結論
ニコンは、光学技術を軸にカメラ、半導体・液晶の露光装置、眼科や顕微鏡の医療機器、金属3Dプリンターまで手を広げた会社だ。筆者の結論は「割高」である。稼ぐ力が元に戻るまでに時間がかかるのに、今の値段は回復と買収の期待をかなり織り込んでいる。
2026年3月期は営業損益が1,100億円超の赤字だった。買収した独SLM社(金属3Dプリンター)ののれんを約900億円減損したのが主因だ。新しい中期計画は2030年度に営業利益800億円を掲げるが、前の計画は2,100億円も未達に終わった。その実績を知る投資家は、計画をそのまま信じない方がよい。
露光装置は世界の出荷額の94%をASMLが握り、ニコンは2〜3%にとどまる。ここが育たなければ、全社の利益は映像、ヘルスケア、光学部品に頼ることになる。三つとも悪くない事業だが、合わせても資本コストを超える稼ぎには届きにくい。
一方で、エシロール・ルックスオティカが株の約2割を持つ。買収観測は株価を支えるが、事業の価値を変えるものではない。筆者は、確かな本業の利益がそろうまで安全域はないと見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ニコンは「良い事業を持つが、資本の使い方が悪かった会社」に見える。光学部品、パネル用露光装置、眼科機器には、10年後も残る強みがある。この部分の稼ぎは、資本コストを上回る可能性が高い。
問題は、成長を買うために投じた資金だ。SLM社の減損で、自己資本のおよそ15%が消えた。残りの事業の稼ぎはまだ小さく、ROEは数%にとどまる。これでは株主の元手を増やすことにならない。
筆者が重く見るのは、利益が戻る確からしさだ。計画の営業利益800億円は、露光装置が収益を上げ、映像が過去最高の利益率に近づき、3Dプリンターが黒字になって初めて届く。どれか一つでも外れれば、利益は半分に落ちる。前の計画の実績を見れば、三つとも当たると見るのは楽観が過ぎる。
安全域は、純資産に近い今の値段にはほとんどない。買収の観測は上値を支えるが、持ち続けて利益が増える材料ではない。筆者は、堅実な利益の積み上がりを確認できるまで、事業の価値を厚く見ない。
オーナー利益、つまり再投資を引いた株主の取り分は、中立でも今は年200億円台にとどまると見ている。
何で稼ぐ会社か
ニコンの稼ぎは五つの事業に分かれる。柱は映像事業(売上の約4割)で、ミラーレスカメラとレンズ、米RED社から取り込んだシネマカメラが中心だ。ミラーレスの世界シェアは15%ほどで、ソニー、キヤノンに次ぐ3番手である。
二つ目がヘルスケア事業(約1.6割)だ。網膜を広く撮れる眼科機器(英Optos)、創薬向けの顕微鏡、再生医療の細胞受託生産がある。売上の5割強がライフサイエンス、約4割がアイケア、約1割が細胞受託という内訳である。
三つ目がインダストリー事業(約1.1割、旧コンポーネント)だ。半導体露光装置の中身に使う光学部品、EUV(極端紫外線)露光装置向けの部品、X線CT検査装置などを手がける。半導体の投資が増えるほど恩恵を受ける、装置の「部品屋」の顔だ。
四つ目が精機事業(約2.5割)だ。半導体の露光装置と、スマートフォンやテレビの液晶・有機ELパネルを作る露光装置を、顧客のメーカーに売る。パネル用の大型機では、キヤノンと世界を二分する。
最後がデジタルマニュファクチャリング事業で、独SLM社の大型金属3Dプリンターを売る。防衛・宇宙・航空向けの金属部品づくりで使われるが、成長が見込みを大きく割り込み、巨額の減損に至った。
中期計画では、映像・ヘルスケア・インダストリーで稼ぎ、その資金を3Dプリンターと露光装置に回す構図を描く。
優良さと弱いところ
ニコンの堀、つまり他社がまねしにくい強みは、事業ごとにばらつきが大きい。光学とレンズの設計力は本物だが、全社の稼ぐ力にはつながり切っていない。
いちばん堀が深いのはインダストリーの光学部品と、パネル用の大型露光装置だ。前者は半導体の装置メーカーに長く納める実績がある。後者はキヤノンとの二強で、新規参入が考えにくい。
逆に堀が薄いのは半導体の露光装置だ。最先端はASMLが独り占めし、成熟世代ではキヤノンが台数の3割強を握る。ニコンの台数シェアは5%を割る。ASMLのマスクを流用できる小型機を2028年度に出す計画だが、これで顧客が戻る保証はない。
資本の使い方には厳しい評価をつける。SLM社の買収は市場の成長が鈍り、中国メーカーが台頭して見込みが外れた。前の中計では営業利益が計画を2,100億円以上下回った。経営は「強みに絞る」と言うが、同じ失敗を繰り返さない仕組みはこれからだ。
財務は自己資本比率が5割台と堅く、倒産の心配はない。ただし利益が小さく、自己資本利益率(ROE)は資本コストを大きく下回る。堀の深い事業を持ちながら、資本を食う事業が足を引っ張る会社である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ニコンの業績は、半導体の設備投資、カメラ市場、医療・研究の需要という三つの波に同時に左右される。
