結論
Liberawareは、人が入れない管路や設備の中を飛ぶ小型ドローン「IBIS」を軸に、機体、点検、三次元データ、解析を売る会社である。結論は割高だ。製品の存在意義は高いが、長く持つ株主が受け取れる利益の確度に比べ、現在の時価総額は重い。
2026年7月期には53セットの機体を販売した。一方、点検サービスの売上は減り、連結の営業損失は約24億円に拡大した。営業外の補助金が約16億円入ったため最終損失は約8億円にとどまるが、国費を恒久的な営業利益とみなすことはできない。翌期の会社計画も営業赤字拡大であり、成長企業というより、まだ量産と採算の実験途上にある。
ただし技術を軽く見るべきではない。IBIS2の狭い空間への進入能力や鉄道事業者との共同開発は、安い汎用ドローンだけでは得にくい参入障壁になる。下水道の老朽化、危険作業の省人化、国産機への安全保障上の需要にも追い風がある。しかし導入試験が全国の恒常的な購買に変わるか、既存株主の持分が増資で薄まらないかは別問題だ。
数量と単価から描く中立の10年後は、機体販売が現在の数倍に広がっても、大幅な赤字からようやく小幅な黒字へ移る姿である。新規ロボットの寄与まで含めて将来時価総額は約56億円、資金調達による希薄化も考慮した現在価値は、五つの筋書きの加重平均で約41億円にとどまる。添付の基準時価総額約174億円との差は約マイナス76%であり、求められる安全域が見えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「この会社の装置を顧客は10年後も買わなければ困るか」と問いたい。下水道の劣化は避けられず、暗い狭い空間を人が危険を冒して調べるより小型機を使う合理性も消えない。IBISの小型化や鉄道向け運用開発には事業の芯がある。しかし顧客が必ずLiberawareを選ぶか、他社製の機体や内製の解析を断念するほどの強制力があるかは、まだ証明されていない。
次に問うべきは、売上ではなく、設備と研究開発を維持した後に株主へ残る現金である。現状は営業赤字と営業キャッシュ流出が同時に続き、費用のかなりの部分を補助金と増資でつないでいる。国の支援を受けられるのは事業の価値を示すが、支援なしで投下資本に十分な利益を出せる証拠ではない。特に新型機の規格更新、電池、制御技術、量産品質の改善には繰り返し資金が要る。
堀が広がる条件も明確だ。顧客ごとの実証を標準機の注文へ転換し、点検の再契約と保守を積み上げ、導入後の価格改定を通せるようになれば、初めて習熟が利益を守る。反対にソフト画面や受託作業だけに収益が偏れば、AIエージェントの普及で売上当たりの工数は先に削られる。記録の正本としての独自データ、低解約率、規制上の指定基盤という強い堀の証拠は現時点で二つ揃わない。
長く持つ株主なら、会社が必要な仕事をしていることと、現在の株価に十分な安全域があることを分けて判断する。営業採算の改善前に新株発行を繰り返すリスクを無視できない以上、今の価格に高い永続成長を先取りさせない。製品の将来性は認めても、現在の株主利益には慎重な値を付ける。
何で稼ぐ会社か
会社の報告上は「インフラ保全事業」という単一セグメントだが、株主にとっては少なくとも七つの異なる稼ぎ方がある。中核の機体販売は、屋内・暗所・狭小空間に入るIBISシリーズを事業者や代理店へ販売する商売だ。2026年7月期の販売53セット、売上約4.26億円から、セット当たり売上は約804万円となる。翌期は85セットを見込むが、現時点で大規模な量産実績があるわけではない。
機体レンタルは購入前の導入障壁を下げ、保守や利用の継続へつなぐ入口になる。現場に作業員を送る点検ソリューションは、下水道やプラント、鉄道構造物の内部映像を取得し、現場作業で代金を得る。デジタルツインは撮影データを点群や三次元空間へ変える受託加工であり、LAPIS上のTRANCITYは保存・共有・検索などのソフト利用を提供する。顧客が本当に買っているのは飛行そのものではなく、危険区域の状態を安全に知る手段だ。
ソリューション開発では鉄道や建設企業と個別の装置・運用手順を共同設計する。売上は現場ごとの開発工数や検収条件に依存するため、機体の量産販売と利益率が違う。新規領域には海外案件や地上走行ロボット「トリノス」が含まれ、国家安全保障を見据えたHINOTATEも加わった。しかし、設立や実証と、民間・防衛当局からの継続受注は同じではない。
2026年7月期のサービス別実績は、機体販売とレンタルが約5.97億円、現場点検が約2.24億円、データ加工が約2.26億円、TRANCITYが約0.88億円、個別開発が約4.02億円、新規領域が約0.59億円である。うちデータ加工、ソフト、受託開発の合計は売上の約45%を占める。この部分は現場に入る飛行体とは違い、AIエージェントが発注内容を実行する時代に単価と必要人員を減らされうる。
優良さと弱いところ
堀、つまり競合が簡単に越えられない壁の候補は、狭い場所で墜落せず飛ぶ機体と、設備ごとの運用ノウハウにある。GPSも照明も頼れず、壁との距離が近い場所では、単にカメラ付きの機体を作るだけでは済まない。IBIS2の小型軽量設計と、JR東日本などが関わる鉄道向け共同開発は、現場でしか得られない故障・操作・検査条件を蓄積する機会だ。採用企業が訓練や安全審査を終えれば、機体を乗り換える手間も生じる。
しかし、値上げできる堀がすでに完成したとは言えない。世界ではFlyabilityのELIOSシリーズが閉鎖空間で競合し、日本でもBlue Innovationなどがその販売と導入を担う。自動操縦、衝突回避、画像解析の部品が標準化されるほど、機体の一部は比較購買されやすくなる。2026年の点検サービス売上が減った事実も、現場で必要とされることと単価・稼働率を上げることの距離を示す。
経済性を厳しく見る必要がある。2026年の売上総利益は約6.8億円なのに、研究開発を含む販管費が約31億円あり、営業損失が約24億円に達した。補助金がこの技術開発の一部を支えているが、製品採用一件から研究開発費まで回収する証拠はまだ薄い。ROEが黒字化する前に必要なのは、受注単価よりも量産時の粗利と固定費吸収の確認である。
