結論
テルモは、心臓・脳血管のカテーテル治療機器を担う心臓血管カンパニー(売上の約6割)、注射器・輸液・糖尿病ケアなど病院・在宅医療向け消耗品を担うメディカルケアソリューションズカンパニー、血液バッグ・血液分離保存機器・再生医療機器を担う血液・細胞テクノロジーカンパニーの3事業からなる、精密機器業種で最も医療機器に特化した会社。ガイドワイヤー・止血デバイスといったカテーテル治療の「入口と出口」に当たる製品群で世界トップ級のシェアを握り、ステント等の治療デバイス本体ではアボット・メドトロニック・ボストンサイエンティフィックなど米国大手に規模で及ばないものの、アクセスから治療・止血までを一貫して提供できる点が競争上の強みになっている。
2026年3月期はROE8.6%・営業利益率15.6%・自己資本比率68.5%と、精密機器業種の中では中位の収益性だが、GS26(2022〜2026年度の5カ年成長戦略)で掲げた営業利益率20%以上・ROE10%以上という目標に向け、会社自身の計画では2027年3月期以降はROE12%台への改善が見込まれている。需要は高齢化に支えられ、景気の波の影響が小さい非循環的な性格を持つ。
ここでは心臓血管を実質の市場×(シェア×物価)、残り2事業を消耗品の出荷個数(実質)×単価(物価3%込みの名目)で積み上げ、資本コスト6.5%(基本7.5%−1.0%)と長期の成長率3.0%から、利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で倍率を決めた。今の利益はそのまま残り、資本コストを超える新しい投資の稼ぎだけが競争で先に半分薄れるとし、景気で振れにくい利益の質から上限の8.5割(中立PER約15倍)に置いた。営業利益率は会社計画の改善幅の約7割(中立で全社19%台。過去10年の最高は18.5%)、還元は方針の総還元性向50%で置いた。結果、中立の10年後の時価総額は今の1.1倍にとどまり、割り引くと総合で本質価値が今の時価総額を6%ほど下回る「適正」になった。現在のPER25倍という評価は、米国の関税・中国のVBP(量的購買)による価格圧力や、2025年に買収した英OrganOx(臓器灌流装置)の統合費用で一時的に抑えられた今の利益に対するもので、収益性が計画どおり戻ることを株価がすでに織り込んでいる可能性が高い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、テルモはガイドワイヤー・止血デバイスという「医師が使い方に習熟し、切り替えにくい」製品で世界トップ級のシェアを持つ、堀のある事業だと評価できる。心臓血管・脳血管治療、輸液・糖尿病ケアという需要は高齢化が続く限り先延ばしにできない必需的な性格を持ち、10年後もこの事業が存在し続ける確度は高い。
一方で、株主のものになる利益という観点では、ROE8.6%という今の水準はGS26の目標(ROE10%以上)にまだ届いておらず、再投資効率の面で改善の余地が残る。経営の資本配分は、心臓血管領域を強化する買収を積み重ねる一貫した規律を保っているが、2025年のOrganOxという未知の新領域への約2,200億円の投資が将来の価値を壊さないM&Aになるかは、まだ検証できていない。安全域については、現在のPER25倍という評価が、関税・中国の価格圧力で一時的に抑えられた今の利益に対するものであることを踏まえると、業績が計画どおり改善すれば今の価格はおおむね妥当だが、資本コストを超えるROEが先で薄れることも考えると、安全域は大きくないとみる。心臓血管カンパニーへの売上集中という強みと依存リスクを併せ持つ、わかりやすいが単純ではない事業だと考える。
何で稼ぐ会社か
心臓血管カンパニーは、インターベンショナルシステムズ(ガイドワイヤー・カテーテル・止血デバイス)、カーディオバスキュラー、ニューロ(脳血管治療)、アオルティック(大動脈瘤治療用ステントグラフト、Bolton Medical由来)の4領域で構成され、2026年3月期の売上は6,764億円(前期比8.3%増、全社の約6割)。血管造影用ガイドワイヤーは世界シェア6割超、検査用ガイドワイヤー・シースイントロデューサーでも世界トップ級のシェアを持ち、病院・医師への販売網と手技サポート体制が参入障壁になっている。2016年にセント・ジュード・メディカル/アボットから止血デバイス事業(Angio-Seal・FemoSeal等)を約1,160億円で買収し、止血までを一貫して提供する体制を強化した。
メディカルケアソリューションズカンパニーは、注射器・輸液ポンプ・輸液剤、血糖測定器やインスリンペン等の糖尿病ケア製品を病院・クリニック・在宅医療向けに供給する。日本初の単回使用注射器を生み出した事業を起点に、新興国を含む広い販路と価格が手ごろな消耗品で稼ぐ、ボリュームの大きい事業である。
血液・細胞テクノロジーカンパニーは、血液バッグ・血液分離保存機器という献血・輸血医療のインフラを担う事業に、再生医療関連の新しい取り組みを加えている。2025年には英OrganOx社(肝臓等の臓器灌流・保存装置)を約2,200億円で買収し、臓器移植という新しい市場への展開を始めた。
