株譜
AI 銘柄分析 · 精密機器 · 試作

日機装 6376

LNG 向けの極低温ポンプと透析装置を持つ堅実な会社だが、稼ぐ力は資本コストをわずかに上回る程度で、今の値段には安全域がない

適正
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)2,804 円1,838 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)3,040 円1,993 億円差 −7.8%
10 年後から見ると 適正 価値 2,804 円1,838 億円 · 差 −7.8% · 期待の年率 +6.1%
期待の年率リターン(10 年)+6.1%資本コスト比 −1.6 pt
推定の資本コスト7.8%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 7.8% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

日機装は、LNG や産業ガスを運ぶ極低温ポンプ、旅客機の逆噴射装置の部品、血液透析の装置と消耗品を手がける会社だ。売上の 5 割強が産業向け、4 割弱が透析、残りが航空宇宙である。筆者の結論は、今の値段は割高。事業の質は悪くないが、稼ぐ力が資本コストを少し上回る程度で、高い値段を払う安全域がない。

強みははっきりしている。極低温ポンプは世界でも上位の専門メーカーで、LNG の増設が当面の追い風になる。透析装置は国内で半分を超えるシェアを持ち、装置を入れた病院からは消耗品と保守が続く。2026 年の営業利益は前年より 3 割ほど伸びる見通しで、足元の勢いもある。

弱みは利益率の低さだ。営業利益率は過去 10 年で 2% から 19% まで大きく動き、2023〜24 年は 3% 台に沈んだ。19% の年は子会社の売却益が混じっており、稼ぐ力ではない。会社の中期計画でも 2028 年の営業利益率は 8% 台にとどまる。事業の整理と値上げで改善途上だが、道半ばだ。国内の透析患者は減り、中国勢との競争も強まる。

10 年で見ると、中立の純利益は今の 1.5 倍強に伸びる。ただ資本の回転が遅く、ROE は 8% 前後にとどまる。資本コストと同じ水準の会社には、純資産の 1 倍を少し超える値段までしか払えない。強気の筋書きが実現すれば今の値段を上回るが、その確率は 1 割ほどと見る。

バリュー投資の観点から

バリュー投資の観点では、日機装は「良い事業を持つが、良い値段ではない会社」だ。極低温ポンプと透析の設置基盤は、10 年後も存在し、今より強いと言える。しかし、株主の手元に残るオーナー利益を考えると、営業利益率が 1 割に届かない事業に、成長のための資金を毎年のみ込まれている。

資本の使い方では、事業の整理が進んだことは評価できる。ただ、今後の 3 年は成長投資を最大 430 億円に増やし、買収も視野に入れる。ROE が資本コストを少し上回る程度の会社が、投資を増やして利益率を上げられるかは、まだ証明されていない。

安全域は薄い。中立の筋書きでも、10 年後の価値は今の値段に届かない。強気の筋書きでは超えるが、それは LNG の増設、航空機の増産、米国の透析参入の三つが同時に当たる場合だ。バリュー投資家は、こうした重ね合わせに期待して値段を払うことをしない。

何で稼ぐ会社か

日機装の事業は三つに分かれる。

インダストリアルは売上の半分強を占める柱だ。中身は主に極低温ポンプと、それを組み込む設備である。マイナス 160 度前後の LNG(液化天然ガス)や液体窒素、液体酸素を送り出すポンプで、米国の CE&IG グループ(2017 年に買収した Cryogenic Industries が母体)は LNG の液化装置、空気分離、CO2 回収のプラントまで手がける。ほかに電力・工場向けの産業用ポンプと、積層セラミックコンデンサー(MLCC)向けの温水ラミネータなど精密機器がある。

メディカルは血液透析の装置、ダイアライザー(血液を浄化する膜の部品)、血液回路、粉末の透析剤、保守までを一貫して売る。装置を病院に置けば消耗品と保守が続くので、収益は安定する。売上の 6 割強が日本で、欧州と中国が続く。2026 年 1 月からは米国での販売も始めた。

