結論
理研計器は、工場やプラントで漏れたガスを見つけて警報を鳴らす装置を作る会社だ。売上は 552 億円、営業利益率は 22%と高く、自己資本比率は 84%、借金より現金が多い。事業の質は文句なしだが、筆者は今の値段に安全域は無いと見る。理由は、純利益の伸びが 10 年で物価をわずかに上回る程度にとどまりそうな点にある。
強みは 3 つある。検知の心臓部であるセンサーを自社で作れること。各国の安全認証と保守の網を持つこと。そして、人命に関わる装置なので顧客が実績のある会社を選び続けることだ。過去 10 年に赤字の期はなく、売上は 10 年で 2.6 倍になった。
追い風は半導体工場である。AI 向けの工場新設が続き、毒性ガスを多点で監視する新型機 FPM-80A が海外で売れ始めた。船舶向けと北米の可搬型も伸びている。会社は 2029 年 3 月期に売上 700 億円・営業利益 140 億円以上を掲げる。
一方、会社自身が営業利益率の低下を見込んでいる。人件費と部材の値上がり、海外の販売網づくりが重いためだ。世界のガス検知器はハネウェルなど米欧の大手が上位を占め、理研計器の世界シェアは 1 割に届かない。
10 年後の姿は、売上が 1,000 億円強、営業利益率は 20%前後の中立が筆者の見立てだ。ROE は 10%弱。資本コストを少し上回るだけで、今の時価総額を正当化するには足りない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、理研計器は「長く持ちたい事業」に入る。人命を守る装置という、景気で需要が消えにくい仕事で、センサーの内製と認証と保守が参入の壁になっている。借金は無く、本業が毎年現金を生む。
ただ、「持ちたい事業」と「買ってよい値段」は別の話だ。筆者がいちばん気にするのは、稼ぎの伸びの質である。売上は伸びても、会社自身が営業利益率の低下を認めている。人を増やし、海外の網を作り、部材高を受ける。伸びの多くは値上げと投資で相殺され、株主に残る利益の増え方は鈍い。
資本の使い方は堅実だが、積極的ではない。自己資本の 8 割以上が利益の積み上げで、ROE は 10%前後。資本コストを少し上回る程度で、事業に再投資しても大きく上積みされない。これは、持ち続けるだけで価値が複利で増える会社の姿ではない。
10 年後の中立の姿で、時価総額は今の水準を大きく動かさない。楽観でも悲観でも、本業の質は損なわれにくいため、悲観の底は純現金と事業資産が支える。それでも、今の値段で買うなら、払う値段に見合う安全域は薄いと見る。
何で稼ぐ会社か
理研計器の稼ぎの源は、目に見えない危険を知らせる装置だ。可燃性ガスの漏れ、毒性ガス、酸素不足を検知して警報を出す。工場やプラントでは法令や社内規則で設置が求められる。一度入れれば、定期点検と部品交換が毎年続く。
売上の約 6 割は据え置き型の検知警報機器で、約 4 割は持ち運ぶ可搬型だ。2026 年 3 月期の売上は 552 億円、営業利益は 124 億円。顧客は半導体工場、石油化学、ガス会社、造船所に広がる。2025 年 3 月期では、電気・半導体向けが売上の 39.8%を占める最大の顧客層だった。
半導体工場は毒性の高いガスを使う。漏れれば人命に関わるため、数十か所を同時に監視する多点式の装置が要る。FPM-80A は最大 80 点を測れるテープ式で、新しい中期経営計画では米国・欧州・東アジアの半導体工場に売り込む主力に据えられている。船舶向けも伸びており、専門の保守チームを作る方針だ。可搬型は北米のガス会社などで売れ、前期の増収を支えた。
事業の特徴は、センサーを自社で作れることだ。検知の中心部品を握るので、新製品の開発も保守部品の供給も自前で回せる。海外売上比率は 2024 年 3 月期で 43.6%。会社は新計画で 50%まで引き上げる考えだ。
優良さと弱いところ
優良さの中心は、人命がかかる装置を作っているという点にある。顧客は安さより「実績のある会社の、認証を取った装置」を選ぶ。半導体工場や海外の新工場に入れるには、各国の防爆・安全認証が要る。会社も重点国での認証の取得と維持を戦略に挙げている。センサーの内製と保守の網が、この信頼を支える。
お金の面でも堅い。営業利益率は 22.5%、自己資本比率は 84.5%で、純現金が 226 億円ある。ROE は過去 10 年の中央値が 10.5%で、前の中計の 3 年間は二桁を守った。赤字の期はなく、営業利益率は過去を通じて最悪の 1999 年 3 月期でも 7.8%を保った。
弱みは 3 つある。第 1 に、世界シェアは小さい。ガス検知器の世界市場は、ハネウェル、MSA、エマソン、ドレーゲルなど上位 5 社で 6 割を占め、理研計器はそこに入らない。筆者の推定では世界シェアは 6%前後だ。
第 2 に、利益率が下がり始めた。2023 年 3 月期の 25.7%から前期は 22.5%まで落ちた。値上げで一部は吸収したが、会社計画では 2029 年 3 月期に 20%ほどまで下がる。