2018年には中国の冠動脈ステントメーカー・易生科技(Essen Technology)を約140億円で買収し、中国でのVBP(量的購買)環境下でのシェア拡大を図った。3つの事業は、心臓血管カンパニーの高い利益率を、相対的に利益率は低いが非循環的な需要を持つ2つの事業が支える構成になっている。
優良さと弱いところ
テルモの堀は、ガイドワイヤー・止血デバイスという「使い方に習熟が必要な」製品群で医師・病院との長年の関係と臨床データを積み上げてきたことにある。価格を決める力は心臓血管カンパニーの高い利益率(セグメント利益率は20%台後半)に表れており、治療デバイス本体の規模で劣る米国大手との差別化に成功している。資本効率は、2026年3月期のROE8.6%自体は精密機器業種の優良企業(HOYA・朝日インテック等)に比べ見劣りするが、自己資本比率68.5%・純有利子負債が時価総額比2.9%と財務は健全で、GS26の目標(営業利益率20%以上・ROE10%以上)に向けた改善途上にある。
弱い点は、心臓血管カンパニーへの売上集中(約6割)が進み、単一分野の需要・価格環境に業績が左右されやすくなっていること。メディカルケアソリューションズ・血液細胞テクノロジーは消耗品的な性格が強く、中国のVBP(量的購買)や新興国メーカーとの価格競争に晒されやすい。経営面では、2025年のOrganOx買収のような5年ぶりの大型M&Aの成否が未知数で、過去の円安寄与を除いた実質的な増益ペースが会社計画どおり進むかは今後の四半期で検証が必要になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の心臓血管・脳血管インターベンション市場は、心臓カテーテル・ガイドワイヤー市場でみると2026年時点でおよそ150億〜280億ドル規模とされ、高齢化・生活習慣病の増加を背景に年6〜15%成長する見通しが示されている。透析・輸液まで含めた慢性疾患治療の需要は構造的に伸びる一方、好不況の波の影響は比較的小さい。先進国では保険償還制度(薬価・医療材料価格の定期的な引き下げ)により実質価格が年0〜2%低下しやすく、新興国・高機能品では価格が維持・上昇しやすい。
テルモが位置する「アクセス・止血」領域は、ステント等の治療デバイス本体市場でアボット・メドトロニック・ボストンサイエンティフィック・J&Jの米国大手4社が合計で8割強のシェアを握る構図とは異なり、朝日インテックと並ぶ日本発のニッチ王者としての地位を保っている。低侵襲治療へのシフト(開胸・開腹手術からカテーテル治療への置き換え)はこの領域全体を10年単位で後押しする構造要因であり、新興国での手技普及・医療アクセス改善も追い風になる。
一方、中国ではVBP(量的購買)による価格低下圧力が強まっており、2026年3月期はニューロ(脳血管治療)事業が販路拡大で大幅伸長する一方、コモディティ化しやすい消耗品では価格競争が激化しやすい。米国の輸入関税は2026年3月期に売上総利益を50億円押し下げ、2027年3月期にはマイナス121億円を見込む規模まで拡大しており、海外売上比率79.0%・米国売上比率33.1%というグローバル依存の高さが、通商政策・医療政策の変化に直接晒されるリスクになっている。10年の構造的な負け筋は、①中国・インドの地場メーカーの技術力向上による価格破壊、②主要国の医療費抑制の恒常化、③新規モダリティによる既存デバイスの陳腐化で、これらが重なれば市場成長が年1〜2%まで落ち込む絵になる。
資本政策と M&A
還元方針は、安定増配と自社株買い・消却を組み合わせ、配当と自社株買いの合計で総還元性向50%水準を目指す形で、2026年3月期の配当性向は32%。10年の筋書きの還元は、この50%(悲観のみ配当の下支えで55%)で置き、残りは自己資本に積み上がる。自社株買いは2016年499億円、2022年499億円、2024年410億円など継続的に実施されており、資本政策の規律は保たれている。
M&Aは、2016年の止血デバイス事業買収(約1,160億円)、2018年の中国ステントメーカー買収(約140億円)、Bolton Medical(ステントグラフト)買収と、本業の心臓血管領域を強化する買収を重ねてきた。2025年のOrganOx買収(約2,200億円)は5年ぶりの大型M&Aで、臓器移植という新しい領域への拡張になる。政策保有株式は経済合理性を毎年取締役会で検証し縮減の方向にあり、ガバナンス面で大きな懸念は見られない。無借金に近い財務とグローバルでの知名度を考えると、テルモが買われる側になる可能性は現時点では高くないが、OrganOxのような買う側としてのM&Aは今後も続く見通し。
点検済み(費用点検):今の -302 億円は 2026/03 期の OrganOx 買収関連などが入った営業利益(1,763 億円)との差。会社予想は 2027/03 で 2,575 億円まで戻るので、一過性が含まれる。繰り返す分は中立 -268 億円と近い(内訳は未確認で、1.34 倍にすると営業利益は約 4% 減る)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
