結論
中山製鋼所は大阪湾岸の船町工場で、鉄スクラップを電気炉で溶かし、熱延コイル・厚板・縞板・めっき鋼板・建材を作る。電気炉で鋼板を作る国内3社の1つだ。筆者の結論は「割高」。事業に力がないのではない。いま踏み出した投資の大きさに比べ、株主に残る利益が資本コストに届きにくいと見る。
事情はこうだ。既設の電気炉は築50年を超え、能力が足りない。足りない分は外から鋼片を買うので、利幅が薄い。そこで日本製鉄と組み、2030年の稼働をめざして年120万トンの新電気炉を建てる。総投資は950億円前後。時価総額の2倍を超える賭けだ。
うまくいけば、買っていた鋼片が自前になり、稼ぐ力は上向く。それでも10年後の中立の株主資本利益率は4%どまりと見る。日鉄への分配と借入利息が、先に株主の取り分を削るからだ。
いまの株価を支えるのは、この投資が計画どおり進む期待と、手元の厚い現金だ。現金は新電気炉に消える。9月には熱延工場の火災もあった。うまくいく筋書きで、ようやく今の値段に並ぶ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に問うのは、「この会社を持ち続けたいか」と「払う値段に安全域があるか」だ。
筆者の答えは、事業は悪くないが、資本の使い道に懸念が残る、というものだ。株主資本利益率が資本コストを超えたのは、過去12期のうち2期。それでも利益を事業に再投資し、いま950億円級の投資に踏み出す。投資額は時価総額の2倍を超える。
良い点もある。新電気炉が動けば、割高な鋼片の購入が減り、利幅の構造が変わる。日鉄が出資し、製品の引き取り手にもなる。計画が当たる確率は低くない。
ただし、成功した姿でも、会社自身の目標は株主資本利益率6%だ。資本コストを超えない。株主の取り分は、日鉄への分配と借入利息に先に削られる。設備の事故やスプレッドの悪化にも弱い。
安全域は、実質無借金と厚い現金にあった。その現金が新電気炉に使われる。安全域は工事の進行とともに薄くなる。筆者は、いまの値段に十分な安全域はないと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は鋼板だ。船町工場の電気炉で溶かした鉄を、薄い板(熱延コイル)や厚い板(厚板、縞板)に圧延する。めっき鋼板、建築用のC形鋼などの建材、棒鋼・線材も作る。販売数量の構成は、鋼板が6割強、棒鋼・線材が2割、建材が1割台半ばだ。
特徴は、素材から加工、販売、物流までをグループで持つことだ。国内に10の工場を構え、商社や物流の子会社が全国に営業所と拠点を置く。縞板とC形鋼では国内トップシェアと会社は説明する。用途の8割は建築、土木、産業機械だ。
弱点は素材にある。既設の電気炉は85トン炉で、築50年を超える建屋の基礎が弱く、炉を大きくできない。粗鋼の年産は50万トン台にとどまる。足りない鋼片は、高炉メーカーや他の電炉から買う。これが利幅を薄くしている。
2002年に高炉と転炉を止めてから、素材は電気炉だけで作ってきた。大阪湾に面した岸壁は、スクラップの受け入れと製品の出荷に使える。新電気炉は、旧高炉・コークス炉の跡地に建てる。
売上のほぼ全部が鉄鋼だ。ほかに不動産の賃貸が年に数億円の利益を出し、海洋関連のエンジニアリングが小さく加わる。
優良さと弱いところ
筆者は、中山の堀、つまり他社がまねできない強みは浅いと見る。鋼板は規格品で、値段は市況とスクラップ、電力で決まる。高炉メーカーの材料と同じ棚で比べられ、値決めの力は弱い。
強みは三つある。一つは、電気炉で鋼板まで作れる数少ない会社であること。電気炉の鋼は、CO2が高炉の約4分の1で済む。脱炭素の流れで追い風になる。二つめは加工と販売の網の厚さだ。小規模な鉄骨造向けの建材では、販売シェアを上げている。三つめは財務で、自己資本比率は7割あり、2026年3月末は実質無借金だった。
弱さも見ておく。利益の振れが大きい。過去20年で最終赤字は5期あり、2013年3月期には大きな赤字を出した。既設炉は老朽で、2023年度にはトラブルで鋼片の購入が増えた。2026年9月には熱延工場で火災も起きた。設備の事故が利益に直結する体質だ。
資本効率は低い。株主資本利益率が資本コストを超えたのは、過去12期のうち2期だけだ。会社が掲げる2033年度の目標も6%で、そこには届かない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の鉄鋼需要は縮んでいる。2025年度の粗鋼生産は8,033万トンと57年ぶりの低水準で、2026年度も前年並みがやっとだ。人口減と建設の弱さが重い。
