計では 70% を目指す。

拠点は大阪の枚方と東大阪が中心で、タイと中国の常熟にも工場がある。

優良さと弱いところ

堀は、細く均一な線を安定してつくる技術にある。ステンレス鋼線では国内首位を自任する。線径 9 マイクロメートルは髪の毛の十分の一ほどの細さで、細くなるほど欠陥が許されない。客先の工程に合わせた調整も要り、簡単には代わりが見つからない。

金属繊維も同じ構図だ。ナスロンは 50 年以上売ってきた製品で、客の製造ラインに組み込まれている。半導体のガスフィルターは、採用されると入れ替えに数年の検証が要る。

ただし堀の幅は広くない。世界のガスフィルターは Entegris、Pall、Camfil の大手が 6 割を占め、同社の取り分は 4% ほどと筆者は推定する。国内の鋼線にも日鉄系や中堅の競合がいる。

資本の効率は低い。直近の自己資本利益率は 5% で、過去 10 年の中央値も 7% 台だ。自己資本比率は 75% と厚いが、それは稼いだ利益を使い切れていない裏返しでもある。

経営は堅実で、配当性向を 50% 程度へ引き上げた。ただ前の中計の自己資本利益率 10% は未達に終わり、今の中計でも届きにくい。筆者がいちばん気にするのは、太陽光向けの極細線のような、特定用途への偏りである。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

同社の需要の中身は、いま入れ替わりの最中にある。

太陽光向けは逆風だ。極細線は、太陽電池の電極を銀のペーストで印刷する網に使われる。中国のパネル在庫の調整が長引き、前期は数量が大きく減った。さらに銀の高騰で、電極を銅へ替える動きが 2026 年に量産に入った。銅でも印刷は要るので網の需要は残るが、他の金属の網への置き換えも出ている。元の水準に戻ると見るのは楽観だ。会社も今期の太陽光向けは低調と見ている。

半導体向けは追い風だ。超精密ガスフィルターは、半導体の設備投資とともに伸びる。世界のガスフィルター市場は 8 億ドル台で、調査会社は年 6〜10% の成長を見込む。ただ半導体は波が大きく、ある年に数割動くこともある。

医療向けは地味だが堅い。カテーテルや注射器の部品は、高齢化で数量が安定する。

国内の汎用ステンレス線は、建設や機械の弱さと輸入材の流入で細る。10 年で 1 割弱の減少が自然だろう。

全体を見れば、利益の重心が太陽光と汎用から、半導体と医療へ移っていく。移り切るまでは、利益が上下に揺れる。

資本政策と M&A

資本の主役は大同特殊鋼だ。同社が株の 50.37% を持つ連結子会社で、2021 年の公開買い付けで 4 割台から過半数へ引き上げた。狙いは東証の市場区分の見直しへの対応で、上場は維持された。完全子会社にする意図は示されていない。

手元は純現金で 153 億円。時価総額の 4 割近い。この現金が株主に戻るかが、評価の分かれ目になる。会社は配当性向を 50% 程度へ引き上げた。ただ自社株買いは小さく、過去 11 年の還元は純利益の 35% ほどで、現金は積み上がってきた。

設備投資は 3 年で 77 億円ほどの計画で、極細線の増産と設備の更新が中心だ。大型の買収は見当たらない。

親会社が完全子会社化を選べば、少数株主には買い付けの機会が生まれる。ただ価格は交渉で決まるため、価値には織り込まない。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

第 1 に、半導体向けの伸びだ。ガスフィルターは月 4 億円超まで育ち、会社は今期に大きな伸びを見込む。世界の市場は年 1 割近く伸びる予測もあり、同社の取り分は 4% ほどと小さいぶん、伸びしろは大きい。

第 2 に、太陽光の悪化は織り込み済みだ。前期の営業利益は 31 億円まで落ちたが、需要の山が過ぎただけで、極細線を細くする技術は他社が簡単に追えない。需要が戻れば、利益は 2025 年 3 月期の 46 億円を超えうる。

