結論
コメ兵は、ブランドバッグ・時計・宝飾品などの中古を買い取り、店と EC と業者向けオークションで売るリユース商社だ。2026 年 3 月期は売上が 2,200 億円を超え、3 年前の 2.6 倍になった。筆者の結論は、相場頼みの利益と重い在庫を割り引いてもなお、今の値段には余白があり、やや割安というものだ。
稼ぐ力の源は、個人から直接買い取れることにある。鑑定ができる人材と、買った品を店・EC・卸のどこへ流すかを選べる網が、同業との差になる。買取専門店は 3 年で 90 店の計画で、すでに半分以上が済んだ。海外も香港・タイ・マレーシアなどで広げている。
ただし、増収の一部は金やブランド品の相場、円安、訪日客の買い物に乗ったものだ。営業利益率は 4% 台で、売上が増えても利益はそれほど増えない。在庫は 500 億円に膨らみ、純負債は 351 億円。在庫商売の宿命として、相場が崩れた時の傷は深い。
筆者は 10 年後の中立を、売上 4,000 億円・営業利益 197 億円・時価総額 1,300 億円台と見る。筋書きは広く散らばるが、確率を重ねた価値は今の時価総額を 2 割ほど上回る。相場が一巡する局面での下振れを意識して、確率は慎重な側に少し寄せたうえでの数字だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、コメ兵は仕組みのよい事業を、あまり安くない値段で売っている会社だ。鑑定と買取の網は、時間をかけて築いた強みで、10 年後も存在し続ける可能性が高い。ただ、利益の質に疑問が残る。足元の利益は相場と訪日客に押し上げられており、平常の稼ぐ力はもう少し低い可能性がある。
オーナーとして持ちたいかを問えば、資本の使い方に慎重になる。利益の約 8 割を在庫と店に再投資し、借入も増やして成長を取りに行く。成長が止まれば、在庫と家賃が重荷として残る。在庫は売れるが、売値は相場次第だ。
安全域という点では、慎重な筋書き(相場が一巡して成長が鈍る)でも、時価総額は今の水準を保つ計算になる。悲観の筋書きでようやく大きく割れる。そのため筆者は、やや割安と見る。ただし余白は 2 割ほどで厚くはない。相場に依存しない稼ぎの証拠がもう一段そろえば、見方はさらに強気に寄る。
何で稼ぐ会社か
コメ兵の稼ぎ方は三つの出口に分かれる。一つ目は店と EC での小売。旗艦店の大阪心斎橋と横浜、ヴィンテージ専門店、免税対応の店舗がここに入る。粗利は最も厚く、会社は小売優先で在庫を割り振る。二つ目は古物商向けのオークションなど法人販売で、売上の半分近いが、粗利は薄い。三つ目が海外で、売上の 12% ほどを占める。
仕入れの中心は個人からの買取だ。店頭だけでなく、宅配・出張・提携先を通じて集め、全国と海外に買取専門店を増やしている。2026 年 3 月期末で店舗は 334(国内 294、海外 40)。買取の量が、そのまま次の売上の量になる。
利益の薄さにも触れておく。売上総利益率は 21% 前後で、営業利益率は 4% 台だ。店・人件費・家賃が重く、売上の伸びがそのまま利益に届かない。在庫を約 500 億円抱え、回転と粗利の積(会社はクロスレシオと呼ぶ)で効率を測っている。
商品は、バッグ・財布などのブランド品、ロレックスなどの時計、貴金属・宝飾品、アパレルまで幅広い。高額品ほど鑑定の手間と在庫の金利が重く、買取の目利きが利益を分ける。訪日客向けの免税売上は 15% 台で、為替と海外の景気の影響を受ける。
優良さと弱いところ
コメ兵の強みは、鑑定と買取の仕組みだ。中古の高級品は本物かどうかの見極めと、適正な買値の判断が命になる。長年の鑑定の蓄積と、国内の店・EC・卸・海外の売り先をまとめて持つ網が、同業の追随を難しくする。同じ品を最も高く売れる出口へ流せることが、粗利を支える。
一方で、堀は深くない。買取は大黒屋やセカンドストリート、ブランディア、メルカリなどと奪い合いで、仕入値は市場が決める。値決めの力は限られ、相場が下がれば在庫の評価も下がる。ブランド品や金の相場が足元の利益を押し上げている点は、割り引いて見る必要がある。
資本の効率は悪くない。ROE は 15% 前後で、会社が自己評価する資本コスト(約 10%)を超えている。ただし事業の ROIC は 7% 台で、在庫と店に資金が張り付く。配当性向は約 20% と低く、利益の大半を事業に再投資する。経営の姿勢は成長優先で、株主還元は二の次の位置づけだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のリユース市場は 2024 年で約 3.5 兆円。政府は 2030 年に 4.6 兆円へ増やす目標を掲げ、会社は 2040 年に 5 兆円を見込む。ファッション分野のリユースは 2023 年で約 1.2 兆円、前年比 14% 増と、フリマアプリの普及で急に広がった。物価が上がる局面では、新品が高くなる分、中古の需要が押し上げられやすい。
