結論
大黒屋は、ブランドのバッグ・時計・宝飾品を買い取って売る老舗だ。質屋も営む。売上の97%がこの事業で、残る3%は産業用の照明・制御機器である。筆者の結論ははっきりしている。再建の道筋は立ったが、今の時価総額は再建が計画どおりに進んだ先の姿まで織り込んでおり、本質価値は大きく下回る。
足元は苦しい。直近期の営業損失は6億円を超えた。純損失は20億円だが、うち13億円弱は英国子会社の売却に伴う会計上の取り崩しで、一過性だ。赤字の本当の原因は仕入れの失敗にある。在庫がコロナ前の3分の1まで細り、売る物がなかった。2025年12月にファンドのキーストーン・パートナースが43億円超を出資し、議決権の約7割を握った。この資金は在庫の買い入れに回る。出張買取事業の取得と、SBIグループとの提携も動き出した。
筆者が見る10年後の中心は、売上300億円前後・営業利益17億円前後だ。コメ兵のように買取専門店を広げる同業が先を走っており、大黒屋は追う側にいる。会社は2031年3月期に営業利益50億円を掲げるが、実績の裏づけはまだない。この計画がすべて実現しても、10年先の価値は今の時価総額に届かない。一方で、新しい資本が入り、倒産の心配は後退した。割高だが、立て直す価値のある事業だと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、大黒屋の問いはひとつだ。10年先、この会社は資本コストを超える稼ぎを毎年出し続けられるか。筆者の答えは、可能性はあるが、確かな根拠はまだない、である。
オーナーとして持ちたい会社かどうかを考える。値段を決める力がなく、仕入れの競争が厳しく、過去10年で黒字の年がほとんどない。強い堀が見当たらない事業に、長期の資金を預けるには、よほど安い値段が要る。安全域は、買う値段が利益の力に対して十分に低いかで決まる。
今の時価総額は、会社が掲げる2031年3月期の目標が全部実現し、その利益に高い倍率が付く姿を前提にしている。筆者はその前提を取らない。計画が全部実現しても、10年後の時価総額と還元の合計は、今の時価総額に届かない。
良い点もはっきり書いておく。ファンドの資金で在庫を厚くでき、倒産に近い局面は去った。出張買取で仕入れの入口が増えた。本業の質屋は、客が返済に来るため収益が読みやすい。ただ、これらは「普通の会社に戻る」ための条件であって、優れた会社になる理由ではない。資本の使い道は、在庫に回るお金が利益を生むかどうかを毎年確かめたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。お客から品物を買い取り、店やネットで売る。質屋では、品物を預かってお金を貸し、期限までに戻らなければ流質品として売る。利ざやは、買い取った値段と売れた値段の差で決まる。
子会社の大黒屋が全国に約24の支店・店舗を持つ。首都圏、近畿、中部が中心で、売上の大半は店舗だ。店舗で売り切れない品は、事業者向けの卸やオークションに出す。この本部の取引は直近期に大きく伸びた。金の価格が上がったことが効いている。
仕入れの入口は4つある。店舗での買取、イベント買取、宅配買取、中古品のオークションだ。2026年5月には、電話で予約を取って自宅に出向く出張買取の事業をVOOMから取得した。大黒屋が手薄だった入口を埋める狙いである。
もう一つの顔が電機事業だ。産業用の照明器具、制御機器、電気工事材を作って売る。売上は3億円台と小さいが、利益率は高い。
英国の質屋・買取グループSFLは、2026年3月に株式を譲渡して連結から外れた。維持費の重い海外事業を切り、国内に資本を集中する形になった。売上の柱は、国内で買い取って売る事業の1本に絞られたと言ってよい。
優良さと弱いところ
優良企業とは言いがたい。筆者はそう見ている。強みは鑑定力と顧客の厚みだ。偽物を見抜き、相場から外れない値を付ける目は、長年の蓄積でしか育たない。質屋の客は借りて返す常連が多く、安定した収益源になる。
ただ、値段を自分で決められる事業ではない。買取の値段は同業との競り合いで決まり、売値はメルカリなどの相場に引っ張られる。ブランドの価値は他社の品物で、大黒屋が持つものではない。参入の壁は低く、買取専門店を急速に増やすコメ兵などが、仕入れの競争を厳しくしている。
経営の実績は厳しい。営業利益は2016年3月期から赤字か薄利が続き、赤字の期が17にのぼる。売上は10年前の172億円から、直近は115億円まで縮んだ。前の経営陣は2029年3月期に売上874億円を掲げたが、遠く及ばない。原因は需要ではなく、仕入れと在庫の管理にあった。
