結論
A&Dホロンは、電子天びんと血圧計で知られるエー・アンド・デイと、フォトマスク用の測長装置を作るホロンが2022年に一つになった会社だ。筆者の結論は「適正」である。ただし中身は割安でも割高でもなく、物差しをそろえて見た結果にすぎない。
利益の質は三つの事業でまるで違う。半導体関連は売上の2割弱なのに、営業利益の3分の1を稼ぐ。医療・健康機器は安定、計測・計量機器は薄利で、電動車向けの試験が足を引っ張っている。
中期計画は2026年5月に下方修正された。2028年3月期の営業利益は117億円から99億円へ下がり、2027年3月期は減益を会社自身が見込む。そこへ計量法違反による検定機関の指定取消しが重なった。
一方で、ストラテジックキャピタルが株を買い増し、2026年10月時点の保有は17.8%に達した。資本効率の改善を求める動きで、株主還元が増える可能性はある。
筆者が重く見るのは、利益の3分の2を医療・計量が占め、半導体の山谷を和らげる点だ。ただ10年先の資本効率は資本コストをわずかに上回るにとどまり、倍率に高い値は付けにくい。TOBの可能性は考えられるが、値段には入れていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を長く持ちたいかを自問すると、答えは「条件つき」になる。
事業の中身は分かりやすい。測る機器は、顧客の工場や病院で毎日使われ、買い替えも保守も続く。景気の波は半導体を除けば小さい。血圧計や電子天びんは、需要が急に消える種類の商品ではない。
問題は稼ぐ力の質だ。医療と計量で利益の3分の2を稼ぐが、利益率は10〜15%で、堀は深くない。半導体の測長だけが太い堀を持つが、会社の利益の3分の1にすぎない。全体のROEは資本コストを少し上回る程度で、株主のお金が高い利回りで回っているとは言えない。
経営の管理も気がかりだ。計量法の違反と海外子会社の不適切な支出は、「測る会社」が自分の足元を測れていなかったことを示す。是正は2027年10月までかかる。
それでも、純現金で自己資本比率が厚く、悪い局面でも会社が傾く心配は小さい。安全域は、値段の側ではなく、財務の側にある。筆者は、10年後の姿を確信を持って描ける事業と、そうでない事業が混在している点を、判断を鈍らせる最大の要素とみる。
何で稼ぐ会社か
A&Dホロンホールディングスは、三つの事業を持つ持株会社だ。いずれも「測る」ことで稼ぐ。
計測・計量機器は売上の4割台半ばを占める。電子天びんと工業用の計量機器が柱で、自動車メーカー向けのエンジン・駆動系の試験装置も手がける。売上の半分超は海外で、北米と中国での販売強化を中計の柱に置く。
医療・健康機器は売上の4割弱で、利益率が最も安定している。家庭用血圧計は世界100カ国以上で使われ、体重計やパルスオキシメータも扱う。血圧計の最大手はオムロンで、同社はその次の位置にいるとみられる。
半導体関連は売上の2割弱だが、利益率が3割台と高い。フォトマスク、つまり回路の原版の線幅を測る電子顕微鏡(CD-SEM)をホロンが作り、その心臓部の電子銃をエー・アンド・デイが供給する。顧客はマスクメーカーと大手の半導体会社だ。次世代機の「HSS-1000」は、1.6nm世代のEUVマスクに合わせて作った。
グループは25社、研究開発に売上の約8%を使う。三つの事業は顧客も景気の波も違い、持株会社として一つに束ねる狙いは、半導体の谷を医療と計量で受け止めることにある。
優良さと弱いところ
堀がいちばん太いのは半導体関連だ。フォトマスクの測長は、顧客が一度採用した装置を次の世代でも使いがちな、切り替えの重い領域である。ホロンは電子銃まで自社グループで持ち、部品から完成機まで一貫して作れる。筆者はここに本物の技術の堀があるとみる。
一方、医療と計量の堀は薄い。血圧計はオムロンの背中を追う立場で、値段を自分で決められない。電子天びんは国内で強いが、世界では欧州の大手に及ばない。電動車向けの試験装置は、米国のEV関連の弱さと関税の影響でつまずいた。
資本効率は並みだ。ROEは過去10年の中央値で13%、直近は12%にとどまる。自己資本比率は66%と厚く、純有利子負債はわずかにマイナス(純現金)である。財務の不安はない。
弱点は経営の統治だ。2026年3月期には、計量法違反の是正費用として約5.5億円、韓国子会社の不適切な支出(横領)で約2.4億円を特別損失に計上した。経済産業省は2026年7月、エー・アンド・デイの指定検定機関の指定を取り消した。事業の信頼と社内の管理体制に傷がついたことは否めない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
事業ごとに市場の性格は大きく違う。
半導体関連は、世界の半導体製造装置市場の一角にある。この市場は2026年に前年比23%増の約1,659億ドルへ広がると、SEMIは見ている。ただホロンの主戦場であるフォトマスクの測長は、市場全体のごく一部にすぎず、公的な市場規模の統計は無い。EUVの採用が広がるほどマスクの枚数と精度の要求が増え、測長装置の需要を押し上げる。競合はアドバンテストなどで、日立ハイテクはウェーハ側の測長が主戦場だ。中国の補助金による装置の国産化も長期の脅威になる。
