株譜
AI 銘柄分析 · 鉄鋼 · 試作

東京鐵鋼株式会社 5445

鉄筋一本の電炉。足元の利益は山の高さだが、今の値段は山が崩れる前提をほぼ織り込んでいる

やや割安
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)2,263 円566 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)1,974 円494 億円差 +14.6%
10 年後から見ると やや割安 価値 2,263 円566 億円 · 差 +14.6% · 期待の年率 +8.5%
期待の年率リターン(10 年)+8.5%資本コストと同じ
推定の資本コスト8.5%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 8.5% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

東京鐵鋼は、ビルや橋に使う鉄筋を作る電炉メーカーだ。鉄スクラップを電気炉で溶かし、栃木県小山市と青森県八戸市の工場で棒鋼にする。売上のほぼすべてが国内の鉄筋とその関連品で、海外の合弁も持分法の稼ぎもない。筆者の結論は「ほぼ適正」だ。

足元の利益は山の高さにある。営業利益率は16.6%で、過去12年の中央値の2倍を超える。一方で国内の鉄筋需要は3年連続で過去最低を更新し、2026年度もさらに減る見通しだ。山をそのまま10年伸ばすことはできない。

それでも今の時価総額は純利益の6倍ほどで、利益が半分近くまで戻る姿をすでに映している。同社の強みは、太径・高強度の「ネジテツコン」と、継手・定着金物をまとめて売る点にある。施工の手間を減らす製品で、建設業の人手不足が追い風になる。だが売上の過半は規格品の鉄筋で、値段は市場が決める。

中立の姿は、需要の縮みを物価分の値上げと高付加価値品で補い、営業利益が今の8割ほどに落ち着く10年だ。自己資本比率は79%と堅いが、現金は厚くない。3年で323億円の設備投資を控え、株主への戻しにも限りがある。割安と呼べる安全域は、いまは見当たらない。

バリュー投資の観点から

バリュー投資の観点で、この会社の本質は「利益の山を永く続けられるか」の一点に尽きる。足元の営業利益率は過去12年の中央値の2倍で、ここだけ見れば優良企業だ。だが規格品の鉄筋が売上の過半で、堀は広くない。

オーナー利益の質は悪くない。設備はほぼ電気炉と圧延ラインで、運転資金の増減も大きくない。ただし老朽設備の更新に3年で323億円を使う。この投資は能力を増やすためでなく、今の稼ぎを守るための費用だ。株主に残る利益は、会計上の利益よりかなり小さい。

資本の配分は堅実で、無理な買収に走らない。配当の方針を35〜40%に引き上げ、自社株買いも続けた。ここは評価できる。一方で、事業が国内の鉄筋に集中しており、需要が減る逆風を海外や他の品目で逃がせない。

安全域の面では、純利益の6倍ほどという今の値段が、利益が半分近くに戻る姿をほぼ映している。それ以上の割安は、利益が山の半分を割る筋書きを外せるかにかかる。筆者は、この安全域を「厚い」とは言えないと見る。

何で稼ぐ会社か

東京鐵鋼の事業は、鉄筋コンクリート用の棒鋼を中心に三つの層でできている。

中核は鉄筋用棒鋼だ。小山工場と八戸工場の電気炉で作り、ゼネコンや鉄筋加工業者に売る。売上の大半を占めるが、会社は鉄鋼事業の1本でしか開示しておらず、出荷量や品種別の損益は出ていない。以下の内訳は国内の小棒内需から筆者が推定したものだ。内需は2025年度に575.8万トンで、同社は約1割とみる。

二層目が継手・定着金物・加工品だ。ねじ状の節を持つ鉄筋「ネジテツコン」を、専用の継手「エースジョイント」や定着金物「プレートナット」でつなぐ。現場で鉄筋を曲げて溶接する手間が減るため、超高層ビルを中心に使われる。本社工場の隣には総合加工センターがあり、現場の寸法に合わせて切断・曲げまで済ませて届ける。この層が利益率を引き上げている。

