結論
リガク・ホールディングスは、物質の構造や半導体の微細な形状をX線で測る装置を世界に供給する精密機器メーカーである。筆者の評価は「やや割高」だ。X線回折装置の高いシェア、半導体X線計測の世界首位という地位は評価できるが、今の時価総額には、先端半導体向けの成長と利益率の回復がかなり織り込まれている。
長期保有に値する強みはある。X線源、光学部品、検出器、解析技術を自社で組み合わせ、大学の研究室から半導体工場の量産工程まで同じ技術を広げてきた。既存顧客のXRD・XRF更新商談では、過去10年間の受注獲得率が95%を超える。これは顧客が装置の精度だけでなく、測定手法の再現性や研究の継続性にも価値を置いている証拠である。ただし年間解約率が5%未満という意味ではない。
成長の中心は半導体プロセス・コントロール機器だ。微細化、三次元化、先端パッケージングはX線による非破壊測定の用途を増やす。一方、2026年上期は同事業の売上と受注が伸びても、全社営業利益は前年同期から約55%減った。研究開発費、人員、販売網の先行負担が大きいため、売上の成長がそのまま株主利益になるわけではない。
10年後の中立では年間純利益261億円、期末時価総額約4912億円を見込む。しかし、その価値と途中の還元を資本コストで割り引き、技術競争や需要の失速も確率に織り込むと、現在価値は概算2663億円となる。現時点の時価総額約3128億円を約15%下回る。米Onto Innovationとの協業による上振れは十分あるが、それを確実な成果として先払いする段階ではない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に買うのは、現在の利益ではなく、10年後も顧客から必要とされ続ける能力である。リガクのX線計測はこの条件をかなり満たしている。電池材料や半導体の内部構造を正確に調べる必要は、AIが発達してもなくならない。むしろ材料や製造工程が複雑になるほど、現実の物質から良質な測定データを取り出す装置の価値は増す。
堀、つまり模倣しにくい強みもある。X線源から測定結果までを一体で設計でき、既存顧客の装置更新商談で高い受注獲得率を保っている。顧客の測定手順に長く組み込まれる装置は、ソフトウェアの画面だけを提供する事業と比べて置き換えにくい。研究室で築いた関係を量産工場に持ち込めることも、競合が後から追いつきにくい理由である。
ただし、この堀を維持するには絶えず研究開発が必要だ。10年先の利益が伸びても、そのために新工場、技術者、海外拠点へ多額の資本を投じ続けるなら、株主が自由に取り出せる利益は小さくなる。2025年の設備投資は償却費を上回り、半導体向けは新技術への先行投資を怠れない。増分投資の利回りを測るには、売上だけでなく営業利益率、現金収支、投下資本の増え方を一緒に追う必要がある。
筆者が最も気にするのは、技術の失敗よりも成功を高い値段で先払いする危険だ。Onto Innovationとの協業、半導体計測の拡大、新材料向け製品の普及には魅力がある。しかし、現在の自己資本には多額ののれんが含まれ、受注が好調でも一時的に大幅減益になることがすでに示されている。本物の優良企業でも、安全域が薄ければ保有期間の長さだけでは高値を正当化できない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、顧客が自分の目では確かめられない物質内部の状態を正確に測る必要性にある。半導体、電池、製薬、化学、大学研究など、用途は幅広い。2025年12月期の売上収益942億円のうち、多目的分析機器が約404億円、半導体プロセス・コントロール機器が約278億円、部品・サービスが約259億円を占めた。IFRS上は単一の報告セグメントであり、この三区分は会社が公表する製品カテゴリーである。
多目的分析機器には、結晶構造を調べるX線回折装置、元素の含有量を測る蛍光X線分析装置、内部の立体構造を観察するX線CTなどがある。大学や研究所での導入が長い歴史を持つ一方、近年は半導体材料、電池、化合物半導体の製造現場にも広げている。装置は安価な消耗品ではなく、顧客の研究費や設備投資の決裁を必要とするため、技術的な必要性があっても購入時期は揺れる。
半導体プロセス・コントロール機器は、ウェハーの薄膜の厚さ、結晶性、組成、内部の微細構造を測る。顧客は世界の主要な半導体メーカーであり、設備投資額の上位10社すべてと取引関係を持つと会社は説明している。装置は新しい製造工程に採用されれば長期間使われるが、採用前には精度、処理速度、製造ラインとの接続について厳しい評価を受ける。
部品・サービスは、消耗品、交換部品、修理、移設、保守を担う。装置の精度を維持するための支出なので、新規設備の販売より継続性がある。ただし売上のすべてが定額保守契約ではなく、部品の販売や個別の修理も含む。設置済み装置が増えれば商機は広がるが、顧客が更新を延期したり、第三者部品への代替が進んだりすれば単価は下がりうる。
同社の中核価値は物理的な測定装置とその保守にある。人月で売るSI、席課金の業務SaaS、広告制作、情報調査サービスを主要事業としていないため、添付のAIエージェント代替の数量縮小型は適用しない。ただし解析ソフトウェアの機能だけならAIで差別化が薄れうるため、装置の性能と顧客の工程に結び付いた価値を守れるかは別途確認する。
優良さと弱いところ
最も強い堀は、X線の基礎技術から実際の装置までを一体で作れることだ。高輝度X線源、多層膜ミラー、検出器、測定アルゴリズムを組み合わせる必要があり、一部の部品だけを模倣しても同じ測定結果を再現しにくい。研究室で実績を積んだ測定法を量産工場に持ち込む「Lab to Fab」の仕組みも、開発段階から顧客と関係を築ける利点がある。