半導体の露光装置は、生成AI向けの先端チップに投資が集まる一方で、ニコンが得意とする成熟世代の需要は弱い。2024年の出荷は3社合計で約680台、うちASMLが6割、キヤノンが3割強、ニコンが5%弱だった。EUVはASMLだけが作れる。ニコンはArF液浸の中位機とi線・KrFの一部で戦うが、i線はキヤノンが圧倒する。
パネル用の露光装置は、ニコンとキヤノンの二社の市場だ。ニコンは第10.5世代の大型機が得意だが、パネルメーカーの投資が止まると受注がなくなる。直近の精機事業の売上は前期から17%減った。
カメラは、2025年の世界出荷がミラーレスで約630万台と、前年より1割ほど戻った。スマートフォンに押される入門機は縮み、写真愛好家とシネマ用途の高級機が残る。ニコンはここで3番手だ。関税と部材高が利益率を押し下げている。
医療・研究の側では、創薬の高度化で顕微鏡の需要が、網膜の検査機器では検眼医の需要が、安定して伸びる。再生医療の受託生産も立ち上がってきた。
金属3Dプリンターは、防衛・宇宙・エネルギーでの需要は堅いが、自動車などの汎用向けで成長が止まり、中国メーカーの値下げ攻勢も受けている。
資本政策と M&A
株主還元は大きく縮む。2027年3月期の年間配当は前期の半分に下げる予想で、自社株買いは2025年3月期に約300億円行ったあと、2026年3月期はほぼゼロだった。新しい計画は、中計期間に600億円の自社株買いと配当を出し、同じ額を超える株式・土地を売却するとしている。
M&Aは、事業を広げる攻めの買収が裏目に出た。SLM社は約900億円を減損し、米RED社の成果もこれから問われる。新計画は「投資は注力3分野に絞る」とする。
大株主のエシロール・ルックスオティカは、2026年4月の報告で19.61%を持ち、目的は「長期の純投資」と届けている。外為法の承認で上限は20%とされ、超えるには再審査が要る。2026年5月に買収観測の報道が出たが、両社は公式に何も述べていない。
筆者は、買収があるなら株価に上乗せがつくと考えるが、起きる前提で価値は置かない。ガバナンスでは、2026年6月の株主総会で社外取締役の入れ替えが提案された。再建の途上で経営陣の覚悟が試される局面だ。
手元には投資有価証券が時価で673億円あり、含み益は税引き後で約280億円ある。売却は中期計画で掲げるが、売却代金を株主に戻した実績は乏しいので、半分だけ価値に入れる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ニコンの利益は、2026年3月期が底で、そこから大きく戻る。減損で重荷だった3Dプリンターは、26年度にSLM社が、27年度に事業全体が黒字化し、固定費を削った分だけ利益が出る。映像事業はシネマカメラとZマウントの新機種で単価が上がり、過去最高に近い利益率に戻る。
露光装置は、キヤノンが強いi線とは違い、ArF液浸という最先端に近い領域で、新しい小型機がASMLの装置のすき間を埋める。後工程向けのデジタル露光装置も新規の顧客を取る。パネル用の大型機は、第10.5世代の需要が戻ると利益率が一気に上がる。
ヘルスケアは堅い。創薬向けの顕微鏡と網膜検査機器は景気に左右されにくく、細胞受託生産は米国の大手顧客の移管を終え、需要が立ち上がる。インダストリーのEUV部品は、生成AI向けの先端投資が続けば量が増える。
資本面では、自己資本比率が5割を超える堅い財務が下支えになる。600億円超の株式・土地の売却で身軽になり、自社株買いも再開できる。さらにエシロール・ルックスオティカが約2割を持つ。同社が本格的に動けば、今の水準を大きく超える買収価格がつく可能性がある。
赤字の主因は一回限りの減損で、事業そのものの稼ぐ力は傷んでいない、というのが強気の見方だ。
慎重な見方
新しい中期計画は、前の計画と同じ言葉で書かれている。前の計画も「新事業を育てる」と言い、営業利益は計画を2,141億円下回った。精機事業だけで920億円、3Dプリンターが1,571億円の未達だ。今回の計画は、その二つに「企業価値最大化への挑戦」として再び資金を回す。
露光装置はASMLが出荷額の94%を持ち、ニコンは2.5%にとどまる。台数でもキヤノンの7分の1だ。2028年度に出す新型機が採用される保証はなく、米国の主要顧客からの受注は大きく減った。パネル用の大型機も、投資が止まれば売上がなくなる。
3Dプリンターは、のれんを減損しても、事業の赤字は残る。市場の成長が止まり、中国のメーカーが安い機械で追う。黒字化の目標は27年度だが、固定費を下げ切れる確証がない。
映像は関税と部材高で利益率が落ち、5%台まで下がった。ミラーレスでは3番手で、ソニーとキヤノンに挟まれる。スマートフォンで撮る人が増える長期の流れは変わらない。
