株譜
AI 銘柄分析 · 鉄鋼 · 試作

三菱製鋼 5632

高炉由来の特殊鋼とばねの二本柱。利益は薄く、資本コストに届かない。今の値段は計画の達成を先取りしている

やや割高
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)1,788 円270 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)2,306 円349 億円差 −22.4%
10 年後から見ると やや割高 価値 1,788 円270 億円 · 差 −22.4% · 期待の年率 +4.2%
期待の年率リターン(10 年)+4.2%資本コスト比 −4.3 pt
推定の資本コスト8.5%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 8.5% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

三菱製鋼は、特殊鋼の棒鋼と自動車などに使うばねを作る会社だ。売上の約半分が鋼材、約4割がばねで、建設機械・商用車・自動車を支える部品屋である。

筆者の結論は、今の値段は割高だ。理由は稼ぐ力の低さにある。自己資本利益率は過去10年の中央値で5%に満たず、資本コストの9%に遠く及ばない。元手より価値が小さい会社に、元手並みの値段は付けにくい。

いちばんの弱みは、国内の特殊鋼が日本製鉄の室蘭の高炉に頼っていることだ。2025年12月の火災でこの高炉が止まり、営業利益は40億円規模で削られた。会社は戦略事業で利益の中身を変えると言うが、前の中計は営業利益も自己資本利益率も未達だった。

手札はある。東南アジアの鋼材、商用車用の板ばね、洋上風力や防衛向けの大型部品は、国内の縮む本業とは別の需要を持つ。ただ、どれも母数が小さく、全社の利益を倍にする力はない。

資本の使い方は前向きに動いている。安定配当への切り替えと拠点の整理は評価できる。それでも、利益が物価並みに伸びる中立の姿でも、値段は今を下回ると筆者は見る。

バリュー投資の観点から

バリュー投資の観点では、この会社は「分かる事業だが、持ち続けたいとは言いにくい」位置にある。

事業は理解しやすい。鋼を作り、ばねに仕上げて売る。10年後も存在するが、今より強いとは言えない。国内鋼材は縮み、ばねの主力顧客は自動車で、売り手に価格を決める力はない。

オーナーの手に残る利益は少ない。設備の更新に大きな投資が要り、稼ぎは資本コストに届かない。借金も軽くなく、景気の谷では赤字に沈みやすい。

経営は資本の効率に目を向け始めた。配当の基準づくり、北米・ドイツの整理、高炉トラブル後の立て直しは、前向きに見ている。ただ、目標を何度も外してきた実績は軽くない。

安全域は見当たらない。今の値段は、計画の営業利益110億円の半分以上を先に払っている。中立の筋書きでも10年後の値段は今を下回る。筆者は、この銘柄に厚い安全域を見いだせない。

何で稼ぐ会社か

稼ぎの柱は4つある。

最大は特殊鋼鋼材で、売上の約48%を占める。室蘭の工場が、高炉でできた溶銑から強い鋼を作る。向け先は建設機械が約3割、産業・工作機械が約1.5割で、自動車は1割ほどだ。直径の太い棒鋼は国内で首位とされる。海外はインドネシアのJATIMが電炉で作り、商用車と二輪車に売る。

次がばねで、売上の約39%。自動車の足回りを支えるコイルばねとスタビライザーが主力だ。建機用の太巻ばねは世界首位を自称する。商用車の板ばねと、スマートフォンのヒンジなどに使う精密ばねが伸びる領域として位置づけられている。

素形材は約5%で、ターボチャージャー用の精密鋳造品と特殊合金粉末を作る。粉末は電子部品のインダクタに使われ、生産能力を倍にする投資が進んでいる。

機器装置は約6%。長崎の三菱長崎機工が、大型の鍛圧機械や洋上風力の部品、防護装備品を手がける。長崎に新工場を建て、2027年1月に動かす計画だ。

売上の柱は国内で、海外はばねの北米・中国とインドネシアの鋼材が担う。区分は開示を参考にした筆者の組み替えと推定である。

優良さと弱いところ

堀は狭い。太径の特殊鋼と建機用の太巻ばねでは強いが、市場そのものが小さい。

価格を決める力は弱い。鋼材は原料の動きを売値に反映する仕組みが基本で、自動車や建機のメーカーとの交渉でも優位に立てない。国内の鋼材は日本製鉄の設備を共同で使い、受け持つ数量も相手の生産に左右される。