テルモのガイドワイヤー・止血デバイス事業は、医師が使い方に習熟した製品からの切り替えが起きにくいという強い堀を持ち、心臓血管・脳血管インターベンション市場自体が高齢化と新興国での手技普及で年6〜15%という高い成長を続けている。治療デバイス本体ではアボット・メドトロニックに規模で及ばないが、アクセスから止血までを一貫して提供できる体制は、2016年の止血デバイス事業買収で一段と強化され、他社には簡単に模倣できない強みになっている。
GS26で掲げた営業利益率20%以上・ROE10%以上という目標は、会社自身の計画でも2027年3月期にROE12.2%・2028年3月期にROE12.8%まで改善する軌道にあり、今のROE8.6%という水準は一時的に抑えられたものに過ぎない。中国のVBP(量的購買)はニューロ(脳血管治療)事業の販路拡大という形でむしろ追い風になっている面もあり、米国の関税影響も価格転嫁で緩和していく方針が示されている。2025年に買収した英OrganOx(臓器灌流装置)は、カテーテルに続く新しい成長の種として、移植医療という手付かずの市場を開拓する機会になる。
財務面では自己資本比率68.5%・純有利子負債は時価総額比3%未満と健全で、総還元性向50%水準を目指す還元方針も株主重視の姿勢を示している。心臓血管カンパニーへの売上集中は、裏を返せば同社が最も強い事業に資源を集中させている証でもあり、非循環的な需要構造を持つ医療機器会社として、業績の改善が今の株価に十分に映っていない、質の高い成長を長く続けられる会社だと評価できる。
慎重な見方
テルモの今のROE8.6%は、精密機器業種の優良企業(HOYA・朝日インテック等)のROE20%超と比べて大きく見劣りする。GS26で掲げたROE10%以上という目標自体、5カ年計画の最終盤にかろうじて視野に入ってきた水準にすぎず、会社の過去の計画が常に達成されてきたわけでもない。ガイドワイヤー等のアクセス製品で高いシェアを持つとはいえ、ステント等の治療デバイス本体ではアボット・メドトロニック・ボストンサイエンティフィックという規模の大きい米国大手に対抗できておらず、技術の中心が治療デバイス本体に移れば、テルモの取り分は限定的なままになる。
中国のVBP(量的購買)は、ニューロ事業の販路拡大という短期的な恩恵の一方で、長期的には価格決定力を奪う構造要因である。インドなど新興国の地場メーカーがガイドワイヤー・カテーテルの中位品で技術力を高めれば、テルモの実質シェアが侵食されるリスクは年々強まる。米国の関税は2027年3月期にマイナス121億円という規模まで拡大する見込みで、海外売上比率79.0%・米国売上比率33.1%というグローバル依存の高さが、通商政策の変化にそのまま晒される構造になっている。
2025年のOrganOx買収(約2,200億円)は5年ぶりの大型M&Aで、臓器移植という同社にとって未知の領域への投資であり、過去の買収がすべて成功してきたわけではない以上、統合に失敗するリスクは軽視できない。現在のPER25倍・PBR2.18倍という評価は、ROE8.6%という実際の資本効率に対してすでに相応に強気な将来を織り込んでおり、GS26の目標達成が遅れれば、業績の悪化を待たずに倍率そのものが縮小する場面が起こりやすい。
どちらに重みを置いたか
事業の質については強気の見方が優勢で、ガイドワイヤー・止血デバイスという切り替えにくい製品群での世界トップ級のシェアと、高齢化に支えられた非循環的な需要構造は、同業の循環性の強い会社より本質的に安定している。一方、今のROE8.6%という資本効率の低さと、心臓血管カンパニーへの依存・治療デバイス本体での規模の差という慎重な見方の指摘も妥当で、GS26の目標達成が計画より遅れるリスクは残る。計算では、資本コスト6.5%(基本7.5%−1.0%)と利益で測る正当化PERの8.5割(中立約15倍)で倍率を決めると、中立の10年後の時価総額は今の1.1倍にとどまり、総合で「適正」になった。営業利益率は会社計画の改善幅の約7割までに抑え、還元は方針の総還元性向50%で置いたため、ROEの改善は今の値段にほぼ映っているとの結論になる。確率はやや楽観側にも相応の重みを置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,555 円5.24 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 711 円1.05 兆円)。 今の値に割り戻すと 2,413 円3.56 兆円、今との差 −0.7%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 6.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 13% | 6,828 円10.07 兆円 | 1,052 円1.55 兆円 | +224.4% | +12.5% | 1,024 円1.51 兆円 |