第 3 に、経営の人材は管理部門の出身者が中心で、海外で大手と戦う経験はこれからだ。社長の松本哲哉氏は経理・総務・経営企画を長く歩き、生産本部長を経て 2023 年に就任した。堅実だが、攻めの買収で実績を作ってきた会社ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ガス検知の需要は、景気より安全規制と設備の新設・更新に連動する。世界の労働安全の基準は上がる一方で、環境規制も加わり、検知は「事故の予防」から「長期の環境監視」へ広がっている。市場規模は調査会社ごとに 40 億〜130 億ドルと幅が大きいが、年 5〜8%で伸びるという見方が多い。
競争の形は二層になっている。上位は、ハネウェル・アナリティクス(世界シェア 16%台)、MSA、エマソン、ドレーゲルなど米欧の大手だ。ハネウェルは 2007 年に半導体工場向けの専業企業を買収済みで、同じ顧客を狙う。国内では、家庭用で新コスモス電機が首位だが、理研計器は産業用が主戦場で、住み分けている。
会社は販売先を冷静に見ている。半導体と船舶は有望、鉄鋼は普通、原油・天然ガスは 2030 年以降の供給不安と脱炭素で長期の成長市場とは言い切れないとする。半導体は需要の波が大きい。2025 年 3 月期には、設備投資の回復が遅れて売上に占める比率が下がった。
構造の変化も 2 つある。1 つは AI や無線通信を使った予知保全で、検知器が「点検の道具」から「データを出す装置」に変わりつつあること。もう 1 つは、中国の地場メーカーが価格を武器に力をつけていることだ。会社自身も、競合の価格競争力と自社シェアの縮小を課題に挙げている。
資本政策と M&A
資本政策は穏やかで、株主に向いている。新しい中期経営計画では、配当性向を 30%超へ上げ、純資産に対する配当(DOE)を 3%で続ける。自社株買いは上限 50 億円ほどを機動的に行い、3 年の総還元性向は 40%程度、累計で 140 億円規模を想定する。
営業キャッシュフローは 3 年で 320 億円以上を見込む。使い道は成長投資に 130 億円以上、株主還元に 140 億円以上、内部留保に 50 億円以上だ。成長投資には、生産ラインの増設、ERP(基幹システム)、共同開発、M&A が含まれる。外部からの資金調達は考えていない。
大株主は信託銀行や外国の運用会社が中心で、第一生命、みずほ銀行、長野計器、三井住友銀行が続く。親会社もオーナーもいない。そのため、他社が買いに来る余地は理屈の上ではある。ただ、買収の報道や兆しは確認できていない。
筆者が気にするのは、現金の使い道だ。純現金が時価総額の 14%あり、配当と買い戻しで半分近くを返す計画ではあるが、買収に充てるなら実行力が問われる。理研計器は大型買収の実績が乏しい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
理研計器は、人の命に直結する装置で、顧客が乗り換えにくい。工場が新設されるたびに検知器が入り、入れた後は点検と交換が続く。センサーを自社で作れるので、供給も保守も自前で回る。10 年以上赤字がなく、前の中計は売上 500 億円・営業利益 120 億円の目標を超えた。仕事の質は証明済みだ。
追い風はこれから強まる。AI 向けの半導体工場は世界で新設が続き、毒性ガスを多点で監視する FPM-80A は、最大 80 点を測れ、海外大手の同種機に正面から挑む。海外売上比率を 4 割台から 5 割へ上げる計画も、北米の可搬型が伸び、船舶向けの専門チームが立ち上がる中で、現実味がある。
利益率の低下は、投資の先食いにすぎない。海外で保守サービスを広げれば、機器の売り切りより利益率は戻る。会社も中長期は収益性の回復を図ると明言している。自己資本比率は 84%、純現金は 226 億円で、買収の余力も十分だ。配当性向を 30%超、総還元性向を 40%へ引き上げる方針は、株主を意識した動きといえる。
世界のシェアは 6%前後と小さい。だから伸びしろが大きい。上位大手の 5 社で 6 割という市場で、シェアが 1 ポイント上がるだけで売上は 2 割近く増える。
慎重な見方
理研計器の利益率は、すでに天井を過ぎた。2023 年 3 月期の 25.7%から前期は 22.5%に下がり、会社の計画でも 2029 年 3 月期は 20%台前半まで落ちる。人件費と部材の値上がり、海外の販売網づくりが重なるためで、売上が 700 億円に届いても営業利益は 140 億円にとどまる。売上が 27%増えて、利益は 13%しか増えない。
半導体は波が大きい。2025 年 3 月期は設備投資の回復が遅れて、売上に占める比率が下がった。工場の新設が一巡すれば、最大の顧客層が止まる。海外で伸ばすのは、ハネウェルやドレーゲルがすでに強い土地だ。ハネウェルは半導体向けの専業企業を買収済みで、同じ顧客に早くから食い込んでいる。
世界シェアは 6%前後で、上位 5 社には入らない。大手は価格も開発費も桁が違う。さらに中国の地場メーカーが価格を武器に力をつけ、会社も競合の価格競争力と自社シェアの縮小を課題に挙げている。堀は国内で厚く、海外では薄い。
