結論
東京計器は、防衛省向けの航空機搭載機器を柱に、船舶用のジャイロコンパスやオートパイロット、油空圧機器、流体機器を手がける老舗の計測・制御メーカーだ。売上の4割強を防衛・通信機器が占め、2026年3月期は2期連続で最高益になった。
筆者の結論は、事業は良くなっているが今の値段は先を織り込みすぎ、というものだ。10年の価値は今の時価総額を大きく下回ると見る。
最大の理由は利益の質にある。最高益は防衛予算の拡大と受注残に支えられたもので、会社も防衛予算は2027年度に向けて前半が厚く後半が薄いと説明している。官需の山に乗った利益を、10年先まで続くものとして評価はできない。
もう一つは資本の使い方だ。自己資本利益率は9%前後だが、配当は利益の2割に満たない。稼いだお金の多くは設備と本社移転に回り、純負債は178億円に増えた。
強みもある。ジャイロコンパスなど航海機器でトップシェアを守り、流体機器は利益率が16%と高い。一方、油空圧機器は利益率が2%にとどまる。
10年で見ると、売上は1,000億円に迫る可能性がある。それでも会社が成長を続けて資本を上手に使わない限り、資本コストを大きく上回る利益は出ない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、東京計器は「良い事業が良い値段で手に入るか」を厳しく問われる会社だ。
防衛と船舶の機器は、長く使われる堅い事業だ。しかし、顧客が国であり、値段を自分で決めにくい。最高益は防衛の追い風によるもので、この山が10年続くとは言えない。バリュー投資家は、山の利益ではなく、平らにならした利益に値段をつける。
オーナーとして気になるのは、稼いだお金の行き先だ。利益の2割に満たない配当で、設備や本社に投じ、借金も増えた。投じたお金が資本コストを上回って稼ぐ保証はまだない。
安全域の面でも、今の値段には余裕がない。負けた時の下支えとなる含み益のある資産や、積み上がった現金は見当たらない。借金は増える方向にある。
それでも悲観一辺倒ではない。利益率が3%台から9%近くへ上がった事実は重く、流体機器や船舶の高い利益率は、強みが実在する証拠だ。筆者が欲しいのは、防衛の山がならされても残る稼ぐ力の証拠と、株主への還元の増加だ。その両方が見えるまでは、今の値段に安全域はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は4つの事業で、売上の4割強を占めるのが防衛・通信機器だ。航空機に積む慣性航法装置やレーダー警戒装置、通信機器、センサーを防衛省などに納める。受注から納入まで数年かかり、いちど採用されると保守・改修も含めて長く続く。2026年3月期の売上は260億円、利益率は9%だった。
船舶港湾機器は売上の2割強で、ジャイロコンパス、オートパイロット、航海用の電子海図表示装置を造る。国内ではトップシェアを守る。新造船向けは価格競争が激しく、自動運航船の研究費がかさんで減益になった。利益率は9.6%だ。
油空圧機器は売上の2割弱で、建設機械や工作機械、プラスチック加工機械向けの油圧機器が中心だ。景気に左右されやすく、利益率は2%と低い。水素関連の製品を伸ばして収益力を上げるのが課題だ。
流体機器は売上の1割弱と小さいが、水道や下水などの官需向けで利益率は16%と高い。2027年3月期は利益の大幅な上方修正を出した。
このほか鉄道のレール検査機器などの事業がある。売上の8割強は国内で、海外比率は18%だ。防衛は国が顧客で、船舶と油空圧は国内外の企業が顧客になる。
優良さと弱いところ
筆者が見る東京計器の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、防衛の実績と船舶の古い顧客基盤にある。
防衛機器は、一度採用されると長く使われる。開発の経験と保安上の信頼が参入障壁になる。ただし顧客は事実上、防衛省だけだ。値段は国との契約で決まり、自分で上げる力は強くない。
船舶のジャイロコンパスとオートパイロットは、国内で首位を保つ。船が就航すれば保守・部品の売上が長く続く。一方で、新造船向けは中国勢との競争で価格が下がりやすい。
利益率は上がってきた。2020年代前半は3%台だったが、直近は8.8%だ。防衛の原価率が改善した分が大きい。過去10年の自己資本利益率は中央値で4.7%にとどまり、9%前後は歴史的に見て高い。
弱みは3つある。第一に、利益が防衛と船の2つの山に偏ること。第二に、油空圧機器の利益率が2%と低く、全社の足を引くこと。第三に、設備投資と研究費が重く、稼いだお金が株主に戻りにくいことだ。
経営は、収益力の向上と事業領域の拡大、資本効率の改善を掲げ、2030年に売上1,000億円・営業利益100億円を目指す。方針は妥当だが、実行力はこれからの数字で確かめることになる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京計器が戦う市場は一つではない。防衛、舶用、油圧、流体の4つで景色が違う。
防衛は、国が2027年度に防衛関連費を国内総生産の2%へ引き上げる計画で、追い風が吹いている。ただ会社の説明では、契約は2027年度までが厚く、そのあとは薄くなる配分だ。受注残は高い水準だが、次の山が来るかは予算と次期の主要案件次第になる。航空電子では三菱電機や日本航空電子などが競合となり、東京計器は特定の装置に強い専門メーカーとして動く。
舶用は、造船の波に左右される。中国を中心に海外の新造船需要は強い一方、機器の値段は安い競合に押されやすい。ジャイロコンパスやオートパイロットではフルノや日本無線などが近いところにいる。自動運航船は将来の差別化の種だが、いまは研究費がかかる段階だ。