資本の効率は物足りない。営業利益率は過去12年で5%を超えた年がなく、2020年以降だけで純損失の期が3回ある。自己資本利益率の中央値は5%に届かない。会社が掲げる10%は一度も実現していない。

財務は軽くない。自己資本比率は34%、純有利子負債は時価総額の7割を超える。金利が上がる局面では、利払いが利益を食う。

経営は目標を高く掲げて外してきた。前の中計の営業利益110億円は届かず、今回は同じ110億円に再挑戦する。筆者がいちばん気にするのは、この数字を計画どおり積めるかどうかだ。一方で、ドイツのばね事業から撤退し、北米は3拠点を2拠点に絞るなど、整理の実行は進めている。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

国内の特殊鋼は縮む市場だ。粗鋼の国内生産は2025年度に57年ぶりの低水準になった。建機・産機も、人口減と製造業の海外移転で、数量の追い風はない。

競合は国内の大同特殊鋼、愛知製鋼、山陽特殊製鋼だ。これらは電炉で、高炉由来で作る三菱製鋼とは製法が違う。高炉由来は不純物が少なく太径に強いが、日本製鉄の高炉が止まれば原料が途絶える。この集中が構造的な弱点になる。

ばねの競合は、日本発条が最大手だ。懸架ばねで世界首位を掲げ、第三者の推計では三菱製鋼のシェアは2%ほどにすぎない。自動車は電動化で車が重くなり、ばねの軽量化は需要を生む。足回りの構造は大きくは変わらない。ただ、日系メーカーの北米・中国での苦戦が数量を削る。

伸びる領域は別にある。東南アジアの二輪車・商用車、電子機器の精密ばね、洋上風力、防衛予算の増額に伴う装備品だ。会社は2028年度に戦略事業を売上の35%、利益の65%まで高める。

つまり、縮む国内鋼材と、小さく伸びる戦略事業の綱引きだ。10年後は売上が物価並みに伸び、利益の中身が入れ替わる姿を筆者は中立と見る。

資本政策と M&A

配当は2026年度から、株主資本配当率3.5%を基準にした安定配当に変わる。利益が上振れしても配当を出しすぎず、2030年に自己資本比率40%を目指すためだ。3年の営業キャッシュフロー209億円のうち、還元は52億円を充てる。

投資は成長に64億円、合理化に50億円、更新・環境に70億円と、配当よりずっと重い。借金を減らしながらの設備更新で、自社株買いの余地は小さい。

遊休資産の売却は進んでおり、2025年度の下期にも実施した。ただ、含み益の額と政策保有株の残高は開示から確かめられなかったため、価値に足さない。

M&Aでは、板ばねの買収を検討中と報じられた。規模も相手も不明で、筋書きには織り込まない。支配株主はおらず、大株主は信託口、三菱重工(6.5%)、明治安田生命だ。10年内の買収・再編の可能性は読めない。株主優待はない。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

会社の計画は、営業利益110億円と自己資本利益率10%だ。実現すれば今の値段は安い。根拠は3つある。

第1は回復と改善だ。国内鋼材は高炉トラブルの影響が消え、35億円の悪化がなくなるだけで利益は戻る。計画の内訳では、回復で24億円、構造改革で28億円が積まれ、合計で営業利益は72億円から110億円に近づく。

第2は戦略事業だ。海外鋼材は東南アジアの需要で売上を3割以上伸ばす計画で、商用車用ばね、安全保障、特殊合金粉末、洋上風力も伸びる。戦略事業の売上は456億円から619億円になる。