| やや楽観 | 29% | 4,709 円6.95 兆円 | 831 円1.23 兆円 | +128.0% | +8.6% | 1,606 円2.37 兆円 |
| 中立 | 34% | 3,128 円4.61 兆円 | 661 円9,758 億円 | +56.0% | +4.5% | 1,288 円1.90 兆円 |
| やや悲観 | 17% | 1,263 円1.86 兆円 | 491 円7,243 億円 | −27.8% | −3.2% | 298 円4,399 億円 |
| 悲観 | 7% | 331 円4,878 億円 | 354 円5,228 億円 | −71.8% | −11.9% | 48 円707 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,555 円5.24 兆円 | 711 円1.05 兆円 | +75.6% | +5.8% | 4,266 円6.29 兆円 |
今の株価時価総額 2,430 円3.58 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.5% を下回るほど割高。
楽観 13% 低侵襲シフトとOrganOxの新市場開拓が結実 利益 4,850 億円 · PER 20.8 倍 · 株価時価総額 6,828 円10.07 兆円
10年間で低侵襲治療へのシフト(開胸・開腹手術からカテーテル治療への置き換え)が世界的に加速し、心臓血管・脳血管インターベンション市場は480億ドル規模まで拡大する。テルモはガイドワイヤー・止血デバイスでの実質シェアを23.5%まで引き上げ、ロボット支援手術との組み合わせでインターベンショナルシステムズ事業の存在感が一段と増す。2025年に買収した英OrganOx(臓器灌流装置)は移植医療の新しい柱に育ち、血液・細胞テクノロジー事業の成長率と利益率を押し上げる。メディカルケアソリューションズも糖尿病ケア・在宅医療向けの高機能品が定着し、新興国での手技普及・医療アクセス改善も追い風になる。アクセスから治療・止血までを一貫して提供する強みが技術的な参入障壁として機能し続け、ROEは高水準を保つ、同社にとって最も理想的な10年になる。
- 心臓血管カンパニー:数量 358(世界の心臓血管・脳血管インターベンション市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 47(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 16,920 億円・営業利益 5,414 億円。市場 480 億ドル(名目)× シェア 23.5%、営業利益率 32%
- メディカルケアソリューションズカンパニー:数量 150(注射器・注射針・輸液セット・血糖測定チップなど消耗品の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 36(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 5,410 億円・営業利益 650 億円。150 億個 × 単価 36.07(今の 1.54 倍)、営業利益率 12.0%
- 血液・細胞テクノロジーカンパニー:数量 300(血液バッグ・成分採血キット・細胞処理キット・臓器灌流装置の使い捨て品などの年間出荷単位(百万単位、推定))× 価格 1,706(1 単位あたり平均単価(円・名目))→ 売上 5,118 億円・営業利益 895 億円。300 百万単位 × 単価 1706(今の 1.54 倍)、営業利益率 17.5%
倍率:事業の純利益 4,850 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.5% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.8 倍。全体の PER 20.77 倍、時価総額 100,734 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年間で開胸・開腹手術からカテーテル治療への置き換えが進み、かつOrganOxの臓器灌流事業が移植医療の新しい柱に育つという複数の構造変化を同時に取り切る必要があり、実現すれば非常に強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 29% 心臓血管カンパニー集中戦略が奏功 利益 3,544 億円 · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 4,709 円6.95 兆円
心臓血管・脳血管インターベンション市場は420億ドルまで拡大し、テルモの実質シェアは22.2%に改善する。ガイドワイヤー・止血デバイスでの強みを核に、心臓血管カンパニーへの資源集中が奏功し、心臓血管の営業利益率は29%(全社で約22%)まで上がる。メディカルケアソリューションズは在宅医療・糖尿病ケアの高機能品シフトが進み、血液・細胞テクノロジーはOrganOxの統合が完了し再生医療関連の需要も取り込む。中国の国産化・VBP(量的購買)の圧力は中位品を中心に残るが、最先端のアクセス製品では技術優位を保つ。配当・自社株買いを組み合わせた総還元性向50%水準の方針も維持され、GS26の先を見据えた資本効率の改善が着実に進む10年になる。