加えて、資本の使い方は消極的だ。自己資本の 8 割以上が積み上げた利益で、ROE は 10%前後。資本コスト 6.5%を少し上回るだけだ。純現金 226 億円を持て余し、買収の実績もない。中計の成長投資 130 億円以上が、稼ぐ力の向上につながるかは未知数だ。
どちらに重みを置いたか
事業の質については、強気の見方が正しい。10 年以上赤字がなく、売上が後退していない実績は重い。半導体と海外の追い風も本物だ。
しかし、値段に関しては慎重な見方が強い。会社自身が営業利益率の低下を認め、世界のシェアが小さい以上、価格で大手や新興勢に勝つ道は狭い。10 年の稼ぎは、物価の分と少しの数量の伸びで増える姿になる。ROE が資本コストを少し超えるだけでは、高い倍率は正当化できない。
確率は中立に 35%、強気側に 35%、慎重側に 30%を置いた。構造的に負ける悲観は、堀が国内で厚いことと財務の余力から 10%にとどめた。慎重側に厚く置いたのは、利益率の低下が会社の計画に織り込まれており、すでに事実として進んでいるからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,641 円2,564 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,059 円481 億円)。 今の値に割り戻すと 3,778 円1,717 億円、今との差 +11.6%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 6.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,925 円4,058 億円 | 1,364 円620 億円 | +204.0% | +11.8% | 1,029 円468 億円 |
| やや楽観 | 25% | 7,450 円3,387 億円 | 1,243 円565 億円 | +156.8% | +9.9% | 2,173 円988 億円 |
| 中立 | 35% | 6,354 円2,888 億円 | 1,144 円520 億円 | +121.5% | +8.3% | 2,624 円1,193 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,682 円1,219 億円 | 891 円405 億円 | +5.6% | +0.5% | 715 円325 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,256 円571 億円 | 330 円150 億円 | −53.1% | −7.3% | 159 円72 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,641 円2,564 億円 | 1,059 円481 億円 | +97.9% | +7.1% | 6,700 円3,046 億円 |
今の株価時価総額 3,385 円1,539 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 半導体と海外が計画を超えて伸びる 利益 211 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 8,925 円4,058 億円
AI 向けの半導体工場が世界で建ち続け、10 年にわたって毒性ガスの多点監視が標準になる。FPM-80A は北米・台湾・欧州の先端工場で採用が進み、半導体向けのシェアは大きく上がる。船舶では環境規制と船の入れ替えが重なって専用機が売れ、北米の可搬型は労働安全の基準の強化で伸び続ける。
海外売上比率は 5 割を超え、海外の保守サービスが厚みを増す。機器の売り切りから保守契約へ移るので、営業利益率は 20%台前半を保つ。成長投資の 130 億円以上は、保守網の整備とセンサー技術の補強に使われ、買収も小さく当たる。世界シェアは 8%近くまで上がるが、大手の牙城は崩れない。
売上は 1,260 億円ほど、営業利益は 270 億円ほどに達する。ROE は 12%近くまで上がる。
- 定置型ガス検知警報機器(その他測定機器を含む):数量 4.0(当社の実質販売額(億ドル)=世界の定置型ガス検知市場(実質)× 当社シェア)× 価格 1.38(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 835 億円・営業利益 192 億円。半導体・船舶・海外保守が揃う
- 可搬型ガス検知器:数量 2.1(当社の実質販売額(億ドル)=世界の可搬型ガス検知市場(実質)× 当社シェア)× 価格 1.36(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 430 億円・営業利益 82 億円。北米の規制強化
