結論
セルシードは、温度を変えるだけで細胞をシート状に回収する培養技術を持ち、変形性膝関節症向けの再生医療製品を開発する会社だ。筆者の判断は明確な割高である。技術の価値を認めても、治験で有効性を証明し、承認と保険収載を得たうえで量産化するまで、会社は先に赤字を負担し続ける。
2025年の売上は1億円にも届かず、営業損失は約10億円だった。2018年の例外的な黒字を除くと赤字が常態で、営業の利益から研究開発を賄える段階にはない。2026年上期の手元現金は増資で補強されたが、これは稼いで増えた資金ではなく、既存株主の持分を薄めて調達したお金である。
成長の鍵は膝向け他家軟骨細胞シートCLS2901Cにある。第Ⅲ相試験は96例を目標として募集中で、会社は2029年の承認申請と2030年の承認を目指す。一方、競合する自家培養軟骨は既に変形性膝関節症への保険適用を得た。先行する製品、既存の骨切り術だけで済む治療、膝関節置換術との競争も無視できない。
10年後には治療が定着する道もあるが、治験の遅延や不成功、償還水準の制約、資金調達の不利な条件という複数の関門が残る。5筋書きと将来の株式希薄化を織り込んだ現在価値は約14億円で、比較する現行時価総額は約75億円である。株価への期待よりも、治験データと一株当たりの取り分の双方が改善しているかを、長期株主は厳しく見極める必要がある。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって最初の問いは、10年後にこの会社が生き残っているかではない。生き残った会社の利益のうち、今日の株主の手元へ実際に戻る取り分がどれだけあるかである。研究室で優れた技術を持つことと、株主に継続的な利益をもたらすことは同じではない。
セルシードの治療用細胞シートには、承認後に高い利益率へ変わる選択肢がある。患者に明確な効用があり、医師が採用し、同品質のシートを安定供給できれば、単なる研究器材企業とは違う利益を得られるだろう。しかし、その可能性を既存の稼ぐ力として扱えば、治験、薬事審査、製造、販売という未達の工程をすべて成功済みとみなすことになる。
足元のオーナー利益はマイナスである。使う現金の大半は自ら稼いだものではなく、新しく参加する株主から得た資金だ。将来の黒字化に追加投資が必要な会社では、増分のROICやROEが資本コストに届くことを確認するまでは、資金投入額をそのまま企業価値と呼べない。現金残高も、治験のために使う予定がある限り、今すぐ分配できる余剰資産ではない。
優れた培養技術の可能性は残しつつ、治験が成功しない筋書きと、大幅な希薄化の筋書きを重くするのが妥当だ。承認後の黒字を手にする時には、最初の株主が現在と同じ割合の会社を所有していないかもしれない。現在の価格にはこの危険に対する安全域が不足している。
何で稼ぐ会社か
現在の収入を支えているのは再生医療支援事業である。温度応答性培養器材UpCellや周辺の研究用器材を大学、製薬企業、研究機関へ販売し、代理店を通じて海外にも届ける。細胞を酵素で剥がさず、細胞同士のつながりと細胞外の足場を保って回収できる点に技術的な特徴がある。容器は研究の消耗品として繰り返し購入され得るが、市場全体での圧倒的な販売シェアは示されていない。
2025年の再生医療支援事業の売上は約0.82億円だった。主要販売先はThermo Fisher Scientific、フナコシ、NPTであり、上位2社だけで全社売上の約4分の3を占める。会社が箱数と卸単価を開示していないため、公開カタログ価格と代理店売上を照らし、器材の箱換算数量と推定卸単価に分けて考える必要がある。販路の集中は契約の効率を高める反面、一社の在庫調整で売上が大きく動く弱みとなる。
同社は細胞加工施設も持ち、再生医療用の製造受託と開発・品質管理の支援を行う。顧客が自社で細胞加工設備と規制対応人材を揃える手間を減らせることが価値だ。ただし物理的な細胞培養・無菌管理と、書類作成や技術相談は性質が違う。後者は生成AIや自律型ソフトウェアによる工数の削減が進み、従来の人数や作業時間に比例する料金を守りにくい。
細胞シート再生医療事業の中心は、他人の軟骨細胞由来シートを患者へ移植するCLS2901Cである。骨切り術に上乗せすることで膝の機能改善を狙い、現在は承認前の第Ⅲ相治験を進めている。2025年にこの開発品の商業販売件数はゼロであり、医療セグメントの小額の既存売上を承認品の売上と混同してはならない。収益化までの研究開発、人材、品質保証と施設維持が、今の大きな赤字を生んでいる。
優良さと弱いところ
堀、つまり競争相手が簡単にまねできない強みの芽はある。温度応答性の培養表面と細胞シートを回収する手順は、研究室の培養手順や承認用の製造工程に組み込まれれば切り替えが面倒になる。培養器材のFDAマスターファイル登録や、細胞加工施設の許可・品質管理の蓄積も、初めて参入する企業より有利な部分である。しかし、研究用器材の解約率や継続購入率、実際の値上げ実績は開示されておらず、強い価格決定力が確認できたとは言い難い。
承認前の治療製品に独占的な価値を認めるのは早い。臨床試験で骨切り術単独を上回る患者の改善が確認されなければ、製造方法に特許があっても患者と保険者から対価を得る理由にならない。競合するジャパン・ティッシュエンジニアリングの自家培養軟骨ジャックは、既に膝関節症向けの承認と保険収載を得た。細胞の由来や治療経路は異なるが、整形外科医が治療を選ぶときの現実的な比較対象になる。
過去の再投資成果は厳しい。2018年を除き長年の損失が続き、新しい株式による調達資金が研究開発費へ消えてきた。現段階の増分投下資本利益率が資本コストを上回っているとは評価できず、株主は将来の承認に対する先払いを繰り返している。国内の細胞加工設備を保有することも、稼働率の低い間は固定費負担になる。
10年後の強みは、既存特許を持っているかだけでなく、承認後に同じ品質の細胞シートを継続出荷できるか、医療機関の研修と導入を拡大できるか、次世代製品の研究費を販売利益から賄えるかによって決まる。これらは現時点では実証されていない。そこで技術的な可能性と経済的な堀を区別し、後者をまだ弱いものとして評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