改善の材料もある。ファンドの出資で資金繰りの不安が薄れ、在庫を積める。ただ、新しい経営体制の実績はまだ数か月分だ。資本効率は赤字続きで、評価できる材料がない。堀、つまり他社がまねできない強みは弱いと見て、資本コストを超える稼ぎが長く残るとは考えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
追い風は市場の大きさだ。リユース市場は2010年の1.65兆円から2024年の3.26兆円まで、約2倍に育った。物価高で中古を選ぶ人が増え、メルカリのような個人間売買も裾野を広げた。
ただ、この領域は大手が強い。コメ兵ホールディングスは直近期の売上が2,217億円で、前期から4割近く伸びた。買取専門店を1年で18店出し、法人向けオークションも伸ばしている。セカンドストリートを持つGEOグループは、ブランド品に絞った店舗づくりで客単価を狙う。バリュエンスの「なんぼや」も黒字に転じた。仕入れの量を握った会社が、売る力も握る構図だ。
競争の中心は仕入れにある。買取専門店、出張買取、宅配買取、イベント買取と入口が増え、買い取る側が競り合う。金やブランド時計の相場が上がると、買取の客は増えるが、仕入れの値も上がって利ざやは薄くなる。
大黒屋はこの中で小さな会社だ。市場全体に占める割合は1%に届かない。筆者は、規模で勝つ道は難しいと見ている。勝ち筋は、質屋で育てた鑑定力と、SBIグループの顧客基盤を生かした法人向けの金融にある。市場が伸びても、大黒屋がその恩恵を取れるとは限らない。
資本政策と M&A
資本政策の主役はキーストーン・パートナースだ。2025年12月に43億6,500万円の第三者割当増資を引き受け、議決権の約7割を持つ親会社になった。資金のうち24億5,000万円は在庫の買い入れに使う。銀行のコミットメントライン35億円も借り換え、財務制限条項に触れて返済を迫られていた問題は解消に向かった。
ファンドが親会社になった意味は2つある。1つは、資金と信用が戻ったことだ。もう1つは、ファンドの出口が株式の売却か買収かという点で、少数株主にとっては条件の見えにくい局面になる。株主還元は当面期待できない。
買収は両面にある。出張買取事業の取得(約4億円)のように、仕入れの入口を買う動きは筋が通る。会社は中期計画でM&Aによる営業利益10億円も掲げる。ただ、小さな会社が買収を重ねて失敗する例は多い。
SBIホールディングスとは、相互送客と新規事業の共同開発で基本合意を結んだ。具体的な成果は、まだ見えない。大黒屋の発行済み株式数は約7.4億株と多く、追加の増資があれば、既存株主の持ち分はさらに薄まる。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):起点の損失は為替換算調整勘定の取崩損 12.8 億円を除き、株数は第三者割当後の 7.4 億株、追加増資の希薄化は悲観側に入れ、中立の黒字は会社予想の延長で置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
再建は本物だ。赤字の原因は需要の不足ではなく、在庫が3分の1に細った一点にある。ファンドが43億円を入れ、その大半が在庫に変わる。売る物が戻れば、店は元の売上を取り戻す。直近期の売上は前期から12%伸び、第4四半期は前年の1.4倍近い勢いだった。出張買取の取得で売上の規模が一段上がる。
リユース市場は2倍に育ち、今も伸びている。大黒屋は鑑定力と全国24の拠点を持ち、質屋で顧客の信用を見る力もある。SBIグループの顧客基盤が使えれば、法人向けの動産担保融資という新しい稼ぎ口も開ける。会社の計画は、既存事業で売上300億円・営業利益30億円、これに買収と金融で20億円を足す。営業利益が50億円に届けば、純利益は30億円台になり、ROEも20%近くまで上がる。
ファンドは短期に結果を出す必要があり、経費の削減も進む。親会社が決まったことで、過去のようなちぐはぐな経営は減る。再建が当たれば、ファンドが出口として買収や上場の見直しを選ぶ場面もある。
慎重な見方
計画の数字は、これまで一度も実現していない。前の計画は2029年3月期に売上874億円・営業利益110億円だったが、実績は赤字だ。直近期の営業損失は6億円を超え、会社予想の黒字13億円は、1年で19億円の改善を求める。出張買取の連結が主因で、中身の改善とは限らない。
事業の構造に変わりはない。買取の値段は競争で決まり、売値は相場で決まる。コメ兵は規模と店舗網で仕入れを押さえ、営業利益率は4%ほどに過ぎない。それより小さい大黒屋が、同じ土俵で同じ利益率を取るのは難しい。金の値段が崩れれば在庫の価値も落ちる。
