結論
長野計器は、圧力計と圧力センサを軸にした計測機器の老舗だ。圧力計は売上の5割強、センサは3割弱を占め、海外の売上は約5割に上る。
筆者の結論は、事業は堅いが今の値段は先を織り込みすぎ、というものだ。10年の価値は今の時価総額をおよそ4分の1下回ると見る。
理由の第一は、利益の振れ幅だ。半導体の設備投資が落ちた2026年3月期は、センサの利益が3割減った。直近の四半期は営業利益が5割増と急回復したが、この波は10年の間に何度も来る。会社の今期予想は控えめで、純利益は2割の減益だ。
第二は、稼いだお金の使い方だ。配当は利益の2割前後と軽く、自己資本はたまる一方になる。資本コストをわずかに上回る程度の稼ぎで利益を寝かせると、持ち株の価値は伸びにくい。
救いは財務だ。純現金で自己資本比率は6割を超え、負けた時の下支えは厚い。ただ、前の中期計画は目標の7割しか達成できなかった。新計画の利益率12%を、筆者は少し割り引いて見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、長野計器は「悪くない事業を、普通の値段で持ち続けられるか」を問う会社だ。圧力計は世界上位で、100年以上の実績がある。事業が突然なくなる心配は小さい。
ただ、持ち続けたい理由が足りない。稼ぐ力は資本コストをわずかに上回る程度で、利益率は半導体の波で上下する。値段を自分で決められる強い堀は見当たらない。
オーナーとして重く見るのは、お金の行き先だ。稼いだ利益の7割近くが社内に残り、自己資本は10年で倍近くまで膨らむ。この残したお金が、資本コストを上回って稼ぎ続ければ価値は積み上がる。稼ぎが追いつかなければ、寝かせたお金の価値は目減りする。筆者は、資本コストにわずかに届く程度と見て、利益を寝かせる分を割り引いた。
安全域はどうか。純現金と6割を超える自己資本、そして約81億円の政策保有株は、負けた時の床になる。ただ、床は今の時価総額を大きく下回る。楽観の筋書きでも、10年後に今の2倍に届かない。値段に余裕があるとは言えない。
予測のしやすさは普通だ。圧力計測という事業は読みやすいが、半導体と中国勢の価格競争は読みにくい。確信度は中ほどと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は圧力計だ。売上の5割強、約365億円を占める。プラントや産業機械、空調に付ける圧力計で、ここで世界上位を争う。圧力計は「見る」道具で、一度採用されると交換のたびに同じ会社から買う傾向がある。
圧力センサは売上の3割弱、約195億円だ。圧力を電気信号に変える部品で、半導体製造装置、空調冷凍、産業機械、車載の一部に入る。利益率は圧力計より高く、2025年3月期は約2割あった。成長の主役はこちらだ。
計測制御機器は約45億円。圧力・温度などを測って制御する装置で、利益率は直近で1割を超えた。ダイカストは約55億円で、自動車部品などのアルミ鋳造だ。利益が薄く、前の期は赤字だった。残りは約18億円の小さな事業群だ。
顧客は分散している。売上の1割を超える相手はいない。業界でいえば半導体、産業機械、プロセス(化学・石油など)、自動車が中心だ。グループは連結で約2,400人。米国の子会社は産業機械向けが好調で、海外の売上は全体の約5割になる。
生産の中心は長野県の工場群だ。センサ素子の生産増強を進めており、新しい生産棟の建設も検討している。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、「測る」という地味な仕事を100年以上続けてきた信頼にある。圧力計は壊れると事故につながる部品で、品質の実績が買い手の安心になる。値段だけで乗り換えにくい。ただし、強い堀とまでは言えない。有価証券報告書も、国内では海外メーカーとの価格競争が厳しいと書いている。
圧力センサは、素子から自社で作る垂直型の生産が強みだ。会社は世界最大級の電子圧力センサ工場を持つと説明している。一方で、競合のWIKAやSetra、MKSなどは世界で戦う相手だ。センサは量産で値段が下がりやすく、規模が小さい長野計器は価格で守りにくい。
利益率は上がってきた。2010年代は3%から4%台だったが、直近は10%前後で、2025年3月期は11%に達した。ただ、過去10年の自己資本利益率の中央値は9.7%にとどまる。資本コストを少し上回る程度で、突き抜けてはいない。
弱みは二つある。一つは半導体向けへの依存で、センサも圧力計も、半導体が落ちると同時に利益が下がる。もう一つは計画の精度だ。前の中期計画は最終年度に売上753億円、営業利益97億円を掲げたが、実績は677億円、70億円だった。
経営の不祥事も記録に残る。2021年に元従業員の不正が発覚し、再発防止がリスク項目に載っている。手続きの強化が続いているかを、筆者は見ておきたい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