第3は資本の動かし方だ。配当の基準づくりと2030年の自己資本比率40%の目標は、財務の改善を後押しする。拠点の整理で、赤字の北米と中国のばねが止血されれば、利益率は大きく変わる。

そのうえ、株価は純資産を大きく下回る。利益が計画の8割でも進めば、割安だと言える。国内鋼材が正常に戻れば、利益の戻りは速い。ばねは、電動化で重くなる車に軽量化の需要が出る。海外は、東南アジアの二輪車・商用車が長く伸びる。小さな会社だが、再建の余地は残っている。

慎重な見方

今の値段は、前の計画が外れたことを忘れたかのように、同じ110億円を見ている。慎重に見るべき点は3つある。

第1は目標の信頼性だ。前の中計は営業利益110億円、ROIC6.5%、ROE8%をすべて外した。今回も同じ110億円の再挑戦で、実力値72億円からの上積みに構造改革28億円を頼る。構造改革は見えやすい数字ほど外れやすい。

第2は国内鋼材の集中だ。溶銑を日本製鉄の高炉に頼るため、トラブルが起きれば自社でどうにもならない。実際に2025年12月の火災で営業利益が35億円削られた。再発すれば、利益は一気に吹き飛ぶ。

第3は稼ぐ力の低さだ。過去12年で営業利益率が5%を超えた期はなく、純損失は4回ある。ばねは自動車メーカーの値下げ要求を受け、鋼材は中国の過剰生産に価格を押さえられる。借金も軽くない。

計画が6割にとどまれば、自己資本利益率は5%台のままで、資本コストを下回る。この姿に高い倍率は付かない。

どちらに重みを置いたか

慎重な見方のほうが強い。実力値72億円という足場は確かだが、そこから110億円までの上積みは過去の実績が支えていない。国内鋼材の単一の高炉への依存と、薄い利益、重い借金は、動かしにくい事実だ。

強気の根拠である海外鋼材やばねの改善は本物だが、母数が小さい。確率は中立に4割を置き、やや悲観と悲観に合わせて35%を寄せた。計画が8割進む筋書きも無視できず、楽観とやや楽観に25%を残した。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した株価時価総額 2,367 円358 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,115 円169 億円)。 今の値に割り戻すと 1,788 円270 億円、今との差 −22.4%、 期待の年率 +4.2%(資本コスト 8.5%)→ やや割高

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 7% 5,189 円785 億円 1,587 円240 億円 +193.8% +11.4% 474 円72 億円
やや楽観 18% 3,578 円541 億円 1,422 円215 億円 +116.8% +8.0% 900 円136 億円
中立 40% 2,644 円400 億円 1,257 円190 億円 +69.1% +5.4% 1,560 円236 億円
やや悲観 23% 893 円135 億円 860 円130 億円 −24.0% −2.7% 403 円61 億円
悲観 12% 805 円122 億円 397 円60 億円 −47.9% −6.3% 144 円22 億円
加重平均100% 2,367 円358 億円1,115 円169 億円 +51.0% +4.2% 3,482 円526 億円

今の株価時価総額 2,306 円349 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。

楽観 7% 楽観:戦略事業が実り、国内鋼材も稼ぐ体質に変わる 利益 65 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 5,189 円785 億円

国内鋼材は高炉が安定し、太径鋼の売価改善が定着する。建機・産機向けの数量は平常に戻り、利益率は 4% に乗る。海外ではインドネシアの増産が当たり、東南アジアの商用車・二輪車の需要が数量を 5 割以上押し上げる。ばねは北米の再建が終わり、商用車用の板ばねと精密ばね部品が伸びる。洋上風力の大型部品と安全保障関連の受注で、機器装置の利益も育つ。営業利益は 150 億円台になり、会社が掲げる 2028 年度の 110 億円を超える。それでも国内の特殊鋼は縮む市場で、自己資本利益率は 9% 弱にとどまる。資本コストには届かず、倍率は上限の近くで止まる。