再生医療の大きな市場予測を、そのままセルシードの売上機会と見なすべきではない。会社資料が引用する2030年の国内約8500億円、世界約7.5兆円という市場予測は、再生医療と細胞治療全般を含む広い領域の見通しである。膝の細胞シートが取り得る市場は、骨切り術を受ける患者のうち、臨床試験と承認後の適応条件に合い、追加の細胞治療を必要とする人数に絞られる。国内のその手術件数と他家シートの適応率は開示資料から確定できない。
参考として大阪病院の2025年の膝周囲骨切り術79件や、新東京病院の2024年の高位脛骨骨切り術28件など施設別実績を確認したが、全国集計に代わるものではない。中立では2035年の対象になり得る国内の骨切り術を年間約1万件、その約6割が細胞シートの適応候補と仮定する。これは確認済みの全国統計ではなく、手術を行う施設の規模と既存治療の適応を踏まえた試算上の分母である。この約6000件のうち650件が同社製品に置き換わるなら、患者数では1割強の浸透率になる。
競争相手は一社ではない。ジャパン・ティッシュエンジニアリングのジャックは2026年1月から膝関節症に保険適用され、運搬セットと培養軟骨パッケージの償還額は1膝合計289万円である。これはセルシードの承認後の売上単価を保証しない。骨切り術単独、人工膝関節置換術、保存療法、他の軟骨修復法も患者の選択肢であり、適応要件と治療成績によって市場の分母自体が変わる。
研究用器材でも大手培養容器メーカーとの競争が続く。UpCellは一般的なシャーレと用途が異なるが、すべての培養工程で高価な温度応答性器材が必要になるわけではない。Thermo Fisherやフナコシの販売網に依存し、2025年には海外売上が前年から急減した。研究予算の縮小と代理店の在庫調整が短期需要を左右する。製造受託は品質規制が参入障壁となる一方、相談・文書化の部分にはAIエージェントによる代替圧力がある。
資本政策と M&A
最大の資本政策は配当でも買収でもなく、研究開発を続けるための増資である。過去10年には新株による株式数の増加が何度も起きた。2025年末の自己資本は約12.6億円だったが、2026年上期には新株予約権の行使で資金を調達し、期末の純資産が増えた。一方、上期だけでも純損失は約6.1億円であり、手元に現金があることと、それが将来の株主還元に使えることは別である。
2026年3月公表の事業計画は、CLS2901Cの治験を進め、2029年に申請し2030年の承認を目指す工程を示している。第25回新株予約権による調達予定額は約32.6億円で、治験、細胞加工施設、培養器材の開発、管理費などに使う方針である。ただしこれは条件付きの調達見込みであり、確約された手取金ではない。将来の売上高、営業利益、ROEの定量目標と配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額には数字の約束なしと判断する。
2026年9月末には第25回の未行使新株予約権が3万7266個残り、1個100株として最大約373万株に相当する。この分だけでなく、承認まで赤字が続けば別の調達も必要になり得る。既に発行された株式を希薄化に二重計上せず、これから発行される分だけを現在株主の取り分に反映する。
大規模買収で直ちに収益構造が好転するという確かな根拠はなく、台湾の技術提携先との過去の契約を巡る争いもあった。配当や自社株買いによって過去の株主に投下資金が戻った実績は乏しい。10年の株主還元は全筋書きでゼロとし、上位の筋書きでも承認品の製造拡大と追加研究への再投資を優先すると考える。会社が数値で約束していない配当や買戻しは先取りしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
細胞シートの価値は、現時点の器材売上だけでは測れない。UpCellは細胞を傷めにくい回収方法として研究開発で実績を持ち、医療用の同種軟骨細胞シートへ技術を転用できる。製造工程と品質管理の確立には時間がかかり、承認済みの工程を持つ企業は後発の競争相手より有利になる。ジャックが膝関節症で保険適用された事実は、細胞を用いる治療に支払制度ができ始めている証拠ともいえる。
CLS2901Cは患者自身から軟骨を採る自家細胞方式とは異なり、原料をまとめて準備できる他家細胞方式である。適切な保存と供給が実現すれば、手術の準備時間や製造費を引き下げられる可能性がある。骨切り術単独に対する明確な上乗せ効果が証明されれば、既に骨切り術を扱う医療機関の治療メニューに組み込みやすくなる。患者数の多さに頼らず、適応が合う患者の一部に届くだけでも今の器材売上を大きく上回る。
2025年に医療用製品の商業販売はなかったが、2025年10月に第1例が登録され、第Ⅲ相試験が具体的に動き始めた点はそれ以前からの前進だ。2030年前後に承認され、その後に品質のばらつきと配送を克服すれば、国内の年間採用件数が千件を超える道はある。競合製品の償還水準は、承認に成功した場合の販売単価を考える一つの参考になる。
増資は既存株主を薄めるものの、治験と量産設備に投じた資本が大きな売上に変われば最終的には報われる。海外の研究用培養器材も研究投資の回復に伴って売上が戻る余地がある。長い開発の果てに製造・販売の基盤を作れれば、いま利益が出ていないことだけでその可能性を否定すべきではない。
慎重な見方
最初に見なければならないのは、技術ではなく失敗したときの資金の出口である。2025年の年間売上が1億円に満たない会社で、研究開発を含む損失が10億円を超えている。2026年も赤字予想が続き、事業だけでは現金を補充できない。治験が予定通り進んだとしても、その間の給与、施設、規制対応は毎年支払わなければならない。
