結論
岡本硝子は、プロジェクター用の反射鏡で知られる光学ガラス・薄膜の加工会社だ。筆者の結論は「割高」。ガラス偏光子と窒化アルミ放熱基板という新しい柱への期待は理解できるが、今の時価総額249億円は、それが成功した姿を先に支払っている。
2026年3月期の売上高は47.3億円、営業損益は0.8億円の赤字、純損益は1.5億円の赤字だった。借入金とリース債務は53億円で、純資産26億円の2倍ある。自己資本比率は30%まで下がり、財務制限条項も付いている。主力のプロジェクター用反射鏡は、固体光源(レーザーやLED)への移行で新規の需要が消える見込みだと会社自身が書いている。
株価は2026年2月に年初の4倍超の高値を付けた後、今も年初の2倍を超える水準で、PBRは約9倍だ。会社は中計GROWTH28で、2029年3月期に売上100億円、営業利益率10%以上を掲げる。実現すれば中立どころか楽観の姿だが、設備投資は約23億円にのぼり、借入と新株予約権でまかなう。
筆者は、売上が10年で6割増の76億円、営業利益率は過去の山と並ぶ5.5%を中立に置いた。純利益は2億円弱で、今の時価総額の1%にも満たない。楽観でも時価総額は130億円ほどで、今の水準には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「期待で買われている会社」だ。足元は赤字で、借入が自己資本の2倍あり、投資の回収は数年先になる。確かな競争優位は確認できない。
株主に残るお金、つまりオーナー利益は、いまは出ていない。営業損益は赤字で、設備投資と借入の返済を賄うのに、新株予約権の資金に頼る。利益から配当や自社株買いに回す余地は、中立でもほとんどない。
10年の中立でも、純利益は2億円弱にとどまり、今の時価総額の1%に届かない。楽観の姿でも130億円ほどで、今の時価総額の半分だ。安全域はなく、成功を前提にしても割高という計算になる。
経営の資本配分は、増資で資金を集めて設備に投じる、成長志向の型だ。成功の確率を高く見積もるなら話は変わるが、過去20年の約半分が赤字という実績から、その確率を高く置く根拠は見つけにくい。
何で稼ぐ会社か
売上は4つの区分に分かれる。光学が20.6億円、機能性薄膜・ガラスが13.4億円、その他が8.9億円、照明が4.4億円で、合計47.3億円だ。製品の個数や単価は開示がなく、筆者は光学と照明、機能性、その他の3区分に束ね、売上を仮の平均単価で割って個数に換算した。
光学は、プロジェクター用の反射鏡やフライアイレンズ、デジタルシネマ用の反射鏡が中心だ。最大顧客のセイコーエプソングループが売上の25.6%を占める。会社は、固体光源への移行で反射鏡の新規需要がなくなると見ており、この区分は縮む前提で見るのが筋だ。照明は、車載のヘッドライトなどに使うカバーガラスで、売上は4.4億円と小さい。
機能性薄膜・ガラスが成長の候補だ。光アイソレーター(光通信で戻り光を遮る部品)に使うガラス偏光子、銀を使った高反射の鏡、加飾蒸着、そして窒化アルミの放熱基板がここに入る。中計は、ガラス偏光子の生産能力を2029年3月期までに3倍にし、放熱基板のセラミック焼成炉を1基から5基に増やす計画だ。生成AIのデータセンターで光通信と放熱の部品が求められる、という見立てに乗る。
その他は、歯科用のデンタルミラーや洗濯機のドアガラスなどで、売上は8.9億円。従業員は232名、生産は千葉県柏市と新潟県柏崎市に集まる。窒化アルミ基板は、名古屋のU-MAPと資本業務提携を結び、グリーンシート(焼く前の素材)を外部と組んで作る。
2027年3月期の第1四半期は、売上が12.4億円と36%増えたが、営業損益は1.3億円の赤字だった。会社予想は売上56億円、営業利益2億円前後で、黒字化は下期以降に寄る。
優良さと弱いところ
強みは、ガラスを精密に加工し、薄膜をつける技術の積み重ねだ。反射鏡で長年、エプソンなどの要求水準に応えてきた実績があり、光学の技術を偏光子や放熱基板に広げようとしている。ただし、この技術の堀は強くない。偏光子も放熱基板も、大手の部材会社や海外勢が競う分野で、岡本硝子だけの特許や規模があるとは確認できない。
稼ぐ力の弱さは数字に出ている。営業利益は過去20年のうち約10年が赤字で、黒字の年も利益率は数%にとどまる。最後に二けたの利益率を出したのは2011年ごろまでさかのぼり、直近12年の山は5.5%だ。10年の利益率を見るときは、この山を超えないものとして置いた。
財務は薄い。借入金とリース債務が53億円、現金が22億円で、差し引き31億円の純借金だ。純資産26億円に対して営業損益が赤字のため、利払いを稼ぎで賄えていない。自己資本比率30%は、増資と新株予約権の行使で保たれている面がある。