今の株価の純資産倍率は1倍で、買収観測を含む。事業の稼ぎからは、本来0.7倍前後が妥当だ。ROEが資本コストを下回る限り、会社は株主の資本を減らしている。計画の利益は、一度外れれば半分に落ちる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、ヘルスケアと光学部品の確かさ、そして買収の可能性を正しく突いている。ただし、利益が戻る確率は、前の計画の実績を踏まえるとかなり低い。慎重な見方の指摘が上回ると判断した。
確率は、計画どおりに行く楽観を1割未満に抑え、中立をやや重く、やや悲観と悲観を合わせて4割近くに置いた。買収の可能性は、上位の筋書きの値付けに含めたが、事業価値として厚くは見ていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,682 円5,543 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 442 円1,457 億円)。 今の値に割り戻すと 960 円3,162 億円、今との差 −44.8%、 期待の年率 +2.0%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,186 円1.38 兆円 | 1,153 円3,800 億円 | +207.0% | +11.9% | 320 円1,055 億円 |
| やや楽観 | 16% | 2,688 円8,856 億円 | 789 円2,600 億円 | +99.9% | +7.2% | 556 円1,833 億円 |
| 中立 | 36% | 1,659 円5,467 億円 | 455 円1,500 億円 | +21.6% | +2.0% | 761 円2,508 億円 |
| やや悲観 | 28% | 994 円3,274 億円 | 243 円800 億円 | −28.9% | −3.4% | 346 円1,141 億円 |
| 悲観 | 14% | 896 円2,952 億円 | 106 円350 億円 | −42.4% | −5.4% | 140 円462 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,682 円5,543 億円 | 442 円1,457 億円 | +22.1% | +2.0% | 2,125 円7,000 億円 |
今の株価時価総額 1,740 円5,730 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 再建が成功し、3つの柱がそろう10年 利益 1,128 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 4,186 円1.38 兆円
露光装置、3Dプリンター、映像の三つが同時に当たる。ArF液浸の新型機とデジタル露光装置が複数の顧客に採用され、精機の売上は今の2倍近い規模になる。パネル用の大型機は第10.5世代の需要が続き、利益率は14%に届く。3Dプリンターは防衛・宇宙向けが伸び、SLM社が事業の柱の一つになる。映像はシネマカメラとレンズで利益率11%を保つ。ヘルスケアの創薬向け顕微鏡と細胞受託も伸び、全社の営業利益は1,500億円を超える。配当と自社株買いも増やせる。計画の2030年度の売上1兆円を、2035年には大きく超える姿だ。筆者は、この姿が実現する可能性は低いと見るが、実現すればニコンは「光の総合メーカー」として評価を一新する。株主への還元も今の数倍になる。
- 映像(カメラ・レンズ・シネマカメラ):数量 125(ニコン換算の交換レンズ式カメラ出荷(万台))× 価格 37(1台あたり売上(万円。本体・レンズ・シネマ・双眼鏡を含む名目))→ 売上 4,622 億円・営業利益 508 億円。ニコン換算125万台×1台あたり売上36.98万円、営業利益率11.0%
- ヘルスケア(眼科機器・顕微鏡・細胞受託):数量 14.2(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 2,854 億円・営業利益 400 億円。実質14.2億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率14.0%
- インダストリー(光学部品・EUV関連部品・X線CT):数量 9.5(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 1,910 億円・営業利益 382 億円。実質9.5億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率20.0%
- デジタルマニュファクチャリング(金属3Dプリンター):数量 5.0(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 1,005 億円・営業利益 100 億円。実質5.0億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率10.0%