第 3 に、株主への姿勢が変わった。配当性向を 50% 程度に引き上げ、中計は PBR 1 倍以上を掲げる。自己資本の 4 割近い現金は、増配や自社株買いの余地を残す。

第 4 に、親会社の存在は安心材料だ。大同特殊鋼は半導体や医療の分野で戦略を共有でき、完全子会社化が来れば少数株主にプレミアムが付きうる。2021 年の買い付けは 2 割強の上乗せだった。

第 5 に、医療と電子部品は目立たないが、数量が安定して減りにくい。景気が崩れた年も、利益の下支えになる。

慎重な見方

第 1 に、太陽光は戻らない。銀の高騰で電極は銅へ移りつつあり、網の材質も他の金属へ置き換わる。中国の網メーカーも育つ。極細線は中計の想定を大きく下回り、会社自身が工場の稼働への影響を課題に挙げている。

第 2 に、半導体向けは寡占の市場だ。Entegris、Pall、Camfil の 3 社で 6 割を占め、同社は 4% ほどの小さな挑戦者にすぎない。装置メーカーの内製や中国の国産化が進めば、取り分は守れない。半導体投資の波も大きい。

第 3 に、利益率が低い。営業利益率の過去の最高は 10.7% で、中央値は 8% 前後だ。自己資本利益率は 4% 台から 10% 弱の間で動き、資本コストに届かない年が多い。

第 4 に、現金の使い道がない。親会社が半分を握り、少数株主に現金が届く保証はない。純現金が増えるほど、自己資本利益率は薄まる。

第 5 に、汎用線は国内需要の細りと輸入材の圧力で、赤字に落ちる年も出る。

どちらに重みを置いたか

半導体と医療の伸びは本物だが、太陽光の落ち込みと、現金の戻り方への疑いが重い。確率はやや慎重な側に寄せた。楽観とやや楽観を合わせて 3 割弱、やや悲観と悲観を合わせて 3 割強、中心の中立は 38% である。

事業の優良さは認めるが、稼ぐ力が資本コストを越えにくいことが結論を決める。現金を満額で数えないのは、戻る保証が薄いからだ。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した株価時価総額 1,955 円601 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 558 円172 億円)。 今の値に割り戻すと 1,337 円411 億円、今との差 +3.6%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 7.5%)→ 適正

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 8% 3,744 円1,150 億円 853 円262 億円 +256.1% +13.5% 368 円113 億円
やや楽観 20% 2,994 円920 億円 710 円218 億円 +186.9% +11.1% 741 円228 億円
中立 38% 2,134 円656 億円 570 円175 億円 +109.4% +7.7% 1,027 円316 億円
やや悲観 23% 829 円255 億円 420 円129 億円 −3.2% −0.3% 287 円88 億円
悲観 11% 498 円153 億円 319 円98 億円 −36.7% −4.5% 90 円28 億円
加重平均100% 1,955 円601 億円558 円172 億円 +94.7% +6.9% 2,513 円772 億円

今の株価時価総額 1,291 円397 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。

楽観 8% 楽観:半導体と医療が伸び、太陽光も下げ止まって利益は過去の山に並ぶ 利益 66 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 3,744 円1,150 億円

半導体の設備投資が長く続き、ガスフィルターの数量は今の 2.3 倍になる。装置メーカーでの採用が広がり、世界での取り分も 5% 台へ上がる。医療向けや半導体検査用の線も伸び、高機能鋼線の数量は 4 割増える。太陽光向けの極細線は、銅への移行でも網の需要が残る形で下げ止まり、細径化の技術で単価も取る。

汎用線は国内で細るが、数量の減りは 3% にとどまる。

売上は 850 億円、営業利益は 90 億円で、利益率は過去の山(10.7%)に並ぶ。自己資本利益率は 10% 台に上がり、資本コストを超える。配当性向 50% 超の還元が続き、現金の戻りも進む。それでも堀は普通で、倍率は式の上限の 85% ほどにとどめる。