油圧は建機や工作機械の需要に連動し、成熟した市場だ。数量は景気で上下するだけで、伸びは小さい。水素向けなど新しい用途が育つかが分かれ目になる。
流体は、水道や下水など官需が中心で需要が安定している。
この領域の見通しは、分析・計測機器の業界ノートに沿って、数量は研究や公共投資に支えられて底堅い、とする。ただ東京計器は、そのなかでも防衛の山と船の波に利益が偏る点が他社と違う。
資本政策と M&A
資本政策は、成長投資を優先し、還元は控えめな形だ。
2026年3月期の配当は前の期から増え、2027年3月期はさらに2割ほど増やす予定だ。安定的に増やす累進配当を掲げるが、利益に対する配当の割合は2割に届かない。自社株買いの方針は示されていない。
お金の行き先は設備と研究だ。2027年3月期の設備投資は約40億円で、半分は防衛向けの生産増強に使う。本社移転もあり、フリーキャッシュフローは悪化し、純有利子負債は178億円に増えた。
中期計画では、政策保有株の縮減と運転資金の改善を掲げ、エッジAIや水素、宇宙、鉄道、ライフサイエンスを成長の種に据える。2026年10月にはエッジAIの新興企業へ出資する提携を発表した。
買収は計画に盛り込まれているが、大型の案件はまだ見えない。買い手になるなら、規模が小さく資本を守れるかが問われる。
一方、時価総額は約1,000億円で、防衛関連の再評価が進むなか、再編や買収の標的になりうる位置にもある。ただし、いまの株主構成に関する確かな情報を筆者は確認していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防衛は、10年にわたる構造的な追い風の入り口にいる。日本の防衛関連費は国内総生産の2%を超えて上積みされる流れで、周辺の緊張はすぐには消えない。東京計器は、航空機搭載の機器で国内の中核に近い位置にあり、受注残は過去最高の水準だ。次期戦闘機の関連で出番が増え、輸出の可能性もある。装置は一度採用されると、保守・改修で長く稼げる。
船舶は、中国を中心とした新造船の需要が強く、保守サービスも積み上がる。自動運航船の技術は、先行投資がいずれ値段を支える武器になる。
利益率は上がり続ける。防衛は原価率の改善が進み、船舶の保守比率は上がる。流体機器は16%の利益率を持つ。油空圧も水素向けで立て直せる。
会社は2030年に売上1,000億円・営業利益100億円を掲げる。2027年3月期の計画でも売上は700億円、営業利益は64億円に達する。物価が年3%で上がる世界では、この目標は10年のうちに十分届く。
還元も厚くなる。累進配当の方針が実行され、設備投資が一巡すれば、自社株買いにも余力が出る。株主資本利益率が10%を超えれば、資本コストを上回る良い会社として評価されてよい。
慎重な見方
最高益は山だ。防衛予算は2023年度から2027年度の契約が前半に厚く後半に減る配分で、会社自身もそう説明している。受注残が高くても、2028年度以降に積み上げる新規案件が細れば、売上は一気に鈍る。国が顧客のこの事業は、予算の方向が変わればそれまでだ。
増産の設備投資と本社移転で、減価償却と販管費は固定的に増える。売上が落ちた時、この固定費は利益を直撃する。純負債は119億円から178億円へ1年で増えた。
船舶は、新造船向けで中国勢の安値に押されている。利益率は9%台だが、自動運航船の研究費が先に出ていく。油空圧は利益率が2%で、建機や工作機械の景気次第だ。
過去10年の自己資本利益率の中央値は4.7%で、いまの9%は歴史的な高さだ。これが10年続いて、中立で8%台にとどまる程度では、資本コスト7.25%をわずかに上回るだけだ。
還元は配当が利益の2割弱で、自社株買いはない。稼いだお金が設備と借金返済に消え、株主の手元には残らない。株価はすでに先の利益を織り込んでいる。
どちらに重みを置いたか
筆者は慎重な見方の方が強いと見る。防衛予算の配分が前半に厚いという会社自身の説明があり、利益の質に疑問が残る。さらに還元が小さく、借金が増えている点も、強気の見方の「還元も厚くなる」を裏づけていない。
一方、利益率が3%台から9%近くへ上がったのは事実で、強気の見方の入り口は否定できない。確率は中立を最大の35%に置き、やや楽観を22%、楽観を8%に抑えた。悲観は構造的に負ける筋書きとして13%に厚くし、やや悲観を22%にして全体を慎重な側へ寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,502 円904 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,283 円211 億円)。 今の値に割り戻すと 3,636 円598 億円、今との差 −36.5%、 期待の年率 +1.7%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 11,420 円1,877 億円 | 1,825 円300 億円 | +131.2% | +8.7% | 1,060 円174 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,341 円1,371 億円 | 1,582 円260 億円 | +73.2% | +5.6% | 2,183 円359 億円 |