顧客との結び付きにも数字の裏付けがある。国内外に1万を超える製品ユーザーを抱え、既存顧客のXRD・XRF更新商談における過去10年間の受注獲得率は95%超である。半導体X線計測では世界首位、XRDでも世界上位の位置にある。既存装置との測定結果の整合性、品質管理手順の変更、顧客側の再認定に時間がかかるため、競合品が少し安いだけでは置き換わらない。
値決め力は強いが、無制限ではない。会社は2026年の説明資料でサービスの値上げ施策による効果を挙げている。しかし、全製品にわたる同一仕様の実現単価や、継続的な値上げ率を開示しているわけではない。半導体メーカーは大口の集中購買を行うため、新製品の採用競争では価格と性能の両方を比較される。
2025年のROEは13.4%、営業利益率は17.7%だった。高い技術力に比べて利益率が極端に高いわけではなく、研究開発費約74億円と海外の販売・サービス体制を維持する負担がある。純有利子負債も約336億円ある。研究開発への増分投資が資本コストを超える利益を生む余地は大きいが、先端半導体向けの売上が予定より遅れれば、固定費だけが先に増える。
最大の財務上の注意点は、2025年末にのれん約519億円、無形資産約265億円を計上していることだ。合わせて自己資本の大部分に相当する。これらは稼ぐ力が続く限り価値を持つが、技術優位が崩れたときに売却して現金化できる資産ではない。強い堀と厚いのれんを同時に持つ会社として評価すべきである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は二つの異なる成長速度で動く。多目的分析機器の中心であるXRDとXRFの世界市場は、業界資料に基づく2024年の合計で約23億ドルである。会社が引用する2024~2027年の市場成長率は名目年4.6%で、研究費、製薬・材料開発、産業の品質管理に支えられる。広義の分析機器市場はさらに大きいが、化学分析や質量分析まで含む市場全体をリガクの販売可能市場とみなすべきではない。
半導体X線計測の市場は、会社が引用するYoleの数字で2024年約4億9800万ドル、2025年約5億3200万ドルである。2027年に約6億4300万ドルという見通しは名目年8.9%成長に相当する。会社はこの分野で世界首位と説明しており、2024年のシェアは約38%とされる。もっとも、製品カテゴリー別売上から逆算した取り分とは、保守の含有や市場定義、為替の違いがあるため、完全には一致しない。
競争相手は一様ではない。研究向けX線回折や材料分析ではブルカーが強く、周辺の分析機器には島津製作所、サーモフィッシャー、アジレントなどが存在する。半導体の測定工程ではKLA、Nova、Onto Innovationなどの光学・電子線・複合計測技術も比較対象となる。これらの会社は必ずしも同一製品市場だけで競うわけではないため、同じ分母で確認できない競合シェアを推定値として断定しない。
成長の源泉は半導体の微細化だけではない。GAA、将来のCFET、積層DRAM、先端パッケージングでは、外から見えない層の厚さや組成を壊さずに測る必要が高まる。その一方で、新しい工程ごとに装置の選定がやり直されるため、既存の首位が自動的に次の世代も勝つとは限らない。半導体メーカーの投資は数年単位で波を作り、良い市場予測と悪い年度決算が同時に存在しうる。
2026年上期には米国の大学・研究機関向け需要が弱く、多目的分析機器の売上は前年同期から約17%減った。他方、半導体向けの受注は強く、同事業の上期受注は約86%増だった。中立では多目的分析機器の世界実質需要を10年で約1.27倍とし、半導体は新しい測定用途の追加を含めて約2.26倍とみる。半導体については単純な既存X線市場の自然成長を超えており、新製品の商用化が必要な点を明示的な条件とする。
資本政策と M&A
2027年12月期を最終年度とする中期経営計画では、売上収益1150~1200億円、調整後EBITDA315~325億円、調整後営業利益265~275億円を掲げる。研究開発費は売上の約9%、設備投資は原則約5%、配当性向は約30%が具体的な数字の約束だ。ここでの利益目標は調整後の数字であり、2025年のIFRS営業利益167億円とそのまま比較してはならない。設備投資5%には、将来必要になりうる追加の大型工場投資を含めていない。
2025年には配当として約28億円を支払い、約40億円の自己株式取得も実施した。還元の意思は確認できるが、これだけで将来の総還元性向が恒常的に高いと決めつけない。今後の基本線は、成長投資を優先しながら利益の約30%を配当で返すというものだ。自社株買いについても、毎年一定額を実施する約束はない。
2026年8月には米Onto Innovationが、カーライル系の既存株主からリガク株式約27%を取得した。これは既存株主間の株式売買であり、リガクへの新規資金の払い込みでも、全株取得を目指す公開買付けでもない。両社はX線と光学計測、解析ソフトウェアを組み合わせる共同開発を進める。会社は上場会社としての独立性維持を明言しており、分析時点で公表された上場廃止予定は確認されない。
資本配分の成否は、増える研究開発費と設備投資が実際に半導体向けの採用を増やすかで決まる。2025年の減価償却・償却費は約51億円、有形・無形資産への取得支出は約67億円だった。既存設備の償却はインフレで一律に増えないが、新たな設備の取得単価は上がる。中立の2035年には年間償却費を約85億円、設備投資を約110億円とみて、会計上の利益がそのまま自由現金になるとは考えない。