- 心臓血管カンパニー:数量 313(世界の心臓血管・脳血管インターベンション市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 45(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 13,986 億円・営業利益 4,056 億円。市場 420 億ドル(名目)× シェア 22.2%、営業利益率 29%
- メディカルケアソリューションズカンパニー:数量 135(注射器・注射針・輸液セット・血糖測定チップなど消耗品の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 34(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 4,574 億円・営業利益 480 億円。135 億個 × 単価 33.88(今の 1.45 倍)、営業利益率 10.5%
- 血液・細胞テクノロジーカンパニー:数量 270(血液バッグ・成分採血キット・細胞処理キット・臓器灌流装置の使い捨て品などの年間出荷単位(百万単位、推定))× 価格 1,602(1 単位あたり平均単価(円・名目))→ 売上 4,325 億円・営業利益 670 億円。270 百万単位 × 単価 1602(今の 1.45 倍)、営業利益率 15.5%
倍率:事業の純利益 3,544 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.6 倍。全体の PER 19.6 倍、時価総額 69,462 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:低侵襲治療へのシフトと新興国の医療アクセス改善が業界見通しの中心〜やや強いレンジで進む、多くの業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 34% 中立:非循環需要に支えられた巡航成長 利益 2,544 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 3,128 円4.61 兆円
10年後の心臓血管・脳血管インターベンション市場は360億ドル規模に構造的に拡大するが、テルモの実質シェアは21.0%で現状からの改善は小幅にとどまり、営業利益率は心臓血管で26.5%(全社で約19%)に平常化し、会社計画の改善幅の約7割にとどまる。メディカルケアソリューションズ・血液細胞テクノロジーは高齢化という非循環的な需要に支えられ安定成長するが、特別な超過成長は一巡する。米国の関税・中国のVBP(量的購買)による価格圧力は構造的な前提として残り続け、OrganOxを含む新規領域も既存事業ほどの規模には育たない。心臓血管カンパニーへの集中という優良さは保たれるものの、過去ほど極端な高倍率は付かず、「普通に強い優良企業」としての評価に収まる10年になる。
- 心臓血管カンパニー:数量 269(世界の心臓血管・脳血管インターベンション市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 42(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 11,340 億円・営業利益 3,005 億円。市場 360 億ドル(名目)× シェア 21.0%、営業利益率 26.5%
- メディカルケアソリューションズカンパニー:数量 122(注射器・注射針・輸液セット・血糖測定チップなど消耗品の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 31(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 3,827 億円・営業利益 363 億円。122 億個 × 単価 31.37(今の 1.34 倍)、営業利益率 9.5%
- 血液・細胞テクノロジーカンパニー:数量 244(血液バッグ・成分採血キット・細胞処理キット・臓器灌流装置の使い捨て品などの年間出荷単位(百万単位、推定))× 価格 1,483(1 単位あたり平均単価(円・名目))→ 売上 3,619 億円・営業利益 506 億円。244 百万単位 × 単価 1483(今の 1.34 倍)、営業利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 2,544 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍。全体の PER 18.14 倍、時価総額 46,148 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界団体・会社の長期見通しの中心値と、資本コストと長期の成長率から出した倍率を組み合わせた中心シナリオ。