競争は層ごとに違う。高級ブランドと時計ではコメ兵・大黒屋・ブランディア(ネットのオークション型)が上位を争い、日用品の衣類ではセカンドストリート・ブックオフ・オフハウスが店舗網を広げる。個人間取引のメルカリは、買取の入口を奪う側にもなる。
訪日客の免税需要は、為替と中国・アジアの景気で振れる。コメ兵の免税比率は 15% 台と高く、ここが細ると小売が崩れやすい。金やブランド品の相場は、10 年のうちに必ず上下する。事業の循環は小売業の中でも大きい方だ。
国内の人口は減るが、リユースは買う人と売る人の両方が増える市場だ。数量の天井は、新品の小売よりずっと高い。構造としては、環境意識と物価高で中古を選ぶ人が増える流れは長く続くと筆者は見る。
資本政策と M&A
資本配分は、成長優先の姿勢が鮮明だ。配当性向は約 20% で、2027 年 3 月期も小幅な増配を予定する。自社株買いの積極的な実績はない。利益の大半は在庫と出店に回り、不足分は借入で補う。自己資本比率は 34% で、会社は 35% 前後を保つ方針だ。
中期計画は 2029 年 3 月期に売上 3,100 億円・営業利益 145 億円・海外比率 30%。M&A による上乗せは含まず、買取専門店の自前出店と海外の出店で伸ばす。計画は毎年見直す方式で、ROE の目標を 18% から 15% へ下げた経緯もあり、鵜呑みにはしない。
家賃も見ておきたい。店を借りて運営する店が多く、家賃は毎年必ず払う約束になる。2028 年 3 月期からの新しいリース会計で、貸借対照表にその分が載り、自己資本比率の見かけは下がる。買収される側になる可能性は、会社の資本の厚みと創業家の持ち分次第で、外から確かめられないため筋書きの確率には強く入れていない。
点検済み(2026-10-19):相場頼みの起点(営業利益率 4.2%、過去の山 6.2%)、売上の伸びが会社計画より低いこと、借入と家賃の重さを確かめた。穴なし。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コメ兵は国内のブランド品リユースで、買取・鑑定・販売を一貫して持つ数少ない会社だ。個人買取は四半期で 300 億円を超え、買った品を小売・EC・卸・海外のうち最も高く売れる出口へ回せるため、粗利が厚くなる。買取専門店は 3 年で 90 店の計画のうち半分以上が済み、出店のたびに仕入れの量が増える。
市場の追い風も長い。中古を選ぶ人は物価高と環境意識で増え続け、政府もリユース市場を 2030 年に 4.6 兆円へ増やす目標を掲げる。家庭に眠る品は 91 兆円とも言われ、国内で取り切れていない量は大きい。海外ではアジアの高所得層がブランド品の中古を買い始めており、香港・タイ・マレーシアの現地で買って現地で売る形が回れば、第二の柱になる。営業利益は直近 1 四半期で 35 億円と前年の 4 倍で、利益率の改善も始まった。会社の計画(2029 年 3 月期に営業利益 145 億円)は、すでに届く範囲にあると読める。
慎重な見方
足元の急成長は、相場・円安・訪日客の追い風に乗った面が大きい。金や時計の相場は必ず反落する。高値で仕入れた在庫を値引きで売れば、粗利はあっという間に削られる。営業利益率は 4% 台でしかなく、売上が増えても利益が増えない構造は変わっていない。
在庫は 500 億円、純負債は 351 億円。成長を借入に頼るため、金利が上がる世界では利払いが利益を食う。店は借りて運営する店が多く、家賃は売上が落ちても減らない。買取は大黒屋・セカンドストリート・メルカリが同じ個人を奪い合い、仕入値を上げるほど粗利が細る。免税客も円高や中国景気で簡単に減る。
海外は売上の 12% ほどにすぎず、赤字か薄利のまま出店だけが先に進んでいる。会社は ROE の目標を 18% から 15% に、売上の目標も下げ、計画の信頼度も高くない。利益は、相場の山を平常と見て積んだ数字だ。
さらに、世界一を掲げる目標は、買取の量を取り切れなければ在庫の山だけが残る。M&A を含めない計画も、裏返せば出店と借入への依存が強いことを意味する。相場が崩れた時の傷は、この会社に特に深い。
どちらに重みを置いたか
事業の強さでは強気の見方が上回り、利益の質と在庫の重さでは慎重な見方が上回る。そこで確率はやや悲観側に寄せ、相場が一巡して成長が鈍る筋書きを厚めに置いた。楽観の条件(相場の高止まりと海外の成功)は同時に満たしにくく、確率は 1 割に届かせていない。それでも確率を重ねた価値は今の時価総額を上回り、慎重な側に寄せても割安が残る。買取の網という資産は評価するが、相場に依存しない稼ぎの証拠はまだ薄い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 15,086 円1,658 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,451 円159 億円)。 今の値に割り戻すと 7,637 円840 億円、今との差 +105.9%、 期待の年率 +16.1%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 28,577 円3,141 億円 | 2,138 円235 億円 | +727.9% | +23.5% | 2,457 円270 億円 |