お金の面でも楽観できない。営業のキャッシュフローは31億円の流出で、在庫に資金が吸われる。借入は変動金利で、金利が上がれば負担が増える。財務制限条項は残る。家賃は年に8億円あり、売上が落ちても減らない。ファンドの出口は、少数株主の利益と一致するとは限らない。追加の増資があれば、持ち分はさらに薄まる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。強気の主張は、再建が進む筋道としては整っているが、10年の稼ぐ力に直すと今の値段には届かない。実績が積み上がるまで、計画の数字は割り引いて見るしかない。
確率は悲観側に寄せた。新しい資本が入ったため、すぐに倒産する筋書きは重く見ない。ただ、10年の間に追加の増資や事業の縮小に追い込まれる筋書きを、やや悲観と悲観で合わせて5割近くに置いた。強気の目標が実現する筋書きは、楽観とやや楽観で2割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 12 円91 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 5 円36 億円、今との差 −93.6%、 期待の年率 −16.2%(資本コスト 10.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 49 円359 億円 | 5 円40 億円 | −29.0% | −3.4% | 3 円20 億円 |
| やや楽観 | 15% | 23 円171 億円 | 2 円15 億円 | −66.9% | −10.5% | 4 円28 億円 |
| 中立 | 33% | 14 円103 億円 | 1 円5 億円 | −80.8% | −15.2% | 5 円36 億円 |
| やや悲観 | 29% | 4 円30 億円 | 0 円0 億円 | −94.7% | −25.4% | 1 円9 億円 |
| 悲観 | 18% | 3 円24 億円 | 0 円0 億円 | −95.7% | −27.1% | 1 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 12 円91 億円 | 1 円6 億円 | −82.8% | −16.2% | 13 円97 億円 |
今の株価時価総額 76 円562 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.8% を下回るほど割高。
楽観 5% 計画どおり:専門店網と金融で規模を取る 利益 33 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 49 円359 億円
在庫が戻り、出張買取が軌道に乗る。店舗は40店台に増え、買取専門店と委託販売で1店あたりの売上も伸びる。法人買取と出張買取が仕入れの入口を広げ、本部の卸も量が増える。SBIグループとの送客で顧客が増え、動産を担保にした法人向けの金融と、小さな同業の買収が営業利益を押し上げる。
営業利益は50億円台に乗り、利益率は10%に近づく。配当と自社株買いも出せる会社になる。コメ兵のような規模には届かないが、鑑定力を持つ中堅として評価される。資本コストを超える稼ぎが安定して残る、というところまで行く筋書きである。
- 店舗・EC(個人向けの買取と販売・質):数量 44.0(店舗・支店の数(店))× 価格 5.60(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 246 億円・営業利益 27 億円。44 店 × 1 店 5.6 億円、営業利益率 11%
- 本部商品(事業者・オークション向けの卸):数量 110(卸す品物の点数(千点))× 価格 6.90(1 点あたりの売値(万円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 2 億円。110 千点 × 6.9 万円、利益率 3%
- 出張買取(VOOMから2026年5月に取得):数量 28.0(買取の件数(千件))× 価格 52(1 件の買取品から得る売上(万円・名目))→ 売上 146 億円・営業利益 12 億円。28 千件 × 52 万円、利益率 8%
- 電機事業(産業用の照明・制御機器):数量 40.0(出荷の台数(千台))× 価格 1.34(1 台あたりの売値(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。40 千台 × 1.34 万円
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.7% が k 10.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 15.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.9 倍。全体の PER 10.89 倍、時価総額 359 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画(既存事業で営業利益30億円、買収と法人金融で20億円)がほぼ全部実現する筋書き。赤字が長く続いた会社でそこまで行く例は少なく、5%にとどめた。