計測・計量機器は、電子天びんや工業計量を含む、成熟した市場だ。需要は景気と設備投資にゆるやかに連動し、伸びは低い。電動車向けの試験は一時の勢いを失い、今は調整局面にある。
医療・健康機器は、家庭用血圧計の市場が調査会社により2024年に約33億ドル、2030年に約49億ドルと見られている。高血圧人口の増加と在宅医療の流れが後押しするが、中国の低価格メーカーの参入が値段の重しになる。
会社が示した下方修正は、中国の半導体投資の一時的な調整、米国EV関連の不振、関税の影響が理由だ。中期の需要の拡大基調は変わらないとしているが、半導体は前の期の強すぎた需要の反動を受けている。
資本政策と M&A
資本政策は、いま最も動きがある論点だ。ストラテジックキャピタルが2026年2月に5%台から買い始め、10月には17.8%まで保有を積み上げた。目的は「重要提案行為等」を含み、資本効率の改善と株主還元の強化を求める典型的な動きとみられる。取得資金の大半は借入などの他人資金だ。
会社は還元を厚くする方針を示し、2026年3月期の年間配当は増配した。ただ配当性向は25%前後にとどまる。自己資本比率66%、純現金という守りの財務を、活動株主は非効率とみるだろう。
投資額は、中計の期間で150億円から120億円以上へ見直された。研究開発センターの再構築と国内生産拠点の再編が続く。
持株会社として、事業の切り出しや売却の選択肢も残る。半導体関連を切り離す案や、TOBによる非公開化も考えられ、kabufuの推定では10年以内のTOB・買収の確率は18%ほどだ。ただ、これは値段には織り込まない。
点検済み:中立の営業利益率14.5%が過去の山(13.3%)を超え、中期計画の下方修正もあったため、計測・医療を今の水準に、全社費用を売上に比例させた(全社13.7%)。残る山超えは半導体関連の比重上昇の分だけ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
半導体関連は、AI向け先端チップとEUVの広がりで、10年単位の追い風を受ける。EUVはマスクの枚数も精度の要求も増やすため、測長装置の需要は半導体全体の伸びを上回りうる。ホロンはこの分野で首位級の地位を持ち、電子銃まで自社で作る。次世代機「HSS-1000」は、精度を従来機から25%高めた。
医療・健康機器は、高血圧の人口増と在宅医療の拡大で、世界の血圧計市場が2030年まで年7%近く伸びる。同社は100カ国以上に販売網を持ち、次の成長は海外にある。
株主の面では、ストラテジックキャピタルが17.8%まで買い増した。資本効率の低さを突かれ、還元を増やし、不採算の事業を整理する流れが加速すれば、ROEは改善する。持株会社の構造は、事業売却や分離をしやすくもする。
足元の下方修正は、中国の一時的な調整と、前の期の強すぎた需要の反動で、構造的な悪化ではない。計量法違反の費用も、2027年10月までに片づく一過性のものだ。三つの事業で見れば、半導体の谷は医療が受け止め、会社全体の振れは小さい。
慎重な見方
稼ぎの質が低い。三つのうち二つ、つまり計測・計量と医療は、利益率が10〜15%で、競合が強く、値段を自分で決められない。血圧計はオムロンに次ぐ二番手で、中国メーカーの低価格品が押し寄せる。電動車向けの試験装置は、米国のEV関連の不振と関税で、中計の目標を維持できなかった。
半導体関連の高い利益率は本物だが、利益の3分の1で、しかも需要の山谷が激しい。2027年3月期は、中国の半導体投資の調整で、減収減益を会社自身が見込む。測長装置は競合の次世代機に切り替えられる危険もある。
ガバナンスは弱い。計量法の違反で検定機関の指定が取り消され、国内の信頼と収益に傷がついた。韓国子会社の横領は、海外の管理の甘さを示す。是正は2027年10月までかかり、費用が増える可能性もある。
ストラテジックキャピタルの動きは、必ずしも株主に得とは限らない。活動株主は、短い期間での還元や売却を求めがちで、事業の長期の価値を削る危険もある。取得資金の多くが他人資金である点も、不安定さを増す。
結局、資本効率が資本コストを少し上回る程度の会社に、高い倍率は付けられない。
どちらに重みを置いたか
事業の分散と財務の厚み、それに株主還元が増える余地では、強気の見方に理がある。一方で、稼ぎの質の低さとガバナンスの傷、そして半導体の山谷では、慎重な見方の指摘が的を射ている。
結論は、中立をいちばん重く置いたうえで、やや楽観とやや悲観をほぼ同じ重さにした。楽観は、3つの事業が同時にうまくいく必要があるので低くし、悲観は構造的な負けが複数重なる必要があるので同じく低くした。