- 精機(半導体露光装置・パネル用露光装置):数量 21.0(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 4,221 億円・営業利益 591 億円。実質21億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率14.0%
倍率:事業の純利益 1,124 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)282 億円。全体の PER 12.04 倍、時価総額 13,816 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:露光、3Dプリンター、映像の三つが10年続けて当たる必要がある。前の計画の実績から、確率は低く置いた。
やや楽観 16% 精機とヘルスケアが利益を押し上げる 利益 787 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 2,688 円8,856 億円
全社の営業利益は1,100億円ほどで、計画の2030年度の800億円を上回る。精機はパネル用の大型機が安定し、半導体露光は国内とアジアの顧客を広げて利益率12%に乗る。ヘルスケアは創薬と眼科が伸び、利益率が12%になる。3Dプリンターは市場の分断が続くものの、固定費の削減で7%の利益率を出す。映像は台数が1割強減るが、価格と高級機で利益率10%を保つ。ROEは10%に届き、自社株買いも再開する。計画が7割がた実現した10年である。ヘルスケアとインダストリーは、実質で6割ほどの伸びを見込む。半導体と創薬という需要が長く伸びる分野に重心が移る10年だ。
- 映像(カメラ・レンズ・シネマカメラ):数量 115(ニコン換算の交換レンズ式カメラ出荷(万台))× 価格 37(1台あたり売上(万円。本体・レンズ・シネマ・双眼鏡を含む名目))→ 売上 4,253 億円・営業利益 425 億円。ニコン換算115万台×1台あたり売上36.98万円、営業利益率10.0%
- ヘルスケア(眼科機器・顕微鏡・細胞受託):数量 12.2(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 2,452 億円・営業利益 294 億円。実質12.2億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率12.0%
- インダストリー(光学部品・EUV関連部品・X線CT):数量 8.0(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 1,608 億円・営業利益 289 億円。実質8.0億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率18.0%
- デジタルマニュファクチャリング(金属3Dプリンター):数量 4.0(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 804 億円・営業利益 56 億円。実質4.0億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率7.0%
- 精機(半導体露光装置・パネル用露光装置):数量 18.0(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 3,618 億円・営業利益 434 億円。実質18億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率12.0%
倍率:事業の純利益 783 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)282 億円。全体の PER 10.93 倍、時価総額 8,841 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画がおおむね実現し、全体の収益力が戻る。ただし、実現には精機の黒字化が欠かせない。
中立 36% 中立:収益力は戻るが資本コストには届かず 利益 485 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,659 円5,467 億円
全社の売上は1兆円を超えるが、営業利益は700億円ほどにとどまる。ヘルスケアとインダストリーは、創薬・半導体・防衛の需要を受けて実質で伸び、合わせて営業利益は450億円近くになる。映像は台数が1割減るが、シネマ用途を足がかりに利益率8%台を保つ。精機はパネル用の大型機でシェアを守り、半導体露光は利益率が1桁にとどまる。3Dプリンターは小さな黒字になる。ROEは6〜7%で、資本コストを下回る。リストラで体力は戻るが、稼ぐ力は優良企業の水準には届かない。それでも事業の底は固い。ヘルスケア、光学部品、映像の三つが毎年おおむね資本コストを賄い、精機と3Dプリンターの損益が全体を左右する形になる。
