結論
マニーは、使い捨ての医療用の刃物と針を世界に売る会社だ。白内障手術の眼科ナイフ、手術用縫合糸の針の材料、歯科の根管治療に使うファイルが三本柱である。売上の8割以上は海外だ。
筆者の結論は、事業は優れているが今の値段は先取りしすぎ、というものだ。10年で見ると、中立でも本質価値は今の時価総額を2割台半ば下回り、「やや割高」になる。理由は、利益が10年かけても今期予想の7割増ほどにとどまり、10年後に妥当な倍率も十数倍にとどまるからだ。一方で、事業の強みは本物だ。その中身は、高い利益率が十数年続いてきた事実と、借金ゼロで自己資本比率が9割を超える財務である。今の利益は中国のダイヤバー(歯科の切削工具)の回収で一度細ったが、すでに戻りつつある。
弱い点もはっきりしている。針と刃物は買い手が少数の大手で、値段を自分で決めにくい。歯科は利益率が1割台と低く、中国の国産品を優遇する政策がじわじわ効く。会社は2029年8月期に売上450億円を掲げるが、筆者はこれを中立にはしない。数量は医療の需要なりに伸び、値段は物価をやや下回るとみる。
いちばん気にしているのは、利益率の高い針と刃物が10年後も今の水準を保てるかだ。そこが崩れなければ、悲観の筋書きでも現金と工場が下値を支える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、マニーは「小さくて質の高い消耗品の会社」として評価できる。
医師が慣れた使い捨ての刃物と、手術の質を支える針の材料は、需要が景気に左右されない。営業利益率が3割前後で長く続いた事実が、事業の質を裏づける。借金はなく、現金は時価総額の1割を超える。経営の失敗に耐える力は十分にある。
一方、株主のものになる利益という点では、課題が残る。ROEは1割前後と、利益率の高さに見合わない。現金が事業に使われず、積み上がっているからだ。経営が資本配分の改善に動いたことは前向きだが、200億円のM&A枠は両刃の剣だ。ここで質の低い買収をすれば、せっかくの高い利益率を自分で薄めてしまう。
安全域は、中立の見立てで見て、今の値段に十分あるとは言い切れない。悲観の筋書きでも、現金と工場の資産が下値の支えになる点は安心材料だ。ただ、堀が強いと言えない以上、強い確信は置けない。わかりやすいが、成長の証明はこれからという会社だと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、サージカルとアイレス針という2つの消耗品である。この2つで売上の約7割、利益の8割以上を占める。
サージカルは、白内障手術で角膜を切る使い捨ての眼科ナイフが主力だ。売上は2025年8月期で約93億円、利益率は3割を超える。世界シェアは3割前後と推定され、会社は5割まで引き上げる目標を掲げる。米国の同業と組んだ販売提携も進めている。
アイレス針は、手術用縫合糸の針の材料だ。糸を通す穴がない針で、縫合糸メーカーが仕入れて針付きの糸に仕上げる。売上は約112億円と全体で最も大きく、利益率は35%台と最も高い。世界で2位の位置にあり、買い手は世界の大手縫合糸メーカーに限られる。
デンタルは、根管治療のファイル、切削工具のバー、ドイツ子会社の修復材からなる。売上は約95億円だが、利益率は1割ちょっとにとどまる。2025年は中国で一部のダイヤバーを自主回収し、ドイツの修復材では減損も出した。
工場はベトナムが主力で、栃木の花岡工場が試作と技術の母体になる。中国は国産品を優遇する政策に合わせ、2028年稼働の現地工場を建てる。
優良さと弱いところ
マニーの堀、つまり他社がまねしにくい強みは、微細な加工と材料の技術が生む品質にある。
刃物と針は、使い捨てで手術の結果に直結するため、医師は慣れた品を替えたがらない。針は、縫合糸メーカーが認証を取り直す手間も、切り替えの壁になる。この壁があるから、営業利益率は2014年8月期から一度も2割を割らず、多くの年で3割前後を保ってきた。
ただし筆者は、堀を強いと呼ばない。針の買い手は大手少数で、値下げ交渉を受けやすい。刃物も、新興国では安い品が育つ。シェア3割は、7割を握る寡占とは違う。
資本効率は、見かけより悪くない。ROEは過去10年で11%前後だが、これは自己資本比率が9割を超え、現金をため込んでいる分だけ薄まった数字だ。事業そのものの利益率は高い。
弱い点は2つある。歯科の収益性の低さと、中国の規制対応だ。2025年のダイヤバー回収は、現地への登録書類の記載不備が原因だった。品質そのものではなく管理の甘さが出た形で、再発を防げるかが問われる。小さな会社が複数国に工場を持つ難しさも、ここに表れている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は、白内障手術・縫合・歯科の3つに分かれ、どれも医療の長期成長に乗っている。