ただし、中山の見どころは総量ではなく、中身の入れ替えにある。国内粗鋼のうち電気炉の割合は約4分の1。中山の主力品種に限ると、電気炉材の割合は厚板で約15%、熱延コイルで約6%、めっき鋼板で約3%にすぎない。残りは高炉材だ。CO2を減らしたい需要家が電気炉材に替えれば、市場が縮んでも中山の取り分は増える。
競争は強まる。JFEスチールは倉敷の高炉1基を、年産約200万トンの電気炉に替える。2028年度の稼働予定で、高級鋼向けだ。東京製鐵は電炉の最大手で、薄板の品ぞろえを広げている。中部鋼鈑は厚板で競合する。電気炉材に空く席を、体力のある大手が埋めに来る。
収益の決め手は、鋼板の売値とスクラップ・電力費の差、つまりスプレッドだ。2026年は東京製鐵が値上げを重ね、市況は持ち直しつつある。だが建設向けの戻りは遅い。中国の鋼材輸出が、アジアの価格の天井を押さえる構図も変わらない。
資本政策と M&A
資本政策は、新電気炉に向けて一気に動いた。
2026年8月、阪和興業とヨドコウを相手に、総額約87億円の第三者割当(新株の発行と自己株の処分)を決めた。10月2日に払い込みが終わり、阪和興業は議決権の約2割、ヨドコウは約1割を持つ。既存株主の持分は2割強薄まった。発行価額は直前の終値と同水準で、安売りではない。阪和は鉄スクラップの調達と製品販売、ヨドコウはめっきなど製品開発の相手だ。
新電気炉は、日本製鉄との合弁会社(中山51%、日鉄49%)が持ち、中山が借りて操業する。日鉄の出資は約250億円。残りは営業キャッシュ、手元資金、銀行借入(約450億円、最大で約500億円)でまかなう。返済は2031年度以降だ。手元の現金も工事に回り、実質無借金の姿は変わる。
還元は連結配当性向30%以上が目安で、新電気炉の完成後に強化を検討するとしている。2027年3月期は増配の予定だ。自社株買いの計画は見えない。
足元の利益は薄い。2027年3月期の営業利益は34億円の予想で、純利益39億円には枚方市の賃貸地の売却益23億円余りが入る。売却益を除いた本業の純利益は、20億円台前半と見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新電気炉が動けば、中山の姿は変わる。いま年50万トン台の自前の鋼を、2倍以上に増やせる。外から買っていた鋼片が自前になり、利幅が上がる。会社の計画は、EBITDAを113億円から2033年度に260億円へ引き上げる。
追い風は電気炉材への切り替えだ。厚板の電気炉材は15%、熱延コイルは6%しかない。脱炭素を迫られる需要家が替えれば、席は大きく広がる。CO2は高炉材の約4分の1で済む。
日本製鉄との組み合わせも心強い。日鉄は設備の49%を持ち、鋼片やコイルの引き取り先にもなる。余った能力に買い手がつく。阪和興業はスクラップの調達と製品の販売、ヨドコウはめっき製品の開発で支える。サプライチェーンが一本につながる。
財務の余力もある。自己資本比率は7割で、実質無借金から始められる。9月の火災は設備の本体にほとんど傷を残さず、1か月余りで再開した。北関東と九州への販路拡大も進む。前の中期計画では、経常利益が3年平均で目標を上回った実績がある。
慎重な見方
投資の大きさが、すべてを決める。950億円級の投資は、時価総額の2倍を超える。最大では1,055億円だ。新電気炉の立ち上げは、前の計画から後ろ倒しになっている。
成功した姿でさえ、株主に残る利益は小さい。会社の2033年度の目標は、経常利益130億円、株主資本利益率6%だ。資本コストを下回る。合弁会社の49%を持つ日鉄には、毎年の分配が出ていく。借入約450億円の利息も重い。
競争は厳しくなる。JFEスチールが倉敷に年産約200万トンの電気炉を、2028年度に立ち上げる。電気炉材に空く席には、大手が来る。中国の鋼材輸出は、アジアの価格の天井を押さえている。
足元の力も弱い。2027年3月期の営業利益は34億円の予想で、4〜6月期は前年から64%減った。純利益の増加は土地の売却益のおかげだ。9月には熱延工場で火災が起き、既設炉は老朽のままだ。新炉が動くまでの4年間、この体で戦う。
株価を支えるのは、純現金とうまくいく期待だ。現金は工事に消える。
どちらに重みを置いたか