- 映像(カメラ・レンズ・シネマカメラ):数量 100(ニコン換算の交換レンズ式カメラ出荷(万台))× 価格 37(1台あたり売上(万円。本体・レンズ・シネマ・双眼鏡を含む名目))→ 売上 3,698 億円・営業利益 314 億円。ニコン換算100万台×1台あたり売上36.98万円、営業利益率8.5%
- ヘルスケア(眼科機器・顕微鏡・細胞受託):数量 10.4(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 2,090 億円・営業利益 219 億円。実質10.4億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率10.5%
- インダストリー(光学部品・EUV関連部品・X線CT):数量 7.0(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 1,407 億円・営業利益 225 億円。実質7.0億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率16.0%
- デジタルマニュファクチャリング(金属3Dプリンター):数量 3.0(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 603 億円・営業利益 24 億円。実質3.0億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率4.0%
- 精機(半導体露光装置・パネル用露光装置):数量 15.0(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 3,015 億円・営業利益 286 億円。実質15億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率9.5%
倍率:事業の純利益 481 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)282 億円。全体の PER 10.53 倍、時価総額 5,348 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の800億円を1割強下回り、前の計画の未達を踏まえた現実的な中心。中立に最も重い確率を置いた。
やや悲観 28% 主力の露光が伸びず低収益のまま 利益 99 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 994 円3,274 億円
露光装置でASMLとキヤノンに押され続け、精機の利益率は5%にとどまる。3Dプリンターは赤字を脱せず、事業の整理に入る。映像は台数が15%減り、利益率は6%になる。ヘルスケアとインダストリーは堅調だが、全社の営業利益は150億円ほどで、2022年度を大きく下回る。配当は低位にとどまり、成長への投資も手控える。ROEは2%以下で、資本コストを大きく割る。「稼ぐ事業は小粒、育てる事業は育たない」会社として、評価が定まる。ヘルスケアの堅さが救いだが、全社の利益は小さい。経営は選択と集中を急ぎ、事業の売却や撤退を検討する局面が続く。
- 映像(カメラ・レンズ・シネマカメラ):数量 85.0(ニコン換算の交換レンズ式カメラ出荷(万台))× 価格 37(1台あたり売上(万円。本体・レンズ・シネマ・双眼鏡を含む名目))→ 売上 3,143 億円・営業利益 189 億円。ニコン換算85万台×1台あたり売上36.98万円、営業利益率6.0%
- ヘルスケア(眼科機器・顕微鏡・細胞受託):数量 8.4(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 1,688 億円・営業利益 118 億円。実質8.4億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率7.0%
- インダストリー(光学部品・EUV関連部品・X線CT):数量 5.5(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 1,106 億円・営業利益 122 億円。実質5.5億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率11.0%
- デジタルマニュファクチャリング(金属3Dプリンター):数量 2.0(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 402 億円・営業利益 −12 億円。実質2.0億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率-3.0%