白内障手術は、高齢化と新興国の普及で世界の件数が伸び続ける。縫合糸の世界市場は年5%前後で成長するとされ、実質では2〜3%とみるのが穏当だ。歯科の根管治療も、新興国の診療所の増加で伸びる。物価の分を除いた実質で、筆者は10年で3〜5割の数量増を中立に置く。
競争は2層に分かれる。縫合針では、米ジョンソン・エンド・ジョンソン傘下のエチコンやメドトロニック、ドイツのB.ブラウンが完成品を握る。マニーは、その針の材料を供給する黒子の位置だ。刃物は、欧米の大手とインド・中国の安い品が競う。
中国は最も読みにくい。国が地元の医療機器メーカーを優遇し、外資は現地生産を求められる。マニーの歯科は、このあおりを最も受けやすい。会社は2028年稼働の現地工場で対応するが、投資が重くなる割に、値段の引き下げ圧力は残る。
10年の構造的な負け筋は3つある。①中国とインドの品質が上がり、針と刃物が汎用品になること。②縫合糸の大手が針を内製や別の仕入れ先に切り替えること。③中国の国産優遇が歯科の需要を根こそぎ奪うことだ。
資本政策と M&A
資本の使い方は、堅実だが保守的だ。
還元は配当が中心で、会社はDOE(配当を自己資本で割った率)8%を目安に、安定した増配を続ける。純利益に対する還元の割合は6〜8割と高い。それでも自己資本比率は9割を超え、現金が積み上がっている。
29中計は、この現金の使い道を変える。花岡工場に約95億円を投じる時期は終わり、これからは研究開発を売上の1割近くまで引き上げ、200億円のM&A枠を使って買収を狙う。数字の上では、内部で増やせない分を買いで補う設計だ。
筆者がいちばん警戒するのは、このM&Aである。ドイツの修復材企業を買ったMMGは、2025年に減損を出した。高い利益率の会社が、利益率の低い歯科の周辺を買い足すと、全体の質は薄まりやすい。
買われる側になる可能性は、今のところ具体的な材料がない。時価総額は千億円台で、買収の対象としては小さくない規模だ。株主還元は今後も配当が軸で、自社株買いは大きな柱になりにくいと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
刃物と針は、使い捨てで手術の結果に直結する。医師は慣れた品を替えず、縫合糸メーカーも認証を取り直す手間を嫌う。だから営業利益率は十数年にわたり3割前後を保ってきた。この質は簡単には崩れない。
成長の余地も大きい。眼科ナイフの世界シェアは3割で、会社は5割を狙う。米国の同業との提携と欧州の代理店への出資で、販路は広がっている。歯科では、新しいニッケルチタンのファイルJIZAIが前年比で5割を超えて伸びている。中国のダイヤバーも、販売再開後は回収前の水準に向けて急速に戻っている。
財務は圧倒的に強い。借金はなく、自己資本比率は9割を超える。今は花岡工場の投資が終わり、現金が積み上がる局面に入った。M&A枠と研究開発の増額で成長を取りにいく姿勢も出てきた。29中計の売上450億円は、過去の成長ペースを考えれば無理のない数字だ。2029年に利益率3割超を回復し、ROEが16%に近づけば、今の値段はまだ割安に見える。
慎重な見方
針と刃物の買い手は少数の大手で、値段の交渉力は買い手にある。刃物は、インドや中国の安い品が新興国で育ち、世界シェア3割という位置は寡占とは言えない。高い利益率は、市場に守られた結果とは限らない。
歯科は利益率が1割台で、全社の足を引っぱる。中国は国産品の優遇を強め、外資は現地生産を求められる。2028年稼働の工場は投資が重い上、値下げ圧力が残る。2025年のダイヤバー回収は、管理の甘さを示した。
ROEは過去10年で11%前後にとどまる。利益率の高さに見合わないのは、現金が使われていないからだ。会社が掲げる200億円のM&A枠は、自分で資本配分の腕を試す行為だが、ドイツの修復材では減損を出している。買収が高い利益率を薄める可能性は小さくない。
売上450億円、営業利益145億円という29中計は、これまでの伸びを大きく上回る。旧計画の2026年8月期の目標は売上300億円・営業利益100億円で、売上は超えたが、利益は届かない見込みだ。今回も、数字を割り引くべきだ。
どちらに重みを置いたか
事業の質については強気の見方が優勢だ。刃物と針という消耗品が、十数年にわたり高い利益率を保った事実は重い。借金がなく現金も厚いため、悲観の筋書きでも会社が傷みにくい。一方で慎重な見方の指摘も当たっている。堀は強いと呼べず、買い手の大手に値段を握られる。歯科の中国リスクも消えない。