株主の動きが利益を押し上げる可能性は残るが、事業の力を変えるものではないと見て、確率は大きく動かしていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,688 円1,832 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 992 円272 億円)。 今の値に割り戻すと 3,936 円1,078 億円、今との差 +33.7%、 期待の年率 +10.1%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 14,321 円3,922 億円 | 1,625 円445 億円 | +441.8% | +18.4% | 1,276 円349 億円 |
| やや楽観 | 22% | 10,676 円2,924 億円 | 1,366 円374 億円 | +309.2% | +15.1% | 2,649 円726 億円 |
| 中立 | 38% | 6,903 円1,890 億円 | 1,055 円289 億円 | +170.4% | +10.5% | 3,024 円828 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,128 円583 億円 | 694 円190 億円 | −4.1% | −0.4% | 621 円170 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,023 円280 億円 | 80 円22 億円 | −62.5% | −9.3% | 110 円30 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,688 円1,832 億円 | 992 円272 億円 | +160.9% | +10.1% | 7,680 円2,103 億円 |
今の株価時価総額 2,943 円806 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 三つの柱がそろって伸び、TOBの思惑も外れる10年 利益 200 億円 · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 14,321 円3,922 億円
AI向け先端半導体とEUVの層数が増え、マスクの測長と分析の需要が10年通して強く伸びる。次世代機の「HSS-1000」が1.6nm世代のマスク工場に広く採用され、半導体関連はシェアを3割近くまで引き上げる。電子銃など電子ビームの部品も、外販が広がって新しい稼ぎ口になる。医療・健康機器は家庭用血圧計の海外販路が育ち、睡眠時血圧など新機能で単価も保つ。計測・計量機器は試験装置の再構築と北米・中国の販売強化が実を結ぶ。株主の側ではストラテジックキャピタルの働きかけで資本効率が上がり、還元も厚くなる。TOBによる上乗せはこの筋書きにも織り込まない。計量法違反の後始末は2027年中に終わり、信頼の傷は残らない。10年の営業利益率は18%近くまで上がる。
- 半導体関連(フォトマスク用測長SEM・電子銃):数量 6.6(マスク測長・分析・電子ビーム部品の世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 56(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍)×実質の値段の変化)→ 売上 371 億円・営業利益 126 億円。マスク測長・分析・電子ビーム部品の市場6.6億ドル(今の2.20倍)×シェア28.0%、価格指数に実質変化なし、営業利益率34.0%
- 計測・計量機器:数量 203(計量・試験計測の関連世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 3.22(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化)→ 売上 651 億円・営業利益 88 億円。計量・試験計測の市場202.5億ドル(今の1.35倍)×シェア1.6%、価格指数に実質変化なし、営業利益率13.5%
- 医療・健康機器:数量 64.0(血圧計・体重計などの世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 9.85(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化)→ 売上 630 億円・営業利益 110 億円。血圧計・体重計などの市場64.0億ドル(今の1.60倍)×シェア4.9%、価格指数に実質変化なし、営業利益率17.5%
倍率:事業の純利益 200 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.6 倍。全体の PER 19.61 倍、時価総額 3,922 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:三つの柱が同時にうまくいく筋書きで、半導体の需要と測長の技術優位、医療の海外販路の拡大が10年重なる必要がある。実現の確度は高くない。