経営は、2025年9月に第10回新株予約権で9.5億円を調達し、2026年5〜6月には行使価額修正条項付の第11回・第12回新株予約権を出した。株価が高い局面で資金を取り込む判断は合理的だが、その分、既存株主の持ち分は薄まる。第80期は配当を見送り、設備投資の資金を残した。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
プロジェクター用の光学部品は、成熟した市場だ。レーザーやLEDの固体光源が広がり、従来の水銀ランプ向けの反射鏡は需要がなくなっていく。同じ部品で稼ぎ続けることはできず、新しい用途に移れるかどうかが10年の分かれ目だ。
成長の見立ては、生成AIのデータセンターにある。光通信の高速化でガラス偏光子や光アイソレーターの需要が増え、高出力の半導体では窒化アルミの放熱基板が使われる。ただし、これらは需要の波が大きく、採用が決まるまでの試作と認証に時間がかかる。設備を先に増やす今回の計画は、需要が読み通りにならなければ、固定費と借入だけが残る。
精密機器の業界ノートに、この領域の節はない。近い会社として、光学ガラスを手がけるHOYAや、光学部品の同業の売上と利益の推移を見たが、規模も採算も違い、そのまま物差しにはできなかった。業界ノートの方針に従い、光学は景気と技術の波が大きい側に寄せて資本コストを決めた。
価格は、物価3%の世界で、素材と電気代、人件費が上がる。放熱基板や偏光子は、顧客が少数で、値決めの力は弱い。顧客がコスト低減を求めれば、物価の上昇分を転嫁できないこともある。
分かれ目は、放熱基板と偏光子の量産が採算に乗るかどうかと、反射鏡の減収をどこまで補えるかだ。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、増資に近い資金調達だ。2025年9月に第10回新株予約権の行使が終わり、9.5億円を調達した。2026年5〜6月には、第11回・第12回の行使価額修正条項付新株予約権を発行し、8月上旬に大量の行使が続いて、数日で20万株が交付された。調達額と潜在株式の総数は確認できていないので、筆者の評価には株数の増加を入れていない。実際には、既存株主の取り分は薄まる。
配当は第80期を見送り、設備投資の資金に回した。借入は53億円で、2029年3月期までに放熱基板の設備に14億円、偏光子に3億円、DXに6億円を投じる計画がある。財務制限条項(純資産と経常利益に関する条件)があり、赤字が続くと抵触の可能性が出る。
大株主は、有限会社オー・ジー・シーが14.9%、岡本興産が2.9%で、セイコーエプソングループの持ち分は売上比率の25.6%とは別に、取引先として存在する。支配株主はおらず、TOBや再編の話は確認できない。
最大の論点は、増資と借入で先に設備を作り、その成果が出るまで持ちこたえられるかだ。成功すれば中計の100億円が見えるが、失敗すれば株数が増えたうえで、借入が残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
生成AIのデータセンターで、光通信と放熱の需要が長く続く。ガラス偏光子は光アイソレーターに欠かせず、生産能力を3倍にした設備が埋まる。窒化アルミ基板は、焼成炉を5基に増やして量産に乗り、U-MAPとの提携で素材の調達も安定する。機能性薄膜・ガラスの売上は10年で数倍の100億円を超える。
中計GROWTH28は、2029年3月期に売上100億円、営業利益率10%以上を掲げる。筆者の楽観は、その延長で、10年後に売上156億円、営業利益21億円、営業利益率13%という姿だ。2011年ごろに付けた13.6%の山と並ぶ。
反射鏡の減収は、新しい用途で穴埋めされる。借入は営業の稼ぎで返し、増資も落ち着く。株主への配当も再開できる。この姿なら、時価総額は130億円ほどになる。技術の蓄積が顧客の信頼を生み、新しい用途でも継続して発注を受けられる好循環に入る。データセンターの光通信は規格が更新されるたびに部品の入れ替えが起き、認証を通した会社が次の世代も受注しやすい。設備を先に作った投資が、需要の立ち上がりと重なる姿だ。
慎重な見方
営業利益は過去20年のうち約10年が赤字で、この会社に安定した稼ぐ力はない。2026年3月期も営業赤字で、借入53億円が重い。財務制限条項に抵触すれば、借入の条件が厳しくなる。
主力の反射鏡は固体光源への移行で消え、最大顧客のエプソンへの依存が高い。新しい柱とされるガラス偏光子と放熱基板は、設備を先に作る投資で、量産の認証が遅れれば、固定費と減価償却だけが残る。
株価が高い局面での新株予約権の発行は、会社にとって資金調達の機会だが、既存株主にとっては持ち分の希薄化だ。調達した資金で成長が実現しなければ、株数だけが増える。