過去の増配と自己株式取得は確認できるが、5年間を通じて高水準の総還元が定着したとまではいえない。そのため将来積み上がる余剰現金の株主への帰属価値には慎重さを残す。純負債がある現時点では、事業に不要な純現金を別に加算しない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
半導体の三次元化が進むほど、X線計測の出番は増える。トランジスタの微細化だけでなく、HBMの積層、先端パッケージング、化合物半導体、次世代電池まで、壊さずに内部を調べたい工程が拡大している。リガクは半導体X線計測で世界首位の位置にあり、主要な半導体メーカーとの取引関係も確立している。新技術が生まれるたびに顧客を一から探す会社ではない。
Onto Innovationとの協業は、その優位を広げる大きな契機になりうる。X線の材料・内部構造の情報に、光学計測の高速性や解析ソフトウェアを組み合わせれば、従来は別々の装置で行っていた検査を統合できる。両社が進めるCD-SAXSと光学計測の融合は、新たな計測用途を開く可能性がある。会社が掲げる2030年の戦略製品の販売可能市場約10億ドル、シェア50%超という構想にも、技術上の筋道はある。
研究向けの基盤も見逃せない。国内外1万超のユーザー、XRDの高いシェア、更新商談で95%超という実績は、新興メーカーが価格を下げただけでは奪いにくい顧客基盤を示している。装置が増えれば、交換部品、保守、性能向上の需要も後からついてくる。サービスは価格改定の効果も出始めており、販売した装置の生涯価値は初回の売上より大きい。
2026年上期の大幅減益は、需要消滅の証拠ではなく、先行投資と販売時期のずれと解釈できる。実際に半導体向けの上期受注は大幅に増えている。2027年の中計が達成され、その後も新製品の採用が続けば、研究開発費と販売網の固定費をより大きい売上で吸収できる。10年後には半導体が主力となり、利益率と資本効率の双方が高まる余地がある。
慎重な見方
X線計測の技術的な価値と、リガクがそこから得られる利益は別の問題である。半導体メーカーは工程ごとに測定技術を比較し、KLA、Nova、ブルカーなどの技術に加え、光学や電子線を組み合わせた別の方法を選べる。リガクが現在のX線分野で首位でも、次世代の計測市場全体を支配できるわけではない。Onto Innovationは有力な協業相手だが、共同開発の成功と収益配分はまだ確定していない。
2030年に向けた市場拡張の構想も、新しい製品が量産工程で採用されることが前提だ。開発に成功しても顧客の検証が長引けば、技術者や海外拠点の費用だけが先行する。2026年上期には半導体事業が増収でありながら全社営業利益は約55%減った。多目的分析機器も米国の研究向け需要が弱く、異なる顧客層を持つことだけで全社利益が安定するとはいえない。
さらに、半導体の設備投資は景気循環を避けられない。受注が急増した翌年に顧客の投資が延期されれば、工場と人員の固定費を抱えたまま売上が落ちる。物価上昇と金利上昇も無視できない。借入金を借り換える際の利払い増加と、工場設備の更新費用上昇は、売上の名目成長を相殺する。
最後に、財務の見かけの厚さには注意が必要だ。2025年末の自己資本約884億円に対し、のれんと無形資産の合計は約784億円に達する。技術的優位を失って利益が減れば、これらの価値を維持できず、大きな減損が生じうる。帳簿上の自己資本を下値の保証とみなすことはできない。現在の株価から十分な安全域があるといえるのは、利益成長が投資負担を上回ることをさらに確認できた場合だけだ。
どちらに重みを置いたか
10年後もX線を用いた測定が必要であるという点では、強気の見方が優勢だ。顧客更新率、技術の内製化、半導体X線計測の首位という証拠がそろっており、堀は強いと判断する。ただし、この堀が新しい光学・CD計測市場でも同じ強さを持つかは未確認である。2026年上期の利益低下と大きな先行投資、厚いのれんを重く見て、上側2シナリオの合計を28%、下側を35%、中立を37%とした。会社の存続を疑っているわけではなく、成長の成果が株主利益に届くまでの不確実性を反映した。加重した現在価値は今の時価総額を約15%下回り、現値に十分な安全域は認められない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,046 円4,633 億円(+ 還元の換算額還元の合計 226 円511 億円)。 今の値に割り戻すと 1,201 円2,720 億円、今との差 −15.3%、 期待の年率 +5.1%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,923 円1.12 兆円 | 424 円960 億円 | +277.4% | +15.1% | 428 円969 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,357 円7,604 億円 | 322 円730 億円 | +159.7% | +10.6% | 736 円1,667 億円 |
| 中立 | 37% | 2,229 円5,049 億円 | 248 円562 億円 | +74.8% | +6.1% | 917 円2,076 億円 |
| やや悲観 | 24% | 616 円1,395 億円 | 124 円280 億円 | −47.8% | −6.8% | 178 円402 億円 |
| 悲観 | 11% | 70 円159 億円 | 53 円120 億円 | −91.3% | −24.7% | 14 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,046 円4,633 億円 | 226 円511 億円 | +60.3% | +5.1% | 2,271 円5,145 億円 |