そこで、中立は会社計画を割り引いた巡航成長とし、確率はやや強気側と弱気側をほぼ均等に置いた。悲観は、中国の国産優遇と値崩れが重なる深い負けを8%に置き、その場合も現金と工場が下値を支える形にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 1,927 円1,898 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 529 円521 億円)。 今の値に割り戻すと 1,330 円1,310 億円、今との差 −13.5%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,250 円3,201 億円 | 667 円657 億円 | +154.7% | +9.8% | 392 円386 億円 |
| やや楽観 | 27% | 2,592 円2,553 億円 | 600 円591 億円 | +107.5% | +7.6% | 862 円849 億円 |
| 中立 | 34% | 2,162 円2,130 億円 | 554 円546 億円 | +76.6% | +5.9% | 924 円910 億円 |
| やや悲観 | 21% | 660 円650 億円 | 439 円432 億円 | −28.6% | −3.3% | 231 円227 億円 |
| 悲観 | 8% | 360 円355 億円 | 242 円238 億円 | −60.9% | −9.0% | 48 円47 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,927 円1,898 億円 | 529 円521 億円 | +59.7% | +4.8% | 2,456 円2,419 億円 |
今の株価時価総額 1,538 円1,515 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 刃物のシェア5割と歯科の再成長が実現 利益 163 億円 · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 3,250 円3,201 億円
10年間で白内障手術と縫合の需要は世界で伸び続け、マニーは眼科ナイフのシェアを4〜5割へ引き上げる。米国の同業との提携と欧州の代理店への出資が効き、医師の使い慣れた品として定着する。針は、大手縫合糸メーカーの認証が定着し、利益率を3割台後半に保つ。歯科はJIZAIとドイツの修復材が育ち、中国の国産優遇には2028年稼働の現地工場で対応して、利益率は2割を超える。研究開発の増額が新しい製品を生み、買収も失敗なく統合が進む。会社の29中計が、ほぼ描いたとおりに進む10年になる。結果として、利益率3割超のまま売上は約760億円に達する。
- サージカル関連(眼科ナイフ等):数量 31.0(眼科ナイフなどの年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 801(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 248 億円・営業利益 89 億円。出荷 31.0 百万本(今の 2.00 倍)× 単価 801.32(今の 1.34 倍)、利益率 36.0%
- アイレス針関連(縫合針の材料):数量 680(針の年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 36(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 247 億円・営業利益 89 億円。出荷 680.0 百万本(今の 1.70 倍)× 単価 36.34(今の 1.30 倍)、利益率 36.0%
- デンタル関連(根管治療・切削・修復材):数量 63.0(歯科用器具の年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 425(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 268 億円・営業利益 59 億円。出荷 63.0 百万本(今の 2.10 倍)× 単価 424.78(今の 1.34 倍)、利益率 22.0%
倍率:事業の純利益 163 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.6 倍。全体の PER 19.64 倍、時価総額 3,201 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:刃物のシェアを5割へ、針の利益率を保ちつつ、歯科が再成長するという複数の成功を同時に取る必要がある。実現すれば強いが、旧計画でも利益は目標に届かなかったため、確率は1割にとどめた。
