結論
パウダーテックは、コピー機や複合機の中でトナーを運ぶ「キャリア」と呼ばれる鉄の粉を作る会社だ。筆者の結論は「割高」だ。技術は確かだが、紙の印刷は世界で細り続け、128億円の自己資本は3%前後しか稼いでいない。
売上の9割がキャリアなどの機能性材料で、残りは食品の鮮度を保つ脱酸素剤だ。買い手は京セラ、富士フイルム、コニカミノルタ、キヤノン系などの事務機メーカーで、上位5社で売上の4分の3を占める。
かつては営業利益率が15%を超えた。だがコロナ禍で在宅勤務が広がり、印刷の量が一段落ちた。その後は5%前後に沈んだままだ。新しい機能性材料で埋めようとしているが、まだ柱にはなっていない。
株主は南悠商社と三井金属の2社で7割強を握る。手元の現金は三井金属のグループに預けられ、少数株主に戻る道は細い。
帳簿の上では割安に見える。だが、稼がない資本に帳簿の値は払えない。新しい材料が柱に育つ証拠が出るまで、筆者は今の値段でも高いと考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、パウダーテックは「堅い財務を持つが、資本が稼がない会社」だ。10年後もコピー機は残るが、刷られる紙は今より少ない。キャリアの需要はゆっくり細る。
オーナー利益は年に数億円にとどまる。工場の更新と研究に資金が要り、残りは配当で出ていく。積み上げた自己資本128億円は、資本コストの半分も稼いでいない。帳簿の上の資産は、株主にとって額面ほどの値打ちが無い。
安全域があるように見えるのは、時価総額が自己資本の6割しかないからだ。だが、稼がない資本に帳簿の値を払う理由は無い。現金も大株主の手の内にある。
筆者は、新しい材料が利益の柱に育つ証拠が出るまで、この会社に高い値段を払う必要は無いと考える。大株主が再編に動けば少数株主に出口が開くが、それを当てにして買うのは投資ではなく賭けだ。
何で稼ぐ会社か
事業は2つある。主力の機能性材料は、電子写真用のキャリアと、新しい用途の磁性材料だ。2026年3月期の売上は82億円、セグメント利益は15億円だった。もう1つの品質保持剤は、菓子や食品の袋に入れる脱酸素剤で、売上10億円の小さな事業だ。
キャリアは、フェライトという酸化鉄の焼き物の粒だ。トナーと混ぜて現像剤にし、静電気でトナーを紙の上に運ぶ。粒の大きさや磁力、表面の樹脂の被膜で、画質と寿命が決まる。事務機メーカーごとに仕様が違い、機種の開発の段階から一緒に作り込む。
顧客は京セラドキュメントソリューションズが19%、富士フイルムが16%、コニカミノルタ、上野キヤノンマテリアル、エトリアがそれぞれ13〜14%だ。少数の大口に売る構造で、1社の方針が数字を動かす。
原料の一部は大株主の三井金属と南悠商社から買う。工場は千葉県柏市にある。従業員は連結で262名だ。
売上は2018年3月期の109億円を山に、コロナ禍の2021年3月期に77億円まで落ち、今は90億円前後で足踏みしている。値上げで単価は戻したが、量は戻っていない。脱酸素剤は土産物や菓子の需要に左右され、訪日客の戻りで持ち直した年もあった。
優良さと弱いところ
強みは、事務機メーカーと機種ごとに作り込んだ仕様と、長年の量産の実績だ。一度採用されれば、その機種が売られる間は注文が続く。キャリアは消耗品なので、機械が動く限り交換の需要もある。
弱みはそれを上回る。第1に、市場そのものが縮んでいる。在宅勤務とペーパーレスで、事務所の印刷量は戻らない。第2に、顧客が少なく強い。事務機メーカーは統合を重ね、値下げを求める力が増した。第3に、全社の費用が重い。セグメント利益15億円のうち、10億円が本社と研究の費用で消える。
その結果、ROEは過去10年の中央値で5.5%、直近は3%台だ。資本コストを大きく下回り、積み上げた自己資本が価値を生んでいない。
財務は堅く、自己資本比率は8割を超える。だが、堅いだけでは株主の価値は増えない。大株主の2社が経営に深く関わり、少数株主の声が届きにくい点も弱みだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電子写真、つまりコピー機やレーザープリンターの印刷量は、世界で緩やかに減っている。在宅勤務の定着と電子化で、事務所の紙は戻らない。複合機の台数も先進国では頭打ちで、新興国の伸びがそれを埋めきれない。
事務機メーカーの側でも再編が進む。リコーと東芝テックは生産を合弁のエトリアに統合し、富士フイルムは米ゼロックスとの関係を解消して自社ブランドで売る。メーカーが減り、部材の調達は集約される。キャリアの買い手の交渉力は強まる一方だ。
キャリアの作り手は世界でも数社しかない。国内ではDOWAグループや戸田工業が同じ磁性粉を手がける。中国勢の追い上げもあり、汎用の仕様では値段の勝負になる。