圧力を測る市場は、地味だが底が深い。化学プラント、半導体装置、空調、水素やアンモニアのような新しいエネルギー設備まで、「圧力」はあらゆる産業の基本の測定項目だ。数量は世界の設備投資と生産の増加に連動し、人口の増減とは関係が薄い。実質で見ると、成熟した圧力計は年1%前後、センサは年3%から4%の伸びを筆者は見る。
競争の形は分かれている。圧力計は、ドイツのWIKAを筆頭に、日本、米国、中国のメーカーが分け合う。中国勢の品質が上がり、汎用品は値下がりしやすい。長野計器は高精度・高信頼の領域と、半導体や化学向けの用途で差をつけようとしている。
センサは、WIKA、Setra、MKS、Brooksなどが相手だ。半導体製造装置向けは、設備投資のサイクルに強く揺れる。2025年度は落ち込み、2026年4〜6月は急回復した。この動きは、10年の中では何度も繰り返される。
追い風もある。半導体の微細化で、ガスや薬液の圧力管理はより厳密になる。水素や燃料電池、冷媒の切り替えでも、高い圧力に耐えるセンサの需要が見込める。会社は新領域として光学式センサとワイヤレス化を挙げる。
人件費や素材費は物価で上がる。値段にどこまで転嫁できるかが、利益率の分かれ目だ。圧力計は物価並みに上げるのが難しく、センサは量産で実質の値下がりが続くと筆者は見る。
資本政策と M&A
還元は軽い。直近の配当は利益に対する割合が2割に届かない。今期は増配の予定と伝えられるが、それでも3割に満たない。会社は「累進配当」、つまり減らさず増やす方針を掲げる。自社株買いの大きな実績は見当たらない。
新中期計画「2028」は、2026年度から3年間。最終年度に売上755億円、営業利益90億円、利益率12%、期間中の自己資本利益率12%を目標にする。会社は資本配分の計画も示したが、細かい数字は確認できなかった。
政策保有株は上場9銘柄で約81億円。理研計器が約42億円、東京計器が約18億円で、これは同業への持ち合いだ。会社は「必要がなければ縮減」と書いている。
筆者がいちばん気にしているのは、たまる現金の行き先だ。純現金はまだ小さいが、配当が軽いまま利益を積むと、数年で数百億円の内部留保になる。生産棟の新設で使うのが筋だが、使い道が資本コスト以上の稼ぎを生むかは、まだわからない。
M&Aは実績が乏しい。TOBで買われる可能性は、外部のシミュレーションで10年以内19%という数字もあるが、筆者はその確率を価値に足していない。
手元には投資有価証券が時価で93億円あり、含み益は税引き後で約47億円ある。設備投資の原資にも回るので、半分だけ価値に入れる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
圧力計測は、世界のどこの工場にもある必需品だ。長野計器は圧力計で世界上位、センサでは素子から自社で作る強みを持つ。2026年4〜6月の営業利益は前年同期比で5割増え、半導体の波が戻ったことをはっきり示している。
新中期計画は、最終年度の営業利益を90億円、利益率を12%に置いた。センサの生産能力を引き上げ、新しい生産棟も検討している。半導体の微細化、水素、冷媒の転換といった追い風は、10年続く構造変化だ。センサの数量が年4%以上伸び、利益率が2割近くまで戻れば、全体の利益率は12%に届く。
財務は強い。純現金で自己資本比率は6割を超え、新しい投資も借金に頼らずできる。配当は累進方針で、減ることはない。軽い還元は裏返せば、増配の余地が大きいということでもある。今期の純利益は会社予想で43億円まで下がるが、これは保守的な見積もりで、第1四半期の勢いを織り込めば上振れる。
会社が政策保有株の縮減を進め、現金の使い道を明確にすれば、自己資本利益率は12%に近づく。そうなれば、10年後の価値は今を上回りうる。
慎重な見方
過去の実績が最大の疑問だ。前の中期計画は、最終年度の営業利益を97億円としたが、実際は70億円で、達成率は7割だった。理由は半導体の設備投資の変動だと会社は言う。つまり、次の計画も同じ変動の影響を受ける。新計画の90億円も、同じ外部要因に左右される。
利益の質も弱い。営業利益率は過去10年で3%台から11%の間を動き、中央値の自己資本利益率は9.7%だ。資本コストを上回る幅が小さく、利益を寝かせるほど価値が薄まる。配当が軽く、現金は社内にたまる。
競争は厳しくなる。有価証券報告書は、国内の価格競争が大変厳しいと書く。中国メーカーの品質向上で汎用の圧力計は値が下がり、センサは量産で実質の値下がりが続く。物価が3%上がっても、値段が追いつかなければ利益率は上がらない。
さらに、今の時価総額は776億円で、10年の利益を考えると先を織り込んだ値段だ。第1四半期の急回復は、前年の落ち込みの裏返しでもある。半導体の波は次の谷で再び利益を削る。ダイカストは赤字になったばかりで、自動車の電動化で縮む。強気の見方は、波の山だけを見ている。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さは強気の見方が正しい。ただし、資本コストを少し上回る程度の稼ぎで、利益の6割から7割を社内に残す今の形では、10年後の価値は今の時価総額を大きく超えない。前の計画が7割しか達成できなかった実績も重い。