航空宇宙は炭素繊維複合材(CFRP)の成形部品を作る。中心は旅客機のエンジン周りにある逆噴射装置の部品(カスケード)で、宮崎とベトナムの工場で生産する。売上は 200 億円弱と小さいが、航空機メーカーの受注残は約 10 年分あり、増産を求められている。

会社は 2022 年にポンプの海外子会社 LEWA と Geveke を売り、2025 年までに急性期透析(CRRT)や深紫外 LED を整理した。買った事業を磨き、合わない事業は手放す。そうして形を整えてきた会社だ。

優良さと弱いところ

堀は事業ごとに濃さが違う。いちばん濃いのは極低温ポンプだ。マイナス 160 度で壊れずに回り続けることが求められ、実績のあるメーカーしか選ばれにくい。透析装置も、装置の設置台数がそのまま消耗品と保守の売上になるので、乗り換えにくい。

一方で、堀が利益率に十分出ていない。営業利益率は 2025 年で 7% 台。ポンプは案件ごとの採算に差があり、汎用の産業用ポンプは価格で競る世界だ。透析も、日本では公定の価格が下がり、中国では地場メーカーが追い上げる。値決めの力は強いとも弱いとも言えない。

資本効率は平凡だ。2025 年の ROE は 9% だが、売却益の影響が残る。会社の計画でも 2028 年に 9% 以上で、資本コストを大きく上回る姿は描いていない。買収でできたのれんなどが約 390 億円あり、計画が外れれば減損の火種になる。

経営面では、2025 年 2 月に一部のポンプの出荷前検査をしていなかったことが明らかになった。製品の安全性に影響は確認されていないが、信頼の回復には時間がかかる。会社自身が品質とガバナンスの再点検を課題に挙げている。筆者は、まずここを直せるかが次の 10 年の出発点だと見る。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

産業向けの追い風はエネルギーだ。米国の LNG 輸出と、欧州・アジアの受け入れ基地の増設が続いており、会社も案件が活発だと認めている。一方、水素・アンモニアは地域ごとに進み方が違い、投資の優先は既存の LNG に戻りつつある。CO2 回収は伸びる見通しだが、案件は大型で時期がずれやすい。産業ガスは各国の経済成長に連動し、ゆるやかに伸びる。

ポンプの競合は荏原製作所、Flowserve、Cryostar、Fives など。調査会社の推計では日機装の極低温ポンプのシェアは 1 割強で、上位 5 社でも合計 4 割ほどと市場は分かれている。汎用ポンプは価格競争が進む。強いのは、極低温や高圧といった条件が厳しい用途だ。

航空機は、メーカーの受注残が約 10 年分あり、乗客数もコロナ前を超えた。生産が戻れば部品の需要は増す。ただ増産の速度は機体メーカー次第で、部品会社は値上げの交渉力が弱い。

透析は国ごとに景色が違う。日本は患者が約 34 万人で、高齢化と人口減がつり合い、横ばいから緩やかな縮小と会社は見る。中国は約 100 万人で、医療保険の拡充とともに増える。米国は約 50 万人で緩やかに増える。競合は Fresenius、ニプロ、澁谷工業などだ。米国は参入したばかりで、成否はこれからである。

資本政策と M&A

還元は配当が中心だ。累進配当を掲げ、純資産に対する配当(DOE)を 2028 年に 2.5% 水準へ引き上げる計画である。自社株買いは状況次第とされ、積極的ではない。3 年間の営業キャッシュフロー約 620 億円のうち、還元に回るのは 120 億円ほどで、残りは成長投資に使う。

買収の余地は残している。成長投資は最大 430 億円で、M&A を含む。過去に LEWA と Geveke を売り、のれんの重い事業を軽くしてきたが、航空宇宙とインダストリアルでは買収も検討する。資本の使い方は、売る側としては上手だった。買う側として規律が保てるかは未知数だ。

