結論
大東銀行は、福島県の中通り(郡山市)を地盤とする自己資本比率 3.3% の小さな地方銀行だ。筆頭株主は東邦銀行で、再編の火種を抱える。筆者の見方では、10 年の本源価値は今の時価総額をやや下回る(差は 2 割ほどの割高)。
理由は二つある。一つ目は利ざやの回復だ。短期金利が 2% に定着し、貸出の利ざやが広がる。純利益は 2026 年 3 月期の 17 億円から、中立で 25 億円まで伸びる。二つ目は割安さだ。今の PBR は 0.56 倍で、中立の 10 年後も ROE 5.5% は資本コスト 9% に届かない。利益と配当は増えるが、期待の年率は 5% 台で、資本コスト 9% には届かない。
重しは三つある。保有債券の評価差額金の赤字が自己資本の半分を超えること、福島県の人口が 2050 年に 3 割減ること、東邦銀行との関係が決まらないことだ。再編に乗れば価値は大きく上がるが、救済に近い形なら少数株主は損をする。
筆者なら、値段が今より 2 割ほど安く、評価損が縮み始めたと確かめられた時に買う。再編の条件は、少数株主に不利でないか見極めてから動く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、安いが資本が薄く、安全域を数えにくい銀行だ。
PBR 0.56 倍、PER 9〜10 倍は、見た目には割安だ。自己資本の半分に迫る含み損が、金利が戻れば縮んで資本が厚くなる余地もある。配当を 3 割で守る方針は、資本が薄い時期には堅実だ。
一方で、事業の儲け口は広がらない。福島県の人口は 2050 年に 3 割減り、県内の最大手と競う。ROE は 10 年後も資本コストに届かず、内部留保を増やしても株主にとっての価値は薄い。再編が動けば値段が跳ねるが、救済の形なら少数株主は報われない。
筆者なら、含み損が縮み始め、自己資本比率が上向く確認を待つ。値段が自己資本の半分以下でも、資本が薄い銀行は別の理由で買われなくなる。再編の話が出た時は、比率と条件を読んでから動く。
逆に、利ざやで利益が伸びて、配当が増える形は十分にありうる。値段が今より 2 割ほど安ければ、待つ間の配当も含めて資本コストに届く。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、福島県の中通り(郡山市)を地盤とする貸出だ。
法人貸出は貸出残高 6,990 億円(2026 年 3 月末)のおよそ 6 割で、地域の中小企業と不動産業向けが中心になる。個人貸出は住宅ローンやアパートローンで、残りの 4 割ほどだ。預金は譲渡性預金を含めて 8,310 億円で、貸出に回らない分は有価証券(1,202 億円)で運用する。国債等の売却損が前期は 11 億円出ており、運用の収益は金利の変化で大きく振れる。
手数料は役務取引等収益で 24 億円、預かり資産は約 1,400 億円で、本業の利益に占める割合は小さい。経費は 75 億円で、利益のうち経費に消える割合は高い。
2026 年 3 月期の経常利益は 24.9 億円、純利益は連結で 16.8 億円だった。黒字は 15 期続いている。
会社の戦略は、郡山を中心とする創業支援と事業承継の支援、地域の中小企業への伴走だ。新しい中期経営計画(2026 年 4 月〜2029 年 3 月)は、最終年度に ROE 5% 以上、単体の純利益 16 億円以上、実勢コア業務純益 35 億円以上を掲げる。
株主の面では、2025 年 12 月に東邦銀行が投資会社から株を買い、約 2 割を持つ筆頭株主になった。会社は自主独立を掲げ、東邦銀行の対話の申し入れには応じていない。地元で最大の東邦銀行と、県内でも小さい大東銀行の関係は、この銀行の価値を左右する。
優良さと弱いところ
良さは地盤の密度にあり、弱さは資本の薄さにある。
良い点は、郡山を中心とする地域の中小企業との長い取引だ。経営は 15 期連続の黒字で、貸出残高は 7,000 億円台に乗った。配当性向は 3 割を目安に安定している。中計は ROE 5% 以上と、前の計画(3.5% 以上)から目標を引き上げた。
弱い点は三つある。一つ目に、単純な自己資本比率が 3.3% と薄い。二つ目に、その他有価証券の評価差額金の赤字が 155 億円と、自己資本(291 億円)の半分を超える。金利がさらに上がれば、この赤字は広がる。三つ目に、県内の最大手である東邦銀行に対し、貸出のシェアが小さく、値決めの力は弱い。
地盤の福島県は、2050 年に人口が約 3 割減る見通しだ。浜通りの復興需要を除けば、貸出の伸びは名目でも物価に届かない年が出る。
quality は、循環 +0.5%、値決め力 +0.25%、借金 +0.25%(自己資本比率 3.5% 未満と評価差額金の赤字が 15% 超)、寿命 +0.5%(人口減 32%)の合計 +1.5%、k は 9.0% とした。資本が薄い分、市場は再編か救済を前提に値段を付けていると筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行の「金利のある世界」は、2024 年の政策金利の解除から始まった。