三層目が環境リサイクルだ。八戸工場の電気炉溶融施設で、特別管理産業廃棄物や産業廃棄物を溶かして処理する。売上は小さいが、景気に左右されにくい収入になる。

子会社には、リサイクルのトーテツ資源、スクラップ販売の関東メタル、物流のトーテツ興運などがある。連結従業員は815人と、電炉の中では小ぢんまりした会社だ。

優良さと弱いところ

同社の強みは、鉄筋を単品でなく工法として売れることにあると筆者は見る。ネジテツコン、継手、定着金物、加工をひとまとめに提案できる競合は少ない。施工の人手を減らせるため、建設業の人手不足が深まるほど価値が増す。ここは規格品の鉄筋と違い、値段を売り手が決めやすい。

弱さもはっきりしている。売上の過半は規格品の鉄筋で、値段は鉄スクラップと需給で決まる。東京の流通価格は2026年に入って過去最低水準を付け、採算割れの安値も出た。国内の小棒需要は3年連続で過去最低を更新し、足元の営業利益率16.6%は過去12年の中央値の2倍を超えている。過去12年には営業赤字の期が2回あった。

財務は堅い。自己資本比率は79%で、有利子負債は46億円、純現金は26億円だ。ただし現金の山があるわけではなく、3年で323億円の設備投資を控える。国内の1国、鉄筋の1品目に事業が集まる点は、分散の効く同業との違いだ。

経営の資本配分は、これまで堅実だった。2009年の共英製鋼との統合は公正取引委員会の審査の長期化で見送ったが、提携は保っている。堀は工法の一部にあるものの、会社全体でみると広くはない。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

国内の鉄筋市場は、人口減と建設業の人手不足で縮んでいる。普通鋼電炉工業会によると、鉄筋用小棒の国内出荷は2025年度に575.8万トンと、前年度比で7%減った。統計のある1991年度以降で初めて600万トンを割り、3年連続の過去最低だ。2026年度は566万トンの見通しだが、4〜8月の実績は予想を下回り、会長は市場環境が一段と厳しいと述べた。

値段は、原料のスクラップと電力のコストに、需給が重なって決まる。関東のスクラップは9月に1トン4万6000〜4万8000円まで下がった。一方、電気料金・人件費・輸送費は高止まりし、各社は値上げを狙う。需要が細る中で値上げが通るかが、最大の焦点になる。

競争相手は、普電工の会長会社でもある合同製鐵、共英製鋼、東京製鐵などの電炉大手だ。合同製鐵は同社の株主でもあり、1980年から業務提携している。鉄筋は規格品で、地域ごとに需給が決まるため、系列と物流網がものを言う。

10年の需要は、再開発と老朽インフラの更新、データセンターや半導体工場の建設が支える一方、人口減が押し下げる。筆者は、いまの落ち込みの一部が建設業の工程遅れで、後で戻ると見ている。ただし戻っても、かつての水準には届かない。

資本政策と M&A

株主への戻しは、今の利益に見合う水準を保っている。2026年3月期は、配当が利益の約3割、自社株買いが15億円で、総還元性向は約5割だった。2026年5月には新しい中期経営方針で、配当性向を従来の30%から35〜40%に引き上げた。同じ月に上限5億円の自社株買いも決め、6月末までに終えた。4月には株式を3分割し、投資単位を下げている。

戻せる額には限りがある。2026〜28年度の設備投資は累計323億円で、老朽設備の更新と省力化・省エネに充てる。3年分の純利益の見込みをほぼ使い切る計算で、借金に頼る年も出る。純現金は26億円と薄く、筆者は自社株買いが大きく増える姿は描いていない。

買収は、自ら買いに出る会社ではない。2009年に共英製鋼との統合を発表し、取りやめた経緯がある。主な株主は信託口、合同製鐵(5.3%)、三井住友銀行(5.0%)などで、持ち合いの色が残る。投資有価証券などは104億円ある。時価総額は純資産の8割ほどで、買収の標的になりうるが、鉄筋の流通は合同製鐵との提携に深く根を張る。

株主優待は300株以上に出るクオカード(額面は数千円まで)で、年1億円に満たず、価値への影響は1ポイント未満とみて数字には入れない。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

鉄筋の需要は、底に近い。2025年度の国内出荷は575.8万トンと、統計のある期間で最低だ。建設業の人手不足で着工や工程が遅れ、その分が後ろにずれているだけで、再開発や老朽インフラの更新、データセンターの建設で戻ってくる。