| やや楽観 | 20% | 22,827 円2,509 億円 | 1,829 円201 億円 | +564.6% | +20.9% | 4,931 円542 億円 |
| 中立 | 34% | 18,311 円2,013 億円 | 1,583 円174 億円 | +436.2% | +18.3% | 6,764 円744 億円 |
| やや悲観 | 27% | 6,880 円756 億円 | 1,110 円122 億円 | +115.3% | +8.0% | 2,157 円237 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,375 円151 億円 | 691 円76 億円 | −44.3% | −5.7% | 227 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 15,086 円1,658 億円 | 1,451 円159 億円 | +345.7% | +16.1% | 16,537 円1,818 億円 |
今の株価時価総額 3,710 円408 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 相場と海外が噛み合い、買取網が世界へ広がる 利益 180 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 28,577 円3,141 億円
金やブランド品の相場が高止まりし、買取専門店の網が国内で 200 店を超える。個人から直接仕入れる量が増え、旗艦店と EC の小売が伸びる。海外は香港・シンガポール・タイを軸にアジア全域へ広がり、現地で買って現地で売る形が回り出す。ブランド品の二次流通の取り込みで世界有数の規模になるが、ここまで届く確率は高くない。粗利の高い小売が全体を引き上げ、営業利益率は 6% に近づく。買取の競争が激しくても、鑑定の人材と在庫の流通網という運営の力で優位を保つ。資本は在庫と店に回り続けるため、ROE は 13% 台にとどまる。
- 国内小売(店舗・EC・免税):数量 216(販売点数(万点・推定))× 価格 11(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 2,367 億円・営業利益 194 億円。点数 1.80 倍・単価 1.37 倍
- 法人販売(業者向け卸・オークション):数量 260(取扱点数(万点・推定))× 価格 6.70(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 1,742 億円・営業利益 45 億円。点数 1.30 倍・単価 1.35 倍
- 海外(買取・販売):数量 100(取扱点数(万点・推定))× 価格 9.11(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 911 億円・営業利益 64 億円。点数 2.50 倍・単価 1.36 倍
倍率:事業の純利益 180 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.09 倍、時価総額 2,896 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:相場の高止まりと海外の成功が 10 年続く筋書き。足元の急成長が相場に支えられている面があり、5% 以上は置くが 1 割には届かせない。
やや楽観 20% 小売優先が定着し、シェアが着実に伸びる 利益 146 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 22,827 円2,509 億円
小売を優先する在庫の割り振りが定着し、粗利の高い販路の比率が今より上がる。国内の買取専門店は計画どおり増え、個人買取の量が年々積み上がる。免税の売上はインバウンドの水準が保たれて下支えになる。海外は 2030 年前後に売上の 2 割程度まで育つが、赤字を抜けるのに時間がかかる。会社の中期計画に近い歩みで、営業利益率は 5.4% 前後に上がる。相場が崩れなければ、在庫の回転も改善して資本効率が保たれる。家計の中古志向と訪日客の買い物が続き、小売の点数が着実に増える。買取専門店は計画どおり増えるが、新しい店ほど立ち上がりに時間がかかる。法人向けの卸は小売への配分が進むぶん伸びが緩い。