確率は、中立を最も重い37%に置き、やや悲観を22%、悲観を11%とした。悲観側をやや厚くしたのは、価格競争と半導体への依存が、同時に利益を削るからだ。楽観は8%にとどめた。利益率が過去の最高を超え続けるには、複数の好条件が同時に要る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,930 円1,287 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,250 円232 億円)。 今の値に割り戻すと 4,233 円786 億円、今との差 +9.1%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,142 円2,255 億円 | 1,777 円330 億円 | +258.7% | +13.6% | 1,113 円207 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,794 円1,819 億円 | 1,561 円290 億円 | +192.7% | +11.3% | 2,498 円464 億円 |
| 中立 | 37% | 7,958 円1,478 億円 | 1,346 円250 億円 | +139.8% | +9.1% | 3,443 円639 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,143 円584 億円 | 1,023 円190 億円 | +7.4% | +0.7% | 917 円170 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,528 円284 億円 | 377 円70 億円 | −50.9% | −6.9% | 210 円39 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,930 円1,287 億円 | 1,250 円232 億円 | +110.8% | +7.7% | 8,180 円1,519 億円 |
今の株価時価総額 3,880 円721 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 半導体と新領域が重なる 利益 121 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 12,142 円2,255 億円
半導体の設備投資が10年にわたって拡大し、微細化でガスや薬液の圧力管理が厳しくなる。圧力センサは半導体、水素、冷媒向けで数量が2倍近くに増える。会社は海外のセンサ拡販に成功し、世界の主要な装置メーカーに採用が広がる。
圧力計は物価並みの値上げが通り、数量も着実に伸びる。丸子の生産棟が稼働し、規模の利益で利益率が上がる。全社の営業利益率は13%台に達し、新中計の12%を超える。
計測制御機器も需要が増え、ダイカストは自動車の縮小を他の用途で補う。
配当は累進を続け、自社株買いも始まり、自己資本利益率は12%近くまで上がる。ただし、これは複数の好条件が同時に続く絵で、過去に最高だった利益率を10年維持することになる。確率は低いと見る。
- 圧力計:数量 4,200(世界の産業用圧力計市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 586 億円・営業利益 62 億円。値上げが通る
- 圧力センサ:数量 8,550(世界の産業用圧力センサ市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.30(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 481 億円・営業利益 91 億円。シェアが伸びる
- 計測制御機器:数量 2,025(国内中心の計測制御機器市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 81 億円・営業利益 9 億円。需要増
- ダイカスト:数量 1,200(国内のダイカスト市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 74 億円・営業利益 3 億円。横ばい
- その他:数量 880(自社が競える領域(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 120 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)55 億円。全体の PER 17.93 倍、時価総額 2,202 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体・水素・海外拡販が全部うまくいき、過去最高の利益率を 10 年保つ必要があるので 8% にとどめた。