同社の製品は、人手不足が深まるほど価値が増す。ネジテツコンと継手を使えば、現場の鉄筋の組み立てが速くなり、職人の数を減らせる。新しい中期経営方針は、この太径・高強度品を中低層の建物にまで広げ、2028年度までの平均で経常利益100億円以上を狙う。前の計画では70億円以上を掲げて、実績は大きく上回った。

財務は堅く、自己資本比率は79%、純現金もある。配当の方針は35〜40%に引き上がり、自社株買いも続く。電炉大手の値上げ姿勢が通れば、スクラップが下がっている今はスプレッドが広がる。時価総額が純利益の6倍にすぎない今の値段は、利益が今の水準に近く残る姿を、まったく織り込んでいない。

慎重な見方

足元の利益は山の頂上だ。営業利益率は16.6%で、過去12年の中央値の2倍を超える。2022年3月期は営業赤字に沈み、売上が伸びても、スクラップが跳ねれば簡単に崩れる。今期の予想も営業利益は100億円に減る。

国内の鉄筋需要は、3年連続で過去最低を更新している。2026年度は4〜8月がすでに予想を下回り、会長が環境は一段と厳しいと認めた。需要が細れば、電炉大手は工場を回すために値段を下げる。東京の流通価格は過去最低水準まで下がり、採算割れの安値も出た。値上げが通る前提は、まだ証明されていない。

事業は国内の鉄筋1本に集まる。海外の合弁も他の品目もなく、逆風を逃がす場所がない。3年で323億円の設備投資は、能力を増やす攻めでなく、老朽設備を守る投資だ。これで利益が増えるわけではなく、株主に戻せる額が圧迫される。

ネジテツコンの強みは本物でも、売上の過半は規格品だ。純現金も26億円と薄く、PBRが1倍を下回っていても、割安の根拠にはならない。

どちらに重みを置いたか

筆者は、慎重な見方にやや重みを置く。強気の見方が言う人手不足の追い風と製品力は本物だが、売上の過半は規格品で、利益率の山は長く続かない。慎重な見方が言う需要の縮みと山の高さは、数字で裏づけが取れている。一方で、今の値段はすでに利益が半分近くに戻る姿を映しているため、慎重な見方が勝ちすぎることもない。そこで中立の筋書きを最も厚くし、確率は悲観側にやや寄せた。やや楽観を2割に置いたのは、人手不足が製品の差別化を強める可能性を重く見たからだ。悲観は、国内需要の一段の縮みと価格競争で、工場の一部を畳むところまで落ちる姿とした。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した株価時価総額 3,226 円807 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,257 円315 億円)。 今の値に割り戻すと 2,263 円566 億円、今との差 +14.6%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割安

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 8% 6,102 円1,527 億円 1,942 円486 億円 +307.5% +15.1% 643 円161 億円
やや楽観 20% 4,527 円1,133 億円 1,618 円405 億円 +211.3% +12.0% 1,229 円308 億円
中立 36% 3,691 円924 億円 1,346 円337 億円 +155.2% +9.8% 1,813 円454 億円
やや悲観 24% 1,797 円450 億円 963 円241 億円 +39.8% +3.4% 662 円166 億円
悲観 12% 600 円150 億円 519 円130 億円 −43.3% −5.5% 134 円34 億円
加重平均100% 3,226 円807 億円1,257 円315 億円 +127.1% +8.5% 4,482 円1,122 億円

今の株価時価総額 1,974 円494 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。

楽観 8% 人手不足が追い風になり、高付加価値品が稼ぎを支える 利益 122 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 6,102 円1,527 億円

建設業の人手不足が省力化の需要を押し上げる10年になる。ネジテツコンと継手・定着金物のセットは、現場の鉄筋工を減らせる工法として高層だけでなく中低層にも広がる。再開発と老朽インフラの更新、データセンターや半導体工場の建設が鉄筋の需要を支え、国内の小棒内需は600万トン前後に戻る。電炉各社の値上げが定着し、鉄筋の値段は物価を上回って上がる。高強度品の比率が高まって採算は上がり、営業利益率は1割を超える。関連商品は鉄筋より早く伸び、環境リサイクルも堅調だ。配当は性向の上限近くで、自社株買いも続く。ただし設備投資で更新が重く、株主に残る利益はそれほど増えない。