- 国内小売(店舗・EC・免税):数量 192(販売点数(万点・推定))× 価格 11(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 2,089 億円・営業利益 161 億円。点数 1.60 倍・単価 1.36 倍
- 法人販売(業者向け卸・オークション):数量 244(取扱点数(万点・推定))× 価格 6.68(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 1,629 億円・営業利益 39 億円。点数 1.22 倍・単価 1.35 倍
- 海外(買取・販売):数量 84.0(取扱点数(万点・推定))× 価格 9.05(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 760 億円・営業利益 46 億円。点数 2.10 倍・単価 1.35 倍
倍率:事業の純利益 146 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.65 倍、時価総額 2,285 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画に近い歩み。実績の勢いと買取店の増設計画は確かだが、相場の追い風を割り引く。
中立 34% 市場並みを少し上回る成長で、利益率はわずかに改善 利益 119 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 18,311 円2,013 億円
国内リユース市場は物価の分を含めて年 4〜5% で伸びる。コメ兵はそれを少し上回るペースで、買取店の増設と旗艦店でシェアを伸ばす。小売の点数は 10 年で 4 割ほど増え、単価は物価並みに上がる。法人向けの取引は小売より伸びが遅く、全体の収益の柱は小売に移る。海外は売上の 16% 前後まで育つが、利益は薄い。営業利益率は 4.9% と、足元より少し高い。配当性向 2 割の方針は続く。残りの 8 割は在庫と店に回り、自己資本は 3 倍になる。ただし ROE は資本が厚くなって 11% 台に落ち着く。堀は普通で、買取の競争は続くが、鑑定と販路の網が利益率の崩れを防ぐ。
- 国内小売(店舗・EC・免税):数量 172(販売点数(万点・推定))× 価格 11(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 1,844 億円・営業利益 133 億円。点数 1.43 倍・単価 1.34 倍
- 法人販売(業者向け卸・オークション):数量 234(取扱点数(万点・推定))× 価格 6.63(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 1,550 億円・営業利益 36 億円。点数 1.17 倍・単価 1.34 倍
- 海外(買取・販売):数量 72.0(取扱点数(万点・推定))× 価格 8.98(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 646 億円・営業利益 32 億円。点数 1.80 倍・単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 119 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.16 倍、時価総額 1,804 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の成長に少し上乗せする落としどころ。確率は強気寄りと慎重寄りの中間に置く。
やや悲観 27% 相場の失速と買取競争で、拡大の果実が薄い 利益 67 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 6,880 円756 億円
金やブランド品の相場が一服し、足元の急な増収が続かない。買取専門店は増えるが、同業の買取攻勢と値上がりの一巡で、仕入の粗利が細る。免税の売上は円高やインバウンドの減速で鈍る。小売の点数は伸びても 15% 止まりで、単価の上昇も物価に届かない。海外は赤字を引きずり、出店の見直しを迫られる。営業利益率は 3.5% 前後に沈み、ROE は資本コストを下回る。借入で積んだ在庫の金利負担が利益を削る。結果として、成長はするが資本は報われない。10 年の営業利益は今の 1.2 倍にとどまり、店の増設で膨らんだ家賃と減価償却が重くのしかかる。会社は ROE の目標を再び下げ、出店を絞って回転率の改善に軸足を移す。
- 国内小売(店舗・EC・免税):数量 138(販売点数(万点・推定))× 価格 10(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 1,435 億円・営業利益 82 億円。点数 1.15 倍・単価 1.30 倍