やや楽観 22% 計画の利益率 12% に届く 利益 99 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 9,794 円1,819 億円
新中期計画の利益率12%に、ほぼ届く10年だ。圧力センサは半導体の波を何度か越えながら、海外拡販が実を結んで数量が6割ほど増える。値段は量産で上がりにくいが、物価の7割ほどは転嫁できる。
圧力計は成熟市場で、数量は1割強の伸びにとどまる。それでも、高精度品や半導体・化学向けで値段を守り、利益率は10%近くになる。
計測制御機器は緩やかに伸びる。ダイカストは自動車の動きに合わせてやや縮み、利益は薄いままだ。
全社の売上は1,100億円台、営業利益率は12%を少し超える。配当は累進で着実に増え、自己資本利益率は10%台に上がる。ただ、会社の過去の計画の精度を考えると、この絵が最も実現しやすいとは言えない。
- 圧力計:数量 3,990(世界の産業用圧力計市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.32(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 549 億円・営業利益 54 億円。着実に伸びる
- 圧力センサ:数量 7,290(世界の産業用圧力センサ市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.29(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 407 億円・営業利益 71 億円。海外で拡販
- 計測制御機器:数量 1,830(国内中心の計測制御機器市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 73 億円・営業利益 7 億円。安定
- ダイカスト:数量 1,164(国内のダイカスト市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 71 億円・営業利益 3 億円。やや縮む
- その他:数量 840(自社が競える領域(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 98 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)55 億円。全体の PER 17.31 倍、時価総額 1,752 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新中計の利益率 12% に届く絵。実現しうるが、前の計画は目標の 7 割しか達成できなかったので、中立より軽くした。
中立 37% 利益率は 11% 前後で定着 利益 82 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 7,958 円1,478 億円
利益率は11%前後で定着する。半導体は山と谷を繰り返すが、10年を通せば数量は緩やかに伸びる。圧力センサの数量は4割ほど増える。値段は量産で実質の値下がりが続き、10年で名目1.28倍にとどまる。
圧力計は成熟している。中国勢の価格圧力もあり、名目の値上げは物価をやや下回る。数量は1割弱の増加だ。
計測制御機器はゆっくり伸び、ダイカストは自動車の縮小で数量が減る。全社の売上は約1,000億円、営業利益は110億円強で、利益率は過去の最高水準にとどまる。会社の12%には届かない。
配当は累進を守って、利益の3割台まで上がる。それでも利益の6割以上が社内に残り、自己資本は900億円台まで増える。自己資本利益率は9%前後で、資本コストをわずかに上回る程度だ。
- 圧力計:数量 3,780(世界の産業用圧力計市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.30(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 512 億円・営業利益 46 億円。成熟市場
- 圧力センサ:数量 6,390(世界の産業用圧力センサ市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.28(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 354 億円・営業利益 57 億円。半導体・新領域で伸びる
- 計測制御機器:数量 1,680(国内中心の計測制御機器市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 67 億円・営業利益 6 億円。緩やかに伸びる
- ダイカスト:数量 1,116(国内のダイカスト市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 68 億円・営業利益 2 億円。自動車の縮小