やや楽観 27% 高い利益率を保ち、会社計画に近づく 利益 136 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 2,592 円2,553 億円
白内障の件数と縫合針の需要が着実に伸び、眼科ナイフのシェアは4割近くまで上がる。針は価格交渉の圧力を受けながらも、利益率を3割台前半で保つ。歯科は中国の販売が回収前の水準まで戻り、JIZAIも伸びて、利益率は2割近くへ改善する。M&Aは小さな買収を数件こなし、大きな失敗は出ない。会社の計画には届かないが、中期経営計画の下限に近い成長が続く10年になる。売上は約680億円、営業利益率は3割近くを保つ。
中国の国産優遇は残るが、現地工場の準備が間に合い、販売網を失うことはない。ドイツの修復材も黒字に転じ、歯科全体の足を引っぱる度合いが下がる。眼科ナイフは米国の同業との提携が地味に効き、欧州の代理店を通じた販路も広がる。研究開発の増額は、実を結ぶ製品が一部にとどまる。
- サージカル関連(眼科ナイフ等):数量 27.9(眼科ナイフなどの年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 789(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 220 億円・営業利益 75 億円。出荷 27.9 百万本(今の 1.80 倍)× 単価 789.36(今の 1.32 倍)、利益率 34.0%
- アイレス針関連(縫合針の材料):数量 640(針の年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 36(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 229 億円・営業利益 79 億円。出荷 640.0 百万本(今の 1.60 倍)× 単価 35.78(今の 1.28 倍)、利益率 34.5%
- デンタル関連(根管治療・切削・修復材):数量 55.5(歯科用器具の年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 418(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 232 億円・営業利益 44 億円。出荷 55.5 百万本(今の 1.85 倍)× 単価 418.44(今の 1.32 倍)、利益率 19.0%
倍率:事業の純利益 136 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍。全体の PER 18.77 倍、時価総額 2,553 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:医療需要の追い風と、中国のダイヤバーの回復、JIZAIの伸びが重なる、強めの見方。会社計画の下限に近い。
中立 34% 中立:消耗品の需要なりに伸びる巡航成長 利益 118 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 2,162 円2,130 億円
世界の白内障手術と縫合の需要は、実質でゆっくり伸びる。眼科ナイフのシェアは3割台前半に小幅に上がるにとどまる。針は買い手の大手との価格交渉で単価が物価を下回り、利益率は3割強に落ち着く。歯科は中国が回収前の水準へ戻り、JIZAIが加わるが、国産優遇で価格は伸びにくく、利益率は1割台後半にとどまる。M&Aは少数の買収をこなすが、成果は薄い。花岡工場の減価償却と研究開発費の増加が利益率を押し下げる。強い成長ではないが、小さな消耗品メーカーとしての質は保たれる10年になる。売上は約600億円、営業利益率は27%前後になる。
眼科ナイフの米国向けは提携先を通じてじわじわ伸び、欧州ではドイツの代理店への出資が販路を支える。中国の現地工場は予定どおり立ち上がるが、稼働の初期は利益を押し下げる。現金は配当と投資に使われ、残りが少しずつ積み上がる。
- サージカル関連(眼科ナイフ等):数量 24.8(眼科ナイフなどの年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 777(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 193 億円・営業利益 62 億円。出荷 24.8 百万本(今の 1.60 倍)× 単価 777.4(今の 1.30 倍)、利益率 32.0%