政策保有株は 3 年で約 130 億円を売る計画だ。大株主は信託銀行と銀行で、自社株も 5% 強ある。親会社や創業家の支配はなく、再編の圧力が働く構造ではない。事業を一部切り出す動きはあっても、会社ごと買われる可能性は高くないと筆者は見る。

財務は、ネットの負債が自己資本の 0.4 倍の水準で、自己資本比率 40% 前後を維持する方針だ。会社は財務の梃子の活用も視野に入れており、成長投資の拡大は借金で行う可能性がある。

手元には投資有価証券が時価で167億円あり、含み益は税引き後で約86億円ある。売却は計画にあるが、使い道は成長投資も含むので、半分だけ価値に入れる。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

LNG の増設は、米国の輸出基地と欧州・アジアの受け入れ基地で今後 10 年続く。日機装は極低温ポンプで世界の上位にあり、米国の CE&IG グループが液化装置や空気分離、CO2 回収のプラントまで売るので、1 件あたりの受注が大きくなる。会社が計画する 2028 年のインダストリアル売上 1,500 億円は、年 8.6% の伸びだ。足元の受注もこれを裏づけている。

透析では、米国での販売が 2026 年に始まり、会社は 2028 年に米国を売上の 1 割強まで育てる計画だ。装置を病院に置けば消耗品が続くので、一度取れた顧客は長く稼ぐ。中国は透析患者が約 100 万人で、合弁を通じて伸びる。日本も患者が横ばいなら、シェア 5 割超が崩れない限り収益は守れる。

航空宇宙は、受注残が約 10 年分ある旅客機の増産に乗る。価格の見直しと自動化で営業利益率が 15% に近づけば、赤字すれすれだった事業が利益の柱になる。全社の費用は増えるが、売上の伸びで吸収できる。

2026 年は営業利益が 197 億円と、計画の 165 億円を上回る見通しだ。事業整理の効果も出始めている。2035 年の長期目標である売上 4,000 億円・営業利益 500 億円は、無理のない姿だ。資本効率が上がれば ROE は 10% を超え、今の値段は先を見すえたものとして正当化される。

慎重な見方

稼ぐ力の弱さが続く。営業利益率は 10 年で 2% から 19% まで動いたが、19% の年は売却益で、実力ではない。直近の 2023〜24 年は 3% 台、2025 年も 7% 台だった。会社の計画でも 2028 年は 8.1% で、同業の医療機器会社の水準には遠い。値上げや選別受注で一段階の改善はあったが、道半ばである。

LNG は今が山に近い。米国の政策や欧州の需要は変わりうるし、案件は大型で一つ延びれば売上が大きくずれる。水素・アンモニアは時期が読めず、会社も優先を LNG へ戻している。中国の地場メーカーがポンプ市場にも入れば、汎用品から値崩れが始まる。

透析の日本事業は売上の 6 割を占めるが、患者は横ばいからやや縮小し、公定の価格も下がる。米国は大手の Fresenius が強く、参入したばかりの日機装が 1 割まで伸ばす計画は野心的だ。中国は合弁で、規制対応に追われて利益が残りにくい。

航空宇宙は営業利益を 9 億円から 45 億円へ 5 倍にする計画で、実行の難度が高い。2025 年のポンプ検査の問題が示すように、現場の管理には不安が残る。のれんと無形資産が約 390 億円あり、買収した事業が計画に届かなければ減損になる。資本効率が資本コストを割る年が続けば、PBR 1 倍も守れない。

どちらに重みを置いたか

事業の質では強気の見方が優勢だが、値段の面では慎重な見方が勝つ。極低温ポンプと透析の設置基盤は確かな資産で、2026 年の勢いも本物だ。しかし利益率が低く、計画の達成には複数の事業で同時に当たりを引く必要がある。会社は過去の計画で目標を外してきた。確率は中立に 4 割弱を置き、楽観側にはやや薄く、悲観側にはやや厚めに配分した。