今の株価時価総額 1,417 円3,209 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% X線と光学の融合が新しい計測標準になる 利益 526 億円 · PER 21.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,923 円1.12 兆円
半導体はGAAからCFETへ、メモリはさらに多層化へ進み、X線でなければ確認しにくい微細構造が増える。リガクはOnto Innovationとの共同開発を量産装置の採用につなげ、光学・CD計測とX線計測を組み合わせた新しい製品群を確立する。先端パッケージングでも測定工程を獲得し、半導体向けの販売可能市場が広がる。
多目的分析機器では、ブルカーなどと競争しながら、新興国の研究施設と電池・化合物半導体の工場に販路を伸ばす。XRDで積み上げた測定実績が新しい顧客の採用を後押しし、更新時の高い受注獲得率も続く。稼働する装置が増え、サービス拠点も世界に広がることで部品売上が厚くなる。
研究開発への投資が新製品の受注に結び付き、工場の稼働率は高くなる。会社は大型の買収で規模を追うよりも、共同開発と小規模な技術取得を中心に資本を使う。設備投資と増配、自社株買いを両立し、強い堀を保ったまま2035年まで高い利益成長が続く。
- 多目的分析機器:数量 520(世界XRD・XRF市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル、実質市場規模×実効シェア))× 価格 2.18(実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える))→ 売上 1,131 億円・営業利益 215 億円。世界の2025年価格固定需要約39億ドル×実効獲得率約13.3%。高機能機への構成改善で価格は現在の1.45倍。
- 半導体プロセス・コントロール機器:数量 680(世界半導体X線計測および獲得可能な隣接計測市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル))× 価格 2.10(実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える))→ 売上 1,428 億円・営業利益 400 億円。新規の光学・CD・先端パッケージング用途を含む実質獲得可能市場約17億ドル×シェア約40%。
- 部品・サービス:数量 19,000(製品ユーザー数(社・研究機関の代理変数))× 価格 0.04(製品ユーザー1件当たりの年間部品・サービス売上相当額(億円、契約単価ではなく平均売上代理値))→ 売上 779 億円・営業利益 148 億円。対象ユーザー約1.9万×年間平均410万円相当。利用装置数の増加と高度な保守サービスの浸透。
倍率:k7.0%、2035年ROE16.84%、強い堀による超過収益の残存率2/3からRONIC13.56%。長期g3.5%に対し正当化PER=(1−0.035/0.1356)/(0.07−0.035)=約21.20倍。楽観側の利益の質をさらに上乗せしていない。純利益526億円の約21.2倍で時価総額11151.2億円。2025年実績から10年間の利益を概ね線形に増やし、累計純利益約3200億円、累計還元960億円とすれば期末自己資本は884+3200−960=3124億円で整合する。
確率:半導体の新しい工程で複数世代にわたり採用を取り、Onto Innovationとの共同開発が商用化し、研究用装置も海外シェアを上げるという連続成功が必要。技術上の可能性は高いが、顧客の検証と競争を考えて8%にとどめる。
やや楽観 20% 半導体の採用が広がりサービスも積み上がる 利益 373 億円 · PER 20.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,357 円7,604 億円
先端ロジックとメモリの多層化が長く続き、リガクの計測装置は新世代の工程でも採用される。Onto Innovationとの協業は一部の製品で商用化に成功し、従来のX線計測だけでは入れなかった顧客工程に販路を広げる。半導体市場には何度か投資の谷が訪れるが、新しい測定用途の追加が10年間の成長を支える。
多目的分析機器は研究向け需要の停滞を乗り越え、電池、化合物半導体、工場の品質管理へ用途を広げる。世界市場の成長を上回る販売増を実現する一方、ブルカーや地域メーカーとの競争でシェア獲得は段階的に進む。装置の更新が続くため、部品・サービスの収益も後から伸びる。
販売網、技術者、製造設備の拡充には資金を要するが、新製品の採用が先行投資を十分に回収する。経営は無理な大型買収を避け、研究開発、借入返済、約30%の配当を中心に資本を配分する。利益率は改善するが、半導体投資の変動が完全になくなるわけではない。
- 多目的分析機器:数量 425(世界XRD・XRF市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル、実質市場規模×実効シェア))× 価格 2.07(実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える))→ 売上 880 億円・営業利益 150 億円。実質世界需要約35億ドル×実効獲得率約12.1%。価格はインフレと高機能化で約1.38倍。
