結論
ニプロは、人工透析の部品、注射針や輸液、血管の治療機器、ジェネリック薬、薬の容器まで一社で持つ大阪の医療メーカーだ。筆者の結論は、事業は強いが今の値段には割高寄りというものだ。
稼ぎ頭は透析で、売上の3割強を占める。ダイアライザ(血液をろ過する筒状の部品)の世界シェアは3割近い。需要は高齢化と糖尿病で10年先まで増える。ここは本物の強みだ。
弱いのは資本の使い方だ。前の5年間で設備に4,096億円を投じ、計画を900億円近く上回った。稼ぎは計画に届かず、借金だけが残った。純有利子負債は5,000億円を超え、営業利益の約14倍に当たる。営業利益率は5.7%、ROEは5%にとどまる。
金利が上がる世界では、この借金が重い。利払いの増加で、10年後の純利益は年130億円ほど削られる。事業が育っても、株主の取り分はなかなか増えない。
中立の筋書きでは、10年後の営業利益は約850億円、ROEは8%で資本コスト9%に届かない。本質価値は今の時価総額を2割ほど下回り、「やや割高」と出た。借金が減る道筋が見えれば、評価は変わりうる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業と資本の使い方を分けて見る必要がある。
事業は悪くない。透析は患者が通うかぎり毎回使われる消耗品で、10年後もある。ニプロはその世界シェア3割近くを持ち、膜の独自技術もある。需要は景気に左右されない。
資本の使い方は、合格点に届かない。前の5年で、稼ぎを生む力を超えて設備に投じた。その結果、借金はEBITDAの5倍を超え、金利が上がる世界で利益の取り分が削られる。ROEは10年の中央値で6%に届かない。オーナーとして持ちたいのは、投じた資金が、投じた額以上の価値を生む会社だ。ニプロはそこを証明できていない。
安全域も薄い。株主の取り分は、事業の利益から借金の利払いと税を引いた残りだ。事業が予定より1割悪化するだけで、残りは大きく減る。借金が重い会社は、うまくいった時の上振れより、うまくいかなかった時の下振れが大きい。
筆者は、借金が減り、利益率が7%台に乗るのを確かめてから評価を上げたい。それまでは、事業の質を認めつつ、値段には慎重でいる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は4つある。
1つ目は透析だ。売上6,605億円のうち約2,160億円を占め、その8割強が海外で売れている。中心はダイアライザで約1,170億円。ほかに透析装置、血液回路、透析液がある。ダイアライザは使い捨てで、患者が通うかぎり毎回買われる。装置と消耗品をそろえて売れる点が、ニプロの特徴だ。膜の素材(CTA膜・ATA膜)は自社だけが持つ。
2つ目はホスピタルとバスキュラー(血管内治療)だ。注射針(糖尿病薬GLP-1用のインスリン針を含む)、輸液、静脈留置針、人工心臓・人工肺、薬剤溶出バルーンなどを扱う。国内では病院に深く入り、海外では基礎的な製品を安定して届ける役回りだ。
3つ目は医薬品だ。自社のジェネリック(後発薬。注射剤と抗菌薬が中心)と、他社の薬の製造受託がある。近江工場を新設し、注射剤に重心を移している。外用剤の工場は三笠製薬へ譲る基本合意を結んだ。
4つ目は薬の容器だ。バイアル(小瓶)やシリンジ(注射筒)を作るファーマパッケージングで、欧米に強い。コロナのワクチン特需で膨らんだが、在庫調整で2026年3月期は赤字になった。
このほか、脊髄損傷の幹細胞薬「ステミラック」が2027年1月の本承認を待つ。まだ小さな事業だ。
優良さと弱いところ
堀は透析にある。ダイアライザは医師が患者ごとに選び、いったん採用されると変わりにくい。ニプロは膜・装置・回路をそろえ、世界の透析施設で3割近いシェアを持つ。大手プロバイダとの契約も続く。競合の一部は透析から手を引き始め、ニプロは供給を増やす側に回っている。
ただし堀は薄い。北米は大手2社が患者の大半を抱え、買い手の力が強い。中国は集中購買で値段が決まり、中南米には中国勢が入ってきた。インドやインドネシアは自国生産を優遇する。数量は伸びても、1本あたりの値段で稼ぎにくい。
筆者がいちばん気にするのは資本配分だ。ダイアライザの増産、医薬の新工場、容器の増設に、5年で計画より900億円近く多く投じた。ところが稼ぎ(EBITDA)は計画を600億円ほど下回った。営業利益率は過去10年、3〜8%の幅にとどまり、直近でも5.7%だ。売上を追い、利益が後からついてこない会社だった。