- その他:数量 800(自社が競える領域(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 81 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)55 億円。全体の PER 16.61 倍、時価総額 1,395 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率 11% 前後で定着する絵を最も重く置いた。会社の過去 10 年の最高水準に当たり、根拠が最も多い。
やや悲観 22% 半導体の山が低く価格競争も続く 利益 49 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 3,143 円584 億円
半導体の山が低く、価格競争も続く。センサの数量は1割ほどしか伸びず、中国メーカーの追い上げで値段は実質で大きく下がる。圧力計は数量が横ばいで、値上げも物価に追いつかない。
利益率は8%台にとどまる。計画の90億円には届かず、10年後の営業利益は70億円弱だ。ダイカストは薄利のままで、自動車の縮小とともに数量が減る。
財務は引き続き堅いが、稼ぎは資本コストを下回る。配当は累進を守るものの、成長は止まる。余った現金は、生産棟など使い道の決まらない投資に消え、資本の効率がさらに落ちる。
この筋書きは、今の値段と比べると大きな下落に当たる。ただ、価格競争が強く、前の計画も7割しか達成できなかった事実を考えると、決して低い確率ではない。
- 圧力計:数量 3,500(世界の産業用圧力計市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.22(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 445 億円・営業利益 31 億円。価格競争
- 圧力センサ:数量 5,040(世界の産業用圧力センサ市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.20(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 262 億円・営業利益 30 億円。値下がりが続く
- 計測制御機器:数量 1,500(国内中心の計測制御機器市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.30(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 58 億円・営業利益 4 億円。停滞
- ダイカスト:数量 1,020(国内のダイカスト市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.30(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 61 億円・営業利益 1 億円。薄利
- その他:数量 720(自社が競える領域(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.30(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。縮む
倍率:ROE 6.1% は資本コスト 7.5% を下回るので、ためた利益の価値は帳簿より小さい。上限は 1÷k=12.5 倍で、稼ぐ力に安全率を掛け、上限の 7.5 割の 9.4 倍に置いた。 余った資産(投資有価証券の売却益課税後73億円)は戻り方0.5で足した。
確率:価格競争と半導体の波が続く現実の延長として、中立に近い重みを置いた。前の計画の未達もこの側の根拠になる。
悲観 11% 中国勢に押され構造的に負ける 利益 12 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,528 円284 億円
中国メーカーの品質が上がり、圧力計とセンサの両方で価格破壊が進む。大手の装置メーカーが調達先を中国勢に切り替え、長野計器は半導体向けで数量を失う。センサの数量は1割減り、値段は名目でも物価に届かない。
圧力計も世界のシェアが落ち、数量は15%ほど縮む。ダイカストは自動車の電動化で部品が減り、赤字が続く。全社の営業利益は十数億円まで落ち、もう優良な計測機器メーカーとは呼べない。
それでも会社が消えるわけではない。純現金と自己資本の厚み、約81億円の政策保有株が下支えになる。ただ、事業用の資産は、売るとなれば簿価の半分程度の値しかつかない。
悲観の確率は11%に置いた。10年で競争力を失う会社は精密機器でも実例がある。この会社は、世界上位の圧力計を持つので、さらに高い確率は置かない。