- 半導体プロセス・コントロール機器:数量 525(世界半導体X線計測および獲得可能な隣接計測市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル))× 価格 2.11(実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える))→ 売上 1,105 億円・営業利益 282 億円。実質獲得可能市場約14億ドル×実効シェア37.5%。共同開発製品の一部が商用化。
- 部品・サービス:数量 16,000(製品ユーザー数(社・研究機関の代理変数))× 価格 0.04(製品ユーザー1件当たりの年間部品・サービス売上相当額(億円、契約単価ではなく平均売上代理値))→ 売上 608 億円・営業利益 112 億円。対象ユーザー約1.6万×年間平均380万円相当。既存装置の増加に連動。
倍率:2035年ROEは373÷2589=14.41%、k7.0%、強い堀の残存率2/3からRONIC11.94%。g3.5%の正当化PERは約20.19倍であり、上限そのものを使用する。時価総額は373×20.19=7530.87億円。10年間の累計純利益は約2435億円、配当と買戻しは730億円とし、自己資本884+2435−730=2589億円。
確率:既存X線計測市場での首位を守り、Ontoとの協業製品の一部が量産採用を獲得するなら実現可能。会社の成長戦略と整合するが、新製品すべての成功は前提にしないため20%。
中立 37% X線の首位を守り、新用途は着実に広がる 利益 261 億円 · PER 18.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,229 円5,049 億円
2035年も材料分析と半導体の内部構造を測る需要は続き、リガクは主要なX線分野で高いシェアを維持する。多目的分析機器は世界市場並みの成長を取り戻すが、競争相手を大きく引き離すほどの拡大は起きない。大学の研究費が弱い年度を産業向け販売が補い、研究室から工場への用途展開がじわじわ進む。
半導体ではGAAや積層メモリ向けの採用が増え、光学・CD計測との協業製品も一部商用化する。ただしKLAやNovaなどの競争が強く、リガクの市場シェアは現在とおおむね同じ範囲にとどまる。半導体向けの獲得可能な実質市場は大きくなるが、その増加には従来のX線計測だけでなく新しい用途の獲得が必要である。
装置の設置母数が増えることで、部品と保守の売上は比較的安定して伸びる。研究開発費と販売体制の維持費用は引き続き増え、全社営業利益率の改善は緩やかになる。経営は約30%の利益還元を続けながら成長投資を優先し、自己資本が積み上がる分だけROEは過去の好調期より低くなる。優良企業としての地位は残るが、成長の果実のすべてを株主が受け取れるわけではない。
- 多目的分析機器:数量 340(世界XRD・XRF市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル、実質市場規模×実効シェア))× 価格 2.03(実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える))→ 売上 689 億円・営業利益 103 億円。世界の実質XRD・XRF関連需要約31億ドル×実効獲得率約11.0%。数量は市場の約1.27倍、価格は約1.35倍。
- 半導体プロセス・コントロール機器:数量 420(世界半導体X線計測および獲得可能な隣接計測市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル))× 価格 2.01(実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える))→ 売上 844 億円・営業利益 194 億円。新たな測定用途を含む実質獲得可能市場約12億ドル×実効シェア35%。価格はインフレ並みの約1.34倍。
- 部品・サービス:数量 14,500(製品ユーザー数(社・研究機関の代理変数))× 価格 0.04(製品ユーザー1件当たりの年間部品・サービス売上相当額(億円、契約単価ではなく平均売上代理値))→ 売上 508 億円・営業利益 86 億円。対象ユーザー約1.45万×年間平均350万円相当。数量1.45倍、価格約1.35倍。
倍率:事業の2035年ROEは261÷2197=11.88%、k7.0%。強い堀の残存率2/3でRONIC=7.0%+2/3×(11.88%−7.0%)=約10.25%。g3.5%により正当化PER=(1−0.035/0.1025)/(0.07−0.035)=約18.82倍で、上限そのものに置く。自己資本は初期884億円に、純利益114億円から261億円への10年間の平均成長に伴う累計利益約1875億円を足し、約30%の還元562億円を引いて2197億円とする。借り換え時の金利上昇による年間税前負担増約8億円、研究開発と設備更新の負担を純利益率に織り込む。設備更新の現金支出が償却費を上回る点も資本配分に反映する。
確率:2025年の事業構成と開示済みの市場成長率を出発点に、半導体の新用途を一部獲得する一方、研究向け需要の鈍さと高まる開発費を織り込む。首位は維持するが2030年構想の全面達成は前提としないため、最も重い37%。
やや悲観 24% 新製品の採用が遅れ、先行投資が利益を圧迫 利益 100 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 616 円1,395 億円
多目的分析機器では、米国の研究費抑制と海外メーカーの価格競争が長引く。装置の必要性はなくならないが、研究機関は買い替えを延ばし、工場向けでも採用の獲得が鈍る。リガクは既存顧客の更新需要を相当程度守るものの、世界市場での実効的な取り分を徐々に失う。