- 精機(半導体露光装置・パネル用露光装置):数量 11.5(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 2,312 億円・営業利益 116 億円。実質11.5億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率5.0%
倍率:稼ぐ力は純利益 99 億円÷k 9.5%=約 1,100 億円にとどまり、映像・ヘルスケア・光学部品の事業用資産が下支えになる。事業用資産(今の自己資本 5,868 億円に純有利子負債 619 億円を足した 6,487 億円)が簿価の 6 割で売れると仮定し、純有利子負債を返すと 3,273 億円で、今の自己資本の 0.56 倍にあたる。市場の値付けは根拠にしていない。
確率:精機と3Dプリンターが育たないという、慎重な見方の中心。構造的な負けの入口として3割弱を置いた。
悲観 14% 構造的に負け、優良ではなくなった10年 利益 −317 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 896 円2,952 億円
露光装置は新型機が採用されず、最先端はASML、成熟機はキヤノンに食われて、精機は赤字から抜けられない。3Dプリンターは中国勢の低価格で成長が止まり、整理される。映像はスマートフォンと中国製に押され、台数が3割以上減って利益率が2%に落ちる。ヘルスケアとインダストリーの黒字は残るが、全社の営業損益は赤字に転じる。配当は大きく削り、事業売却と株式の売却で資金を作る。他社の傘下に入る、または事業を切り売りする選択肢も出てくる。エシロール・ルックスオティカなどの株主が、事業の切り分けや再編を迫る展開もありうる。かつての優良企業の面影は薄れ、純資産を下回る評価が定着する。
- 映像(カメラ・レンズ・シネマカメラ):数量 68.0(ニコン換算の交換レンズ式カメラ出荷(万台))× 価格 37(1台あたり売上(万円。本体・レンズ・シネマ・双眼鏡を含む名目))→ 売上 2,515 億円・営業利益 50 億円。ニコン換算68万台×1台あたり売上36.98万円、営業利益率2.0%
- ヘルスケア(眼科機器・顕微鏡・細胞受託):数量 6.3(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 1,266 億円・営業利益 38 億円。実質6.3億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率3.0%
- インダストリー(光学部品・EUV関連部品・X線CT):数量 3.9(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 784 億円・営業利益 39 億円。実質3.9億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率5.0%
- デジタルマニュファクチャリング(金属3Dプリンター):数量 1.2(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 241 億円・営業利益 −36 億円。実質1.2億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率-15.0%
- 精機(半導体露光装置・パネル用露光装置):数量 8.0(実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段))× 価格 201(1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 1,608 億円・営業利益 −48 億円。実質8.0億ドル相当×価格指数1.34倍(物価込み)、営業利益率-3.0%
倍率:赤字で稼ぐ力は無く、売れる資産の床で置く。事業用資産(今の自己資本 5,868 億円に純有利子負債 619 億円を足した 6,487 億円)が簿価の 55% で売れると仮定し、純有利子負債 619 億円を返すと 2,949 億円で、今の自己資本の 0.50 倍にあたる。映像・ヘルスケアの事業用資産は簿価の 55% で数える。エシロール・ルックスオティカの出資や買収観測は値に入れない。市場の値付けは根拠にしていない。
確率:露光、3Dプリンター、映像のどれも立て直せない、構造的な負けの筋書き。前の計画の失敗を踏まえ、1割を超える確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
映像(カメラ・レンズ・シネマカメラ)
ミラーレスカメラと交換レンズ、米RED社のシネマカメラ、双眼鏡など。ニコンの最大の売上源。