財務も豊かな余剰現金というより次の開発期間を買う資金と見る。2026年7月末の純現金は約6.2億円だが、その年度の営業キャッシュ流出は約6.2億円だった。研究開発の中断を避けるには資金調達が続きかねない。顧客の実装という堀は育ち得る一方、株主に帰属する一株当たりの価値は薄くなり得る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ドローン市場は、インプレス総合研究所の推計で2025年度約4,973億円、2030年度約9,544億円へ広がる見通しだ。そのうち点検サービス市場は2025年度約983億円、2030年度約1,614億円とされる。ただし、この数字には屋外の橋梁、太陽光、風力など広い用途が入り、屋内狭小空間だけの確定した発注額ではない。Liberawareの点検売上約2.24億円をその983億円と比べれば約0.23%である。本体市場約1,227億円に対する機体売上約4.26億円も約0.35%にすぎないが、年度と対象用途が違い、どちらも屋内狭小空間における厳密なシェアとは呼べない。
現場の必要性は大きい。国土交通省によれば国内の下水道管路は約50万キロに及び、建設後50年超の管路は現在の約4万キロから10年後に約11万キロへ増える。人を入れる危険や熟練者不足があるため、画像取得を機械へ渡す流れは止まりにくい。鉄道でもトンネル、橋、車両基地の点検省力化は現実的な需要である。ただし自治体の予算措置、点検結果の法令上の扱い、作業安全の運用基準が普及を左右する。
競争の軸は、飛行時間や重量だけではない。FlyabilityのELIOS 3、国内の機体メーカー、測量会社、既存の点検業者、そして顧客自身による内製化が同時に競う。Flyabilityの日本向け販売網や国産のACSLなどの存在を踏まえれば、機体全体の市場シェアを一社が独占する見立てはできない。競合の屋内専用機の販売台数とシェアは公開情報で揃わず、当社の正確な狭小空間シェアも不明である。推計の基準として2030年の点検市場約1,614億円からその後名目年3.6%の伸びを仮定すれば、2036年の点検市場は約2,000億円となる。
10年間の数量増加は、老朽設備の総数だけで決まらない。設備所有者が点検手段を人員から飛行体へ切り替え、そこで当社が採用されて初めて売上が生じる。国産調達の政策や防衛利用は上振れ余地だが、政府の関連予算をそのまま会社の受注とみなさない。一方、AIエージェントはデータ整理や報告書作成を自動化し、機体需要が増えても周辺の受託売上が同じ割合では伸びない構図を生む。
資本政策と M&A
資本配分の中心は還元ではなく、研究開発と販路づくりだ。2026年7月期に売上約16億円に対して研究開発関連費用が大きく膨らみ、国のSBIR事業による補助金約15.7億円を営業外収益へ計上した。補助金が研究費と対応していても、売上総利益から研究を自力で賄える水準にはない。2027年7月期の会社予想は売上23億円、営業損失約29億円、最終損失約11億円と、少なくとも短期の利益還元を予定しない。
2026年には株式発行によって約11億円を調達し、実証設備、人材、鉄道向け機体、新規ロボットに投じた。8月には条件付きストックオプションも設定した。2026年7月末の発行済株数は添付基準の4月末より増えており、将来の資金調達と予約権行使は既存株主の取り分を薄める。成長投資の成否だけでなく、必要な資金をどの評価額で集めるかが投資成果を左右する。
HINOTATEの設立や国外企業との電池開発の意向書は事業提携であり、売上の確約や回収済みのM&A成果ではない。大規模な買収による利益成長を前提にしない。正式な複数年度の中期経営計画について、売上・営業利益・ROEの拘束的な数値目標を確認できず、最新開示は翌期予想が中心だ。配当は2025年、2026年ともゼロ、2027年予想もゼロである。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額の数字の約束も確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
狭い危険空間の点検は、人口減少で人員確保が難しい日本において、時間がたつほど必要になる。IBIS2の軽さと操作性を起点に、鉄道、下水道、電力、石油化学の現場で利用実績が積み上がる。JR各社との共同開発が仕様の標準化につながれば、実証一件ごとの受託から機体と保守の反復販売へ移る。53セットの販売実績は小さいが、逆に国内外の拠点へ広げる余地は大きい。
さらに地上走行ロボット「トリノス」や国産供給網を担うHINOTATEが、既存ドローンでは入れない空間と安全保障用途を開く。海外で保守・販売体制を現地化し、韓国での採用事例を横展開できれば、日本の屋内点検市場を超えて売る先が見つかる。機体販売後のレンタル、補修、データ管理を組み合わせれば、単なる使い切り製品にはならない。
この先行優位を費用面でも守れれば、初期の国費依存は販売数量の増加とともに減り、研究開発の一部が自前資金で賄える。ただしソフト解析と受託開発の利益を過大に期待しないことが肝心だ。AIエージェントがデータ整理やシステム開発を省力化しても、現場で映像を撮る小型機、墜落防止の設計、認証を伴う安全運用には別の価値が残る。機体・新規機器の数量と粗利が利益の本体になれば、今の損失から抜け出す道はある。
慎重な見方
今の収益構造では製品の強さと会社の経済性の差が大きい。2026年の営業損失約24億円は売上高を上回り、補助金を営業外に計上して最終損失を小さくしている。翌期も営業損失の拡大を会社自身が見込む。国プロジェクトが無事終わることと、その後に民間企業が必要な台数を買い続けることの間には大きな距離がある。