やや楽観 15% 計画の7割:黒字が定着し、じわじわ広がる 利益 16 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 23 円171 億円
在庫が積み上がり、売上が回復する。店舗は38店ほどに増え、出張買取も年々件数が伸びる。ただし、買取専門店の同業との競り合いで、利益率は計画ほど上がらない。営業利益は20億円台に乗り、純利益は16億円前後。
配当や自社株買いは小さく、稼いだ利益の多くは在庫と出店に回る。買収は小粒で、効果は限られる。堅実な中堅専門店として、黒字が続く10年になる。買収に頼らず、足元の事業を磨いて積み上げる姿だ。筆者は、赤字の歴史を踏まえても、ここまでは十分にありうると見る。ただ、同業が仕入れを押さえる中で、これ以上の上振れは難しい。
- 店舗・EC(個人向けの買取と販売・質):数量 38.0(店舗・支店の数(店))× 価格 5.30(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 201 億円・営業利益 20 億円。38 店 × 1 店 5.3 億円、営業利益率 10%
- 本部商品(事業者・オークション向けの卸):数量 90.0(卸す品物の点数(千点))× 価格 6.80(1 点あたりの売値(万円・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 2 億円。90 千点 × 6.8 万円
- 出張買取(VOOMから2026年5月に取得):数量 22.0(買取の件数(千件))× 価格 51(1 件の買取品から得る売上(万円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 8 億円。22 千件 × 51 万円
- 電機事業(産業用の照明・制御機器):数量 38.0(出荷の台数(千台))× 価格 1.34(1 台あたりの売値(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。38 千台
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.2% が k 10.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.6 倍。全体の PER 10.56 倍、時価総額 171 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の7割ほどが実現し、黒字が定着する筋書き。ファンドの資金と出張買取で、少なくとも在庫と仕入れの問題は直るという見方。
中立 33% 中立:黒字にはなるが、利益率の低い専門店のまま 利益 10 億円 · PER 10.2 倍 · 株価時価総額 14 円103 億円
在庫の不足は解消し、出張買取が加わって売上は300億円前後まで増える。ただし伸びの多くは、仕入れを増やした分と物価で、店あたりの稼ぎは同業並みにとどまる。買取専門店と競り合う限り、買取の値段を下げて利ざやを取ることはできない。
営業利益は17億円前後で、利益率は5%台だ。コメ兵の4%台と大きくは変わらない。新規出店と出張買取への投資で、配当に回す余力は小さい。ファンドが出口で株を売る場面があっても、事業の姿は大きく変わらない。堅実に黒字を出すが、突き抜けない会社になる。筆者は、これが最も起こりやすい姿だと見る。家賃と借入の固定の約束を抱えたまま、薄い利益率で走る会社である。
- 店舗・EC(個人向けの買取と販売・質):数量 32.0(店舗・支店の数(店))× 価格 5.00(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 160 億円・営業利益 14 億円。32 店 × 1 店 5.0 億円、営業利益率 9%
- 本部商品(事業者・オークション向けの卸):数量 70.0(卸す品物の点数(千点))× 価格 6.70(1 点あたりの売値(万円・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。70 千点 × 6.7 万円、利益率 2%
- 出張買取(VOOMから2026年5月に取得):数量 18.0(買取の件数(千件))× 価格 50(1 件の買取品から得る売上(万円・名目))→ 売上 90 億円・営業利益 5 億円。18 千件 × 50 万円、利益率 6%