やや楽観 22% 半導体が牽引し、医療と計量が堅実に積む 利益 158 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 10,676 円2,924 億円
AI向け投資が続き、半導体関連の需要は中期計画の線を上回って伸びる。マスクの測長ではホロンが首位級の地位を守り、シェアは26%程度に高まる。電子銃など電子ビーム部品の外販も少しずつ増える。医療・健康機器は家庭用血圧計の海外販売が伸び、シェアを小幅に上げる。計測・計量機器は電動車向けのサービスと分析天びんの拡販で薄く稼ぎを積む。株主還元は活動株主の働きかけもあって増え、自己資本の積み上がりはほどほどにとどまる。計量法違反の対応費用は2027年10月までに片づく。営業利益率は16%台まで上がるが、全社費用が足を引っ張り、中計の13%台をやや上回る程度になる。
- 半導体関連(フォトマスク用測長SEM・電子銃):数量 5.9(マスク測長・分析・電子ビーム部品の世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 52(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍)×実質の値段の変化)→ 売上 306 億円・営業利益 98 億円。マスク測長・分析・電子ビーム部品の市場5.8億ドル(今の1.95倍)×シェア26.0%、価格指数に実質変化なし、営業利益率32.0%
- 計測・計量機器:数量 195(計量・試験計測の関連世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 3.06(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化)→ 売上 596 億円・営業利益 73 億円。計量・試験計測の市場195.0億ドル(今の1.30倍)×シェア1.5%、価格指数に実質変化なし、営業利益率12.2%
- 医療・健康機器:数量 60.0(血圧計・体重計などの世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 9.45(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化)→ 売上 567 億円・営業利益 94 億円。血圧計・体重計などの市場60.0億ドル(今の1.50倍)×シェア4.7%、価格指数に実質変化なし、営業利益率16.5%
倍率:事業の純利益 158 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍。全体の PER 18.54 倍、時価総額 2,924 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向け先端半導体の投資が続き、次世代機が採用される流れが半導体の稼ぎを押し上げる。医療と計量も計画線にとどまらず少し上振れする、比較的起こりやすい上寄りの姿。
中立 38% 中立:半導体は伸びるが減速、医療と計量は静かに積み上がる 利益 108 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 6,903 円1,890 億円
半導体関連は2027年3月期の調整を抜けたあと、AI向け先端ロジックとEUVの広がりで需要が緩やかに戻る。マスクの測長ではホロンの地位は変わらず、シェアは今と同じ24%程度を保つ。医療・健康機器は家庭用血圧計が高血圧人口の増加とともに伸び、シェアは今と同水準。計測・計量機器は電子天びんと工業用計量で安定した需要を拾うが、電動車向け試験は伸びない。営業利益率は13%台と、中計の13%台と同じ水準に落ち着く。全社費用は売上に比例して増やした。還元は純利益の4割ほどと、今の実績より厚くなる。資本効率は10年通じて12%前後と、資本コストをわずかに上回る水準にとどまり、目立って高いとは言えない会社として続く。
- 半導体関連(フォトマスク用測長SEM・電子銃):数量 5.1(マスク測長・分析・電子ビーム部品の世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 48(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍)×実質の値段の変化)→ 売上 246 億円・営業利益 74 億円。マスク測長・分析・電子ビーム部品の市場5.1億ドル(今の1.70倍)×シェア24.0%、価格指数に実質変化なし、営業利益率30.0%