- 圧力計:数量 2,975(世界の産業用圧力計市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.10(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 341 億円・営業利益 10 億円。シェア喪失
- 圧力センサ:数量 4,050(世界の産業用圧力センサ市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.05(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 184 億円・営業利益 6 億円。価格破壊
- 計測制御機器:数量 1,200(国内中心の計測制御機器市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.15(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。縮小
- ダイカスト:数量 840(国内のダイカスト市場(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.20(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 46 億円・営業利益 −1 億円。赤字
- その他:数量 640(自社が競える領域(億円・実質)× シェアの比)× 価格 1.20(値段の指数(今を 1。物価などを含む名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。縮む
倍率:稼ぐ力(純利益 12 億円÷k)は小さく、売れる資産の床で置いた。事業用資産(今の自己資本 481 億円に純有利子負債 -44 億円を足した 437 億円)が簿価の 55% で売れるとし、純現金 44 億円は全額数えて 284 億円。今の自己資本の 0.59 倍にあたる。EV÷営業利益は、赤字に近く利益の倍率では見ない。
確率:10 年で競争力を失う例は業界にあるが、世界上位の圧力計と純現金を持つので 5% を超える水準で 11% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
圧力計
産業用の圧力計(機械式・電子式の表示計)と付属品。プラント・産業機械・半導体装置・空調などに納める主力。
| 数量世界の産業用圧力計市場(億円・実質)× シェアの比 | 価格値段の指数(今を 1。物価などを含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,500 | 1.00 | 365 | 31 |
| 10 年後 中立 | 3,780 | 1.30 | 512 | 46 |
取り方:世界の産業用圧力計を実質 3,500 億円と推定(WIKA など欧州勢と日本・中国勢で分け合う)。自社売上 365 億円との比でシェア約 10% を置いた。数量は「市場 × シェアの比」、価格は物価などの値段の指数(今を 1)。
圧力センサ
産業機器・半導体製造装置・空調冷凍・車載の一部に納める圧力センサ。成長の主役。
| 数量世界の産業用圧力センサ市場(億円・実質)× シェアの比 | 価格値段の指数(今を 1。物価などを含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,500 | 1.00 | 195 | 30 |
| 10 年後 中立 | 6,390 | 1.28 | 354 | 57 |
取り方:産業用の圧力センサ・トランスデューサを実質 4,500 億円と推定。売上 195 億円でシェア約 4% を置いた。2026 年 3 月期は半導体向けの落ち込みで売上が 9% 減り、利益は 3 割減った。
計測制御機器
圧力・温度などの計測制御装置と計測サービス。2026 年 3 月期は売上 1 割増、利益 7 割増。
| 数量国内中心の計測制御機器市場(億円・実質)× シェアの比 | 価格値段の指数(今を 1。物価などを含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 1.00 | 45 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,680 | 1.34 | 67 | 6 |
取り方:計測制御機器の自社が競える領域を実質 1,500 億円と推定、シェア約 3% を置いた。利益率は 11% まで戻ったが、振れやすい。
ダイカスト
自動車部品などのアルミダイカスト。利益の薄い素材加工で、前期は赤字だった。
| 数量国内のダイカスト市場(億円・実質)× シェアの比 | 価格値段の指数(今を 1。物価などを含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,200 | 1.00 | 55 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,116 | 1.34 | 68 | 2 |