開発品の価値を実現するには複数の難関を続けて越える必要がある。96例の組み入れと追跡を終え、骨切り術単独に対する有効性を示し、当局の承認を得て、採算の合う保険償還を受け、製造上の不具合なく病院へ届けなければならない。各段階での失敗は、単に売上が1年遅れるだけではなく、追加の試験費用と資金調達を必要にする。
しかも市場の分母を膝関節症の全患者とすることはできない。臨床上の対象は骨切り術を受ける患者の一部であり、既にジャックという承認品が存在する。標準治療に十分な効果があれば高い費用の追加治療を選ばない患者もいる。販売が数百例で頭打ちになれば、量産設備と販売体制の固定費を十分に回収できない。
研究用の培養器材も防波堤になりにくい。2025年の海外売上は前年から大きく落ち、代理店上位2社への依存度が高い。製造受託の手作業は残っても、相談と文書作成の工数はAIエージェントで減る。小さな支援事業が治験失敗時の医療事業の損失を埋める力はまだない。
最後に、黒字化した会社の株価と現在株主が受け取る価値は別物である。新株予約権の残存分と将来の別途増資が重なれば、会社全体の価値が増えても古い株主の取り分は小さくなる。大幅な追加資本を必要とする事業に、安全域なしで投資する理由は乏しい。
どちらに重みを置いたか
技術の将来性は否定しないが、現在の売上規模、臨床試験の進度、競合の保険収載、繰り返された希薄化を考えると、慎重な見方に分がある。確率は楽観側23%に対し、やや悲観と悲観の合計を50%とし、中立を27%とした。下側への偏りはAIだけを理由にしたものではない。承認・製造・償還の複合リスクと、それ以前に資金を調達しなければならない構造が理由である。企業が成功する確率だけでなく、成功時に現在株主が持つ割合を分けて評価した結果、現行の時価総額には十分な安全域がない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 92 円36 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 35 円14 億円、今との差 −81.0%、 期待の年率 −6.6%(資本コスト 10.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 696 円274 億円 | 0 円0 億円 | +280.2% | +14.3% | 56 円22 億円 |
| やや楽観 | 15% | 204 円80 億円 | 0 円0 億円 | +11.7% | +1.1% | 31 円12 億円 |
| 中立 | 27% | 19 円8 億円 | 0 円0 億円 | −89.5% | −20.1% | 5 円2 億円 |
| やや悲観 | 32% | 2 円1 億円 | 0 円0 億円 | −99.1% | −37.5% | 1 円0 億円 |
| 悲観 | 18% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.9% | −49.6% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 92 円36 億円 | 0 円0 億円 | −49.7% | −6.6% | 92 円36 億円 |
今の株価時価総額 183 円72 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 承認と量産に成功し、他家細胞の採用が広がる 利益 39 億円 · PER 9.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 696 円274 億円
CLS2901Cの治験が骨切り術単独より優れた患者の機能改善を示し、当局の承認と償還決定が順調に進む。細胞シートをまとめて製造する同種細胞の利点が実証され、品質と配送の問題も抑えられる。整形外科医の支持が広がり、2035年には骨切り術の対象患者1万3000例のうち適応が約7割に拡大した市場で5000例を供給する。これは適応候補の5割強を占める非常に強いシェア獲得であり、競合ジャックや骨切り術のみの治療に対する明白な優位が必要だ。
細胞シートの販売単価は供給量が増えても競合する承認品に近い水準を守り、医療事業が会社全体の利益を牽引する。UpCellも研究投資の回復で数量が増え、細胞加工の物理的な受託は許可施設の稼働率を高める。ただしAIによって置き換えられる技術相談の件数を増やすことは期待せず、本業の成功で成長する姿を描く。
承認前の研究開発と製造設備の増強にはさらに資金が必要だが、商業化後は営業利益から再投資を賄える。将来の新株発行があっても、開発品の大型化が旧株主の持分低下を上回り、10年後の会社価値が最大になる。
- UpCell・研究用温度応答性培養器材:数量 14,000(販売された培養器材の箱換算数量(箱相当・推定))× 価格 0.00(箱換算の会社受取平均単価(億円/箱相当、卸売・製品構成を含む))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。世界研究機関の採用増・卸価格上昇。箱換算4倍は仮定。
- 細胞加工・製造受託の実作業:数量 25.0(年当たり製造受託案件換算数(件相当・推定))× 価格 0.12(案件換算の平均受取額(億円/案件))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。施設の受託稼働率上昇による物理製造案件。
- 培養技術相談・規制文書支援:数量 2.0(年当たり技術相談案件換算数(件相当・推定))× 価格 0.04(案件換算の平均受取額(億円/案件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替があるため楽観でも案件数は現行換算を超えない。
- CLS2901C・変形性膝関節症用細胞シート:数量 5,000(年間商業提供患者数(人=1膝当たり提供件数))× 価格 0.03(1治療あたり会社受取額(億円/人、未承認のため仮説))→ 売上 140 億円・営業利益 53 億円。骨切り適応市場約9100例の約55%、1人280万円の会社受取。