- 計測・計量機器:数量 180(計量・試験計測の関連世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 2.81(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化)→ 売上 507 億円・営業利益 54 億円。計量・試験計測の市場180.0億ドル(今の1.20倍)×シェア1.4%、価格指数に実質変化なし、営業利益率10.7%
- 医療・健康機器:数量 50.0(血圧計・体重計などの世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 8.92(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化)→ 売上 446 億円・営業利益 67 億円。血圧計・体重計などの市場50.0億ドル(今の1.25倍)×シェア4.4%、価格指数に実質変化なし、営業利益率15.0%
倍率:事業の純利益 108 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.16 倍、時価総額 1,855 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体は中期計画どおりに回復後も緩やかに伸び、医療・計量は物価並みの値上げと小幅の数量増で積み上がる。会社の自己認識と市場の見通しの中心に置いた姿で、最も重く見る。
やや悲観 22% 半導体の優位が薄れ、全体が横ばいに近づく 利益 55 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,128 円583 億円
半導体関連が伸び悩み、電子ビームの新機種の採用も遅れてシェアは19%程度に下がる。AI投資の巡りが一巡し、マスクの測長への投資も鈍る。計測・計量機器は米国のEV関連の弱さと関税の影響が続き、検定事業の取消しの影響で国内の収益も細る。医療・健康機器は家庭用血圧計で中国メーカーとオムロンに挟まれ、価格を上げにくくなる。全体の利益はいまの水準とほとんど変わらず、名目では横ばい、実質では目減りする。株主還元は続くが、増やす余力は乏しい。活動株主の提案で資本構成の見直しは進むが、事業の力そのものは変わらない。10年たっても営業利益率は10%に届かない。
- 半導体関連(フォトマスク用測長SEM・電子銃):数量 4.2(マスク測長・分析・電子ビーム部品の世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 37(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍)×実質の値段の変化)→ 売上 156 億円・営業利益 34 億円。マスク測長・分析・電子ビーム部品の市場4.2億ドル(今の1.40倍)×シェア19.0%、価格指数に実質-3%、営業利益率22.0%
- 計測・計量機器:数量 165(計量・試験計測の関連世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 2.34(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化)→ 売上 386 億円・営業利益 33 億円。計量・試験計測の市場165.0億ドル(今の1.10倍)×シェア1.2%、価格指数に実質-3%、営業利益率8.5%
- 医療・健康機器:数量 44.0(血圧計・体重計などの世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 7.60(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化)→ 売上 335 億円・営業利益 44 億円。血圧計・体重計などの市場44.0億ドル(今の1.10倍)×シェア3.9%、価格指数に実質-3%、営業利益率13.0%
倍率:ROE 6.9%で k 7.5% に届かない。ROE が k 以下の会社の PER は 1÷k=12.5 倍が上限で、RONIC は k を下回り正当化 PER は 11.6 倍にとどまる。利益が名目で横ばいのまま実質では縮む筋書きなので、これより下の 9.0 倍に置いた(上限へ引き上げない)。
確率:半導体関連が足踏みし、計測・計量がEV関連の不振と検定事業の縮みで伸びず、医療も価格競争で利益率を削られる。10年の間に一度はこの流れに落ちる確率は小さくない。
悲観 10% 半導体が割れ、医療・計量も価格競争に飲まれる 利益 2 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,023 円280 億円
AI投資が巻き戻って半導体の装置需要が大きく落ち、中国向けの輸出規制も強まる。マスクの測長では競合が先に次世代の高精度機を出し、ホロンの装置は更新の段階で切り替えられていく。電子銃の外販先も減り、半導体関連はシェアを1割ほどまで落とす。計測・計量機器は検定事業の取消し後も顧客を戻せず、電動車向けの試験も縮む。医療・健康機器は中国メーカーの低価格品に押され、値下げが続く。営業利益はほぼゼロまで落ち込み、全社費用だけが残る。還元は大きく絞られる。資産は売れるので存続の問題は起きないが、稼ぐ力は失われる。活動株主が退く展開も重なる、構造的な負けの10年。