  • 国内特殊鋼鋼材(室蘭):数量 31.5(自社販売量(万トン))× 価格 27(1 トンあたり売上(万円・受託の加工賃を含む実効単価))→ 売上 836 億円・営業利益 33 億円。数量 31.5 × 単価 26.53、営業利益率 4.0%
  • 海外鋼材(インドネシア):数量 20.0(出荷量(万トン・推定))× 価格 13(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 262 億円・営業利益 39 億円。数量 20 × 単価 13.09、営業利益率 15.0%
  • ばね:数量 11.4(出荷量(鋼材換算の万トン・推定))× 価格 80(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 917 億円・営業利益 55 億円。数量 11.4 × 単価 80.40、営業利益率 6.0%
  • 素形材:数量 1.7(出荷量(万トン換算・推定))× 価格 101(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 171 億円・営業利益 15 億円。数量 1.7 × 単価 100.50、営業利益率 9.0%
  • 機器装置・その他:数量 3.8(取扱重量(万トン換算・推定))× 価格 64(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 244 億円・営業利益 21 億円。数量 3.8 × 単価 64.32、営業利益率 8.5%

倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.07 倍、時価総額 785 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:国内鋼材の売価改善・北米ばねの再建・海外鋼材の増産・洋上風力と安全保障の伸びが、全部そろう必要がある。前の中計も未達だったので低く置く。

やや楽観 18% やや楽観:計画の 8 割を達成し、利益が 120 億円規模になる 利益 46 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,578 円541 億円

会社の計画が 8 割ほど進む。高炉トラブルの影響が消え、国内鋼材は売価改善で黒字を安定させる。北米のばねは 2 拠点体制で採算が合い、中国は縮小で赤字が止まる。海外鋼材と商用車用ばねは計画に近い形で伸びる。精密ばね部品はスマート端末向けの落ち込みがあっても、ほかの用途が埋める。営業利益は 120 億円近くまで増えるが、売上に対する利益率は 5% 台で、過去の最良期には届かない。還元は配当下限と総還元性向 50% の方針を守る。自己資本利益率は 7% 前後で、資本コストを下回る。市場はこの姿を、安定した素材会社として評価する。成長株としては見られない。

  • 国内特殊鋼鋼材(室蘭):数量 30.5(自社販売量(万トン))× 価格 26(1 トンあたり売上(万円・受託の加工賃を含む実効単価))→ 売上 797 億円・営業利益 24 億円。数量 30.5 × 単価 26.14、営業利益率 3.0%
  • 海外鋼材(インドネシア):数量 17.6(出荷量(万トン・推定))× 価格 13(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 230 億円・営業利益 32 億円。数量 17.6 × 単価 13.09、営業利益率 14.0%
  • ばね:数量 10.7(出荷量(鋼材換算の万トン・推定))× 価格 80(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 860 億円・営業利益 43 億円。数量 10.7 × 単価 80.40、営業利益率 5.0%
  • 素形材:数量 1.5(出荷量(万トン換算・推定))× 価格 101(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 151 億円・営業利益 12 億円。数量 1.5 × 単価 100.50、営業利益率 8.0%
  • 機器装置・その他:数量 3.4(取扱重量(万トン換算・推定))× 価格 64(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 219 億円・営業利益 16 億円。数量 3.4 × 単価 64.32、営業利益率 7.5%

倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 541 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:今回の計画(2028 年度に営業利益 110 億円)が 8 割進めば成り立つ。回復の 24 億円と構造改革の 28 億円は実行の裏づけがあるが、前の中計の実績が重いため 2 割弱。

中立 40% 中立:計画は 6 割どまりで、利益は物価分だけ伸びる 利益 34 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,644 円400 億円