悲観の姿は、売上が30億円に縮み、営業赤字が続き、純資産が8億円まで細る。そこでは時価総額は5億円ほどの床まで下がる。借入の条件変更や追加の増資で、既存株主の持ち分は大きく薄まる。株価はすでに期待を織り込んでいるため、成長の物語が崩れたときの下げは、業績の悪化以上に大きくなりうる。会社自身が主力製品の需要消失を認めている点も、軽く見られない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、データセンター向けの需要という大きな追い風に立つ。慎重な見方は、20年の約半分が赤字という実績と、薄い財務、株数の増加に立つ。両方を確率で表し、楽観は6%、やや楽観は15%と置き、やや悲観28%、悲観15%を厚めにした。中計が成功する姿は楽観とやや楽観に入れてあり、確率は低くないが、それでも利益の水準は今の時価総額を支えない。結果、10年の価値は時価総額の1割に届かず、結論は割高とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 110 円32 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 6 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 49 円14 億円、今との差 −93.7%、 期待の年率 −17.4%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 620 円180 億円 | 62 円18 億円 | −12.7% | −1.3% | 41 円12 億円 |
| やや楽観 | 15% | 236 円69 億円 | 14 円4 億円 | −68.1% | −10.8% | 37 円11 億円 |
| 中立 | 36% | 70 円21 億円 | 0 円0 億円 | −91.0% | −21.4% | 25 円7 億円 |
| やや悲観 | 28% | 32 円9 億円 | 0 円0 億円 | −96.0% | −27.4% | 9 円3 億円 |
| 悲観 | 15% | 18 円5 億円 | 0 円0 億円 | −97.7% | −31.3% | 3 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 110 円32 億円 | 6 円2 億円 | −85.2% | −17.4% | 115 円34 億円 |
今の株価時価総額 781 円227 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 6% データセンター向けが花開き、利益率13%に届く 利益 14 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 620 円180 億円
生成AIのデータセンターで光通信と放熱の需要が長く続き、ガラス偏光子の増設分が埋まる。窒化アルミ基板は焼成炉5基で量産に乗り、機能性薄膜・ガラスは売上100億円を超える。反射鏡の減収は新用途で埋まり、光学と照明の売上は37億円で踏みとどまる。営業利益率は13%に乗り、2011年ごろの山と並ぶ。借入は返済が進み、金利負担は軽くなる。配当は再開し、純資産は90億円近くまで積み上がる。本社費や研究費の増加も増収に吸収される。ただし新株予約権の行使で株数は増え、既存株主の取り分は薄まる。顧客の分散も進み、エプソンの比率は下がる。
- 光学・照明:数量 68.8(個数(万個、推定換算))× 価格 0.54(平均単価(億円/万個))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。数量+10%・単価+34%
- 機能性薄膜・ガラス:数量 240(個数(万個、推定換算))× 価格 0.44(平均単価(億円/万個))→ 売上 105 億円・営業利益 18 億円。数量6.0倍・単価+30%
- その他:数量 116(個数(万個、推定換算))× 価格 0.13(平均単価(億円/万個))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。数量+30%・単価+30%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.7% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.07 倍、時価総額 180 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去の山の利益率13%を10年続けて出す必要があり、確率は低く置く。