  • 鉄筋用棒鋼(ネジテツコン・一般異形棒鋼):数量 62.0(鉄筋用棒鋼の出荷量(万トン)=国内小棒内需 × シェア)× 価格 15(1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 899 億円・営業利益 112 億円。出荷62万トン(内需600万トン×約10.3%)、価格は物価を上回る1.45倍、利益率12.5%
  • 継手・定着金物・鉄筋加工などの関連商品:数量 13.0(鉄筋に付随して出る関連商品(鉄筋換算の万トン))× 価格 16(鉄筋換算1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 206 億円・営業利益 49 億円。鉄筋換算13万トン、価格1.45倍、利益率24%
  • 環境リサイクル事業:数量 3.4(処理量(万トン))× 価格 22(処理1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 74 億円・営業利益 7 億円。処理3.4万トン、料金1.45倍、利益率10%

倍率:事業の純利益 122 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.54 倍、時価総額 1,527 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:人手不足による省力化需要の拡大、再開発・更新需要の顕在化、値上げの定着が10年続く前提。確度は高くないので8%とした。

やや楽観 20% 需要が底を打ち、ネジテツコンが広がる 利益 95 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,527 円1,133 億円

国内の鉄筋需要は2025年度の575.8万トンで底を打ち、10年で580万トン前後に戻る。会社の方針どおり、太径・高強度の鉄筋の販売地域が広がり、中低層の物件にも採用される。同社の出荷はシェアを少し伸ばし、鉄筋の価格は物価並みよりやや上で推移する。継手・金物は需要に合わせて伸び、利益率も保たれる。スクラップや電力のコストが上がる局面でも、転嫁は遅れながら進む。営業利益は今より小さい水準だが、前の中期計画の目標は超える。配当性向は35〜40%の範囲で、自社株買いも折々に行う。老朽設備の更新投資は終わり、後半は配当に回る余力が出る。

  • 鉄筋用棒鋼(ネジテツコン・一般異形棒鋼):数量 58.0(鉄筋用棒鋼の出荷量(万トン)=国内小棒内需 × シェア)× 価格 14(1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 812 億円・営業利益 85 億円。出荷58万トン(内需580万トン×約10%)、価格1.40倍、利益率10.5%
  • 継手・定着金物・鉄筋加工などの関連商品:数量 12.0(鉄筋に付随して出る関連商品(鉄筋換算の万トン))× 価格 15(鉄筋換算1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 183 億円・営業利益 41 億円。鉄筋換算12万トン、価格1.40倍、利益率22.5%
  • 環境リサイクル事業:数量 3.2(処理量(万トン))× 価格 21(処理1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 67 億円・営業利益 6 億円。処理3.2万トン、料金1.40倍、利益率9%

倍率:事業の純利益 95 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.83 倍、時価総額 1,129 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:需要が底を打って緩やかに戻り、ネジテツコンの採用が中低層まで広がる姿。会社が前の計画を上回った実績があるため20%を置いた。

中立 36% 縮む需要を物価分の値上げと高付加価値品で補う10年 利益 69 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,691 円924 億円

国内の鉄筋需要は人口減で緩やかに細り、10年で今より8%ほど減る。同社は太径・高強度品でシェアを少し伸ばし、出荷は5%減にとどまる。鉄筋の価格は物価並みに上がり、スクラップと電力の上昇は転嫁する。利益率は山から降りて平らになり、営業利益率は1割に届かない水準へ戻る。継手・金物は鉄筋と同じペースで細るが、利益率は鉄筋より高い。環境リサイクルは廃棄物処理の料金が物価並みに上がる。老朽設備の更新に3年で323億円を使うので、借金も一時的に増えるが、10年では返せる。配当は性向の35〜40%を保ち、自社株買いも小さく続く。