- 電機事業(産業用の照明・制御機器):数量 36.0(出荷の台数(千台))× 価格 1.34(1 台あたりの売値(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。36 千台
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 10.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.2 倍。全体の PER 10.21 倍、時価総額 103 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出張買取の取得と資本で黒字には戻るが、同業との競争と利益率の低さが続く、中心の筋書き。赤字が長かった会社の再建は、会社の計画より遅れるのが普通と見た。
やや悲観 29% やや悲観:黒字は薄く、増資で持ち分が薄まる 利益 −2 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 4 円30 億円
在庫は戻るが、仕入れの競争に負け、買取の値を上げて利ざやを削る。出張買取は件数が思うように伸びず、営業の経費がかさむ。売上は200億円近くに増えても、営業利益は薄く、支払利息を引くと赤字に戻る年が出る。
資金は在庫に吸われ、借入が増える。ファンドが追加の資金を入れることもあるが、そのたびに既存の株主の持ち分は薄まる。店の数は増えず、家賃8億円の固定の約束だけが重く残る。再建途上のまま10年が過ぎる筋書きだ。追加の増資は合計20億円ほどを見込み、時価総額はその新しい株を含む額で置いた。筆者は、ここが今の会社にとって最も現実に近い下振れだと考える。
自己資本 23 億円は、今の 54 億円に純利益の合計(約 −51 億円)を足し、追加の増資 20 億円を足した額(54 − 51 + 20 ≒ 23)。増資の分が流れより厚い理由である。
- 店舗・EC(個人向けの買取と販売・質):数量 26.0(店舗・支店の数(店))× 価格 4.40(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 4 億円。26 店 × 1 店 4.4 億円、営業利益率 3.5%
- 本部商品(事業者・オークション向けの卸):数量 60.0(卸す品物の点数(千点))× 価格 6.00(1 点あたりの売値(万円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 0 億円。60 千点 × 6.0 万円
- 出張買取(VOOMから2026年5月に取得):数量 10.0(買取の件数(千件))× 価格 42(1 件の買取品から得る売上(万円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 1 億円。10 千件 × 42 万円
- 電機事業(産業用の照明・制御機器):数量 32.0(出荷の台数(千台))× 価格 1.20(1 台あたりの売値(万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。32 千台
倍率:稼ぐ力(赤字に近い)では評価できず、今の自己資本 54 億円に 0.56 倍を掛けた床。在庫と質の貸付金を値引きして売った手取りと現金から借入を引いた額で支える。EV÷営業利益は 235 倍と出るが、営業利益が 0.3 億円とほぼ無く倍率として意味を持たないため、EV でなく床の手取りで見た。
確率:計画が大きく遅れ、利益がほぼ出ない筋書き。過去の実績(赤字17期)と、同業との競争を考えると、単純な失敗より起こりやすいと見て、約3割とした。
悲観 18% 悲観:仕入れで負け、縮小と希薄化に追い込まれる 利益 −8 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 3 円24 億円
買取専門店と出張買取の同業が仕入れを押さえ、大黒屋の買取は細る。在庫が薄くなれば売上が縮み、固定の家賃と人件費が重くのしかかる。金の相場の下落で、在庫の評価損も出る。
営業赤字が続き、財務制限条項に再び触れる。ファンドは追加の増資か、事業の縮小かを迫られ、不採算の店が閉じられる。増資が入れば既存の株主の持ち分は大きく薄まる。出張買取の取得は、買った値段を回収できないまま減損になる。小さな質屋と電機事業の会社として、残りの資産で生きる筋書きである。増資は2回で合計40億円ほどを見込み、時価総額はその新しい株を含む額で置いた。