短期金利が 2% に上がる間、変動金利の貸出はほぼ全部が上がる。預金金利は預金ベータ(4 割ほど)の分だけ遅れて追うので、利ざやは広がる。10 年後に短期 2%・長期 3% で落ち着けば、地銀の貸出の利ざやは今より 0.4〜0.5% ほど高い水準で安定する。
一方で、国債や外債などの債券は、金利が上がると評価損が出る。大東銀行のように資本が薄い銀行は、評価損が自己資本に直接響く。満期まで持てば元本が戻るので、時間とともに赤字は縮むが、その間は配当や再編の交渉力を縛る。
貸出の需要は、人口の減る地方では名目で物価並みにしか伸びない。福島県は 2050 年に人口が約 3 割減る。浜通りの復興需要は支えだが、長くは続かない。競争は県内の最大手の東邦銀行、福島銀行、第二地銀、信用金庫、ネット銀行が重なり、貸出の利ざやは競争が決める。
再編は構造の変化だ。東北では北東北の地銀 3 行が統合へ向かい、福島県内でも東邦銀行が大東銀行の株を取得した。小さな銀行は、システム費用の負担から単独では ROE が上がりにくい。10 年の見立てでは、利ざやで利益は伸びるが、規模の小さな単独行の ROE は 4〜6% にとどまる。分かれ目は、再編に乗るか、単独で費用を抑え切るかだ。
資本政策と M&A
資本の使い方は、配当を 3 割で守りつつ、資本の積み増しを優先する形だ。
配当は純利益の 3 割を目安とし、2026 年 3 月期は増配して配当性向 30.2%、翌期も同じ額を予定する。自社株買いは行わず、内部留保を厚くする方針をとる。自己資本比率の低さを考えれば、妥当な選択だ。
資本の重しは、評価差額金の赤字だ。2025 年 3 月期の約 115 億円から 2026 年 3 月期は約 155 億円に広がり、自己資本は 318 億円から 291 億円へ減った。金利が落ち着けば満期で縮むが、その速さは保有債券の残存期間と金利の経路で決まる。
株主の面では、東邦銀行が約 2 割を持つ筆頭株主だ。会社は自主独立を掲げ、対話に応じていない。東邦銀行が株を売るか、統合へ進むかで、少数株主の取り分は大きく変わる。筆者は、統合は救済に近い形になりやすく、比率が少数株主に不利に出るおそれを重く見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利ざやは今より広がる。短期金利が 2% に定着し、変動金利の貸出は全部が上がる。預金金利は遅れて追うので、広がった分の多くは銀行に残る。2026 年 3 月期の純利益は連結で 17 億円、10 年後は中立で 25 億円、楽観では 37 億円に伸びる。今の PBR は 0.56 倍で、中計が掲げる ROE 5% を達成するだけで、自己資本に対する値段は戻る。筆頭株主の東邦銀行は、福島県内の再編を主導しうる。統合が実現すれば、システム費用と本部費用を分け合え、小さな銀行の最大の弱みが消える。評価差額金の赤字は、満期で縮む。債券の元本は戻るので、金利が落ち着けば自己資本は 155 億円分の追い風を受ける。配当は 3 割の目安で、増益に合わせて増える。10 年間もらえる配当だけで、今の時価総額の 4 割以上になる。再編の有無にかかわらず、利益の伸びで値段は今に近づく。さらに、地域の中小企業の事業承継や創業の支援は、手数料と貸出の両方を押し上げる。経費は物価で増えるが、システム投資の山は越えつつあり、利益率の改善が出る年も多い。小さな銀行が県内で生き残る例は多く、地盤の密度は簡単には崩れない。
慎重な見方
資本が薄い銀行に、安全域は少ない。単純な自己資本比率は 3.3% で、その他有価証券の評価差額金の赤字は 155 億円と自己資本の半分を超える。金利がさらに上がれば、赤字は広がり、配当や自社株買いを縛る。福島県の人口は 2050 年に 3 割減り、貸出は名目でも物価並みにしか伸びない。県内最大手の東邦銀行と競り合い、貸出の値決めの力は弱い。10 年後の ROE は中立でも 5.5% で、資本コスト 9% に届かない。ためた利益は額面ほどの価値がない。東邦銀行は約 2 割を持つが、会社は対話に応じず、統合の道筋は見えない。東邦銀行が株を手放す選択もあり、その時は再編の期待が値段から剥がれる。統合が動いても、救済に近い形なら、比率は少数株主に不利に出る。さらに、経費は物価で増え続け、システム費用は小さな銀行ほど重い。与信費用が景気の谷で急増すれば、数年分の利益が一度に消える。PBR 0.56 倍は割安ではなく、資本の薄さに対する市場の正当な値引きだ。配当を 3 割で守る方針は、増益が続く時だけの約束であり、資本が目減りすれば削られる。評価損を抱えたまま資本を食えば、株主の取り分は薄まる一方だ。
どちらに重みを置いたか
