結論
ブイ・テクノロジーは、液晶・有機ELパネルの露光・検査装置で稼いできた会社だ。いまはAI向けの半導体パッケージ装置へ主力を移そうとしている。筆者の結論は「やや割高」である。転換の方向は正しい。だが利益で裏づけが取れるのはこれからで、堀(他社がまねできない強み)はまだ薄い。
売上の6割はFPD(薄型ディスプレイ)装置で、その半分近くが中国向けだ。この事業は成熟していて、先の数量は伸びない。成長は半導体・フォトマスク装置に託されている。直近は売上の4割弱だが、会社は2029年3月期に7割近くまで高める計画を立てる。
計画は大きい。2029年3月期に売上1,000億円、営業利益200億円。だが2027年3月期の目標はすでに引き下げられた。保証費用が膨らんで半導体部門の利益が落ちた実績もあり、計画の達成度は慎重に見る。
純現金が厚く財務は堅い。業績の山谷は深く、2023年には営業利益率が2%台まで落ちた。10年先の価値は中立で今の1.4倍ほどだが、悪い筋書きの重みを加えると、今の値段を2割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「いい事業」とはまだ呼べない。ROEが2018年の4割から2023年の1%まで動く会社に、確かな利益を数えることはできない。
良い点は三つある。第一に、純現金で財務に余裕がある。第二に、創業者が株を持ち、経営者と株主の目線が近い。第三に、AI向けパッケージという追い風を受ける新しい事業を持つ。
悪い点も三つある。堀が弱く、顧客が価格に厳しいこと。中国向けが売上の半分近くで、設備投資の波と政治に左右されること。計画が大きすぎ、達成の実績が薄いこと。
筆者は、中立の10年後に純利益が今の4倍の90億円台になると見る。そこで正当な倍率は10倍強にとどまる。利益の質が上がるまで、割安とは言えない。安全域を取るなら、DI露光が量産機として採用された実績を待つのが筋だ。
何で稼ぐ会社か
ブイ・テクノロジーは、ディスプレイと半導体の製造に使う露光装置・検査装置を作る会社だ。露光装置は、回路のパターンを基板に焼きつける機械である。2026年3月期の売上530億円のうち、FPD装置が6割、半導体・フォトマスク装置が4割弱を占める。
FPD装置の柱は、液晶のカラーフィルタ工程の露光装置と、各種の検査装置だ。顧客は中国の大手パネルメーカーが中心で、売上のおよそ半分を中国が占める。2015年に日本精工系のNSKテクノロジーの露光事業を統合し、液晶と有機ELの露光を一手に扱う体制になった。
半導体・フォトマスク装置は、成長を託す事業だ。AI向けパッケージ基板や樹脂インターポーザー向けのDI露光装置(マスクを使わず直接描く方式)、フォトマスクの欠陥検査機、シリコンウェハの結晶欠陥検査機などが並ぶ。直近は半導体向けの売上が前年比3割増えた。
ほかに、農業(トマト栽培)とIT、有機EL照明を手がける。売上は15億円ほどで、利益は出ていない。
拠点は国内と中国を中心にインド・ベトナム・タイなど24におよび、中国では子会社が現地の顧客対応と部材の供給を担う。装置本体のほかに、保守・部材・ロイヤリティの売上を増やすことが、会社の掲げる収益の安定策だ。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の堀はまだ弱いと見る。FPDの露光・検査では世界でも指折りの位置にいるが、顧客は価格に厳しい中国のパネルメーカーで、値段を自分で決められる立場ではない。
半導体向けは、DI露光装置で競合が多い。オーク製作所もパッケージ基板向けの機種を投入した。ブイ・テクノロジーは新しい挑戦者であり、標準機の座をまだ取っていない。利益率の低さが、それをよく表している。直近の半導体・フォトマスク事業は、売上が3割増えても営業利益は半分に減った。製品保証の費用が重かったためだ。
経営は創業者の杉本重人氏が1997年から率い、持株は1割強ある。経営と株主の利害は近い。資本の使い方は堅実で、配当性向は3割強、買収はOHTやアイテックなどの小さなものにとどまる。
財務は純現金で自己資本比率が5割ある。ただし、装置メーカーは売掛金と在庫が大きく、会社自身も売掛の回収条件を厳しくする方針を出した。ROEは過去10年の中央値で11%。2018〜19年の4割から2023年の1%まで大きく振れた。長く高い利益を稼ぐ会社とはまだ言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ディスプレイ装置は成熟期にある。スマートフォンと車載の有機EL化、タブレットやノートPCの有機EL化が、残る投資の中心だ。中国のパネルメーカーは増産を一巡させ、自社で作る装置も増やしている。市場は数量で伸びにくく、残存者利益(競争が減ったあとに残る利益)を取る局面に入った。
一方、半導体のパッケージは構造が変わっている。AIの半導体は、複数のチップを大きな基板の上で並べて動かす。基板は大型化し、配線は細くなり、有機材料ではゆがみが出る。マスクを使わずに直接描くDI露光は、そのゆがみに合わせやすい。ガラスコア基板への移行が進めば、さらに需要が出る。
競合は多い。国内ではオーク製作所が2027年に年10台以上を見込んで参入し、海外にも大手がいる。フォトマスクは、EUV向けの検査をレーザーテックが握る。ブイ・テクノロジーが狙うのは、古い世代のマスクの置き換え需要で、世界で200〜300台と会社は見積もる。