国内鋼材は建機・産機の縮小で数量が平常の 1 割弱減り、売価は物価にやや届かない。利益率は 1% 台にとどまる。海外鋼材は着実に伸び、商用車用ばねと精密ばねは横ばいから小幅増になる。北米のばねは再建に時間がかかり、利益の足を引く。特殊合金粉末と防衛・エネルギー関連が数量を押し上げるが、母数が小さく全体の利益は大きく動かない。営業利益は 93 億円。実力値 72 億円に物価の伸びを乗せ、構造改革の効果が国内の縮小で相殺される姿だ。売上に対する利益率は 4% 台前半で、過去 12 年の最良の水準に収まる。自己資本利益率は 5% 台で、資本コストに届かない。

  • 国内特殊鋼鋼材(室蘭):数量 29.5(自社販売量(万トン))× 価格 26(1 トンあたり売上(万円・受託の加工賃を含む実効単価))→ 売上 759 億円・営業利益 11 億円。数量 29.5 × 単価 25.74、営業利益率 1.5%
  • 海外鋼材(インドネシア):数量 18.8(出荷量(万トン・推定))× 価格 13(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 246 億円・営業利益 32 億円。数量 18.8 × 単価 13.09、営業利益率 13.0%
  • ばね:数量 10.3(出荷量(鋼材換算の万トン・推定))× 価格 80(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 828 億円・営業利益 35 億円。数量 10.3 × 単価 80.40、営業利益率 4.2%
  • 素形材:数量 1.4(出荷量(万トン換算・推定))× 価格 101(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 141 億円・営業利益 9 億円。数量 1.4 × 単価 100.50、営業利益率 6.5%
  • 機器装置・その他:数量 3.3(取扱重量(万トン換算・推定))× 価格 64(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 212 億円・営業利益 14 億円。数量 3.3 × 単価 64.32、営業利益率 6.5%

倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 400 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:計画の達成度が 6 割にとどまる筋書きを中心に置く。前の中計は営業利益・ROE・ROIC のすべてで未達、今回も 110 億円という前の目標への再挑戦。国内鋼材が単一の高炉に頼る構造と、事業の分散による利益の薄さも織り込んだ。

やや悲観 23% やや悲観:国内鋼材が足を引き、北米・中国のばねの再建が長引く 利益 18 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 893 円135 億円

国内鋼材で、建機・産機向けが想定より縮み、売価の下落が続く。利益率は 1% まで下がり、固定費の重さが出る。ばねは北米の再建が長引き、中国の整理で特別損失が出る。電動化で軽量化の需要が出る半面、日系メーカーの北米・中国での苦戦が数量を削る。海外鋼材は中国勢の輸出攻勢で売価が伸びない。営業利益は 60 億円台に細り、今の実力値を割る。減損が一部で出て自己資本は伸びない。配当は下限を守るが、自社株買いは出ない。株価は、成長の見込みを失いかけた素材会社として、純資産を大きく割り込む水準で評価される。国内の縮小が戦略事業の伸びを上回る、静かな負けの姿だ。

  • 国内特殊鋼鋼材(室蘭):数量 26.5(自社販売量(万トン))× 価格 25(1 トンあたり売上(万円・受託の加工賃を含む実効単価))→ 売上 656 億円・営業利益 7 億円。数量 26.5 × 単価 24.75、営業利益率 1.0%
  • 海外鋼材(インドネシア):数量 15.6(出荷量(万トン・推定))× 価格 13(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 198 億円・営業利益 24 億円。数量 15.6 × 単価 12.70、営業利益率 12.0%
  • ばね:数量 9.5(出荷量(鋼材換算の万トン・推定))× 価格 78(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 741 億円・営業利益 24 億円。数量 9.5 × 単価 78.00、営業利益率 3.2%
  • 素形材:数量 1.1(出荷量(万トン換算・推定))× 価格 98(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 107 億円・営業利益 5 億円。数量 1.1 × 単価 97.50、営業利益率 4.5%
  • 機器装置・その他:数量 2.9(取扱重量(万トン換算・推定))× 価格 62(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 181 億円・営業利益 10 億円。数量 2.9 × 単価 62.40、営業利益率 5.5%