利ざやの回復で利益と配当は伸びるが、ROE が資本コストに届かず、本源価値は今の時価総額をやや下回る。評価損と薄い資本、再編の読めなさが下振れの幅を広げる。悲観に 10%、やや悲観に 25% を置き、期待の年率は 5% 台とした。評価差額金の赤字が縮む確認と、東邦銀行との関係の動きが、確率を動かす。値段が自己資本の 6 割を割り、評価損の縮みが確かめられるなら、買い手の側に回ってよい。逆に、再編が救済の形に傾いた時は、確率を悲観側へ移す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,862 円236 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 512 円65 億円)。 今の値に割り戻すと 1,119 円142 億円、今との差 −3.9%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,248 円412 億円 | 946 円120 億円 | +260.0% | +13.7% | 335 円43 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,460 円312 億円 | 670 円85 億円 | +168.6% | +10.4% | 532 円68 億円 |
| 中立 | 40% | 2,232 円283 億円 | 536 円68 億円 | +137.6% | +9.0% | 1,107 円141 億円 |
| やや悲観 | 25% | 881 円112 億円 | 355 円45 億円 | +6.1% | +0.6% | 309 円39 億円 |
| 悲観 | 10% | 709 円90 億円 | 197 円25 億円 | −22.2% | −2.5% | 91 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,862 円236 億円 | 512 円65 億円 | +103.8% | +7.4% | 2,374 円301 億円 |
今の株価時価総額 1,165 円148 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:東邦銀行との関係が再編に進み、規模の利益と金利の追い風が重なる 利益 37 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 3,248 円412 億円
短期金利が 2% に定着し、変動金利の貸出の利ざやが広がる。筆頭株主の東邦銀行との関係が協業から統合へ進み、システム・本部の費用が分け合える。福島県内の法人貸出は郡山を中心に年 4% 近く伸び、貸出残高は 0.97 兆円まで増える。有価証券は評価損が満期で薄れ、運用の収益が戻る。手数料は投信・保険の預かり資産とともに伸びる。経費は物価と賃金の上昇で増えるが、統合の効果で率は下がる。与信費用は景気の山と谷を均した低めの水準に収まる。純利益は 37 億円に届き、会社の配当方針は 4 割近くへ引き上がる。
- 法人貸出:数量 0.6(事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 90 億円・営業利益 24 億円。n
- 個人貸出:数量 0.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 48 億円・営業利益 11 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.02(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 25 億円・営業利益 12 億円。n
- 手数料・資産運用:数量 0.2(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.02(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 36 億円・営業利益 6 億円。n
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 412 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再編が実際に動き、金利上昇も大きく味方する形。実績の乏しい筋書きなので 8% にとどめた。
やや楽観 17% やや楽観:利ざやの広がりが計画どおり出て、中計の ROE を上回る 利益 28 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,460 円312 億円