  • 鉄筋用棒鋼(ネジテツコン・一般異形棒鋼):数量 53.0(鉄筋用棒鋼の出荷量(万トン)=国内小棒内需 × シェア)× 価格 13(1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 710 億円・営業利益 60 億円。出荷53万トン(内需約530万トン×約10%)、価格は物価並みの1.34倍、利益率8.5%
  • 継手・定着金物・鉄筋加工などの関連商品:数量 10.5(鉄筋に付随して出る関連商品(鉄筋換算の万トン))× 価格 15(鉄筋換算1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 154 億円・営業利益 31 億円。鉄筋換算10.5万トン、価格1.34倍、利益率20%
  • 環境リサイクル事業:数量 3.0(処理量(万トン))× 価格 20(処理1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 60 億円・営業利益 5 億円。処理3.0万トン、料金1.34倍、利益率8%

倍率:事業の純利益 69 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 811 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:縮む需要を物価並みの値上げと高付加価値品で補い、利益が山から平らな水準に落ち着く姿。最も確度が高い。

やや悲観 24% 価格競争が続き、利益率が平らになる 利益 34 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,797 円450 億円

国内の鉄筋需要は、人口減と建設の弱さで10年に1割以上縮む。電炉大手が工場を回すために安値で売り、値上げは転嫁が追いつかない。同社の出荷も落ち、鉄筋の価格は物価並みを下回る。ネジテツコンの高付加価値品は残るが、規格品の低採算を埋めきれず、営業利益率は5%を割る水準で推移する。老朽更新の投資は続き、現金は薄いままだ。配当性向は35%に近い下限で、自社株買いは控えめになる。会社が掲げた経常利益100億円には届かず、中期経営方針の見直しを迫られる。それでも財務は崩れず、事業の骨格も残る。ただ、かつての山の利益が戻る日は来ない。

  • 鉄筋用棒鋼(ネジテツコン・一般異形棒鋼):数量 47.0(鉄筋用棒鋼の出荷量(万トン)=国内小棒内需 × シェア)× 価格 13(1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 597 億円・営業利益 27 億円。出荷47万トン(内需500万トン×約9.4%)、価格1.27倍、利益率4.5%
  • 継手・定着金物・鉄筋加工などの関連商品:数量 9.0(鉄筋に付随して出る関連商品(鉄筋換算の万トン))× 価格 14(鉄筋換算1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 125 億円・営業利益 17 億円。鉄筋換算9万トン、価格1.27倍、利益率14%
  • 環境リサイクル事業:数量 2.8(処理量(万トン))× 価格 19(処理1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 53 億円・営業利益 3 億円。処理2.8万トン、料金1.27倍、利益率6%

倍率:資本コスト8.5%。事業のROE3.6%がk以下なので、PERの上限は1÷k=11.4倍。その約7割の8.0倍に置く。価格競争が続く筋書きなので、上限より低めに置く。

確率:需要の縮みと価格競争が続き、値上げが通りにくい姿。直近3年の需要の落ち方を見ると軽く見られないので24%とした。

悲観 12% 国内需要の縮小と値下げ競争で工場の一部を畳む 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 600 円150 億円

国内の鉄筋需要は、人口減と建設の縮小で10年に3割ほど細る。電炉大手が工場を埋めようと値下げ競争に入り、同社の規格品の鉄筋は赤字になる。高付加価値品は残るが、売上の3割にも届かず、全体を支えきれない。ネジテツコンの優位も、他社の追随で薄まる。八戸の棒鋼設備の廃止や集約に踏み切り、減損が出る。借金に頼る年も出て、配当は下限まで落とす。純現金が残り、財務は崩れないが、かつての優良な電炉という評価は後退する。株主にとって頼りになるのは、土地・設備と投資有価証券という売れる資産だけになる。需要の縮みが続く間、同業の合同製鐵や共英製鋼との間で供給の再編が進まなければ、値崩れは長引く。同社は国内の1品目に集まっているため、他の事業で損失を埋めることができない。10年後の姿は、小さくなった優良会社でなく、立て直しを迫られる中堅の電炉だ。

  • 鉄筋用棒鋼(ネジテツコン・一般異形棒鋼):数量 34.0(鉄筋用棒鋼の出荷量(万トン)=国内小棒内需 × シェア)× 価格 12(1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 391 億円・営業利益 −4 億円。出荷34万トン(内需400万トン×8.5%)、価格1.15倍、赤字(利益率−1%)
  • 継手・定着金物・鉄筋加工などの関連商品:数量 6.0(鉄筋に付随して出る関連商品(鉄筋換算の万トン))× 価格 13(鉄筋換算1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 75 億円・営業利益 5 億円。鉄筋換算6万トン、価格1.15倍、利益率6%
  • 環境リサイクル事業:数量 2.5(処理量(万トン))× 価格 17(処理1万トン当たりの売上(億円、名目))→ 売上 43 億円・営業利益 2 億円。処理2.5万トン、料金1.15倍、利益率5%