やや悲観 17% 新興国メーカーと薬価圧力にシェアを侵食される 利益 1,538 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 1,263 円1.86 兆円
中国・インドの地場メーカーがガイドワイヤー・カテーテルの中位品で技術力を高め、テルモの実質シェアは19.5%まで低下する。心臓血管・脳血管インターベンション市場自体も300億ドルにとどまり、米国の関税・主要国の医療材料価格の恒常的な引き下げが重なって営業利益率は23.0%まで低下する。メディカルケアソリューションズ・血液細胞テクノロジーも新興国メーカーとの価格競争が強まり、単価は物価込みでも今の1.23倍にとどまり、物価(1.34倍)に届かない。OrganOxを含む新規領域の育成も計画より遅れる。それでもアクセス製品での技術の核心は保たれ、事業自体が崩れるわけではなく、配当・自社株買いによる株主還元も規模を縮小しつつ継続される10年になる。
- 心臓血管カンパニー:数量 224(世界の心臓血管・脳血管インターベンション市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 39(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 8,775 億円・営業利益 2,018 億円。市場 300 億ドル(名目)× シェア 19.5%、営業利益率 23%
- メディカルケアソリューションズカンパニー:数量 108(注射器・注射針・輸液セット・血糖測定チップなど消耗品の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 29(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 3,117 億円・営業利益 218 億円。108 億個 × 単価 28.86(今の 1.23 倍)、営業利益率 7.0%
- 血液・細胞テクノロジーカンパニー:数量 216(血液バッグ・成分採血キット・細胞処理キット・臓器灌流装置の使い捨て品などの年間出荷単位(百万単位、推定))× 価格 1,365(1 単位あたり平均単価(円・名目))→ 売上 2,948 億円・営業利益 295 億円。216 百万単位 × 単価 1365(今の 1.23 倍)、営業利益率 10.0%
倍率:ROE 6.7%。RONIC=k 6.5%+残る割合 1/2×(6.7−6.5)=6.6%、g 3.0% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=15.5 倍、下限の 1÷k は 15.4 倍で、上限は 15.5 倍。中国の価格圧力と関税で伸びと堀の持ちが落ちる筋書きなので、上限の 7.5 割の 11.7 倍に置いた。
確率:中国・インドなど地場メーカーの技術力向上と、主要国の医療費抑制策の強化が同時に進む想定。業界見通しのうち弱めのレンジに相当。
悲観 7% 構造的にシェアと価格決定力を失う 利益 542 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 331 円4,878 億円
中国・インドの地場メーカーがガイドワイヤー・止血デバイスの最先端品にも食い込み、テルモの実質シェアは17.5%まで低下する。心臓血管・脳血管インターベンション市場自体も260億ドルにとどまる中でシェア損失が業績を直撃し、営業利益率は15.0%まで落ち込む。メディカルケアソリューションズ・血液細胞テクノロジーも新興国メーカーとの価格競争・主要国の医療費抑制策で単価は物価込みでも今の1.07倍にとどまり、OrganOxを含む新規領域も提携先が現れず育たない。無借金に近い財務と自己資本の厚さを背景にPBRは0.8倍で踏みとどまるが、かつての「アクセス製品の王者」という評価から「規模はあるが並みの医療機器企業」へ評価が下がる10年になる。
- 心臓血管カンパニー:数量 194(世界の心臓血管・脳血管インターベンション市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 35(実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 6,825 億円・営業利益 1,024 億円。市場 260 億ドル(名目)× シェア 17.5%、営業利益率 15%
- メディカルケアソリューションズカンパニー:数量 95.0(注射器・注射針・輸液セット・血糖測定チップなど消耗品の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 25(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 2,384 億円・営業利益 107 億円。95 億個 × 単価 25.09(今の 1.07 倍)、営業利益率 4.5%