- 法人販売(業者向け卸・オークション):数量 200(取扱点数(万点・推定))× 価格 6.43(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 1,286 億円・営業利益 23 億円。点数 1.00 倍・単価 1.30 倍
- 海外(買取・販売):数量 52.0(取扱点数(万点・推定))× 価格 8.58(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 446 億円・営業利益 9 億円。点数 1.30 倍・単価 1.28 倍
倍率:事業の純利益 67 億円・ROE 7.8%。ROE が資本コスト 8.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。相場の追い風が一巡して構造が弱いので、やや悲観は上限の約 76% の 9.0 倍に置いた。
確率:足元の増収の一部は金・ブランド相場と円安・免税に乗ったもので、一巡すると成長が鈍る確率を厚めに置く。
悲観 11% 相場の反落と家賃の重みで、在庫商社に戻る 利益 21 億円 · PER 7.2 倍 · 株価時価総額 1,375 円151 億円
相場が反落し、在庫の評価と売値の両方が下がる。仕入れた高値の在庫を値引きで売り、粗利は大きく崩れる。買取専門店の増設は止まるが、賃借の家賃は固定費として残る。免税客は戻らず、海外店は撤退や縮小を迫られる。メルカリなどの個人間取引や、海外業者との買取競争で、優良な目利き商社の位置も失う。営業利益は 40 億円を割り、ROE は 3% 台に落ちる。借入は在庫を担保に返せるが、自己資本は評価損で痛む。海外は赤字の期が続き、アジアの出店は縮小に転じる。自己資本を守るため増配は止まり、投資家の評価も、成長株から相場商社へ移る。ただ純負債は在庫で裏づけられており、財務が行き詰まる筋書きではない。
- 国内小売(店舗・EC・免税):数量 102(販売点数(万点・推定))× 価格 9.60(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 979 億円・営業利益 32 億円。点数 0.85 倍・単価 1.20 倍
- 法人販売(業者向け卸・オークション):数量 150(取扱点数(万点・推定))× 価格 5.69(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 853 億円・営業利益 10 億円。点数 0.75 倍・単価 1.15 倍
- 海外(買取・販売):数量 32.0(取扱点数(万点・推定))× 価格 7.37(1 点あたり平均単価(万円・推定))→ 売上 236 億円・営業利益 −5 億円。点数 0.80 倍・単価 1.10 倍
倍率:ROE 3.1%(純利益 21 億円 ÷ 自己資本 678 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 9.0 倍より低い 7.2 倍(その 8 割)に置いた。売って得る資産の床は、家賃の約束・借入・減損を引くと小さいので別に立てない(従来の判断のまま)。
確率:相場の反落と買取の過当競争が重なる構造的な負け。小売と卸が薄利で、借入で在庫を抱える構造は 1 割を見込むに足る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内小売(店舗・EC・免税)
旗艦店・店舗・EC・免税で、ブランド品・時計・宝飾品などの中古を一般客と訪日客に売る事業。
| 数量販売点数(万点・推定) | 価格1 点あたり平均単価(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 8.00 | 960 | 66 |
| 10 年後 中立 | 172 | 11 | 1,844 | 133 |
取り方:連結売上 2,217 億円のうち小売を 4 割強と見て 960 億円と置いた(2027/03 期 1 四半期の小売比率 46%・海外分を除く)。販売点数 120 万点・平均単価 8.0 万円は推定で、単価はバッグ・時計・宝飾品の混ざりから逆算した。営業利益は粗利の高さを反映して 66 億円(本社費配賦後)。
法人販売(業者向け卸・オークション)
買い取った商品のうち店頭に向かない分を、古物商向けのオークションや卸で売る事業。
| 数量取扱点数(万点・推定) | 価格1 点あたり平均単価(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 4.95 | 989 | 22 |
| 10 年後 中立 | 234 | 6.63 | 1,550 | 36 |