新しい計画は「売上より営業利益」を掲げ、投資を絞る方針に変わった。変化の兆しはある。結果で示すのはこれからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
透析の需要は構造的に伸びる。世界の慢性腎臓病の成人は約5.9億人で、2050年には8.5億人に増える見通しだ。糖尿病と高血圧が背景にある。ダイアライザの世界市場は、会社の推計で2027年度に約5.6億本、年6〜7%の伸びだ。景気の波は小さい。
競争の形は寡占に近い。フレゼニウスとバクスターの2社で、売上の過半を握るとされる(調査会社の推計)。旭化成、東レ、B.ブラウン、日機装、中国勢が続く。ニプロは膜の独自性と、装置・回路まで持つ強みで上位に食い込んだ。患者数の増える新興国では、使い捨て(シングルユース)への移行が進み、追い風になる。
一方、値段は重い。中国の集中購買、各国の医療費抑制、自国生産の優遇が、1本あたりの単価を押さえる。
医薬は日本の薬価が毎年下がる市場だ。後発薬の数量シェアはすでに8割を超え、伸びしろは注射剤とバイオ後続品、受託製造にある。薬の容器は、バイオ医薬向けの滅菌済みシリンジが年11%ほど伸びる。ただし汎用のバイアルは在庫調整が長引き、中国メーカーが安値で迫る。
10年の負け筋は3つある。中国・インド勢の技術向上による値崩れ、医療費抑制の恒常化、そして借金の重さで投資が止まり、シェアを譲る展開だ。
資本政策と M&A
最大の論点は借金だ。2026年3月期の純有利子負債は5,000億円を超え、EBITDAの5倍超にある。新しい中期経営計画(2025〜27年度)は、2027年度に4倍未満、2030年に3倍未満を目指す。3年の設備投資は2,000億円に絞り、フリーキャッシュフロー700億円以上を返済に回す。2026年度の投資は490億円と、減価償却を下回る計画だ。
資産の売却も始めた。固定資産の売却益が41億円出た。外用剤の工場は三笠製薬に譲る。
M&Aは小粒だ。脳血管の画像診断を手がけるスプライトと、血管内画像のジェンティュイティを子会社に入れ、2026年度から開発費とのれん償却が利益を圧迫する。
経営は創業家の色が濃い。2025年6月に13年ぶりの社長交代があり、国際事業とファーマパッケージングを長く担った山崎剛司氏が社長、佐野嘉彦氏が会長になった。持ち合いの株主もいる。買収される可能性は低い。一方、還元に回す余力は小さく、当面は借金の返済が先になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ダイアライザは需要が確実に増える消耗品で、ニプロは供給を増やせる数少ない会社だ。競合の一部が撤退に向かう中、世界シェアは3割へ近づく。独自の膜(CTA膜・ATA膜)と高性能品のHDx(血液をより細かくろ過する治療)は、臨床データがたまるほど切り替えにくくなる。インドネシアなどが使い捨てを国策にし、アジアと中南米の数量は読みを上回る。
設備投資の山はすでに越えた。大館(秋田)の第7工場、ベトナム、インド、米国で増産ラインがそろい、2026年度の投資は490億円と減価償却を下回る。新工場の稼働率が上がれば、固定費が薄まり、利益率が一気に上がる。会社は2030年に営業利益率9%を掲げ、10年なら二桁に届く。
医薬は新しいオーソライズドジェネリックとバイオ後続品で値崩れを避け、受託は注射剤に移る。薬の容器は、バイオ医薬向けの滅菌済みシリンジが立ち上がり、赤字から抜ける。利益が出れば借金は早く減り、金利の逆風は薄れる。10年後には資本コストを上回るROEで回る会社になる。
慎重な見方
この会社は、成長を追って利益を取り損ねる癖がある。前の中計は営業利益率9%、ROE14%を掲げたが、実績は4%台と2%だった。設備に計画より900億円多く投じ、稼ぎは600億円足りなかった。今回の計画も、2027年度の営業利益率7%は今より1.3ポイント高く、同じ轍を踏む懸念がある。
借金は5,000億円を超え、自己資本比率は23%にとどまる。借り換えのたびに金利が上がり、10年で年130億円の利益が消える。事業が計画どおりでも、株主に残る利益は薄い。ここに一度の災害や工場の不具合が重なると、投資を絞らざるをえなくなる。実際に福島の工場は地震で損失を出した。
透析の値段にも上値がない。北米の買い手は大手2社、中国は集中購買、中南米は中国勢が安値で攻める。ダイアライザの数量が伸びても、1本の値段が物価に届かない。薬の容器は在庫調整が長引き、汎用品は中国に押される。医薬は毎年の薬価改定で利益率が上がらない。