パウダーテックは、キャリアで培った粉の技術を、半導体や電子部品向けの磁性材料、電磁波を吸収する材料などに広げようとしている。これらは伸びる市場だが、半導体の景気で振れ、価格競争も激しい。筆者は、10年でキャリアの減少を埋めるのは難しいと見る。
脱酸素剤は、菓子や土産物の需要で季節と訪日客の波を受ける。市場は成熟しており、三菱ガス化学など大手の存在が大きい。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。中期計画は自己資本に対する配当の比率、つまりDOEを3%以上とする。2026年3月期は記念配当を含めて約3.5億円を払い、純利益の8割を超えた。利益が少ないので、配当の額は自己資本の大きさで決まる形だ。
純現金は35億円あり、時価総額の半分に近い。その多くは三井金属のグループの資金管理の仕組みに預けている。大株主の2社が7割強を持つ以上、この現金が自社株買いなどで少数株主に戻る見込みは小さい。
買収の歴史は無い。逆に、三井金属が関連会社を整理する流れの中で、完全子会社化や他社への売却が起きる可能性はある。その場合は少数株主に値段が付くが、筆者は価値の計算には入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿の上では、時価総額は自己資本の6割で、純現金だけで時価総額の半分近くある。財務は鉄壁で、倒れる心配はまず無い。
キャリアの市場は縮むが、作り手も減っている。残った数社で需要を分け合えば、値段は崩れにくい。パウダーテックは事務機メーカーと長く付き合い、機種ごとの作り込みで替えが利かない。
中期計画は2030年度にROE8%を目指す。半導体や電子部品向けの磁性材料が育てば、2018年3月期のような15%超の利益率に近づく余地がある。全社費用の削減も効く。
大株主の三井金属が関連会社を整理する時、少数株主にはプレミアムが付く可能性がある。DOE3%の配当で、待つ間の取り分も確保されている。
脱酸素剤も、訪日客と菓子の需要で地味に稼ぐ。2つの事業とも消耗品で、機械や商品が売れる限り注文が続く。帳簿の値の6割という今の値段は、最悪の筋書きに近い評価だ。印刷の減少がゆるやかなら、利益は今の水準を保つだけでも見直される。
慎重な見方
紙の印刷は戻らない。コロナ禍のあと営業利益率は5%前後に沈み、2027年3月期の会社予想はさらに下がる。キャリアの需要は年に数%ずつ細り、10年で2〜3割減る。
顧客は少なく、再編で強くなった。エトリアのような統合の受け皿が調達を集めれば、値下げの圧力は増す。中国勢の追い上げもある。
新しい材料は半導体の景気で振れ、価格競争も激しい。10年でキャリアの減少を埋める柱になる保証は無い。中期計画の目標は過去にも届いていない。
そして資本が稼がない。ROE3%の会社の自己資本に帳簿の値を払うのは誤りだ。現金は三井金属のグループに預けられ、大株主の2社が7割強を握る。少数株主が使い道を決める力は無い。
全社費用の10億円も重い。売上が細っても本社と研究の費用は簡単には減らず、人件費は上がり続ける。帳簿の値の6割という値段は、安いのではなく、稼がない資本への妥当な割引にすぎない。大株主の再編は、起きるかどうかも値段も読めない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。印刷の減少は構造的で、新しい材料が埋める証拠はまだ無い。財務の堅さは倒れない理由にはなるが、価値を生む理由にはならない。中立を利益が横ばいの形に置き、悲観側をやや厚くした。楽観は新材料の成功と全社費用の削減が重なる時に限った。大株主の再編による出口は、起きても値段が読めないため、確率の寄せ方には使わなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,205 円64 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,242 円36 億円)。 今の値に割り戻すと 1,834 円53 億円、今との差 −29.5%、 期待の年率 +2.9%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,051 円147 億円 | 1,716 円50 億円 | +160.3% | +10.0% | 541 円16 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,188 円93 億円 | 1,441 円42 億円 | +78.0% | +5.9% | 926 円27 億円 |