半導体では新しい製造工程の一部でKLAやNovaなどの競合技術が選ばれ、Onto Innovationとの共同開発も想定ほどの売上にはならない。既存のX線装置では顧客との取引を維持するが、光学・CD計測や先端パッケージングの新市場への進出は限定的にとどまる。半導体の設備投資が冷える年度には、売上減に研究開発費と工場費用の固定負担が重なる。
部品・サービスは設置済み装置に支えられて減収を避けるが、顧客の稼働率低下と保守の価格競争で利益率が落ちる。借入金の金利も現在より高くなり、稼ぎに対する返済負担が重くなる。経営は配当を縮小しつつ研究開発を続け、売上が増えても自己資本コストを十分に稼げない状態が2035年まで続く。
- 多目的分析機器:数量 260(世界XRD・XRF市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル、実質市場規模×実効シェア))× 価格 1.87(実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える))→ 売上 486 億円・営業利益 51 億円。世界実質市場約29億ドル×実効獲得率約9%。価格は物価上昇を十分転嫁できず約1.25倍。
- 半導体プロセス・コントロール機器:数量 240(世界半導体X線計測および獲得可能な隣接計測市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル))× 価格 1.87(実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える))→ 売上 449 億円・営業利益 58 億円。実質獲得可能市場約8億ドル×実効シェア30%。新製品採用の失敗と投資の谷を反映。
- 部品・サービス:数量 12,000(製品ユーザー数(社・研究機関の代理変数))× 価格 0.03(製品ユーザー1件当たりの年間部品・サービス売上相当額(億円、契約単価ではなく平均売上代理値))→ 売上 372 億円・営業利益 45 億円。対象ユーザー約1.2万×年間平均310万円相当。保守の競争と稼働率低下。
倍率:2035年ROEは100÷1674=約6.0%で、資本コスト7.0%を下回る。超過利益の成長を価値に加えず、稼ぐ力の上限100÷0.07=約1429億円より低い1200億円で評価する。今の自己資本884億円に、10年間の概算累計利益1070億円を加え、還元280億円を引くと1674億円になる。実体資産の売却価値だけに依存するほど事業が壊れてはいないが、長期の高成長倍率は付けない。
確率:2026年上期に見られた研究向け需要の低迷と利益率悪化が長引き、半導体の新用途でも競合に一部敗れる可能性を重く見た。破綻ではなく収益力が低下した状態として24%。
悲観 11% 技術の世代交代に敗れ、のれんの価値が失われる 利益 13 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 70 円159 億円
次世代の半導体測定では、光学や電子線、複合計測方式がリガクのX線装置に代わって主要な採用を獲得する。Onto Innovationとの共同開発も期待した成果を生まず、半導体市場の成長から十分な利益を取り込めない。既存装置の交換や一部の特殊用途は残るが、最先端工場での世界首位という評価を失う。
多目的分析機器でも、中国を含む地域メーカーや既存大手の値下げ攻勢が強まり、世界市場での取り分が下がる。大学の研究予算が抑えられ、産業向けの新しい用途も広がらない。販売網を維持する費用と研究開発費を大きく削れないため、全社の利益率は低い水準に落ち込む。
設置済み装置の保守と部品需要が残るため、会社全体が消滅するわけではない。ただし過去の買収で計上したのれん約519億円の大半を減損し、自己資本の帳簿価額が大きく減る。増配や自社株買いの余裕もなく、借入返済を優先する。2035年の営業利益は約30億円、純利益は約13億円にとどまり、かつての高収益企業とは異なる姿になる。
- 多目的分析機器:数量 160(世界XRD・XRF市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル、実質市場規模×実効シェア))× 価格 1.65(実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える))→ 売上 264 億円・営業利益 11 億円。世界実質市場約25億ドル×実効獲得率約6.4%。シェアを失い名目価格も物価を大きく下回る。
- 半導体プロセス・コントロール機器:数量 135(世界半導体X線計測および獲得可能な隣接計測市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル))× 価格 1.60(実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える))→ 売上 216 億円・営業利益 6 億円。実質獲得可能市場約6億ドル×実効シェア約22.5%。次世代工程での採用喪失。
- 部品・サービス:数量 9,500(製品ユーザー数(社・研究機関の代理変数))× 価格 0.03(製品ユーザー1件当たりの年間部品・サービス売上相当額(億円、契約単価ではなく平均売上代理値))→ 売上 257 億円・営業利益 13 億円。対象ユーザー約9500×年間平均270万円相当。既存機の寿命延長と保守単価競争。
