結論
大研医器は、大阪の医療機器メーカーだ。手術室や病棟で血液や唾液を吸い取る吸引器と、術後の痛みを和らげる薬液の注入器を、病院に直接売る。
筆者の結論は、今の値段はやや割高、というものだ。ただし差は 1 割ほどで、大きくは外れていない。自己資本利益率は 12% 前後で、借金はほぼなく、利益の 6 割以上を配当に回す方針を掲げる。ただ 2026 年 3 月期の営業利益は 15% 減り、来期の予想はさらに下がる。割安と言い切る根拠は弱い。
追い風は、手術件数の増加と、病棟用の「キューインポット」、マイクロポンプを積んだ注入器「クーデックエイミーPCA」の広がりだ。
逆風は、病院の経営難による値下げ圧力と、輸入材料の円安だ。売上の 6 割強が吸引器 1 本に偏り、海外売上は 3% しかない。
10 年で見る中立は、売上が 140 億円台、純利益が 11 億円前後になる姿だ。利益率が戻るかどうかが、価値を大きく動かす。医療現場に近い会社なので、数字の動きは地味でも、一度採用された製品は長く使われる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地味で軽く、株主に返す」事業に見える。
資本の軽い医療消耗品を、利益の 6 割以上を配当する形で運営している。借金はほぼなく、設備投資は小さい。こうした事業は、利益が伸びなくても株主の取り分が積み上がる。
心配な点は二つある。一つは、吸引器への偏りと病院の値下げ圧力で、利益率が戻らないかもしれないこと。もう一つは、新製品への開発費が先行し、成長の果実がまだ小さいことだ。
今の値段は、10 年の中立の価値をやや上回るとみる。安全域は、悲観でも純資産の半分近い床がある点にあるが、大きな割安ではない。
経営が掲げる経常利益率 20% が戻れば見直されるが、その実現は円安と病院の購買次第で、確実とは言えない。時間は味方になるが、待つ間の利益は薄い。ただ、配当で受け取る分が毎年の利益に近いため、待つ費用は小さい。
何で稼ぐ会社か
事業は単一で、医療機器の製造販売だ。製品は 5 つの群に分かれる。
中心は吸引器関連で、売上の 63% を占める。手術室向けの「フィットフィックス」は 1990 年の発売から 30 年以上たつ定番品で、吸引した液体をライナーという袋に固めて捨てる。病棟向けの「キューインポット」は、看護師の手間と院内感染を減らす使い捨て式だ。
次が注入器関連で、売上の 23%。「シリンジェクター」「バルーンジェクター」は、術後の鎮痛剤を一定の速さで入れる使い捨て器具だ。2021 年に出した「クーデックエイミーPCA」は、小さなポンプで流量を精密に管理し、患者が自分で鎮痛剤を追加できる。急性期の病院に加え、無痛分娩や在宅へ広がっている。
残りは輸液ポンプなどの電動ポンプ、手洗い設備、その他で、合わせて 1 割強だ。
販売は病院向けの直販と代理店で、国内が 97% を占める。製造は大阪府和泉市の組み立て拠点が中心で、主力品の材料の一部は輸入に頼る。従業員は 185 人と少人数だ。
売上の約 9 割は国内の病院向けで、海外はごく一部にとどまる。
優良さと弱いところ
優良さを分けるのは、消耗品の積み上がりと、主力品への偏りだ。
強みは、使い捨てのライナーや注入器が、手術のたびに出ていく点にある。吸引器は 300 床以上の急性期の大病院で高い採用を持ち、いったん標準品に入ると入れ替えにくい。営業利益率は 2015 年から 2017 年に 20% を超え、技術と営業の質を示した。
弱みは三つある。一つめは、吸引器が売上の 6 割強を占め、値下げが利益に直撃すること。二つめは、粗利率が 2026 年 3 月期に 38.4% へ 2.8 ポイント落ち、利益率が 12% 台まで下がったこと。輸入材料の円安と人件費・研究開発費の増加が重なった。三つめは、海外売上が 3.2% しかなく、国内の医療費抑制に成長が縛られることだ。
経営は還元に積極的で、配当性向 60% 以上を方針とする。一方で、会社が掲げる経常利益率 20% には届いていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の医療機器は、高齢化で手術件数が緩やかに増える一方、診療報酬と病院の経営環境が厳しい市場だ。
病院は物価高と人手不足で採算が悪く、消耗品の購買に値下げを求める。使い捨ての吸引器や注入器は性能で差をつけにくく、価格競争になりやすい。海外メーカーの低価格品も入ってくる。