現場点検の売上減少は警告である。製品を試したい顧客が多くても、自治体の予算手続きや現場の安全基準が変わらなければ導入数量は伸びない。顧客側の作業員が操作を覚えた後に自前で点検すれば、機体が売れても作業委託の売上は減る。FlyabilityのELIOS 3や国内販売会社との競合も、次の機体開発で勝ち続けることを保証しない。
データ加工、ソフト利用、個別開発には別の問題がある。AIエージェントが画像を整理し報告書やツールを自動で作るなら、顧客は人の工数や操作画面へ従来と同額を払わない。顧客記録の正本となる独自データの蓄積や年5%未満の解約率も開示で確認できない。ここは技術会社だからという理由で強い堀と認定しない。
赤字が続けば資金調達は避けられない。業界の伸びを示す巨大なTAMや政府予算は、既存株主がその市場の利益を受け取る証拠ではない。低い株価で増資を重ねた場合、会社が存続して機体の用途を維持しても、今の株主に残る割合は小さくなる。商業的成功の遅れと資本政策が同時に起きる点が最大の脅威だ。
どちらに重みを置いたか
必要とされる技術があり、狭小空間の実装経験も先行している点は評価する。しかし、販売数量はまだ少なく、2026年の点検売上は減少し、翌期の営業損失拡大も公表された。会社の成長と既存株主の価値増加を同一視できない。
確率は楽観側25%に対し、やや悲観と悲観を45%と厚くした。下に寄せる理由はAI代替を二重に恐れるからではなく、赤字が続く間の増資、機体の有料普及の遅れ、国産防衛用途に確定受注がまだないという会社固有の事情だ。中立の数量と単価には別途AIによる周辺業務の縮小を織り込んでいる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 480 円94 億円(+ 還元の換算額還元の合計 19 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 210 円41 億円、今との差 −75.0%、 期待の年率 −5.2%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,345 円461 億円 | 131 円26 億円 | +194.8% | +11.9% | 248 円49 億円 |
| やや楽観 | 15% | 1,091 円214 億円 | 36 円7 億円 | +34.2% | +3.0% | 169 円33 億円 |
| 中立 | 30% | 238 円47 億円 | 0 円0 億円 | −71.6% | −11.8% | 71 円14 億円 |
| やや悲観 | 28% | 28 円5 億円 | 0 円0 億円 | −96.7% | −28.9% | 8 円2 億円 |
| 悲観 | 17% | 13 円3 億円 | 0 円0 億円 | −98.5% | −34.1% | 2 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 480 円94 億円 | 19 円4 億円 | −40.7% | −5.2% | 498 円98 億円 |
今の株価時価総額 840 円165 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 屋内標準機と国産ロボットの二本柱が育つ 利益 44 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,345 円461 億円
鉄道向けの共同開発が実地の導入基準になり、IBIS2と後継機が国内の鉄道、下水道、電力設備で定番の狭小空間点検機になる。2036年の機体販売は800セットに増え、海外の販売店網でも顧客が補修・部品を継続購入する。大量販売で製造歩留まりが改善し、機体の粗利が研究開発を十分に支える。
トリノスなど地上走行型機器は、飛行が難しい管路や長距離設備で別の用途を開く。HINOTATEの国産供給体制は安全保障・公共インフラで実際の受注に結び付き、新規機器の数量が大きく伸びる。広い国内ドローン市場全体の独占ではなく、閉鎖空間と国産安全用途に販売先を絞って成功する筋書きだ。
データ加工と個別開発の件数は、AIエージェント代替が進むため現状より増えるとは見込まない。それでも装置側に収益源を移せれば、営業利益は約63億円へ成長する。最初の数年の赤字を乗り切るため25億円程度の株式調達が要るが、後半の利益の積み上がりから合計30億円程度の還元を始める。市場の実績だけでなく、量産と複数製品の成功が重なる低頻度の道筋である。
- 狭小空間ドローン機体販売:数量 800(販売セット数(セット))× 価格 0.12(セット当たり受取額(億円/セット))→ 売上 96 億円・営業利益 53 億円。大型顧客の標準装備化と量産歩留まり改善で単価は現状比約1.49倍。
- ドローン機体レンタル:数量 200(稼働する年間契約相当セット数(推計))× 価格 0.05(セット当たり年額(億円/年))→ 売上 11 億円・営業利益 6 億円。長期契約200セット相当。
- 現場点検ソリューション:数量 550(年換算の点検案件数(推計件))× 価格 0.03(一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 19 億円・営業利益 8 億円。鉄道・上下水道で外部点検が有償標準化。
- デジタルツイン・解析受託:数量 140(年換算の加工納品案件数(推計件))× 価格 0.02(加工一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替:加工受託件数は140件で現在以下。
- TRANCITY等のクラウド管理:数量 185(年間利用契約相当数(推計契約))× 価格 0.01(一契約当たり年額(億円/年))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替:自動操作でID増加を見込まない。
- ソリューション・個別開発:数量 12.0(年換算の開発案件数(推計件))× 価格 0.45(一件当たり売上(億円/件))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替:受託案件数は増えない。