| 数量ニコン換算の交換レンズ式カメラ出荷(万台) | 価格1台あたり売上(万円。本体・レンズ・シネマ・双眼鏡を含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 105 | 28 | 2,900 | 167 |
| 10 年後 中立 | 100 | 37 | 3,698 | 314 |
取り方:2025年の世界ミラーレス出荷約631万台×ニコンのシェア約15%(報道ベースの二次情報)=約95万台に、一眼レフ・シネマ等を足した約105万台と推定。売上2,900億円÷105万台=1台あたり約27.6万円(レンズ・付属品込み)。
ヘルスケア(眼科機器・顕微鏡・細胞受託)
網膜を広く撮る眼科機器、創薬向け顕微鏡と解析、再生医療の細胞受託生産。
| 数量実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段) | 価格1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.5 | 150 | 1,119 | 15 |
| 10 年後 中立 | 10.4 | 201 | 2,090 | 219 |
取り方:売上1,119億円を150円で割った約7.5億ドルを数量とした(ライフサイエンス5割強・アイケア約4割・細胞受託約1割。開示は売上の内訳のみで市場規模の開示はなく、推定)。営業利益15億円はアイケアの一時費用約90億円を含む。
インダストリー(光学部品・EUV関連部品・X線CT)
半導体装置向けの光学部品とEUV関連部品、フォトマスク基板、X線CT検査装置、画像測定機など。旧コンポーネント事業。
| 数量実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段) | 価格1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.1 | 150 | 761 | 95 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 201 | 1,407 | 225 |
取り方:旧コンポーネント事業の売上761億円(決算資料)を150円で割った約5.1億ドル。市場規模の開示はなく、売上を数量に直した推定。
デジタルマニュファクチャリング(金属3Dプリンター)
独SLM社の大型金属3Dプリンター(粉末床溶融方式)と、補修向けの指向性エネルギー堆積方式。防衛・宇宙・航空向けが中心。
| 数量実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段) | 価格1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.1 | 150 | 320 | −1,246 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 201 | 603 | 24 |
取り方:全社売上6,772億円から他4事業の合計(映像2,900・精機1,672・ヘルスケア1,119・インダストリー761)を引いた約320億円を売上とした(推定)。営業損益は減損損失(900億円台)を含み、全社の営業損失1,124億円との差から約-1,246億円と置いた。減損を除く事業の損失は約250億円と推定。
精機(半導体露光装置・パネル用露光装置)
ArF液浸・ArFドライ・KrF・i線の半導体露光装置、第10.5世代までのパネル用露光装置、後工程向けデジタル露光装置とそのサービス。
| 数量実質の売上相当(億ドル。市場×シェアの換算、今の値段) | 価格1ドル相当あたりの円(150円×物価の倍率。3年1.09・10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.2 | 150 | 1,672 | −45 |
| 10 年後 中立 | 15.0 | 201 | 3,015 | 286 |
取り方:精機の売上1,672億円(決算資料)を150円で割った約11億ドル。露光装置の出荷額シェアはASML94%・キヤノン3%・ニコン2.5%(2024年)、出荷台数はニコン約5%。パネル用はニコンとキヤノンの2社。内訳の開示は無く、推定。
リスクと懸念
露光装置の競争力不足
最先端はASMLが独占し、成熟世代はキヤノンが台数の3割強を握る。ニコンの台数シェアは5%弱で、2028年度に出す新型機が採用されなければ、精機の赤字は続く。最大の不確実性だ。採用が広がらなければ、研究開発に使った資金を回収できず、さらに事業の縮小を迫られる。
計画の未達の再発
前の中計は営業利益が計画を2,141億円下回った。新しい計画も、精機と3Dプリンターに資金を回す点は変わらない。達成の確度を割り引いて見る必要がある。計画を信じて買う側にとっては、確認までに時間がかかりすぎる点も重い。