利ざやは短期金利 2% の定着で広がり、預金の金利も遅れて追うが、広がりの大半は残る。法人貸出は年 3.5% 前後、個人貸出は 2.5% 前後で伸び、貸出残高は 0.83 兆円になる。有価証券の評価損は時間とともに縮み、売却損の負担は軽くなる。手数料は預かり資産とともに緩やかに増える。東邦銀行は大株主として関係を続けるが、統合には進まず、協業は共同調達など小さな範囲にとどまる。経費は物価で増え続けるため、利益率の改善は小さい。純利益は 28 億円、配当性向は 3 割台前半を保つ。県内の人口減は織り込み済みで、浜通りの復興需要が貸出の下支えになる。大きな景気後退は起きず、与信費用は低位にとどまる。自己資本は評価損の戻りで厚みを増し、資本比率は 4% 台に近づく。
- 法人貸出:数量 0.5(事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 73 億円・営業利益 18 億円。n
- 個人貸出:数量 0.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 39 億円・営業利益 8 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.02(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 23 億円・営業利益 10 億円。n
- 手数料・資産運用:数量 0.2(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.02(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 28 億円・営業利益 4 億円。n
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 312 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の ROE 5% 以上を超えて、業界の標準的な改善が出る筋書き。
中立 40% 中立:利ざやは広がるが、人口減と薄い資本が伸びを抑える十年 利益 26 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,232 円283 億円
短期金利 2%・長期金利 3% が定着し、貸出の利ざやは今より広い水準で安定する。福島県の人口は 2050 年に 3 割ほど減る見通しで、貸出は名目で年 2.5〜3% の伸びにとどまる。法人貸出は 0.56 兆円、個人貸出は 0.35 兆円まで増える。預金金利は遅れて追い、広がった利ざやの一部は預金集めの競争で消える。有価証券は評価損が満期で縮むが、金利の上昇は新たな評価損も生む。経費は物価と賃金の上昇で増え、システム更新も続く。与信費用は景気の山と谷を均した水準に戻る。純利益は 25 億円。配当は純利益の 3 割を目安に増え、残りは自己資本の積み増しに回る。統合は大きなものは起きず、東邦銀行との関係は協業にとどまる。
- 法人貸出:数量 0.6(事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 78 億円・営業利益 17 億円。n
- 個人貸出:数量 0.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 42 億円・営業利益 7 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.02(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 22 億円・営業利益 9 億円。n
- 手数料・資産運用:数量 0.2(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.02(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 30 億円・営業利益 4 億円。n
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 283 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの回復と福島県の人口減が相殺する、地銀の標準的な筋書き。最も重く 40% を置いた。
やや悲観 25% やや悲観:金利上昇が評価損と預金流出を呼び、利益が頭打ちになる 利益 15 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 881 円112 億円
金利の上昇で、国債・外債の評価損が膨らむ。含み損を抱えたまま売却を先送りし、運用の収益が伸びない。預金金利は競争で上がり、利ざやの広がりは想定の半分に削られる。法人貸出は年 1% 台の伸びにとどまり、個人貸出は地域の人口減で横ばいになる。与信費用は福島県内の中小企業の業況悪化で上振れする。経費は物価で増え続けるため、利益率は下がる。純利益は 15 億円まで下がり、配当は 3 割の目安を保つが、増配は難しい。自己資本は利益の積み増しが小さく、評価損の戻りも遅い。東邦銀行との関係は動かず、再編の恩恵もない。