- 半導体関連(フォトマスク用測長SEM・電子銃):数量 3.0(マスク測長・分析・電子ビーム部品の世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 20(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍)×実質の値段の変化)→ 売上 60 億円・営業利益 5 億円。マスク測長・分析・電子ビーム部品の市場3.0億ドル(今の1.00倍)×シェア11.0%、価格指数に実質-10%、営業利益率8.0%
- 計測・計量機器:数量 143(計量・試験計測の関連世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 1.76(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化)→ 売上 250 億円・営業利益 8 億円。計量・試験計測の市場142.5億ドル(今の0.95倍)×シェア0.9%、価格指数に実質-8%、営業利益率3.0%
- 医療・健康機器:数量 38.0(血圧計・体重計などの世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 5.92(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化)→ 売上 225 億円・営業利益 14 億円。血圧計・体重計などの市場38.0億ドル(今の0.95倍)×シェア3.2%、価格指数に実質-8%、営業利益率6.0%
倍率:稼ぐ力は無く、売れる資産の床で置く。事業用資産(今の自己資本 495 億円に純有利子負債 -18 億円を足した 477 億円)が簿価の 55% で売れると仮定し、純現金 18 億円を足すと 280 億円で、今の自己資本の 0.57 倍にあたる。市場の値付けは根拠にしていない。
確率:AI投資の巻き戻しと米中の分断が重なり、フォトマスク測長で競合に切り替えられ、さらに計量・医療でも値下げ圧力を受ける複合の筋書き。会社に1社で複数の逆風が重なる確率は低いと見る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
半導体関連(フォトマスク用測長SEM・電子銃)
ホロンのフォトマスク用CD-SEM・分析SEMと、エー・アンド・デイの電子銃など電子ビーム基幹ユニット。
| 数量マスク測長・分析・電子ビーム部品の世界市場(億ドル・実質)× シェア | 価格市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍)×実質の値段の変化 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 37 | 111 | 36 |
| 10 年後 中立 | 5.1 | 48 | 246 | 74 |
取り方:フォトマスク用の測長・分析SEMと電子ビーム部品の世界市場は公的な統計が無く、約3億ドルと推定した(マスク工場の測定装置の投資と、電子ビーム部品の外販の合計。根拠は薄く、幅は2〜4億ドル)。売上111.4億円(約0.74億ドル)をシェア約25%として逆算した。
計測・計量機器
電子天びん・工業用計量機器、自動車向けのエンジン・駆動系の試験装置、タイヤ試験機など。
| 数量計量・試験計測の関連世界市場(億ドル・実質)× シェア | 価格市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 2.10 | 316 | 34 |
| 10 年後 中立 | 180 | 2.81 | 507 | 54 |
取り方:電子天びん・産業計量・試験計測機器の関連世界市場を、メトラー・トレドなど欧州の大手の売上規模から約150億ドルと推定した。売上315.5億円(約2.1億ドル)をシェア1.4%として逆算した。幅は100〜200億ドル。
医療・健康機器
家庭用・医療用の血圧計を中心に、体重計、パルスオキシメータ、吸入器、医療のデジタル化の仕組みなど。
| 数量血圧計・体重計などの世界市場(億ドル・実質)× シェア | 価格市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率×実質の値段の変化 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 6.67 | 267 | 40 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 8.92 | 446 | 67 |