取り方:法人販売を約 989 億円(売上の 45% 弱)と置いた。取扱 200 万点・単価 4.9 万円は推定。粗利は薄く営業利益は 22 億円(利益率 2.2%)とした。
海外(買取・販売)
タイ・マレーシア・シンガポール・香港などで、買取専門店と販売店を運営する事業。
| 数量取扱点数(万点・推定) | 価格1 点あたり平均単価(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 6.70 | 268 | 5 |
| 10 年後 中立 | 72.0 | 8.98 | 646 | 32 |
取り方:海外売上比率 12.1%(2026/03 期、会社資料)から 268 億円。取扱 40 万点・単価 6.7 万円は推定で、投資段階のため営業利益は 5 億円とした。 数量は実物(取扱点数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
リスクと懸念
相場の反落
ブランド品・時計・金の相場が下がると、在庫の評価損と売値の低下が同時に来る。高い在庫を抱える商売の宿命で、足元の増益の一部は相場の追い風でもある。
在庫と借入の重さ
在庫は約 500 億円、純負債は 351 億円で自己資本の 0.9 倍。売れ行きが鈍ると在庫が滞り、借入の金利が利益を削る。借り換えの金利は上がる前提だ。
免税・訪日客の変動
免税比率は 15% 台と高い。為替が円高に振れる、中国や海外の景気が悪くなる、といった外の事情で売上が動く。小売の粗利が最も厚い販路だけに影響が大きい。
買取の競争
大黒屋、セカンドストリート、ブランディア、メルカリが同じ個人の品を奪い合う。仕入値を上げれば粗利が細り、上げなければ量が取れない。仕入れの優位が崩れると成長の源が細る。
家賃の固定費
店舗の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。買取専門店を急いで増やすほど固定費が積み上がる。2028 年 3 月期からの新リース会計で、約束の重さが貸借対照表に表れる。
海外展開の実行
海外売上は 12% で 2029 年 3 月期に 30% を目指す。新しい国は買取の鑑定ノウハウの移転、現地の競合、為替の影響が重なり、投資回収に時間がかかる恐れがある。
計画の信頼度
中期計画は毎年見直す方式で、ROE の目標も 18% から 15% に下がった。計画を前提に値段を払うと、見直しのたびに期待が揺れる。
今後の分かれ目
- 金・ブランド品の相場が大きく下がった場合
- 在庫の評価損と値引き販売で粗利が崩れ、悲観寄りの筋書きに近づく。
- 買取専門店の出店ペースを保ちながら、粗利率が 22% を超えて定着した場合
- 小売優先の効果が構造として確かめられ、強気寄りの筋書きに近づく。
- 訪日客の免税売上が前年を大きく下回った場合
- 小売の粗利が落ち、利益率の改善が止まって中立より下を見ることになる。
- 海外のいずれかの国で現地の買取と販売が黒字化した場合
- 海外 30% の目標が現実味を帯び、楽観側の確率を上げる材料になる。
- 大手同業や商社が買収を提案した場合
- 提示価格をこの分析の本質価値と比べる局面になる。
- 在庫の回転率が下がり、借入が増え続けた場合
- 資本効率の悪化が続き、自己資本比率の低下とともに慎重な側の確率を厚くする。
見ておくもの
- 売上総利益率と小売比率の四半期推移
- 個人買取額と買取専門店の店舗数
- 在庫の額と回転率、純有利子負債
- 免税売上の前年比と円相場
- 海外各国の売上と損益(2029 年に 30% の道筋)
- 金・主要ブランド品・時計の相場
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去の PBR を見ず、k 8.5%・g 4%・RONIC(ROE を資本コスト寄りに薄めた値)から正当化 PER を出し、その 7〜8 割に置いた。中立の PER は 11 倍ほどで、今より高い。これは、10 年後の純利益が今の 2 倍以上になる前提による。足元の営業利益率 4.2% が相場の追い風を含む点を、小売の利益率を 7.2% 止まり・海外を 5% 止まりとして割り引いた。出店に伴う家賃は固定費として悲観に反映した。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた(2028 年 3 月期からの新リース会計で営業利益・純負債の形が変わる点は除く)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.1→16.09 倍・やや楽観 PER 11.6→15.65 倍・中立 PER 11.1→15.16 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 合計 +1.0% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。