倍率:資本コスト 8.5%。事業の ROE は 3% 台で k 以下。国内鋼材の赤字すれすれと再建の長期化が続く構造的な負けなので、上限の約 6.8 割の 7.5 倍に置く。稼ぐ力で測り、売れる資産の床は足さない。

確率:高炉・北米・中国のどれかでつまずけば成り立つ筋書きで、起こりうる事柄が多い。過去 12 年で営業赤字が 2 回、純損失が 4 回あった実績から、やや厚めに置いた。

悲観 12% 悲観:高炉由来の特殊鋼とばねの両方が構造的に負ける 利益 −10 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 805 円122 億円

国内で、日本製鉄の室蘭の高炉を使う前提が崩れる。老朽化や再度のトラブルで溶銑の供給が細り、受委託の数量が減って固定費が回らなくなる。建機・産機向けの需要も縮む。ばねは電動車の普及で日系メーカーの北米・中国の生産が落ち、再建は失敗に終わる。中国の特殊鋼・ばねメーカーが東南アジアで値下げを仕掛け、海外鋼材の利益率も下がる。営業利益は赤字に沈み、自己資本は 150 億円ほど毀損する。拠点の閉鎖と減損が相次ぎ、配当は大きく削られる。もはや優良な素材会社ではなく、再建途上の会社として評価される。借金の返済と事業の整理に資金を取られ、成長への投資は止まる。

  • 国内特殊鋼鋼材(室蘭):数量 21.0(自社販売量(万トン))× 価格 24(1 トンあたり売上(万円・受託の加工賃を含む実効単価))→ 売上 499 億円・営業利益 −15 億円。数量 21 × 単価 23.76、営業利益率 -3.0%
  • 海外鋼材(インドネシア):数量 12.0(出荷量(万トン・推定))× 価格 12(1 トンあたり売上(万円))→ 売上 141 億円・営業利益 11 億円。数量 12 × 単価 11.72、営業利益率 8.0%
  • ばね:数量 7.5(出荷量(鋼材換算の万トン・推定))× 価格 72(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 540 億円・営業利益 0 億円。数量 7.5 × 単価 72.00、営業利益率 0.0%
  • 素形材:数量 0.8(出荷量(万トン換算・推定))× 価格 90(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 72 億円・営業利益 0 億円。数量 0.8 × 単価 90.00、営業利益率 0.0%
  • 機器装置・その他:数量 2.6(取扱重量(万トン換算・推定))× 価格 58(1 トンあたり売上(万円・製品混合))→ 売上 150 億円・営業利益 6 億円。数量 2.6 × 単価 57.60、営業利益率 4.0%

倍率:赤字の筋書きなので PBR で置く。床は稼ぐ力ではなく、今の自己資本(487 億円)に 0.25 倍を掛けた形(約 122 億円)。純負債 263 億円を抱え、事業の売却で回収できる額は借金と減損で目減りするとみて、売れる資産は足さない。

確率:国内鋼材の溶銑調達と、ばね事業の構造改革の両方がうまくいかない構造的な負け。全部が重なる確率は高くないが、過去 20 年の最悪(営業利益率 −5.1%)を参考に 12% とした。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

国内特殊鋼鋼材(室蘭)

建設機械・産業機械向けの太い棒鋼が中心。高炉の溶銑から作る特殊鋼で、国内の太径鋼でシェア首位。

数量自社販売量(万トン)価格1 トンあたり売上(万円・受託の加工賃を含む実効単価)売上営業利益
今 2026/03 28.0 20 554 −15
10 年後 中立 29.5 26 759 11