| 中立 | 35% | 5,927 円974 億円 | 1,399 円230 億円 | +27.9% | +2.5% | 2,564 円421 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,361 円388 億円 | 1,034 円170 億円 | −40.7% | −5.1% | 747 円123 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,229 円202 億円 | 548 円90 億円 | −69.0% | −11.1% | 231 円38 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,502 円904 億円 | 1,283 円211 億円 | +18.4% | +1.7% | 6,785 円1,115 億円 |
今の株価時価総額 5,730 円942 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 防衛の追い風が10年続く 利益 111 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 11,420 円1,877 億円
防衛関連費の増額が続き、次期戦闘機と関連装備で東京計器の出番が一段と増える。慣性航法やレーダー警戒装置は輸出の話も出て、防衛・通信機器は売上が今の2倍を超える。船舶は中国の新造船需要を取り込み、保守サービスで稼ぎが厚くなる。自動運航船の技術も値段を支える。流体機器は官需と海外販路で伸び、鉄道とエッジAIの新事業も育つ。売上は1,200億円台に乗り、営業利益率は12%を超える。還元も厚くなり、自己資本利益率は10%を超えるが、資本コストをはるかに上回る優良企業と呼べるほどではない。鉄道のレール検査やAI、水素といった新事業も一部が収益の柱に育ち、2030年代に入っても受注残が切れない。この筋書きが実現するには、防衛の予算が途切れず、中国の安値攻勢にも船舶で負けないことが前提になる。
- 防衛・通信機器:数量 4,423(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.40(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 619 億円・営業利益 81 億円。追い風が続く
- 船舶港湾機器:数量 3,557(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 238 億円・営業利益 29 億円。保守が積み上がる
- 油空圧機器:数量 3,404(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 183 億円・営業利益 13 億円。水素向けが育つ
- 流体機器:数量 1,173(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 94 億円・営業利益 15 億円。海外が伸びる
- その他(鉄道・検査機器):数量 1,260(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 103 億円・営業利益 12 億円。鉄道が伸びる
倍率:事業の純利益 111 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 16.97 倍、時価総額 1,877 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛の追い風、船舶の保守、流体の伸びがそろう必要があり、会社の防衛予算の説明(前半厚く後半薄い)とも合わないので8%にとどめた。
やや楽観 22% 2030年ビジョンに近づく 利益 87 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 8,341 円1,371 億円
会社の2030年ビジョンに近い姿になる。防衛は2028年度以降も新規の開発案件が続き、受注残が切れない。船舶は新造船の波を受けて保守も積み上がり、利益率は10%台に乗る。油空圧は水素と建機向けで利益率が5%まで戻る。流体機器は官需の安定に海外が加わる。売上は1,100億円ほど、営業利益率は11%近くになる。設備投資の負担は一巡し、配当は累進で少しずつ増える。自己資本利益率は10%に迫る。ただ、国が顧客の事業の比率が高く、利益の質は高くない。会社が掲げるビジョンの達成が数年遅れる程度で、10年の道筋としては現実的な上振れと言える。AI やエッジ技術への出資の成果が見え始める点も、この筋書きを支える。
- 防衛・通信機器:数量 3,903(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.37(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 535 億円・営業利益 64 億円。ビジョンに近い
- 船舶港湾機器:数量 3,283(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 220 億円・営業利益 23 億円。新造船の波
- 油空圧機器:数量 3,197(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 171 億円・営業利益 9 億円。改善が進む
- 流体機器:数量 1,082(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 87 億円・営業利益 13 億円。官需が安定
- その他(鉄道・検査機器):数量 1,050(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 85 億円・営業利益 9 億円。拡大