事業の質は認めるが、資本の使い方と借金が評価を決める。利益が伸びる前に、利払いが先に増える。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の見方が正しい。だが、10年の価値を決めるのは借金と利益率で、ここは慎重な見方が勝つ。会社は前の計画で営業利益率・ROE・借金の三つの目標をすべて外し、金利の逆風も受ける立場にある。確率は中立に厚く置きつつ、やや悲観と悲観を合わせて3割半に寄せた。楽観は、投資の山を越えて利益率が二桁へ向かう場合に限り、1割に満たない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,183 円3,629 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 486 円808 億円)。 今の値に割り戻すと 1,238 円2,058 億円、今との差 −7.6%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,213 円8,664 億円 | 979 円1,628 億円 | +361.9% | +16.5% | 433 円720 億円 |
| やや楽観 | 21% | 3,624 円6,023 億円 | 734 円1,220 億円 | +225.1% | +12.5% | 915 円1,521 億円 |
| 中立 | 37% | 2,313 円3,844 億円 | 507 円842 億円 | +110.3% | +7.7% | 1,043 円1,734 億円 |
| やや悲観 | 24% | 648 円1,077 億円 | 247 円410 億円 | −33.3% | −4.0% | 215 円357 億円 |
| 悲観 | 11% | 421 円699 億円 | 150 円250 億円 | −57.4% | −8.2% | 63 円104 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,183 円3,629 億円 | 486 円808 億円 | +99.1% | +7.1% | 2,669 円4,437 億円 |
今の株価時価総額 1,341 円2,228 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 投資の山を越え、透析が利益を稼ぐ会社になる 利益 679 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 5,213 円8,664 億円
ニプロのダイアライザは年約2.9億本まで増え、世界シェアは30%台に乗る。競合の撤退と使い捨ての国策化が、アジアと中南米の数量を押し上げる。高性能品の比率も上がり、1本あたりの値段は物価をやや上回る。
大館・ベトナム・インド・米国の新ラインが埋まり、固定費が薄まる。透析の営業利益率は17%、全社でも10%を超える。ホスピタルは安全機構付きの針や血管用バルーンで高付加価値に寄る。医薬は新しいジェネリックとバイオ後続品が育ち、容器は滅菌済みシリンジで黒字が定着する。
稼いだ利益で借金を返し、10年後の純有利子負債は2,600億円まで減る。利払いは軽くなり、ROEは13%、資本コストを上回る会社になる。
- 透析(ダイアライザ・装置・回路・透析液):数量 285(ニプロのダイアライザ出荷(百万本、推定))× 価格 2,146(1 本あたりの透析関連売上(円・名目。装置・回路・透析液を含む))→ 売上 6,114 億円・営業利益 1,039 億円。ダイアライザ年 2.85 億本 × 価格は今の 1.38 倍、営業利益率 17.0%
- ホスピタル・バスキュラー・再生医療ほか:数量 52.9(注射針・輸液・留置針・血管内治療品などの出荷(億個、推定))× 価格 71(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 3,756 億円・営業利益 470 億円。出荷 52.9 億個 × 価格は今の 1.42 倍、営業利益率 12.5%
- 医薬品(自社ジェネリック・他社の受託製造):数量 112(医薬品の出荷単位(錠・アンプル・バイアル・貼付枚などの換算、億単位、推定))× 価格 26(1 単位あたり平均単価(円・名目))→ 売上 2,861 億円・営業利益 257 億円。出荷 112 億単位 × 価格は今の 1.20 倍、営業利益率 9.0%