取り方:25 年度は日本製鉄の室蘭高炉の休止(2025 年 12 月〜2026 年 4 月)で販売量が落ちた。会社の 27/3 期の販売計画 31.7 万トン(質問者の言及)を平常とみて、25 年度は約 28 万トンの推定。特殊鋼鋼材の売上は 25/3 期に 1,596 億円の 47.7%(約 760 億円)、うち国内が約 8.5 割。そこから海外分を引いた残りを販売量で割り、実効単価 19.8 万円を置いた推定。営業利益 −15 億円は高炉トラブルの 35 億円の悪化を含む筆者の推定(開示の区分は特殊鋼鋼材・ばね・素形材・機器装置の 4 つで、ここは筆者の組み替え)。

海外鋼材(インドネシア)

インドネシアの電炉メーカー JATIM。商用車・自動車・二輪車向けの丸鋼。東南アジアで唯一の製鋼一貫の特殊鋼メーカーとされる。

数量出荷量(万トン・推定)価格1 トンあたり売上(万円)売上営業利益
今 2026/03 13.0 9.77 127 21
10 年後 中立 18.8 13 246 32

取り方:会社の中計では、海外鋼材の 25 年度の売上は 127 億円、営業利益は 21 億円。出荷量は開示がないため、鋼材の単価を 1 トン 10 万円弱と見て 13 万トンと置いた推定。

ばね

自動車の足回りのコイルばね・スタビライザー、商用車の板ばね、建機・鉄道の太巻ばね、電子機器向けの精密ばね部品。

数量出荷量(鋼材換算の万トン・推定)価格1 トンあたり売上(万円・製品混合)売上営業利益
今 2026/03 10.6 60 636 30
10 年後 中立 10.3 80 828 35

取り方:ばねは 25/3 期に連結売上の 38.7%(約 620 億円)。26/3 期は精密ばねと国内ばねが好調で、期初予想を上回る見通しと会社が説明した。出荷量は開示がなく、ばね製品の単価を鋼材換算 1 トン 60 万円前後とみて 10.6 万トンと置いた推定。営業利益 30 億円は、戦略事業の商用車用ばね(16 億円)・精密部品(28 億円)に、赤字の北米・中国の自動車ばねを差し引いた筆者の推定。

素形材

ターボチャージャー用の精密鋳造品、特殊合金粉末(電子部品のインダクタ向け)、鋳鋼品、機械加工品。

数量出荷量(万トン換算・推定)価格1 トンあたり売上(万円・製品混合)売上営業利益
今 2026/03 1.2 75 90 8
10 年後 中立 1.4 101 141 9

取り方:素形材は 25/3 期に連結売上の 5.4%(約 86 億円)。精密鋳造 3 割・特殊合金粉末 3 割・鋳鋼 1 割・加工品 1 割・材料 2 割という内訳から、出荷量 1.2 万トン換算・混合単価 75 万円と置いた推定。営業利益 8 億円は筆者の推定。

機器装置・その他

三菱長崎機工の大型鍛圧機械、洋上風力関連部品、防護装備品、磁力選別機、鉄構・圧力容器。流通などその他を含む。

数量取扱重量(万トン換算・推定)価格1 トンあたり売上(万円・製品混合)売上営業利益
今 2026/03 2.9 48 139 10
10 年後 中立 3.3 64 212 14

取り方:機器装置は 25/3 期に連結売上の 6.1%(約 97 億円)、その他 2.1%(約 34 億円)。大型製品の重量換算で 2.9 万トン、混合単価 48 万円と置いた推定。26/3 期の受注は 120 億円規模の予定と会社が説明。営業利益 10 億円は筆者の推定。

リスクと懸念

国内鋼材が単一の高炉に頼る

室蘭の鋼材は、日本製鉄が操業する高炉の溶銑が主原料だ。2025年12月の火災で高炉が約4カ月止まり、営業利益は35億円悪化、復旧費用の特別損失は9億円に上った。老朽化や再発で供給が細れば、自社の努力では補えない。

計画の未達が続いてきた

前の中計は営業利益110億円、ROIC6.5%、ROE8%のすべてが未達だった。今回の計画も同じ営業利益110億円への再挑戦で、実力値72億円に構造改革28億円を積む。実行が遅れれば、倍率の前提が崩れる。