一方で、院内感染の防止や看護師の負担軽減は、使い捨て式への切り替えを後押しする。病棟の吸引は慢性期病院、療養施設、在宅へ広がる余地がある。術後の疼痛管理は、無痛分娩や日帰り手術の増加で需要が増えている。
物価の上昇は、材料費と人件費を押し上げる。医療機器の公定価格は上がらないため、転嫁できる範囲が限られる。
手術件数は高齢化で増えるが、人口は減る。数量は実質でゆるやかに増え、価格は物価に届かない、というのが10 年の姿とみる。
海外は価格競争が激しく、欧州展開は小さく始めても時間がかかる。
病院の購買は共同購入や入札で価格を比べる傾向が強まり、採用された製品の価格を維持するのは年々難しくなる。一方で、手術の安全と感染対策の基準は上がり続けるため、品質で選ばれる土台は残る。
資本政策と M&A
資本政策は、還元を厚くする形だ。
配当は、安定配当をもとに性向 60% 以上を基本方針とする。2026 年 3 月期は純利益 9.2 億円に対し、配当が 6.6 億円と性向は 7 割を超えた。借入は返済と借り換えを繰り返し、純現金は 6 億円ほどある。政策保有株は原則持たない。
設備投資は年 2 億円台で、減価償却の範囲に収まる。研究開発は、マイクロポンプの派生品と、JMS との化学療法向けの共同開発が柱だ。
大株主の構成は確認できていない。優待も確認できなかった。自社株買いの実績は少なく、還元は配当が中心だ。浮動株が多ければ、上場廃止を伴う再編の可能性は低めとみるが、断定はできない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大研医器は、医療現場に密着した消耗品で、粗利益の取れる事業だ。営業利益率は 2015 年から 2017 年に 20% を超えた実績がある。今の 12% は輸入材料の円安と一時的な費用の重なりで、元に戻る余地がある。
手術件数は高齢化で増え続け、フィットフィックスは数量が伸びている。病棟用のキューインポットは、慢性期病院や在宅へ広がる余地が大きい。電動式の新製品が加われば、売れる場が増える。
マイクロポンプの「クーデックエイミーPCA」は、使い捨ての注入器より単価が高く、在宅や無痛分娩で伸びている。化学療法向けの共同開発も控える。
借金はほぼなく、設備投資は小さい。純利益の 6 割以上を配当に回しても、現金は減らない。
欧州展開が当たれば、海外売上 3% の会社が別の会社になる。経常利益率 20% の目標が戻れば、時価総額は今の 1.5 倍を超える。
従業員は 185 人と少数精鋭で、固定費が軽く、売上が増えれば利益が大きく伸びる構造でもある。
慎重な見方
足元の利益は、見かけ以上に弱い。2026 年 3 月期は営業利益が 15% 減り、来期の予想はさらに下がる。粗利率は 2.8 ポイント落ち、輸入材料の円安を値上げで転嫁しきれていない。
売上の 6 割強が吸引器 1 本だ。病院は物価高と人手不足で経営が苦しく、消耗品に値下げを求める。使い捨て品は性能で差をつけにくく、国内外の同業が価格で攻める。
新製品の効果は小さい。注入器は売上の 23% で、電動ポンプは売上が減っている。研究開発費が先に出るため、利益を押し下げる。
海外売上は 3% しかなく、欧州展開は始まったばかりで、価格競争が激しい。配当性向が 7 割を超える状態では、投資に回せる現金が限られる。
人口が減る国で、手術件数の増加は一時的で、高齢者の増加が頭打ちになれば数量は伸びない。10 年の物価上昇を価格に乗せられない構造が、利益率を削り続ける。
売上の 6 割強を占める主力品が、30 年以上前に出た製品という点も気がかりだ。後継品が育たなければ、競合に置き換えられる余地は大きい。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、利益率が元に戻る余地と、新製品の広がりに支えられている。慎重な言い分は、吸引器への偏りと、病院の値下げ圧力に支えられている。
足元の利益の悪化が、一時的か構造的かが決められない。円安の影響は為替が戻れば消えるが、病院の購買の厳しさは続く。両方を割り引いて、中立を最も厚くし、強気と慎重をほぼ均等に置いた。
結論は、今の値段はやや割高。差は 1 割ほどで、適正との境に近い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 566 円163 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 201 円58 億円)。 今の値に割り戻すと 399 円115 億円、今との差 −6.2%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,167 円335 億円 | 296 円85 億円 | +244.2% | +13.2% | 117 円34 億円 |