取り方:家庭用血圧計の世界市場は調査会社により2024年に約33億ドル(Data Bridge)で、体重計・パルスオキシメータなどを含め2026年に約40億ドルと推定した。売上266.7億円(約1.8億ドル)をシェア約4.4%として逆算した。
リスクと懸念
半導体の需要の山谷と中国の調整
半導体関連は利益の3分の1を稼ぐが、装置の投資は山谷が深い。2027年3月期は、中国の半導体投資の調整と前期の反動で、減収減益を会社が見込む。中国の補助金による装置の国産化が進めば、測長装置の顧客も減りうる。
測長装置の技術の入れ替わり
フォトマスクの測長は、顧客が一度採用すると次の世代でも使いやすい領域だが、世代交代の時が最大の危機だ。競合が先に高精度の次世代機を出せば、ホロンの装置は更新時に切り替えられる。次世代機「HSS-1000」の採用が鍵となる。
計量法違反と指定検定機関の取消し
2026年7月、経済産業省は子会社エー・アンド・デイの指定検定機関の指定を取り消した。計量法違反の是正費用は約5.5億円を計上済みだが、是正は2027年10月まで続く。顧客や行政との信頼の傷が、国内の計量機器の売上にどれだけ響くかが読めない。
海外子会社の管理
韓国子会社で資金管理上の不適切な支出が見つかり、約2.4億円を横領損失として計上した。25社・海外15拠点の管理が行き届いていないことを示し、同種の問題が他の拠点にもないとは言い切れない。
電動車向け試験と米国の関税
計測・計量機器は、米国のEV関連の需要調整と関税の影響が続く。電動車向けの試験装置は一時の成長ドライバーだったが、需要が戻らなければ、計量機器の薄い利益がさらに削られる。
医療機器の価格競争
家庭用血圧計は世界首位のオムロンが強く、中国の低価格メーカーも参入している。同社は100カ国以上に売るが、値段を自分で決められる立場ではない。海外で販路を広げても、利益率を保てるとは限らない。
活動株主の影響の読みにくさ
ストラテジックキャピタルの保有は17.8%に達し、重要提案行為も目的に含む。還元の増加や資産の整理で価値が上がる可能性がある一方、取得資金の大半が借入などの他人資金であり、短期の売却や非公開化の圧力にも転じうる。
今後の分かれ目
- フォトマスク測長で、次世代機「HSS-1000」の主要マスクメーカー向けの採用が相次いだら
- 半導体関連のシェア前提を上げ、やや楽観・楽観の確率を増やしてよい。
- ストラテジックキャピタルが具体的な提案(還元の増額・事業の切り離し・非公開化)を公表したら
- 還元の厚みは中立の想定より増えるので、還元額を見直す。TOBなら上乗せの有無を別に確かめる。
- 計量法違反の是正が2027年10月までに終わらず、追加の費用や行政処分が出たら
- ガバナンスの傷が深いとみて、やや悲観側の重みを増やす。
- 中国の半導体投資の調整が長引き、2027年3月期の減益が計画を超えたら
- 半導体の谷が深いと見て、中立の利益率を下げる。
- 血圧計の海外販売が計画を上回り、利益率も15%台後半を保てたら
- 医療・健康機器のシェア前提を上げ、安定した稼ぎの比重を高める。
- 電動車向けの試験装置の受注が回復し、計測・計量の営業利益率が11%台に戻ったら
- 計測・計量の利益率前提を上げ、全社の営業利益率の見通しを引き上げる。
見ておくもの
- 半導体関連の受注とHSS-1000の採用実績
- ストラテジックキャピタルの保有比率と提案内容
- 計量法違反の是正の進み具合と追加費用
- 計測・計量機器と医療・健康機器の営業利益率(中計の10.2%・15.7%との差)
倍率と資本コストの決め方
事業ごとに市場の大きさ×シェアで10年の売上を積み、物価3%は価格側(シェア×150円×物価の倍率)に入れて二重に数えないようにした。半導体関連の市場とシェアは開示が無く、推定の幅が大きい点に注意する。倍率は資本コスト7.5%(基本7.5%に半導体の循環+0.5%)と長期の成長率4.0%から利益ベースの正当化PERを引き、中立の10年ROEが12%前後で資本コストをわずかに上回る水準のため、下限の1÷kとの間で上限の8.5割に置いた。今のPERには寄せていない。悲観は稼ぐ力が無く、純現金と事業用資産(簿価の55%)の仮定の床で置いた。10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえ、新リース会計基準(2028年3月期から)で純有利子負債が増える点は比べる時に注意する。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.9→19.61 倍・やや楽観 PER 13.6→18.54 倍・中立 PER 12.6→17.16 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality +0.5%=8.0%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。