業界全体の見通しは、半導体装置市場が10年で約2倍(物価込みの名目。物価の上昇を除くと実質で約1.5倍)、ディスプレイ装置は実質で横ばいから縮小と置いた。
資本政策と M&A
還元は安定している。2026年3月期の配当性向は3割強で、2027年3月期も同じ水準を計画する。自社株買いは2023年と2024年に約5億円ずつ実施し、今後も機動的に判断する方針だ。
M&Aは小さい。OHT(2016年)、ナノシステムソリューションズ(2019年)、リソテックジャパン(2021年)、アイテック(2022年)、ジャパンクリエイト(2023年)と、技術や人を補う買収が続いた。大型買収で価値を壊した形跡はなく、売却や撤退もない。
注意すべきは、現金の使い道だ。純現金は78億円あるが、装置の売掛金・在庫・前受金で動く運転資金が大きい。事業に要らない現金とは言いにくい。
創業者が1割強を持つため、買収されにくい面がある。TOBの可能性は10年で1割強と見積もられるが、材料は特に出ていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI向けパッケージ基板の市場は、まだ入り口にある。大型化とガラスコア基板への移行が進めば、DI露光装置の需要は何倍にもなる。ブイ・テクノロジーは、台湾のOSATへ営業を進め、検査機・部材・保守まで揃えて売る体制を作った。半導体・フォトマスクの受注と受注残は過去最高で、半導体向けの売上は来期にも6割増える見込みだ。
利益の低さは一時的だ。製品保証の費用が重かっただけで、装置の価格が負けているわけではない。FPDは成熟した事業だが、検査機と部材で安定して稼ぎ、現金を生み出す。その現金で半導体に投資できる。
会社は2029年3月期に営業利益200億円を掲げる。届かなくても、半分でも今の4倍だ。時価総額が540億円の会社にとって、この伸びしろは大きい。純現金と創業者の経営も、下を支える。
さらに、半導体の部材・保守・ロイヤリティの売上は景気に左右されにくい。会社はこの比率を3割近くまで高める計画で、実現すれば装置の山谷が利益に与える振れは小さくなる。利益の質が変われば、倍率も上がる。
慎重な見方
この会社は、何度も計画を引き下げてきた。2027年3月期の目標は、売上670億円・営業利益74億円から、600億円・55億円へ下がった。半導体事業は、売上が3割増えても利益が半分に減った。数字が追いついていない。
DI露光の競合は多い。オーク製作所が参入し、海外の大手もいる。新規の挑戦者が標準機の座を取るのは難しい。
FPDは売上の半分が中国で、顧客は内製化を進める。インド向けの大型案件は遅れたままだ。堀が弱く、顧客が価格を決める事業だ。
経営は1997年から創業者が率いており、判断の誤りを正す仕組みが外から見えにくい。その間にも、事業の幅は農業やITへ広がっている。
売掛の回収条件を厳しくする方針も、顧客との力関係を映す。ROEは10年で1%から4割まで動いた。この振れ幅の会社に、高い倍率は払えない。
さらに、現金は厚く見えても、装置メーカーの運転資金に吸われる。農業やITで赤字を続けながら、本業の稼ぎを広げる話は、実績が出てから評価すれば遅くない。
どちらに重みを置いたか
強気の材料は「市場の追い風」、慎重な材料は「会社の実行力の薄さ」だ。市場の追い風は本物だが、それを会社の利益に変えた実績はまだ少ない。計画の下方修正と、半導体事業の利益低下が決め手になった。
確率は、中立を3割台前半に置き、慎重側の筋書きを合計で3割台半ばまで厚くした。楽観側は合計で3割。結果は、10年の価値が今の時価総額を2割ほど下回る「やや割高」になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,680 円821 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,016 円191 億円)。 今の値に割り戻すと 4,977 円471 億円、今との差 +2.4%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 21,159 円2,001 億円 | 4,209 円398 億円 | +422.0% | +18.0% | 2,537 円240 億円 |
| やや楽観 | 20% | 13,315 円1,259 億円 | 2,982 円282 億円 | +235.3% | +12.9% | 3,259 円308 億円 |
| 中立 | 34% | 9,011 円852 億円 | 2,263 円214 億円 | +132.0% | +8.8% | 3,833 円362 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,326 円220 億円 | 878 円83 億円 | −34.1% | −4.1% | 769 円73 億円 |
| 悲観 | 12% | 2,326 円220 億円 | 159 円15 億円 | −48.9% | −6.5% | 298 円28 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,680 円821 億円 | 2,016 円191 億円 | +120.1% | +8.2% | 10,696 円1,012 億円 |