| 中立 | 40% | 2,131 円62 億円 | 1,304 円38 億円 | +32.1% | +2.8% | 1,374 円40 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,053 円31 億円 | 1,029 円30 億円 | −19.9% | −2.2% | 458 円13 億円 |
| 悲観 | 10% | 789 円23 億円 | 686 円20 億円 | −43.3% | −5.5% | 148 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,205 円64 億円 | 1,242 円36 億円 | +32.6% | +2.9% | 3,447 円100 億円 |
今の株価時価総額 2,600 円76 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:新材料が育ち、利益率が過去の山に近づく 利益 10 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 5,051 円147 億円
半導体や電子部品向けの磁性材料が、10年で売上の2割を超える柱に育つ。キャリアの減少をほぼ埋め、機能性材料の販売量は1割弱の減少にとどまる。
作り手が減ったキャリアの市場では値段が保たれ、単価は物価並みに上がる。新材料は値段の高い品で、セグメントの利益率は24%に上がる。全社費用は抑えられる。
営業利益は14億円近くまで戻り、ROEは7%に届く。それでも資本コストには少し届かない。大株主の下で現金は積み上がったままだ。脱酸素剤も訪日客の需要で伸び、利益を少し押し上げる。全社費用の伸びも抑えられる。
- 機能性材料(電子写真用キャリア・新規機能性材料):数量 23.8(販売量(千トン。推定))× 価格 4.38(千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 104 億円・営業利益 25 億円。23.75 千トン × 4.38 億(物価 1.34 倍)、利益率 24%
- 品質保持剤(脱酸素剤):数量 12.0(出荷個数(億個。推定))× 価格 1.30(億個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。12 億個 × 1.30 億、利益率 8%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 147 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体向けの磁性材料が柱に育ち、キャリアの減少をほぼ埋める筋書き。中計の目標も過去に届いていないので 1 割未満。
やや楽観 20% やや楽観:新材料が一部を埋め、利益は少し戻る 利益 6 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,188 円93 億円
キャリアの販売量は10年で1割強減るが、新材料が一部を埋める。事務機メーカーの再編が一段落し、値下げの圧力は和らぐ。それでも単価は物価に届かず、10年で1.25倍にとどまる。
セグメントの利益率は21%で、全社費用を引いた営業利益は7億円台に戻る。脱酸素剤は訪日客の土産物の需要で少し伸びる。
配当はDOE3%で続き、自己資本はほぼ横ばいだ。ROEは4%台で、資本コストの半分にとどまる。中期計画の2030年度のROE8%には届かない。新材料は半導体の景気で振れ、年によって利益の幅は大きい。筆者はこれを上振れの限界と見る。
- 機能性材料(電子写真用キャリア・新規機能性材料):数量 22.0(販売量(千トン。推定))× 価格 4.09(千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 90 億円・営業利益 19 億円。22 千トン × 4.09 億(1.25 倍)、利益率 21%
- 品質保持剤(脱酸素剤):数量 11.0(出荷個数(億個。推定))× 価格 1.30(億個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。11 億個 × 1.30 億、利益率 7%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 93 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の売上目標に近い形で、新材料が減少の一部を埋める筋書き。
中立 40% 中立:印刷の減少が続き、利益は細いまま 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,131 円62 億円