10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)

確率で加重した株価時価総額 4,625 円3,031 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 888 円582 億円)。 今の値に割り戻すと 2,804 円1,838 億円、今との差 −7.8%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 7.8%)→ 適正

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 11% 9,144 円5,993 億円 1,251 円820 億円 +241.9% +13.1% 1,143 円749 億円
やや楽観 25% 6,397 円4,193 億円 1,068 円700 億円 +145.5% +9.4% 1,866 円1,223 億円
中立 36% 4,471 円2,931 億円 915 円600 億円 +77.2% +5.9% 1,939 円1,271 億円
やや悲観 21% 1,662 円1,089 億円 656 円430 億円 −23.8% −2.7% 487 円319 億円
悲観 7% 869 円570 億円 229 円150 億円 −63.9% −9.7% 77 円50 億円
加重平均100% 4,625 円3,031 億円888 円582 億円 +81.3% +6.1% 5,512 円3,613 億円

今の株価時価総額 3,040 円1,993 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。

楽観 11% LNG・CO2・産業ガスの設備投資が 10 年続き、極低温ポンプとプラントの需要が膨らむ 利益 376 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 9,144 円5,993 億円

産業向けの市場が世界で 1.7 倍に広がり、日機装はポンプ設備と米国の CE&IG のプラントでシェアを少し伸ばす。営業利益率は 13% 台まで上がる。航空機は納入が 2,000 機を超え、航空宇宙の利益率は 15% に届く。透析は米国が育ち、中国の合弁も伸びて、供給患者数は今の 3 割強増える。値決めの力が戻り、価格は物価を上回って上がる。全社の費用は増えるが、売上の増加が吸収する。会社の長期目標である営業利益 500 億円台が実現し、ROE は 11% を超える。配当は DOE 3% 近くまで上がり、自己資本は積み上がる。

  • インダストリアル:数量 14.1(世界の極低温機器・産業用ポンプ市場(約 110 億ドル・実質)× 当社シェア(約 7.1%)=実質の売上(億ドル))× 価格 210(為替 150 円 × 物価・値決めの指数(円/ドル))→ 売上 2,953 億円・営業利益 399 億円。市場×シェアの実質売上(億ドル)× 為替 150 円×物価・値決めの指数、営業利益率 13.5%
  • 航空宇宙:数量 20.5(当社部品を搭載する機体の年間納入機数(百機・実質))× 価格 21(1 百機あたりの当社売上(億円・名目))→ 売上 428 億円・営業利益 64 億円。納入機数(百機)× 1 百機あたり当社売上(億円・名目)、営業利益率 15.0%
  • メディカル:数量 37.5(当社の装置・消耗品が使われる透析患者数の換算(万人))× 価格 39(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 1,470 億円・営業利益 176 億円。供給患者数換算(万人)× 1 人あたり年間売上(万円・名目)、営業利益率 12.0%

倍率:事業の純利益 374 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)130 億円。全体の PER 15.67 倍、時価総額 5,993 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:LNG・航空機・米国の透析がすべて当たり、利益率も大きく改善する必要がある。条件が重なるので、1 割強にとどめた。

やや楽観 25% 計画どおり利益率が改善し、3 事業とも手堅く伸びる 利益 282 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 6,397 円4,193 億円

産業向けは実質で年 5% 台の成長を続け、LNG と産業ガスが引っ張る。米国の CE&IG とのグローバルな一体運営が進み、営業利益率は 12% 台に上がる。航空宇宙は増産と価格の見直しが効いて 12% 台、メディカルは米国の販売が立ち上がって 10% 台に乗る。全社の営業利益は 400 億円台に届き、会社の 2028 年計画の先にある姿になる。ROE は 9% 台で資本コストを上回るが、買収と設備投資に資金を回すので余裕は大きくない。配当は累進で増え続け、会社が掲げる PBR 1 倍の維持は十分にできる。ただ、突き抜けた成長でも、突き抜けた利益率でもない。

