結論
日本鋳造は、大型の鋳鋼品と、温度が変わっても伸び縮みしない独自合金LEXをつくる会社だ。川崎に工場を持ち、JFEスチールが36%を持つ。筆者の結論は、今の値段は10年の価値に対してかなり高い、というものだ。
最大の理由は、稼ぐ力の低さだ。自己資本は117億円あるのに、営業利益は4億円台で、ROEは資本コストの半分にも届かない。時価総額は自己資本の4割だが、これは割安ではなく、資産が稼げていないことの値付けだと筆者は読む。
追い風もある。AI向けの半導体装置の鋳鋼品の受注が2025年度の下期に大きく増え、受注残は売上の7割にのぼる。ただ半導体は山と谷が深く、2025年10月には関税の影響で予想を引き下げたばかりだ。
見どころは、LEXが半導体の検査装置で標準材料になれるかどうかだ。そうなれば、鋳造の会社から材料の会社へ、評価が変わりうる。今はまだ、売上の2割に満たない小さな分野だと見る。もうひとつの論点は、JFEスチールが36%を持つ点だ。親会社筋が大株主にいる以上、稼いだ現金が少数株主へ厚く戻るとは限らない。安さの理由は、実はここにもある。そのうえで、強い受注残と独自材料という二つの好材料は、10年の価値にどこまで届くかを丁寧に確かめた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「割安に見える資産株」と「材料で化ける会社」の二つの顔を持つ。どちらも、今は証拠が足りない。
資産株としては、時価総額が自己資本の4割という点が目を引く。ただ自己資本の大半は、川崎の工場の土地と古い鋳造設備だ。これらは稼ぎのために使われているが、稼ぎが小さいため価値に直結しない。土地の時価は開示がなく、評価には入れていない。売るには移転と土壌対策が要り、JFEが同意するかも読めない。
材料として化ける可能性は、LEX-ZEROにある。世界でここだけの合金なら、値決めができ、利益率は大きく上がる。ただ筆者の推定で売上の2割に満たない分野で、顧客は検査装置メーカーに限られる。
本当に見るべきは、投下資本に対する稼ぎだ。資本コストを下回り続けるなら、ためた利益は額面より小さい価値しかない。筆者は、LEXが標準材料になるのを確かめるまで、安全域はないと見る。確かめる前の期待に高い値は払わない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは大きく二つある。1948年設立の鋳造会社で、2026年3月期の売上123億円のうち、素形材が55%、エンジニアリングが43%を占める。
素形材は、溶かした鋼を型に流して固めた鋳鋼品や鋳鉄品だ。半導体製造装置の骨格部品、超大型の油圧ショベルなど鉱山・建機の部品、ごみ焼却炉の火格子、発電設備の車室、製鉄設備の部品まで幅広い。独自の低熱膨張合金LEXもここに入る。LEXは温度が変わっても伸び縮みしにくく、ウエハやフォトマスクの検査装置、プローブカード、宇宙航空に使われる。販売の窓口はJFE商事エレクトロニクスだ。
エンジニアリングは、橋桁を支える支承、桁をつなぐ伸縮装置、建築の柱脚を設計して製造する。首都高速道路との共同研究で、耐震補強の技術も開発した。新設から保全へ需要が移るなか、補強ブロックなどを増やしている。受注は国や高速道路会社など公共性の高い発注先が多く、景気には左右されにくい。
工場は川崎と福山の二つだ。川崎は自社の土地に建ち、福山の土地は借りている。2023年に操業を終えた池上地区は、JFEから借りた土地で、返還に向かっている。
2025年7月に子会社のダットを吸収合併し、今は単体で決算を出している。従業員は約290人で、1920年創業の老舗にあたる。顧客は鉄鋼、プラント、産業機械、建設機械、橋梁、建築、自動車と広いが、顧客別の売上比率は開示されていない。受注残は2026年3月末で約91億円と、年間売上の7割強にのぼる。
優良さと弱いところ
優良さは「ニッチな材料を持つ普通の鋳造会社」と見る。強みは二つ、弱みは三つある。
一つ目の強みは、大型品を一つずつ鋳造する腕だ。顧客の仕様ごとに型をつくり、品質を保証する仕事は、新規に参入しにくい。二つ目は、LEX-ZEROだ。世界で初めてとされるゼロ熱膨張の合金で、特許を持つ。航空宇宙や半導体の精密装置で、温度の影響を消せる意味は大きい。
弱みの一つ目は、値決めだ。鋳造品は顧客の仕様で決まり、価格を決める力は弱い。二つ目は、波の大きさだ。半導体と鉱山機械の受注は景気で大きく振れ、過去20年の営業利益率は赤字から10%超まで動いた。三つ目は、資本効率だ。ROEの中央値は5%に届かない。自己資本の4割近くが川崎の土地に固定され、稼ぎに結びついていない。