- 新規ロボット・海外展開:数量 400(試験導入・初期製品販売案件数(推計件))× 価格 0.24(一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 96 億円・営業利益 41 億円。トリノスと国産機が複数用途で量産段階に達する。
倍率:営業黒字の企業で事業ROE=23.98%、k=9.25%、堀の持続割合1/2よりRONIC=16.62%。AIエージェント代替と物理機体需要を織り交ぜた長期名目成長g=2.0%を用い、PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=12.133倍の上限そのものを採用する。今の市場PERは根拠にしない。
確率:大規模導入・海外販路・新規製品量産と研究費負担の収束が同時に成功する必要があり、現時点の年間53セットと赤字規模から10%とする。
やや楽観 15% IBIS普及と地上ロボット商用化が進む 利益 20 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,091 円214 億円
IBIS2は下水道の狭小管路だけでなく、鉄道設備や工場の定期点検にも浸透する。導入試験から有償の標準機販売へ進み、2036年の販売は480セットとなる。FlyabilityのELIOSシリーズとは棲み分けが進み、大きな構内設備は競合、小さな配管内はLiberawareという用途別の選択が定着する。
HINOTATEの安全保障用途は限定的ながら一定の受注を得る。トリノスは当初の共同開発を終え、一部顧客で標準仕様を販売できるため、新規領域は約46億円へ成長する。販路拡大でレンタル機の利用期間も長くなり、収益の波が少し和らぐ。もっとも顧客との契約更新を強制するほどの市場支配力は持たない。
受託開発、データ加工、ソフト利用はAIエージェント代替が普及し、件数は現在から横ばいないし減少する。利益の中心を機体と地上ロボットの量産へ移せた結果、営業利益は約29億円、純利益は約20億円となる。初期に約22億円の増資を行い、その後の利益から約8億円を還元するが、従来株主の持分はなお希薄化する。
- 狭小空間ドローン機体販売:数量 480(販売セット数(セット))× 価格 0.12(セット当たり受取額(億円/セット))→ 売上 56 億円・営業利益 31 億円。専用機の用途拡大、単価は現状比約1.44倍。
- ドローン機体レンタル:数量 150(稼働する年間契約相当セット数(推計))× 価格 0.05(セット当たり年額(億円/年))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。保守・運用を伴うレンタル150セット相当。
- 現場点検ソリューション:数量 360(年換算の点検案件数(推計件))× 価格 0.03(一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 11 億円・営業利益 5 億円。多拠点顧客で案件が増加。
- デジタルツイン・解析受託:数量 130(年換算の加工納品案件数(推計件))× 価格 0.02(加工一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替:件数は現在の93%。
- TRANCITY等のクラウド管理:数量 175(年間利用契約相当数(推計契約))× 価格 0.01(一契約当たり年額(億円/年))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替:契約数は現在を下回る。
- ソリューション・個別開発:数量 10.0(年換算の開発案件数(推計件))× 価格 0.45(一件当たり売上(億円/件))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替:受託案件を縮小して標準機へ移行。
- 新規ロボット・海外展開:数量 210(試験導入・初期製品販売案件数(推計件))× 価格 0.22(一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 46 億円・営業利益 20 億円。地上ロボットの一部が製品販売へ移る。
倍率:営業黒字の企業で事業ROE=21.42%、k=9.25%、堀の持続割合1/2よりRONIC=15.34%。AIエージェント代替と物理機体需要を織り交ぜた長期名目成長g=2.0%を用い、PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=11.994倍の上限そのものを採用する。今の市場PERは根拠にしない。
確率:老朽設備の拡大は追い風だが、用途別競争と有償の大量採用までの長い期間を考え、やや楽観を15%とする。
中立 30% 狭小機体は普及するが黒字化に時間がかかる 利益 5 億円 · PER 11.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 238 円47 億円
インフラの老朽化と人手不足を背景に、狭小空間専用機の実需は十年後も残る。IBIS2の後継機が自治体と鉄道会社の一部で標準装備となり、年間販売は260セットへ増える。価格は物価上昇並みに改定できるが、Flyabilityや国内の関連機器会社との競争で大幅な独占価格にはできない。国内点検市場が名目約2,000億円まで広がると仮定しても、現場点検サービスで当社が取るのは0.3%程度にすぎない。機体市場での競合シェアは未公表なので、独占を見込まない。
一方、現場点検の受託は顧客の内製化で拡大が鈍い。データ加工・個別開発はAIエージェント代替で必要な案件数が現在の70%、65%程度に減り、TRANCITYの操作画面型契約数も80%程度へ縮む。価格はソフトで物価を下回り、工数売りでおおむね物価に沿う程度にとどめる。新規ロボットには有償の需要が生まれるが、防衛事業の大型受注は想定しない。