- ファーマパッケージング(薬の容器):数量 68.0(容器の出荷(バイアル・シリンジ・アンプル・管の換算、億本、推定))× 価格 17(1 本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 1,164 億円・営業利益 105 億円。出荷 68 億本 × 価格は今の 1.40 倍、営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 679 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.76 倍、時価総額 8,664 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界の透析需要の伸び、競合の撤退、投資の一巡、薬の容器の黒字化が全部そろう必要がある。ニプロは前の中計で目標を外した実績があり、すべて当たる確率は低い。7%に置いた。
やや楽観 21% 計画をほぼ達成し、利益率が9%台へ 利益 507 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 3,624 円6,023 億円
透析は世界シェアが約29%に上がり、数量は年6%ほど伸びる。値段は物価並みを保ち、売上は5,400億円規模になる。透析の営業利益率は16%に上がる。
ホスピタルは国内の価格改定を数量でこなし、海外で針と留置針が伸びる。薬剤溶出バルーンは競合の参入で伸びが鈍るが、末梢用が穴を埋める。医薬は注射剤の受託と抗菌薬が下支えし、容器は在庫調整が終わって黒字になる。
設備投資は減価償却の範囲に収まり、10年の純有利子負債は3,200億円へ減る。営業利益は約1,150億円、ROEは11%。会社の計画に近いが、資本コストをわずかに上回るにとどまる。
- 透析(ダイアライザ・装置・回路・透析液):数量 257(ニプロのダイアライザ出荷(百万本、推定))× 価格 2,084(1 本あたりの透析関連売上(円・名目。装置・回路・透析液を含む))→ 売上 5,359 億円・営業利益 847 億円。ダイアライザ年 2.57 億本 × 価格は今の 1.34 倍、営業利益率 15.8%
- ホスピタル・バスキュラー・再生医療ほか:数量 50.4(注射針・輸液・留置針・血管内治療品などの出荷(億個、推定))× 価格 69(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 3,478 億円・営業利益 400 億円。出荷 50.4 億個 × 価格は今の 1.38 倍、営業利益率 11.5%
- 医薬品(自社ジェネリック・他社の受託製造):数量 108(医薬品の出荷単位(錠・アンプル・バイアル・貼付枚などの換算、億単位、推定))× 価格 25(1 単位あたり平均単価(円・名目))→ 売上 2,667 億円・営業利益 219 億円。出荷 108 億単位 × 価格は今の 1.16 倍、営業利益率 8.2%
- ファーマパッケージング(薬の容器):数量 60.0(容器の出荷(バイアル・シリンジ・アンプル・管の換算、億本、推定))× 価格 16(1 本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 968 億円・営業利益 68 億円。出荷 60 億本 × 価格は今の 1.32 倍、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 507 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.88 倍、時価総額 6,023 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が掲げる2030年の営業利益率9%に近い水準。数量は強いが、値段は物価並みで、実現にはコストの管理が要る。前の実績を見ると、計画どおりに行かない場合も多く、2割に置いた。
中立 37% 需要は増えるが、利益率は7%台止まり 利益 346 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,313 円3,844 億円
ニプロのダイアライザは年約2.3億本、世界シェアは28%へ緩やかに上がる。値段は北米と中国の圧力で物価をやや下回り、10年で1.3倍にとどまる。透析の営業利益率は14.5%まで上がる。