経営は中期計画でROS・ROE10%を掲げ、スマートファクトリー化や3Dプリンターで利益率を上げようとしている。ただ目標との距離は大きい。JFEが36%を持つため、経営の独立性には限りがある。会社自身も、PBR1倍に向けたROEの改善を課題に挙げている。現金を使う場所を見つけるより先に、既存の資産で稼ぐ力を上げることが先決だと筆者は考える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
鋳造の世界は、国内では縮み、海外では中国に押されている。国内の鋳造品の需要は人口減と製造業の海外移転で中長期に減ると会社自身も認めている。鉄鋼各社の設備集約も続き、JFEスチールの京浜地区は上工程を休止した。
成長の芽は半導体にある。AI向けの投資で、半導体製造装置の世界の出荷が増え、日本鋳造にも2025年度の下期に受注が大きく戻った。ただ半導体装置の投資は山と谷が深い。関税、中国の自給化、顧客の在庫調整でいつでも止まりうる。
鉱山機械は、鉱山投資の波を受ける。2025年10月に、関税の影響で鉱山機械向けの受注が未達になったことが示すように、景気の影響が大きい。
橋梁と建築は国内で堅い。モノレール軌道や高速道路向けの支承、物流倉庫向けの柱脚が動いている。ただ新設は減り、保全と補強へ中身が移る。
同業では、清本鉄工と業務提携を結び、川金ホールディングスと協業を検討している。鋳造業界の再編は、売上を伸ばすより固定費を下げる方向で進む。国内の鋳造所は人手不足と電気代の上昇にも悩まされ、廃業も続く。残った会社には、供給網が細るぶん値上げの余地が出る面もある。
半導体装置向けの鋳鋼品は、世界の装置メーカーが日本の鋳造所から買うことが多い。精度と品質の実績が重視され、新規の鋳造所は入りにくい。一方で中国は装置の国産化を急いでおり、鋳造品も地場へ切り替える動きが出てくる。AI向けの需要が強い間は日本の鋳造所も忙しいが、その後に在庫調整が来る歴史は繰り返されてきた。
資本政策と M&A
資本政策は守りで、配当性向は3割程度が方針だ。ただ利益が小さい年は配当が利益を上回り、実際の性向は年によって大きく振れる。自己株式の取得や株主優待はない。
大株主のJFEスチールは議決権の36%を持ち、日立建機も2012年から出資している。JFEは販売先であり、銑鉄や鋼屑の仕入先でもある。経営が親の事情に引っ張られやすい構造だ。このため、余った現金の戻り方は0.5で見る。
現金はほとんど余っていない。純有利子負債は約18億円で、設備投資は老朽更新が中心だ。設備投資は2026年度に約5.6億円を計画し、国内最大級の金属3Dプリンターも導入する。
2025年7月に子会社のダットを吸収合併し、受取配当が一時的に利益を押し上げた。2026年3月期の純利益は、池上地区の減損と撤去費用で縮んだ。買収の確率は、10年で2割強と試算されている。JFEが持分を高めて完全子会社にする道筋はありうるが、その場合の価格は少数株主に有利とは限らない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資産の厚さと材料の希少さの両方が効く。自己資本は時価総額の2倍以上あり、川崎の土地の時価は帳簿を大きく上回る可能性がある。AI向けの半導体投資は10年続く構造的な流れで、受注残は売上の7割にのぼる。
LEX-ZEROは、ウエハやフォトマスクの検査装置で温度の影響を消せる世界でも珍しい材料だ。JFE商事エレクトロニクスが窓口を持ち、合金の設計から加工、検査までを一括で提供する体制もある。大手装置メーカーに採用されれば、鋳造の会社から材料の会社へ評価が変わる。
川崎の工場は金属3Dプリンターとロボットで生産性が上がり、稼働が戻れば利益率は10%に近づく。押湯切断ロボットは適用率が7割を超え、今期中に9割をめざす。人手不足の時代に、省人化の投資が先行している点は評価できる。中期計画の目標であるROS・ROE10%は、遠いが無理な数字ではない。受注残が厚いので、今期は稼働が戻る。
鋳造業界は再編が進み、清本鉄工や川金ホールディングスとの協業も始まった。固定費を下げながら、競合が減る流れだ。国内の鋳造所が廃業で減るなか、技術力のある会社が残れば、値上げの交渉力も戻る。
慎重な見方
稼ぐ力の低さが、すべてを打ち消す。過去12年の営業利益率の平均は3〜4%台で、ROEの中央値は5%に届かない。自己資本117億円のうち、半分以上は川崎の土地と古い設備に固定されており、売って株主に戻せる資産ではない。
半導体は山と谷が深い。2025年10月に関税の影響で予想を引き下げた実績が、波の大きさを示す。今の受注残は山の入り口にすぎず、数年後の谷で利益は元に戻る。
国内の鋳造品の需要は縮み、JFEの京浜地区の休止で製鉄向けは減っている。大株主のJFEは販売先でもあり、価格交渉で強い立場にない。