やや楽観 15% 中計はほぼ実現し、売上100億円台で利益率9% 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 236 円69 億円
中計の売上100億円は10年かけて達成され、機能性薄膜・ガラスは61億円まで育つ。反射鏡は縮むが、光学と照明は32億円を維持する。営業利益率は9%台に乗り、純利益は6億円ほどになる。借入は減らず、設備更新に回る。配当は再開するが、性向は低い。放熱基板の量産は軌道に乗るが、価格の引き下げ圧力が利益を削る。ガラス偏光子は競合との価格競争が続く。純資産は48億円まで積み上がる。株数は新株予約権の行使でやや増える。研究開発の費用も増えるが、増収で吸収できる。顧客は少しずつ分散し、エプソンへの依存は薄まる。生産拠点の更新も計画どおりに進み、品質の信頼が受注の継続を支える。
- 光学・照明:数量 59.4(個数(万個、推定換算))× 価格 0.54(平均単価(億円/万個))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。数量-5%・単価+34%
- 機能性薄膜・ガラス:数量 140(個数(万個、推定換算))× 価格 0.44(平均単価(億円/万個))→ 売上 61 億円・営業利益 8 億円。数量3.5倍・単価+30%
- その他:数量 97.9(個数(万個、推定換算))× 価格 0.13(平均単価(億円/万個))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量+10%・単価+30%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.83 倍、時価総額 69 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の延長線上で、機能性薄膜が数倍に育つ姿。需要の追い風はあるが、採用の認証が遅れる余地もあるので相応に置く。
中立 36% 新事業が育つが、利益率は過去の山並みの5%台 利益 2 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 70 円21 億円
機能性薄膜・ガラスは10年で売上が2.9倍に増えるが、反射鏡の減収で光学と照明は縮む。売上は76億円、営業利益率は5.5%で、過去12年の山と並ぶ。営業利益は4億円ほど、純利益は2億円弱で、借入の金利負担が大半を吸う。配当は設備投資と借入の返済を優先して出さない。純資産は28億円とほとんど変わらない。放熱基板は量産に入るが、採算は薄い。ROEは7%に届かず、資本コストを下回る。新株予約権の行使で株数が増える分は、評価に入れていない。顧客は少数で、エプソンへの依存は残る。設備の更新と研究の費用が毎年かさみ、稼いだ利益の多くが再投資に消える。株主に戻る分は小さい。
- 光学・照明:数量 50.0(個数(万個、推定換算))× 価格 0.52(平均単価(億円/万個))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。数量-20%・単価+30%
- 機能性薄膜・ガラス:数量 88.0(個数(万個、推定換算))× 価格 0.44(平均単価(億円/万個))→ 売上 38 億円・営業利益 3 億円。数量2.2倍・単価+30%
- その他:数量 89.0(個数(万個、推定換算))× 価格 0.13(平均単価(億円/万個))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。数量±0%・単価+30%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 20 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新事業が育つが、反射鏡の減収と投資負担で利益率は山並みにとどまる姿を中心に置く。
やや悲観 28% 新事業は小さく、反射鏡の減収が重く赤字に近い 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 32 円9 億円
反射鏡の需要が想定以上に早く消え、光学と照明の売上は18億円まで縮む。新事業は育つが小さく、機能性薄膜・ガラスは19億円にとどまる。営業利益は1億円ほどで、金利負担を賄えず、純損益は1億円の赤字が続く。財務制限条項に抵触すれば、借入の条件が見直される。配当はなく、純資産は15億円まで細る。会社は設備投資を絞り、不採算の拠点を閉じる。増資の余地も限られる。人員の見直しも進み、技術者の流出が新事業の立ち上げを遅らせる。最大顧客の発注も細り、固定費の重さが利益を圧迫する。生産拠点の再編も検討課題になる。