| やや楽観 | 22% | 831 円239 億円 | 237 円68 億円 | +151.3% | +9.7% | 235 円67 億円 |
| 中立 | 38% | 585 円168 億円 | 205 円59 億円 | +86.0% | +6.4% | 300 円86 億円 |
| やや悲観 | 22% | 253 円73 億円 | 181 円52 億円 | +2.1% | +0.2% | 95 円27 億円 |
| 悲観 | 10% | 120 円35 億円 | 70 円20 億円 | −55.3% | −7.7% | 19 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 566 円163 億円 | 201 円58 億円 | +80.4% | +6.1% | 767 円220 億円 |
今の株価時価総額 425 円122 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 利益率が戻り、新型ポンプが広がる 利益 20 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 1,167 円335 億円
手術件数の増加と病棟用の普及で、吸引器の数量は 3 割近く増える。慢性期病院と在宅の電動式が加わる。価格は物価並みに近づく。
注入器はマイクロポンプの派生品が増え、在宅や無痛分娩、化学療法で数量が 2 倍近くになる。欧州の販売も立ち上がる。
営業利益率は過去の最高に近い 15% 台に戻る。売上は 186 億円、営業利益は 27 億円、純利益は 20 億円。自己資本利益率は 16% を超える。
配当は性向 6 割を保ち、現金が積み上がる。海外売上は 1 割に迫る。
粗利率は材料費の転嫁と生産の効率化で戻り、研究開発の果実が出る形だ。
- 吸引器関連(フィットフィックス・キューインポット):数量 836(年間の販売個数(万個・推定))× 価格 1,280(1 個あたりの平均売上(円・名目・推定))→ 売上 107 億円・営業利益 18 億円。数量 1.28 倍、価格 1.28 倍
- 注入器・ポンプ関連(シリンジェクター・エイミーPCA ほか):数量 137(年間の販売個数(万個・推定))× 価格 4,462(1 個あたりの平均売上(円・名目・推定))→ 売上 61 億円・営業利益 9 億円。数量 1.9 倍、価格 1.28 倍
- その他(手洗い設備・その他):数量 13.9(事業規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.30(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。規模 1.1 倍、価格 1.30 倍
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍。全体の PER 16.76 倍、時価総額 335 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:円安が一巡し、マイクロポンプと病棟用が広がる姿。偏りの重さから 1 割に届かせない。
やや楽観 22% 利益率が 13% 台に戻り、新製品が順調に伸びる 利益 15 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 831 円239 億円
病棟用のキューインポットが中小病院と慢性期へ広がり、吸引器の数量は 2 割増える。価格は物価の 1.25 倍。
注入器はエイミーPCA が定着し、数量は 1.5 倍になる。使い捨て品の減少を新型が埋める。
営業利益率は 13% 台に戻る。売上は 162 億円、営業利益は 21 億円、純利益は 15 億円。自己資本利益率は 13% 台。
配当は性向 6 割台を保つ。海外は小さな黒字にとどまる。
病院の値下げ要求はあるが、使い捨て式の便利さが守る。
円安が一巡して材料費の上昇が止まれば、粗利率は少しずつ戻る。研究開発の費用が売上に対して軽くなる効果も出る。
海外は欧州の一部で販売が立ち上がるが、売上への寄与は 1 割に届かない。