倍率:事業の純利益 211 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍。全体の PER 19.23 倍、時価総額 4,058 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の新設、船舶、海外の保守が同時に当たる必要があり、一方で会社計画の利益率は下がる前提なので 10%にとどめた。
やや楽観 25% 会社計画をほぼ実現 利益 182 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 7,450 円3,387 億円
2029 年 3 月期に売上 700 億円・営業利益 140 億円という会社計画をほぼ達成し、その後も半導体と海外を軸に年 7%ほどで伸びる。FPM-80A は海外で一定の地位を築き、船舶向けも安定する。国内は人口減で横ばいだが、更新と保守で底堅い。
利益率は計画どおり 20%台前半まで下がったのち、海外の保守サービスが育つことで下げ止まる。世界シェアは 7%強まで上がる。成長投資は一部が実を結び、買収は小粒にとどまる。配当性向は 30%台を保ち、自社株買いも機動的に行われる。
10 年後の売上は 1,130 億円ほど、営業利益は 235 億円ほどになる。ROE は 10%台半ばだ。
- 定置型ガス検知警報機器(その他測定機器を含む):数量 3.7(当社の実質販売額(億ドル)=世界の定置型ガス検知市場(実質)× 当社シェア)× 価格 1.35(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 739 億円・営業利益 163 億円。会社計画をほぼ達成
- 可搬型ガス検知器:数量 1.9(当社の実質販売額(億ドル)=世界の可搬型ガス検知市場(実質)× 当社シェア)× 価格 1.35(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 391 億円・営業利益 72 億円。北米で堅調
倍率:事業の純利益 182 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.61 倍、時価総額 3,387 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社計画(2029 年 3 月期 700 億円)を達成して伸び続ける筋書き。前の中計で目標を超えた実績があるため、25%の重みを置いた。
中立 35% 計画どおりに進み、その後は着実に伸びる 利益 159 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 6,354 円2,888 億円
会社計画の 700 億円は少し遅れて達成する。その後は半導体と海外で数量が年 3%ほど伸び、価格は物価並みに上がる。世界の市場の伸びにわずかに勝つ程度で、世界シェアは 7%前後に上がる。国内は更新需要で横ばい。
営業利益率は 20%ほどに下がり、そこで落ち着く。人件費と部材の値上がりは価格に転嫁できるが、海外の販売網と人への投資が利益率を押さえる。保守サービスは育つものの、機器の売り切りが主体のままだ。
売上は 1,040 億円ほど、営業利益は 205 億円ほどになる。純利益の 4 割を還元し、ROE は 10%弱。資本コストを少し上回る堅実な会社として、10 年後も存在している。
- 定置型ガス検知警報機器(その他測定機器を含む):数量 3.4(当社の実質販売額(億ドル)=世界の定置型ガス検知市場(実質)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 679 億円・営業利益 143 億円。市場をわずかに上回る
- 可搬型ガス検知器:数量 1.8(当社の実質販売額(億ドル)=世界の可搬型ガス検知市場(実質)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 357 億円・営業利益 62 億円。市場並み
倍率:事業の純利益 159 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍。全体の PER 18.09 倍、時価総額 2,876 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画がやや遅れて達成され、その後は市場並みを少し上回る姿が最も起きやすい。強気と慎重の議論の落としどころとして 35%で最大にした。
やや悲観 20% 半導体の一巡と価格競争で利益率が下がる 利益 101 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 2,682 円1,219 億円
半導体の設備投資が一巡し、海外の拡販は想定より遅れる。中国の地場メーカーが価格を武器に東アジアで攻め、ハネウェルやドレーゲルも値引きで応じる。理研計器は価格転嫁が進まず、値上げは物価に届かない。