初期のSBIR研究費が一巡しても自前の製品更新費は残り、2036年の営業利益は約7億円、純利益は約5億円という控えめな黒字となる。2027年予想の赤字を経て約30億円の増資が必要で、十年の累計純利益はおおむね損益均衡、配当は行わない。事業は生き残っても、今の株主が期待する大きな利益水準とは開きが残る。
- 狭小空間ドローン機体販売:数量 260(販売セット数(セット))× 価格 0.11(セット当たり受取額(億円/セット))→ 売上 28 億円・営業利益 15 億円。販売台数260セット、単価は物価10年分約1.34倍。
- ドローン機体レンタル:数量 100(稼働する年間契約相当セット数(推計))× 価格 0.05(セット当たり年額(億円/年))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。年間契約100セット相当、価格は一部高機能化。
- 現場点検ソリューション:数量 240(年換算の点検案件数(推計件))× 価格 0.03(一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円。機体普及の一部が外注点検にも残る。2036年の国内点検市場を約2,000億円とする仮定なら、この6.48億円は約0.32%のシェア。
- デジタルツイン・解析受託:数量 98.0(年換算の加工納品案件数(推計件))× 価格 0.02(加工一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替:件数は現在の70%、価格は1.30倍。
- TRANCITY等のクラウド管理:数量 148(年間利用契約相当数(推計契約))× 価格 0.01(一契約当たり年額(億円/年))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替:契約数80%、価格1.10倍。
- ソリューション・個別開発:数量 7.8(年換算の開発案件数(推計件))× 価格 0.45(一件当たり売上(億円/件))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替:人月案件数65%、名目単価は物価並み。
- 新規ロボット・海外展開:数量 90.0(試験導入・初期製品販売案件数(推計件))× 価格 0.18(一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 16 億円・営業利益 6 億円。新規ロボットの一部だけ有償の量産・継続に移る。
倍率:営業黒字の企業で事業ROE=12.64%、k=9.25%、堀の持続割合1/2よりRONIC=10.94%。AIエージェント代替と物理機体需要を織り交ぜた長期名目成長g=2.0%を用い、PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=11.273倍の上限そのものを採用する。今の市場PERは根拠にしない。
確率:翌期会社予想は赤字拡大だが、53セットからの有償普及余地もあるため中心を30%とする。AIエージェント代替による人月・ソフトの縮小は数量・価格に入れ、確率では重ねない。
やや悲観 28% 試験導入は増えても販路・固定費で失速 利益 −4 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 28 円5 億円
機体の改良は続くが、自治体の有償調達までの審査が長く、鉄道事業者との実証も量産採用へ移る速度が遅い。IBISシリーズの年間販売は145セット程度にとどまる。FlyabilityのELIOSシリーズや国内の競争相手も安全な屋内飛行を改善し、顧客は複数社から相見積もりを取るようになる。顧客が自社で飛行を担うため、現場点検の受託需要は縮む。
画像整理と報告書作成ではAIエージェント代替が進み、デジタルツインの加工件数は現在の60%、受託開発は55%に減る。TRANCITYも顧客のAIが別の画面からデータを使うため、利用契約数が減る。新規地上ロボットは一部の試験採用にとどまり、国産安全保障向けの事業は採算化が遅れる。
固定費を絞っても2036年の営業損失は約3.6億円となる。十年の赤字累計を埋めるため約65億円の外部資本が必要となり、既存株主に帰属する持分は約60%へ薄まる。期末の帳簿資本は残っても、資本コストを超える利益を生まないため、帳簿全額を株価の価値とはみなせない。2025年7月期の自己資本を基準とした会社全体の評価額は約9.1億円にとどまる。
- 狭小空間ドローン機体販売:数量 145(販売セット数(セット))× 価格 0.10(セット当たり受取額(億円/セット))→ 売上 15 億円・営業利益 7 億円。採用率が伸びず販路が相見積もりに変わる。
- ドローン機体レンタル:数量 75.0(稼働する年間契約相当セット数(推計))× 価格 0.04(セット当たり年額(億円/年))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。購入顧客の内製化で貸出減少。
- 現場点検ソリューション:数量 120(年換算の点検案件数(推計件))× 価格 0.03(一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。内製化で現場サービスが伸びない。
- デジタルツイン・解析受託:数量 84.0(年換算の加工納品案件数(推計件))× 価格 0.02(加工一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替:件数60%、単価は物価を下回る。
- TRANCITY等のクラウド管理:数量 130(年間利用契約相当数(推計契約))× 価格 0.01(一契約当たり年額(億円/年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替:契約数70%。