- 吸引器関連(フィットフィックス・キューインポット):数量 784(年間の販売個数(万個・推定))× 価格 1,250(1 個あたりの平均売上(円・名目・推定))→ 売上 98 億円・営業利益 16 億円。数量 1.2 倍、価格 1.25 倍
- 注入器・ポンプ関連(シリンジェクター・エイミーPCA ほか):数量 108(年間の販売個数(万個・推定))× 価格 4,358(1 個あたりの平均売上(円・名目・推定))→ 売上 47 億円・営業利益 6 億円。数量 1.5 倍、価格 1.25 倍
- その他(手洗い設備・その他):数量 13.4(事業規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.27(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。規模 1.06 倍、価格 1.27 倍
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.61 倍、時価総額 239 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:円安の影響が薄れ、病棟用と注入器が着実に伸びる姿。
中立 38% 中立:数量は伸びるが、価格は物価に届かない 利益 12 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 585 円168 億円
吸引器の数量は 15% 増える。手術件数の増加と病棟用の普及が支える。価格は、病院の購買が厳しく、物価の 1.34 倍に届かない 1.18 倍。
注入器はエイミーPCA が伸び、使い捨て品の減少を差し引いて数量は 1.3 倍、価格は 1.2 倍。
営業利益率は 11% 台で、ここ数年の 12% より少し低い。人件費と材料費の上昇を転嫁しきれない。
売上は 144 億円、営業利益は 16 億円、純利益は 12 億円弱。自己資本利益率は 10% 台。配当性向は 6 割を保つ。
海外は小さいまま、国内の置き換え需要が中心になる。
- 吸引器関連(フィットフィックス・キューインポット):数量 751(年間の販売個数(万個・推定))× 価格 1,180(1 個あたりの平均売上(円・名目・推定))→ 売上 89 億円・営業利益 13 億円。数量 1.15 倍、価格 1.18 倍。転嫁は病院の購買で抑えられる
- 注入器・ポンプ関連(シリンジェクター・エイミーPCA ほか):数量 94.0(年間の販売個数(万個・推定))× 価格 4,183(1 個あたりの平均売上(円・名目・推定))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。数量 1.3 倍、価格 1.2 倍。新型は単価が高いが、使い捨て品は病院の購買で値上げが抑えられる
- その他(手洗い設備・その他):数量 13.2(事業規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.25(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。規模 1.05 倍、価格 1.25 倍
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.34 倍、時価総額 168 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:病院の値下げ圧力と手術件数の増加が打ち消しあう、最も起こりやすい形。最も厚く置いた。
やや悲観 22% 値下げ圧力が強まり、利益率が 8% 台に下がる 利益 7 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 253 円73 億円
病院の経営難で消耗品の値下げ要求が強まる。吸引器の数量は 5% 増にとどまり、価格は 1.10 倍と物価に大きく届かない。
注入器はエイミーPCA が伸びきらず、数量 1.1 倍、価格 1.12 倍。新製品の開発費は先に出る。
営業利益率は 8% 台に下がる。売上は 121 億円、営業利益は 10 億円、純利益は 7 億円強。
自己資本利益率は 7% 台と資本コストを割る。配当性向 6 割は維持するが、増配はできない。
海外展開は止まり、研究開発を絞らざるをえなくなる。
病院の値下げ要求が毎年のように続き、新製品の上市も遅れる。人件費の上昇を転嫁できず、粗利率は 35% 台に下がる。
利益は薄いが、借金が少ないので経営は持ちこたえる。ただし成長の期待は後退し、株主の取り分も配当中心の地味なものになる。