LEXも希少な材料だが、売上の2割に満たない(筆者の推定)。顧客は検査装置メーカーに限られ、採用の決定は装置の世代交代を待つ。会社の中期計画は、ROEを10%まで上げるとしながら、利益率の目標も実績との距離が大きい。過去の計画が実現した実績も乏しい。2017年3月期には赤字に落ちた経験もあり、利益率の安定は証明されていない。受注残が厚くても、原材料と電気代の上昇を転嫁できるかは別の問題だ。川崎の土地の時価が高くても、操業と一体の土地は売れない。売れない資産を理由に割安と呼ぶのは、バリュー投資ではない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。LEXの希少さと受注残は本物だが、10年の価値を決めるのは、山と谷をならした稼ぐ力で、それは資本コストに届かない。資産の厚さは悲観の床を支えるが、土地の時価は開示がなく、売って戻る保証もない。LEXが標準材料になる楽観の確率は、2割強までに抑えた。半導体の受注残が厚い今は、目先の利益が上振れる見込みだが、それは10年の価値を変えるほどではない。強気の主張が当たるには、時間と証拠が足りない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,287 円62 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 254 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 738 円36 億円、今との差 −24.3%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,099 円149 億円 | 498 円24 億円 | +268.9% | +13.9% | 252 円12 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,977 円95 億円 | 404 円20 億円 | +144.2% | +9.3% | 429 円21 億円 |
| 中立 | 36% | 1,292 円62 億円 | 280 円14 億円 | +61.3% | +4.9% | 566 円27 億円 |
| やや悲観 | 26% | 680 円33 億円 | 145 円7 億円 | −15.3% | −1.7% | 215 円10 億円 |
| 悲観 | 13% | 558 円27 億円 | 62 円3 億円 | −36.4% | −4.4% | 81 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,287 円62 億円 | 254 円12 億円 | +58.1% | +4.7% | 1,542 円74 億円 |
今の株価時価総額 975 円47 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% AI向けの半導体装置が続伸し、LEXが標準材料になる 利益 13 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,099 円149 億円
AI向けの半導体投資が10年続き、半導体製造装置の世界の出荷が高水準を保つ。日本鋳造は鋳鋼品の増産で川崎工場の稼働を上げ、金属3Dプリンターで納期を縮める。LEX-ZEROはウエハ・フォトマスクの検査装置に採用が広がり、数量が3倍、価格は付加価値の高い品の比率が上がって1.5倍になる。
建機と鉱山機械は鉱山投資の回復で小幅に伸び、橋梁の保全需要も安定する。会社は営業利益率10%を中期の目標に置くが、それに近い8%台に乗る。
配当性向は3割を守り、ためた現金は設備更新と3Dプリンター事業に回す。受注残は常に売上の7割を超え、操業度は高く保たれる。JFEの出資比率は変わらず、少数株主への還元姿勢も大きく変わらない。
- 半導体装置向け鋳鋼・低熱膨張合金(LEX):数量 2.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 41(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 99 億円・営業利益 12 億円。半導体向け 営業利益率12%
- 建機・鉱山機械向け鋳鋼:数量 3.2(出荷量(千トン、推定))× 価格 8.04(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。建機・鉱山 営業利益率5%