北米・中国のばねの再建

北米は3拠点を2拠点に絞り、2027年度までの再建完了を目指す。中国は最適化として縮小や提携を探る。日系メーカーの北米・中国での苦戦が続けば、再建後の数量が足りず、減損や追加の特別損失が出る。

自動車と建機の景気に弱い

ばねも鋼材も、自動車・商用車・建機の景気に左右される。2009年や2020年のような世界不況では、赤字に沈みやすい。過去の純損失は4期あり、2020年3月期は純損失141億円で自己資本が3割減った。

借金の重さと金利

純有利子負債は263億円で、時価総額の7割を超える。借り換えで金利が上がると、利益が毎年数億円削られる。営業利益に対する支払利息の比は薄く、景気の谷で財務の余裕が小さくなる。

戦略事業の規模が小さい

洋上風力や特殊合金粉末は伸びるが、2028年度でも売上は数十億円規模にとどまる。精密部品は2025年度の大型案件の反動で、計画では利益が減る。国内鋼材の落ち込みを埋めるには時間がかかる。

中国勢の輸出攻勢

世界の鉄鋼の需給ギャップは2026年に6億トンを超える見通しだ。中国の輸出が増えれば、東南アジアの鋼材の売価が下がり、海外鋼材の高い利益率が崩れる。ばねも中国勢が台頭している。

今後の分かれ目

室蘭の高炉が再び止まる、または日本製鉄が高炉の運用を見直す
国内鋼材の数量が戻らず、利益は100億円どころか黒字の維持も危うくなる。悲観の筋書きに寄る。
北米のばねが2027年度までに黒字化し、中国の整理も終わる
ばねの利益率が5%に近づき、全社の営業利益は110億円の7割に届く。やや楽観の筋書きが現実味を帯びる。
国内鋼材の売価改善が定着し、販売量が31万トンを超える
鋼材の利益が回復し、計画の回復の24億円が確認できる。中立より上の筋書きに寄る。
2028年度の営業利益が100億円を大きく下回る
計画が二度続けて外れたことになる。構造改革の実行力が疑われ、中立よりも慎重な見方が強まる。
板ばねの買収が実現する
規模と価格次第で、戦略事業の拡大か、借金の増加かが決まる。実現した条件を見るまで判断しない。
世界的な景気後退で、自動車・建機の生産が3割以上落ちる
固定費の重さで赤字に沈み、配当が削られる。やや悲観から悲観の筋書きに寄る。

見ておくもの

  • 国内鋼材の販売量(27/3期31.7万トン計画)と売価、室蘭の高炉の操業状況
  • ばねの営業利益と、北米・中国の再建の進み具合
  • 海外鋼材(JATIM)と商用車用ばね、精密部品、特殊合金粉末の売上と利益
  • 中計の営業利益(2028年度110億円)と自己資本利益率の推移
  • 配当(株主資本配当率3.5%)と資産売却、板ばねの買収の発表

倍率と資本コストの決め方

今の株価には寄せていない。先に5つの区分ごとに数量(万トン)と単価(物価並み、国内鋼材は物価にやや届かず)で10年の売上と利益を積み、そこから倍率を決めた。資本コストは8.5%(基本7.5%に品質+1.5%)で、中立の自己資本利益率は5%台とkを下回るため、倍率は1÷k(11.1倍)が上限。中立〜楽観はその7.7〜9割、やや悲観は稼ぐ力で測った。悲観は赤字なので今の自己資本に0.25倍を掛けた。含み益と政策保有株は開示で確かめられず、価値に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.2→12.07 倍・やや楽観 PER 9.6→11.76 倍・中立 PER 8.5→11.76 倍)。

資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足した 9.0%。大同特殊鋼(8.5%)より借金が重く利益が薄いため高く、愛知製鋼(8.75%)よりやや高く置いた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。

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分析日 2026-10-16