  • インダストリアル:数量 12.3(世界の極低温機器・産業用ポンプ市場(約 110 億ドル・実質)× 当社シェア(約 7.1%)=実質の売上(億ドル))× 価格 206(為替 150 円 × 物価・値決めの指数(円/ドル))→ 売上 2,526 億円・営業利益 308 億円。市場×シェアの実質売上(億ドル)× 為替 150 円×物価・値決めの指数、営業利益率 12.2%
  • 航空宇宙:数量 18.5(当社部品を搭載する機体の年間納入機数(百機・実質))× 価格 20(1 百機あたりの当社売上(億円・名目))→ 売上 379 億円・営業利益 47 億円。納入機数(百機)× 1 百機あたり当社売上(億円・名目)、営業利益率 12.5%
  • メディカル:数量 35.0(当社の装置・消耗品が使われる透析患者数の換算(万人))× 価格 38(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 1,343 億円・営業利益 145 億円。供給患者数換算(万人)× 1 人あたり年間売上(万円・名目)、営業利益率 10.8%

倍率:事業の純利益 280 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)130 億円。全体の PER 14.5 倍、時価総額 4,193 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:会社計画に近い姿。2026 年は計画を上回る勢いだが、過去の計画は外れた年もあるため、4 分の 1 にとどめた。

中立 36% 市場並みに伸びるが、利益率は 1 割に届かず資本コストすれすれ 利益 214 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 4,471 円2,931 億円

産業向けの市場は実質で 4 割ほど伸びるが、日機装はシェアをほぼ保つにとどまる。営業利益率は 11% で、会社が計画する 11.3% に近い。航空宇宙は受注残を消化して 10%、メディカルは日本が縮み、米国と中国が補って 9% 台になる。全社の費用が増え、連結の営業利益率は 8% 台で落ち着く。純利益は今の 1.5 倍強になる。ROE は 8% 前後で、資本コストとほぼ同じだ。稼いだ利益の多くは再投資と配当に回り、株主が受け取る利益は大きく増えない。優良というより、堅実な中堅企業の姿である。米国の透析参入は一定の成果を出すが、会社の計画ほどは育たない。

  • インダストリアル:数量 10.9(世界の極低温機器・産業用ポンプ市場(約 110 億ドル・実質)× 当社シェア(約 7.1%)=実質の売上(億ドル))× 価格 201(為替 150 円 × 物価・値決めの指数(円/ドル))→ 売上 2,191 億円・営業利益 241 億円。市場×シェアの実質売上(億ドル)× 為替 150 円×物価・値決めの指数、営業利益率 11.0%
  • 航空宇宙:数量 17.0(当社部品を搭載する機体の年間納入機数(百機・実質))× 価格 20(1 百機あたりの当社売上(億円・名目))→ 売上 343 億円・営業利益 34 億円。納入機数(百機)× 1 百機あたり当社売上(億円・名目)、営業利益率 10.0%
  • メディカル:数量 33.0(当社の装置・消耗品が使われる透析患者数の換算(万人))× 価格 38(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 1,238 億円・営業利益 118 億円。供給患者数換算(万人)× 1 人あたり年間売上(万円・名目)、営業利益率 9.5%

倍率:事業の純利益 212 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)130 億円。全体の PER 13.2 倍、時価総額 2,931 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:業界の中心的な見通しと、会社の資本効率の実績(ROE は過去の中央値で 7% 台)を合わせた中心の姿。

やや悲観 21% LNG が一巡し、透析と航空宇宙も伸びず、利益率は 2023〜24 年の水準に戻る 利益 92 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,662 円1,089 億円