- ソリューション・個別開発:数量 6.6(年換算の開発案件数(推計件))× 価格 0.42(一件当たり売上(億円/件))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替:件数55%、粗利悪化。
- 新規ロボット・海外展開:数量 20.0(試験導入・初期製品販売案件数(推計件))× 価格 0.14(一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。大型契約を得られず初期導入20件相当。
倍率:営業損失と純損失が続くため、PERで正の継続利益を資本化できない。SCHEMA §1-3の悲観側PBR基準に従い、添付factsの2025年7月期自己資本9.1億円にPBR1.00倍を掛け、会社全体の時価総額を9.1億円とする。2026年7月末の更新後自己資本12.46861億円や2036年の自己資本25.66億円には掛けない。将来の増資による残存資本を既存株主の利益と取り違えないためである。過去の市場PBRは倍率の根拠に使わない。
確率:2026年の現場点検減収、従来の通期売上計画未達、2027年の営業赤字拡大から、収益化に遅れる可能性を高くみる。下に寄せる理由は営業赤字が続く間の増資と顧客の予算制約である。
悲観 17% 主力機の競争力が薄れ希薄化で持分が縮む 利益 −9 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 13 円3 億円
閉鎖空間の点検という需要は消えないが、Liberawareがその標準機になる競争には負ける。顧客はFlyabilityなどの既存機、国産の他社機、地上走行の代替技術を用途別に選ぶ。機体の年間販売は60セット程度で足踏みし、レンタルの稼働も落ちる。鉄道向け製品やトリノスは試験導入の後に量産の損益分岐点へ届かない。
現場点検サービスは内製化に侵食される。データ加工と受託開発はAIエージェント代替で単価と発注件数が細り、TRANCITYにも他の業務基盤から接続する競争が生じる。政府の補助事業が終了した後も研究と製造の最低限の固定費は残り、営業損失は約8.6億円と再び売上規模に迫る。
存続のため資本提携・救済的な新株発行を重ね、十年で約90億円を外から調達する。多額の赤字と製品の減損で期末の自己資本は約4.5億円に落ち、元の株主の経済的な取り分は約40%まで薄くなる。十年後の企業価値は、現在の純現金に近い約6.4億円まで切り下がる。事業が残ることと株主が報われることの違いが最も鮮明になる筋書きだ。
- 狭小空間ドローン機体販売:数量 60.0(販売セット数(セット))× 価格 0.09(セット当たり受取額(億円/セット))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。差別化に失敗し数量がほぼ現状へ戻る。
- ドローン機体レンタル:数量 22.0(稼働する年間契約相当セット数(推計))× 価格 0.04(セット当たり年額(億円/年))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。稼働低下と価格競争が重なる。
- 現場点検ソリューション:数量 45.0(年換算の点検案件数(推計件))× 価格 0.02(一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。顧客の内製化で案件が大幅減。
- デジタルツイン・解析受託:数量 63.0(年換算の加工納品案件数(推計件))× 価格 0.02(加工一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替:件数45%まで減少。
- TRANCITY等のクラウド管理:数量 93.0(年間利用契約相当数(推計契約))× 価格 0.00(一契約当たり年額(億円/年))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替:契約数50%、価格横ばい。
- ソリューション・個別開発:数量 4.8(年換算の開発案件数(推計件))× 価格 0.34(一件当たり売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替:件数40%、単価据え置き。
- 新規ロボット・海外展開:数量 0.0(試験導入・初期製品販売案件数(推計件))× 価格 0.10(一案件当たり売上(億円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。新規ロボットが量産できず売上ゼロ。
倍率:営業赤字と純損失が続くためPERを用いず、競争力を失った事業の稼ぐ力と現時点の売却可能資産を考慮する。SCHEMA §1-3に従い、添付factsの2025年7月期自己資本9.1億円にPBR0.70倍を掛け、会社全体の時価総額を6.37億円とする。これは現在の純現金約6.2038億円をわずかに上回る。2026年7月末の更新後自己資本12.46861億円や増資後の2036年自己資本には掛けない。PBR0.70倍は破綻に至らず存続するが、投下資本を回収できず余剰資産の価値しか残らない企業としての評価であり、市場で過去に観測されたPBRから決めたものではない。
確率:屋内点検需要そのものは消えないが、受注未達・既存顧客内製化・資金調達価格の低下が重なる事態も無視できない。下に寄せる理由は赤字を補助金と株式発行に依存する点と新製品の量産確度が低い点である。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
狭小空間ドローン機体販売
屋内小型機IBISシリーズの機体本体・セット販売。付属機器の構成は一定ではない。