倍率:悲観の床の倍率は2035年まで積み上がった自己資本879億円には掛けず、2025年末の現在の自己資本884億円を基準とする。884×0.18=159.12億円。2035年の純利益13億円を資本コスト7%で資本還元した稼ぐ力の上限約186億円よりも低い。現時点の自己資本884億円からのれん519億円と無形資産265億円を差し引くと、概算の有形純資産は100億円であり、その一部を売却時の費用と損失として減額した資産床70億円は上回る。自己資本の流れは初期884億円+概算累計利益635億円−累計還元120億円−のれん減損520億円=879億円と整合する。
確率:半導体計測の主要な技術転換で競合に敗れ、研究向けも低迷し、多額ののれんを減損する複合的な筋書き。世界で確立した既存顧客基盤を考えると最頻ではないが、財務上の損失が大きくなりうるため11%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
多目的分析機器
研究・材料開発・品質管理向けのXRD、XRF、X線CTなど。研究室から工場へ応用を広げる基幹事業。
| 数量世界XRD・XRF市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル、実質市場規模×実効シェア) | 価格実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 269 | 1.50 | 404 | 53 |
| 10 年後 中立 | 340 | 2.03 | 689 | 103 |
取り方:2025年有報の製品カテゴリー別売上404.13億円を使用。会社引用のSDi資料に基づく2024年の世界XRD市場約9.65億ドル、XRF市場約13.64億ドルを合算した23.29億ドルを、会社引用の名目成長率4.6%で2025年約24.36億ドルと推計する。固定為替150円では100万ドル当たり1.5億円。したがって販売獲得需要269.42百万ドルは合算市場に対する実効的な取り分約11.1%に相当する。XRD単独の公表シェア約26%とは市場の範囲が異なり、同じ数字として扱わない。CTなどの対象外製品や販売地域、製品構成の違いもこの代理変数に含まれる。実際の出荷台数と平均販売単価は開示されていない。営業利益53.47億円は2025年会社資料のカテゴリー別営業利益構成32%を全社実績167.1億円に当てた管理会計ベースの概算であり、監査済みセグメント利益ではない。
半導体プロセス・コントロール機器
半導体ウェハーの薄膜、組成、結晶、内部構造を測るX線計測装置。先端ロジック、メモリ、化合物半導体、先端パッケージング向け。
| 数量世界半導体X線計測および獲得可能な隣接計測市場の2025年価格固定需要のうちリガクが獲得する金額相当(百万米ドル) | 価格実質市場需要100万米ドル相当を販売した場合の売上換算額(億円、固定為替150円に価格・製品構成の変化を加える) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 186 | 1.50 | 278 | 70 |
| 10 年後 中立 | 420 | 2.01 | 844 | 194 |
取り方:2025年有報の半導体プロセス・コントロール機器売上278.34億円を使用。2026年上期説明資料で示された2025年世界X線計測市場約5億3200万ドルを比較分母とし、固定為替150円では売上が185.56百万ドル相当、実効的な取り分約34.9%となる。会社が引用する2024年の世界シェア約38%とは市場の定義、計上範囲、年次が異なる。将来は既存X線市場に加え、光学・CD計測や先端パッケージングの獲得可能分を数量側へ追加する。台数・個別機種の販売単価は非開示であり、市場規模×シェアを代理数量とした。営業利益70.18億円は会社資料のカテゴリー別営業利益構成42%を全社実績に当てた概算である。
部品・サービス
既存装置の交換部品、消耗品、修理、保守、移設。装置の稼働と測定精度の維持に必要な継続需要を担う。
| 数量製品ユーザー数(社・研究機関の代理変数) | 価格製品ユーザー1件当たりの年間部品・サービス売上相当額(億円、契約単価ではなく平均売上代理値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10,000 | 0.03 | 259 | 43 |
| 10 年後 中立 | 14,500 | 0.04 | 508 | 86 |
取り方:2025年有報の部品・サービス売上259.45億円と会社公表の『国内外1万超の製品ユーザー』を用い、保守対象母数を保守的に1万とした。259.45億円÷1万件から年間約259万円の売上代理単価を求めた。ユーザー数には利用頻度や導入装置台数の差があり、これは実際の保守契約料金ではない。装置の設置母数が増えることを実質数量、値上げと部品構成の変化を名目単価に反映する。営業利益43.45億円は会社資料のカテゴリー別営業利益構成26%を全社実績に当てた概算である。
リスクと懸念
半導体の新技術への対応遅れ
GAA、CFET、積層メモリ、先端パッケージングでは計測手法が変わる。既存のX線市場で首位でも、新しい工程においてKLA、Novaなどの競合が別方式で採用を獲得すれば、半導体市場全体の成長から取り残される。研究開発費を増やしても新製品の検収と量産採用に結び付かなければ、利益率と資本効率が同時に下がる。
半導体設備投資の循環
装置売上は半導体メーカーの工場投資と採用時期に左右される。受注高が好調でも、設備の納入や顧客の検収までに期間があり、工場の建設延期や投資抑制によって売上化が遅れることがある。人員、研究開発、工場費用は短期間では削れず、2026年上期のように増収事業が存在しても全社利益が大きく減る。