- アイレス針関連(縫合針の材料):数量 600(針の年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 36(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 213 億円・営業利益 70 億円。出荷 600.0 百万本(今の 1.50 倍)× 単価 35.5(今の 1.27 倍)、利益率 33.0%
- デンタル関連(根管治療・切削・修復材):数量 48.0(歯科用器具の年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 412(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 198 億円・営業利益 32 億円。出荷 48.0 百万本(今の 1.60 倍)× 単価 412.1(今の 1.30 倍)、利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 118 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 18.05 倍、時価総額 2,130 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の中心的な成長と、買い手の大手の値下げ圧力を相殺した、最も蓋然性の高い筋書き。
やや悲観 21% 中国の国産優遇と値下げで利益率が痩せる 利益 65 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 660 円650 億円
中国は国産品の優遇を強め、マニーの歯科は現地生産を始めても値下げに追われる。インドや中国の安い刃物と針が新興国で品質を上げ、世界の価格は下がる。縫合糸の大手は、針の仕入れ先を分散して値下げを求める。眼科ナイフのシェアは3割前後で足踏みし、会社の計画は大きく遅れる。M&Aは買収の統合が遅れ、減損が出る。それでも事業が崩れることはなく、配当の水準は保たれる。利益率は2割強まで下がり、売上は430億円ほどにとどまる10年になる。
歯科のうち中国向けは、一度は回収前の水準に戻るが、そこから先の伸びが止まる。国産優遇を受けた地元メーカーが価格を下げ、マニーも追随せざるをえない。サージカルは堅調だが、針の利益率の低下を埋めるほどではない。現金は手つかずで残り、時間が経つほど資本効率が下がる。
- サージカル関連(眼科ナイフ等):数量 20.2(眼科ナイフなどの年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 730(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 147 億円・営業利益 40 億円。出荷 20.2 百万本(今の 1.30 倍)× 単価 729.56(今の 1.22 倍)、利益率 27.0%
- アイレス針関連(縫合針の材料):数量 460(針の年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 32(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 148 億円・営業利益 41 億円。出荷 460.0 百万本(今の 1.15 倍)× 単価 32.14(今の 1.15 倍)、利益率 28.0%
- デンタル関連(根管治療・切削・修復材):数量 36.0(歯科用器具の年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 365(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 131 億円・営業利益 12 億円。出荷 36.0 百万本(今の 1.20 倍)× 単価 364.55(今の 1.15 倍)、利益率 9.0%
倍率:ROE 8.5%。RONIC=k 7.25%+残る割合 1/2×(8.5−7.5)=8.0%、g 4.0% から正当化 PER=14.2 倍。ROE が k に近く、価格が下がり続ける構造的な負けなので、上限の 7.0 割の 10.0 倍に置いた。
確率:中国の国産優遇が歯科を直撃し、針の値下げ要求も続く筋書き。起きやすい懸念を広く拾い、確率を厚めに置いた。
悲観 8% 針と刃物が汎用品になり、利益が崩れる 利益 13 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 360 円355 億円
中国とインドの針・刃物の品質が追いつき、医師も縫合糸メーカーも、価格の安い品に切り替える。縫合糸の大手は、針を内製に切り替えるか、複数の仕入れ先に分散する。眼科ナイフは汎用品となり、価格が下がり続ける。歯科は中国の国産優遇で、現地工場の投資を回収できず赤字になる。M&Aは大型の失敗に終わり、減損を重ねる。それでも、現金と花岡工場、ベトナム工場といった資産は残り、事業をたたんでも株主の取り分は大きく失われない。高い利益率の面影はなくなり、普通の小さな製造業へ落ちる10年になる。