紙の印刷は10年で2割ほど減り、キャリアの販売量も同じだけ細る。新材料は伸びるが、半導体の景気で振れ、減少を埋めきれない。事務機メーカーの値下げ要求で、単価は物価に届かず1.25倍にとどまる。
セグメントの利益率は今と同じ19%前後を保つ。だが、人件費の上がる全社費用が重く、営業利益は4億円前後にとどまる。手元の現金の利息がいくらか利益を支える。
配当はDOE3%で利益とほぼ同じ額を払い、自己資本は横ばいだ。ROEは3%弱で、資本コストに遠く届かない。株主の価値は増えず、大株主の再編の判断を待つ会社になる。
- 機能性材料(電子写真用キャリア・新規機能性材料):数量 20.0(販売量(千トン。推定))× 価格 4.09(千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 82 億円・営業利益 16 億円。20 千トン × 4.09 億(1.25 倍)、利益率 19%
- 品質保持剤(脱酸素剤):数量 10.0(出荷個数(億個。推定))× 価格 1.30(億個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。10 億個 × 1.30 億(物価 1.34 倍)、利益率 6%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 62 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:印刷量の緩やかな減少と、新材料の小さな伸びが続く、もっとも起こりやすい形。
やや悲観 22% やや悲観:顧客の統合で値下げが進み、利益はほぼ消える 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,053 円31 億円
事務機メーカーの統合がさらに進み、調達は数社に集まる。値下げの要求が強まり、単価は10年で1.1倍しか上がらない。キャリアの販売量は3割減る。
セグメントの利益率は17%に下がり、全社費用を少し削っても営業利益はほぼゼロになる。利益は手元の現金の利息だけで支えられる。
配当は減り、自己資本は少しずつ削れる。価値は稼ぐ力ではなく、純現金と工場の土地に頼るしかない。その現金も大株主の手の内にあり、少数株主には半分ほどの値打ちしか無い。脱酸素剤も大手との販売競争で利益が薄くなる。研究の費用も削られ、次の柱は育たない。
- 機能性材料(電子写真用キャリア・新規機能性材料):数量 17.5(販売量(千トン。推定))× 価格 3.60(千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 11 億円。17.5 千トン × 3.60 億(1.10 倍)、利益率 17%
- 品質保持剤(脱酸素剤):数量 10.0(出荷個数(億個。推定))× 価格 1.20(億個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。10 億個 × 1.20 億、利益率 3%
倍率:稼ぐ力がほぼ消えるので PBR で置く。今の自己資本 128 億に 0.24 倍の約 31 億で、床の資産(純現金 35 億×戻り方 0.5 と工場・土地の税後)に合わせた。全社費用は削減して 11 億。
確率:事務機メーカーの再編で値下げが進み、営業利益がほぼゼロになる筋書き。直近の予想が減益なので中立に次ぐ重さ。
悲観 10% 悲観:キャリアの需要が半減し、赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 789 円23 億円
在宅勤務と電子化がさらに進み、事務所の印刷量は10年で半分になる。中国の作り手が値段で攻め、単価は10年で上がらない。キャリアの販売量は半分に減る。
工場の稼働が落ち、固定費が重くのしかかる。全社費用を削っても赤字が続き、配当は細る。新材料も育たず、会社は縮小と工場の集約を迫られる。
価値は純現金と土地に頼るしかないが、現金は大株主の下にあり、少数株主には半分ほどしか届かない。三井金属が整理に動けば値段が付くが、それは希望であって計算の土台にはならない。脱酸素剤だけでは全社費用をまかなえない。最後は工場の集約と人員の削減に向かう。
- 機能性材料(電子写真用キャリア・新規機能性材料):数量 12.5(販売量(千トン。推定))× 価格 3.27(千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 4 億円。12.5 千トン × 3.27 億(価格は据え置き)、利益率 10%