今の株価時価総額 4,860 円460 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:AI向けパッケージ装置が主力に育ち、利益率が2割に乗る 利益 156 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 21,159 円2,001 億円
AI向けのパッケージ基板とインターポーザーが大型化し、ガラスコア基板への移行も進む。そこでブイ・テクノロジーのDI露光装置が標準機の座を取り、半導体・フォトマスク事業は売上1,200億円規模に育つ。
台湾のOSAT(後工程の受託会社)での採用が広がり、露光装置だけでなく検査機・部材・保守の売上が積み上がる。装置の利益率は2割を超え、会社全体の営業利益は300億円台に乗る。
FPD装置は中国の設備投資が高止まりし、売上は今の1.3倍ほど。フォトマスク装置はレガシー半導体の更新需要を拾い続ける。
純現金は厚く、配当と自社株買いも増える。それでも利益の振れは残るため、倍率は堀が弱い会社の中では上限近くにとどまる。
- 半導体・フォトマスク装置:数量 52.2(ブイ・テクノロジーが取り組む半導体後工程・マスク・ウェハ検査装置の市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 17(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍))→ 売上 893 億円・営業利益 196 億円。半導体後工程の対象市場52億ドル(今の1.74倍・実質)×シェア8.5%、営業利益率22%
- FPD(ディスプレイ)装置:数量 25.0(FPD製造の露光・検査装置の世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 17(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 427 億円・営業利益 51 億円。FPD露光・検査装置の市場25億ドル(今と同じ)×シェア8.5%、営業利益率12%
- 新規・その他(農業・IT・有機EL照明):数量 110(国内の施設園芸と企業向けIT受託などの合算市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 60.3%(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。農業・IT・有機EL照明の合算市場110億ドル×シェア0.3%、営業利益率5%
倍率:事業の純利益 156 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.4% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.81 倍、時価総額 2,001 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:先端パッケージ向けのDI露光は競合が多く、受注が計画通りに積み上がった実績もまだ薄い。市場の追い風が強くても、この筋書きまで届く確率は1割にとどめる。
やや楽観 20% やや楽観:パッケージ装置は育つが、利益率は1割台後半で止まる 利益 104 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 13,315 円1,259 億円
先端パッケージの需要は計画ほどではないが着実に伸び、半導体・フォトマスク事業の売上は900億円台になる。DI露光の競合(オーク製作所など)との競争で値引きは入るが、検査・部材の売上比率が上がって利益率は2割弱に届く。
FPD装置は中国向けのカラーフィルタ露光が一巡しても、検査装置と部材で食いつなぎ、売上は今の1.2倍。営業利益率は1割強。
保証費用などの不具合のコストは落ち着き、営業利益は200億円強。創業者のもとで還元は続き、純現金の財務は保たれる。
この筋書きでは、会社の計画(2029年3月期の営業利益200億円)にはおよそ届くが、10年の時間がかかる。部材・保守の売上比率が上がることで、装置の山谷の影響は和らぐ。
- 半導体・フォトマスク装置:数量 47.8(ブイ・テクノロジーが取り組む半導体後工程・マスク・ウェハ検査装置の市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 14(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍))→ 売上 691 億円・営業利益 128 億円。対象市場48億ドル(今の1.59倍・実質)×シェア7.2%、営業利益率18.5%
- FPD(ディスプレイ)装置:数量 23.5(FPD製造の露光・検査装置の世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 17(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 392 億円・営業利益 43 億円。FPD市場23.5億ドル(今の0.94倍)×シェア8.3%、営業利益率11%
- 新規・その他(農業・IT・有機EL照明):数量 108(国内の施設園芸と企業向けIT受託などの合算市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 50.2%(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 54 億円・営業利益 2 億円。農業・IT等の合算市場108億ドル×シェア0.25%、営業利益率3%