ホスピタルとバスキュラーは数量が1.3倍、値段は物価並み。医薬は薬価の下落を注射剤の数量で補い、利益率は7%に上がる。容器は赤字を脱して5%の利益率に落ち着く。
営業利益は約850億円、利益率7.6%。会社が掲げる9%には届かない。借金は3,800億円まで減るが、利払いは年130億円超残る。純利益は約350億円、ROEは8%で資本コストに届かない。事業は強いが、株主の取り分は小さい10年になる。
- 透析(ダイアライザ・装置・回路・透析液):数量 228(ニプロのダイアライザ出荷(百万本、推定))× 価格 2,022(1 本あたりの透析関連売上(円・名目。装置・回路・透析液を含む))→ 売上 4,609 億円・営業利益 668 億円。ダイアライザ年 2.28 億本 × 価格は今の 1.30 倍、営業利益率 14.5%
- ホスピタル・バスキュラー・再生医療ほか:数量 47.5(注射針・輸液・留置針・血管内治療品などの出荷(億個、推定))× 価格 67(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 3,182 億円・営業利益 334 億円。出荷 47.5 億個 × 価格は今の 1.34 倍、営業利益率 10.5%
- 医薬品(自社ジェネリック・他社の受託製造):数量 105(医薬品の出荷単位(錠・アンプル・バイアル・貼付枚などの換算、億単位、推定))× 価格 24(1 単位あたり平均単価(円・名目))→ 売上 2,504 億円・営業利益 175 億円。出荷 105 億単位 × 価格は今の 1.12 倍、営業利益率 7.0%
- ファーマパッケージング(薬の容器):数量 54.0(容器の出荷(バイアル・シリンジ・アンプル・管の換算、億本、推定))× 価格 15(1 本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 832 億円・営業利益 42 億円。出荷 54 億本 × 価格は今の 1.26 倍、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 346 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 3,844 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は市場並みに伸び、値段は物価をやや下回る。利益率は今より2ポイント改善にとどまる。事業の質は保たれるが、借金が重く、前の実績から見て会社の計画の7割ほどの達成に置いた。最も厚く37%。
やや悲観 24% 値段と借金に押され、利益率が上がらない 利益 121 億円 · PER 8.9 倍 · 株価時価総額 648 円1,077 億円
中国の集中購買が広がり、中南米は中国勢が安値で入る。ダイアライザの数量は1.4倍にとどまり、1本あたりの値段は物価に届かず1.2倍。透析の営業利益率は11.5%で足踏みする。
医薬は毎年の薬価改定で利益が削られ、近江工場の償却が重い。容器は中国メーカーに汎用バイアルを奪われ、利益率は2.5%どまり。会社の営業利益率は5%に届かない。
借金は4,600億円と高止まりし、金利が上がる中で利払いが営業利益の4割ほどを食う。純利益は約120億円、ROEは3%台。投資を絞って守りに入り、成長は鈍る。
事業が壊れるわけではない。透析の需要は残り、ダイアライザは売れ続ける。ただ、稼いだ利益は借金の利払いと新工場の償却に消え、株主に回る分がほとんど増えない。
- 透析(ダイアライザ・装置・回路・透析液):数量 195(ニプロのダイアライザ出荷(百万本、推定))× 価格 1,866(1 本あたりの透析関連売上(円・名目。装置・回路・透析液を含む))→ 売上 3,631 億円・営業利益 418 億円。ダイアライザ年 1.95 億本 × 価格は今の 1.20 倍、営業利益率 11.5%
- ホスピタル・バスキュラー・再生医療ほか:数量 42.0(注射針・輸液・留置針・血管内治療品などの出荷(億個、推定))× 価格 61(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 2,562 億円・営業利益 218 億円。出荷 42.0 億個 × 価格は今の 1.22 倍、営業利益率 8.5%