LNG の増設が一巡して産業向けの市場は 1 割強しか伸びず、中国の地場メーカーが汎用ポンプの価格を崩す。日機装のシェアは 6% 台に下がり、営業利益率は 8% 台まで落ちる。航空宇宙は増産の遅れで 6%、メディカルは日本の価格引き下げと中国の競争で 6% 台にとどまる。全社の営業利益率は 5% 弱で、実質的に 2023〜24 年へ戻る。成長投資の回収が遅れ、ROE は 4% 前後だ。事業は崩れないが、配当を増やす余裕は小さく、会社の掲げる PBR 1 倍も遠のく。のれんの一部に減損の話が出始め、買収の拡大には慎重にならざるをえない。

  • インダストリアル:数量 8.3(世界の極低温機器・産業用ポンプ市場(約 110 億ドル・実質)× 当社シェア(約 7.1%)=実質の売上(億ドル))× 価格 188(為替 150 円 × 物価・値決めの指数(円/ドル))→ 売上 1,547 億円・営業利益 131 億円。市場×シェアの実質売上(億ドル)× 為替 150 円×物価・値決めの指数、営業利益率 8.5%
  • 航空宇宙:数量 15.0(当社部品を搭載する機体の年間納入機数(百機・実質))× 価格 19(1 百機あたりの当社売上(億円・名目))→ 売上 280 億円・営業利益 17 億円。納入機数(百機)× 1 百機あたり当社売上(億円・名目)、営業利益率 6.0%
  • メディカル:数量 29.5(当社の装置・消耗品が使われる透析患者数の換算(万人))× 価格 34(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 1,008 億円・営業利益 66 億円。供給患者数換算(万人)× 1 人あたり年間売上(万円・名目)、営業利益率 6.5%

倍率:ROE 4.0% は k 7.75% 以下なので、PER の上限は 1÷k の 12.5 倍(ためた利益は額面未満の価値)。利益は残るが伸びと資本効率が弱く、上限の 8.0 割の 10.0 倍に置いた。 余った資産(投資有価証券の売却益課税後130億円)は戻り方0.5で足した。

確率:利益率が 2023〜24 年の水準に戻る姿は、わずか 2 年前の実績にあるため、2 割強を置いた。LNG の山と透析の縮小も下振れ要因になる。

悲観 7% 構造的に競争力を失い、のれんを減損して事業の一部を売る 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 869 円570 億円

LNG の需要が剥落し、水素の事業も育たず、中国勢が汎用から中位のポンプまで取る。産業向けのシェアは 5% 台に下がり、営業利益率も 5% 台に沈む。航空宇宙は生産を減らして利益がほぼ消え、メディカルは日本の縮小と米国での出遅れで 3% まで下がる。全社の費用を賄えず、営業利益はほぼゼロになる。買収でできたのれんを減損し、政策保有株や事業の一部を売って借金を返す。配当は資産の売却で細々と続けるにとどまる。米国の透析参入は大手の Fresenius に阻まれ、計画の売上に届かないまま撤退を迫られる。品質問題の再発で主要顧客の信頼も落ち、受注の選別どころか、受注そのものが細る。会社の姿が変わり、稼ぐ力ではなく売れる資産が価値を決める。

  • インダストリアル:数量 6.2(世界の極低温機器・産業用ポンプ市場(約 110 億ドル・実質)× 当社シェア(約 7.1%)=実質の売上(億ドル))× 価格 165(為替 150 円 × 物価・値決めの指数(円/ドル))→ 売上 1,023 億円・営業利益 56 億円。市場×シェアの実質売上(億ドル)× 為替 150 円×物価・値決めの指数、営業利益率 5.5%
  • 航空宇宙:数量 12.0(当社部品を搭載する機体の年間納入機数(百機・実質))× 価格 16(1 百機あたりの当社売上(億円・名目))→ 売上 192 億円・営業利益 2 億円。納入機数(百機)× 1 百機あたり当社売上(億円・名目)、営業利益率 1.0%
  • メディカル:数量 25.0(当社の装置・消耗品が使われる透析患者数の換算(万人))× 価格 30(1 人あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 756 億円・営業利益 23 億円。供給患者数換算(万人)× 1 人あたり年間売上(万円・名目)、営業利益率 3.0%