- 医療開発関連の少額売上・ライセンス:数量 4.0(研究・ライセンス案件換算件数(件相当・推定))× 価格 0.20(案件換算の会社受取額(億円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。海外共同開発による小規模な追加収入を含む。
倍率:2035年ROE=39.24÷132.64=29.58%、k=10.25%、弱い堀の超過収益残存率3分の1でRONIC=16.69%。2035年以降のg=−1.0%なので、正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)=約9.42倍。利益39.24億円と9.42倍の積が時価総額であり、今の市場PERは参照しない。自己資本の道筋はFY2025末12.6億円+2026~2035年の仮定純利益累計95.04億円+期間中の新株払込25億円−株主還元ゼロ=132.64億円。純利益の年次仮定は2026年から順に−13.2、−11、−7、−3、3、11、18、26、32、39.24億円。払込合計は2026年上期の既実行分を含むため、株数への希薄化には重複計上しない。
確率:第Ⅲ相の成功、2030年前後の承認、臨床上の優位、競合以上の価格・量産体制が連続して達成されるという上振れ。類似の承認済み製品の存在だけでは成功は保証できず、最上位の確率は8%にとどめる。
やや楽観 15% 承認後に国内で専門治療として定着 利益 15 億円 · PER 9.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 204 円80 億円
第Ⅲ相試験の結果が薬事上の要件を満たし、2030年代初めに製品が保険診療に入る。ジャックなど競合製品と使い分けが進み、セルシードは骨切り術を行う専門病院へ販路を築く。ただし全国一律の標準治療にはならず、2035年の国内対象手術約1万1000件のうち適応約65%という市場で2400例を獲得する。適応候補のおよそ3分の1を占め、強い導入実績は得るが競争は続く。
採算改善の主体は医療用細胞シートである。製造歩留まりは向上するものの、細胞加工に伴う品質管理費用と治験後の追加研究を継続して負担する。UpCellは海外の研究需要が一部戻り、受託製造にも新規案件が増える。技術相談の人月収入はAIによる効率化で縮み、物価分の値上げを十分には転嫁できない。
承認に達するまでの赤字を賄うため、新株予約権の行使と追加公募などで大きな資本を受け入れる。商業化後に黒字を確保しても、増えた発行株式の分だけ旧株主の権利は薄くなる。会社は成功したといえるが、株主の利益は承認の知らせだけでは決まらない。
- UpCell・研究用温度応答性培養器材:数量 9,000(販売された培養器材の箱換算数量(箱相当・推定))× 価格 0.00(箱換算の会社受取平均単価(億円/箱相当、卸売・製品構成を含む))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。箱数増と卸価格の引き上げで売上拡大。
- 細胞加工・製造受託の実作業:数量 16.0(年当たり製造受託案件換算数(件相当・推定))× 価格 0.10(案件換算の平均受取額(億円/案件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。国内細胞加工施設の稼働率が上がる。
- 培養技術相談・規制文書支援:数量 1.7(年当たり技術相談案件換算数(件相当・推定))× 価格 0.03(案件換算の平均受取額(億円/案件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AI代替下で作業件数は2025年換算の85%。
- CLS2901C・変形性膝関節症用細胞シート:数量 2,400(年間商業提供患者数(人=1膝当たり提供件数))× 価格 0.03(1治療あたり会社受取額(億円/人、未承認のため仮説))→ 売上 62 億円・営業利益 22 億円。適応候補約7150例の34%程度、単価260万円。
- 医療開発関連の少額売上・ライセンス:数量 2.0(研究・ライセンス案件換算件数(件相当・推定))× 価格 0.15(案件換算の会社受取額(億円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。開発関連の外部契約を追加獲得。
倍率:2035年ROE=14.65÷56.05=26.14%、k10.25%、弱い堀の超過収益残存率3分の1によりRONIC15.55%。長期gは−1.0%、正当化PER=約9.46倍が上限でありそのまま採用。自己資本の道筋はFY2025末12.6億円+2026~2035年の仮定純利益累計−6.55億円+期間中の新株払込50億円−株主還元ゼロ=56.05億円。純利益の年次仮定は2026年から順に−13.2、−13、−10、−7、−3、1、4、8、12、14.65億円。払込合計は2026年上期の既実行分を含み、株数への希薄化には重複計上しない。
確率:治験が成立し承認を得た後でも、普及施設数と医師教育、製造歩留まりに時間がかかる。実用化には成功するが業界を独占しない道として15%を配分する。
中立 27% 承認は実現するが採用は限定的 利益 2 億円 · PER 8.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 19 円8 億円
2030年前後の計画は何度か遅れながらも最終的に承認へ到達する。しかし承認後の償還額は先行品より抑えられ、同種細胞方式の製造利点も導入費用の低さとして直ちに医師へ伝わらない。骨切り術だけでも改善する患者と、既にジャックや別の治療法を扱う医療機関があるため、販売の立ち上がりは緩やかになる。2035年には推定年1万件の骨切り術中、追加細胞治療が適する約6000人のうち650人に提供する。