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.13 倍、時価総額 1,259 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画は、直近でも売上・利益の目標を下げている。計画通りには行かないが、先端パッケージの需要そのものは強いので、2割を割り当てる。
中立 34% 中立:先端パッケージは伸びるが、FPDが細り、利益率は1割台前半 利益 74 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 9,011 円852 億円
半導体・フォトマスク事業は、AI向けのパッケージ装置と検査装置が柱になり、売上は700億円台に育つ。ただし競合が多く、今の営業利益率3%台が一気に2割へ跳ねる姿までは見えない。1割台後半を置く。
FPD装置は中国の設備投資が山を越え、市場は実質で1割ほど縮む。物価の上昇分でそれを埋め、売上は今の1.1倍。営業利益率は1割。
新規事業の農業・ITは、売上は伸びても利益はほぼ出ない。
全体の営業利益は150億円、純利益は90億円台。ROE は12%で、堀が弱い会社に見合う水準にとどまる。
会社の計画(2029年3月期に営業利益200億円)には10年かけても届かない。それでも今の4倍の利益であり、パッケージ装置が事業として成り立ったことは評価できる。配当性向は3割強から4割へ、自社株買いも加えて続く。
- 半導体・フォトマスク装置:数量 43.3(ブイ・テクノロジーが取り組む半導体後工程・マスク・ウェハ検査装置の市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 12(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍))→ 売上 540 億円・営業利益 86 億円。対象市場43億ドル(今の1.44倍・実質)×シェア6.2%、営業利益率16%
- FPD(ディスプレイ)装置:数量 22.0(FPD製造の露光・検査装置の世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 16(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 354 億円・営業利益 35 億円。FPD市場22億ドル(今の0.88倍)×シェア8.0%、営業利益率10%
- 新規・その他(農業・IT・有機EL照明):数量 105(国内の施設園芸と企業向けIT受託などの合算市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 40.2%(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 42 億円・営業利益 1 億円。農業・IT等の合算市場105億ドル×シェア0.2%、営業利益率2%
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.5 倍。全体の PER 11.5 倍、時価総額 852 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の材料と弱気の材料が同じくらい重い。市場の追い風と、会社の計画未達の癖・競合の多さを引き合わせた中心の筋書き。
やや悲観 24% やや悲観:パッケージ装置の競争が激化し、FPDも縮む 利益 25 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 2,326 円220 億円
先端パッケージの市場は伸びるが、DI露光はオーク製作所など国内外の競合が価格で攻めてくる。シェアは5%を割り、保証・値引きの費用も重く、半導体・フォトマスク事業の利益率は1割に届かない。
FPD装置は中国メーカーの内製化と設備投資の一巡で、市場は実質で4分の1ほど縮む。受注は検査と部材に偏り、利益率は1桁にとどまる。
営業利益は50億円足らず。配当は性向を下げて維持するが、新規投資の稼ぎは資本コストに届かない。
製品保証や在庫評価の費用は完全にはなくならず、顧客の設備投資が戻っても、利益率は過去の山には届かない。純現金は運転資金に使われ、積み上がらない。
- 半導体・フォトマスク装置:数量 35.8(ブイ・テクノロジーが取り組む半導体後工程・マスク・ウェハ検査装置の市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 9.65(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍))→ 売上 346 億円・営業利益 24 億円。対象市場36億ドル(今の1.19倍・実質)×シェア4.8%、営業利益率7%
- FPD(ディスプレイ)装置:数量 19.0(FPD製造の露光・検査装置の世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 14(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 267 億円・営業利益 16 億円。FPD市場19億ドル(今の0.76倍)×シェア7.0%、営業利益率6%