筆者は、慎重な見方に重みを置く。新電気炉が当たる筋書きは確かにある。ただ、当たっても株主資本利益率は5%前後にとどまり、資本コストに届かない。外れた時の傷は深い。投資は時価総額の2倍を超え、遅れや事故、スプレッドの悪化に弱い。そこで、確率は慎重側を厚くした。うまくいく筋書きは合わせて3割弱、うまくいかない筋書きは合わせて4割弱とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 843 円567 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 200 円135 億円)。 今の値に割り戻すと 516 円347 億円、今との差 −12.8%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,604 円1,079 億円 | 334 円225 億円 | +227.4% | +12.6% | 155 円104 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,315 円885 億円 | 275 円185 億円 | +168.6% | +10.4% | 318 円214 億円 |
| 中立 | 35% | 1,027 円691 億円 | 223 円150 億円 | +111.1% | +7.8% | 437 円294 億円 |
| やや悲観 | 25% | 260 円175 億円 | 134 円90 億円 | −33.5% | −4.0% | 98 円66 億円 |
| 悲観 | 12% | 223 円150 億円 | 59 円40 億円 | −52.3% | −7.1% | 34 円23 億円 |
| 加重平均 | 100% | 843 円567 億円 | 200 円135 億円 | +76.2% | +5.8% | 1,043 円702 億円 |
今の株価時価総額 592 円398 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 新電気炉が計画どおり立ち上がる 利益 89 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,604 円1,079 億円
新電気炉が2030年に予定どおり動き、2033年までに高い稼働率へ上がる。外から買っていた鋼片はほぼ自前に置き換わり、日鉄向けの供給も軌道に乗る。高炉大手の設備の縮小で電気炉材に席が空き、鋼板の売値は物価を上回って上がる。熱延コイルとめっきで電気炉材の採用が進み、ヨドコウとの製品開発も実る。スクラップは阪和興業の調達力で安定する。工事費は950億円台に収まる。会社の長期計画の目標をほぼ達成し、借入の返済も進む。配当性向は引き上がるが、自己資本の厚い会社なので、株主資本利益率は6%に届かない水準にとどまる。
- 鉄鋼製品の国内販売(鋼板・棒線・建材・加工):数量 94.0(鋼材の出荷量(万トン))× 価格 22(鋼材1万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 2,047 億円・営業利益 128 億円。出荷はほぼ横ばい、新炉効果で利益率6%台
- 日本製鉄向けなど外部への供給(新電気炉の余力):数量 20.0(外部向けの供給量(万トン))× 価格 13(供給1万トンあたりの売値(億円、名目))→ 売上 256 億円・営業利益 15 億円。新炉の余力を日鉄に供給
倍率:事業の純利益 89 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 1,079 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工事費、稼働の時期、日鉄向けの供給、鋼板の売値がすべて計画どおりに進む筋書き。過去に立ち上げが後ろ倒しになり、既設炉も事故が続くため、全部がそろう確率は1割に届かないとした。
やや楽観 20% 遅れは小さく、利幅は計画の8割 利益 73 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,315 円885 億円
新電気炉は半年から1年ほど遅れて動く。立ち上げ後の稼働率は2年ほどかけて上がり、外から買う鋼片は大きく減る。日鉄向けの供給は、計画を少し下回る量で安定する。国内の需要は細るが、電気炉材への切り替えで鋼板の出荷はほぼ維持する。売値は物価並みを少し上回る。建材と加工の強化、北関東・九州の販路拡大が利益を積み増す。借入の返済は2031年度から少しずつ進み、配当性向は30%台後半に上がる。会社の長期計画には届かないが、収益の構造は確かに良くなる。不動産の賃料収入も、物価に沿って小さく増える。既設炉は2030年に休止し、旧炉の維持費と事故のリスクが消える。