  • ステンレス汎用鋼線:数量 21,922(出荷量(トン))× 価格 94(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 206 億円・営業利益 11 億円。数量 0.97 倍・利益率 5.5%
  • 高機能鋼線(極細線・ばね線・医療線):数量 17,318(出荷量(トン))× 価格 247(1 トンあたり売上(万円・製品の混合))→ 売上 427 億円・営業利益 41 億円。数量 1.40 倍・単価は細径化で上乗せ・利益率 9.5%
  • 超精密ガスフィルター(NASclean):数量 76.6(世界市場(億ドル、実質)× シェアの自社取扱規模(百万ドル相当))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 154 億円・営業利益 31 億円。数量 2.3 倍・利益率 20%
  • ナスロンフィルター・産業資材:数量 500(出荷量(トン換算の推定))× 価格 1,293(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 65 億円・営業利益 8 億円。数量 1.25 倍・利益率 11.5%

倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)68 億円。全体の PER 16.7 倍、時価総額 1,150 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:半導体と医療の拡大に、太陽光の下げ止まりまで重なる必要があり、条件が多い。利益率が過去の山に並ぶ姿でもある。

やや楽観 20% やや楽観:半導体が会社の描く方向で伸び、太陽光は低位で安定する 利益 56 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 2,994 円920 億円

ガスフィルターの数量は 1.9 倍に伸び、会社が描く半導体向けの拡大が実現する。医療と検査用の線も堅調で、高機能鋼線の数量は 1.25 倍になる。太陽光向けの極細線は戻らないが、これ以上悪くもならず、低い水準で安定する。

汎用線は国内の細りで、数量が 5% 減る。

売上は 760 億円、営業利益は 76 億円で、利益率は 10% 弱と過去の山に近づく。自己資本利益率は 9% 前後と資本コストを上回り、配当性向 50% 程度の還元が続く。評価は堅実な部品メーカーに定まるが、成長株としての上乗せはつかない。

  • ステンレス汎用鋼線:数量 21,470(出荷量(トン))× 価格 94(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 201 億円・営業利益 10 億円。数量 0.95 倍・利益率 5.0%
  • 高機能鋼線(極細線・ばね線・医療線):数量 15,463(出荷量(トン))× 価格 242(1 トンあたり売上(万円・製品の混合))→ 売上 374 億円・営業利益 34 億円。数量 1.25 倍・利益率 9.2%
  • 超精密ガスフィルター(NASclean):数量 63.3(世界市場(億ドル、実質)× シェアの自社取扱規模(百万ドル相当))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 127 億円・営業利益 25 億円。数量 1.9 倍・利益率 19.5%
  • ナスロンフィルター・産業資材:数量 460(出荷量(トン換算の推定))× 価格 1,293(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 59 億円・営業利益 7 億円。数量 1.15 倍・利益率 11%

倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)68 億円。全体の PER 15.6 倍、時価総額 920 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:半導体向けは足元で伸びており、会社が描く方向どおりに進めば成り立つ。ただ前の中計の利益目標は未達で、強くは寄せない。

中立 38% 中立:半導体と医療が増え、太陽光と汎用の細りを埋めて利益は緩やかに増える 利益 43 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 2,134 円656 億円

ガスフィルターの数量は 1.5 倍になる。世界市場の実質の伸びと同じ歩みで、取り分は 4% のまま保つ。高機能鋼線は、医療と検査用の線が伸びて 1.1 倍になる。太陽光向けは低位のままで、これ以上の回復は見込まない。ナスロンは横ばいに近い。

汎用線は国内需要の細りと輸入材の影響で、数量が 1 割弱減る。価格は物価並みに上がり、原料の値動きは転嫁できる。

売上は 670 億円、営業利益は 58 億円、利益率は 8.6% になる。足元の予想の延長にある水準だ。

純利益は 43 億円、自己資本は 600 億円で、自己資本利益率は 7% 台にとどまる。資本コストには届かない。

  • ステンレス汎用鋼線:数量 20,792(出荷量(トン))× 価格 94(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 195 億円・営業利益 9 億円。数量 0.92 倍・価格は物価並み・利益率 4.5%
  • 高機能鋼線(極細線・ばね線・医療線):数量 13,607(出荷量(トン))× 価格 237(1 トンあたり売上(万円・製品の混合))→ 売上 323 億円・営業利益 26 億円。数量 1.10 倍・利益率 8.0%
  • 超精密ガスフィルター(NASclean):数量 50.0(世界市場(億ドル、実質)× シェアの自社取扱規模(百万ドル相当))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 18 億円。数量 1.5 倍・利益率 18%
  • ナスロンフィルター・産業資材:数量 420(出荷量(トン換算の推定))× 価格 1,293(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 54 億円・営業利益 5 億円。数量 1.05 倍・利益率 10%

倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)68 億円。全体の PER 13.99 倍、時価総額 656 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:半導体と医療の伸びを、太陽光と汎用の細りが相殺する中心の姿。最も起こりやすい。

やや悲観 23% やや悲観:太陽光は他の金属に置き換わり、半導体の伸びも鈍る 利益 27 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 829 円255 億円

太陽光向けの極細線が、銅への移行と他の金属の網への置き換えで一段と縮む。高機能鋼線の数量は 5% 減り、単価も押される。ガスフィルターは伸びるが、1.15 倍にとどまる。装置メーカーの内製や中国の国産化で、取り分が伸びない。

汎用線は輸入材との競争で数量が 14% 減り、価格は物価に追いつかない。

営業利益は 34 億円で、今の 31 億円とほぼ変わらない。物価で売上は増えても、人件費と電力の増加が利益を食う。純利益は 26 億円、自己資本利益率は 5% を割る。配当性向 50% を守っても額は小さく、現金は積み上がり続ける。

  • ステンレス汎用鋼線:数量 19,436(出荷量(トン))× 価格 91(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 177 億円・営業利益 5 億円。数量 0.86 倍・価格は物価に届かない・利益率 3%
  • 高機能鋼線(極細線・ばね線・医療線):数量 11,752(出荷量(トン))× 価格 228(1 トンあたり売上(万円・製品の混合))→ 売上 268 億円・営業利益 15 億円。数量 0.95 倍・価格は物価に届かない・利益率 5.5%
  • 超精密ガスフィルター(NASclean):数量 38.3(世界市場(億ドル、実質)× シェアの自社取扱規模(百万ドル相当))× 価格 1.30(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 11 億円。数量 1.15 倍・利益率 14%
  • ナスロンフィルター・産業資材:数量 380(出荷量(トン換算の推定))× 価格 1,254(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 48 億円・営業利益 4 億円。数量 0.95 倍・利益率 8%

倍率:資本コスト 7.5%。余った現金を除いた事業の ROE 5.2% が k 以下なので PER の上限は 1÷k の約 12.1 倍。稼ぐ力が細る筋書きなので、その約 6 割の 7.5 倍に置く。

確率:太陽光の置き換えは現実に進み、半導体の波も大きい。国内の汎用も細るため、やや厚く置く。

悲観 11% 悲観:太陽光が消え、汎用線は赤字に沈み、ガスフィルターも奪われる 利益 9 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 498 円153 億円

太陽光向けの極細線がほぼ消え、中国勢の台頭で医療以外の用途でも単価が崩れる。高機能鋼線の数量は 2 割強減る。ガスフィルターは、装置メーカーの内製や中国の国産化で伸びず、数量が 2 割減る。

汎用線は国内需要の細りと輸入材で、数量が 3 割近く減り、赤字に沈む。枚方・東大阪の設備の稼働が落ち、減損で自己資本は 30 億円ほど減る。

営業利益は 10 億円まで細り、純利益は 9 億円ほどだ。もはや技術で守られた部品メーカーではなく、現金を抱えた小さな会社として見られる。親会社が現金をどう使うかで、株主の取り分は決まる。

  • ステンレス汎用鋼線:数量 16,272(出荷量(トン))× 価格 87(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 142 億円・営業利益 0 億円。数量 0.72 倍・赤字(利益率 0%)
  • 高機能鋼線(極細線・ばね線・医療線):数量 9,649(出荷量(トン))× 価格 218(1 トンあたり売上(万円・製品の混合))→ 売上 211 億円・営業利益 4 億円。数量 0.78 倍・単価が崩れる・利益率 2%
  • 超精密ガスフィルター(NASclean):数量 26.6(世界市場(億ドル、実質)× シェアの自社取扱規模(百万ドル相当))× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 4 億円。数量 0.80 倍・利益率 8%
  • ナスロンフィルター・産業資材:数量 320(出荷量(トン換算の推定))× 価格 1,203(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。数量 0.80 倍・利益率 5%