- 店舗・EC(個人向けの買取と販売・質):数量 18.0(店舗・支店の数(店))× 価格 3.70(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 −2 億円。18 店 × 1 店 3.7 億円、赤字
- 本部商品(事業者・オークション向けの卸):数量 40.0(卸す品物の点数(千点))× 価格 5.00(1 点あたりの売値(万円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。40 千点 × 5.0 万円
- 出張買取(VOOMから2026年5月に取得):数量 3.0(買取の件数(千件))× 価格 40(1 件の買取品から得る売上(万円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。3 千件 × 40 万円
- 電機事業(産業用の照明・制御機器):数量 30.0(出荷の台数(千台))× 価格 1.10(1 台あたりの売値(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。30 千台
倍率:床は今の自己資本 54 億円に対する 0.44 倍(約 24 億円)。在庫の大幅な値引き、保証金の回収不能、閉店費用を引いた手取りで置いた。
確率:再び仕入れと資金繰りが行き詰まる筋書き。10年の間に、同業の攻勢や金の相場の急落、経営の判断ミスが重なる可能性を、過去の経緯から2割弱に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
店舗・EC(個人向けの買取と販売・質)
全国の店舗とネットで、個人からブランド品を買い取り、売る。質屋の貸付と流質品の販売を含む。
| 数量店舗・支店の数(店) | 価格1 店あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24.0 | 3.42 | 82 | −2 |
| 10 年後 中立 | 32.0 | 5.00 | 160 | 14 |
取り方:有価証券報告書の支店等 24 を店数とし、質屋・古物売買業の売上 111.3 億円のうち、店舗・EC を約 82 億円と推定した(本部の卸は別に約 26 億円。割りは開示がなく推定)。営業損失は質屋・古物売買業の -3.0 億円を店舗 -2.0・本部 -1.0 に推定で分けた。在庫が細った期なので 1 店あたりは本来より低い。
本部商品(事業者・オークション向けの卸)
店舗で売り切れない品や金・宝飾の地金を、事業者やオークションに卸す。
| 数量卸す品物の点数(千点) | 価格1 点あたりの売値(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 51.6 | 5.00 | 26 | −1 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 6.70 | 47 | 1 |
取り方:卸の売上を約 26 億円と推定し、金・時計・バッグの混ざった平均売値を 1 点 5 万円として点数を逆算した(推定)。金の値上がりで金額が膨らんだ期。
出張買取(VOOMから2026年5月に取得)
電話で予約を取り、お客の自宅へ出向いて貴金属・ブランド品を買い取る。取得した品は店舗と本部で売る。
| 数量買取の件数(千件) | 価格1 件の買取品から得る売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 37 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 50 | 90 | 5 |
取り方:2026 年 5 月の取得なので直近期の売上は無い。1 件あたり約 37 万円は、貴金属中心の出張買取の売上を同業の例から推定した(開示なし)。
電機事業(産業用の照明・制御機器)
産業用の照明器具、制御機器、電気工事材を作って売る。
| 数量出荷の台数(千台) | 価格1 台あたりの売値(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 34.0 | 1.00 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 1.34 | 5 | 1 |
取り方:売上 3.4 億円・セグメント利益 1.27 億円は有報の値。台数と単価は推定。
リスクと懸念
仕入れの失敗が再び起きる
在庫がコロナ前の3分の1まで細ったことが、直近の赤字の最大の原因だった。買取の値を競り合い、仕入れの量を保てなければ、売る物がなくなる。ファンドの資金で在庫を積み直しても、仕入れの競争力が戻らなければ同じことが繰り返される。