- 法人貸出:数量 0.5(事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 63 億円・営業利益 11 億円。n
- 個人貸出:数量 0.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 34 億円・営業利益 4 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 16 億円・営業利益 5 億円。n
- 手数料・資産運用:数量 0.2(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.02(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。n
倍率:事業の ROE は 3.9% と k を大きく下回る。正当化 PER は 8.9 倍で、1 ÷ k(11.1 倍)の上限より低い。構造的に利益率が落ちるので 7.5 倍に置いた。
確率:評価損と人口減の重なりは、今の延長でも十分に起こりうるので 25%。
悲観 10% 悲観:評価損と与信費用が重なり、資本が目減りする 利益 4 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 709 円90 億円
構造的に負ける筋書き。金利が速く上がり、保有債券の評価損が自己資本の半分を超えて膨らむ。人口減で福島県内の貸出が縮み、与信費用が急増して利益はほとんど出ない。預金が上位行へ流れ、調達コストが上がる。配当は 3 割の目安を下回り、自己資本は 240 億円まで減る。自己資本比率の低さが市場の不安を呼び、増資や再編を迫られる。再編は救済に近い形になり、少数株主に不利な比率になる。値段は、今の自己資本に対して 3 割ほどの床で決まる。事業の稼ぐ力そのものが、この床を下回る。配当は削られ、増資が必要になれば既存の株主の持ち分は薄まる。再編が実現しても救済に近い条件で、少数株主に残る価値は小さい。景気が戻っても、人口減の地盤では貸出が戻らない。
- 法人貸出:数量 0.4(事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 44 億円・営業利益 3 億円。n
- 個人貸出:数量 0.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。n
- 手数料・資産運用:数量 0.1(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.01(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。n
倍率:悲観の床は、含み益込みの今の自己資本(291 億円)に掛け目 0.31 を掛けた 90 億円。地銀の悲観の目安(0.45)より低いのは、自己資本比率が 3.3% と薄く、評価損の赤字が自己資本の半分を超えるため。純利益 ÷ k は 42 億円で、これを下回る。
確率:構造的な負けは、小さな単独行では実際に起きた例がある。10% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
福島県中通り(郡山市)を中心とする中小企業・不動産業向けの事業性融資。
| 数量事業性貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 0.01 | 45 | 10 |
| 10 年後 中立 | 0.6 | 0.01 | 78 | 17 |
取り方:貸出金残高は 6,990 億円(2026 年 3 月末、決算短信)。うち事業性を約 6 割の 4,300 億円と推定した。預金調達を差し引いた利ざやを 1.05% と置き、経費配分後の利益率 22.6% で利益 10.2 億円とした。 【推定】開示の内訳ではない。ほかの地銀と同じく、数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 24.9 億円に合わせた。
個人貸出
住宅ローン・アパートローン・カードローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 0.01 | 26 | 4 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 0.01 | 42 | 7 |
取り方:残りの約 4 割を個人向け貸出 2,690 億円と推定した。住宅ローンは競争が厳しく、利ざやを 0.95% と事業性より薄く置いた。経費配分後の利益率は 15.3% と低い。 【推定】開示の内訳ではない。ほかの地銀と同じく、数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 24.9 億円に合わせた。