- 産業用鋳造品(製鉄・焼却炉・エネルギー・工作機械ほか):数量 4.1(出荷量(千トン、推定))× 価格 8.93(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 36 億円・営業利益 1 億円。産業用 営業利益率4%
- エンジニアリング(橋梁支承・伸縮装置・柱脚):数量 5.6(製作量(千トン、推定))× 価格 13(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 74 億円・営業利益 4 億円。エンジニアリング 営業利益率5.5%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 149 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI投資が10年続き、LEXが主要な検査装置に採用される二つが同時に要る。LEXはまだ小さな材料で、半導体向けの売上が3倍になるのは強気の置き方だ。7%に置いた。
やや楽観 18% 半導体は波を打ちながら伸び、LEXが育つ 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,977 円95 億円
半導体装置は、AI投資で波を打ちながら伸びる。谷の年でも今の1.4倍の売上は保ち、山の年は3倍に届く。10年後の1年を取り出すと、波の中ほどにいる。LEXは検査装置向けに採用が増え、価格は付加価値の高い品の比率が上がって1.4倍になる。
建機・鉱山機械は横ばい、産業用は製鉄の縮小で1割減る。エンジニアリングは橋梁の保全需要を取り込んで横ばいだ。
営業利益率は6%台まで上がる。償却費は今の約6億円(推定)から新しい設備の分だけ膨らんで7億円ほどになるが、数量の伸びで吸収する。波の谷では稼働が一時的に落ちるが、谷の深さは今期ほどではない。配当は3割の方針を守り、少しずつ増える。
- 半導体装置向け鋳鋼・低熱膨張合金(LEX):数量 1.6(出荷量(千トン、推定))× 価格 39(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 62 億円・営業利益 6 億円。半導体向け 営業利益率10%
- 建機・鉱山機械向け鋳鋼:数量 3.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 8.04(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。建機・鉱山 営業利益率4.5%
- 産業用鋳造品(製鉄・焼却炉・エネルギー・工作機械ほか):数量 4.1(出荷量(千トン、推定))× 価格 8.67(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。産業用 営業利益率3.5%
- エンジニアリング(橋梁支承・伸縮装置・柱脚):数量 5.3(製作量(千トン、推定))× 価格 13(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 4 億円。エンジニアリング 営業利益率5%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 95 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI投資の波が2回ほど来て、谷でも今の水準を割らない姿。半導体向けは山谷の平均で2倍になる。受注残が厚く、足元の追い風は強いので、18%に置いた。
中立 36% 半導体は平準化した水準まで伸び、他は横ばい 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,292 円62 億円
半導体装置向けは、山の年と谷の年をならした水準で置く。今期は関税で受注が落ちた谷の年で、山は2024年3月期の売上160億円の年だ。10年後の中立は、谷の1.4倍、価格は物価より少し低い1.3倍とした。この分野はAI投資の波に乗るが、波は必ず戻る。
建機・鉱山機械は鉱山投資の波を受けて横ばい、産業用は国内の鋳造品需要の縮小と製鉄向けの減少で1割以上減る。エンジニアリングは新設が減り、保全・補強へ中身が移るが、売上は保つ。
営業利益率は4.7%で、過去12年の平均より高い水準だ。償却費は今の約6億円(推定)から約7億円へ増え、更新の投資は建設費と機械の値上がりで膨らむので、現金は会計の利益より細る。
配当性向3割の方針は守る。
- 半導体装置向け鋳鋼・低熱膨張合金(LEX):数量 1.1(出荷量(千トン、推定))× 価格 36(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 3 億円。半導体向け 山谷をならした水準、営業利益率7.5%