| 数量販売セット数(セット) | 価格セット当たり受取額(億円/セット) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 53.0 | 0.08 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 260 | 0.11 | 28 | 15 |
取り方:会社資料で2026年7月期は53セット販売、機体販売426百万円。単価は426百万円÷53セットで約804万円。2027年計画は85セットと702百万円。粗利相当の寄与は全社粗利から推定し、部門別営業利益の開示ではない。
ドローン機体レンタル
機体の導入試行から日常利用までを支える機体貸出・周辺サービス。
| 数量稼働する年間契約相当セット数(推計) | 価格セット当たり年額(億円/年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 50.0 | 0.03 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.05 | 5 | 3 |
取り方:2026年7月期レンタル売上171百万円を確認。貸出台数の通期実数は同じ単位で非開示のため50セット稼働を暫定仮定し、171百万円÷50で年額342万円と逆算。月額や契約数の会社開示とは異なる。
現場点検ソリューション
管路や大型設備の現場で有人チームが機体を飛ばし、点検結果を引き渡す。
| 数量年換算の点検案件数(推計件) | 価格一案件当たり売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 112 | 0.02 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 240 | 0.03 | 6 | 3 |
取り方:2026年7月期の点検サービス売上223.864百万円は決算資料。案件件数は非開示で、1案件約200万円として年112件相当を仮定した。2025年の285.532百万円から減少しており、継続購入の証拠にしない。
デジタルツイン・解析受託
撮影データを点群・図面・三次元モデルへ加工し納めるサービス。
| 数量年換算の加工納品案件数(推計件) | 価格加工一案件当たり売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 140 | 0.02 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 98.0 | 0.02 | 2 | 1 |
取り方:会社資料の2026年7月期データ処理・解析売上225.506百万円に対し、140件相当という仮定で一件約161万円と推定。実績案件数も単価も非開示。人手での加工工程がAIエージェント代替の対象。
TRANCITY等のクラウド管理
点群や画像の保存・共有、閲覧操作、顧客内の情報管理を支えるソフト利用。
| 数量年間利用契約相当数(推計契約) | 価格一契約当たり年額(億円/年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 185 | 0.00 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 148 | 0.01 | 1 | 1 |
取り方:会社資料の2026年7月期TRANCITY等売上87.542百万円を年185契約相当と仮置きし、年額約47万円へ逆算。実際のID数、契約数、解約率は開示から確認できない。席課金・操作画面型へのAIエージェント代替を厳格に想定する。
ソリューション・個別開発
鉄道・建設・プラント向けの個別機体・システム開発と関連する受託案件。
| 数量年換算の開発案件数(推計件) | 価格一件当たり売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 12.0 | 0.34 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7.8 | 0.45 | 4 | 1 |
取り方:会社資料の2026年7月期ソリューション開発売上402.116百万円を年12案件相当と仮定し、一案件約3351万円へ割戻した。実績受注件数は非開示。人月・工数で売る開発分はAIエージェント代替で中立数量を現在の65%に縮める。
新規ロボット・海外展開
トリノス、海外導入案件、将来の国産関連製品など量産前の新領域。
| 数量試験導入・初期製品販売案件数(推計件) | 価格一案件当たり売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 6.0 | 0.10 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 0.18 | 16 | 6 |
取り方:2026年7月期の新規領域売上59.076百万円。製品別台数・単価は未分離で、初期案件6件相当・一件約985万円とする仮定。HINOTATEの将来防衛契約は2026年の売上実績に混ぜていない。
リスクと懸念
補助金収入と営業赤字の混同
2026年はSBIR等の補助金が約15.7億円計上され、営業損失約24億円に対して最終損失が約8億円に縮んだ。2027年も営業赤字拡大予想であり、研究開発費を補助金で賄う期間が終わった後に粗利だけで維持費を払えるかが未証明だ。非営業収益を恒常的な利益とみなせば本質価値を過大評価する。
大量販売の前に訪れる増資と既存株主の希薄化
2026年7月末の自己資本は約12.5億円、純現金は約6.2億円で、営業キャッシュの一年分の流出額とほぼ同じだ。翌期の営業損失は約29億円の会社予想であり、新株発行や借入が続く可能性がある。将来の会社全体の成功を既存株主が同じ割合で享受できるとは限らず、行使条件付きストックオプションも監視したい。
製品普及と公的予算の実行時期