- 新規・その他(農業・IT・有機EL照明):数量 100(国内の施設園芸と企業向けIT受託などの合算市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 30.2%(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 30 億円・営業利益 −1 億円。農業・IT等の合算市場100億ドル×シェア0.15%、営業利益率-2%
倍率:稼ぐ力(事業の純利益 25 億円÷k 9%=約 260 億円)に安全率を掛けると、悲観の床(純現金 78 億円と事業用資産の 5 割の合計 220 億円)を下回る。価値は床を下回らないので、床と同じ 220 億円で置いた。ROE は 4.6% で k を下回り、ためた利益を高く見ない。
確率:FPDは売上の半分が中国向けで、パッケージ向けは競合の参入が続く。2023年に営業利益率が2%台まで落ちた実績もあり、慎重な見方を少し強めに見る。
悲観 12% 悲観:競争に負けてシェアを失い、事業は縮小均衡へ 利益 1 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 2,326 円220 億円
FPD装置は中国の顧客が内製機に切り替えて受注が細り、市場は実質で4割縮む。パッケージ向けのDI露光は、後発の競合に押されて量産機の採用が取れず、フォトマスク装置も中国向けの低迷が続く。
製品保証・在庫評価損などの不具合の費用が続き、半導体・フォトマスク事業の利益はほぼゼロ。農業・ITの赤字も残る。
稼ぐ力はなく、純現金と事業用の資産を売った額が価値の床になる。配当は早い段階で大きく減る。
それでも10年の配当の合計25億円ほどは、利益ではなく手元の現金や資産の売却で払う。創業者が残した現金と資産が、株主の最後の支えになる。
- 半導体・フォトマスク装置:数量 28.4(ブイ・テクノロジーが取り組む半導体後工程・マスク・ウェハ検査装置の市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 6.03(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍))→ 売上 171 億円・営業利益 0 億円。対象市場28億ドル(今の0.95倍・実質)×シェア3.0%、営業利益率0%
- FPD(ディスプレイ)装置:数量 15.0(FPD製造の露光・検査装置の世界市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 11(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 166 億円・営業利益 3 億円。FPD市場15億ドル(今の0.6倍)×シェア5.5%、営業利益率2%
- 新規・その他(農業・IT・有機EL照明):数量 90.0(国内の施設園芸と企業向けIT受託などの合算市場(億ドル・実質)× シェア)× 価格 20.1%(市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 18 億円・営業利益 −3 億円。農業・IT等の合算市場90億ドル×シェア0.1%、営業利益率-15%
倍率:稼ぐ力はほぼ無く、売れる資産の床で置く。事業用資産(今の自己資本 362 億円から純現金 78 億円を引いた 284 億円)を簿価の 5 割で売れると仮定して 142 億円、純現金 78 億円を足して 220 億円。今の自己資本の 0.61 倍にあたる。
確率:中国顧客への依存、DI露光の競合、製品保証費用の増加という三つの弱点が同時に表に出る筋書き。重なる確率は1割強に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
半導体・フォトマスク装置
AI向けパッケージ基板用のDI露光装置、フォトマスクの欠陥検査機、ウェハ検査機、プローブ検査機。
| 数量ブイ・テクノロジーが取り組む半導体後工程・マスク・ウェハ検査装置の市場(億ドル・実質)× シェア | 価格市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年で1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 6.53 | 196 | 7 |
| 10 年後 中立 | 43.3 | 12 | 540 | 86 |
取り方:対象市場は公的な統計が無く、パッケージ基板用DI露光・フォトマスク検査・ウェハ検査・プローブ検査などの装置を合わせて約30億ドルと推定した(幅は20〜40億ドル)。売上196億円(約1.3億ドル)をシェア約4.4%として逆算した。
FPD(ディスプレイ)装置
液晶・有機ELパネル向けのカラーフィルタ露光装置、光配向露光装置、各種検査装置、部材・保守。
| 数量FPD製造の露光・検査装置の世界市場(億ドル・実質)× シェア | 価格市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 13 | 320 | 32 |
| 10 年後 中立 | 22.0 | 16 | 354 | 35 |