計画の数字が届かない
会社は2031年3月期に、既存事業で売上300億円・営業利益30億円を掲げる。前の計画(2029年3月期に営業利益110億円)は実現していない。出張買取の連結で来期は一気に黒字になる予想だが、中身の改善とは限らない。
追加の増資で持ち分が薄まる
発行済み株式は約7.4億株と多く、親会社のファンドは議決権の約7割を持つ。資金が足りなくなれば追加の増資に頼る場面があり、既存の少数株主の持ち分は薄まる。ファンドの出口の形も、少数株主に有利とは限らない。
金と相場の変動
金やブランド時計の相場が崩れれば、在庫の評価損が出る。直近期の本部商品の増加には金の高騰が効いた。相場が反転すれば、その分が消える。買取の客は相場が高い時に増えるが、仕入れの値も上がるので、利ざやは薄くなる。
家賃と借入の固定の約束
大黒屋の店舗の年間賃借料は約8億円で、売上が落ちても減らない。借入は変動金利で、金利が上がれば負担が増える。財務制限条項(経常利益と純資産の維持)に触れると、銀行が返済を求める。2028年3月期から新リース会計で、家賃が負債として貸借対照表に載り、見かけの自己資本比率は下がる。
法令と偽物のリスク
古物営業法、質屋営業法、犯罪収益移転防止法に違反すれば、営業停止の恐れがある。偽物や盗品を買い取った場合、信用と損失の両面で打撃になる。出張買取は訪問を伴い、勧誘や強引な買取の苦情が出やすい業態でもある。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が、会社予想の13億円を上回って黒字が定着したら
- 仕入れの問題が直ったと見て、やや楽観・楽観側に確率を寄せる。出張買取の寄与が一過性でないことも確かめる。
- 店舗の1店あたりの売上が、今の3.4億円から大きく戻らなかったら
- 在庫を積んでも売れない構造と見て、やや悲観側に寄せる。
- キーストーン・パートナースが追加の増資や、株式の売却・買収を発表したら
- 少数株主の持ち分と価値への影響を、条件を見て筋書きに反映する。増資なら悲観側に、高い値での買収なら価値の見直しになる。
- 金の相場が大きく下がり、本部の卸と在庫の評価に影響したら
- 本部の売上と利益を下げ、やや悲観側に寄せる。
- SBIグループとの提携で、法人向けの金融が具体的に動き出したら
- 計画の営業利益10億円の一部が実現する兆しとして、楽観側の確率を少し上げる。
- 財務制限条項に再び触れ、銀行が返済を求めてきたら
- 悲観の筋書きが近づいたと見て、確率を悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益と、店舗・出張買取それぞれの売上
- 在庫の水準と仕入れの量(コロナ前との比較)
- コミットメントラインの残高と財務制限条項
- キーストーン・パートナースの追加の資金や株式の動き
- SBIグループとの提携の具体的な成果
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や同業の倍率を見ず、資本コスト10.75%(基本7.5%に品質+1.5%と上乗せ+1.0%)と、長期成長率4%、ROEから式で出した。中立は ROE が k を上回るため下限の 1÷k(10 倍)に置く。悲観は稼ぐ力ではなく、現金と在庫・貸付金の手取りの床で置いた。結果、今の時価総額は10年の最良の筋書きの価値も超えており、割高が強く出る。計画の目標が全部実現しても届かない点は、数字の積み上げ(売上・利益率・倍率)から出た結論で、株価に合わせにいっていない。リースは今と同じ形(家賃を営業費用に含む)で置いた。2028年3月期の新リース会計で、営業利益は少し増え、負債は増える。ROEは増資直後の薄い自己資本のため中立で17%と高く出るが、事業の稼ぐ力(営業利益率5%台)とは別で、中立は下限の 1÷k に置いた。やや悲観・悲観の自己資本が流れより厚いのは、追加の増資(合計20億円・40億円)を story に書いたため。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→10.89 倍・やや楽観 PER 9→10.56 倍・中立 PER 10→10.21 倍)。
資本コスト 10.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。基本 7.5% に quality +1.5% と、傾いた事業の上乗せ +1.0% を足して 10.0%。個別の懸念は筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.00% → 10.75%。