細胞シートは会社の最大の事業になるが、年間売上約15億円にとどまり、多額の管理費と追加研究を吸収してようやく利益を生む。海外研究用器材は売上の縮小から持ち直し、細胞製造受託も複数案件が定常化する。技術相談ではAIエージェントが文書作成や調査を代替し、案件換算数量が現状の65%まで減り、価格は物価以下の上昇にとどまる。
会社全体として10年後に小幅黒字化するが、それまでの多額の純損失は新株の発行で賄われる。株主還元を開始する余裕はなく、既存株主の権利は現在の半分未満となる。事業の存続と治療技術の成功はあっても、初めから出資した株主には厳しい投資結果となる。
- UpCell・研究用温度応答性培養器材:数量 7,000(販売された培養器材の箱換算数量(箱相当・推定))× 価格 0.00(箱換算の会社受取平均単価(億円/箱相当、卸売・製品構成を含む))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。2025年換算箱数の2倍、単価は名目1.34倍。
- 細胞加工・製造受託の実作業:数量 8.0(年当たり製造受託案件換算数(件相当・推定))× 価格 0.08(案件換算の平均受取額(億円/案件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。細胞の現場培養案件は増えるが品質費用が残る。
- 培養技術相談・規制文書支援:数量 1.3(年当たり技術相談案件換算数(件相当・推定))× 価格 0.03(案件換算の平均受取額(億円/案件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月型:数量0.65倍・価格1.12倍。
- CLS2901C・変形性膝関節症用細胞シート:数量 650(年間商業提供患者数(人=1膝当たり提供件数))× 価格 0.02(1治療あたり会社受取額(億円/人、未承認のため仮説))→ 売上 15 億円・営業利益 5 億円。骨切り術約1万例×適応60%の市場で約11%浸透、償還抑制で会社受取230万円。
- 医療開発関連の少額売上・ライセンス:数量 1.0(研究・ライセンス案件換算件数(件相当・推定))× 価格 0.10(案件換算の会社受取額(億円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。国内の細胞治療開発関連の小規模収入のみ。
倍率:2035年ROE=1.94÷25.54=7.60%はk10.25%を下回る。2035年以降の名目成長g_long−1%では低ROE事業のPER上限は1÷(k−g)=8.8889倍となるため8.89倍。貯まった自己資本を全額額面で高く評価せず、営業から得られる純利益を基準にする。自己資本の道筋はFY2025末12.6億円+2026~2035年の仮定純利益累計−57.06億円+期間中の新株払込70億円−株主還元ゼロ=25.54億円。純利益の年次仮定は2026年から順に−13.2、−13.5、−11、−9、−7、−5、−2、0.5、1.2、1.94億円。払込合計は2026年上期の既実行分を含み、株数への希薄化には重複計上しない。
確率:下に寄せる理由:承認できても骨切り術という限られた分母で販売網を育てる必要があり、ジャックや既存手術との競争、治験までの資金流出が続く。中立を遅い黒字化と大きな希薄化の27%とし、楽観側23%より下側50%を厚くする。
やや悲観 32% 治験が不発に終わり、事業を縮小 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2 円1 億円
第Ⅲ相試験の主要評価項目が期待を満たさない、あるいは追加試験を要求され、CLS2901Cの商業化を中止または長期凍結する。承認を目指す計画自体は残っても、2035年に治療用製品の販売は生まれない。既に保険収載されたジャックや骨切り術のみの治療が患者と医師に使われ、同社は軟骨治療市場で実質的なシェアを獲得できない。
研究支援事業は存続するが、海外の大学・企業の研究予算が以前のようには戻らない。UpCellの販売箱数は2025年の水準からわずかに増えるだけで、卸価格は物価の上昇ほどには上がらない。細胞製造の受託は少人数の専門業務として残り、文書作成や相談はAIエージェントの自動化に押されて減る。販管費を削っても、開発をやめた後の施設費と清算費用が残る。
損失補填のための増資で会社の帳簿資本は保たれても、事業の稼ぐ力はない。新株が大量に増え、現株主の持分は4分の1程度へ落ち込む。年末時点に売却可能な現金等は撤退費用を差し引くとわずかで、会社が存続しても価値は残余資産にほぼ限られる。
- UpCell・研究用温度応答性培養器材:数量 4,300(販売された培養器材の箱換算数量(箱相当・推定))× 価格 0.00(箱換算の会社受取平均単価(億円/箱相当、卸売・製品構成を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。値引き競争、輸出の低迷。
- 細胞加工・製造受託の実作業:数量 5.0(年当たり製造受託案件換算数(件相当・推定))× 価格 0.08(案件換算の平均受取額(億円/案件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。小さな受託だけ残る。
- 培養技術相談・規制文書支援:数量 0.8(年当たり技術相談案件換算数(件相当・推定))× 価格 0.03(案件換算の平均受取額(億円/案件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で相談役務は現状の4割に減る。
- CLS2901C・変形性膝関節症用細胞シート:数量 0.0(年間商業提供患者数(人=1膝当たり提供件数))× 価格 0.02(1治療あたり会社受取額(億円/人、未承認のため仮説))→ 売上 0 億円・営業利益 −2 億円。治験失敗による販売ゼロでも撤退・施設の費用が残る。