取り方:FPD製造装置全体の投資額と、そのうち露光・検査の割合から、対象市場を約25億ドルと推定した(幅は18〜32億ドル)。売上320億円(約2.1億ドル)をシェア約8.5%として逆算した。
新規・その他(農業・IT・有機EL照明)
トマト栽培を軸にした農業、グループ向けのIT、有機EL照明。
| 数量国内の施設園芸と企業向けIT受託などの合算市場(億ドル・実質)× シェア | 価格市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 14.4% | 14 | −1 |
| 10 年後 中立 | 105 | 40.2% | 42 | 1 |
取り方:規模が小さく、市場は数字で見ても意味が薄い。農業・IT・有機EL照明が関わる市場を合算して約100億ドルと粗く置き、売上14.4億円をシェア約0.1%として逆算した。根拠は薄い。
リスクと懸念
中国のパネルメーカーへの依存
FPD装置の売上の半分近くが中国向けだ。設備投資が一巡し、顧客が装置を内製に切り替えると、受注が一気に細る。米中の規制や関税の変化も、受注の時期をずらす。2026年3月期にも、中国向けカラーフィルタ露光機の納入が翌期にずれ込んだ。
DI露光の競合と標準機争い
パッケージ基板向けのDI露光には、オーク製作所のような国内勢と海外の大手が参入している。ブイ・テクノロジーは挑戦者であり、顧客に量産機として採用される実績がまだ薄い。値引きで受注を取れば、利益率が上がらない。
計画の未達と信頼
2027年3月期の目標は、売上670億円・営業利益74億円から600億円・55億円へ下がった。2026年3月期も下方修正で着地した。2029年3月期の売上1,000億円・営業利益200億円は、過去最高を大きく超える水準で、達成の実績が薄い。
製品保証費用と収益の質
半導体・フォトマスク事業は、売上が3割増えても営業利益が半分に減った。新しい装置は不具合の手直しが重く、保証費用が膨らみやすい。売掛の回収条件を厳しくしたのも、運転資金の負担が大きいことの裏返しだ。
業績の山谷の深さ
営業利益率は2019年3月期に23%、2023年3月期に2%台と、4年で10分の1に落ちた。装置メーカーの受注は顧客の投資計画に左右され、1社の延期が決算を動かす。赤字の期も2008年と2013年にあった。
新規事業の赤字と資本の使い方
農業やITは売上が15億円ほどで、利益は出ていない。計画では売上70億円を掲げるが、本業と離れた事業に資本を回し続けると、ROEを押し下げる。創業者の経営は一貫しているが、事業を広げすぎる癖には注意が要る。
今後の分かれ目
- 台湾のOSATなどからDI露光装置の量産機の大口受注が続いたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げ、半導体事業の利益率を1割台後半から2割に置き直す。
- 製品保証の費用が落ち着き、半導体・フォトマスク事業の営業利益率が1割を超えたら
- 利益の質が上がったと見て、堀を弱いから普通へ見直す余地が出る。
- 中国のパネルメーカーが露光装置を内製に切り替えたら
- FPD事業のシェアと利益率を下げ、やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- 2029年3月期の目標(売上1,000億円・営業利益200億円)が再び引き下げられたら
- 計画の信頼度をさらに下げ、中立の利益率とシェアを下方修正する。
- オーク製作所など競合が主要顧客でDI露光の採用を取ったら
- パッケージ事業のシェアを下げ、やや悲観側に重みを移す。
- 大きな買収で現金を使う、または農業・ITへの投資を大きく増やしたら
- 資本の使い方への評価を下げ、純現金の価値を割り引く。
見ておくもの
- 半導体・フォトマスクの受注高・受注残と、DI露光装置の量産採用の発表
- 半導体・フォトマスク事業の営業利益率(製品保証費用の動き)
- 中国向けFPD装置の受注と、顧客の内製化の動き
- 中期経営計画の目標の再修正と、売掛の回収状況
倍率と資本コストの決め方
10年後の売上は、半導体の対象市場・FPD市場に自社シェアを掛け、物価の分は価格(シェア×150円×1.34)に入れて積み上げた。倍率は資本コスト9%(基本7.5%に循環+1.0・値決め+0.5・寿命+0.5)と堀の弱さ(残る割合1/3)から、利益ベースの正当化PERの上限を引き、上限の9〜9.6割に置いた。ROEが資本コストを上回るため下限は1÷k(10.5倍)で、上限との差が小さい。今のPERや過去のPBRには寄せていない。悲観は稼ぐ力が無いので、純現金と事業用資産の売却価値の床で置いた。純現金の厚さは運転資金で消えると見て分けていない。 半導体の市場の伸びは、業種ノートの名目(10年で約2倍)から物価3%を除いた実質(約1.5倍)で置き、物価は価格側に入れた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.81 倍・やや楽観 PER 10.6→12.13 倍・中立 PER 10.4→11.5 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality +2.0%=9.5%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.00%。