- 医薬品(自社ジェネリック・他社の受託製造):数量 98.0(医薬品の出荷単位(錠・アンプル・バイアル・貼付枚などの換算、億単位、推定))× 価格 22(1 単位あたり平均単価(円・名目))→ 売上 2,128 億円・営業利益 117 億円。出荷 98 億単位 × 価格は今の 1.02 倍、営業利益率 5.5%
- ファーマパッケージング(薬の容器):数量 46.0(容器の出荷(バイアル・シリンジ・アンプル・管の換算、億本、推定))× 価格 13(1 本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 619 億円・営業利益 15 億円。出荷 46 億本 × 価格は今の 1.10 倍、営業利益率 2.5%
倍率:事業の ROE 3.4% は k 9.0% 以下なので、PER の上限は 1÷k の 11.1 倍。値段の圧力と借金の利払いで利益が薄く、成長も鈍い筋書きなので、稼ぐ力(純利益÷k)に安全率をとり、上限の 8.0 割の 8.9 倍に置いた。
確率:中国・インドの安値攻勢と医療費抑制が重なり、新工場の稼働が遅れる。事業が壊れるわけではないが、利益率は5%に届かない。前の中計の実績に近く、24%に置いた。
悲観 11% 価格破壊と借金で、投資が止まり優位を失う 利益 −123 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 421 円699 億円
中国・インド勢が中位品のダイアライザで追いつき、ニプロは大手プロバイダの契約更新で値下げを迫られる。数量の伸びは1.15倍にとどまり、値段は物価の1割も上がらない。透析の営業利益率は7%まで落ちる。
医薬は毎年の薬価改定で利益が消え、容器は汎用品の価格破壊で黒字を維持できない。会社の営業利益は約60億円、利益率は1%にとどまる。
借金は5,400億円のまま残り、金利は3.5%へ上がる。利払いが営業利益を超え、赤字が続く。国内の医薬事業や工場の売却で借金を圧縮せざるをえず、株主の取り分は大きく目減りする。配当は半分に減らす。
- 透析(ダイアライザ・装置・回路・透析液):数量 160(ニプロのダイアライザ出荷(百万本、推定))× 価格 1,633(1 本あたりの透析関連売上(円・名目。装置・回路・透析液を含む))→ 売上 2,609 億円・営業利益 183 億円。ダイアライザ年 1.60 億本 × 価格は今の 1.05 倍、営業利益率 7.0%
- ホスピタル・バスキュラー・再生医療ほか:数量 36.5(注射針・輸液・留置針・血管内治療品などの出荷(億個、推定))× 価格 53(1 個あたり平均単価(円・名目))→ 売上 1,916 億円・営業利益 105 億円。出荷 36.5 億個 × 価格は今の 1.05 倍、営業利益率 5.5%
- 医薬品(自社ジェネリック・他社の受託製造):数量 90.0(医薬品の出荷単位(錠・アンプル・バイアル・貼付枚などの換算、億単位、推定))× 価格 20(1 単位あたり平均単価(円・名目))→ 売上 1,763 億円・営業利益 53 億円。出荷 90 億単位 × 価格は今の 0.92 倍、営業利益率 3.0%
- ファーマパッケージング(薬の容器):数量 38.0(容器の出荷(バイアル・シリンジ・アンプル・管の換算、億本、推定))× 価格 12(1 本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 441 億円・営業利益 0 億円。出荷 38 億本 × 価格は今の 0.95 倍、営業利益率 0.0%
倍率:赤字の筋書きなので PBR で置く。EV(時価総額+純有利子負債)÷営業利益でも見たが、営業利益が 60 億円ほどと薄く、倍率に意味がない。倍率は今の自己資本 2,741 億円に掛ける床の値で、国内の医薬事業・工場・土地を売って借金を返したあとに株主へ残る手取り(floor_assets_oku)から逆に出した。稼ぐ力(赤字)からは価値が立たない。
確率:中国・インド勢の技術向上と、主要国の医療費抑制が重なり、借金が重くて設備更新も遅れる。構造的な負けで、ニプロの借金の重さを考えると無視できない。11%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
透析(ダイアライザ・装置・回路・透析液)
ダイアライザ(血液をろ過する使い捨ての部品)を中心に、透析装置・血液回路・透析液を世界の透析施設に供給する。売上の約 3 割で、8 割強が海外。