- 鉄鋼製品の国内販売(鋼板・棒線・建材・加工):数量 92.0(鋼材の出荷量(万トン))× 価格 21(鋼材1万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 1,948 億円・営業利益 110 億円。出荷は3%減どまり、新炉効果で利益率5%台
- 日本製鉄向けなど外部への供給(新電気炉の余力):数量 18.0(外部向けの供給量(万トン))× 価格 12(供給1万トンあたりの売値(億円、名目))→ 売上 224 億円・営業利益 12 億円。日鉄向けは計画を少し下回る
倍率:事業の純利益 73 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 885 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新電気炉が1年未満の遅れで動き、利幅が計画の8割まで届く筋書き。ヨドコウ・阪和との提携と電気炉材への切り替えが追い風になるが、競合の電炉化も進むので、うまくいく側の中心は2割にとどめた。
中立 35% 新炉は動くが、利幅は計画の6割 利益 57 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,027 円691 億円
新電気炉は2030年代前半にフル稼働へ近づくが、工事費は950億円を超え、立ち上げの調整に時間がかかる。外から買う鋼片は減り、利幅は上がるが、増える減価償却が打ち消す部分も大きい。国内の鋼板需要は細り、出荷は今より5%ほど減る。売値は物価並みに上がる。日鉄向けの供給は、安定した小さな収益源にとどまる。JFEスチールなどの電炉化で、高級品の競争は厳しくなる。営業利益は100億円台前半に戻るが、日鉄への分配と借入利息を引いた株主の取り分は薄い。配当は性向30%台前半を保つ。不動産の賃貸と海洋エンジニアリングは小さな安定収益として残る。新炉の完成後に還元を強める方針は、利益が追いつくまで先送りされる。
- 鉄鋼製品の国内販売(鋼板・棒線・建材・加工):数量 90.0(鋼材の出荷量(万トン))× 価格 21(鋼材1万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 1,850 億円・営業利益 91 億円。出荷5%減、物価並みの値上がり、新炉効果は純額17億円
- 日本製鉄向けなど外部への供給(新電気炉の余力):数量 14.0(外部向けの供給量(万トン))× 価格 12(供給1万トンあたりの売値(億円、名目))→ 売上 169 億円・営業利益 8 億円。日鉄向けは小さな収益源
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 691 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新電気炉は動くが、立ち上げに時間がかかり、スプレッドも計画ほど広がらない筋書き。前の計画が後ろ倒しになった実績と、国内需要の縮小、競合の電炉化を考えると、これが最も起こりやすいと見て最大の確率を置いた。
やや悲観 25% 立ち上げが遅れ、競争で利幅が削られる 利益 25 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 260 円175 億円
新電気炉の立ち上げは2年ほど遅れ、工事費は1,000億円を超える。稼働率が上がらない間も、減価償却と借入利息は先に出ていく。JFEスチールの電炉が2028年度に動き、高級品の電気炉材は大手との競争になる。スクラップ価格と電力費が上がり、売値への転嫁も追いつかない。日鉄向けの供給は小さくとどまる。国内の出荷は1割ほど減る。営業利益は60億円台で、日鉄の取り分を引くと株主に残る利益は薄い。配当は性向30%を守る程度にとどまり、自社株買いはできない。電気炉材への切り替えは進むものの、そのうまみは大手との競争で値引きとして吐き出す部分が大きい。借入の返済は2030年代半ばまで長引く。
- 鉄鋼製品の国内販売(鋼板・棒線・建材・加工):数量 84.0(鋼材の出荷量(万トン))× 価格 20(鋼材1万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 1,650 億円・営業利益 58 億円。出荷12%減、値上がりは物価を下回る、新炉効果は純額8億円