- 医療開発関連の少額売上・ライセンス:数量 1.0(研究・ライセンス案件換算件数(件相当・推定))× 価格 0.03(案件換算の会社受取額(億円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。開発関連の少額収入のみ。
倍率:継続赤字で純利益ベースの正当化PERは正の株主価値を生まないため、FY2025時点の自己資本12.6億円を分母とする残余資産の評価を使う。将来の清算可能資産は撤退後の現金・売却資産約3.4億円から閉鎖・退職・債権優先費用約0.88億円を差し引いた2.52億円の保守見積もり。PBR0.2倍はその残余の現在帳簿との比であり、市場の谷のPBRではない。自己資本の道筋はFY2025末12.6億円+2026~2035年の仮定純利益累計−78.9億円+期間中の新株払込78.9億円−株主還元ゼロ=12.6億円。年次純利益は2026年から−13.2、−12、−10、−9、−8、−7、−6、−5、−4.5、−4.2億円と想定し、払込には2026年上期の既実行分を含む。
確率:下に寄せる理由:臨床上の上乗せ効果が小さい、承認に時間がかかる、製造費が償還額を下回らないといういずれかで商業化が停止する可能性がある。赤字実績と追加資本依存が強く、やや悲観に最大の32%を配分する。
悲観 18% 開発撤退と繰り返す救済増資で残余だけになる 利益 −9 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円0 億円
CLS2901Cの第Ⅲ相試験が目標を満たさず、外部パートナーの獲得にも失敗する。会社は開発品の承認申請を断念し、品質管理に関わる設備と人員を縮小する。治療用細胞シートの提供件数は2035年までゼロとなり、膝関節症向けの市場シェアは得られない。ジャックや既存手術が通常の選択肢として定着する。
UpCellも他の培養方法や安価な研究器材への置き換えが進み、箱換算の数量は2025年の6割程度になる。顧客は大手代理店に集中したまま、研究資金の減少で卸価格の引き上げは難しい。専門施設の製造受託は限られた案件しか残らず、技術相談ではAIエージェントが規制文書や工程比較の多くを自動化する。たとえ固定費を削減しても、施設整理と訴訟対応などの費用が続く。
資金調達が困難になるたびに極めて低い株価で新しい出資者を迎えるか、事業の大幅縮小を迫られる。帳簿上は資本注入で債務超過を避けたとしても、換金可能な資産から閉鎖費用などを引いた株主の残余は小さい。今日の株主は新株の発行によって持分を1割強まで失う。倒産・清算そのものを確定事項とはせず、普通株式に小さな正の残余価値がある最悪に近い筋書きである。
- UpCell・研究用温度応答性培養器材:数量 2,200(販売された培養器材の箱換算数量(箱相当・推定))× 価格 0.00(箱換算の会社受取平均単価(億円/箱相当、卸売・製品構成を含む))→ 売上 0 億円・営業利益 −1 億円。代替器材への切り替えで数量と採算が悪化する。
- 細胞加工・製造受託の実作業:数量 1.0(年当たり製造受託案件換算数(件相当・推定))× 価格 0.05(案件換算の平均受取額(億円/案件))→ 売上 0 億円・営業利益 −1 億円。専門加工の売上がほぼ消える。
- 培養技術相談・規制文書支援:数量 0.4(年当たり技術相談案件換算数(件相当・推定))× 価格 0.03(案件換算の平均受取額(億円/案件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で案件換算は現状の2割。
- CLS2901C・変形性膝関節症用細胞シート:数量 0.0(年間商業提供患者数(人=1膝当たり提供件数))× 価格 0.02(1治療あたり会社受取額(億円/人、未承認のため仮説))→ 売上 0 億円・営業利益 −5 億円。開発断念に伴う既存試験・契約の整理費用が残る。
- 医療開発関連の少額売上・ライセンス:数量 0.0(研究・ライセンス案件換算件数(件相当・推定))× 価格 0.02(案件換算の会社受取額(億円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。共同開発契約収入が途絶える。
倍率:10年後に営業の純利益が大幅なマイナスであるため、永続利益の倍率は使わない。FY2025の自己資本12.6億円を基準とし、2035年末の残存可能な現金・設備等約1.20億円から契約終了と優先債務の負担約0.57億円を引いた0.63億円を普通株の価値とする。PBR0.05はこの残余資産額を起点自己資本で割った値であり市場の過去の倍率は使わない。自己資本の道筋はFY2025末12.6億円+2026~2035年の仮定純利益累計−107.2億円+期間中の新株払込107.2億円−株主還元ゼロ=12.6億円。純利益は2026年から−13.2、−13.5、−13、−12、−11、−10、−9、−8.5、−8.5、−8.5億円と想定する。払込には2026年上期の既実行分を含む。
確率:下に寄せる理由:不十分な治験結果に加え、培養器材の競争力低下と調達環境の悪化が重なるケースである。長期にわたる赤字と複数回の希薄化実績を踏まえ、既存株主がほぼ価値を失うケースを18%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
UpCell・研究用温度応答性培養器材
研究機関と製薬企業向けの温度応答性培養容器。既存開示では再生医療支援事業に含まれる。
| 数量販売された培養器材の箱換算数量(箱相当・推定) | 価格箱換算の会社受取平均単価(億円/箱相当、卸売・製品構成を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,500 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 7,000 | 0.00 | 2 | 0 |