倍率:営業利益がほぼ消える筋書きで、利益に PER を掛けても意味がないので PBR で置く。値は今の自己資本 1,582 億円に掛ける床で、稼ぐ力(純利益÷k)ではなく、売れる資産から借金を返した残り(floor_assets_oku)に合わせた。のれんなどは減損で消え、事業の一部を売る前提。EV÷営業利益は 86 倍と大きく出るが、営業利益がほぼ消える筋書きなので倍率では見ず、売れる資産で床を置いた。

確率:構造的に負ける筋書き。品質問題・中国勢・のれんの減損が重なる必要があり、7% にとどめた。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

インダストリアル

極低温ポンプ(LNG・産業ガス・水素)と米国 CE&IG の液化・空気分離・CO2 回収設備、産業用ポンプ、MLCC 向け温水ラミネータなどの精密機器。

数量世界の極低温機器・産業用ポンプ市場(約 110 億ドル・実質)× 当社シェア(約 7.1%)=実質の売上(億ドル)価格為替 150 円 × 物価・値決めの指数(円/ドル)売上営業利益
今 2025/12 7.8 150 1,170 128
10 年後 中立 10.9 201 2,191 241

取り方:極低温ポンプの世界市場は調査会社の推計で 25 億ドル前後、当社シェアは 1 割強とされる。これに液化・空気分離・CO2 回収の設備、産業用ポンプ、精密機器を加えた広い市場を約 110 億ドルと見積もり、当社の売上 1,170 億円(約 7.8 億ドル)が占める比率を実質シェア約 7.1% とした。数量は市場×シェアの実質の売上で、物価の分は価格(為替 150 円×物価・値決めの指数)に入れる。今の価格は 150。

航空宇宙

旅客機の逆噴射装置の部品(カスケード)など CFRP 成形品と、eVTOL・小型衛星向けの新分野。宮崎とベトナムの工場で生産する。

数量当社部品を搭載する機体の年間納入機数(百機・実質)価格1 百機あたりの当社売上(億円・名目)売上営業利益
今 2025/12 14.0 14 195 9
10 年後 中立 17.0 20 343 34

取り方:世界の民間旅客機の納入は年 1,400 機前後で、当社は搭載対象の機体に部品を納める。売上 195 億円を 1,400 機で割ると 1 百機あたり約 13.9 億円(機体 1 機あたり約 1.4 億円)。数量は納入機数、物価と価格見直しは価格に入れる。

メディカル

血液透析の装置、ダイアライザー、血液回路、粉末透析剤、保守。国内の透析装置のシェアは 5 割超で、売上の 6 割強が日本。

数量当社の装置・消耗品が使われる透析患者数の換算(万人)価格1 人あたりの年間売上(万円・名目)売上営業利益
今 2025/12 28.1 28 788 60
10 年後 中立 33.0 38 1,238 118

取り方:売上 788 億円を、装置・消耗品・保守の 1 患者あたり年間売上を約 28 万円と置いて割り、供給患者数の換算を約 28 万人とした(日本約 17 万・中国約 4 万・欧州約 5 万・米国ほか約 2 万。日本の透析患者は約 34 万人で、そのうち半分強が当社の装置を使う計算)。推定で、患者あたりの売上は実績からの逆算。数量は実質の患者数換算で、物価と公定価格の動きは価格に入れる。

リスクと懸念

LNG 案件の時期ずれ

インダストリアルの利益改善は LNG と産業ガスの好調に支えられている。大型案件は一つ延びるだけで四半期の売上がずれ、米国の政策や欧州の需要が変われば受注の勢いも落ちる。会社は水素・アンモニアの市場の進み方がまちまちだと認めている。