- 吸引器関連(フィットフィックス・キューインポット):数量 686(年間の販売個数(万個・推定))× 価格 1,100(1 個あたりの平均売上(円・名目・推定))→ 売上 76 億円・営業利益 9 億円。数量 1.05 倍、価格 1.10 倍
- 注入器・ポンプ関連(シリンジェクター・エイミーPCA ほか):数量 79.0(年間の販売個数(万個・推定))× 価格 3,904(1 個あたりの平均売上(円・名目・推定))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。数量 1.1 倍、価格 1.12 倍
- その他(手洗い設備・その他):数量 12.6(事業規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.15(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。規模 1.0 倍、価格 1.15 倍
倍率:ROE 7.6% が k 8% 以下なので PER は 1÷k=12.9 倍まで。利益の伸びが止まり、質も下がるので、上限の約 74% の 9.5 倍に置く。
確率:病院の購買が厳しさを増し、材料高を転嫁できない姿。
悲観 10% 悲観:吸引器の値崩れで利益が大きく削られる 利益 3 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 120 円35 億円
低価格の吸引器が病院の購買で標準品に入り、フィットフィックスの価格は 10 年たっても上がらない。数量も 5% 減る。
注入器は新型が伸びず、使い捨て品の需要も減る。その他も利益が出ない。
営業利益率は 3% 台に落ち、営業利益は 3 億円ほどになる。研究開発は削られ、成長の物語は終わる。
配当は減らされ、株主の取り分は、現金と在庫・売掛金、工場などの売れる資産に近づく。
生産を和泉の拠点に絞り、固定費の削減で持ちこたえる局面に入る。
国内の病院向けの営業網は維持するが、海外展開は取りやめ、マイクロポンプ関連の開発も縮小する。従業員数の削減と、拠点の統合が進み、会社は小さく守りに入る。
- 吸引器関連(フィットフィックス・キューインポット):数量 620(年間の販売個数(万個・推定))× 価格 1,000(1 個あたりの平均売上(円・名目・推定))→ 売上 62 億円・営業利益 4 億円。数量 0.95 倍、価格 1.0 倍
- 注入器・ポンプ関連(シリンジェクター・エイミーPCA ほか):数量 72.0(年間の販売個数(万個・推定))× 価格 3,486(1 個あたりの平均売上(円・名目・推定))→ 売上 25 億円・営業利益 −1 億円。数量 1.0 倍、価格 1.0 倍
- その他(手洗い設備・その他):数量 12.6(事業規模(今の値段で換算した売上・億円))× 価格 1.00(値段の指数(今 = 1.0))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。規模 1.0 倍、価格 1.0 倍
倍率:床の資産で値を付けた。稼ぐ力(2.5 億円 ÷ k)は 32 億円ほどだが、現金・売掛金・在庫・工場の売却価値から負債を引いた 34.5 億円のほうが大きい。自己資本 77 億円に対する PBR は 0.45 倍。
確率:海外や国内の同業の低価格品が入り、主力の吸引器で値崩れが起きる構造的な負け筋。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
吸引器関連(フィットフィックス・キューインポット)
手術室と病棟で血液や唾液などの排液を吸う使い捨て式の吸引器とライナー。
| 数量年間の販売個数(万個・推定) | 価格1 個あたりの平均売上(円・名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 653 | 1,000 | 65 | 11 |
| 10 年後 中立 | 751 | 1,180 | 89 | 13 |
取り方:売上は 2026 年 3 月期の吸引器関連 65.3 億円。個数は開示が無いため、本体・ライナー・付属品を混ぜた平均単価を約 千円前後と置き、売上から 653 万個と推定した。利益は全社の営業利益 12.8 億円のうち、吸引器の粗利が大きいことから 10.6 億円(16%)と推定。
注入器・ポンプ関連(シリンジェクター・エイミーPCA ほか)