倍率:事業の純利益 87 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.83 倍、時価総額 1,371 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が高く、利益率が実際に上がってきた実績があり、ビジョンに近づく筋書きにはそれなりの重みを置いた。
中立 35% 山が過ぎても高い水準で残る 利益 67 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 5,927 円974 億円
防衛予算の山が過ぎたあとも、受注が高い水準で続く。売上は1,000億円に届かず、970億円ほどにとどまる。防衛は物価の分と少しの数量増で伸び、利益率は10%台前半で落ち着く。船舶は新造船の波に合わせて上下し、価格競争のせいで利益率は9〜10%だ。油空圧は景気に合わせて動き、利益率は4%前後と低いまま。流体機器は安定して稼ぐ。営業利益は90億円強、利益率は9〜10%だ。自己資本利益率は8%程度で、資本コストを少し上回る。還元は少しずつ増えるが、設備に資金が回る構図は変わらない。純負債は緩やかに減り、財務は安定する。新事業の寄与は小さく、買収も大型案件は出ない。良い会社ではあるが、突出した成長もしない。
- 防衛・通信機器:数量 3,435(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 460 億円・営業利益 48 億円。山の後も高水準
- 船舶港湾機器:数量 3,064(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 205 億円・営業利益 20 億円。価格競争で足踏み
- 油空圧機器:数量 2,960(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 159 億円・営業利益 6 億円。景気で上下
- 流体機器:数量 992(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 80 億円・営業利益 11 億円。堅調
- その他(鉄道・検査機器):数量 840(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.34(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 68 億円・営業利益 7 億円。緩やかに伸びる
倍率:事業の純利益 67 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.54 倍、時価総額 974 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:山の後も受注が高い水準で残り、利益率は9〜10%で落ち着く姿が最も実現しやすいとみて最大に置いた。
やや悲観 22% 防衛の山が終わり停滞 利益 39 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,361 円388 億円
防衛予算の山が2027年度で終わり、2028年度以降の新規案件が細る。防衛・通信機器の売上は伸びず、本社移転や増産設備の減価償却が重荷になる。船舶は中国勢の安値に押され、数量も値段も下がる。油空圧は景気の谷で利益率が2%台にとどまる。売上は800億円に届かず、営業利益率は7%に落ちる。自己資本利益率は5%台まで下がり、資本コストを下回る。配当は守るが増やせず、借金の返済が優先になる。会社は成長の種を探すが、成果は小さい。防衛の山が高かったぶん、終わった後の落差が目立つ。新事業は規模が小さく、穴を埋めるところまで育たない。株主から見ると、資本を投じたわりに稼ぎが戻らない状態になる。
- 防衛・通信機器:数量 2,732(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.30(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 355 億円・営業利益 28 億円。山が終わる
- 船舶港湾機器:数量 2,599(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.25(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 163 億円・営業利益 11 億円。中国勢に押される
- 油空圧機器:数量 2,723(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.25(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 136 億円・営業利益 3 億円。谷に沈む
- 流体機器:数量 902(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.30(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 70 億円・営業利益 8 億円。横ばい
- その他(鉄道・検査機器):数量 700(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.30(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 55 億円・営業利益 4 億円。横ばい
倍率:ROE 5.1%は資本コスト7.25%を下回るので、ためた利益の価値は帳簿より小さい。上限は1÷k=13.3倍で、稼ぐ力に安全率を掛けて上限の7.5割の10倍に置いた。