研究向け需要と公共予算の弱さ
多目的分析機器は大学、研究所、政府機関の予算と関係が深い。2026年上期には米国の研究向け需要の弱さが顕在化した。材料分析の必要性が続いても、顧客は旧型機を長く使ったり新規購入を延期したりできる。産業向け用途が十分に広がらなければ、安定事業とみていた部分も固定費負担が重くなる。
大型のれんと無形資産の減損
2025年末ののれん約519億円と無形資産約265億円は、自己資本約884億円の大部分に相当する。利益が計画どおりに出なくなれば減損が起こりうる。簿価は事業の継続価値を反映しているが、技術的優位を失った際の清算価値ではない。純有利子負債もあるため、厳しい悲観局面の株主価値は見かけのPBRから想像するより小さくなりうる。
Onto Innovationとの協業の不確実性
27%の戦略出資は、共同開発と顧客基盤の拡張という大きな機会をもたらす。一方、光学とX線を組み合わせた製品が顧客の歩留まり改善に十分な効果を示せるか、開発費を誰が負担し、売上と利益をどう分けるかは今後の実績による。提携そのものを販売増や利益増と同一視すれば、成長価値を過大に数える。
借入金利、設備更新費、現金創出力
純有利子負債約336億円を抱え、借り換えが進むと金利負担が増える。設備の取得費用も物価上昇の影響を受ける一方、既存設備の減価償却は取得原価のままである。会計上の利益が伸びても、研究開発、更新投資、運転資金の増加に現金を使えば、株主が受け取るオーナー利益は伸びにくい。
AIによる解析価値の低下と物理計測の競争
主要事業はX線装置と物理的な部品・保守であり、人月型SIや席課金SaaSを置き換えるAIエージェント代替の指定類型には当たらない。ただし測定後の解析や操作ソフトウェアの一部はAIで汎用化しうる。独自の解析画面だけで高い価格を維持するのではなく、測定速度、精度、装置の信頼性、製造工程への組み込みで価値を示せるかを監視する。
今後の分かれ目
- 2027年12月期の売上1150~1200億円と調整後営業利益265~275億円の目標が、追加の大きな資本負担なしで達成されたら
- 中立の売上成長と利益率に上方修正の余地が生まれる。ただし調整後利益とIFRS営業利益の差、営業現金収支、設備投資を確認してから価値を引き上げる。
- 半導体プロセス・コントロール機器の受注増が量産採用と売上に転換し、数年続けて営業利益率も上がったら
- 強気側の確率を引き上げる。特に新しいX線・光学複合計測製品の採用実績と、競合を上回る実効シェアの拡大を確認する。
- Onto Innovationとの共同開発製品について販売額、採用顧客、リガクの利益貢献が明確に開示されたら
- 従来のX線計測市場以外から得られる売上を、推定の販売可能市場ではなく実際の数量・価格として織り込む。
- 研究向け装置の売上が弱いまま、部品・サービスの利益率まで継続して低下したら
- 多目的分析機器の実効シェアと更新価格を下げ、安定収益源としての評価を修正する。やや悲観の重みを引き上げる。
- のれんの減損が発生し、同時に借入返済や設備投資のため株主還元が縮小したら
- 減損の対象となった技術や顧客基盤の収益力を見直し、悲観側の利益・自己資本・還元の筋書きを更新する。
- 営業利益は増えているのに設備投資と運転資金の増加でフリーキャッシュフローが継続して小さくなったら
- 追加の成長投資の採算を再評価する。売上成長よりも投下資本の増加が速い場合は、中立のROEと長期の利益成長を引き下げる。
見ておくもの
- 2027年12月期の中期計画に対する売上、調整後営業利益、IFRS営業利益の進捗
- 半導体プロセス・コントロール機器の受注増加率と受注から売上への転換率
- Onto Innovationとの共同開発製品の量産採用件数、販売額、利益貢献
- 多目的分析機器の米国研究向け需要の回復と産業向け販売比率
- X線計測市場の規模、リガクのシェア、KLA・Nova・ブルカーなどの競合状況
- 部品・サービスの売上成長、価格改定効果、カテゴリー別営業利益率
- 研究開発費、設備投資、減価償却・償却費、営業キャッシュフローの関係
- 純有利子負債、借り換え金利、のれん減損の兆候、配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や同業のPERを根拠に倍率を設定していない。多目的分析機器はSDiのXRD・XRF市場、半導体はYoleのX線計測市場、サービスは公表ユーザー数を基礎とし、市場規模×実効シェアを実質数量、為替150円と物価上昇・製品構成を単価の側に置いた。実際の出荷台数や平均販売単価が開示されない部分は代理変数であると明示した。将来の倍率は資本コスト7%、長期成長率3.5%、その時点のROEと強い堀の残存率から正当化PERを算出した。現在の市場PER、過去のPBRの谷、比較企業の市場倍率は使用していない。
現在の純負債を余剰現金と取り違えず、悲観ではのれんと無形資産を床から除いた。2035年の時価総額と累計還元をそれぞれ10年末、期間中央の受取として割り引くと、確率加重の現在価値は概算2663億円となり、基準時価総額3128億円との差は約マイナス15%である。IFRSを既に適用しているため、日本基準の新リース会計による見かけ上の負債増加を重ねていない。将来の余剰現金については還元実績に基づき帳簿価額の75%を帰属価値とする。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%を合わせた基本7.5%から、確認できる値決め力の0.5ポイントを差し引いた。規模、株価ベータ、Ontoとの提携、個別のM&Aリスクは別の加減算項目にせず、利益の筋書きと確率に反映した。