術後の鎮痛剤などを一定の速さで入れる使い捨て注入器と、マイクロポンプを積んだ新型。電動ポンプを含む。
| 数量年間の販売個数(万個・推定) | 価格1 個あたりの平均売上(円・名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 72.0 | 3,486 | 25 | 2 |
| 10 年後 中立 | 94.0 | 4,183 | 39 | 4 |
取り方:注入器 23.2 億円と電動ポンプ 1.9 億円の合計 25.1 億円。個数は開示が無く、使い捨て品と新型の単価を混ぜた平均を3 千円台半ばと置いて 72 万個と推定。利益は新製品の開発費を抱えるため 2.0 億円(8%)の推定。
その他(手洗い設備・その他)
手術室の手洗い設備と、そのほかの小さな製品群。
| 数量事業規模(今の値段で換算した売上・億円) | 価格値段の指数(今 = 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.6 | 1.00 | 13 | 0 |
| 10 年後 中立 | 13.2 | 1.25 | 17 | 0 |
取り方:手洗い設備 6.5 億円とその他 6.0 億円の合計 12.6 億円。個別の数量は開示が無いため、今の売上を規模、物価を価格の指数とした。利益はほぼゼロの推定。
リスクと懸念
主力の吸引器への偏りと値崩れ
吸引器関連は売上の 63% で、有報も「6 割を超えてきている」と書く。病院の購買が厳しく、過度な値下げ競争が起きれば、主力品の単価下落が利益に直撃する。
円安による輸入材料の高騰
主力品の材料の一部は輸入で、2026 年 3 月期は粗利率が 38.4%(−2.8 ポイント)に落ちた。為替が戻らなければ、値上げで転嫁しきれない分が利益を削る。
病院の経営難と医療費抑制
診療報酬と病院の採算が厳しく、消耗品への値下げ要求が強まる。医療機器の価格が物価に連動しないため、10 年の物価上昇を転嫁しきれない恐れがある。
新製品の開発費と採算
マイクロポンプの派生品と JMS との共同開発で研究開発費が先行する。注入器の使い捨て品が減る中、新製品が穴を埋められないと、利益率の回復が遅れる。
海外展開の遅れ
海外売上は 3.2% しかなく、欧州展開は準備段階。価格競争が激しく、認証取得や販売パートナーの選定に時間がかかる。成長の柱として期待しすぎるのは危うい。
生産拠点の集中
注入器は大阪府和泉市の組み立て拠点で主に作られる。地震や火災で止まれば、供給が途切れ、病院との信頼を失う。
今後の分かれ目
- 為替が円高に動き、粗利率が 40% 台に戻る
- 足元の弱さが一時的と確かめられる。楽観側の確率を上げる。
- キューインポットの採用が慢性期・中小病院で広がり、吸引器の数量が伸びる
- 数量の中立を上げる。楽観側の確率を上げる。
- クーデックエイミーPCA の売上が倍になる、または欧州で販売が始まる
- 注入器の数量を上方修正する。楽観の確率を上げる。
- 吸引器の主力品で値下げの採用や、低価格品の標準化が起きる
- 悲観とやや悲観の確率を上げる。
- 配当性向 60% 以上の方針が変更される
- 還元の戻り方の前提を見直す。
- 大株主による公開買付けや非上場化の動きが出る
- 公開買付けの価格は本質価値と別の話になる。提示価格と 10 年の中立の価値の差を見て判断する。
見ておくもの
- 粗利率(40% への回復)と営業利益率
- 吸引器関連の売上と数量の伸び
- クーデックエイミーPCA の売上と海外展開
- 配当性向と現金の水準
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。k 8%(quality +0.25)、g 4%、堀は普通。中立の ROE は 10.7% で k を上回るので、正当化 PER は約 15.1 倍、質が高くないため 12.8 倍にした。今の株価や PER は見ていない。数量は開示が無く、売上と推定単価から置いた個数で、価格は物価の 1.34 倍に届かない 1.18〜1.2 倍とした。現金が積み上がる分は build が自動で足す。株主優待は確認できず、還元には足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.5→16.76 倍・やや楽観 PER 14.5→15.61 倍・中立 PER 12.8→14.34 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。