倍率:資本コスト8.5%。純利益がほぼ残らず、稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後を床とし、今の自己資本634億円に0.237倍を掛けた150億円とした。減損後の自己資本が残っても、床としては使わない。EV÷営業利益で見ても、利益がほぼゼロで倍率は意味を持たない。

確率:国内の鉄筋需要が一段と縮んで電炉が値下げ競争に入り、工場の一部を畳む構造的な負け筋。国内の単一品目の会社なので10年では無視できず12%を置いた。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

鉄筋用棒鋼(ネジテツコン・一般異形棒鋼)

小山工場と八戸工場の電気炉で作る、鉄筋コンクリート用の棒鋼。太径・高強度のネジテツコンから一般の異形棒鋼まで、ゼネコンや鉄筋業者に売る中核事業。

数量鉄筋用棒鋼の出荷量(万トン)=国内小棒内需 × シェア価格1万トン当たりの売上(億円、名目)売上営業利益
今 2026/03 56.0 10 560 85
10 年後 中立 53.0 13 710 60

取り方:開示は鉄鋼事業の1本だけで、出荷量とセグメント別の損益は出ていない。国内の鉄筋用小棒の内需575.8万トン(2025年度、普通鋼電炉工業会)に約9.7%のシェアを置いて56万トンと推定。1万トン当たり10.0億円(トン約10万円)は、東京の流通価格が11万円台、メーカーの公表価格が9万円台という幅の中間に、高強度品の上乗せを見込んだ置き方。営業利益は全社120億円から継手・金物(約31億円)とリサイクル(約4億円)を引いた残り。

継手・定着金物・鉄筋加工などの関連商品

ネジテツコンと組み合わせる機械式継手(エースジョイント)・定着金物(プレートナット)・せん断補強筋、総合加工センターでの切断・曲げ加工、柱脚工法。鉄筋の使われ方に合わせて売る高採算の商品群。

数量鉄筋に付随して出る関連商品(鉄筋換算の万トン)価格鉄筋換算1万トン当たりの売上(億円、名目)売上営業利益
今 2026/03 11.0 11 120 31
10 年後 中立 10.5 15 154 31

取り方:関連商品の売上は開示されない。鉄鋼事業の売上約680億円(全社の93.8%)のうち、鉄筋以外の継手・金物・加工品を約120億円と推定し、鉄筋換算11万トン(鉄筋出荷の2割分)で割った。営業利益は継手・金物の採算の高さを見て売上の約26%と置いた推定。

環境リサイクル事業

八戸工場の電気炉溶融施設で、特別管理産業廃棄物と産業廃棄物を溶かして処理し、スラグや金属を再資源化する事業。

数量処理量(万トン)価格処理1万トン当たりの売上(億円、名目)売上営業利益
今 2026/03 3.0 15 45 4
10 年後 中立 3.0 20 60 5

取り方:会社の公表する処理能力(特管で1日28トン、産廃で1日60トン)から年3万トンほどと推定。売上は全社の売上から鉄鋼事業の割合を引いた約45億円。営業利益は売上の1割弱と置いた推定。

リスクと懸念

国内の鉄筋需要の一段の縮み

国内の小棒内需は2025年度に575.8万トンと、3年連続で過去最低を更新した。2026年度は566万トンの見通しだが、4〜8月はそれも下回る。建設業の人手不足による工程遅れが長引けば、需要は想定以上に細り、同社の出荷も落ちる。会社は国内の1国・1品目に集まっていて、逃げ場がない。

利益率の山が崩れる

営業利益率は16.6%と、過去12年の中央値の約2倍にある。2022年3月期は営業赤字だった。スクラップの急騰、電力の上昇、価格競争のどれか一つで、利益が半分以下に戻りうる。今期の会社予想は、営業利益が100億円に減る。