国土交通省の管路老朽化統計や関連施策は有望な需要を示すが、自治体が管路を点検する全予算が小型ドローン発注になるわけではない。2026年の点検サービス売上は前年から減少した。実証が有料の複数年契約へ転換しなければ機体販売の数量前提が崩れ、期待された研究開発費の回収時期も延びる。
小型機の模倣と屋内競合
IBIS2の狭小空間向け軽量機体は差別化の核だが、FlyabilityのELIOS 3と国内販売網、他の国産機体、地上走行機器などが同じ設備顧客を狙う。自動飛行と安定化技術の部品価格が下がれば、専門性が製品価格に残るとは限らない。価格改定、保守継続率、故障率の開示がなければ堀を過大評価すべきでない。
AIエージェント代替
データ加工、TRANCITY等の操作画面型管理、個別受託開発は2026年売上の約45%を占める。AIエージェントが撮影データを整理し、報告書やコードを作成し、画面を介さず記録を操作する場合、工数課金やID相当契約の数量と価格は抑えられる。低解約率・法令上の記録の正本・独自蓄積データという二つ以上の堀の証拠は確認できない。
新規領域と安全保障の受注未確定
HINOTATEの設立や海外企業との電池開発の意向書は、受注・利益が確定したことを意味しない。国産調達の方針変更、製品認証の難航、地上ロボットの量産歩留まりが低い場合、研究費は先に出て売上は残らない。防衛関連の広い予算額をそのまま当社の受注見込みへ変換することはできない。
顧客による飛行・解析の内製化
鉄道やプラントの大口顧客は一度機体を導入すると、点検飛行やデータ整理を自社要員と汎用ソフトで行えるようになる可能性がある。そうなれば機体の販売数が伸びても現場点検・加工受託の収入は伸びない。売上総額ではなく、製品販売、保守、継続課金の粗利の比率が重要な分かれ目である。
今後の分かれ目
- 有償機体販売が年100セット、続いて200セットを超え、販売単価を保てたら
- 実証から量産に移った証拠として中立の機体数量と製造粗利を引き上げる。返品・故障・販路向け値引きを調べ、出荷が継続することも確認する。
- 2027年7月期の営業損失約29億円予想に対し、補助金を除く固定費が縮み始めたら
- 製品粗利から研究費を回収する道筋が強まるため黒字化時期を前倒しする。補助金収入だけの増加では評価を変えない。
- JR各社や自治体の実証案件が、台数・価格・更新年限を伴う購買契約へ転換したら
- 狭小空間機の市場シェアと継続性の証拠として楽観側を厚くする。覚書や共同研究の発表だけでは数量前提を変えない。
- HINOTATEまたはトリノスで、具体的な売上金額と量産台数のある受注が公表されたら
- 新規領域の数量と採算前提を見直す。安全保障関連の一般予算や受注前の開発費は、確定売上として入れない。
- データ加工や受託開発の件数が減り、ソフト契約も伸び悩んだら
- AIエージェント代替による構造的な代替が進んだ可能性を検証し、デジタル周辺の価格と粗利をさらに下げる。単年度の季節性とは区別する。
- 新株予約権の行使や第三者割当で発行済株数が大きく増えたら
- 会社価値と既存株主の持分を切り分けて割戻す。増資資金が何年分の研究費を賄い、新株比率が何%になったかを確認する。
- 現場点検売上が再び増加し、機体保守・継続課金の解約率も開示されたら
- 単なる納入台数の増加から継続的な顧客の乗り換え費用の形成へと評価を改める。契約数と粗利を両方確認してから長期の堀を強める。
見ておくもの
- IBISシリーズの年度販売セット数、平均売上単価、受注残と納期(2026年53セット、2027年計画85セット)。
- 点検ソリューション売上の前年増減、自治体・鉄道事業者の実証から有償調達への転換率。
- 2027年7月期会社予想の売上23億円、営業損失約29億円、最終損失約11億円の進捗。
- SBIR補助金の営業外計上額と研究開発費、補助金を控除した営業キャッシュフロー。
- TRANCITYの契約数・単価・解約率とデータ加工および個別開発の粗利率。
- HINOTATEとトリノスの有償量産契約、国産調達の認証条件、海外販売の現地稼働実績。
- 第三者割当増資、新株予約権の付与・行使、四半期末の現金・借入残高と契約負債。
倍率と資本コストの決め方
添付の2026年10月23日株価885円と株数19,637,000株から今の時価総額173.78745億円を固定し、事業の数量・単価や倍率を逆算しない。一方で2026年9月14日の最新連結決算を実績の起点としたため、自己資本12.46861億円と現金8.3223億円は添付の2025年決算より新しい。株数は7月末に19,868,700株へ増えており、添付4月基準の差と将来の資本調達は既存株主の取り分に分けて反映した。
各事業の数量は機体販売以外が会社非開示なので件数・契約数を明記した仮定である。営業利益の部門別開示もないため全社粗利約6.76億円を事業別に推定配分し、共通費約30.74億円を引くと実績営業損失約23.97億円になる。2036年の共通費には継続する研究開発・管理費と新しい設備への償却を入れ、既存設備の償却を物価だけで一律に増やさない。
楽観・やや楽観・中立のPERはk9.25%、長期名目g2%、ROEの超過収益半減から正当化式で算出し、その上限を手動で割り引かない。悲観側は赤字なので添付factsの2025年7月期自己資本9.1億円をPBRの基準にした。これは損益と資本の流れの起点となる2026年7月末自己資本12.46861億円とは区別する。やや悲観はPBR1.00倍で9.1億円、悲観はPBR0.70倍で6.37億円であり、悲観の純現金床6.2038億円も下回らない。増資で積み上がる将来帳簿には同じPBRを掛けない。リースの表示変更後も賃借費用を費用として扱い、見かけの負債増を二重計上しない。市場のPER、PBR、株価の山谷を価値の根拠にしていない。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。普通企業の7.5%に事業の循環・価格競争・純現金の質による0.75%、持続する営業赤字による1.0%を足して9.25%。市場ベータ・時価総額の小ささは使わない。