倍率:資本コスト 7.5%。事業の ROE 2% は k 以下で、PER の上限は約 12.1 倍。構造的に負けた筋書きなので上限の約 5 割強の 6.5 倍に置く。稼ぐ力(事業の純利益÷k + 余った現金)より、純現金 153 億円の床のほうが大きいので、床の値で置く(PBR は今の自己資本ではなく、純現金に対する値)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.357 倍・時価総額 153 億円。上の倍率は置き直す前の値)

確率:太陽光の消失、ガスフィルターの競争、汎用の赤字が同時に来る構造的な負け。現金が厚く事業が消える確率は低いと見て、1 割強にとどめる。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

ステンレス汎用鋼線

ねじ・ばね・一般機械・日用品に使う標準的なステンレス線。国内向けが中心。

数量出荷量(トン)価格1 トンあたり売上(万円)売上営業利益
今 2026/03 22,600 70 158 6
10 年後 中立 20,792 94 195 9

取り方:汎用品の月次売上 13.18 億円(2026/03 期の月平均)から年 158 億円。鋼線の出荷は全体で月約 2,900 トン(年約 3.5 万トン)。汎用の単価を 1 トンあたり 70 万円と推定し、年約 2.26 万トンとした(筆者の推定)。営業利益 6.3 億円(利益率 4%)は、全社の営業利益 31 億円に合わせた配分の推定で、本社費を含む。

高機能鋼線(極細線・ばね線・医療線)

髪の毛より細い極細線、半導体検査用の極細ばね線、医療用のカテーテル線・縫合針線など。

数量出荷量(トン)価格1 トンあたり売上(万円・製品の混合)売上営業利益
今 2026/03 12,370 177 219 12
10 年後 中立 13,607 237 323 26

取り方:高機能・独自製品の鋼線は月次 18.25 億円で年 219 億円。鋼線の出荷から汎用を引いた残り約 1.24 万トンで、単価は 1 トンあたり 177 万円(極細線や医療線が高単価のため)。個別の数量は開示がない(筆者の推定)。営業利益 12 億円(利益率 5.5%)は、太陽光向け極細線の落ち込みで下がった今の姿に合わせた推定。

超精密ガスフィルター(NASclean)

半導体製造装置のプロセスガスを濾す金属焼結フィルター。

数量世界市場(億ドル、実質)× シェアの自社取扱規模(百万ドル相当)価格値段の指数(今を 1.00・名目)売上営業利益
今 2026/03 33.3 1.00 50 9
10 年後 中立 50.0 1.34 100 18

取り方:超精密ガスフィルターは月 4.17 億円で年 50 億円。世界市場 約 8.5 億ドルに自社の取り分 約 3.9% をかけた約 3,300 万ドル相当(1 百万ドル = 1.5 億円で 50 億円)。市場は調査会社の予測、取り分は筆者の推定。営業利益 8.5 億円(利益率 17%)は金属繊維全体の推定利益からの配分。

ナスロンフィルター・産業資材

ステンレス繊維を焼結した金属繊維フィルター。炭素繊維・フィルム・樹脂・電池向け。

数量出荷量(トン換算の推定)価格1 トンあたり売上(万円)売上営業利益
今 2026/03 400 965 39 4
10 年後 中立 420 1,293 54 5

取り方:ナスロンなどは月 3.22 億円で年 39 億円。出荷量は約 400 トン、単価は 1 トンあたり 965 万円と推定した。営業利益 3.9 億円(利益率 10%)は推定。

リスクと懸念

太陽光向け極細線の落ち込み

太陽光パネル向けの極細線は、中国のパネル在庫の調整で前期に大きく減った。銀から銅への移行や、他の金属の網への置き換えも進む。会社は今期も低調と見ており、戻る時期は見えない。需要先が偏っているため、回復が遅れれば工場の稼働にまで響く。