値上げが通らない

電炉大手は値上げを狙うが、東京の流通価格は過去最低水準まで下がり、採算割れの安値も出た。需要が細る中で、工場の稼働を保つために安く売る社が出れば、同社も追随せざるをえない。値上げが定着するかが分かれ目になる。

老朽設備の更新投資

2026〜28年度の設備投資は累計323億円で、老朽更新と省力化・省エネに使う。能力を増やす投資ではなく、稼ぎを守る費用だ。3年分の純利益の見込みをほぼ使い切り、借金に頼る年も出る。株主への戻しが想定より細るおそれがある。

スクラップ・電力コストの上振れ

電炉は鉄スクラップと電力に採算が連動する。スクラップが跳ねると価格転嫁が遅れ、利益率が一気に落ちる。2022年3月期の赤字はその典型だった。電気料金は高止まりしており、転嫁の遅れは再び起こりうる。

ネジテツコンの優位が薄まる

高付加価値品の利益率が高いのは、人手を減らせる工法だからだ。他社が同種の高強度鉄筋や継手を広げれば、優位は薄まる。関連商品は鉄筋より利益率が高いので、崩れた時の影響は売上の割合よりも大きい。

今後の分かれ目

国内の鉄筋用小棒の出荷が、普電工の見通し(566万トン)を明確に上回って戻り始めたら
需要の底打ちとみて、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし流通価格が戻るかも合わせて確認する。
東京の流通価格が下げ止まり、電炉大手の値上げが定着したら
スプレッドの回復とみて、中立の利益率の前提を引き上げる方向で見直す。
スクラップや電力が急騰し、転嫁が遅れて営業利益率が一桁に落ちたら
やや悲観に重みを移す。2022年3月期の再現かどうかを四半期の決算で確かめる。
新しい中期経営方針の目標(3年平均の経常利益100億円)が下方修正されたら
山の崩れが早いとみて、悲観側の確率を上げる。
ネジテツコンの採用が中低層の建物に広がっていると決算で確認できたら
関連商品の伸びと利益率の前提を見直し、やや楽観の確率を上げる。
合同製鐵などとの再編や提携の深化が発表されたら
供給の集約で値崩れが和らぐかを見て、中立の前提を見直す。

見ておくもの

  • 普電工が毎月出す鉄筋用小棒の国内向け出荷量(年566万トンの見通しとの差)
  • 東京の異形棒鋼の流通価格と、関東の鉄スクラップ価格の差
  • 決算の営業利益率と、中期経営方針(3年平均の経常利益100億円)の進み具合
  • ネジテツコン・継手など関連商品の出荷動向
  • 設備投資(323億円)の進み方と、純現金の推移

倍率と資本コストの決め方

倍率は市場の倍率でなく、資本コスト8.5%と事業のROEから決めた。中立の事業のROEは約6.9%でkを下回るので、PERの上限は1÷k=11.4倍とし、その約8割の9.0倍に置いた。楽観〜やや楽観は上限の約9割に置いた。悲観側は稼ぐ力と売れる資産の税後で測り、過去のPBRの底は使わなかった。今の時価総額が純利益の6倍ほどであることは、結論を出したあとに比べただけで、筋書きの置き方には使っていない。出荷量と関連商品・リサイクルの内訳は開示が無く、国内の小棒内需×シェアの推定で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.54 倍・やや楽観 PER 10→11.83 倍・中立 PER 9→11.76 倍)。

資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質+1.25%を足して8.75%(β・規模は使わない)。鉄筋は建設と鉄スクラップの市況で利益が大きく振れるため循環+0.75、継手・金物など値決めの効く高付加価値品が売上の2割ほどあるため値決め力は+0.25に抑える、純現金で借金は0、国内の1国・1品目で需要が構造的に縮むため寿命+0.25。合計+1.25%。海外の合弁を持たず逃げ場がない点は、筋書きと確率で見た。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.50%。

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読んだ資料

  1. 東京鉄鋼、経常益100億円以上目指す/新3カ年方針(日刊産業新聞)
  2. 25年度鉄筋用小棒出荷7%減 初の600万トン割れ(日本金属産業新聞)
  3. 東京鐵鋼 企業概要

分析日 2026-10-16