- 日本製鉄向けなど外部への供給(新電気炉の余力):数量 8.0(外部向けの供給量(万トン))× 価格 12(供給1万トンあたりの売値(億円、名目))→ 売上 92 億円・営業利益 3 億円。日鉄向けは小さい
倍率:資本コスト8.25%。事業のROE1.9%がk以下なので、PERの上限は1÷k=10.8倍。利益の質が悪く、減価償却と利息の負担が重いので、上限の約65%の7.0倍に置く。
確率:新電気炉の立ち上げが2年ほど遅れ、工事費が膨らみ、高級品の競争とスクラップ高で利幅が削られる筋書き。事故が続いた歴史と、大型投資の失敗が株主に響く度合いを考え、2割台半ばを置いた。
悲観 12% 新炉の重荷と市況悪化で優良さを失う 利益 −30 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 223 円150 億円
新電気炉の工事費は1,055億円を超え、稼働は2032年以降にずれ込む。立ち上げでの事故もあって、設計の能力を出せない。JFEスチールなどの電炉化で、電気炉材は供給過剰になり、スプレッドは縮む。日鉄向けの供給は始まらず、合弁の見直しが議論される。国内の出荷は25%近く減り、売値は物価に追いつかない。減価償却と借入利息で最終赤字に沈み、設備の減損を迫られる。配当は大きく減り、実質無借金の面影は消える。優良な電炉メーカーという評価は失われる。残る価値は、大阪湾岸の工場用地と、小規模ながら全国に張った加工・販売の網だけになる。阪和興業とヨドコウとの提携も、立て直しの足場にとどまる。
- 鉄鋼製品の国内販売(鋼板・棒線・建材・加工):数量 72.0(鋼材の出荷量(万トン))× 価格 18(鋼材1万トンあたりの売上(億円、名目))→ 売上 1,270 億円・営業利益 −2 億円。出荷25%減、売値は物価に追いつかない、新炉は赤字要因
- 日本製鉄向けなど外部への供給(新電気炉の余力):数量 3.0(外部向けの供給量(万トン))× 価格 10(供給1万トンあたりの売値(億円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。日鉄向けはほぼ始まらない
倍率:最終赤字なのでPBRで置く。今の自己資本1,092億円の約14%、土地の簿価に土壌対策と解体費の控除を見た約150億円が床。稼ぐ力は値段に入れず、減損で減る自己資本に床の倍率を掛けない。
確率:新電気炉の工事費が膨らみ、立ち上げに失敗し、電気炉材の席を大手が奪う構造的な負けの筋書き。投資が時価総額の2倍を超え、事故の歴史もあるので、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鉄鋼製品の国内販売(鋼板・棒線・建材・加工)
船町工場の電気炉と圧延で作る熱延コイル・厚板・縞板・めっき鋼板・棒線・建材と、グループの加工・商社が売る国内向けの鋼材。売上のほぼ全部を占める。
| 数量鋼材の出荷量(万トン) | 価格鋼材1万トンあたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 95.0 | 15 | 1,457 | 43 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 21 | 1,850 | 91 |
取り方:出荷量の最新の開示は2024年度の単独101万トン(長期計画の資料)。2025年度は売上が12%減で、中間期に販売数量の減少が明記されたため、数量6%減・単価6〜7%減と置いて95万トンとした。単価は鉄鋼の売上約1,457億円(全社1,483億円から不動産と海洋エンジニアリングの約26億円を除く)を割った15.3万円/トン。営業利益は全社49.1億円から不動産・海洋エンジニアリング約6億円を除いた43億円。
日本製鉄向けなど外部への供給(新電気炉の余力)
新電気炉が動く2030年以降、自社の圧延で使い切れない鋼片(スラブ)や熱延コイルを日本製鉄などに供給する事業。今は受託生産が6千トン程度。
| 数量外部向けの供給量(万トン) | 価格供給1万トンあたりの売値(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 9.00 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 12 | 169 | 8 |