半導体向けの波と競争

ガスフィルターは伸びる分野だが、半導体の設備投資は数割動く年がある。世界は Entegris、Pall、Camfil の大手が 6 割を占め、同社は小さな挑戦者だ。装置メーカーの内製や中国の国産化が進めば、取り分は伸びない。

親会社との関係

大同特殊鋼が株の 50.37% を持つ。現金の使い方、配当の水準、完全子会社化の可否は、親会社の意向に左右される。少数株主と親会社の利益が一致しない場面は起こりうる。

国内汎用線の細りと輸入材

ねじやばねなど汎用線の需要は、建設や機械の弱さで国内では細る。輸入材も入りやすい。数量が減り、価格が押されれば、汎用線は赤字に近づく。固定費の重さが全体の利益を削る。

ニッケル相場と在庫評価

原料の値動きは売値に転嫁する仕組みだが、在庫の評価で利益が振れる。前期はニッケル安で仕入れの益が出た。相場が反転すれば、逆の影響が出る。

拠点の集中

主力の工場は大阪の枚方と東大阪に集まる。災害や設備の故障が起きると、極細線やフィルターの供給が止まる恐れがある。タイと中国の工場は一部を補うが、高機能品の代替は難しい。

今後の分かれ目

太陽光向けの極細線の受注が、会社の想定を超えて戻る
高機能鋼線の利益率が 10% 近くまで戻り、営業利益は 70 億円台に近づく。やや楽観から楽観の筋書きに寄る。
ガスフィルターの売上が月 5 億円を超えて定着する
半導体向けの取り分が 5% に近づく。10 年の利益の伸びが上振れし、中立から楽観側へ寄る。
銅ペーストへの移行で、印刷用の網の需要が構造的に縮む
極細線の稼働が落ち、減損の可能性が出る。やや悲観から悲観の筋書きに寄る。
大同特殊鋼が少数株主の株を買い取る意向を示す
条件は交渉で決まり、価値が動く。内容を見るまで判断しない。上場が維持される限り、現金の戻りは親会社の方針に従う。
会社が自社株買いや特別配当で、純現金を大きく還元する
余った現金の戻りが高まり、評価が上がる。資本効率の意識が強まった証拠にもなる。
国内の汎用線の数量が、3 年で 1 割以上減る
汎用線が赤字に近づき、固定費の重さが全体の利益を削る。中立から悲観側に寄る。

見ておくもの

  • 超精密ガスフィルターの月次売上(今は月 4 億円台)
  • 太陽光向け極細線の受注と、銅ペースト・他金属の網の採用
  • 高機能・独自製品の比率(今は 66%、中計は 70%)
  • 次の中期経営計画の目標と配当性向
  • 純現金の推移と、自社株買いの有無

倍率と資本コストの決め方

今の株価・PER には寄せていない。セグメントごとに数量と価格(物価並みの 1.34 倍が基本)で 10 年の売上と利益を積み、純利益は過去の比率 0.71 に利払いの純増(約 2 億円)を足して置いた。中立の事業の ROE は 8.2% と資本コストにほぼ並び、PER は式の上限 12.1 倍の約 8 割に置いた。楽観の利益率は過去の山(10.7%)以下に収め、中立は 8.6% とした。余った現金は親子上場を考え、帳簿の半分で数えた。持ち合い株や不動産の含み益は、開示を確かめられず足していない。やや悲観・悲観は稼ぐ力に合わせて低く置いた。悲観は稼ぐ力より大きい純現金 153 億円を床として置いた。新リース会計基準(2028/03 期から)で営業利益と負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→16.7 倍・やや楽観 PER 10.8→15.6 倍・中立 PER 9.5→13.99 倍)。

資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。同じ鉄鋼の日本冶金(+1.75%)より、借金がない分だけ低く置く。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。

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読んだ資料

  1. 第16次中期経営計画 NSG26(2024年4月26日)
  2. 2026年3月期 決算説明資料(日本精線)
  3. 株式の状況(日本精線 IR)

分析日 2026-10-16