3Dプリンターの再建
のれんを約900億円減損しても、事業は赤字だ。市場の成長が止まり、中国メーカーの値下げも受ける。27年度の黒字化に失敗すると、追加の減損や整理の費用が出る。のれんの減損は済んだが、追加の資金投入が続けば、同じ失敗の繰り返しになりかねない。
半導体・パネル投資の循環
精機とインダストリーは、顧客の設備投資の波にそのまま揺れる。2025年度は精機の売上が前期から17%減った。景気の谷では、受注が2〜3年止まることがある。顧客が数社に集中しているため、主要顧客1社の計画変更でも売上が大きく振れる。
映像事業の利益率低下
2026年3月期の映像の営業利益は前期比で6割減り、利益率は5.8%だった。関税、部材高、製品構成の変化が重なった。ミラーレスは3番手で、価格で守れる余地が小さい。利益率が戻るかどうかは、台数ではなく、シネマカメラなど高単価品の比率に大きく左右される。
買収観測と株価の振れ
エシロール・ルックスオティカが約2割を保有し、買収観測の報道が株価を動かす。実際に動かなければ、観測が消えた時に株価が下がる。逆に買収が起きれば、事業の価値とは別の価格がつく。保有比率を高めても目的が純投資のままなら、経営への働きかけは限られる。
資本政策の後退
配当は前期の半分に下がり、自社株買いも止まった。株式・土地の売却で資金を作る方針だが、売却の規模と時期は読めない。株主還元の厚さを期待しにくい。自己資本比率の50%以上は守る方針で、還元の上限は財務の余裕から決まる。
今後の分かれ目
- ニコンが2028年度の新型露光装置(ASMLのマスクが使える小型機)を予定通り出荷し、複数の半導体メーカーが採用を決めた
- 精機の利益率の見方を引き上げ、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。露光装置が収益の柱になれば、全社のROEの見通しが変わる。
- SLM社が2026年度に黒字化し、27年度に事業全体で黒字を出した
- 3Dプリンターの再建が進んだと見て、やや楽観側の確率を厚くする。固定費の削減が効いている証拠になる。
- 2027年3月期の営業利益が会社予想の100億円を下回った
- 計画の信頼がまた崩れたと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。2回続けて外すと、新しい計画の2030年度の目標は遠くなる。
- エシロール・ルックスオティカが保有を2割超に引き上げる、または買収提案を公表した
- 買収の価格が事業価値と別の水準でつくため、楽観側の値付けを見直す。ただし提案の中身と条件次第で、慎重に見る。
- パネルメーカーが第10.5世代の大型投資を再開し、ニコンが受注した
- 精機の利益率が急に上がるので、楽観に近づく。大型機の1台あたりの金額は大きい。
- 生成AI向けの半導体投資が一服し、半導体装置の設備投資が急減した
- 精機とインダストリーが同時に打撃を受けるので、やや悲観・悲観の筋書きに近づく。ヘルスケアが利益を支える度合いを確認する。
見ておくもの
- 精機事業の受注と営業損益(半導体露光、パネル用大型機)
- SLM社の黒字化の時期(26年度/27年度)と追加の減損の有無
- 映像事業の営業利益率(関税・部材高の影響)
- ヘルスケアの営業利益率と細胞受託の立ち上がり
- エシロール・ルックスオティカの保有比率の変化と提案の有無
- 株式・土地の売却の進み具合と自己資本比率(5割以上を維持できるか)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価(買収観測を含む)にも、過去・同業の倍率にも寄せていない。資本コストは基本 7.5%に、半導体・映像の循環 +0.5%、露光装置の追う立場の値決め +0.5%、寿命 +0.5%、借金 0 を入れて 9.0%。10年の楽観・やや楽観は上限(正当化 PER)の 8.5〜9 割、中立は ROE が k 以下なので 1÷k を上限の 8.5 割に置いた。やや悲観は事業用資産の床、悲観は赤字なので床だけで置いた。買収期待は値に入れていない。数字の形は今と同じ(家賃を営業費用に入れた形)でそろえ、新リース会計基準(2028年3月期から貸借対照表に載る)の影響は入れていない。自己資本の流れは、2026年3月期の赤字(約860億円)が今の自己資本にすでに入っているため、2027年3月期の会社予想の純利益100億円を起点に積んだ(検査の注意は起点を赤字の年にして出ている)。含み益(株式・土地)は規模が確認できないため純資産に足していない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality +1.5%=9.0%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 9.50%。