取り方:自社が競える領域のダイカスト市場を実質 1,200 億円と推定、シェア約 4.6% を置いた。利益率は 4% と薄い。
その他
上記以外の小さな事業。
| 数量自社が競える領域(億円・実質)× シェアの比 | 価格値段の指数(今を 1。物価などを含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 1.00 | 18 | 1 |
| 10 年後 中立 | 800 | 1.34 | 24 | 2 |
取り方:自社が競える領域を実質 800 億円と推定、シェア約 2% を置いた。
リスクと懸念
半導体の設備投資の波
圧力計とセンサの両方が半導体向けで振れる。2026年3月期はセンサの営業利益が3割減った。2026年4〜6月は急回復したが、投資の山と谷は10年の間に何度も来る。前の中期計画が目標の7割で終わった理由も、この変動だった。
中国メーカーとの価格競争
有価証券報告書は、国内で海外メーカーとの価格競争が大変厳しいと書く。中国勢の品質が上がれば、汎用の圧力計とセンサは値が下がる。物価が3%上がっても、値段が追いつかなければ利益率は上がらない。
計画の精度
前の中期計画は、最終年度の営業利益97億円を掲げ、実績は70億円だった。新計画は90億円・利益率12%を掲げるが、同じ外部要因を抱えている。目標を割り引いて見るべきだ。
資本の使い方
配当は利益の2割前後で、残りは社内に残る。生産棟の新設が資本コスト以上の稼ぎを生まなければ、積んだお金の価値は薄れる。累進配当は守られる見込みだが、自社株買いなど大きな還元は示されていない。
ダイカストと自動車の縮小
ダイカストは売上の1割弱だが、利益が薄く、前の期は赤字だった。自動車の電動化で部品の需要が変わるため、赤字が続けば全体の利益率を押し下げる。
過去の不正と内部管理
2021年に元従業員による不正が発覚し、再発防止が有価証券報告書のリスク項目に載っている。管理が緩めば、信頼が最大の強みである会社にとって、信用と業績の両方で損失になる。
仕入先・部材の調達
重要な部品や工程の一部は、特定の仕入先に依存している。調達が止まれば、センサの出荷や新製品の立ち上げが遅れる。素材価格の上昇を値段に転嫁しにくい点も、有価証券報告書が挙げる。
今後の分かれ目
- 半導体向けの回復が1年を超えて続き、センサの利益率が2割近くに戻る
- 中立の利益率を12%に近づけ、やや楽観側に見通しを寄せる。
- 配当性向が4割を超え、自社株買いも始まる
- 利益を寝かせる懸念が和らぎ、中立の自己資本利益率と倍率を引き上げる。
- 新しい生産棟の建設を決定する
- 投資の規模と稼ぎの見込みを見て、資本コストを上回るなら評価を上げ、そうでなければ下げる。
- 中国メーカーが半導体装置の主要メーカーに採用される
- センサの数量と価格の見通しを引き下げ、やや悲観側に寄せる。
- ダイカストの赤字が再び出る
- 利益率の見通しを下げ、不採算の整理か撤退の可能性を考える。
- 政策保有株(約81億円)の売却と現金の使い道が示される
- 資本の効率が上がる方向で見通しを引き上げる。
見ておくもの
- 半導体向けの受注と圧力センサの営業利益率
- 新中期計画「2028」の売上・営業利益(2027年3月期は売上675億円・営業利益68億円)
- 配当性向と自社株買いの有無
- 丸子の新しい生産棟の投資決定
- 中国メーカーの装置メーカー向け採用
- ダイカストの損益と自動車向けの動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価・PER・PBR を根拠にしていない。各筋書きの ROE・成長(g は物価を含め 4%)・資本コスト 7.5% から正当化 PER の上限を出し、中立・やや楽観・楽観は上限の 9〜10 割(ROE が k を超える筋書きは下限 1÷k 以上)に置いた。やや悲観は ROE が k を下回るので稼ぐ力に安全率を掛け、悲観は純現金と売れる資産の床で置いた。10 年の価値が今の時価総額を 4 分の 1 ほど下回ったのは、配当が軽く利益を寝かせて ROE が k をわずかに上回る程度に留まる点と、半導体の波と価格競争を見たためで、今の値段に寄せる調整はしていない。新リース会計の影響は、今と同じ形(家賃を費用に入れる形)で数字を置いており、長野計器は店舗型の賃借が中心ではないので、2028/03 期からの開示の形の変化は評価に影響しない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.4→17.93 倍・やや楽観 PER 12.7→17.31 倍・中立 PER 12.6→16.61 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality +0.5%=8.0%。内訳は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。