- 品質保持剤(脱酸素剤):数量 9.0(出荷個数(億個。推定))× 価格 1.10(億個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。9 億個 × 1.10 億、利益率 2%
倍率:赤字なので PBR で置く。今の自己資本 128 億に 0.18 倍の約 23 億で、床の資産(純現金 35 億×戻り方 0.5 と土地の税後の一部)まで。全社費用は削減して 10 億。
確率:印刷の急減と中国勢の値下げが重なる構造的な負け。紙の減少が速い世界では起こりうるので 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
機能性材料(電子写真用キャリア・新規機能性材料)
フェライトの粒に樹脂を被せたキャリアと、電子部品・半導体向けの磁性材料。
| 数量販売量(千トン。推定) | 価格千トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 3.27 | 82 | 15 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 4.09 | 82 | 16 |
取り方:有報のセグメント売上 81.7 億を、キャリアの平均単価を トンあたり 300 万円台(樹脂被覆品の推定)と置いて約 2.5 万トン相当と推定。数量の開示は無い。営業利益はセグメント利益 15.2 億(全社費用の前)。
品質保持剤(脱酸素剤)
食品の袋に入れる脱酸素剤と酸素検知剤。
| 数量出荷個数(億個。推定) | 価格億個あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 0.97 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 1.30 | 13 | 1 |
取り方:セグメント売上 9.7 億を 億個あたり 1 億円弱と置いて約 10 億個と推定。営業利益はセグメント利益 0.48 億。
リスクと懸念
印刷量の構造的な減少
在宅勤務と電子化で、事務所の印刷量は戻らない。キャリアは消耗品だが、印刷が減れば交換も減る。年に数%の減少が10年続けば、販売量は2〜3割減る。
顧客の集中と再編
上位5社で売上の4分の3を占める。リコーと東芝テックの合弁のエトリアのように、事務機メーカーの統合で調達が集まれば、値下げの圧力と取引の打ち切りの危険が増す。
全社費用の重さ
セグメント利益15億円のうち10億円が本社と研究の費用で消える。売上が減っても費用は簡単には減らず、人件費の上昇で営業利益が圧迫される。
新材料の不確かさ
半導体や電子部品向けの磁性材料は、景気で需要が大きく振れ、価格競争も激しい。キャリアの減少を埋める柱に育つかはまだ見えない。
大株主の支配
南悠商社と三井金属の2社で7割強を握る。現金の使い道、配当、再編の判断は少数株主には決められない。完全子会社化の値段も大株主の都合で決まる。
脱酸素剤の競争
脱酸素剤は成熟した市場で、大手の三菱ガス化学などとの販売競争が激しい。訪日客や季節の需要で売上が振れる。
今後の分かれ目
- 新規機能性材料の売上が全社の2割を超えて開示されたら
- キャリアの減少を埋める柱が見え、やや楽観に寄せる。
- 営業利益率が2期続けて3%を割ったら
- 全社費用の重さが利益を消している証拠で、やや悲観に寄せる。
- 大口顧客の1社が取引を縮めたら
- 販売量が一気に1割以上減り、悲観の確率を上げる。
- 三井金属が完全子会社化や持分の売却を発表したら
- 少数株主に値段が付く。価値の計算とは別に、株主の出口になる。
- 純現金を使った自社株買いや特別配当が出たら
- 現金が少数株主に戻る証拠で、戻り方を引き上げる材料になる。
見ておくもの
- 機能性材料のセグメント利益率
- 新規機能性材料の売上の開示
- 上位顧客の売上比率の変化
- 全社費用の推移
- 三井金属・南悠商社の持株と方針
- DOE と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
ROE が k を大きく下回るので、PER の上限 1÷k(11.4 倍)より下で置き、悲観側は今の自己資本に掛ける PBR を床の資産(純現金×戻り方 0.5 と土地の税後)から決めた。今の PBR 0.6 倍や同業の値付けは根拠にしていない。余った現金 25 億は戻り方 0.5 で足した。リースは小さく新基準の影響は軽微。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.12 倍・やや楽観 PER 9.5→12.12 倍・中立 PER 9→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。