- 光学・照明:数量 37.5(個数(万個、推定換算))× 価格 0.48(平均単価(億円/万個))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。数量-40%・単価+20%
- 機能性薄膜・ガラス:数量 48.0(個数(万個、推定換算))× 価格 0.40(平均単価(億円/万個))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。数量+20%・単価+20%
- その他:数量 80.1(個数(万個、推定換算))× 価格 0.12(平均単価(億円/万個))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。数量-10%・単価+20%
倍率:稼ぐ力はほぼ 0 とみる。株主に残るのは、土地・建物・設備など実物の資産。今の自己資本 26.3 億円に掛ける PBR 0.35 倍で約 9 億円(床の内訳は floor_assets_why)。EV ÷ 営業利益で見ても、EV は約34億円(床の9億円+純有利子負債25億円)に対し営業利益は1億円ほどで34倍となり、倍率は意味を持たず、借入を差し引いた株主の残りで測るのが筋。
確率:20年の約半分が赤字という実績と、反射鏡の減収を踏まえ、やや厚めに置く。
悲観 15% 新事業が立ち上がらず、赤字が続き純資産が細る 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 18 円5 億円
新事業の認証が遅れ、放熱基板も偏光子も量産に届かない。反射鏡も消え、売上は30億円に縮む。営業赤字が続き、純資産は8億円まで細る。財務制限条項への抵触で、借入の返済を迫られ、土地や設備の売却で穴を埋める。新株予約権の行使で株数が増えるが、調達した資金は設備の償却と赤字に消える。配当はない。会社は縮小均衡に入り、存続の方策を探ることになる。技術者の流出が進み、顧客も離れる。売上の縮小で固定費を吸収できず、赤字が構造化する。再建の方策として、事業の売却や提携先の受け入れが選択肢に上る。純資産の細りは、借入の追加条件や増資の難しさにも跳ね返る。
- 光学・照明:数量 25.0(個数(万個、推定換算))× 価格 0.44(平均単価(億円/万個))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量-60%・単価+10%
- 機能性薄膜・ガラス:数量 32.0(個数(万個、推定換算))× 価格 0.37(平均単価(億円/万個))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。数量-20%・単価+10%
- その他:数量 62.3(個数(万個、推定換算))× 価格 0.11(平均単価(億円/万個))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量-30%・単価+10%
倍率:稼ぐ力は 0 とみる。株主に残るのは、借入の返済後の実物の資産。今の自己資本 26.3 億円に掛ける PBR 0.2 倍で約 5 億円(床の内訳は floor_assets_why)。
確率:財務制限条項や増資の負担が重なる姿。技術と需要の追い風を考え、15%にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
光学・照明
プロジェクター用反射鏡、フライアイレンズ、デジタルシネマ反射鏡、車載カバーガラス。
| 数量個数(万個、推定換算) | 価格平均単価(億円/万個) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 62.5 | 0.40 | 25 | −1 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 0.52 | 26 | 1 |
取り方:光学20.6億円と照明4.4億円の合計25.0億円(開示)を、仮の平均単価0.4億円/万個で割って62.5万個とした。セグメント利益は全体の営業損失0.78億円を筆者が推定で配分し、-1.0億円。固体光源への移行で数量は縮む前提。
機能性薄膜・ガラス
ガラス偏光子、銀ミラー、加飾蒸着、窒化アルミ放熱基板。
| 数量個数(万個、推定換算) | 価格平均単価(億円/万個) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 0.34 | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 88.0 | 0.44 | 38 | 3 |