有価証券・市場運用
国債・地方債・外債・投信などの運用。預金のうち貸出に回らない分の運用先。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利回り-調達(率、売買損益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 0.02 | 21 | 8 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 0.02 | 22 | 9 |
取り方:有価証券残高は 1,202 億円(2026 年 3 月末、決算短信)。運用利回りから調達を引いた分と株式等の売却益を合わせて 1.75% と置いた。国債等の売却損 11.2 億円(開示)を引いたあとの利益率は 40%。評価差額金の赤字は別に、自己資本の側で数える。 【推定】開示の内訳ではない。ほかの地銀と同じく、数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 24.9 億円に合わせた。
手数料・資産運用
投信・保険の販売、為替・振込、ローン関連の手数料。
| 数量預かり資産残高(兆円) | 価格実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 0.02 | 24 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 0.02 | 30 | 4 |
取り方:役務取引等収益 23.9 億円(決算短信)。預かり資産は約 1,400 億円(総預金と預り資産の合計 9,713 億円から預金 8,310 億円を引いた概算、ディスクロージャー誌)。手数料率は為替・ローン手数料を含めた総額を預かり資産で割った見かけの率。利益率は人件費の比重が高く 10%。 【推定】開示の内訳ではない。ほかの地銀と同じく、数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 24.9 億円に合わせた。
リスクと懸念
評価差額金の赤字が広がる
保有する債券の評価損は、金利が上がると広がる。2026 年 3 月期で約 155 億円の赤字は自己資本の半分を超える。資本が薄いため、配当や再編の交渉力に直接響く。
福島県の人口減
2050 年の人口は 2020 年比でおよそ 32% 減る見通し。貸出は名目でも物価並みにしか伸びず、預金も細る。浜通りの復興需要は長く続かない。
再編が少数株主に不利な形で進む
東邦銀行が約 2 割を持つ筆頭株主。統合が救済に近い形で進めば、比率は少数株主に不利に出る。会社は自主独立を掲げており、決着まで値段は振れる。
預金の流出と調達コスト
上位行・ネット銀行・信用金庫との預金集めの競争で、預金金利の引き上げ圧力が強まる。広がるはずの利ざやが削られる。
与信費用の上振れ
福島県内の中小企業の業況悪化で与信費用が急増すれば、数年分の利益が一度に消える。小さな銀行は分散が効きにくい。
経費とシステム費用
物価と賃金の上昇、システム更新、規制対応の費用は、小さな銀行ほど重い。売上の伸びで吸収できない年が出る。
今後の分かれ目
- 東邦銀行が大東銀行との統合を提案し、比率が公正に近い
- 再編の恩恵が確率に入り、楽観側の重みが 8% から 20% 前後へ上がる。
- 評価差額金の赤字が 100 億円を割って縮む
- 自己資本比率が上向き、配当の増額余地が広がる。やや悲観側の確率を下げる。
- 東邦銀行が保有株を売却する
- 再編の期待が剥がれ、中立側へ寄る。第三者が買う場合は、筋書きを組み直す。
- 預金金利が貸出金利の上昇に追いつき、利ざやの広がりが止まる
- 利益の伸びが鈍り、やや悲観側の確率が上がる。
- 与信費用が純利益の 3 割を超える年が続く
- 悲観側の確率を上げ、配当方針の見直しを疑う。
見ておくもの
- 評価差額金の赤字と自己資本比率の推移
- 貸出の利ざやと預金金利の上がり方
- 東邦銀行の保有比率と両行のやりとり
- 与信費用の水準と福島県内の倒産件数
- 中計の ROE 5% 以上の進み具合
倍率と資本コストの決め方
本源価値は、貸出・有価証券・手数料の利益から自己資本と ROE を式で組み、PER は ROE と k から決めた。今の PBR 0.56 倍・PER 9〜10 倍は市場の見方であり、比較に使うだけで置き場にはしていない。評価差額金の赤字が自己資本の半分を超える点は、PBR の割安さを割り引く理由として悲観側の床に入れた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.5→11.11 倍・中立 PER 9→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。個別のリスク(再編・評価損)は k に足さず、筋書きと確率で表した。