| 数量ニプロのダイアライザ出荷(百万本、推定) | 価格1 本あたりの透析関連売上(円・名目。装置・回路・透析液を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 139 | 1,555 | 2,162 | 300 |
| 10 年後 中立 | 228 | 2,022 | 4,609 | 668 |
取り方:透析関連の売上 2,162 億円(ダイアライザ 1,171、装置 319、回路ほか 671)を、出荷本数で割って 1 本あたりに直した。本数は、世界市場の約 5.25 億本(会社の予測 2027 年度 5.6 億本・年 6.7% 増から 1 年戻した)に、シェア約 26.5% を掛けた推定で約 1.39 億本。数量は実質、物価の分は価格に入れる。中立では世界の本数が年 4.5% 伸び、シェアが 28% へ上がる(1.64 倍)。価格は北米・中国の圧力で物価をやや下回る 1.30 倍。セグメント利益は開示が無く、医療関連 523 億円から他の医療機器と自社医薬を除いて推定した。 数量は実物(ダイアライザの出荷本数)で、名目の市場の伸びではない。
ホスピタル・バスキュラー・再生医療ほか
注射針・輸液・静脈留置針・人工心臓や人工肺・薬剤溶出バルーンなど。国内は病院に深く入り、海外は基礎製品を安定供給する。再生医療「ステミラック」も含む。
| 数量注射針・輸液・留置針・血管内治療品などの出荷(億個、推定) | 価格1 個あたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 36.5 | 50 | 1,825 | 190 |
| 10 年後 中立 | 47.5 | 67 | 3,182 | 334 |
取り方:医療機器の売上 3,975 億円から透析関連 2,162 億円を除き、生産機械・不動産などのその他 12 億円を足して 1,825 億円(注射針 625、バスキュラー 365、輸液 249、糖尿病 143、検査 77、AT 99、その他)。年約 36.5 億個を出荷すると推定し、売上を個数で割って平均単価とした。数量は実質で、糖尿病薬 GLP-1 用の針・末梢用バルーンで中立は 1.3 倍。価格は物価並みの 1.34 倍(安全機構付きなど高機能品への移行を含む)。セグメント利益は開示が無く、医療関連 523 億円の残りから推定した。
医薬品(自社ジェネリック・他社の受託製造)
自社のジェネリック(注射剤・抗菌薬・オーソライズドジェネリック・バイオ後続品)と、他社の薬の製造受託(CDMO)。国内が中心。
| 数量医薬品の出荷単位(錠・アンプル・バイアル・貼付枚などの換算、億単位、推定) | 価格1 単位あたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 21 | 2,129 | 154 |
| 10 年後 中立 | 105 | 24 | 2,504 | 175 |
取り方:自社ジェネリック 1,307 億円、他社受託 743 億円、JMI ファーマ(バングラデシュ)79 億円で、合計約 2,129 億円。年約 100 億単位を出荷すると推定し、売上を単位数で割って平均単価とした。経口剤は減り、注射剤が増える構成。中立の数量は 1.05 倍、価格は毎年の薬価改定で物価に届かず 1.12 倍。セグメント利益は医薬関連 121 億円に、医療関連に含まれる自社ジェネリックの分約 33 億円を足して推定した。
ファーマパッケージング(薬の容器)
バイアル・シリンジ・アンプル・ガラス管など薬の容器。欧州と米国に強い。2026 年 3 月期は在庫調整で赤字。
| 数量容器の出荷(バイアル・シリンジ・アンプル・管の換算、億本、推定) | 価格1 本あたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 12 | 489 | −16 |
| 10 年後 中立 | 54.0 | 15 | 832 | 42 |
取り方:容器の売上 489 億円(ガラス管 123、アンプル 80、バイアル 117、シリンジ 83、他)を、年約 40 億本の出荷と推定して平均単価に直した。数量は実質で、在庫調整が終わりバイオ医薬向けの滅菌済みシリンジが立ち上がる中立で 1.35 倍。価格は汎用品の中国勢との競争で物価に届かず 1.26 倍。セグメント利益は開示の損失 16 億円。
リスクと懸念
借金の重さと金利