取り方:2025年有報の再生医療支援売上0.81803億円、Thermo Fisher向け0.32739億円とフナコシ向け0.30396億円を基礎とした。2023年の会社製品カタログではUpCell5枚箱11,000円、20枚箱39,000円などの税抜定価を確認できるが、実際の箱別出荷・代理店卸単価は未開示。製品構成と流通値引きを含む会社受取額を1箱相当18,500円、年間3500箱と仮定し0.6475億円とした。箱数は実測でない。2025年の支援事業内営業損失1.04789億円を工場費・開発費で3分割したうちの推定配賦である。研究器材は物理製品でありAIエージェントに直接は代替されない。
細胞加工・製造受託の実作業
細胞加工施設と品質管理を利用する製造受託。規制対象の培養と試験を人手と施設で実行する。
| 数量年当たり製造受託案件換算数(件相当・推定) | 価格案件換算の平均受取額(億円/案件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.0 | 0.06 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 0.08 | 1 | 0 |
取り方:2025年の主要販売先NPT向け0.13964億円とその他の非器材収入約0.03億円を、製造の実作業0.115億円と文書・技術相談約0.05553億円に仮に区分した。案件2件、1件575万円は分解用の案件換算であり、実際の契約件数・単価ではない。細胞加工は許可と現場設備が必要なのでAIエージェントによる全面代替の型に当たらない。損益は支援事業のセグメント赤字を推定配賦した値。
培養技術相談・規制文書支援
培養条件の助言、文書化、開発支援など工数に近い役務。支援事業の内数として推定分割した。
| 数量年当たり技術相談案件換算数(件相当・推定) | 価格案件換算の平均受取額(億円/案件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.0 | 0.03 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 0.03 | 0 | 0 |
取り方:再生医療支援事業0.81803億円から器材0.64750億円と現場受託0.11500億円を除いた0.05553億円を、規制文書・技術相談の仮想的な内数とした。会社は該当事業だけの売上・工数を開示していないため案件換算2件・1件277.65万円と損益配賦は未検証の仮定である。AIエージェント代替の型は『人月・工数で売る役務』とし、中立の数量は2→1.3件相当(0.65倍)、価格0.027765→0.0311億円(1.12倍)で指定範囲内にとどめる。独自DBの正本等の堀の証拠2件は確認できず、正本型に分類しない。
CLS2901C・変形性膝関節症用細胞シート
他家軟骨細胞シートを骨切り術に併用する治療用製品。第Ⅲ相治験段階で商業販売は未開始。
| 数量年間商業提供患者数(人=1膝当たり提供件数) | 価格1治療あたり会社受取額(億円/人、未承認のため仮説) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.02 | 0 | −7 |
| 10 年後 中立 | 650 | 0.02 | 15 | 5 |
取り方:会社有報2025年の細胞シート再生医療事業の売上は0.01875億円だが、CLS2901Cは治験中で商業製造・販売件数はゼロ。既存少額売上は別のlicense行へ置いた。会社の承認後単価は未公表なので、競合J-TECジャックの膝関節症向け2026年1月の保険償還合計289万円を参照し、供給形態・流通取り分・償還差を考慮した仮の会社受取240万円を将来製品の基準単価とした。289万円は競合の償還価格でありセルシードの販売価格ではない。2035年中立はHTO骨切り術の年1万例×適応仮定60%×採用率約11%=650例、会社受取単価230万円を予測する。大阪病院2025年79件と新東京病院2024年28件など施設別実績はあるが全国施設母数は不明であり、国内HTO件数・適応比率・企業シェアは未確認の仮定である。
医療開発関連の少額売上・ライセンス
未承認開発品の製品売上と区別される小口の医療研究・開発収入の案件換算。
| 数量研究・ライセンス案件換算件数(件相当・推定) | 価格案件換算の会社受取額(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 0.02 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.10 | 0 | 0 |
取り方:2025年有価証券報告書で公表された細胞シート再生医療事業の売上0.01875億円を、承認前CLS2901C製品ゼロと区分するため一件換算のその他開発関連収入として置く。会社は内訳と実際の案件数を十分に明示しておらず、『一件』は単位を作るための仮置きである。損失7.22979億円は開発品cartに集約したため、当行に営業利益を二重配賦しない。
リスクと懸念
第Ⅲ相試験の不成功と承認遅延
CLS2901Cは他家軟骨細胞シートであり、骨切り術単独と比較した患者機能の改善を臨床的に示さなければならない。第Ⅲ相の目標症例数は96例で、登録や52週評価の遅れは追加の研究費を発生させる。承認を見込んだ先行設備投資は、試験不成功時には回収できない。
追加増資と新株予約権による希薄化
売上に比べ営業損失が非常に大きい。第25回新株予約権の未行使分だけで2026年9月末に約373万株分の潜在株式があり、今後の追加募集もあり得る。払込が低い価格で行われれば企業へ現金が入っても既存株主の持分は大きく低下するため、会社全体の時価総額と旧株主の回収は分けて考える。
骨切り術の限定市場と競合する承認品
膝関節症の患者全員にCLS2901Cを投与できるわけではない。実際の対象は骨切り術に細胞治療を上乗せする臨床条件を満たす患者の一部である。先行するジャックは2026年から変形性膝関節症の保険適用を得ており、費用対効果が不明瞭なら標準術式の単独治療を選ぶ医療機関も多い。
研究用器材の販路集中と価格競争