- 建機・鉱山機械向け鋳鋼:数量 2.9(出荷量(千トン、推定))× 価格 7.80(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。建機・鉱山 営業利益率3.5%
- 産業用鋳造品(製鉄・焼却炉・エネルギー・工作機械ほか):数量 3.8(出荷量(千トン、推定))× 価格 8.67(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。産業用 営業利益率3.0%
- エンジニアリング(橋梁支承・伸縮装置・柱脚):数量 5.3(製作量(千トン、推定))× 価格 13(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 69 億円・営業利益 3 億円。エンジニアリング 営業利益率4.2%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 62 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今の追い風を10年先まで延ばさず、半導体の山と谷をならした水準に置く。LEXは育つが小さく、鋳造品全体は国内の縮小で横ばい。最も重みを置く筋書きで、慎重な見方がやや強い。
やや悲観 26% 半導体が谷に長く居座り、国内の鋳造は細る 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 680 円33 億円
半導体装置の投資が一服し、谷が長引く。中国の装置メーカーは国内調達に切り替え、日本の鋳鋼品の受注は今の7割ほどにとどまる。LEXの採用も遅れる。
建機・鉱山機械は鉱山投資の停滞で2割減る。製鉄向けは、JFE京浜地区の休止が続いて細る。橋梁は保全で保つが、人手不足で受注の消化が遅れる。
営業利益率は2%台まで落ち、償却費が利益を押し下げる。更新投資を絞るため設備が古くなり、収益力がさらに落ちる。配当は方針を下回る水準に抑える。会社は固定費の削減と協業で守りに入り、成長の投資は後ろへ回る。JFEの支えはあるが、利益を押し上げるほどではない。
- 半導体装置向け鋳鋼・低熱膨張合金(LEX):数量 0.6(出荷量(千トン、推定))× 価格 32(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。半導体向け 営業利益率2%
- 建機・鉱山機械向け鋳鋼:数量 2.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 7.20(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。建機・鉱山 営業利益率1.5%
- 産業用鋳造品(製鉄・焼却炉・エネルギー・工作機械ほか):数量 3.2(出荷量(千トン、推定))× 価格 7.60(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。産業用 営業利益率1.5%
- エンジニアリング(橋梁支承・伸縮装置・柱脚):数量 5.0(製作量(千トン、推定))× 価格 12(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 60 億円・営業利益 2 億円。エンジニアリング 営業利益率3%
倍率:稼ぐ力は純利益1.6億円で、kで割っても約18億円。床は売れる資産の税後を使う。今の自己資本117億円に0.28倍を置いた。ROEがkに届かず、ためた資本には値段をつけない。
確率:半導体装置の投資が一服し、中国の地場装置が増えて外注の鋳造品が減る姿。関税と国内鋳造の縮小も重なる。2025年10月に関税で予想を引き下げた実績があり、26%に置いた。
悲観 13% 主力の顧客を失い、川崎の鋳造を縮小する 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 558 円27 億円
半導体装置の外注が中国などへ移り、鋳鋼品の受注は半分以下になる。LEXは大手の検査装置に採用されず、小さな用途にとどまる。
建機・鉱山機械は鉱山投資の長い冬で3分の2に落ち、製鉄向けはJFEの設備集約で大きく縮む。橋梁の保全だけが残るが、価格競争で利益は出ない。
川崎工場の稼働は半分に落ち、赤字が続く。固定費の重い鋳造設備を畳みながら、減損と再編費用がかさむ。配当は大きく削る。
価値の拠りどころは、事業の稼ぐ力でなく売れる資産になる。ただ川崎の土地は操業と一体で、売るには移転や土壌対策の費用がかかる。JFEが支えるかどうかも読めない。減損が膨らめば、自己資本そのものも減る。