- 血液・細胞テクノロジーカンパニー:数量 190(血液バッグ・成分採血キット・細胞処理キット・臓器灌流装置の使い捨て品などの年間出荷単位(百万単位、推定))× 価格 1,187(1 単位あたり平均単価(円・名目))→ 売上 2,255 億円・営業利益 135 億円。190 百万単位 × 単価 1187(今の 1.07 倍)、営業利益率 6.0%
倍率:事業の ROE 2.7% は k 6.5% 以下なので、PER の上限は 1÷k の 15.4 倍。優位を失い利益が伸びず ROE が k の半分以下に落ちる筋書きで、ROE 6.7% のやや悲観(11.7 倍)よりずっと低い、上限の約 6 割の 9.0 倍に置いた。
確率:中国・インドの地場メーカーが最先端のアクセス製品にまで食い込み、かつ主要国の医療費抑制が恒常的に強まるという複合シナリオ。技術優位の喪失は一度始まると10年で後退しやすいため低頻度だが無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
心臓血管カンパニー
心臓・脳血管のカテーテル治療に使うガイドワイヤー・カテーテル・止血デバイス・ステントグラフト等を手掛ける中核事業。インターベンショナルシステムズ・カーディオバスキュラー・ニューロ・アオルティックの4領域で構成。
| 数量世界の心臓血管・脳血管インターベンション市場(億ドル・今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 220 | 31 | 6,765 | 1,657 |
| 10 年後 中立 | 269 | 42 | 11,340 | 3,005 |
取り方:心臓血管・脳血管のインターベンション市場を220億ドル規模と見積り(sectors/精密機器.mdの心臓カテーテル・ガイドワイヤー市場150〜280億ドルのレンジに、アオルティック・ニューロを含む広い市場として中位を置いた)、心臓血管カンパニーの売上6,764億円が占める比率を実質シェア20.5%として逆算し、1ドル150円で換算した。市場の見通し(億ドル)は業界の見通しと同じく名目なので、3年1.09倍・10年1.34倍で割って今の値段の実質に直した。中立の実質の市場は3年で年1.4%、10年で年2%ほど伸びる(高齢化と新興国のカテーテル治療の普及で手技の件数が増えるため)。今の価格はシェア 20.5% × 150 円。
メディカルケアソリューションズカンパニー
注射器・輸液ポンプ・輸液剤、血糖測定器・インスリンペン等の糖尿病ケア製品など、病院・在宅医療向けの消耗品・機器を手掛ける事業。
| 数量注射器・注射針・輸液セット・血糖測定チップなど消耗品の年間出荷個数(億個、推定) | 価格1 個あたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 23 | 2,341 | 187 |
| 10 年後 中立 | 122 | 31 | 3,827 | 363 |
取り方:メディカルケアソリューションズの売上2,341億円(2025年3月期の構成比20.4%をFY2026全社売上に当てはめた推定)を、注射器・注射針・輸液セット・血糖測定チップなどの消耗品を年約100億個出荷すると推定して、1個あたりの平均単価に分けた。個数は実質の数量で、高齢化による在宅医療・糖尿病ケアの広がりで少しずつ増える。物価3%と高機能品への構成の変化は単価に入れる。中立の単価は3年1.10倍・10年1.34倍で物価並み。悲観の筋書きでは中国のVBP(量的購買)や主要国の医療費抑制で単価が物価に届かない。
血液・細胞テクノロジーカンパニー
血液バッグ・血液分離保存機器という献血・輸血医療のインフラと、再生医療・臓器灌流(2025年買収の英OrganOx含む)関連機器を手掛ける事業。
| 数量血液バッグ・成分採血キット・細胞処理キット・臓器灌流装置の使い捨て品などの年間出荷単位(百万単位、推定) | 価格1 単位あたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 1,107 | 2,214 | 221 |
| 10 年後 中立 | 244 | 1,483 | 3,619 | 506 |
取り方:血液・細胞テクノロジーの売上2,214億円(2025年3月期の構成比19.3%をFY2026全社売上に当てはめた推定)を、血液バッグ・成分採血キット・細胞処理キット・臓器灌流の使い捨て品などを年約2億単位出荷すると推定して、1単位あたりの平均単価に分けた。単位の数は実質の数量で、献血の件数は先進国では横ばい、新興国と再生医療・臓器灌流(2025年買収の英OrganOx)で増える。物価3%と高機能品への構成の変化は単価に入れる。中立の単価は3年1.10倍・10年1.34倍で物価並み。
リスクと懸念
米国関税・通商政策への依存