この筋書きでは、後半の数年は利益がほぼ出ず、配当は現金や資産の売却で払う年が出る。会社が10年かけて築いた高い利益率という強みが、事業の構造変化で一気に失われる。工場や現金の資産価値は残るが、事業としての成長力は戻らない。
- サージカル関連(眼科ナイフ等):数量 15.5(眼科ナイフなどの年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 598(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 14 億円。出荷 15.5 百万本(今の 1.00 倍)× 単価 598.0(今の 1.00 倍)、利益率 15.0%
- アイレス針関連(縫合針の材料):数量 360(針の年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 27(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 96 億円・営業利益 12 億円。出荷 360.0 百万本(今の 0.90 倍)× 単価 26.55(今の 0.95 倍)、利益率 12.0%
- デンタル関連(根管治療・切削・修復材):数量 27.0(歯科用器具の年間出荷本数(百万本・推定))× 価格 301(1本あたり平均単価(円・名目))→ 売上 81 億円・営業利益 −4 億円。出荷 27.0 百万本(今の 0.90 倍)× 単価 301.15(今の 0.95 倍)、利益率 -5.0%
倍率:稼ぐ力は細り、売れる資産の床で置く。純現金 174 億円と、事業用の資産(今の自己資本 536 億円から純現金を引いた 362 億円)が簿価の 5 割で売れるとして、合計 355 億円。今の自己資本の 0.66 倍にあたる。花岡工場とベトナム工場は固有の設備で売りにくいので 5 割で数える。市場の値付けは根拠にしていない。
確率:針の買い手が内製や別の仕入れ先へ動き、刃物も汎用化し、歯科は赤字になる、複合の構造的な負け。まれだが無視できないので8%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
サージカル関連(眼科ナイフ等)
白内障手術で使う使い捨ての眼科ナイフが主力。皮膚縫合器なども含む。2025年8月期の売上は約93億円、利益率は3割強。
| 数量眼科ナイフなどの年間出荷本数(百万本・推定) | 価格1本あたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 15.5 | 598 | 93 | 31 |
| 10 年後 中立 | 24.8 | 777 | 193 | 62 |
取り方:出荷本数は開示されないため、推定した。世界の白内障手術は年に2千万件台とされ、1件で切開用の刃を複数使う。シェア3割強とすると年1,500万本前後になる。売上93億円を割って1本あたり約600(単位は円)とした。数量は実質で、手術件数の伸びと会社のシェア拡大で増える。物価3%は単価に入れる。推定の根拠は弱く、本数と単価の積が売上に合うことを重視した。 先の数量は実物(世界の白内障手術件数の増加と小幅なシェア上昇による本数)で、名目の市場の伸びではない。
アイレス針関連(縫合針の材料)
手術用縫合糸の針の材料。糸を通す穴がないタイプで、縫合糸メーカーに売る。売上は約112億円で、利益率は35%台と最も高い。
| 数量針の年間出荷本数(百万本・推定) | 価格1本あたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 400 | 28 | 112 | 40 |
| 10 年後 中立 | 600 | 36 | 213 | 70 |
取り方:針の本数は開示されないため、推定した。縫合糸メーカーに売る針の材料を年4億本前後とし、売上112億円を割って1本あたり約28(単位は円)とした。縫合糸市場は名目で年5%前後の成長とされ、実質では2〜3%とみる。物価3%は単価に入れるが、買い手の大手との交渉で、価格は物価をやや下回る前提を置く。推定の根拠は弱い。
デンタル関連(根管治療・切削・修復材)
根管治療のファイル、切削工具のバー、ドイツ子会社の修復材。売上は約95億円で、利益率は1割ちょっと。