- 半導体装置向け鋳鋼・低熱膨張合金(LEX):数量 0.4(出荷量(千トン、推定))× 価格 30(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。半導体向け 営業利益率-5%
- 建機・鉱山機械向け鋳鋼:数量 2.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 6.60(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 −1 億円。建機・鉱山 営業利益率-4%
- 産業用鋳造品(製鉄・焼却炉・エネルギー・工作機械ほか):数量 2.7(出荷量(千トン、推定))× 価格 7.33(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。産業用 営業利益率-3%
- エンジニアリング(橋梁支承・伸縮装置・柱脚):数量 4.2(製作量(千トン、推定))× 価格 12(1千トンあたり売上(億円/千トン、名目))→ 売上 50 億円・営業利益 1 億円。エンジニアリング 営業利益率1%
倍率:赤字で稼ぐ力はない。床は売れる資産の税後で、今の自己資本117億円に0.23倍を置いた。
確率:半導体装置の国内調達が細り、JFE系の需要も落ちる構造的な負けの姿。過去20年で赤字は3期あり、景気の波で赤字に落ちた前例がある。13%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
半導体装置向け鋳鋼・低熱膨張合金(LEX)
半導体製造装置の骨格になる鋳鋼品と、温度で伸び縮みしない独自合金LEX・LEX-ZERO。ウエハやフォトマスクの検査装置などに入る。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1千トンあたり売上(億円/千トン、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 28 | 22 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 36 | 40 | 3 |
取り方:素形材の売上67.6億円のうち、半導体装置向けを22億円と推定した。2026年3月期は関税の影響で上期に受注が落ちた谷の年で、下期に受注が大きく戻った(有報)。開示は品種別の売上だけで、半導体向けの額は非開示。1トンあたり約275万円は、LEXなど付加価値の高い品を含む推定。利益率は高付加価値品として6%と推定。山は売上全体が160億円だった2024年3月期で、半導体向けは今の2倍強とみる。平準化した年は今の1.4倍ほど。
建機・鉱山機械向け鋳鋼
超大型の油圧ショベルなど建機・鉱山機械の足回りや構造部品となる大型鋳鋼品。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1千トンあたり売上(億円/千トン、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 6.00 | 18 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.9 | 7.80 | 22 | 1 |
取り方:素形材のうち建機・鉱山機械向けを18億円と推定した(開示は非公表)。2025年10月の予想修正では、関税の影響で鉱山機械向けの受注が未達とされた。1トンあたり約60万円は大型鋳鋼品の相場感からの推定。利益率は操業度の低さから2%台。
産業用鋳造品(製鉄・焼却炉・エネルギー・工作機械ほか)
製鉄設備の部品、ごみ焼却炉の火格子、発電設備の車室、プレス機械や工作機械向けの鋳造品など。その他を含む。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1千トンあたり売上(億円/千トン、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.5 | 6.67 | 30 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3.8 | 8.67 | 33 | 1 |
取り方:素形材の残りとその他を合わせて30億円と推定した(品種別の売上から、半導体と建機を引いた残り)。JFEスチールの京浜地区が上工程を休止し、製鉄向けは縮んでいる。1トンあたり約67万円は推定。
エンジニアリング(橋梁支承・伸縮装置・柱脚)