利益率の低さと計画の未達

営業利益率は 2025 年で 7% 台、2028 年の計画でも 8% 台だ。航空宇宙は営業利益を 9 億円から 45 億円へ 5 倍にする計画で、実行の難度が高い。過去の中期計画でも目標を外した年があり、達成の確度は割り引いて見る必要がある。

国内透析の縮小と価格

メディカルの売上の 6 割強は日本だ。透析患者は横ばいからやや縮小し、公定の価格は下がる方向にある。中国では地場メーカーとの競争が利益を押し下げている。米国は参入したばかりで、成否はこれから分かる。

品質とガバナンス

2025 年 2 月に、一部のポンプで出荷前の耐圧検査が実施されていなかったことが公表された。製品の安全性への影響は確認されていないが、顧客の信頼や追加の費用につながる恐れが残る。会社も全社の再点検を課題に挙げている。

のれんの減損

買収でできたのれんなどの無形資産が約 390 億円あり、親会社の自己資本の 4 分の 1 に相当する。米国の CE&IG グループや精密機器が計画に届かなければ、減損で自己資本が減る。

成長投資の借金頼み

会社は 3 年間で最大 430 億円の成長投資を計画し、財務の梃子の活用も視野に入れる。M&A で資本効率が下がれば、ROE が資本コストを割る年が出る。投資が回収できるかは買収の目利き次第だ。

今後の分かれ目

LNG の大型案件の受注が、会社計画の 2028 年インダストリアル売上 1,500 億円を上回るペースで続いたら
産業向けの市場の伸びとシェアの前提を上げ、楽観・やや楽観の確率を上げる。
航空宇宙の営業利益率が 2027 年までに 10% を超えたら
自動化と価格見直しが効いたと判断し、航空宇宙の利益率の前提を上げる。
米国の透析装置と血液回路の販売が、2028 年の売上 1 割強に向けて順調に立ち上がったら
メディカルの数量と営業利益率の前提を上げる。立ち上がりが遅れれば逆に下げる。
中国の地場メーカーが極低温ポンプや透析装置の中位品で日機装の顧客を奪い始めたら
シェアと価格の前提を下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
品質問題が再発する、または追加の特別損失が出たら
ガバナンスの評価を見直し、資本コストの寿命・値決めの目安と悲観の確率を再検討する。
M&A でのれんが大きく積み上がり、ROE が 8% を下回る年が続いたら
資本配分の評価を下げ、中立の倍率を 1÷k に近い水準まで下げる。

見ておくもの

  • インダストリアルの受注残と LNG 案件の動き
  • 航空宇宙の営業利益率(2026 年計画 8%)
  • 米国の透析販売の立ち上がり(2028 年に売上の 1 割強が計画)
  • 品質問題の再発防止と追加費用の有無
  • 政策保有株の売却と成長投資の中身(M&A)

倍率と資本コストの決め方

今の株価と PER は見ずに、セグメントごとに数量と価格を積み上げた。産業向けは市場の大きさ×シェアを数量(実質)に置き、為替 150 円と物価で価格を伸ばした。航空宇宙は納入機数を数量とし、透析は供給患者数に換算して数量とした。倍率は ROE が資本コストと同じ水準なので 1÷k 付近に収まり、今の PER や過去の PBR には寄せていない。数字は IFRS で、リース負債はすでに貸借対照表に載っているため、新リース会計基準による形の変化はない。純有利子負債にリースは含めず、営業利益は家賃でなく償却と利息を引いた形のままでそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→15.67 倍・やや楽観 PER 12.8→14.5 倍・中立 PER 11.5→13.2 倍)。

資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality 0.5%=8.0%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。

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読んだ資料

  1. 中期経営計画『NIKKISO 2028』(日機装、2026/02)
  2. 日機装の26年1〜6月期、純利益67.5%増 通期予想を上方修正(日本経済新聞)
  3. 日機装、不適切な品質検査の発覚を受け特別調査委員会を設置(coki)

分析日 2026-10-19