| 数量歯科用器具の年間出荷本数(百万本・推定) | 価格1本あたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 30.0 | 317 | 95 | 11 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 412 | 198 | 32 |
取り方:根管治療ファイル、バー、修復材の合計を年3,000万本と推定し、売上95億円を割って1本あたり約317(単位は円)とした。2025年は中国のダイヤバー回収で売上が落ち、今は回復の途中にある。数量は新興国の診療所の増加とJIZAIの伸びで増える。単価は物価に近いが、中国の国産優遇で伸びが鈍る。推定の根拠は弱い。 先の数量は実物(新興国の診療所の増加と JIZAI による本数)で、名目の市場の伸びではない。
リスクと懸念
中国の国産優遇と規制対応
中国は国産の医療機器を優遇し、外資に現地生産を求める。マニーは2028年稼働の現地工場で対応するが、投資は重く、値下げ圧力も残る。2025年のダイヤバー自主回収は、登録書類の記載不備から起きた。再発すれば歯科の再成長が遅れる。
針の買い手が大手に限られる
アイレス針は全社の利益の約半分を稼ぐが、買い手は世界の縫合糸の大手だ。大手が仕入れ先を分散したり、針を内製に切り替えたりすれば、価格と数量の両方が下がる。単一の事業に利益が集まる構造そのものがリスクになる。
M&Aの失敗で利益率が薄まる
29中計は200億円のM&A枠を置く。ドイツの修復材子会社は2025年に減損を出した。利益率の低い歯科周辺を買い足すと、全体の質が落ちる。現金が厚い会社ほど、買収で価値を壊しやすいという面もある。
新興国の安い刃物・針の台頭
インドや中国の安い品が品質を上げれば、眼科ナイフと針が汎用品になる。世界シェア3割は寡占ほど強くない。会社が掲げるシェア5割の目標は、競合の動き次第で届かない可能性がある。
関税と為替
売上の8割超が海外で、ドル円は150円で固定する前提だが、実際には円高に動けば円換算の売上と利益が減る。米国の関税が医療機器に広がれば、北米向けの採算が悪化する。
歯科の低収益が長引く
デンタルは売上の3割を占めるが、利益率は1割ちょっとだ。会社は中計で改善を掲げるが、中国とドイツの両方に課題があり、全社の利益率を押し下げる状態が長引く恐れがある。
今後の分かれ目
- 中国ダイヤバーの販売が、回収前の水準を2026年度中に上回ったら
- 歯科の再成長が前倒しで進んだとみて、楽観・やや楽観の確率を少し上げてよい。
- 縫合糸の大手が、針の仕入れ先を分散する・内製に切り替えると発表したら
- アイレス針の価格と数量の前提を下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 200億円のM&A枠を使った大型の買収が発表されたら
- 利益率が薄まる懸念があるため、買収先の利益率と統合の計画を見て、中立の前提を見直す。
- 眼科ナイフの世界シェアが4割に近づいたと開示されたら
- サージカルの数量と利益率の前提を上方修正し、楽観側の筋書きに近づいていないか点検する。
- 中国が外資の医療機器に対する規制や調達要件をさらに強めたら
- 歯科の中国の数量を下げ、現地工場の投資回収を厳しく見直す。
- 自社株買いや特別配当など、現金を戻す施策が出たら
- 資本配分の姿勢が変わったとみて、ROEの前提を引き上げる余地を検討する。
見ておくもの
- 中国のダイヤバーの販売回復の進み具合と、2028年稼働の現地工場の進捗
- アイレス針の売上と利益率の推移(主要な縫合糸メーカーの動き)
- 眼科ナイフの世界シェア・米国同業との提携の進捗
- M&A枠200億円の使われ方と、ドイツ修復材(MMG)の黒字化
倍率と資本コストの決め方
10年の数量と価格は、白内障手術・縫合・歯科の3つの需要と競争の構造から積み上げた。今の株価と今のPERは見ていない。資本コストは基本7.5%に、循環−0.5%と寿命+0.5%を入れて7.5%とした。倍率は利益ベースの正当化PER(RONICは資本コストを超える分の半分が残る値)の上限を引き、堀は強いと言えないため、中立は上限の8割に置いた。悲観は現金と工場の売れる資産の床で置いた。会社の29中計は、旧計画で利益が目標に届かなかった経緯から割り引いた。今の利益はダイヤバー回収で一時的に細った2025年8月期のもので、これを起点にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17.2→19.64 倍・やや楽観 PER 15.5→18.77 倍・中立 PER 14→18.05 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality 0.0%=7.5%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。