取り方:今は受託生産6千トン(長期計画の資料)。受託は材料を預かって加工賃だけを受け取るので実際の売上は小さいが、将来の鋼片・コイルの外販と尺度をそろえるため、鋼片と熱延コイルの中間の売値を1トンあたり9万円と置いて換算した(5.4億円は換算値)。営業利益はほぼゼロとみて0.1億円。
リスクと懸念
新電気炉の投資負担
総投資は950億円前後で最大1,055億円。時価総額の2倍を超える。借入は約450億円で最大約500億円。工事費が膨らんだり、立ち上げが遅れたりすれば、減価償却と利息が先に出ていき、株主の取り分を削る。
立ち上げの遅れと設備の事故
新電気炉の立ち上げは前の計画から後ろ倒しになった。既設炉は2023年度にトラブルで鋼片の購入が増え、2026年9月には熱延工場で火災が起きた。復旧は早かったが、業績への影響額はまだ開示されていない。
スプレッドの悪化
鋼板の売値と、スクラップ・電力費の差が収益の決め手になる。中国の鋼材輸出がアジアの価格の天井を押さえ、スクラップが上がれば、転嫁が追いつかない期間は利益が直接削られる。
大手の電炉化による競争
JFEスチールは倉敷で年産約200万トンの電気炉を2028年度に動かす計画だ。電気炉材に空く席を体力のある大手が埋めれば、中山の拡販の余地は狭まる。東京製鐵、中部鋼鈑との競争も続く。
日本製鉄との合弁の条件
新電気炉は日鉄が49%を持つ合弁会社の所有で、中山が借りて操業する。日鉄への分配は毎年出ていく。鋼片・コイルの引き取りの価格や量の条件は、まだ開示されていない部分が多い。
国内需要の縮小と希薄化
国内の粗鋼生産は57年ぶりの低水準で、建設向けの戻りも遅い。今回の第三者割当で既存株主の持分は2割強薄まった。阪和興業とヨドコウの持株が約3割に達し、少数株主の影響力は小さくなる。
今後の分かれ目
- 新電気炉の工事が予定どおり進み、試運転で設計の能力が出たら
- うまくいく筋書きの確率を上げてよい。外から買う鋼片が減る速さと、減価償却の増え方を合わせて確かめる。
- 工事費が1,055億円の上限を超える、または稼働が2031年以降にずれ込んだら
- うまくいかない筋書きに確率を寄せる。借入が増えれば、利息と返済の計画も見直す。
- 日本製鉄との間で、鋼片・コイルの引き取りの量と価格の条件が示されたら
- 日鉄向けの供給の利幅を見直す。引き取りが少なければ、新炉の余力は国内に向けて売るしかなく、売値を押し下げる。
- 熱延工場の火災の影響額が、年の利益を大きく削る規模で開示されたら
- 2027年3月期の利益の出発点を引き下げる。原因が設備の老朽にあれば、事故が続く前提で確率を見直す。
- JFEスチールの倉敷の電炉が前倒しで動き、電気炉材の売値が下がったら
- 鋼板のスプレッドの前提を引き下げ、うまくいかない側の確率を上げる。
- 新電気炉の完成後に、還元の強化(配当性向の引き上げや自社株買い)が示されたら
- 余った現金が株主に戻る前提を強められる。投資の回収が進んでいるかも合わせて確かめる。
見ておくもの
- 新電気炉の工事の進み具合(基礎工事、炉の据え付け、試運転の時期)
- 既設炉の粗鋼生産量(月5万トン体制に届くか)と鋼片の購入量
- 鋼板の売値とスクラップ・電力費の差(スプレッド)
- 日本製鉄向けの供給の量と価格の条件の開示
- 借入の増え方と返済の計画(2031年度以降)
- JFEスチールなど大手の電炉化の進み具合
倍率と資本コストの決め方
鋼板の国内販売と、日本製鉄向けの供給の2つに分け、数量と価格で10年後を積んだ。新電気炉の効果は、外から買う鋼片を置き換えて得る利幅から、増える減価償却を引いた純額で入れた。資本コストは基本7.5%に品質の調整1.75%を足した9.25%。事業のROEが資本コストを下回るため、倍率の上限は1÷kの約10.8倍で、中立はその7割台に置いた。今の株価は見ていない。合弁会社の賃借料は連結の内部取引で消えるので、日鉄の取り分は少数株主の利益として引いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→12.12 倍・やや楽観 PER 9→12.12 倍・中立 PER 8→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質+1.75%を足した9.25%(β・規模は使わない)。新電気炉の実行や火災などの個別の懸念はkでなく、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.25%。