純有利子負債は5,000億円を超え、営業利益の約14倍、EBITDAの5倍超だ。借り換えのたびに金利が上がり、10年で年130億円の利益が消える。業績が計画を下回れば、投資の抑制や資産売却を迫られる。
計画を外し続けてきた実績
前の中期経営計画(2020〜24年度)で、営業利益率9%・ROE14%・借金5倍未満のすべてを外した。設備に計画より896億円多く投じ、EBITDAは608億円足りなかった。今回の計画も同じ癖が出れば、利益は伸びない。
透析の値段の圧力
北米は大手2社が買い手の力を持つ。中国は集中購買で単価が決まり、中南米は中国勢が参入した。インド・インドネシアは自国生産を優遇する。数量が伸びても、1本あたりの値段が物価に届かない恐れがある。
ファーマパッケージングの赤字
2026年3月期はセグメント赤字(15.8億円の損失)だった。バイアルは前年比26%減、シリンジは20%減。会社は2026年度に13億円の黒字を見込むが、汎用品は中国勢が安値で攻めており、立て直しは確かではない。
医薬の薬価改定と新工場の償却
国内の医薬は毎年の薬価改定で利益率が上がりにくい。2026年度は近江工場の償却が増え、医薬の利益は10%減る見込みだ。後発薬の出荷停止や品質問題が起きれば、信頼を失う。
ガバナンスと創業家経営
経営は創業家の色が濃く、持ち合いの株主もいる。2025年に13年ぶりの社長交代があったが、資本効率を厳しく問う外部の力は強くない。資本配分の失敗が続けば、是正が遅れやすい。
災害と海外の事業環境
福島の工場が地震で損失を出した前例がある。透析装置・ダイアライザの生産は秋田、タイ、ベトナムなどに分かれるが、一つの災害や物流の混乱で供給が止まれば、契約の更新に響く。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2027年度に7%以上、2028年度に8%に近づいたら
- 中立の利益率の前提を上げ、楽観・やや楽観の確率を厚くする。借金の減りが利益の改善と同時に確認できれば、評価は大きく変わる。
- 純有利子負債÷EBITDAが4倍を切り、設備投資が減価償却の範囲に収まったら
- 借金の重さによる割引を縮め、ROEが資本コストを上回る道が開く。やや悲観の確率を下げる。
- 中国・インドの集中購買や自国生産優遇が、ダイアライザの単価を物価の半分以下に抑え始めたら
- 透析の値段の前提を下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ファーマパッケージングが2期連続で黒字化せず、バイアルの需要が戻らなかったら
- 容器事業の再編や売却の可能性を考え、全社の利益率の前提を下げる。
- 北米の大手透析プロバイダと、長期の大型契約を新たに結んだら
- 数量の前提を上げ、透析の営業利益率が17%に近づく楽観の筋書きの確率を上げる。
- 創業家・持ち合い株主の動きや、事業の売却・再編が公表されたら
- 資本配分の考え方が変わる合図として、確率と倍率の前提を見直す。
見ておくもの
- 営業利益率(2027年度7%以上が目標)と、透析の利益率の改善
- 純有利子負債÷EBITDA(2027年度に4倍未満が目標)と、設備投資の額
- ダイアライザの世界シェア・海外売上の伸びと単価の動き
- ファーマパッケージングの黒字化(2026年度に13億円の黒字を見込む)
- ステミラックの本承認(2027年1月見込み)と医薬の利益率
倍率と資本コストの決め方
先に 4 つの事業を数量と価格で 10 年積み、ROE と借金から倍率を決め、最後に今の時価総額と比べた。透析は世界のダイアライザ市場(今 約 5.3 億本)の伸びとシェアで、ほかは出荷数量と単価で置き、売上をそのまま数量にしていない。倍率は正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g) の上限の 7〜9 割で、ROE が資本コスト以下の中立は 1÷k までに抑えた。借金が重く、同じ領域のテルモ・朝日インテックより k を 2.0〜2.5 ポイント高い 9.0% にした。リース会計は 2028/03 期から数字の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.76 倍・やや楽観 PER 10.1→11.88 倍・中立 PER 9.5→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality 1.5%=9.0%。内訳と理由は quality_why。