確率:防衛の契約が2027年度までに厚い配分で、2028年度以降の新規案件が細る不安が現実にあるので、やや厚く22%を置いた。
悲観 13% 後継案件を失い構造的に負ける 利益 8 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,229 円202 億円
防衛の主要な後継案件を取り逃がし、受注が大きく落ち込む。慣性航法や警戒装置の数量は今の4分の3に減り、増産設備が遊ぶ。船舶は中国勢との価格競争に負け、ジャイロコンパスの首位も崩れる。油空圧は赤字に近づく。売上は600億円を割り、営業利益率は3%まで縮む。設備と本社の固定費が重く、純負債が増える。もう優良とは言えない状態で、事業用の資産を売って借金を返す局面が見えてくる。配当は大きく減る。国に頼る事業の比率が高かった会社は、代わりの柱を持たないまま古い装置の保守で食いつなぐことになる。新事業の出資も実らず、資本が目減りする。10年先の東京計器は、もう防衛の専門メーカーとして選ばれる会社ではなくなっている。
- 防衛・通信機器:数量 1,952(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.25(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 244 億円・営業利益 7 億円。後継案件を失う
- 船舶港湾機器:数量 2,052(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.15(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 118 億円・営業利益 2 億円。首位が崩れる
- 油空圧機器:数量 2,368(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.15(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 109 億円・営業利益 0 億円。赤字に近い
- 流体機器:数量 812(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.25(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 61 億円・営業利益 5 億円。縮小
- その他(鉄道・検査機器):数量 560(市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア))× 価格 1.25(値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。縮小
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)は小さく、売れる資産の床で置く。事業用資産(今の自己資本455億円+純有利子負債178億円=633億円)が簿価の60%で売れるとし、純有利子負債178億円を返した残り202億円が、今の自己資本の0.44倍にあたる。EV(時価総額+純有利子負債)÷営業利益は24倍と高いが、利益の倍率では見ず、売れる資産の床として置いた値である。
確率:国が顧客の事業で後継案件を失う、中国勢に船舶で負けるなど構造的な負けの余地があり、配当も還元も小さい資本の使い方を踏まえ、5%を上回る13%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
防衛・通信機器
航空機搭載の慣性航法装置・レーダー警戒装置・通信機器・センサーなどを防衛省向けに納める。受注残が高水準。
| 数量市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア) | 価格値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,602 | 1.00 | 260 | 23 |
| 10 年後 中立 | 3,435 | 1.34 | 460 | 48 |
取り方:防衛省向けに自社が競える領域(慣性航法・警戒装置・通信・センサー)を実質2,600億円ほどの市場と推定し、自社シェア約10%で売上260億円に合わせた。数量は「市場規模×(シェア÷今のシェア)」で、値段は物価などの指数で表す。
船舶港湾機器
ジャイロコンパス・オートパイロット・電子海図表示装置など船舶・港湾向けの航海機器。国内首位。
| 数量市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア) | 価格値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,736 | 1.00 | 137 | 13 |
| 10 年後 中立 | 3,064 | 1.34 | 205 | 20 |
取り方:航海機器(ジャイロ・オートパイロット・電子海図)の世界市場を実質2,700億円ほどと推定し、自社シェア約5%で売上137億円に合わせた。国内首位でも世界では中堅という見方。
油空圧機器
建設機械・工作機械・プラスチック加工機械向けの油圧・空圧機器。水素関連製品を育てている。
| 数量市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア) | 価格値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,960 | 1.00 | 118 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,960 | 1.34 | 159 | 6 |