海外売上比率79.0%、うち米国売上比率33.1%とグローバル依存が高く、米国の輸入関税は2026年3月期に売上総利益を50億円押し下げ、2027年3月期にはマイナス121億円規模まで拡大する見込み。価格転嫁が追いつかなければ増益ペースが鈍る。
心臓血管カンパニーへの売上集中
心臓血管カンパニーが売上の約6割を占め、高い利益率を支える一方で単一分野への依存度が高い。この事業の需要・価格環境が悪化すれば、メディカルケアソリューションズ・血液細胞テクノロジーの2事業では完全には吸収できず、全社業績への影響が大きくなりやすい。
中国VBP(量的購買)による価格低下圧力
中国では医療材料の量的購買(VBP)制度が価格に下押し圧力をかけており、ニューロ事業では販路拡大で相殺できているが、メディカルケアソリューションズ・血液細胞テクノロジーのような消耗品的な事業では価格競争が強まりやすい。
OrganOx等M&Aの統合リスク
2025年に約2,200億円で買収した英OrganOx(臓器灌流装置)は5年ぶりの大型M&Aで、臓器移植という同社にとって未知の領域への投資。統合費用が一時的に利益を圧迫しており、期待した成長に育つかはまだ検証できていない。
新興国メーカーの技術力向上
中国・インドの地場メーカーがガイドワイヤー・カテーテルの中位品で技術力を高めつつあり、長期的には価格決定力の低下やシェアの侵食につながるリスクがある。最先端品での技術優位がどこまで保たれるかが分かれ目になる。
倍率の高さ
現在のPER25倍・PBR2.18倍という評価は、今のROE8.6%という実際の資本効率に対してすでに相応に強気な将来を織り込んでいる。GS26の目標達成が遅れれば、業績の悪化を待たずに倍率そのものが縮小する場面が起こりやすい。
今後の分かれ目
- 米国の関税が緩和され、関税影響が会社計画のマイナス121億円より小さくなったら
- 心臓血管カンパニーの利益率前提を上方修正し、楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。
- 2025年に買収した英OrganOxの事業が早期に軌道に乗り、収益貢献が確認できたら
- 血液・細胞テクノロジー事業の成長率・利益率の前提を上方修正し、新しい成長の種として価値を見直す。
- 中国のVBP(量的購買)が心臓血管カンパニーの中核製品(ガイドワイヤー等)にまで広がったら
- 心臓血管カンパニーの実質シェア・利益率の前提を下方修正し、やや悲観側に重みを移す。
- 新興国での手技普及が会社計画を上回るペースで進んだら
- 心臓血管・脳血管インターベンション市場の成長率の前提を上方修正し、楽観・やや楽観の筋書きに近づいているか確認する。
- 総還元性向50%水準の方針から逸脱し還元が大きく縮小したら
- 資本配分の規律そのものへの評価を見直し、筋書きの確率配分を再検討する。
- 新興国メーカーがガイドワイヤー等アクセス製品の中位品シェアを大きく伸ばしたら
- 10年の長期シェア前提を下方修正し、やや悲観側の筋書きに近づいていないか点検する。
見ておくもの
- 四半期ごとの関税影響額・価格転嫁の進捗
- 心臓血管カンパニーの実質シェア・新興国売上比率の動向
- 英OrganOx統合の進捗・血液細胞テクノロジーの成長率
- 配当性向32%・総還元性向50%水準の方針の実施状況
倍率と資本コストの決め方
心臓血管カンパニーは市場の見通し(ドル建ての名目)を今の値段で測った実質の市場に直し、物価3%はシェア×150円×物価の倍率という価格の側に入れた。メディカルケアソリューションズと血液・細胞テクノロジーは、前の版の指数100×指数1.00(実質は売上をそのまま数量にした形)を、消耗品の出荷個数・出荷単位(実質)×単価(物価込みの名目)に分け直した。資本コストは基本7.5%に、需要が景気で振れない循環−0.5%と、病院の手技に組み込まれ長く続く寿命−0.5%を足した6.5%(値決めと借金は0)、倍率は利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(RONICは資本コストを超える分の半分が残る値。10年中立のROE9.9%、g 3.0%)を引き、非循環の利益の質から上限の8.5割(楽観9割、やや悲観7.5割)に置き、最後に今の時価総額と比べた。中立のPERは約15倍で、今のPER25倍にも過去のPBRにも寄せていない。悲観は、赤字ではなく利益が残るので、稼ぐ力(純利益÷k)に安全率0.9を掛けて置いた。 点検(2026-10-19)で、中立の営業利益率が全社21%と過去最高(2008年の21.9%)並みだったのを、会社計画の改善幅の約7割(19%台)へ下げ、還元が方針の50%より厚い73%だったのを50%に直した(楽観・やや楽観の利益率も同じ幅で下げた)。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 6.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality -1.0%=6.5%。内訳と理由は quality_why。
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