橋桁を支える支承、桁どうしをつなぐ伸縮装置、建築物の柱脚の設計と製造。
| 数量製作量(千トン、推定) | 価格1千トンあたり売上(億円/千トン、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.3 | 10 | 53 | 2 |
| 10 年後 中立 | 5.3 | 13 | 69 | 3 |
取り方:エンジニアリングの売上52.9億円(有報の品種別)。製作量は、1トンあたり約100万円という推定で割った。大型案件でコストが下がり、利益率は想定を上回った(予想修正の開示)。利益は全社の営業利益4.2億円から他の三つを引いた推定で、利益率は3.6%。
リスクと懸念
半導体装置の山と谷
半導体向けは受注の波が深く、今は山の入り口にいる。関税、中国の装置の自給化、顧客の在庫調整で、受注はすぐ止まる。2025年10月には予想を引き下げた。谷の年の稼働の落ち込みで、固定費の重さが利益を押しつぶす。半導体の比率が高まるほど、会社全体の波も大きくなる。
資本効率の低さ
自己資本117億円に対して営業利益は4億円台で、ROEは1%台から5%の間にある。川崎の土地と古い設備に資産が固定され、稼ぎにつながらない。中期計画のROE10%は遠く、実現しないまま時間が過ぎるリスクがある。遊休地の処分も進んでいない。
JFEへの依存と国内鋳造の縮小
JFEスチールは36%の株主であり、販売先であり、原材料の仕入先でもある。京浜地区の休止で池上の鋳造品を川崎へ移した経緯もあり、鉄鋼業界の集約が直接効く。国内の鋳造品需要も長い目で縮む。親会社筋の事情で取引条件が変わる可能性もある。
設備更新の負担と償却
川崎工場は老朽更新が中心で、2026年度の投資は約6億円と、償却に近い水準だ。機械や建設費の値上がりで、更新の現金は会計の償却より重くなる。償却を下回る投資を続ければ、設備が古びて競争力が落ちる。老朽更新は先送りがきかない。
鉱山機械・建機の波
超大型の油圧ショベル向けなど、鉱山投資の波を受ける。2025年10月に鉱山機械向けの受注が未達になったことが示すように、関税と鉱物価格で数量が大きく変わる。日立建機は出資するが、受注の保証ではない。為替は150円固定で見たが、顧客の投資判断は為替にも左右される。
LEXの実力と採用の遅れ
LEX-ZEROは希少だが売上の2割に満たない(推定)うえ、顧客は検査装置メーカーに限られる。採用は装置の世代交代を待つため、遅れやすい。競合の低熱膨張材やセラミックスに置き換えられる可能性もある。新材料の評価に時間がかかり、売上が立つまでの研究費が先行する。
今後の分かれ目
- LEXが大手の検査装置メーカーに標準採用されたと開示されたら
- 半導体向けの数量と価格を引き上げ、楽観側へ確率を移す。
- 半導体向けの受注残が2期続けて減り、受注高が売上を下回ったら
- 谷の長期化とみて、やや悲観側へ確率を寄せる。
- 営業利益率が3年続けて6%を超えたら
- 中立の利益率を上げ、倍率の割り引きを緩める。
- JFEスチールが持分を引き上げる、または売却するなどの動きが出たら
- 少数株主への戻り方と買収の確率を見直す。
- 川崎の土地の売却や再開発の方針が開示されたら
- 土地の時価を悲観の床に入れ、床を引き上げる。
見ておくもの
- 受注高と受注残(素形材・エンジニアリング別)
- 半導体向けの売上比率とLEXの採用先
- 営業利益率とROE(中期計画の目標との距離)
- 設備投資と償却費の比較
- JFEスチールの持分と取引条件
- 川崎の土地の扱いと遊休資産の処分
倍率と資本コストの決め方
倍率は式の上限(ROE が k 以下の筋書きは 1÷k=11.4 倍)の7〜9割に置いた。半導体の山の年の利益には高い倍率を掛けず、山谷をならした水準で置いた。今の株価や同業の PER・PBR は使っていない。悲観側は売れる資産の税後を、今の自己資本に掛けた。川崎の土地の時価は開示がなく、評価に入れていない。償却費は約6億円(推定)から約7億円へ増え、更新投資が償却を上回る分は現金が出ていくと見た。新リース会計基準でBSの形が変わるが、数字は今と同じ形でそろえた。結果は今の値段をかなり下回ったが、計算を株価に寄せる調整はしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→11.76 倍・やや楽観 PER 9.7→11.76 倍・中立 PER 9.1→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.25% を足した8.75%。JFEの影響や半導体の波は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.50%。