取り方:国内中心の油圧・空圧機器の自社が競える領域を実質3,000億円弱と推定し、シェア約4%で売上118億円に合わせた。成熟した市場。
流体機器
水道・下水などの官需向けを中心とする流体機器。利益率が高い。
| 数量市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア) | 価格値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 902 | 1.00 | 54 | 9 |
| 10 年後 中立 | 992 | 1.34 | 80 | 11 |
取り方:上下水・計量などの流体機器で自社が競える官需中心の領域を実質900億円ほどと推定し、シェア約6%で売上54億円に合わせた。
その他(鉄道・検査機器)
鉄道・レール検査機器などの事業。
| 数量市場規模(実質億円)×(シェア÷今のシェア) | 価格値段の指数(2026/03=1.00。物価並みなら10年で1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 1.00 | 43 | 6 |
| 10 年後 中立 | 840 | 1.34 | 68 | 7 |
取り方:鉄道のレール検査機器などの領域を実質700億円ほどと推定し、シェア約6%で売上42億円に合わせた。利益は連結との差(調整額)を含む。
リスクと懸念
防衛予算の山が過ぎるリスク
防衛予算は2023〜2027年度の契約が前半に厚く後半に薄い配分だ。受注残が高くても、2028年度以降の新規案件が細れば、売上の4割強を占める事業が鈍る。国が顧客のため、予算の方向が変わると立て直しが難しい。
官需への依存と値決めの弱さ
防衛・通信機器は顧客が事実上、防衛省だ。値段は国との契約で決まり、上げる力は強くない。入札や契約の条件が厳しくなれば、利益率が下がる。流体機器も官需が中心で、予算に左右される。
固定費の増加と借金
増産の設備投資と本社移転で、減価償却や販管費が上がった。純有利子負債は119億円から178億円に増えた。売上が落ちるとこの固定費が利益を直撃し、金利が上がる世界では利払いも増える。
船舶の価格競争と自動運航船の研究費
新造船向けの航海機器は価格競争が激しく、2027年3月期の船舶の利益率は9%台の想定にとどまる。自動運航船は研究費が先に出ていく。中国勢の追い上げが続けば、首位の地位が揺らぐ。
油空圧機器の低い利益率
油空圧機器の利益率は2%にとどまり、建機や工作機械の景気で上下する。水素向けの新製品が育たなければ、全社の足を引き続ける。数量は景気しだいで、物価の分を価格に転嫁しにくい。
株主還元の小ささと資本の使い方
配当は利益の2割に満たず、自社株買いの方針もない。稼いだお金が設備と借金返済に回る。投資が資本コストを上回って稼げなければ、1株の価値は積み上がらない。
新事業とM&Aの実行
エッジAIや水素、宇宙、鉄道などの新事業と買収が計画にある。経験の少ない分野に資金を入れて失敗すれば、資本が減る。買う側に回る場合の価格規律が問われる。
今後の分かれ目
- 防衛の新規案件(次期戦闘機の関連など)が2028年度以降も続けて決まる
- 利益の山が延びたと見て、中立から楽観側へ確率を寄せる。
- 防衛の受注が2027年度で目に見えて細る
- 防衛・通信機器の売上と利益が頭打ちになり、悲観側へ確率を寄せる。
- 船舶の利益率が10%台に乗り、保守サービスの比率が上がる
- 新造船の波に左右されにくい収益の柱ができたと見て、中立の利益率を引き上げる。
- 配当の割合が3割を超え、自社株買いも始まる
- 資本の使い方が株主向けに変わった証拠として、価値の評価を上方に直す。
- 油空圧機器の利益率が5%を超える
- 全社の足を引く部分が直ったと見て、中立の利益を引き上げる。
- 大型の買収を発表する
- 価格と成長の根拠を確かめ、資本が減る可能性があれば悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 防衛・通信機器の受注残と2028年度以降の新規案件
- 防衛関連予算の配分(2027年度以降)
- 船舶港湾機器の利益率と保守サービスの比率
- 油空圧機器の利益率
- 配当の割合・自社株買いの有無
- 純有利子負債と設備投資の規模
- 次の中期経営計画(2030年ビジョン:売上1,000億円・営業利益100億円)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを根拠にせず、各時点のROE・成長(物価を含むgは4%)・資本コスト7.25%から正当化PERの上限を出し、楽観9割・やや楽観9割・中立はほぼ上限(下限13.3倍との間)に置いた。10年の価値が今の時価総額を大きく下回ったのは、防衛の山の利益を平らにならして見た結果で、今の株価に寄せる調整はしていない。やや悲観は稼ぐ力に安全率を掛け、悲観は売れる資産の床で置いた。同じ領域の会社と物差しは揃え、違いは防衛への偏りと還元の小ささで説明した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.8→16.97 倍・やや楽観 PER 13.7→15.83 倍・中立 PER 13.4→14.54 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本7.5%+quality 0%=7.5%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。