取り方:機能性薄膜・ガラス13.4億円(開示)を、仮の平均単価0.335億円/万個で割って40万個とした。セグメント利益は筆者の推定で+0.5億円。成長の柱で、数量が大きく動く。
その他
デンタルミラー、洗濯機ドアガラスなど。
| 数量個数(万個、推定換算) | 価格平均単価(億円/万個) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 89.0 | 0.10 | 9 | 0 |
| 10 年後 中立 | 89.0 | 0.13 | 12 | 0 |
取り方:その他8.9億円(開示)を、仮の平均単価0.1億円/万個で割って89万個とした。セグメント利益は筆者の推定で-0.28億円。
リスクと懸念
営業赤字の継続
過去20年のうち約10年が営業赤字で、2026年3月期も営業損失0.8億円だった。第1四半期も営業赤字1.3億円で、会社予想の黒字化は下期に寄る。
反射鏡の需要消失
プロジェクター用の反射鏡は、固体光源への移行で新規の需要がなくなると会社自身が見る。光学は売上の44%を占め、最大顧客のエプソンが売上の25.6%を占める。
財務制限条項と借入
借入金とリース債務が53億円、現金22億円、純資産26億円で、自己資本比率は30%まで下がった。純資産と経常利益に関する財務制限条項があり、赤字が続くと抵触する。
新事業の立ち上がり
ガラス偏光子は生産能力を3倍、放熱基板は焼成炉を1基から5基に増やす計画で、設備投資は合計23億円に及ぶ。量産の認証が遅れれば、固定費と償却だけが残る。
株式の希薄化
第10回、第11回、第12回の新株予約権で株数が増えている。第11回・第12回は行使価額修正条項付で、株価が下がれば新株が増える。総数は確認できていない。
株価の変動
株価は2026年2月に、同年1月の4倍超まで上がり、今もその2倍を超える水準にある。PBRは約9倍で、期待が外れたときの下げが大きい。
生産拠点の集中
生産は千葉県柏市と新潟県柏崎市に集まる。災害や設備事故があれば、主力製品の供給に影響する。
今後の分かれ目
- 2027年3月期に営業黒字(会社予想は2億円前後)を達成
- 黒字化の確度が上がり、やや楽観以上の確率を引き上げる。
- 放熱基板の焼成炉が稼働し、量産の認証が取れる
- 機能性薄膜の売上の数倍化が現実味を帯び、楽観とやや楽観の確率を引き上げる。
- 財務制限条項に抵触し、借入の条件変更を求められる
- 財務の傷みが確かになり、悲観の確率を引き上げる。
- 第11回・第12回新株予約権の行使で、株数が大きく増える
- 既存株主の取り分が薄まるので、holder_share を立てて評価を引き下げる。
- 反射鏡の売上の減り方が想定より早い
- 光学の縮小が重くなり、やや悲観以下の確率を引き上げる。
- ガラス偏光子で新しい大口の顧客を獲得
- エプソン以外への分散が進み、堀が強まるので、倍率の上限に近づく。
見ておくもの
- 営業損益(会社予想は2027年3月期に黒字)
- ガラス偏光子と放熱基板の量産開始時期と顧客
- 借入金・自己資本比率と財務制限条項
- 新株予約権の行使状況と発行済株式数
- 光学(反射鏡)の売上の減り方
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、3 区分の売上は仮の平均単価で割った個数 × 単価(物価3%込みの名目)で積んだ。営業利益率は過去12年の山5.5%を中立の上限とし、楽観は2011年ごろの13%まで広げた。倍率は資本コスト 9.25%(基本 7.5% + 循環0.75・値決め0.25・借金1.0・寿命0.75)と弱い堀から出し、ROE が k を下回る中立は PER を 1÷k の 7.5 割に置いた。悲観は稼ぐ力ではなく、今の自己資本に掛ける PBR で床を置いた。新株予約権の調達額と株数は未確認で評価に入れていない。今の時価総額は最後に比べただけだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.6→13.07 倍・やや楽観 PER 8.5→11.83 倍・中立 PER 7.3→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +2.75%(循環+0.75・値決め+0.25・借金+1.0・寿命+0.75)を足した 10.25%。赤字の継続や財務制限条項、希薄化は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.25% → 9.50%。