2025年の主要販売先はThermo Fisherとフナコシで売上の7割超を占めた。研究用培養器材は消耗品としてリピートが期待できても、大学予算や海外販売代理店の在庫方針によって数量が急減する。温度応答性という技術的差別化が、卸価格の引き上げやシェア拡大を保証するわけではない。
AIエージェント代替
細胞を培養し無菌試験を行う現場の作業はAIエージェントだけでは代替されない。一方、細胞加工の受託に付随する手順書作成、規制文書の草案、技術調査、顧客向けの作業助言は自動化により必要工数が減りやすい。この範囲は人月・工数型として中立の案件数を10年で約65%に縮めており、架空のAI新規売上は見込まない。
製造品質・細胞材料と原価
他家細胞シートの商業製造には、細胞ソースの安全性、一貫した細胞培養、品質試験、温度管理輸送を組み合わせる必要がある。治験で有効でも販売ロットの廃棄率が高ければ採算は出ない。物価の上昇で人件費や消耗品、施設の更新費が増える一方、保険償還は自由に値上げできないため、製造利回りが業績を決める。
提携契約と知的財産の不確実性
過去に台湾での事業化を目指したMetaTech APとの提携関係で紛争が生じた。権利許諾や共同研究の終了によって、海外展開の期待が事後的に損なわれ得る。国内での特許や施設の許可も、承認済みの治療効果や独占利益の証明ではなく、競合の別方式を排除できるとは限らない。
今後の分かれ目
- 第Ⅲ相の登録完了時期と52週の主要評価項目が計画通り確定し、骨切り術単独に対する臨床的優位を示したら
- 承認到達の確率を上げ、やや楽観・楽観への配分を増やす。単に登録が進んだという発表だけでは有効性の証明とみなさず、主要評価項目の統計と臨床的な差を確認する。
- 規制当局の承認後に実際の診療報酬・製品償還額と医療機関ごとの導入件数が公表されたら
- CLS2901Cの想定単価と患者数の推定を、実測できる数量と会社受取額へ置き換える。競合ジャックの償還額289万円を自社の販売単価と取り違えない。
- 2027年以降も年間損失が10億円前後のまま推移し、新株発行が加速したら
- 中立の黒字化までの累積損失と希薄化率を引き下げ方向へ更新し、会社の資金残高だけではなく現在の普通株主の持分が何%残るかを追う。
- UpCellの輸出売上と代理店経由の発注数が持続的に回復し、会社受取単価も上がったら
- 培養器材の数量と利益率の前提を上方修正する。単発の代理店補充と最終研究機関の継続需要は区別し、値決め力の判断には複数期の確認を求める。
- 細胞加工の製造受託に大型の確定契約と量産歩留まりの開示が出たら
- 物理的な受託製造の売上と稼働利益率を引き上げる。AIエージェントによる技術相談の工数縮小とは分けて扱い、製造許可の保有だけで高収益と判断しない。
- 治験を打ち切り、研究施設の閉鎖や事業売却を正式決定したら
- 悲観側の将来純現金、契約解約費用、設備の売却可能額を原資料から再計算する。現在の現金残高全額を10年後の資産の床に残す前提は採用しない。
- 正式な継続企業の前提に関する注記、TOB、MBOまたは上場廃止予定の開示が出たら
- この通常の継続企業評価を一旦取りやめ、注記の存続シナリオまたは提示された買付対価と旧株主の回収条件を優先して見直す。
見ておくもの
- jRCT2033230587の症例登録進捗、目標96例到達、52週KOOS4主要評価項目の結果
- CLS2901CのPMDA承認申請日、追加試験要求、承認・保険償還決定
- 骨切り術実施施設数、適応患者数、導入施設数、医療用シートの年間供給症例数
- ジャパン・ティッシュエンジニアリングのジャックの保険算定実績と償還改定
- UpCellの研究用器材の出荷箱数、実効卸売単価、Thermo Fisher・フナコシ経由の売上
- 再生医療支援事業の製造受託案件数、培養の歩留まり、規制文書支援の工数
- 四半期の営業キャッシュフロー、現預金、研究開発費、固定設備の更新費用
- 第25回新株予約権の未行使残、行使価格、発行済株式数と追加の募集計画
- 2026年3月のVISION2030に対する申請・承認スケジュール変更と定量還元方針の有無
倍率と資本コストの決め方
2026年10月22日基準の時価総額75.49億円はすべての営業数量・価格・利益率・割引率・希薄化率を決めた後で初めて比較した。2025年のセグメント売上は有報に一致させ、内訳の箱数・案件数は開示ではなく価格表と顧客別売上からの仮定であることを明示した。治療用製品の現在数量はゼロとし、競合ジャックの289万円は自社売価としない。PERはROEとk・長期g・堀の残存率の式で決め、赤字の悲観側は将来の換金可能資産から値付けした。予想価値約13.65億円と現行価格の差は約マイナス81.9%であり、期待と逆方向でも倍率や確率を現在値へ寄せ直していない。
資本コスト 10.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 2.5%。基本7.5%に事業の質+0.25%、継続損失に伴う資金繰りの追加コスト+2.5%を加えた10.25%。個別の治験不成功や増資による持分低下は数量・収益・確率とholder_share側で別に捉え、割引率へ重ねて加算しない。
同じ業種(精密機器)の AI 分析
読んだ資料
- セルシード 2025年12月期 有価証券報告書(事業別損益・主要顧客・リスク)
- セルシード 2026年12月期中間決算短信(継続企業注記・現金・研究開発状況)
- セルシード 事業計画及び成長可能性に関する事項(2026年3月31日)
- 厚生労働省jRCT CLS2901C第Ⅲ相治験 jRCT2033230587
- ジャパン・ティッシュエンジニアリング 自家培養軟骨ジャックの変形性膝関節症適応・保険償還
- セルシード UpCell等製品価格表(2023年4月1日)
- セルシード 第25回新株予約権2026年9月行使状況(2026年10月1日開示)
- 大阪病院 2025年膝周囲骨切り術など手術実績(HTO数量推定の参考施設)
- 新東京病院 高位脛骨骨切り術の手術実績(参考施設)