世界シェアは 6%台前半で止まり、可搬型は北米で伸びなくなる。人件費と部材の上昇は続き、営業利益率は 16%近くまで下がる。会社は成長投資を絞り、買収はしない。純現金が積み上がり、ROE は資本コストと同じ 7%ほどに低下する。
売上は 850 億円ほど、営業利益は 135 億円ほどにとどまる。それでも財務は堅く、赤字にはならない。
- 定置型ガス検知警報機器(その他測定機器を含む):数量 3.0(当社の実質販売額(億ドル)=世界の定置型ガス検知市場(実質)× 当社シェア)× 価格 1.26(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 566 億円・営業利益 96 億円。価格競争で転嫁が遅れる
- 可搬型ガス検知器:数量 1.5(当社の実質販売額(億ドル)=世界の可搬型ガス検知市場(実質)× 当社シェア)× 価格 1.26(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 288 億円・営業利益 37 億円。北米で伸び悩む
倍率:ROE 6.9%で k 6.5%に届かず、PER の上限は 1÷k の 14.3 倍。ROE が k 並みに落ち、利益率の低下が続く筋書きなので、稼ぐ力に安全率を掛け、上限の 8 割の 11.5 倍に置いた。
確率:半導体の一巡と中国勢の価格攻勢は、すでに会社自身が課題に挙げている。利益率の低下が事実として進んでいるので、20%と厚めにした。
悲観 10% 大手と新興勢に挟まれて構造的に負ける 利益 20 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 1,256 円571 億円
米欧の大手と中国勢に挟まれて、構造的に負ける。大手は半導体メーカーに世界一括で売り込み、理研計器は海外で落ちこぼれる。中国勢は低価格の検知器で汎用品の市場を取る。センサーも光学式や AI を使う方式に置き換わり、自前のセンサーという強みが薄れる。
価格は物価に追いつかず、10 年で 5%しか上がらない。世界シェアは 4〜5%へ下がり、売上は 485 億円ほどと今を下回る。営業利益率は 5%まで縮み、人員整理と在庫の評価損を出す。優良とは呼べない会社になる。
それでも、純現金と国内の保守需要は残る。底値は、稼ぐ力ではなく、純現金と売れる事業資産で測るのが妥当だ。
- 定置型ガス検知警報機器(その他測定機器を含む):数量 2.1(当社の実質販売額(億ドル)=世界の定置型ガス検知市場(実質)× 当社シェア)× 価格 1.05(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 326 億円・営業利益 20 億円。大手と中国勢に挟まれる
- 可搬型ガス検知器:数量 1.0(当社の実質販売額(億ドル)=世界の可搬型ガス検知市場(実質)× 当社シェア)× 価格 1.05(値段の指数(今を 1.00・名目))→ 売上 159 億円・営業利益 5 億円。汎用品を中国勢に奪われる
倍率:稼ぐ力は純利益 20 億円÷k =286 億円で、売れる資産の床の方が大きい。純現金 226 億円は全額、残る事業資産(今の自己資本 854 億円−純現金 226 億円=628 億円)は簿価の 55%で売れると仮定し 345 億円、合計 571 億円。今の自己資本 854 億円に掛けて 0.67 倍にあたる。
確率:堀が国内で厚く、純現金も多い会社が構造的に負ける確率は低い。ただ 5%未満とは言えず、技術の置き換えもありうるので 10%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
定置型ガス検知警報機器(その他測定機器を含む)
工場・プラント・半導体工場・船舶に据え付けるガス検知器と警報システム。半導体向けの多点毒性ガス検知システム(FPM-80A)や、石油化学・ガス会社向けの可燃性・毒性ガス検知器が中心。
| 数量当社の実質販売額(億ドル)=世界の定置型ガス検知市場(実質)× 当社シェア | 価格値段の指数(今を 1.00・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.3 | 1.00 | 350 | 82 |
| 10 年後 中立 | 3.4 | 1.34 | 679 | 143 |
取り方:販売比率の定置型 60.9%とその他測定機器 2.5%を合わせて売上 350 億円。世界の定置型ガス検知市場を 36 億ドル(調査会社の幅の中位あたりの推定)とおき、350 億円÷150 円=2.33 億ドルから当社のシェアを約 6.5%と置いた。営業利益は全社 124 億円を定置型 82 億円(利益率約 23%)と可搬型 42 億円(約 21%)に割った推定(開示なし)。
可搬型ガス検知器
作業員が身につけて持ち歩く、または点検で持ち運ぶガス検知器。北米のガス会社・消防・工事現場向けが伸びている。
| 数量当社の実質販売額(億ドル)=世界の可搬型ガス検知市場(実質)× 当社シェア | 価格値段の指数(今を 1.00・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 1.00 | 202 | 42 |
| 10 年後 中立 | 1.8 | 1.34 | 357 | 62 |
取り方:販売比率の可搬型 36.6%で売上 202 億円。世界の可搬型ガス検知市場を 24 億ドル(推定)とおき、202 億円÷150 円=1.35 億ドルから当社のシェアを約 5.6%と置いた。営業利益は定置型との割り振りの推定。
リスクと懸念
半導体の設備投資の波
最大の顧客層である半導体向け(2025 年 3 月期で売上の 39.8%)は、工場の新設が止まると数量が急に減る。2025 年 3 月期には投資の回復が遅れて比率が下がった。AI 向けの追い風が一巡すれば、計画の 700 億円は遠のく。
利益率の低下
営業利益率は 2023 年 3 月期の 25.7%から前期 22.5%に下がり、会社計画では 2029 年 3 月期に 20%台前半へ落ちる。人件費・部材高・海外の販売網づくりが原因で、価格転嫁が遅れればさらに下がる。
大手と中国勢の価格競争
ハネウェル、MSA、ドレーゲル、エマソンが世界の上位を占め、中国の地場メーカーも力をつけている。会社自身が競合の価格競争力と自社シェアの縮小を課題に挙げる。海外で拡販するほど、強い相手と直接ぶつかる。
海外の組織づくり
海外売上比率を 5 割に上げるには、現地の保守・認証・人材が要る。経営陣は国内の管理部門の出身が中心で、海外で大手と戦う経験はこれからだ。ERP の導入と部門間の連携も計画どおり進むとは限らない。
石油・ガス向けの先細り
会社は原油・天然ガス向けを、2030 年以降の供給不安と脱炭素で長期の成長市場とは見ていない。この顧客層の需要が縮むと、定置型の更新需要の一部が失われる。中東の紛争と資源価格の変動も影響する。
成長投資と買収の実行力
3 年で 130 億円以上の成長投資には M&A が含まれるが、具体案は開示がない。大型買収の実績が乏しく、高値で買って統合に失敗すれば、ROE が資本コストを割る。反対に、何もしなければ純現金が積み上がる。
米国の保護主義と為替
北米は可搬型の主要市場で、米国の関税や保護主義が価格と採算に響く。円安は海外収益を押し上げるが、前提のドル円 150 円からの外れは業績を揺らす。
今後の分かれ目
- FPM-80A が海外の先端半導体工場で標準品として複数採用される
- 半導体向けのシェアが想定より上がり、中立から強気側へ見通しを引き上げる。海外比率 5 割も早まる。
- 営業利益率が 20%を割って下がり続ける
- 値上げが部材と人件費に追いつかない構造とみて、慎重側の確率を厚くする。
- 半導体の設備投資が 2 年続けて減る
- 最大の顧客層が止まるため、やや悲観の筋書きに寄せる。船舶と可搬型でどこまで補えるかを見る。
- 成長投資の枠で数百億円規模の買収が発表される
- 価格と相手次第で評価が分かれる。保守網や半導体向けの技術を補う小粒なら歓迎、本業と離れた高値買いなら見通しを下げる。
- 米欧の大手が理研計器を買収する、または TOB を仕掛ける
- 買収価格が本質価値を上回るかで判断が変わる。親会社もオーナーもいないため、筋書きとしてはありうる。
- 海外の保守サービスが売上に占める比率を開示し、上がり始める
- 機器の売り切りから保守契約へ移る兆しで、利益率の下げ止まりを裏づけるため、強気側に寄せる。
見ておくもの
- 半導体向けの売上比率と FPM-80A の海外採用
- 営業利益率(会社計画 2029 年 3 月期 20%台前半)の推移
- 海外売上比率(目標 50%)と北米の可搬型
- 保守サービスの売上比率(開示の有無)
- 成長投資 130 億円以上の使い道(M&A の有無)
- 自社株買いの実施額と総還元性向(目標 40%)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去の倍率に寄せず、式で置いた。中立は ROE 9.7%から RONIC を出し、正当化 PER の上限 16.6 倍、下限の 1÷k は 14.3 倍。その範囲の 14.6 倍とした。確率は中立を軸に、利益率の低下が会社計画に入っている分だけ慎重側に厚くした。今の値段を見て確率や数量を調整していない。悲観の底は純現金と売れる資産で置き、過去の PBR の底は使っていない。リースは製造業で、店舗や倉庫の賃借に頼る事業ではなく、新リース会計基準の影響は小さいとみて今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.2→19.23 倍・やや楽観 PER 15.2→18.61 倍・中立 PER 14.6→18.09 倍)。
資本コスト 6.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality −0.5%=7.0%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.00% → 6.50%。